特許第6971235号(P6971235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971235
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】ワンピース状歯科修復物用モールド
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/80 20170101AFI20211111BHJP
   A61C 5/85 20170101ALI20211111BHJP
   A61C 5/77 20170101ALI20211111BHJP
   A61C 13/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   A61C5/80
   A61C5/85
   A61C5/77
   A61C13/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-531146(P2018-531146)
(86)(22)【出願日】2016年12月15日
(65)【公表番号】特表2019-502447(P2019-502447A)
(43)【公表日】2019年1月31日
(86)【国際出願番号】US2016066777
(87)【国際公開番号】WO2017106419
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年12月13日
(31)【優先権主張番号】62/268,551
(32)【優先日】2015年12月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ディー.ハンセン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーセフ シー.ディンジェルデイン
(72)【発明者】
【氏名】メアリー シー.ドラフ
【審査官】 宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0205967(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0130202(US,A1)
【文献】 特開2008−119225(JP,A)
【文献】 特表2012−516704(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/066552(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/80
A61C 5/85
A61C 5/77
A61C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の口腔内で歯科修復物を形成するためのカスタム器具であって、
前記患者の少なくとも1本の歯牙とのカスタマイズされた嵌め合いを提供するワンピース状モールドボディであって、前記歯牙の咬合面と対応する咬合面を形成している咬合側部分と、前記歯牙の近心隣接面と対応する近心隣接面を形成している近心隣接部分と、前記歯牙の遠心隣接面と対応する遠心隣接面を形成している遠心隣接部分と、を含む、ワンピース状モールドボディを備え、
前記モールドボディは、前記患者の前記歯牙と組み合わせることで、前記歯牙の欠損歯牙構造を覆い囲むモールドキャビティを形成するように構成されており、
ポート及びプラグを更に含み、前記プラグは、前記歯牙の表面に対応する先端面を含み、
前記咬合側部分、前記近心隣接部分、及び前記遠心隣接部分は、前記患者の前記口腔の3次元スキャンデータに基づく、
カスタム器具。
【請求項2】
前記咬合側部分、近心隣接部分、及び前記遠心隣接部分はすべて、修復物を受け入れる歯牙の周りに嵌合するようにカスタマイズされている、請求項1に記載のカスタム器具。
【請求項3】
前記歯牙の舌側面と係合して当該カスタム器具を前記歯牙にスナップ留めすることを可能にするラップ部を更に含む、請求項1に記載のカスタム器具
【請求項4】
前記近心隣接面を含む第1の隣接歯間部と、前記遠心隣接部分を含む第2の隣接歯間部と、を更に含む、請求項1に記載のカスタム器具。
【請求項5】
前記ワンピース状モールドボディは前記患者の2つの隣接する歯牙のカスタマイズされた嵌め合いを提供し、前記2つの隣接する歯牙は、前記歯牙及び隣接する歯牙を含み、前記ワンピース状モールドボディは、前記隣接する歯牙の第2の咬合面と対応する第2の咬合面を形成している第2の咬合側部分と、前記隣接する歯牙の第2の近心隣接面と対応する第2の近心隣接面を形成している第2の近心隣接部分と、前記隣接する歯牙の第2の遠心隣接面と対応する第2の遠心隣接面を形成している第2の遠心隣接部分と、を含み、
前記モールドボディは、前記患者の前記2つの隣接する歯牙と組み合わせることで、前記2つの隣接する歯牙のそれぞれの欠損歯牙構造を覆い囲む別個のモールドキャビティを形成するように構成されている、請求項1に記載のカスタム器具。
【請求項6】
前記モールドキャビティ内に配置された歯科修復材料を更に含む、請求項1に記載のカスタム器具。
【請求項7】
前記咬合側部分、前記近心隣接部分、及び前記遠心隣接部分は、3D印刷によって製造されている、請求項1に記載のカスタム器具。
【請求項8】
前記咬合側部分、前記近心隣接部分、及び前記遠心隣接部分は共に、前記歯牙の外部表面に対応する内部表面を修復前に形成する、請求項1に記載のカスタム器具。
【請求項9】
患者の口腔内で歯科修復物を形成するためのカスタム器具であって、
前記患者の少なくとも1本の歯牙とのカスタマイズされた嵌め合いを提供するワンピース状モールドボディであって、前記歯牙の切縁面と対応する切縁側部分と、前記歯牙の近心隣接面と対応する近心隣接面を形成している近心隣接部分と、前記歯牙の遠心隣接面と対応する遠心隣接面を形成している遠心隣接部分と、を含む、ワンピース状モールドボディを備え、
前記モールドボディは、前記患者の前記歯牙と組み合わせることで、前記歯牙の欠損歯牙構造を覆い囲むモールドキャビティを形成するように構成されており、
ポート及びプラグを更に含み、前記プラグは、前記歯牙の表面に対応する先端面を含み、
前記切縁側部分、前記近心隣接部分、及び前記遠心隣接部分は、前記患者の前記口腔の3次元スキャンデータに基づく、
カスタム器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯科修復物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科修復物、又は歯科充填物には、欠損した又は不正な歯牙構造の機能、完全性及び形態の改善のために使用される歯科修復材料が利用される。例えば、歯科修復物は、先天性の歯列不整合(congenital discrepancies)、外傷後の欠損歯牙構造の修復のため、又は虫歯、即ち、う蝕の修復治療の一環として用いられ得る。
【0003】
修復歯科術は、感染した歯牙からう蝕部分をドリルで切削すること(一般に、歯を「整えること(preparing the tooth)」と称される)、次に、単純な器具及び高度な技能を用いて隔離し、後退させ、充填し、及び完成した修復物を外形調整することを含むことが多い。ラバーダムによる質の高い隔離は煩雑であり、多くの場合に省略され、有効性の低いコットンロールによる隔離に代えられる−これにより汚染リスクが高まり、修復物の寿命が短くなる。軟組織及び硬組織の後退は、コード、ウェッジ及びマトリックスバンドの操作を伴い、技術が不完全であると、汚染を招き、隣接歯間領域の仕上げ及び/又は研磨が困難となり、噛み合わせの適合が悪くなり得る。
【0004】
「バルクフィル」修復材料及び高輝度硬化光は、深い窩洞(例えば、4〜5mm)の比較的速い充填を容易にするが、医師にとって修復材料の複数のシェード又はタイプについての正しい積層プロトコルが不確かであり得るため、多くの修復物が単一のシェードで完成される。最後に、整えられた歯牙に利用可能な幾何学的ガイダンスはほとんどなく、最終的な充填高さ及び咬合面の幾何学的形状の作成は、歯科修復材料の過剰充填と、続く麻酔下の患者に対する研削並びに歯牙の接触状態及び咬合機能の確認の繰り返し作業を伴い得る。この作業が、歯科修復において最も時間がかかるものであり得るとともに、ここで過失があると、歯牙の過敏が生じ、調整のため再受診を要することになり得る。
【0005】
2015年12月7日に出願された「DENTAL RESTORATION MOLDING TECHNIQUES」という名称の、同一出願人による国際出願PCT/US2015/064195号では、患者の口腔内にある歯牙に歯科修復材料を直接成形することを含む歯科修復技術について開示している。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、患者の口腔内にある歯牙に歯科修復材料を直接成形することを含む歯科修復技術に関する。開示される技術には、歯科修復方法、歯科修復に使用されるカスタム器具及び歯科修復用カスタム器具の製造技術が含まれる。開示される技術には、個々の患者に合わせてカスタマイズされたモールドキャビティを提供する器具が含まれる。一部の例において、かかるカスタム器具は3次元印刷技術を用いて製造し得る。
【0007】
一例において、本開示は、患者の口腔内で歯科修復物を形成するためのカスタム器具に関し、カスタム器具は、患者の少なくとも1本の歯牙とのカスタマイズされた嵌め合いを提供するワンピース状モールドボディであって、歯牙の咬合面と対応する咬合面を形成している咬合側部分と、歯牙の近心隣接面と対応する近心隣接面を形成している近心隣接部分と、歯牙の遠心隣接面と対応する遠心隣接面を形成している遠心隣接部分と、を含む、ワンピース状モールドボディを備える。モールドボディは、患者の歯牙と組み合わせることで、歯牙の欠損歯牙構造を覆い囲むモールドキャビティを形成するように構成されている。咬合側部分、近心隣接部分、及び遠心隣接部分は、患者の口腔の3次元スキャンデータに基づく。
【0008】
別の例において、本開示は、患者の口腔内で歯科修復物を形成するためのカスタム器具に関し、カスタム器具は、患者の少なくとも1本の歯牙とのカスタマイズされた嵌め合いを提供するワンピース状モールドボディであって、歯牙の切縁面と対応する切縁側部分と、歯牙の近心隣接面と対応する近心隣接面を形成している近心隣接部分と、歯牙の遠心隣接面と対応する遠心隣接面を形成している遠心隣接部分と、を含む、ワンピース状モールドボディを備える。モールドボディは、患者の歯牙と組み合わせることで、歯牙の欠損歯牙構造を覆い囲むモールドキャビティを形成するように構成されている。切縁側部分、近心隣接部分、及び遠心隣接部分は、患者の口腔の3次元スキャンデータに基づく。
【0009】
更なる例において、本開示は、患者の口腔内で歯牙の歯科修復物を形成するためのカスタム器具の製造方法に関し、この方法は、患者の口腔の3次元スキャンデータを入手することと、患者の口腔の3次元スキャンデータに基づき歯牙の歯科修復物を形成するためのカスタム器具を3次元印刷することとを含む。カスタム器具は、前述の段落で記載したカスタム器具に合致する。
【0010】
更なる例において、本開示は、患者の口腔内で歯牙の歯科修復物を形成するためのカスタム器具を入手する方法に関する。当該方法は、患者の口腔の3次元スキャンデータを入手することと、3次元スキャンデータの少なくとも一部を遠隔製造施設に送信することと、患者の口腔の3次元スキャンデータに基づき歯牙の歯科修復物を形成するためのカスタム器具を遠隔製造施設から受け取ることと、を含む。カスタム器具は、前述の段落で記載したカスタム器具に合致する。
【0011】
更なる例において、本開示は、患者の口腔内で歯牙の歯科修復物を形成するためのカスタム器具を入手する方法に関する。当該方法は、患者の口腔の3次元スキャンデータを入手することと、3次元スキャンデータの少なくとも一部分を遠隔製造施設に送信することと、患者の口腔の3次元スキャンデータに基づき歯牙の歯科修復物を形成するためのカスタム器具のデザインを遠隔製造施設から受け取ることと、を含む。カスタム器具は、前述の段落で記載したカスタム器具に合致する。
【0012】
本開示の1つ又は複数の実施例の詳細を添付図面及び以下の説明に示す。本開示の他の特徴、目的及び利点は、明細書及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の例の一部
図1】患者の口腔内で歯牙の歯科修復物を形成するためのカスタム器具を示し、カスタム器具は、患者の少なくとも1本の歯牙とのカスタマイズされた嵌め合いを提供するワンピース状モールドボディを含む。
図2】患者の口腔内で歯牙の歯科修復物を形成するためのカスタム器具を示し、カスタム器具は、患者の少なくとも1本の歯牙とのカスタマイズされた嵌め合いを提供するワンピース状モールドボディを含む。
図3】患者の口腔内で歯牙の歯科修復物を形成するためのカスタム器具を示し、カスタム器具は、患者の少なくとも1本の歯牙とのカスタマイズされた嵌め合いを提供するワンピース状モールドボディを含む。
図4】患者の口腔内で歯牙の歯科修復物を形成するためのカスタム器具を示し、カスタム器具は、患者の少なくとも1本の歯牙とのカスタマイズされた嵌め合いを提供するワンピース状モールドボディを含む。
図5】患者の口腔内で歯牙の歯科修復物を形成するためのカスタム器具を示し、カスタム器具は、患者の少なくとも1本の歯牙とのカスタマイズされた嵌め合いを提供するワンピース状モールドボディを含む。
図6】患者の口腔内で歯牙の歯科修復物を形成するためのカスタム器具を示し、カスタム器具は、患者の少なくとも1本の歯牙とのカスタマイズされた嵌め合いを提供するワンピース状モールドボディを含む。
図7】患者の口腔内で2つの隣接する歯牙の歯科修復物を形成するための別のカスタム器具であり、カスタム器具は2つの嵌合するモールドボディ構成要素を含む。
図8】患者の口腔内で2つの隣接する歯牙の歯科修復物を形成するための別のカスタム器具であり、カスタム器具は2つの嵌合するモールドボディ構成要素を含む。
図9】患者の口腔内で2つの隣接する歯牙の歯科修復物を形成するための別のカスタム器具であり、カスタム器具は2つの嵌合するモールドボディ構成要素を含む。
図10】患者の口腔内で歯科修復物を形成するための例示的技術を示すフローチャートである。
図11】診療所と製造施設が、カスタム器具製造プロセス全体を通じて情報を伝達する、例示的なコンピュータ環境を示すブロック図である。
図12】本開示の一例による、診療所で実施されるプロセスを示すフローチャートである。
図13】ネットワークを介して製造施設に接続されたクライアントコンピューティングデバイスの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
従来の歯科修復技術は、多くの場合に反復的な工程を含み、医師の技能及び経験に与るところが大きいが、本開示は、カスタムのモールドの利用によって、従来の歯科修復技術を用いて概ね可能なものよりも正確かつ迅速な患者の口腔内での歯科修復物の形成を容易にし得る技術を含む。
【0015】
開示する技術は、口腔内スキャナ又は従来の印象若しくは模型のスキャニングによって患者の3次元歯列を取り込むことを含む。歯科修復物用のカスタム器具は、患者の3次元(3D)歯列に基づくモールドを含み得る。本開示の技術は、従来の歯科修復技術と比較して時間的及び技能的要件が低い高品質の歯科修復を容易にし得る。
【0016】
図1図6は、患者の口腔内で歯牙102の歯科修復物を形成するためのカスタム器具10を示す。特に、図1は、ワンピース状モールドボディ12及びプラグ38を含む、カスタム器具10の構成要素を示す。図2は、歯科修復前の、カスタム器具10の構成要素及び患者の口腔の一部分を示す。図3は、歯科修復を容易にするために患者の口腔内で組み立てられるカスタム器具10の構成要素を示す。図4は、図3の断面図である。図5は、カスタム器具10による歯科修復後の、カスタム器具10の構成要素及び患者の口腔の一部分を示す。図6は、歯牙102の種々の面に対応する表面を含む、カスタム器具10の下面を示す。一部の例では、カスタム器具10は1本の歯牙のベニアモールドに相当してもよい及び/又は歯牙102内のう蝕104を補修するために使用されてもよい。
【0017】
カスタム器具10は、1本の歯牙の歯科修復を容易にするように構成されているが、カスタム器具10は単なる一例であり、カスタム器具10に関して記載される手法は、例えば、1つのモールドボディ構成要素内に複数のモールドボディを含むことにより、2本の歯牙又は2本を超える歯牙の補修を容易にするカスタム器具に容易に適用できる。
【0018】
カスタム器具10は、歯牙102とのカスタマイズされた嵌め合いを提供するワンピース状モールドボディ12を含む。モールドボディ12は、歯牙101とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する任意のカスタマイズされた表面15aと、歯牙103とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する任意のカスタマイズされた表面15bと、を更に含む。カスタマイズされた表面15a、15bは更に、モールドボディ12を患者の口腔内の所定の位置に固定及び位置合わせし、歯牙102の精密なカスタマイズされた歯科修復を容易にしてもよい。モールドボディ12は更に、患者の歯肉110と位置合わせしてもよい。
【0019】
カスタム器具10は、モールドキャビティに歯科修復材料を送達するための注入ポート36を更に含み、モールドキャビティは歯牙102のベニア及び又は窩洞104により示される欠損歯牙構造の補修に相当してもよい。ポート36は、咬合面18に隣接するモールドキャビティへの歯科修復材料の注入を受け入れるように構成されている。本明細書で使用する場合、「咬合面」という用語は、臼歯、及び前歯の切端面(例えば、切縁)を含む任意の歯牙の咀嚼面を意味し得る。このように、本明細書で使用する場合、咬合面という用語は、任意の特定の歯牙(単数)又は歯牙(複数)を示すものではない。
【0020】
に隣接するモールドキャビティに歯科修復材料を注入後、プラグ先端面39がポート36内に配置されるように、プラグ38が配置されてもよい。プラグ38は、修復された歯牙102の表面に対応する画定された形状を提供するプラグ先端面39を更に含む。例えば、プラグ先端面39はデジタルスキャンデータを基に作製してもよい。
【0021】
カスタム器具10は歯牙102と組み合わせることで、歯牙102の欠損歯牙構造及び/又は歯牙102のベニアを覆い囲むモールドボディ12のモールドキャビティを形成する。モールドボディ12を歯牙102上に配置することにより、歯科修復材料がモールドキャビティ内に配置され、キャビティ104の欠損歯牙構造の形態を取ってもよい。
【0022】
歯牙102の補修は、歯牙102と位置合わせするようにモールドボディ12を配置した後、モールドキャビティに歯科修復材料を充填することによって行われる。欠損歯牙構造は、隣接歯間歯牙構造、咬合側歯牙構造、頬面側歯牙構造及び/又は舌側歯牙構造のいずれかの組み合わせを含む、歯牙102のいずれの部分を含んでもよい。モールドボディ12の内部表面はそれぞれ、対応する歯牙102の少なくとも1つの外部表面と対応するモールドキャビティの一部分を含む。少なくとも外部表面は、対応する歯牙102の頬面側面、舌側面、隣接歯間面及び/又は咬合面を含んでもよい。一部の例では、モールドキャビティは、対応する歯牙102の頬面側面、舌側面、隣接歯間面及び/又は咬合面の歯科ベニア修復を容易にしてもよい。
【0023】
カスタム器具10は、患者の歯牙及び口腔のデジタルモデルに基づき形成することができ、このデジタルモデルは、マルチチャネルスキャナなど、口内3次元スキャンによって作製し得るものである。一つの詳細な例において、カスタム器具10は、デジタルモデルに基づくソリッドモデリングソフトウェアなど、CADソフトウェアを使用してデジタル設計し得る。カスタム器具10は、歯牙102(例として、隣接する大臼歯を意味してもよい)及び隣在歯牙101、102の一部分に被せて嵌めるように設計した。続いて、歯牙101、102、103の歯牙構造、並びに充填ポート36をモールドブロックからデジタル的に減じてもよい。あるいは、ソフトウェア上で歯牙構造の反転像を反転させて、モールドブロックを画定してもよい。充填ポート36は、窩洞104に隣接するなど、整える工程で最終的に除去される歯牙102の領域に位置してもよい。充填ポート36は、充填時の歯科修復材料の注入を可能にするため、市販の歯科修復材料コンピュールの先端を受け入れるような大きさにしてもよい。
【0024】
CADソフトウェア上の構成要素は、3次元ポイントメッシュファイル又は他のフォーマットに変換して、3Dプリンタ、CNCフライス、CAD/CAMフライスプロセスなどによる作製を容易にしてもよい。組み付けを容易にするため、方向決めマーク(例えば、各器具構成要素の遠心側端部にある着色マーク)が器具構成要素に加えられてもよい。作製には、任意に、硬化(例えばUVオーブンで)、例えばアルコール溶液による洗浄、及び/又は種々の構成要素の組み付け、歯面の研磨、修復用歯科材料を注入する間の修復範囲の視界を向上させる透明アクリルによるなどのコーティングなど、他の工程が含まれ得る。加えて、修復用歯科材料と接触することが予想される器具構成要素の表面は、任意に、離型剤層(例えば薄い石油ゼリー層)で被覆することができる。
【0025】
図2図5は、カスタム器具10を使用して、患者の口腔内で歯牙102の歯科修復物を形成することを示す。図2は、歯牙101、102及び103、並びに歯肉110を含む患者の口腔の一部分を示す。歯牙102は、歯牙102の歯冠に窩洞104を含む。図示されるように、窩洞104は、器具10を用いた歯科修復が容易となるよう損傷した歯質を除去するため、病的な歯牙構造の除去、例えば、ドリル切削又は他の整える工程によって、歯科修復のために以前に整えられたう蝕であった可能性がある。一部の例において、う蝕物質の形状はカスタム器具10のデザインの助けとなり得るため、又は歯牙を整える前に取得したスキャンデータを利用することで修復工程が短縮される場合があるため、歯牙102からう蝕物質を除去する前に患者の口腔の3D画像を撮影してもよい。異なる例では、スキャンデータはここ12か月以内など近時に取得してもよく、又はそれ以前、例えば、1年以上、5年以上、又は更には、10年以上前に取得してもよい。こうした古いスキャンデータは経時的な歯牙の摩耗を示すものであってもよく、そのような歯牙の摩耗を補修するための修復を容易にしてもよい。経時的な複数のスキャンによるスキャンデータはまた、歯牙の摩耗を検出され、適切な修復を容易にするために使用されてもよい。
【0026】
カスタム器具10を使用した歯牙102の例示的な修復方法を、以下のとおり記載する。図3に示すように、モールドボディ12は、隣接歯間部16a、16bが歯牙101、102、103の間に延びるように、歯牙102上の所定の位置に配置される。モールドボディ12は、患者の口腔内において、カスタマイズされた、確実な配置を提供する。種々の例では、カスタム器具10の構成に応じて、モールドボディ12は歯牙102の舌側、咬合側及び/又は頬面側に配置されてもよい。
【0027】
図4に最も良く示されるように、歯科修復材料112は、歯牙102とモールドボディ12とによって形成されたモールドキャビティ内に配置される。歯牙を整える工程は歯科修復材料の推奨最大硬化深さを超える深さで形成されてもよいこと、又は窩洞のより深層では修復材料の異なる色調、粘性若しくは他の性質が望まれることから、歯科修復材料の基層を整えられた部分の深部に任意選択的に積層し、例えば、XL 3000硬化ライトで歯科修復材料を光硬化させることができる。モールドボディ12及びプラグ38を含む器具10の構成要素は、光硬化を容易にするために透明又は半透明であってもよい。こうした例では、歯科修復材料112は歯科修復材料の1つより多い層に相当する。
【0028】
いずれにしても、歯牙102とモールドボディ12とによって形成されたモールドキャビティ内における歯科修復材料112の形成後、モールドボディ12は患者の口腔から取り出される。図5に示されているように、ここでは窩洞104は充填されており、充填物の形状は歯牙102の咬合面に一致している。このように、モールドボディ12は患者の口腔とのカスタマイズされた嵌め合いを提供するのみならず、歯牙102の欠損歯牙構造の補修及び/又は歯牙102へのベニアの適用を容易にするためのカスタマイズされたモールドキャビティも提供する。
【0029】
モールドボディ12によって提供されるカスタマイズされた嵌め合いを図6に関して記載する。図6に示されているように、ワンピース状モールドボディ12は、歯牙101、102、103のそれぞれに対するカスタマイズされた表面を含む。特に、表面15aは、歯牙101と嵌合するようにカスタマイズされており、表面13は、歯牙102と嵌合するようにカスタマイズされており、表面15bは、歯牙103と嵌合するようにカスタマイズされている。表面13は、歯牙102の1つより多い表面とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する。特に、表面13は、歯牙102の咬合面と対応する咬合面32と、歯牙102の遠心隣接部と対応する遠心隣接面35と、歯牙102の近心隣接部と対応する近心隣接面31と、歯牙102の頬側面と対応する頬側面34と、歯牙102の舌側面に対応する舌側面33と、を含む。モールドボディ12の表面13の領域のそれぞれは、患者の口腔の3次元スキャンデータ、及び歯牙102の歯科修復物のコンピュータ設計に基づいてもよい。
【0030】
歯牙102の遠心隣接部と対応する遠心隣接面35、歯牙102の近心隣接部と対応する近心隣接面31、及び歯牙102の舌側面に対応する舌側面33は、歯牙102上におけるカスタム器具10の正確な位置決めを容易にするためにモールドボディ12のこれら領域が歯牙102の舌側面と係合してカスタム器具10を歯牙102にスナップ留めすることを可能にしてもよいという点で、ワンピース状モールドボディ12のラップ部に相当してもよい。
【0031】
図5から分かるように、ポート36は、任意選択的に、咬合面32及び頬側面34に隣接して配置されている。ポート36の位置はモールドキャビティの位置に応じて調整してもよいが、ポート36を咬合面32及び/又は頬側面34に隣接して配置することで、他の場所に比べて、医師による歯科修復処置中のより簡単なアクセスを全般的に容易にしてもよい。医師は、また、モールド12のデザイン前に、ポート36の位置を、余分な材料の蓄積又は不要な歯牙構造の剔削を目的とした領域として指示することができる。
【0032】
モールドボディ12のカスタマイズされた嵌め合いは、歯科修復材料の最中、血液、歯肉溝滲出液、又は唾液から歯牙102を隔離する機能を更に果たしてもよい。例えば、モールドボディ12の部分は歯牙101、102、103の表面及び歯肉110と嵌合して血液、歯肉溝滲出液、及び唾液などの体液からモールドキャビティを保護してもよい。加えて、モールドボディ12は、患者の口腔内にモールドボディ12を挿入時、歯肉110を強制的に後退させる及び/又は歯牙101、102、103の分離を補助する機能を更に果たしてもよい。例えば、モールドボディ12の隣接歯間部16a、16bは、隣接する歯牙101、102、103を強制的に分離する機能を果たしてもよい。このように、カスタム器具10は患者の口腔の3次元モデルに基づいてもよいが、カスタム器具10の種々の特徴部は、修復処置の最中、歯肉110及び/又は歯牙101、102、103の位置を一時的に変更するように選択してもよい。
【0033】
任意選択的に、モールドボディ12は、カスタマイズされた歯肉面を含め、歯科修復用の隔離マトリックスに相当する特徴部を提供するように更に構成されていてもよい。このように、モールドボディ12は、歯肉下又は隠れた歯間腔内に延びる特徴部を含んでもよい。これら延長部のデータは、解剖学的平均値、又はX線、超音波、MRIなどの患者の特定データに基づき得る。器具は、嵌合寸法が過小であることによって患者の歯列の実際の幾何学的形状に対する緊密な封鎖が生じるようにデザインすることのできるエラストマー材料を組み込み得る。用いられる材料はまた、修復されている歯牙構造から水、唾液及び他の流体を離すために親水性が異なってもよい。マイクロ流体チャネル、バキュームラインアタッチメント及びバイトブロックも同様に組み込むことができる。
【0034】
ワンピース状モールドボディ12を含むカスタム器具10は、1本の歯牙102を補修するための単一のモールドキャビティに関して記載されているが、1つより多いモールドキャビティを形成することにより、カスタム器具10に関して記載する技術を、1本より多い歯牙の補修を容易にするために構成されたカスタム器具に容易に適用してもよい。こうした例では、修正されたカスタム器具10は、歯牙101などの隣接する歯牙の第2の咬合面と対応する第2の咬合面を形成している第2の咬合側部分と、隣接する歯牙の第2の近心隣接面と対応する第2の近心隣接面を形成している第2の近心隣接部分と、隣接する歯牙の第2の遠心隣接面と対応する第2の遠心隣接面を形成している第2の遠心隣接部分と、を含む、ワンピース状モールドボディを含んでもよい。修正されたカスタム器具10のワンピース状モールドボディは、2つの隣接する歯牙(例えば、歯牙101及び歯牙102)と組み合わせることで、隣接する歯牙のそれぞれの欠損歯牙構造を覆い囲む別個のモールドキャビティを形成するように構成されていてもよい。
【0035】
図7図9は、患者の口腔内で2つの隣接する歯牙120a、120b(集合的に「歯牙120」)の歯科修復物を形成するための別のカスタム器具210を示す。特に、図7は、ワンピース状モールドボディ構成要素211及び支持部材219を含む、カスタム器具210の構成要素を示す。図8は、カスタム器具210の構成要素及び患者の口腔の一部分を示す。図9は、歯科修復を容易にするために患者の口腔内で組み立てられるカスタム器具210の構成要素を示す。カスタム器具210は、2つの隣接する歯牙の歯科修復を容易にするように構成されているが、カスタム器具210は単なる一例であり、カスタム器具210に関して記載される手法は、1本の歯牙又は2本を超える歯牙の補修を容易にするカスタム器具に容易に適用できる。
【0036】
カスタム器具210は、ワンピース状モールドボディ構成要素211を含み、ワンピース状モールドボディ構成要素211は、第1のモールドボディ212a及び第2のモールドボディ212b(集合的に「モールドボディ212」)を含む。モールドボディ212はそれぞれ、患者の少なくとも1本の歯牙とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する。図8に示すように、モールドボディ212aは、歯牙120aとのカスタマイズされた嵌め合いを提供し、モールドボディ212bは、歯牙120bとのカスタマイズされた嵌め合いを提供する。モールドボディ構成要素211は、歯牙126とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する任意のカスタマイズされた表面215aと、歯牙128とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する任意のカスタマイズされた表面215bと、を更に含む。カスタマイズされた表面215a、215bは更に、モールドボディ212を患者の口腔内の所定の位置に固定及び位置合わせし、歯牙120の精密なカスタマイズされた歯科修復を容易にしてもよい。モールドボディ構成要素211は更に、患者の歯肉110と位置合わせしてもよい。
【0037】
任意選択的に、モールドボディ212は、カスタマイズされた歯肉面を含め、歯科修復用の隔離マトリックスに相当する特徴部を提供するように更に構成されていてもよい。このように、モールドボディ212は、歯肉下又は隠れた歯間腔内に延びる特徴部を含んでもよい。これらの延在部のデータは、解剖学的平均値、又は患者X線データに基づくことができる。器具は、嵌合寸法が過小であることによって患者の歯列の実際の幾何学的形状に対する緊密な封鎖が生じるようにデザインすることのできるエラストマー材料を組み込み得る。用いられる材料はまた、修復されている歯牙構造から水、唾液、及び他の流体をそらすように親水性が異なってもよい。マイクロ流体チャネル、バキュームラインアタッチメント及びバイトブロックも同様に組み込むことができる。
【0038】
モールドボディ212のカスタマイズされた嵌め合いは、歯科修復材料の最中、血液又は唾液から歯牙120を隔離する機能を更に果たしてもよい。例えば、モールドボディ212の部分は歯牙120、126、128の表面及び歯肉110と嵌合して血液及び唾液などの体液からモールドキャビティを保護してもよい。加えて、モールドボディ212は、患者の口腔内にモールドボディ構成要素211を挿入時、歯肉110を強制的に後退させる及び/又は歯牙120、126、128を分離する機能を更に果たしてもよい。例えば、モールドボディ212の隣接歯間部216は、隣接する歯牙を強制的に分離する機能を果たしてもよい。このように、カスタム器具210は患者の口腔の3次元モデルに基づいてもよいが、カスタム器具210の種々の特徴部は、修復処置の最中、歯肉110及び/又は歯牙120、126、128の位置を一時的に変更するように選択してもよい。
【0039】
カスタム器具210は任意の支持体構成要素219を更に含む。支持体構成要素219は、第1の支持体220a及び第2の支持体220b(集合的に「支持体220」)を含む。第1の支持体220a及び第2の支持体220bは、スナップ嵌合接続により、モールドボディ212と係合可能であるとともに、モールドボディ212に支持を提供する。例えば、支持体220は、モールドキャビティのいかなる部分も提供しなくてよく、その代わり、モールドボディ212を含むモールドボディ構成要素211を所定の位置に固定するのを単に補助してもよい。支持体220は、モールドボディ212の対応するスナップ嵌合要素213と嵌合するスナップ嵌合要素221を含む。
【0040】
モールドボディ構成要素211及び支持体構成要素219は両方とも、患者の歯牙及び患者の歯肉110と位置合わせする表面を含んでもよい。例えば、上述のように、モールドボディ212aは、歯牙120及び歯牙126の両方と位置合わせする特徴部を含んでもよく、その一方、モールドボディ212bは、歯牙120及び歯牙128と位置合わせする特徴部を含んでもよい。同様に、支持体220aは、歯牙120及び歯牙126と位置合わせする特徴部を含んでもよく、その一方、支持体220bは、歯牙120及び歯牙128と位置合わせする特徴部を含んでもよい。支持体構成要素219は、歯牙126とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する任意のカスタマイズされた表面225aと、歯牙128とのカスタマイズされた嵌め合いを提供する任意のカスタマイズされた表面225bと、を更に含む。カスタマイズされた表面225a、225bは、モールドボディ212を患者の口腔内の所定の位置に更に固定及び位置合わせし、歯牙120の精密なカスタマイズされた歯科修復を容易にしてもよい。支持体構成要素219は更に、患者の歯肉110と位置合わせしてもよい。このように、モールドボディ212及び支持体220は、歯牙120、126、128の対応する表面及び患者の歯肉110と嵌合する複数のカスタマイズされた表面を提供してもよい。モールドボディ構成要素211と支持体構成要素219との組み合わせにより、モールドボディ212を歯牙120と正確に位置合わせして歯牙120の歯科修復を容易にするための、患者の口腔内における確実な嵌合を提供する。
【0041】
支持体220はモールドキャビティのいずれの部分も形成しないものとして記載されているが、他の例では、支持体220は、モールドボディ212と組み合わせることで1つ以上のモールドキャビティを形成するように容易に修正してもよい。こうした例では、修正された支持体220もまた、モールドボディとみなされるべきである。
【0042】
モールドボディ212は、モールドキャビティに歯科修復材料を送達するための注入ポート226a、226b(集合的に「ポート226」)を更に含む。ポート226は、歯牙120に隣接するモールドキャビティへの歯科修復材料の注入を受け入れるように構成されている。モールドボディ212は、充填ポート226を通じて材料が注入される際、空気及び余分な歯科材料がモールドキャビティを出ることを可能にするためのベントポート227a、227b(集合的に「ベントポート227」)を更に含む。
【0043】
カスタム器具210は、歯牙120と組み合わせることで、モールドボディ212の2つの異なるモールドキャビティを形成する。モールドボディ212のモールドキャビティは、歯牙120の欠損歯牙構造121a、121b(集合的に「歯牙構造121」)及び/又は歯牙120の1つ若しくは両方のベニアを覆い囲む。モールドボディ構成要素211を歯牙120上に配置することにより、歯科修復材料がモールドキャビティ内に配置され、歯牙構造121の形態を取ってもよい及び/又は歯牙120の表面にベニアを施してもよい。
【0044】
歯牙120の補修は、歯牙120と位置合わせするようにモールドボディ212を配置した後、モールドキャビティに歯科修復材料を充填することによって行われる。任意選択的に、歯牙102と位置合わせするようにモールドボディ12を配置する前に、歯牙及び/又はモールドキャビティに充填材料を適用してもよい。こうした例では、モールドボディを着座させるプロセスにより修復材料を所望の形状に形作る。欠損歯牙構造121は、隣接歯間歯牙構造、咬合側歯牙構造、頬面側歯牙構造及び/又は舌側歯牙構造のいずれかの組み合わせを含む、歯牙120のいずれかの部分を含んでもよい。しかし、図7図9の例では、欠損歯牙構造121は歯牙120の頬面側に示されている。モールドボディ212の内部表面はそれぞれ、対応する歯牙120の少なくとも1つの外部表面と対応するモールドキャビティの一部分を含む。少なくとも外部表面は、対応する歯牙120の頬面側面、舌側面、隣接歯間面及び/又は咬合面を含んでもよい。一部の例では、モールドキャビティは、対応する歯牙120の頬面側面、舌側面、隣接歯間面及び/又は咬合面の歯科ベニア修復を容易にしてもよい。
【0045】
カスタム器具210は、患者の歯牙及び口腔のデジタルモデルに基づき形成することができ、このデジタルモデルは、マルチチャネルスキャナなど、口内3次元スキャンによって作製し得るものである。一つの詳細な例において、カスタム器具210は、デジタルモデルに基づくソリッドモデリングソフトウェアなど、CADソフトウェアを使用してデジタル設計し得る。カスタム器具210は、歯牙120(例として、隣接する切歯を意味してもよい)及び隣在歯牙126、128の一部分に被せて嵌めるようにデザインした。続いて、歯牙120、126、128の歯牙構造、並びに充填ポート226及び任意選択的なベントポート227をモールドブロックからデジタル的に減じてもよい。あるいは、ソフトウェア上で歯牙構造の反転像を反転させて、モールドブロックを画定してもよい。充填ポート226は、歯牙のうち整える過程で最終的に取り除かれる領域に対応する咬合側セクションの領域に、例えば歯牙120のモールドキャビティに隣接して配置されてもよい。充填ポート226は、充填時の歯科修復材料の注入を可能にするため、市販の歯科修復材料コンピュールの先端を受け入れるような大きさにしてもよい。ベントポート227は充填ポート226より直径を小さく作成してもよい。
【0046】
デジタルモデル内において、モールドブロック構成は、2つのセクション(モールドボディ構成要素211及び支持体構成要素219)にセグメント化され、幾何学的干渉のない、来たるべき歯牙への器具構成要素の組み付けを容易にしてもよい。デジタルモデル内において、モールドボディ構成要素211及び支持体構成要素219に加えてハンドル特徴部229が含まれ、器具210を使用する歯科修復の最中の、止血鉗子又はピンセットによるこの部分の把持を容易にしてもよい。
【0047】
CADソフトウェア上の構成要素は、3次元ポイントメッシュファイル又は他のフォーマットに変換して、3Dプリンタ、CNCフライス、CAD/CAMフライスプロセスなどによる作製を容易にしてもよい。組み付けを容易にするため、方向決めマーク(例えば、各器具構成要素の遠心側端部にある着色マーク)が器具構成要素に加えられてもよい。作製には、任意に、硬化(例えばUVオーブンで)、例えばアルコール溶液による洗浄、及び/又は種々の構成要素の組み付け、歯面の研磨、修復用歯科材料を注入する間の修復範囲の視界を向上させる透明アクリルによるなどのコーティングなど、他の工程が含まれ得る。加えて、修復用歯科材料と接触することが予想される器具構成要素の表面は、任意に、離型剤層(例えば薄い石油ゼリー層)で被覆することができる。
【0048】
図10は、患者の口腔内で歯科修復物を形成するための例示的技術を示すフローチャートである。まず、医師が、モールドボディ12又はモールドボディ構成要素211などのモールドを、患者の歯牙の一部分上に配置する(302)。歯牙は、欠損歯牙構造を含む、又はう蝕除去プロセスにおいて通常行われるように、欠損歯牙構造の作成のために整えられている、のいずれかである。モールドは、歯牙と組み合わせることで、歯牙の欠損歯牙構造を覆い囲むモールドキャビティを形成する。次に、医師がモールドキャビティ内に歯科修復材料を注入する(304)。医師はモールドキャビティ内で歯科修復材料を硬化させて歯牙を再形成し、これには、化学線を照射して歯科修復材料を硬化させることが含まれてもよい(306)。医師が患者の歯牙からモールドを取り外すと、患者の歯牙上に、モールドキャビティによって画定された形状の歯科修復物が残る(308)。
【0049】
図11は、診療所344と製造施設348が、患者342用のカスタム器具10及び/又はカスタム器具210の製造プロセス全体を通じて情報を伝達する、例示的なコンピュータ環境340を示すブロック図である。まず、診療所344の歯科医が任意の適切な画像化技術を使用して患者342の歯科構造の1つ以上の画像を生成し、デジタル歯科構造データ346(例えば、患者342の歯構造、及び任意選択的に、歯肉110などの口腔組織のデジタル表現)を生成する。例えば、医師は、デジタル走査され得るX線画像を生成してもよい。あるいは、医師は、患者の歯構造のデジタル画像を、例えば、従来のコンピュータ断層撮影(computed tomography、CT)、レーザ走査、口腔内走査、歯科印象のCTスキャン、印象から注入された歯科用模型の走査、超音波計測、磁気共鳴イメージング(magnetic resonance imaging、MRI)、又は3Dデータ取得の任意の他の適切な方法を使用して取り込んでもよい。他の実施形態では、デジタル画像は、Brontes Technologies,Inc.(Lexington、MA)によって開発され、参照により本明細書中に組み込まれる国際公開第2007/084727号(Boerjesら)に記載されているアクティブ波面サンプリング(active wavefront sampling)を用いる口腔内スキャナなどの手持式口腔内スキャナを使用して提供してもよい。また、他の口腔内スキャナ又は口腔内接触プローブを使用することもできる。別の選択肢として、患者の歯の陰印象を走査することによってデジタル構造データ346を提供してもよい。更に別の選択肢として、患者の歯の陽の物理的モデルを画像化することにより、又は患者の歯のモデルに対し接触プローブを使用することにより、デジタル構造データ346を提供してもよい。スキャニングのために使用される模型は、例えば、アルギネート又はポリビニルシロキサン(PVS)などのような適切な印象材から患者の歯列の印象をキャスティングし、キャスティング材料(例えば、歯科石膏又はエポキシ樹脂など)を印象の中へ注ぎ、キャスティング材料を硬化させることによって作製され得る。上記のものを含む任意の好適な走査技法を用いてモデルを走査してもよい。他の可能な走査方法は、参照により本明細書中に組み込まれる米国特許出願公開第2007/0031791号(Cinaderら)に記載されている。
【0050】
歯の露出面を走査してデジタル画像を提供することに加え、歯列の隠れた特徴部、例えば、患者の歯根、及び患者の顎骨を画像化することが可能である。いくつかの実施形態では、デジタル歯牙構造データは、これら特徴部のいくつかの3D画像を用意し、続いて、それらを共に「縫い合わせる」ことによって形成される。これらの異なる画像は、同じ画像化技術を使用して提供される必要はない。例えば、CTスキャンで提供される歯根のデジタル画像が、口内可視光線スキャナで提供される歯冠のデジタル画像と一体化されてもよい。2D歯科画像の3D歯科画像とのスケーリング及びレジストレーションについては、参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第6,845,175号(Kopelmanら)及び同じく参照により本明細書中に組み込まれる米国特許出願公開第2004/0029068号(Baduraら)に記載されている。参照により本明細書中に組み込まれる発行済みの米国特許第7,027,642号(Imgrundら)及び同じく参照により本明細書中に組み込まれる米国特許第7,234,937号(Sachdevaら)は、種々の3D源から提供されたデジタル画像を一体化する技術の使用について記載している。したがって、用語「画像化」は、これが本明細書において使用される際、視覚的に明らかな構造の、通常の写真画像化に限定されず、視界から隠れた歯科構造の画像化をも含む。歯科構造としては、歯列弓の1つ又は複数の歯の歯冠及び/もしくは歯根、歯肉、歯周靭帯、歯槽骨、皮質骨、インプラント、人工歯冠、ブリッジ、ベニア、義歯、歯科装具、又は治療前、治療中若しくは治療後に歯列の一部とみなされ得る任意の構造物の任意の一部分が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0051】
デジタル歯牙構造データ346を生成するために、コンピュータは、画像化システムからの未加工データを、使用可能なデジタルモデルに変換しなければならない。例えば、コンピュータが受け取る歯の形状を示す未加工データにおいて、未加工データは、多くの場合、3D空間内の点群にすぎない。通常、この点群を表面に構成し、1つ又は複数の歯、歯肉組織及び他の周囲口腔構造を含む患者の歯列の3Dオブジェクトモデルを作成する。このデータが歯科診断及び治療において有用となるために、コンピュータは歯列表面を「セグメント化」し、個々の歯牙を表す1つ又は複数の個別の移動可能な3D歯牙オブジェクトモデルを生成してもよい。コンピュータはこれら歯牙モデルを歯肉から別個のオブジェクトへと更に分離してもよい。セグメント化によって、使用者は、歯群の配列を一群の個々のオブジェクトとして特性評価し、操作することが可能となる。
【0052】
デジタル歯科構造データ346の生成後、診療所344はデジタル歯科構造データ346をデータベースの患者記録内に保存してもよい。診療所344は、例えば、複数の患者記録を有するローカルデータベースを更新してもよい。あるいは、診療所344はネットワーク350を通じて中央データベース(任意選択的に製造施設348内の)を遠隔的に更新してもよい。デジタル歯科構造データ346を保存後、診療所344はデジタル歯科構造データ346を製造施設348に電子的に伝達する。あるいは、製造施設348はデジタル歯科構造データ346を中央データベースから取り出してもよい。
【0053】
診療所344は、また、医師の診断と患者342の治療計画とに関する全般的な情報を伝える治療データ347を製造施設348に転送してもよい。いくつかの例では、治療データ347はより具体的であってもよい。例えば、デジタル歯科構造データ346は患者342の歯科構造のデジタル表現であってもよく、診療所344の医師は、デジタル歯科構造データ346を製造施設348に転送する前に、デジタル表現を精査し、患者342の個々の歯牙に関するベニア、歯冠、又は充填物の場所を含む所望の補修を示してもよい。医師及び製造施設はまた、適切な治療計画を得るために反復プロセスに従事してもよい。こうした連係は、例えば、3M Oral Careにより提供されるTreatment Management Portalによるデジタル通信によって容易にしてもよい。製造施設348はオフサイトに位置していても、診療所344に位置していてもよい。
【0054】
例えば、臨床的環境において、治療計画及びデジタル設計を、ローカルにインストールされたソフトウェアを使用することで臨床医又は助手が完全に実施できるように、それぞれの診療所344は製造施設348のための独自の設備を含んでもよい。製造は3Dプリンタの使用によって(又は付加製造の他の方法によって)診療所内でも行ってよい。他の例では、遠隔製造施設が患者の3次元スキャンデータを処理し、患者の口腔の3次元スキャンデータに基づき、歯牙の歯科修復物を形成するためのカスタム器具のデザインのためのデジタルモデルを生成してもよい。遠隔製造施設は、その後、歯牙の歯科修復物を形成するためのカスタム器具のデザインのデジタルモデルを診療所344に戻してもよい。
【0055】
3Dプリンタは、カスタム器具の複雑な特徴又は患者342の歯科構造の物理的表現の製造を付加印刷によって可能にする。3Dプリンタは、患者342の本来の歯科構造及び患者342の所望の歯科構造の反復デジタル設計を使用し、患者342の所望の歯科構造を作成するようにカスタマイズされた複数のカスタム器具及び/又はカスタム器具パターンを作成してもよい。製造には、未硬化樹脂を除去し、支持構造を除去する、又は種々の部品を組み立てる後処理を含んでもよく、後処理は、また、臨床的環境において必要な場合があるとともに、また、行われ得る。あるいは、製造はCAD/CAMフライスなどの除去製造によって実施され得る。
【0056】
製造施設348では、患者342の歯牙を修復するために、患者342のデジタル歯科構造データ346を用いてカスタム器具10及び/又はカスタム器具210を組み立てる。その後、製造施設348はカスタム器具10及び/又はカスタム器具210を診療所344に送る。
【0057】
図12は、本開示の一例による、診療所344で実施されるプロセス360を示すフローチャートである。まず、医師が診療所344において、患者342から患者の個人情報及び他の情報を収集し、患者記録を作成する(362)。記載されているように、患者記録は診療所344内に配置されていてもよく、任意選択的に、製造施設348内のデータベースとデータを共有するように構成されていてもよい。あるいは、患者記録は、診療所344にネットワーク350を通じてリモートアクセス可能な製造施設348のデータベース内に、又は製造施設348と診療所344との両方によりリモートアクセス可能なデータベース内に配置されていてもよい。
【0058】
次に、任意の適切な技術を用いて患者342の歯科構造のデジタルデータ346を生成し(364)、これにより、仮想歯科構造を作成してもよい。デジタルデータ346は歯科構造の2次元(2D)画像及び/又は3次元(3D)表示からなってもよい。
【0059】
一例では、歯科構造の3D表示は、Imaging Sciences International,LLC(1910 N Penn Road、Hatfield、PA)から入手可能なi−CAT 3D歯科画像化デバイスなどのコーンビームコンピュータ断層撮影(cone beam computerized tomography、CBCT)スキャナを用いて生成される。診療所344は、CBCTスキャナにより生成した3Dデータ346(放射線画像の形態の)を、診療所344内、又はその代わりに、製造施設348内に配置されたデータベース内に保存する。コンピューティングシステムはCBCTスキャナからのデジタルデータ346(このデータは複数のスライスの形態であってもよい)を処理し、3Dモデリング環境内で操作され得る歯牙構造のデジタル表現を計算する。
【0060】
2D放射線画像が使用される(365)場合、医師は3Dデジタルデータを更に生成(366)してもよい。3Dデータ346は、例えば、患者342の歯牙構造の物理的印象又は模型を形成し、その後、それをデジタル走査することによって生成してもよい。例えば、患者342の歯牙の物理的印象又は模型は、Laser Design,Inc.(Minneapolis、MN)から入手可能なOM−3Rスキャナなどの可視光スキャナを用いて走査してもよい。その代わりとして、医師は、咬合科の3Dデータ346を、患者342の歯牙の口腔内走査又は既存の3D歯牙データを使用することで生成してもよい。一例では、「REGISTERING PHYSICAL AND VIRTUAL TOOTH STRUCTURES WITH PEDESTALS」という名称で、2013年7月23日に発行済みの米国特許第8,491,306号に記載されている、模型又は印象からデジタル走査を形成する方法を使用してもよい。米国特許第8,491,306号はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。同じ又は異なる例において、「DENTAL DIGITAL SETUPS」という名称で、2013年12月5日に公開された米国特許出願公開第2013/0325431号に記載されているような仮想歯牙面及び仮想歯牙座標系を画定するための技術を使用してもよい。米国特許出願公開第2013/0325431号はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。いずれの場合においても、デジタルデータは3Dモデリング環境内にデジタルで位置合わせされ、歯根及び咬合面を含み得る歯構造の複合的なデジタル表現を形成する。
【0061】
一例では、歯牙の咬合面の2D放射線画像及び3Dデジタルデータは、放射線画像及び3Dデジタルスキャンの両方を生成する前に、まず、レジストレーションマーカ(例えば、位置合わせマーカ又は既知の幾何学的形状寸法を有するペデスタル)を患者342の歯牙構造に取り付けることによって位置合わせされる。その後、2D放射線画像及び3Dデジタルデータ内のレジストレーションマーカのデジタル表現は、米国特許第8,491,306号に記載されている位置合わせ技術を用いて、3Dモデリング環境内で位置合わせしてもよい。
【0062】
別の例では、歯牙構造の3Dデジタルデータは歯牙構造の2つの3Dデジタル表現を組み合わせることによって生成される。例えば、第1の3Dデジタル表現は、CBCTスキャナ(例えば、i−CAT3D歯科画像化デバイス)から取得した歯根の比較的低解像度の画像であってもよく、第2の3Dデジタル表現は、患者の歯牙の模型の印象又は可視光(例えば、レーザ)走査の産業用CTスキャンから取得した歯冠の比較的高解像の画像であってもよい。3Dデジタル表現は、3D表示をコンピュータ環境内で操作することを可能にするソフトウェアプログラム(例えば、3D Systems,Inc.(333 Three D Sustems Circle、Rock Hill、SC)から入手可能なGeomagic Studioソフトウェアを用いて位置合わせしてもよく、又はその代わりに、米国特許第8,491,306号に記載されている位置合わせ技術を使用してもよい。
【0063】
次に、3Dモデリングソフトウェアを実行するコンピュータシステムが、患者の歯牙の咬合面、及び任意選択的に歯根構造を含む歯牙構造の合成されたデジタル表現をレンダリングする。モデリングソフトウェアは、医師が3D空間内の歯牙のデジタル表現を患者の歯牙のデジタル表現に対し操作することを可能にするユーザインターフェースを提供してもよい。医師は、コンピュータシステムとの対話によって、例えば、患者342の歯牙の修復領域を選択することによって治療情報を生成する(367)。
【0064】
医師が3D環境内において診断及び治療計画に関する全般的な情報の伝達を完了したときに、コンピュータシステムは患者記録に関連付けられたデータベースを更新し、医師が指定した診断及び治療計画に関する全般的な情報を伝える治療データ347を記録する(368)。その後、治療データ347は、製造施設348がカスタム器具10及び/又はカスタム器具210などの1つ以上のカスタム器具を組み立てるために、製造施設348に中継される(370)。
【0065】
歯科診療所にいる歯科医に関して記載したが、図12に関して記載した工程の1つ以上は、製造施設348にいるユーザなど遠隔ユーザによって実施されてもよい。例えば、歯科医は放射線画像データと患者の印象又は模型とを製造施設348に送信するのみであってもよく、製造施設348で、ユーザがコンピュータシステムと対話し、3Dモデリング環境内において治療計画を策定する。任意選択的に、3Dモデリング環境内における治療計画のデジタル表現は、その後、診療所344の歯科医に送信されてもよく、歯科医は治療計画を精査し、自身の承認を返送するか所望の変更を示すかのいずれかであってもよい。更なるオプションは、製造施設が器具のデジタル設計を作成し、このデジタル設計がその後診療所に戻され、診療所内のシステム(例えば、3Dプリンタ又はフライス)で製造されることである。
【0066】
図13は、ネットワーク350を介して製造施設348に接続されたクライアントコンピューティングデバイス380の一例を示すブロック図である。図示される例では、クライアントコンピューティングデバイス380は、モデリングソフトウェア382の動作環境を提供する。モデリングソフトウェア382は、患者342の歯牙群の3D表示をモデリングし、かつ描画するためのモデリング環境を提供する。図示される例では、モデリングソフトウェア382は、ユーザインターフェース384と、モールドキャビティモジュール386と、レンダリングエンジン388と、を含む。
【0067】
ユーザインターフェース384は、患者342の歯牙の3D表示を視覚的に表示するグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を提供する。加えて、ユーザインターフェース384は、診療所344(図11)の医師389からの入力を、例えば、キーボード及びポインティングデバイスを介して受信し、例えば、補修する部分を選択するために、並びに/又はカスタム器具10及び/若しくはカスタム器具210により提供される患者342の歯牙の外部補修済み表面を画定するモールドキャビティの表面を調整するために、モデル内の患者342の歯牙を操作するためのインターフェースを提供する。
【0068】
モデリングソフトウェア382はネットワークインターフェース381を通じて製造施設348にアクセス可能であってもよい。モデリングソフトウェア382はデータベース390と対話して、治療データ392、患者342の歯構造に関する3Dデータ394、及び患者データ396などの様々なデータにアクセスする。データベース390は、データ格納ファイル、ルックアップテーブル、又は1つ又は複数のデータベースサーバで実行されるデータベース管理システム(DBMS)を含む、様々な形態で提示されてもよい。データベース管理システムは、リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)、階層型データベース管理システム(HDBMS)、多次元データベース管理システム(MDBMS)、オブジェクト指向データベース管理システム(ODBMS若しくはOODBMS)、又はオブジェクトリレーショナルデータベース管理システム(ORDBMS)であってもよい。データは、例えば、マイクロソフト社(Microsoft Corporation)製のSQLサーバなど、単一のリレーショナルデータベース内に格納されてもよい。データベース390は、クライアントコンピュータデバイス380のローカルとして示されているが、クライアントコンピューティングデバイスからリモートに位置し、公共ネットワーク又は私設ネットワーク、例えばネットワーク350を介してクライアントコンピューティングデバイスに結合してもよい。
【0069】
治療データ392は、医師389によって選択されて、3Dモデリング環境内に配置される、患者342の歯牙の診断及び又は修復情報を表す。
【0070】
患者データ396は、医師389に関連する1人以上の患者の一群、例えば、患者342を表す。例えば、患者データ396は、各患者に関する氏名、出生日、及び歯科疾病歴のような一般的な情報を特定する。
【0071】
レンダリングエンジン388は、3Dデータ394にアクセスしてレンダリングし、ユーザインターフェース384により医師389に提示される3D図を生成する。より具体的には、3Dデータ394は、3D環境内で各歯牙(任意選択的に歯根を含む)及び顎骨を表す3Dオブジェクトを定義する情報を含む。レンダリングエンジン388は各オブジェクトを加工し、3D環境内で医師389の視点に基づき、3D三角メッシュをレンダリングする。ユーザインターフェース384は、レンダリングされた3D三角メッシュを医師389に対して表示し、医師389が3D環境内で視点を変更し、オブジェクトを調節することを可能にする。
【0072】
2012年6月5日に発行済みの「PLANAR GUIDES TO VISUALLY AID DENTAL APPLIANCE PLACEMENT WITHIN A THREE−DIMENSIONAL(3D)ENVIRONMENT」という名称の米国特許第8,194,067号、及び2010年6月8日に発行済みの「USER INTERFACE HAVING CROSS SECTION CONTROL TOOL FOR DIGITAL DENTALS」という名称の米国特許第7,731,495号は、本明細書中に記載される技術と共に使用され得るユーザインターフェースを有するコンピュータシステム及び3Dモデリングソフトウェアの他の例について記載している。このそれぞれはその全体が参照により組み込まれる。
【0073】
クライアントコンピューティングデバイス380は、モデリングソフトウェア382を保存し、かつ実行するために、プロセッサ383とメモリ385とを含む。メモリ385は、任意の揮発性又は不揮発性ストレージ要素を意味してもよい。例としては、シンクロナスダイナミックランダムアクセスメモリ(SDRAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、電気的消去可能読み出し専用メモリ(EEPROM)及びフラッシュメモリなどのランダムアクセスメモリ(RAM)を含む。例としては、また、ハードディスク、磁気テープ、磁気又は光データストレージ媒体、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、Blu−rayディスク、及びホログラフィックデータストレージ媒体などの不揮発性ストレージを含んでもよい。
【0074】
プロセッサ383は、汎用マイクロプロセッサ、特別設計のプロセッサ、特定用途用集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ディスクリート論理回路のコレクション、又は本明細書中に記載される技術を実行することができる任意の種類の処理デバイスなどの1つ又は複数のプロセッサを意味する。一例では、メモリ385は、プロセッサ383によって実行されて、本明細書中に記載される技術を実行するプログラム命令(例えば、ソフトウェア命令)を格納してもよい。他の例では、技術はプロセッサ383の特別にプログラムされた回路によって実行してもよい。これら又は他の手法では、プロセッサ383は、本明細書中に記載される技術を実行するように構成されていてもよい。
【0075】
クライアントコンピューティングデバイス380は、患者の3D歯牙構造のデジタル表現と、任意選択的に、治療データ392及び/又は患者データ396とを製造施設348のコンピュータ370にネットワーク350を通じて送信するように構成されている。コンピュータ370は、ユーザインターフェース372を含む。ユーザインターフェース372は、歯のデジタルモデルの3D表示を視覚的に表示するGUIを提供する。加えて、ユーザインターフェース372は、患者の3D歯牙構造のデジタル表現内の患者の歯牙を操作するための、例えば、キーボード及びポインティングデバイスによる入力をユーザから受け取るためのインターフェースを提供する。
【0076】
コンピュータ370は、寸法及び形状カスタム器具を決定するように更に構成されていてもよく、カスタム器具の寸法及び形状は、1つ以上のモールドボディ及びモールドキャビティを提供するように構成されている患者の1本以上の歯牙を補修する。コンピュータ370は、カスタム器具の製造のために、カスタム器具の寸法及び形状を自動製造システム374に提供してもよい。
【0077】
クライアントコンピューティングデバイス380及びコンピュータ370は例示的なコンピュータシステムの単なる概念的な表現である。いくつかの例では、クライアントコンピューティングデバイス380及び/又はコンピュータ370に関して記載した機能を単一のコンピューティングデバイスに組み合わせてもよく、コンピュータシステム内の複数のコンピューティングデバイス間で分散させてもよい。例えば、本明細書中に記載されるカスタム器具のデジタル設計にクラウドコンピューティングを用いてもよい。一例では、歯牙構造のデジタル表現が診療所の1つのコンピュータで受信される一方で、カスタム器具の形状及び寸法はコンピュータ370などの異なるコンピュータを用いて決定される。加えて、コンピュータ370などのその異なるコンピュータは形状及び寸法の決定のために同一データをすべて受信する必要がない場合がある。形状及び寸法は、少なくとも一部、症例の完全な3D表示を受け取ることなく歴史的症例又は例示的症例の仮想モデルの分析を通じて得た知識に基づき決定してもよい。このような例では、クライアントコンピューティングデバイス380とコンピュータ370との間で送信される、又はそうでなければカスタム器具をデザインするために利用されるデータは、患者の完全なデジタル歯科モデルを示す全データセットよりも大幅に小さくてもよい。
【0078】
様々な実施例を説明してきた。記載される例に対し、本開示の趣旨の範囲内で変更を加えてもよい。例えば、カスタム器具は、歯牙の初期幾何学的形状から、又はデジタル的に最適化された歯牙の幾何学的形状から外れて作製することができる(例えば、穴の充填によりデータ内の間隙を閉じる、歯牙ライブラリからデータを引き出してスケーリングする、仮想咬合器で試験する)。器具は既存の構造に正確に適合することができる、又は組織を選択的に移動させる若しくは位置決めするよう最適化することができる。カスタム器具は、う蝕の程度が未知である場合など、歯牙構造が除去される場所の事前情報なく形成することができる。カスタム器具は、医師が器具の適用前に歯牙構造を除去することが必要な、デジタル的に最適化された歯牙構造を生成するように形成されてもよい。器具は印刷するか、又はミリング加工することができる。器具は、あらゆる種類の3次元印刷材料(強度、可撓性、透明性、色調)で作ることができる。器具には、離型、表面仕上げ、及び光透過性を最適化するための様々な薬剤をコーティングすることができる。器具は、種々の修復材料(シェード、充填高さ、物理的特性)の充填高さを指示又は定義する特徴を含むことができる。器具の物理的特性(弾性、粗度、透明度等)は、封止性能、寸法忠実度、修復材料に付与される質感、材料の硬化の程度等のために器具全体にわたって異なり得る。器具/モールド区分は、互いに、又は標準的な構成要素(例えばマトリックスバンド)と連結することができる。器具は口腔内又は口腔外で使用することができる。修復材料は、適用によって材料を形作るように、器具のポートを通じて注入され、器具の適用前に歯牙構造及び/又は器具に適用され得る。器具は、修復材料から取り外すため、又はアンダーカットの幾何学的形状を可能にし/パーティングラインを減らすため、分解性(例えば溶剤/熱)であってもよい。器具は、圧潰性(収縮する、易破砕性等)であってもよい。患者特異的器具及び関連製品及び分量(例えば、患者の必要性に応じて及び/又は医師の選好で選択された接着剤、充填、及び研磨材料)のキットを作成することができる。歯牙上の複数の歯科修復物層の幾何学的形状を制御するため直接充填法で順次使用される一連の器具。カスタム器具の作製を容易にするため、歯科修復来診前に診断来診時点で歯科スキャンを撮ってもよい。器具はその場で製造してもよく、又は作製のためデジタルスキャンデータを遠隔地に送ってもよい。
【0079】
これらの及び他の実施例は、以下の特許請求の範囲内である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13