特許第6971241号(P6971241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971241
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】フルオロポリマーの積層プロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 259/08 20060101AFI20211111BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20211111BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20211111BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   C08F259/08
   B29C64/106
   B29C64/314
   C08F2/44 C
【請求項の数】16
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2018-538160(P2018-538160)
(86)(22)【出願日】2017年1月19日
(65)【公表番号】特表2019-509361(P2019-509361A)
(43)【公表日】2019年4月4日
(86)【国際出願番号】US2017014156
(87)【国際公開番号】WO2017127561
(87)【国際公開日】20170727
【審査請求日】2020年1月17日
(31)【優先権主張番号】62/281,349
(32)【優先日】2016年1月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/385,439
(32)【優先日】2016年9月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/408,504
(32)【優先日】2016年10月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー エヌ.バートウ
(72)【発明者】
【氏名】カーステン フランケ
(72)【発明者】
【氏名】ロビン イー.ライト
(72)【発明者】
【氏名】フェー ツェンティス
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ヒンツァー
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエーレ ハー.ゴットシャルク−ガウディヒ
(72)【発明者】
【氏名】ベルント ガングヌス
(72)【発明者】
【氏名】マルテ コルテン
(72)【発明者】
【氏名】ガルス シェヒナー
(72)【発明者】
【氏名】ボルフガング ノイマン
【審査官】 工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−254521(JP,A)
【文献】 特表2007−502713(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0290032(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0003189(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00− 64/40
C08F 2/00−301/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマー物品の製造方法であって、フルオロポリマー粒子を含む組成物を、少なくとも1つのエネルギー源を含む積層プロセスデバイス内にて積層プロセスに供すること、を含み、
前記フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンホモポリマー、1重量%以下のペルフッ素化α−オレフィンコモノマーを含有するテトラフルオロエチレコポリマー、及び前記ポリマーの重量に基づいて1重量%より多く30重量%以下のペルフッ素化コモノマー、部分フッ素化コモノマー、及び非フッ素化コモノマーを含有するテトラフルオロエチレンコポリマーからなる群から選択され、
前記組成物が、前記積層プロセスデバイスの前記エネルギー源に暴露された前記組成物の一部において前記フルオロポリマー粒子を結合させて層を形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、
前記方法は、前記組成物の一部を前記エネルギー源に暴露することで、層を形成すること、を含み、
前記バインダ材料は重合性であって、前記組成物を前記積層プロセスデバイスの前記エネルギー源に暴露すると重合によって固化し、
前記組成物は、50〜500nmのz−平均粒子径を有するフルオロポリマー粒子を含む、方法。
【請求項2】
前記エネルギー源が、電磁照射から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、フルオロポリマー粒子の水性分散体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、押出可能なペーストである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フルオロポリマーが、372℃及び5kgの荷重で、1g/10分未満のメルトフローインデックスを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フルオロポリマーが、372℃及び5kgの荷重で、1g/10分〜50g/10分のメルトフローインデックスを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フルオロポリマーが、前記ポリマーの重量に基づいて、1重量%より多く30重量%以下のペルフッ素化コモノマー、部分フッ素化コモノマー及び非フッ素化コモノマーを含有する、テトラフルオロエテンコポリマーであり、前記フルオロポリマーが、260℃〜315℃の間の融点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記バインダ材料が、重合性不飽和結合を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記バインダ材料が、アクリレート及びメタクリレートから選択される重合性基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
記バインダ材料を除去するための少なくとも1つの熱処理、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(i)前記フルオロポリマー粒子及び前記バインダ材料及び任意に他の成分を含有する、前記組成物を提供する工程、
(ii)(a)積層造形デバイスのエネルギー源からのエネルギーを3D印刷可能な組成物の選択した位置に向け、前記バインダ材料を重合及び固化させ、フルオロポリマー粒子を結合させること、又は(b)前記3D印刷可能な組成物の選択した位置を前記エネルギー源に向け、前記バインダ材料を重合及び固化させ、フルオロポリマー粒子を結合させること、又は(a)及び(b)の組み合わせのいずれかによって、前記バインダ材料を重合及び固化させることで、フルオロポリマー粒子を結合させる工程、
(iii)(c)前記エネルギー源を、前記3D印刷可能な組成物から離すように向けること、又は(d)前記3D印刷可能な組成物を前記エネルギー源から離すように向けること、又はその両方のいずれかで、前記バインダ材料が非選択の位置において重合することを防ぐ工程、又は(c)及び(d)の組み合わせ、
(iv)工程(ii)及び(iii)並びに必要に応じてまた工程(i)を繰り返すことで、複数の層を形成し、物品を作製する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
積層プロセスによって物品を製造するための組成物であって、前記組成物は、フルオロポリマー粒子を含み、且つ前記組成物が積層プロセスデバイスのエネルギー源からのエネルギーに暴露されると、重合及び固化してフルオロポリマー粒子を結合させることにより、フルオロポリマー粒子を結合可能な重合性バインダ材料を含み、前記フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンホモポリマー、1重量%以下のペルフッ素化α−オレフィンコモノマーを含有するテトラフルオロエチレコポリマー、及び前記ポリマーの重量に基づいて1重量%より多く30重量%以下のペルフッ素化コモノマー、部分フッ素化コモノマー、及び非フッ素化コモノマーを含有するテトラフルオロエチレンコポリマーからなる群から選択され、前記組成物は、50〜500nmのz−平均粒子径を有するフルオロポリマー粒子を含む、組成物。
【請求項13】
前記フルオロポリマーが、前記ポリマーの重量に基づいて、1重量%より多く30重量%以下のペルフッ素化コモノマー、部分フッ素化コモノマー及び非フッ素化コモノマーを含有する、テトラフルオロエテンコポリマーであり、前記フルオロポリマーは、260℃〜315℃の間の融点を有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記バインダ材料が、重合性不飽和結合を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記バインダ材料が、アクリレート及びメタクリレートから選択される重合性基を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
積層プロセスにおける、請求項12の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フルオロポリマーの積層プロセス、及び積層プロセスによって得られるフルオロポリマー物品に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマーは、その化学的不活性のため、特に低摩擦性及び/又は化学物質及び熱への不活性を必要とする物品の原料として広く使用されている。ペルフッ素化ポリマーは特に不活性である。
【0003】
フルオロポリマーは、典型的にはサーモプラスチック及びエラストマー(場合により、フルオロゴムとも称される)に分類される。
【0004】
フルオロサーモプラスチックは、射出成形工程及び押出等の従来の溶融成形法によって加工することができる。フルオロサーモプラスチックは、典型的には、テトラフルオロエチレン(TFE)と、1種以上の他のペルフッ素化、部分フッ素化又は非フッ素化コモノマーとのコポリマーである。TFEと、ペルフッ素化アルキル又はアリルエーテルとのコポリマーは、当該技術分野では、PFA(ペルフッ素化アルコキシポリマー)として知られている。他のペルフッ素化コモノマーを有するか、又は有しない、TFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマーは、当該技術分野では、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)として知られている。TFE、HFP及びフッ化ビニリデン(VDF)のコポリマーは、当該技術分野では、THVとして知られている。他のタイプの溶融加工性フルオロポリマーは、PVDFとして当該技術分野において知られている、フッ化ビニリデンのホモ又はコポリマーをベースとする。TFEとエチレンとのコポリマーは、ETFEとして知られている。
【0005】
特定のタイプのサーモプラスチックは、非常に高い溶融粘度(低メルトフローインデックス(low melt flow index、MFI))を有し、当該技術分野において、「非溶融加工性」と称される。非溶融加工性フルオロポリマーとしては、TFEのホモポリマー、又はTFEと他の共重合可能なペルフッ素化モノマーとのコポリマーが挙げられる。コモノマーの量は1重量%未満に限定される。このようなTFEホモポリマー及びコポリマーは、当該技術分野においてPTFEと称される。PTFEは、押出、射出成形又はブロー成形等の従来の溶融加工技術では加工できない高い溶融粘度を有する。テトラフルオロエチレン(TFE)のホモポリマー、又はTFEと他の共重合可能なペルフッ素化モノマーとのコポリマー(コモノマーの量は、ポリマーの重量に基づいて、1重量%未満に制限される)は、当該技術分野ではポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と称される。PTFE、及び匹敵する高い溶融粘度(低メルトフローレート)を有するテトラフルオロエチレンの他のコモノマーは、押出、射出成形又はブロー成形等の、従来の溶融加工技術により成形することができない。PTFE物品は、典型的にはラム押出によって形成されるか、又はPTFE粒子がプレス焼結にてビレットにされ、所望の形状に機械加工される。これらは切削方法(subtractive method)であり、材料を除去して物品を成形する。
【0006】
国際公開第2007/133912(A2)号では、特殊な熱可塑性フルオロポリマー(PVDF及びPCTF)のための積層造形プロセスが記載されているが、実施例は提示されていない。中国特許公開第103709737(A)号、同第105711104(A)号では、3D印刷のための方法が記載されており、そこではPTFEの使用が言及されている。材料は、ポリマー粉末に赤外光又はレーザを照射し、赤外光又はレーザ照射に暴露された選択領域内の粉末を溶融させることによって加工される。これらの方法は、レーザ溶融又はレーザ焼結として3D印刷の技術分野において既知である。米国特許第7,569,273(B2)号では、異なる方法が記載されており、PVDFに適していることが報告されている。こちらも、実施例は提示されていない。米国特許第7,569,273(B2)号に記載の方法は、流体を、ノズルを介してポリマー及び接着性微粒子材料を含む固体組成物に添加することによる。関節材料(articulate material)は、流体と接触すると接着性となり、選択した領域に流体が分配されることによって、物品が製造されると報告されている。
【0007】
フルオロポリマーを積層プロセスによって加工する代替方法を提供する必要があり、特に、非溶融加工性のタイプのフルオロポリマーを加工する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
一態様では、フルオロポリマー物品の製造方法が提供される。該方法は、フルオロポリマー粒子を含む組成物を、少なくとも1つのエネルギー源を含む積層プロセスデバイス内にて積層プロセスに供すること、を含み、組成物が、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された組成物の一部においてフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、該方法は、組成物の一部をエネルギー源に暴露することで、層を形成すること、を含み、バインダ材料は重合性であって、組成物を積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露すると重合によって固化する。
【0009】
別の態様では、積層プロセスによって物品を製造するための組成物が提供される。該組成物はフルオロポリマー粒子を含み、フルオロポリマー粒子を結合させるために、該組成物が積層プロセスデバイスのエネルギー源からのエネルギーに暴露されると、重合及び固化してフルオロポリマー粒子を結合可能な、重合性バインダ材料を含む。
【0010】
更なる態様では、積層プロセスにおける該組成物の使用が提供される。
【0011】
別の態様では、3D印刷されたフルオロポリマーが提供される。3D印刷されたフルオロポリマーは2.00g/cmを上回る密度及び/又は200‰未満、好ましくは1‰〜185‰の間、より好ましくは20‰未満、最も好ましくは1‰〜15‰の間の空隙率(Voi)を有し、フルオロポリマーは、372℃及び5kgの荷重で、50g/10分未満、好ましくは1g/10分未満、より好ましくは0.1g/10分未満のメルトフローインデックス(MFI372/5)を有する。
【0012】
更に別の態様では、3D印刷されたフルオロポリマーを含む物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示による積層プロセスによって作製されるフルオロポリマー物品の図を示す。
図2】製造された物品が対称ではなかったため、製造された物品の直径の測定を示す説明図である。
図3A】フルオロポリマー物品の製造における様々な段階でのフルオロポリマー物品の写真である。
図3B】フルオロポリマー物品の製造における様々な段階でのフルオロポリマー物品の写真である。
図3C】フルオロポリマー物品の製造における様々な段階でのフルオロポリマー物品の写真である。
図3D】フルオロポリマー物品の製造における様々な段階でのフルオロポリマー物品の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の任意の実施形態を詳細に説明するのに先立ち、本開示はその用途において以下の説明に示される構造の詳細及び構成部品の配置に限定されるものではないということが理解されるべきである。また、本明細書において使用される語法及び専門用語は説明を目的としたものであることを理解されたい。「からなる」の使用とは対照的に、「含む」、「含有する」、「備える」、又は「有する」及びその変化形の使用は、これらの語の後に列挙される要素及びその均等物に加えて更なる要素を包含することを意味する。「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用は、「1つ以上の」を包括することを意味する。本明細書で列挙され、物理パラメータ又は物理量及び成分濃度を表す数値範囲は、該範囲の下限値から上限値の全値を包含することを意図し、該範囲の端点を包含する。例えば、1%〜50%の濃度範囲は略記であり、例えば2%、40%、10%、30%、1.5%、3.9%等の1%〜50%の間の値を明確に開示することを意図する。
【0015】
本明細書において、引用された全ての参考文献は、他に記載がない場合は、参照により組み込まれる。
【0016】
他に特定されない場合は、挙げられた規格(例えばDIN、ASTM、ISO等)は、2016年1月1日に有効なバージョンのものである。2016年1月1日より前に規格が終了している場合、直近に有効であったバージョンを意味する。
【0017】
3D印刷されたフルオロポリマー及びフルオロポリマー物品は、フルオロポリマー、特に非溶融加工性のフルオロポリマーを含む組成物の積層プロセスによって作製することができる。
【0018】
フルオロポリマーは、積層プロセスに好適な組成物として提供される。次いで、組成物を、積層プロセスデバイス内での積層プロセスによって加工し、三次元物体にすることができる。このような3D印刷可能な組成物は、フルオロポリマー、及び典型的には積層プロセスデバイスのものであるエネルギー源に暴露されるとフルオロポリマー粒子を結合して体素にすることが可能な、重合性バインダ材料を含む反応性材料を、含む。
【0019】
「バインダ」材料として本明細書では称されるが、化学結合(例えば、フルオロポリマー材料への)は生じなくてもよい。相互作用は、物理的、若しくは化学的、又はその両方であり得るが、重合したバインダ材料により、フルオロポリマー粒子を規定の位置に維持するのに十分であるべきである。
【0020】
フルオロポリマー含有層を順次作製して、三次元物品を形成してもよい。
【0021】
積層プロセスデバイスにて物品を作製した後に、重合したバインダ材料を除去してもよい。典型的には、バインダ材料の除去は、熱処理により達成することができる。熱処理は、重合したバインダ材料の分解又は燃焼を含んでもよい。代替的には、又は追加で、重合したバインダ材料を溶媒、例えば液体COで抽出してもよい。バインダ材料の除去後、又はバインダ材料の除去と並行して、物品を更なる熱処理工程、例えば焼結に供してもよい。熱処理工程は、周囲圧力(1バール)で行うことができ、物品を作製するために、高圧を加える必要はない(有利である場合には、加えてもよいが)。
【0022】
本明細書で提供される方法及び組成物の利点は、フルオロポリマー物品の試作品を低コストで製造することができるだけでなく、従来のフルオロポリマープロセスでは入手できない、又は高コストでのみ入手できる、複雑な形状及びデザインのフルオロポリマー物品、特にPTFE物品を作製できることである。
【0023】
本明細書で提供される方法及び組成物の別の利点は、成形フルオロポリマー、特にPTFEを、高圧及び力を加えることなく作製できることである。従って、より等方性である、例えば配向度の低い成形フルオロポリマーである、成形フルオロポリマー及び物品を作製することができる。
【0024】
バインダを使用するにも関わらず、成形フルオロポリマー、特にPTFEは、高密度及び/又は低空隙率を有することができる。
【0025】
本明細書で提供される方法及び組成物の別の利点は、小型寸法のものであり、複雑な構造を有するフルオロポリマー物品、特にPTFE物品を作製可能なことである。
【0026】
本方法及び組成物の更なる利点は、複雑な構造の一体型フルオロポリマー物品、特にPTFE物品を作製可能なことである。
【0027】
本明細書で提供される方法のなおも更なる利点は、本方法では、最終成形物品から削り取られる、無駄な材料が少ない(例えば、物品がいわゆる「ニアネットシェイプ」に印刷され、削り取られ、最終形状にされる)か、又は全くない(例えば、最終形状が直接形成される場合)ため、これらの方法は材料のブロックを「削り取る」従来技術の方法よりも無駄が少ないこと、及び未反応の3D印刷可能な組成物を次の3D印刷の実行で再利用できることである。
【0028】
本方法の別の利点は、フルオロポリマー物品、特にPTFE物品の空隙率を制御して、低い又は高い空隙率の物品を作製可能なことである。
【0029】
積層プロセス
「3D印刷」又は「積層造形(additive manufacturing、AM)」としても知られる積層プロセスは、規定領域に材料を順次堆積させることによって、典型的には材料の連続層を生成することによって、三次元物体を生成するプロセスを指す。物体は、典型的には3Dモデル又は他の電子データ源から、コンピュータ制御下で、典型的には3Dプリンタと称される、積層印刷デバイスによって製造される。用語「3Dプリンタ」及び「積層プロセスデバイス」は、本明細書では交換可能に使用され、一般に、積層プロセスを行うことができるデバイスを意味する。用語「3D印刷」及び「3D印刷可能」は同様に使用され、積層プロセスを意味し、及び積層プロセスに好適なことを意味する。
【0030】
積層プロセスデバイスは、典型的には層等の体素の堆積によって、規定領域に材料を順次堆積させることができるデバイスである。層上に順次層が構築され、三次元物体作製される。典型的には、デバイスは、コンピュータ制御される。更に典型的には、デバイスは、作製すべき物体の電子画像(ブループリント)に基づいて物体を作製する。3Dプリンタは、3D印刷可能な組成物内の局所領域にエネルギーを印加するエネルギー源を含む。印加されるエネルギーは、例えば、熱若しくは放射線、又はその両方であってよい。エネルギー源としては、光源、例えば、不可視光、例えば紫外線(UV光)を発する光源、レーザ、電子ビーム発生器、マイクロ波発生器及びエネルギーを3D印刷可能な組成物の規定領域に集束させることができる他のソースを挙げることができる。エネルギー源は、3D印刷可能な組成物の表面上で、規定領域まで移動することができ、又は印刷可能な組成物が、規定された方法によって、エネルギー源に向かって、及び離れて移動することができる。典型的には、これらは、全てコンピュータ制御下である。
【0031】
積層プロセスデバイス内の異なる位置に配置された、1つ又は更にいくつかのエネルギー源を使用することができる。典型的には、積層印刷デバイスは、印刷可能な材料がその上に配されるプラットフォームを含む。プラットフォームは、例えば、典型的にはプラットフォーム上に形成される層の距離だけ、エネルギー源に向かって、又はそれから離れるよう、移動することができる。典型的には、これもまた、コンピュータ制御下で行われる。デバイスは、連続的に層を構築するために、形成された層の上に新たな印刷可能な材料を提供し、適用することができる、ワイパーブレード又は注入ノズル等のデバイスを更に含むことができる。作製すべき物体が、複雑である、又は作製中に構造支持体を必要とする場合は、支持構造体を使用して、後で除去してもよい。本明細書で提供される方法には、既知の、市販されている積層印刷デバイスを使用することができる。
【0032】
本開示によれば、フルオロポリマー粒子、及び重合性バインダ材料を含む反応性材料を、含有する、3D印刷可能な組成物を用いて、体素又は層が形成される。組成物をデバイスのエネルギー源に暴露して、より正確には、エネルギー源から放出されたエネルギーに暴露して、重合性バインダ材料を重合させる。典型的には、エネルギー源に暴露された領域では、重合によって材料の粘度が上昇し、固化する。他の3D印刷方法を使用してもよいが、このタイプの積層造形技術の典型例は、当該技術分野において「光造形」(SL)又は「液槽重合」(VP)として既知である。このタイプの積層造形プロセスは、電磁放射線(例えば、UV光を含む)を、重合性材料を含有する3D印刷可能な組成物の液槽上に集束させることで動作する。3D印刷可能な組成物は、典型的には液体である。コンピュータ支援製造又はコンピュータ支援設計ソフトウェア(CAM/CAD)を活用して、照射によって、予めプログラムされたデザイン又は形状を3D印刷可能な組成物の表面上に描画する。3D印刷可能な組成物は照射に対して反応性であるため、組成物は、より粘稠になり、固化又はゲル化し、放射線に暴露された領域上に所望の3D物体の単一の層を形成する。このプロセスを、3D物体が完成するまで、デザインの各層に繰り返す。典型的には、光造形に使用される3Dプリンタは、照射によって新たな層が形成される前に、デザインの単一の層の厚さ(典型的には0.05mm〜0.15mm又は0.001mm〜0.15mm)に等しい距離を、3D印刷可能な組成物を含む液槽内に下降させる、昇降式プラットフォームを含む。新しい印刷可能な材料で充填されたブレードが、層の断面にわたって掃引されてよく、新しい材料で断面を再度コーティングする。あるいは、ノズルを用いてもよく、又は新しい印刷可能な材料を付与する他のデバイスを使用してもよい。後続の層をトレースし、先の層を接合する。このプロセスを使用して、完全な3D物体を形成することができる。積層プロセスデバイスのデザインに応じて、別の典型的な方法では、ビルドプラットフォームを1層又は体素よりも大きな距離昇降させ、印刷可能な材料が先の層/体素上を容易に流れることを可能にする。所望の高さに戻すと(Up returning to the desired step height)、先の層は均一に覆われる。後続の層をトレースし、先の層を接合する。光造形についてより詳細に記載しているが、3D印刷可能な組成物を、他の3D印刷方法に使用することもできる。例えば、粘稠な組成物又は押出可能なペーストである、本開示による3D印刷可能な組成物は、押出機を介して、ビルドプラットフォームの選択した位置に組成物を押し出すことによって加工することができる。エネルギー源は押出機の出口又は他の場所に位置していてよく、プラットフォーム上に押し出された材料を選択した位置にて照射し、バインダ材料を重合させ、体素を形成する。このステップを物体が形成されるまで繰り返す。
【0033】
好ましくは、光(好ましくはUV光)による照射を使用する。3D印刷可能な組成物に使用される重合性バインダ材料は、光又はUV光に反応性である、又は、場合によっては、光又はUV光により活性化された開始剤に反応性である。しかし、他の波長の放射線を用いてもよい。例えば可視光又は不可視光(例えば赤外線)から、X線及び電子ビームを含む。その場合、このような照射に反応性である、又はこのような照射によって活性化された重合開始剤に反応性である、重合性材料が選択される。
【0034】
有効な照射の条件は、使用する放射線のタイプ、及び選択された重合性材料のタイプによって変更することができる。様々なタイプの照射(例えば可視光又は不可視光の照射)に敏感に反応する重合性材料及び重合開始剤を選択することができる。例えば、1〜10,000nm、例えば10〜1,000nmの波長の光による照射を使用してよいが、これらに限定されない。照射は、選択された重合系の反応性に応じて、単色であっても多色であってもよい。
【0035】
紫外線照射には、典型的には10〜410nmの間の波長を有する放射線照射が含まれる。紫外線は、レーザ、水銀ランプ、又はUV LEDのようなUV源から発生させてもよい。誤差限界が±10nmで、365nm、385nm及び405nmの波長の単色照射を生じさせるUV LED(発光ダイオード、LED)が、市販されている。
【0036】
赤外線照射には、典型的には、1mm〜750nmの波長の電磁波の照射が含まれる。可視光の照射には、典型的には410〜760nmの間の波長の光の照射が含まれる。
【0037】
物品のデザインの複雑さに応じて、重力による撓み又は剥離を防止し、断面を定位置に保持し、樹脂充填ブレードからの側圧に耐える支持構造体を、昇降プラットフォームに取り付けてもよい。
【0038】
本明細書で提供される方法は、既知の、市販の光造形又は液槽重合用積層印刷デバイスにおいて実施することができる。典型的な既知の方法及びその3Dプリンタは、例えば、B.Wendelらによる「Additive Processing of Polymers」(Macromol.Matter.Eng.2008,293,799〜809)に記載されている。市販の3Dプリンタの例としては、ASIGA(Anaheim,California,USA)による、液槽重合印刷用の3Dプリンタが挙げられるが、これに限定されない。他の3D印刷方法もまた、使用することができる。例えば、3D印刷可能な組成物を、1つ以上のノズルを介してペーストとして押し出し、エネルギー源に供することができる。その際、バインダは重合する。例としては、Hyrel3D(Norcross,GA30071)の、押出ヘッドによるHyrel System30Mプリンタ等のプリンタが挙げられる。このようなプリンタにおいて、3D印刷可能な組成物は、例えばポリマー含有量を増加させることによって、要求される粘度を有するように、組成が調節される。
【0039】
3D印刷可能な組成物
本開示において提供される組成物は、1種以上のフルオロポリマー、1種以上の重合性バインダ材料を含む反応性材料、及び1種以上の任意による成分を含む。組成物は、液体媒体中、又は重合性バインダ材料中のフルオロポリマー分散体であってよい。組成物は、好ましくは液体組成物、より好ましくは水性組成物である。一実施形態では、組成物は、ペースト等の押出可能な組成物である。組成物は、積層プロセスに好適である。このため、本明細書において、組成物は「3D印刷可能な組成物」とも称される。組成物及びその成分について、以下に更に詳細に記載する。
【0040】
フルオロポリマー
本開示の3D印刷可能な組成物は、フルオロポリマーを含有する。
【0041】
好適なフルオロポリマーとしては、テトラフルオロエチレン(PTFE)のホモポリマー、及びテトラフルオロエチレンと1種以上のペルフッ素化コモノマーとのコポリマーが挙げられる。ペルフッ素化コモノマーとしては、ペルフッ素化α−オレフィン及びペルフッ素化α−オレフィンエーテル、すなわち、炭素−炭素二重結合が末端位にあるオレフィンが挙げられる。
【0042】
ペルフッ素化α−オレフィンとしては、次の式
−CX=CX
[式中、X、X、Xは全てFであるか、又はX、X及びXのうちの2つがFであり、1つはClであるかのいずれかである。Rは炭素原子が1〜12個の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたものである。]による化合物が挙げられる。例としては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)及びクロロトリフルオロエチレン(CTFE)が挙げられる。
【0043】
ペルフッ素化α−オレフィンの例としては、次の式
−O−(CF−CF=CF
[式中、nは1(その場合、化合物はアリルエーテルと称される)、又は0(その場合、化合物はビニルエーテルと称される。)を表す。Rは、少なくとも1個のカテナリー酸素原子を含む、直鎖状又は分枝状の環式又は非環式のペルフッ素化アルキル残基を表す(本出願の文脈では、別段の記載がない限り、又は文脈による別段の示唆がない限り、カテナリー原子は、エーテル酸素原子を意味する)。]のエーテルが挙げられる。Rは、好ましくは8個以下、又は6個以下の炭素原子、例えば1、2、3、4、5及び6個の炭素原子を含有することができる。Rの典型例としては、1個の酸素原子が介在する直鎖状又は分枝状のアルキル残基、及び2、3、4又は5個のカテナリーエーテル酸素を含有する直鎖状又は分枝状のアルキル残基が挙げられる。Rの更なる例としては、次の単位、−(CFO)−、−(CFCF−O)−、(−O−CF)−、−(O−CFCF)−、−CF(CF)−、−CF(CFCF)−、−O−CF(CF)−、−O−CF(CFCF)−、−CF(CF)−O−、−CF(CFCF)−O−、の1個以上及びこれらの組み合わせを含有する残基が挙げられる。
【0044】
の更なる例としては、次のもの、
−(CFr1−O−C
−(CFr2−O−C
−(CFr3−O−CF
−(CF−O)s1−C
−(CF−O)s2−C
−(CF−O)s3−CF
−(CFCF−O)t1−C
−(CFCF−O)t2−C
−(CFCF−O)t3−CF
[式中、r1及びs1は、1、2、3、4、又は5を表し、r2及びs2は、1、2、3、4、5又は6を表し、r3及びs3は、1、2、3、4、5、6又は7を表し、t1は1又は2を表し、t2及びt3は1、2又は3を表す。]が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
好適なペルフッ素化アルキルビニルエーテルコモノマーの具体例としては次のもの、
=CF−O−CF
C=CF−O−C
C=CF−O−C
C=CF−O−CF−O−(CF)−F、
C=CF−O−CF−O−(CF−F、
C=CF−O−CF−O−(CF−F、
C=CF−O−CF−O−(CF−F、
C=CF−O−(CF−OCF
C=CF−O−(CF−OCF
C=CF−O−(CF−OCF
C=CF−O−(CF−(OCF−F、
C=CF−O−CF−(OCF−CF
C=CF−O−CF−(OCF−CF
C=CF−O−(CFO)−OCF
C=CF−O−(CFO)−OCF
C=CF−O−(CFO)−OCF、が挙げられる。
【0046】
好適なペルフッ素化アルキルアリルエーテルコモノマーの具体例としては次のもの、
=CF−CF−O−CF
C=CF−CF−O−C
C=CF−CF−O−C
C=CF−CF−O−CF−O−(CF)−F、
C=CF−CF−O−CF−O−(CF−F、
C=CF−CF−O−CF−O−(CF−F、
C=CF−CF−O−CF−O−(CF−F、
C=CF−CF−O−(CF−OCF
C=CF−CF−O−(CF−OCF
C=CF−CF−O−(CF−OCF
C=CF−CF−O−(CF−(OCF−F、
C=CF−CF−O−CF−(OCF−CF
C=CF−CF−O−CF−(OCF−CF
C=CF−CF−O−(CFO)−OCF
C=CF−CF−O−(CFO)−OCF
C=CF−CF−O−(CFO)−OCF、が挙げられる。
【0047】
ペルフッ素化アルキルアリルエーテル(PAAE)の特定例としては、次の一般式
CF=CF−CF−OR
[式中、Rは、直鎖状又は分枝状、環式又は非環式のペルフッ素化アルキル残基を表す。]による不飽和エーテルが挙げられる。Rは、10個までの炭素原子、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個の炭素原子を含んでいてもよい。好ましくは、Rは、8個以下の、より好ましくは6個以下の炭素原子及び最も好ましくは3又は4個の炭素原子を含む。Rは、直鎖状であっても、分枝状であってもよく、環式単位を含んでいてもよく、いなくてもよい。Rの具体例としては、ペルフルオロメチル(CF)、ペルフルオロエチル(C)、ペルフルオロプロピル(C)及びペルフルオロブチル(C)、好ましくはC、C又はC、が挙げられる。特定の実施形態においては、Rは直鎖状であり、C又はCから選択される。
【0048】
1種のコモノマーをTFEとともに使用することに加えて、本明細書では、上記コモノマーの組み合わせを使用することも意図する。
【0049】
上記ペルフッ素化アルキルアリルエーテル及びアルキルビニルエーテルは、例えば、Anles Ltd.(St.Peterburg,Russia)から市販されており、又は米国特許第4,349,650号(Krespan)又は国際公開第01/46107号(Wormetal)又は、Modern Fluoropolymers(J.Scheirs著、Wiley、1997年)及びこれらの文献の(therein)引用文献に記載されている方法又は当業者に既知であるその変更によって調製することができ、そのいずれかによる。
【0050】
ペルフッ素化コモノマーのコモノマー含有量は、特にHFP又はCTFEをコモノマーとする場合は、20重量%以下、又は12重量%以下とすることができる。一実施形態では、ペルフッ素化コモノマーの含有量は、1重量%以下である。好ましくは、フルオロポリマーの、ペルフッ素化コモノマー以外のコモノマーの含有量は0重量%である。一実施形態ではポリマーは、2重量%未満、好ましくは1重量%未満のペルフッ素化コモノマー以外のコポリマーを含有する。テトラフルオロエチレン及びペルフッ素化コモノマーを含み他のコモノマーを含まないポリマーを、本明細書においては、「ペルフッ素化」ポリマーと称する。
【0051】
好ましい実施形態では、フルオロポリマーは、TFEと1種以上のペルフッ素化コモノマーとのコポリマーであり、好ましくは、HFP、CTFE、ペルフルオロアルキルビニルエーテル又はペルフルオロアルキルアリルエーテル又はこれらの組み合わせから選択される。ペルフッ素化コモノマーの量は、フルオロポリマーの総重量に基づいて、12重量%以下、好ましくは1%以下、又はより好ましくは0.1重量%以下であってよい。好ましくは、コポリマーはペルフッ素化されている(すなわち他のコモノマーを含まない)。
【0052】
一実施形態では、フルオロポリマーは、TFE及び1種以上のペルフルオロアルキルビニルエーテルコモノマーを含有し、他のコモノマーを含有しない。別の実施形態では、フルオロポリマーは、TFE及び1種以上のペルフルオロアルキルアリルエーテルコモノマーを含有し、他のコモノマーを含有しない。更に別の実施形態では、フルオロポリマーは、PAVE及びPAAEコモノマーの組み合わせを含有し、他のコモノマーを含有しない。典型的には、コモノマーの量は、2重量%以下、又は1重量%以下、又は0.1重量%以下である。典型的な量としては、例えば、約0.1〜2、又は0.1〜1重量%又は0.3〜1重量%(全て、ポリマー総重量に基づく)が挙げられる。
【0053】
典型的には、上述したこのようなフルオロポリマーは、低メルトフローインデックス、すなわち高い溶融粘度を有する。従って、このようなポリマーは、通常の熱可塑性ポリマーのように加工することができないため、本明細書では「非溶融加工性(not melt-processable又はnon-melt-processable)」と称する。
【0054】
本開示の一実施形態では、フルオロポリマーとしては、372℃で5kgの荷重を使用して、1.0g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)(1.0g/10分未満のMFI 372/5)、好ましくは0.1g/10分以下のメルトフローインデックス(372/5)を有するものが挙げられる。
【0055】
典型的には、本開示のフルオロポリマーは、少なくとも300℃、好ましくは少なくとも315℃及び典型的には、327±10℃の範囲内の融点を有する。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーは、少なくとも317℃、好ましくは少なくとも319℃及びより好ましくは少なくとも321℃の融点を有する。材料が最初に溶融するときとその後とで、非溶融加工性のフルオロポリマーの融点は異なる。一度材料が溶融した後、その後の溶融における融点は一定のままである。このため、本明細書でいうところの融点は、一度溶融した材料の溶融(すなわち、材料が溶融し、その融点を下回って冷却された後、再び溶融する)のものである。
【0056】
非溶融加工性フルオロポリマーは、ASTM4895に準拠して測定した2.13〜2.23g/cmの間の標準比重(standard specific gravity、SSG)を有し得る。SSGは、ポリマーの分子量に対する尺度である。SSGが高いほど、分子量は低くなる。一実施形態では、2.17g/cm未満のSSG、例えば、2.14〜2.16の間のSSGを有するPTFEポリマーを意味する超高分子量PTFEが本開示において使用される。このようなPTFEポリマー及びその調製は、例えば国際公開第2011/139807号において記載されている。
【0057】
非溶融加工性フルオロポリマーは、異なるポリマー構造を有してもよく、例えば、コア−シェル型ポリマー、ランダムポリマー、又は連続的かつ一定の重合条件下で調製されたポリマーであってもよい。
【0058】
372℃で5kgの荷重を使用して、1.0g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)(1.0g/10分未満のMFI372/5)、好ましくは0.1g/10分以下のメルトフローインデックス(372/5)を有するフルオロポリマーは、高溶融粘度を有するため、融点を上回る温度においてであっても、その形状を保持する。このことは、熱処理によってバインダ材料を除去し、高密度のフルオロポリマー物品を提供するのに有利である。
【0059】
しかし、本開示の方法では「溶融加工性」フルオロポリマーを使用することもできる。このようなフルオロポリマーは、TFEのコポリマーを含む。上述したものと同一のコモノマー及びコモノマーの組み合わせを使用することができる。加えて、エチレン又はプロピレンを、追加コモノマーとして使用することができる。溶融加工性フルオロポリマーとしては、TFEと、ペルフッ素化、部分フッ素化又は非フッ素化コモノマーとのコポリマーが挙げられる。コモノマー含有量は、1重量%又は3重量%を上回り、かつ30重量%以下(上述した、及び後述するように、重量%は、他に記載がない限り、ポリマーの総重量に基づく)であってよい。溶融加工性フルオロポリマー(「サーモプラスチック(thermoplasts又はthermoplastics)とも称される」)としては、以下の、FEP(TFE、HFP及び他の任意による量のペルフッ素化ビニルエーテルのコポリマー)、THV(TFE、VDF及びHFPのコポリマー)、PFA(TFE及びペルフルオロアルキルビニルエーテル及び/又はペルフルオロアルキルアリルエーテルのコポリマー)、VDF(PVDF)のホモノマー(homonomers)及びコポリマー、並びにクロロトリフルオロエチレン(CTFE)のホモポリマー及びコポリマー、並びにTFEとエチレンとのコポリマー(ETFE)、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
フルオロサーモプラスチックは、例えば、「Fluoropolymer,Organic(Ullmann’s Encyclopedia of industrial chemistry,7thedition,2013,Wiley−VCH Verlag Chemie(Weinheim,Germany))」に記載されている。
【0061】
好ましい溶融加工性フルオロサーモプラスチックとしては、融点が260〜315℃の間、好ましくは280℃〜315℃の間のフルオロポリマーが挙げられる。
【0062】
溶融加工性フルオロサーモプラスチックは、1.0g/10分を上回る、及び好ましくは1.1g/10分〜50g/10分、より好ましくは1g/10分〜20g/10分又は1g/10分〜5g/10分のメルトフローインデックス(MFI(372℃/5kg))を有する。
【0063】
一実施形態では、溶融加工性フルオロサーモプラスチックは、PFAである。PFAは、TFEと、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)、ペルフルオロアルキルアリルエーテル(PAAE)の少なくとも1種及びこれらの組み合わせとのコポリマーである。典型的なコポリマーの量は、1.7重量%〜10重量%の範囲である。好ましくは、PFAは280℃〜315℃の間、例えば280℃〜300℃の間の融点を有する。
【0064】
本開示の方法では、50g/10分を上回るMFI(MFI372/5)を有する、フルオロサーモプラスチックを使用することもできる。本方法により、より大きなMFIを有するポリマーを使用することもできる。一実施形態では、50g/10分を上回るMFI(MFI372/5)を有する、及び/又は300℃又は280℃又は200℃を下回る融点を有するフルオロサーモプラスチック、例えば150℃〜280℃の間の融点を有するフルオロサーモプラスチックを使用することができる。これらのフルオロポリマーは、構造的安定性を回避するため、仕上げ手順においてより穏やかな熱処理を必要とすると考えられる。バインダ材料は、熱的にではなく、例えば溶媒抽出によって除去することができ、又は低温で除去することができるバインダ材料を選択することができる。このような材料を、好ましくはペーストとして加工してもよく、3D印刷可能な組成物は水を全く含有しないか、又は少ない量の水のみを含有してもよい。これにより、仕上げ手順において、残留水を除去するために必要な、熱処理を回避又は低減させることができる。
【0065】
例えば、HFPのような分枝状コモノマーを含有する場合は、フルオロサーモプラスチックは、直鎖状又は分枝状であってよい。例えば、国際公開第2008/140914(A1)号に記載のように、重合において分枝変性剤(branching modifiers)を使用することによって、より長い分枝が生成され得る。
【0066】
好ましくは、フッ素化ポリマーは3D印刷可能な組成物中に分散している。好ましくは、フッ素化ポリマーは、粒子径が小さく、均一に分散することが可能である。典型的には、粒子径は、当技術分野において既知のとおり、フルオロポリマーを水性乳化重合で調製することにより得た粒子径に相当する。フルオロポリマーは、典型的には2,000nm未満の粒子径を有する。好ましくは、フルオロポリマー粒子は、50〜500nm又は例えば70〜350nmの平均粒子径(D50)を有する。粒子径が小さいフルオロポリマー、例えば、典型的には、フルオロポリマーの乳化重合によって得られる粒子径(得られたフルオロポリマーは、50〜500nm又は例えば70〜350nmの平均粒子径(D50)を有する)の使用は、高密度のフルオロポリマー物品、例えば、高密度及び/又は低空隙率を有する、成形フルオロポリマーを作製するのに好都合であり得る。しかし、高密度な物品ではなく、むしろ多孔質の物品が望まれる用途では、より大きな粒子径又は異なる熱処理若しくは焼結手法を適用することができる。得られた成形物品の空隙率を、このような方法で制御することができる。
【0067】
3D印刷可能な組成物では、フルオロポリマーは、バインダ材料又は分散媒体中(例えば、水若しくは溶媒又はこれらの組み合わせ)に分散していてもよい。好ましくは、3D印刷可能な組成物は、水性組成物である。均一な3D印刷可能な組成物を調製するための簡便な方法では、他の成分が添加されたフルオロポリマーの水性分散体が提供される。分散体から、押出可能な組成物を作製し、次いで、これを、例えば、含有水分を蒸発又は熱処理によって除去することによって濃縮してもよい。押出可能なペーストを作製する他の方法としては、凝集したフルオロポリマーを好適な溶媒に懸濁又は分散させ、バインダ又は他の任意による成分と組み合わせることが挙げられる。
【0068】
本明細書に記載のフルオロポリマー及び水性フルオロポリマー分散体は、例えば、米国特許第2,965,595号、欧州特許第1,533,325号及び同第0,969,027号に記載されているような水性乳化重合により都合よく調製することができる。しかし、フルオロポリマーを、懸濁重合により得てもよい。
【0069】
本明細書に記載の、様々な等級のフルオロポリマーの、フルオロポリマー分散体は、例えば、Dyneon GmbH(Burgkirchen Germany)及び他のフルオロポリマー製造元から市販されている。
【0070】
一般に、3D印刷可能な組成物中のフルオロポリマー、特に非溶融加工性フルオロポリマーの量としては、約25〜70%、30〜60%、25〜60%、40〜55%又は約30〜50%又は約31〜45%(組成物の総重量に基づく、重量%)を挙げることができるが、これらに限定されない。最適な濃度は、他の成分、例えばバインダ材料のタイプ及び量、並びに使用する3Dプリンタのタイプに依存し得る。フルオロポリマーの濃度が高すぎると、いくつかのタイプの3Dプリンタ、例えば、光造形の液槽重合において、加工が困難であり得る粘稠な組成物の形成に至り得る。その場合、例えば水、溶媒又は他の分散媒を添加することにより、フルオロポリマー濃度を低下させるか、又は組成物を希釈することができる。他の3D印刷方法、例えばペースト押出物を使用して動作するプリンタは、ペースト等のより粘稠な組成物を必要とする。
【0071】
3D印刷可能な組成物において使用されるフルオロポリマーは、好ましくは水性乳化重合によって調製される。好ましくは、これらの水性分散体として提供される。重合は、典型的にはフッ素化乳化剤を使用して行う。フッ素化乳化剤は、フルオロポリマー分散体を安定化させる。典型的な乳化剤としては、以下の式
Q−R−Z−M
[式中、Qは、水素、Cl又はFを表す。Qは末端位に位置していてもいなくてもよく、Rは、4〜15個の炭素原子を有する直鎖状又は環式又は分枝状のペルフッ素化又は部分フッ素化アルキレンであり、Zは、COO又はSO等の酸アニオンを表し、Mはアルカリ金属アニオン又はアンモニウムイオンを含む、カチオンを表す。]に対応するものが挙げられる。フッ素化乳化剤の例としては、欧州特許第1059342号、同第712882号、同第752432号、同第86397号、米国特許第6,025,307号、同第6,103,843号、同第6,126,849号、同第5,229,480号、同第5,763,552号、同第5,688,884号、同第5,700,859号、同第5,895,799号、国際公開第00/22002号及び同第00/71590号に記載のものが挙げられる。
【0072】
典型例としては、以下の一般式
[R−O−L−COO
[式中、Lは、直鎖状若しくは分枝状又は環式の、部分フッ素化又は完全フッ素化アルキレン基又は脂肪族炭化水素基を表わし、Rは、直鎖状又は分枝状の部分フッ素化若しくは完全フッ素化脂肪族基又は酸素原子が1回以上介在した直鎖状又は分枝状の部分フッ素化又は完全フッ素化基を表わし、Xは、価数iを有するカチオンを表し、iは、1、2及び3である。]の乳化剤が挙げられるが、これらに限定されない。乳化剤は、部分フッ素化脂肪族基を含む場合、部分フッ素化乳化剤と呼ばれる。好ましくは、この乳化剤の分子量は、1,000g/モル未満である。
【0073】
具体例は、例えば、米国特許公開第2007/0015937号(Hintzerら)に記載されている。例示的な乳化剤としては、以下の、CFCFOCFCFOCFCOOH、CHF(CFCOOH、CF(CFCOOH、CFO(CFOCF(CF)COOH、CFCFCHOCFCHOCFCOOH、CFO(CFOCHFCFCOOH、CFO(CFOCFCOOH、CF(CF(CHCFCFCFCFCOOH、CF(CFCH(CFCOOH、CF(CFCOOH、CF(CF(OCF(CF)CF)OCF(CF)COOH、CF(CF(OCFCFOCF(CF)COOH、CFCFO(CFCFO)CFCOOH、及びこれらの塩が挙げられる。
【0074】
従って、一実施形態では、3D印刷可能な組成物は、1種以上のフッ素化乳化剤を含むことができる。フッ素化乳化剤は、例えば国際公開第03/051988号に記載されているように、仕上げ手順において除去され得るため、典型的には、それらは少量(組成物の重量に基づいて、100ppm以下又は50ppm以下、いずれにせよ、10ppm、5ppm程度。又は更に、実施できる分析的方法の検出限界を下回るのに十分なほど低い。(従って、選択した方法の限界に応じて、見掛け上、0ppm、0ppb、又は0pptである。))である。
【0075】
3D印刷可能な組成物は、1種以上の安定化界面活性剤を含み得る。界面活性剤は、フッ素化されていても、非フッ素化であってもよく、好ましくは非フッ素化のものである。典型的には、界面活性剤はノニオン性又は両性である。好ましいものは、十分な剪断安定性をフルオロポリマー分散体にもたらすが、仕上げ手順において、熱加工で分解又は蒸発するものである。
【0076】
一実施形態では、本明細書で提供される3D印刷可能な組成物は、1種以上の安定化乳化剤を含有し得る。最適量は、変更することができ、バインダ材料及びフルオロポリマーに対するバインダ材料の比、界面活性剤の発泡性、界面活性剤の他の成分との相溶性、界面活性剤の表面活性及び界面活性剤の発泡性(過剰の発泡が好適ではない場合もあるため)に応じたものにできる。安定化乳化剤の典型的な量は、3D印刷可能な組成物の重量に基づいて、0.5〜12重量%である。
【0077】
安定化乳化剤の例としては、エトキシル化アルコール、アミンオキサイド界面活性剤及びエトキシル化(ethxoyated)アミン界面活性剤(以下にて更に詳細に記載する)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
エトキシル化アルコール界面活性剤
ノニオン性界面活性剤の例は、アルキルアリールポリエトキシアルコール(好ましくないが)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル界面活性剤及びアルコキシル化アセチレンジオール、好ましくはエトキシル化アセチレンジオール、並びにこのような界面活性剤の混合物の群から選択することができる。
【0079】
特定の実施形態では、ノニオン界面活性剤又はノニオン界面活性剤の混合物は、次の一般式
O−X−R
[式中、Rは、直鎖状又は分枝状の脂肪族又は芳香族炭化水素基を表し、1個以上のカテナリー酸素原子を含有し得、少なくとも8個の炭素原子、好ましくは8個〜18個の炭素原子を有する。]に対応する。好ましい実施形態では、残基Rは、残基(R’)(R’’)C−[式中、R’及びR’’は、同一であっても異なっていてもよい、直鎖状、分枝状又は環式アルキル基である。]に対応する。Rは、水素又はC〜Cアルキル基を表す。Xは、1個以上のプロポキシ単位もまた含有し得る、複数のエトキシ単位を表す。例えば、Xは−[CHCHO]−[RO]−を表し得る。Rは3個の炭素原子を有するアルキレンを表す。nは、0〜40の値を有し、mは、0〜40の値を有し、n+mの合計は、少なくとも2であり、n及びmで指定された単位は、ランダムに配置され得る。上記乳化剤の混合物もまた、使用してよい。市販のノニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤の混合物としては、Clariant GmbHから商品名GENAPOL、例えばGENAPOL X−080及びGENAPOL PF40等で入手可能なものが挙げられる。市販されている更なる好適なノニオン性界面活性剤としては、Dow Chemical Companyの商品名Tergitol TMN6、Tergitol TMN100X、及びTergitol TMN10のものが挙げられる。
【0080】
アミンオキサイド界面活性剤
一実施形態では、3D印刷可能な組成物は、1種以上のアミンオキサイド界面活性剤を含み得る。このような乳化剤は、例えば、米国特許第8,097,673(B2)号に記載されている。
【0081】
アミンオキサイド界面活性剤は、次の一般式
(R)(R)(R)N→O
[式中、Rは、次の式
−(C=O)−X−(C=O)(CH
[式中、Rは、1〜20個の炭素原子を有する、飽和又は不飽和、分枝状又は非分枝状、環式又は非環式の、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、エーテル基又はヒドロキシエーテル基であり、Xは、O、NH又はNR[式中、Rは、1〜10個の炭素原子を有する、飽和又は不飽和、分枝状又は非分枝状、環式又は非環式の、ハロゲン又はN−オキシルアミノ基にて任意に置換された、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、エーテル基又はヒドロキシエーテル基から選択される。]であり、a及びbは0又は1(ただし、a+b=1)であり、nは2〜6である。]の基であり、
及びRは、独立して1〜10個の炭素原子を有する、飽和又は不飽和、分枝状又は非分枝状、環式又は非環式の、ハロゲンにて任意に置換された、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、エーテル基又はヒドロキシエーテル基から選択される。
及びRは、化学結合により結合し、環を形成してもよい。]に対応し得る。
【0082】
、R及びRが、ハロゲン置換されている場合は、好ましくは、ハロゲン置換は、基の炭素原子に結合した原子の約70%以下がハロゲン原子である、より好ましくは、約50%以下がハロゲン原子であるよう制限される。最も好ましくは、R、R、R及びRは、ハロゲン置換されていない。
【0083】
が、N−オキシルアミノで置換されている場合は、窒素原子に結合した基は、1〜10個の炭素原子を有することが好ましい。
【0084】
好ましい界面活性剤では、R1は、次の式
−(C=O)−X−(C=O)−(CH
[式中、Rは、1〜20個の炭素原子を有するアルキルを含み、XはNHであり、a及びbは0又は1(ただし、a+b=1)であり、nは2〜4である。]の基である。
【0085】
より好ましい界面活性剤では、R1は、次の式
−(C=O)−X−(C=O)−(CH
[式中、Rは、5〜20個の炭素原子を有するアルキルを含み、XはNHであり、a及びbは0又は1(ただし、a+b=1)であり、nは3である。]の基である。
【0086】
次の式
(R)(R)(R)N→O中のR及びRは、独立して、
飽和又は不飽和、分枝状又は非分枝状、環式又は非環式の、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基又はヒドロキシアルキル基から選択されてよい。
【0087】
一実施形態では、上記式中のR及びRは、各々独立して、1〜2個の炭素原子を有するアルキル又はヒドロキシアルキル基から選択される。
【0088】
具体例としては、ココアミドプロピルジメチルアミンオキサイド、2−エチルヘキシルアミドプロピルジメチルアミンオキサイド、及びオクチルアミドプロピルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。
【0089】
アミンオキサイド界面活性剤は、例えば、ClariantからGENAMINOXの商品名で市販されている。
【0090】
エトキシル化アミン界面活性剤
別の実施形態では、3D印刷可能な組成物は、1種以上のエトキシル化アミン界面活性剤を含み得る。アミンオキサイド界面活性剤は、例えば、米国特許第4,605,773号に記載されている。エトキシル化アミン界面活性剤は、次の式
【化1】
[式中、R、R及びRは、互いに独立して分枝状、直鎖状又は環式の、アルキル残基、アルキルオキシ残基、又はポリオキシアルキル残基であるような非極性残基である。]に対応し得る。各々の非極性残基は、互いに独立して4個以上、6個以上、8個以上、かつ30個未満、より好ましくは10個を上回りかつ20個未満、最も好ましくは6〜18個の間のC原子を含んでよい。いくつかの実施形態では、残基R、R又はRの1個以上は、1位(すなわち、N原子に隣接する位置)においてアルキル置換(好ましくはメチル又はエチル基によって)されているか、又は1位においてジアルキル置換されていてよい。
【0091】
上記両方の式において、n、mは整数を表し、互いに独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13若しくは14、又は1〜10、1〜6若しくは1〜4である。好ましくは、nとmとの合計は、30未満、より好ましくは25未満、最も好ましくは20未満である。nとmとの合計は、2、3、4、5、8、10、12、20又は25であってもよい。
【0092】
分子内のC原子の総数は、50未満又は40未満、又は20未満であってよい。
【0093】
一実施形態では、N原子に結合している三級アミンの1個以上の残基は、次の式
R’−(OCH−CR’’H)
[式中、R’は、水素、分枝状、直鎖状又は環式のアルキル残基又はアリール残基であり、R’’は、水素又は例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、又はブチル基を含むアルキル基である。]に対応していてよい。好ましくは、R’はメチル、エチル、プロピル、又はイソプロピル基である。
xは1、2、3、又は1〜10、1〜6若しくは1〜4の整数を表す。
【0094】
別の実施形態では、xは1〜10の整数であり、R’’は、H又はCHであり、R’は、H、又はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル等の直鎖状若しくは分枝状アルキルからなる群から選択される。
【0095】
容易に入手可能なエトキシル化アミンの例としては、Dow Chemical Company(Midland,MI,USA)からTRITON RWシリーズの商品名(例えば、TRITON RW−20、RW−50、RW−70、RW−100、RW−150等)にて販売されているもの、又はClariant(Basel,Switzerland)からGENAMINの商品名で販売されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
好適であると想定される他の乳化剤としては、例えば、国際公開第2011/014715(A2)(Zippliesら)中に記載されているような、グリコサイド界面活性剤及びポリソルベート等の糖系界面活性剤が挙げられる。
【0097】
水性フルオロポリマー分散体を使用することに代えて、このような分散体から凝集させたフルオロポリマーを使用してもよい。凝集したポリマー粒子を溶媒、典型的には有機溶媒に分散させてもよい。
【0098】
あるいは、懸濁重合により得られたフルオロポリマーを使用してもよい。典型的には、得られた粒子は、500μmを上回り得る粒子径を、有し得る。
【0099】
3D印刷可能な組成物中のフルオロポリマー粒子の好ましい粒子径は、500μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは5μm以下である。いずれの場合も、実用的な製造限界は、かかる粒子が0.1μm以上、0.5μm以上又は1μm以上の寸法を有すると、規定することができる。すなわち、本発明の記載は、0.1、0.5又は1μmから始まり、5、50又は500μm以下(z−平均粒子径によって決定)の範囲を含む。
【0100】
フルオロポリマー粒子を、このような粒子径に粉砕してもよい。
【0101】
フルオロポリマーのブレンド
一実施形態では、3D印刷可能な組成物はフルオロポリマーの混合物を含む。例えば、一実施形態では、組成物は異なる非溶融加工性フルオロポリマー、例えば異なる分子量のポリマーの混合物を含む。一実施形態では、組成物は、上述した1種以上の非溶融加工性フルオロポリマーと、1種以上のPTFE微粉末との混合物を含む。PTFE微粉末は、上述したPTFEと同一の分子組成及び同様の融点を有しているが、はるかに低い分子量及び溶融粘度を有する。これらは、0.1g/10分を上回るMFI(372/10)を有する。PTFE微粉末は、市販されており、典型的には、高分子量PTFEの放射線劣化とそれに続く粉砕によって調製される。微粉末はまた、例えば、Dyneon GmbH(Burgkirchen Germany)又は他のフルオロポリマー製造元から市販されている。
【0102】
別の実施形態では、3D印刷可能な組成物は、1種以上の非溶融加工性フルオロポリマーと、1種以上の溶融加工性フルオロポリマーとのブレンドを含む。溶融加工性フルオロサーモプラスチックの、非溶融加工性フルオロポリマーに対する重量比は、1:1〜1:1000、又は1:2〜1:100であってよい。非溶融加工性フルオロポリマーとのブレンド中の溶融加工性フルオロポリマーの存在は、バインダ材料の除去によって生成した空隙のより迅速な充填をもたらし得る。このことは、バインダ材料を物品から熱的に除去した後、又はその際に、より高密度な物品をもたらし得るため有利であり得る。
【0103】
一実施形態では、ブレンドに使用されるフルオロサーモプラスチックは、PFAである。PFAは、TFEと、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)、ペルフルオロアルキルアリルエーテル(PAAE)の少なくとも1種及びこれらの組み合わせとのコポリマーである。典型的なコポリマーの量は、1.7重量%〜10重量%の範囲である。好ましくは、PFAは280℃〜315℃の間、例えば280℃〜300℃の間の融点を有する。
【0104】
フルオロサーモプラスチックは、直鎖状であっても分枝状であってもよく、例えばHFPを含む場合には、例えば国際公開第2008/140914(A1)号に記載のように、重合において分枝変性剤(branching modifiers)を使用することによって生成する、より長い分枝を含有してもよい。
【0105】
ポリマーを水性分散体の形態で提供し、次いでこれらの分散体をブレンドすることによって、フルオロポリマーのブレンドを都合よく調製することができる。得られた分散体を、必要であれば、熱による蒸発、限外濾過又は当該技術分野において既知である他の方法によって、濃縮し、水を除去してもよい。3D印刷可能な組成物の他の成分を、フルオロポリマーのブレンドを含有する分散体に添加し、最終的な3D印刷可能な組成物を提供することができる。
【0106】
反応性材料
重合性バインダ
3D印刷可能な組成物の反応性材料は、重合性バインダ材料を含む。重合性バインダ材料を、3Dプリンタのエネルギー源に、重合開始剤を使用する場合は重合開始剤に、又はその両方に適合させる。重合開始剤はエネルギー源により活性化され得、ひいては、重合性バインダ材料の重合を開始させる。エネルギー源から放出されたエネルギーへの3D印刷可能な組成物の暴露によって、3Dプリンタのエネルギー源から放出されたエネルギーに暴露された組成物の一部において、適切な速度での重合の進行が可能となるように、重合性バインダ材料を積層プロセスデバイス(3Dプリンタ)のエネルギー源又は重合開始剤に適合させる。例えば、エネルギー源がUV光の場合、重合性バインダは、UV光の照射により活性化して重合を開始する反応性基を有する。代替的に又は追加的に、組成物は、紫外線照射に反応性である光開始剤を含有してもよく、活性化した光開始剤は、次に、重合性バインダ中の反応性基を活性化させ、重合を開始させる。
【0107】
重合性バインダ材料の構造及び性質は、所望の結果を達成することができない場合を除いて、特に限定されない。重合が始まると、重合性バインダは、分散したフルオロポリマー粒子とネットワークを形成し、フルオロポリマー粒子が重合したバインダのネットワーク中に含有されている、固化又はゲル化組成物をもたらす。この組成物は、すでに最終物品の三次元形状を有しているが、液体、例えば水を含有し得、「グリーン体」と称される。重合性バインダ材料の最適な量及びタイプを、次のことを考慮して決定してよい。すなわち、バインダ材料の量は、好ましくは、層が作製される領域で固化するのに十分な量である。すなわち、バインダ材料は、所望の寸法の固化した層を形成するのに有効な量で存在することが好ましい。第2に、重合バインダの量をフルオロポリマー含有量に対して最小にして、後処理中の物品の収縮を、最小化するか、又は回避してもよい。重合したバインダ材料を除去する際に生成した、完成した物品内の空洞の形成もまた、最小化又は更に避けることができる。また、フルオロポリマー分散体の安定性も考慮すべきであり、バインダ材料の量が多すぎると、フルオロポリマー分散体又は溶液の早すぎる凝集をもたらし得る。バインダ材料は、重合して、十分な強度の固体又はゲルを形成し、作製する物体の作製を通して、寸法安定性を保持することができる。しかし、重合したバインダ材料は、完成した物品の寸法安定性には関与するものではなく、物品を寸法的に不安定にすることなく、後処理の間に熱的に除去することができる。重合性バインダ材料は、積層プロセスマシン内の条件下で迅速に重合することが望ましい。
【0108】
更に、重合したバインダは、フルオロポリマーの溶融構造(melting structure)よりも低い温度で熱分解し、好ましくはこのような条件で燃焼させることができる。
【0109】
好ましくは、重合性バインダ材料は、3D印刷可能な組成物中に溶解又は分散している。一実施形態では、重合性バインダ材料は液体である。バインダ材料を溶解又は分散させるために、有機溶媒又は分散剤を使用することができる。又は水のような水性媒体を使用することができる。有機溶媒又は分散剤は、好ましくは不活性であり、バインダ又は重合開始剤と重合も反応もしない。
【0110】
好適な重合性バインダ材料としては、重合性基、好ましくは末端基を有する、モノマー、オリゴマー又はポリマーが挙げられ、これらは好ましくは液体である、又は液体、例えば水に分散又は溶解可能である。重合性末端基は、電磁照射に対して反応性であり重合する基か、又は重合開始剤によって活性化され重合する基か、又はこれらの組み合わせである基を含む。
【0111】
好適な重合性バインダ材料には、1個以上のオレフィン系不飽和部位(unsaturation)を含む重合性基を有する化合物が含まれる。例としては、1個以上のエチレン性単位(すなわち、炭素−炭素不飽和)を含む末端基又は側基を有する化合物が挙げられる。例としては、ビニル基(例えば、HC=CX−基)、アリル基(例えば、HC=CX−CX−)、ビニルエーテル基(例えば、HC=CHX−O−)、アリルエーテル基、例えば、(HC=CX−CX−O−)及びアクリレート基(例えば、HC=CHX−CO−)並びにこれらの組み合わせから選択される1種以上の基を含む末端基が挙げられる。式中、XはHを表す。Xは、H、メチル、ハロゲン(F、Cl、Br、I)又はニトリルを表し、X及びXは、各々独立して、H、メチル、ハロゲン(F、Cl、Br、I)又はニトリルを表す。一実施形態では、X又はXの一方はメチルであり、一方はHであり、更にX及びXもまたHである。好ましい実施形態では、X、X、X及びXは全てHである。Xは、H又はCHを表す。例としては、エチレン基、ビニル基、アリル基が挙げられるが、これらに限定されない。好適な重合性基としては、一般式(I)〜(VI)に対応する1個以上の単位を含む末端基及び側基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
C=C(X)− (I)
C=C(X)−O− (II)
C=C(X)−CH−O− (III)
H2C=C(X)−C(=O)− (IV)
C=CX−CO− (V)
C=C(X)−OC(O)− (VI)
【0113】
重合性バインダ材料の例としては、モノアクリレート及びモノメタクリレート、すなわち、アクリレート基又はメタクリレート基(例えば、HC=CHX−CO基[式中、XはCHである。])を含む、1個の末端基又は側基を有する化合物が挙げられる。別の例としては、ポリアクリレート又はポリメチルアクリレート、すなわち、アクリレート基又はメタクリレート基を含む2個以上の末端基及び/又は側基を有する化合物が挙げられる。更に他の例としては、モノマー、オリゴマー及びポリマーアクリレートが挙げられる。オリゴマーアクリレートは、1〜25個の繰り返しモノマー単位を含む。ポリマーアクリレートは、25個を上回る繰り返し単位を含む。更に、これらの化合物は、重合性アクリレートとなるための、少なくとも1個のアクリレート末端基又は側基を含む。このような、モノマー、オリゴマー、又はポリマーアクリレートの繰り返し単位の例としては、エトキシ(−CHCH−O−)単位及びプロポキシ(−CO−)単位及びアクリレート単位並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。エトキシ単位を含むアクリレートは、「エトキシル化アクリレート」とも称される。
【0114】
具体例としては、エトキシル化又はポリエトキシル化アクリレート、例えば、1個、2個又は3個のアクリル末端基又は側基を有するポリエチレングリコールが挙げられる。その他の例としては、酸素原子が1回以上介在し得るアルキル鎖又はアルキレン鎖に結合した1個以上のアクリレート基を有するアクリレートが挙げられる。アクリレートとしては、モノアクリレート、ジアクリレート及びトリアクリレート並びにこれらの組み合わせ(これらのメタクリル等価物も含む)が挙げられるが、これらに限定されない。具体例としては、エキソキシル化(exthoxylated)トリアクリレート及びジアクリレート並びに対応するメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。具体例としては、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(SR415)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(SR252)、ポリエチレングリコールジアクリレート(SR344)、エトキシル化ビスフェニルAジメタクリレート(SR9036A)、エトキシル化ビスフェニルAジメタクリレート(SR9038)が挙げられる。これらは、全て、Sartomer Americas(Exton,PA,USA)から市販されている。
【0115】
本開示の一実施形態において、バインダ材料には、ポリエチレングリコールの、ジ−若しくはトリアクリレート(triacrlyate)又はポリエチレン(polylethlyene)グリコールのジアクリレート及びトリアクリレートの組み合わせが含まれる。
【0116】
重合性材料の全体組成は、重合した材料が液体であるか、又は溶媒中又は3D印刷可能な組成物に使用される分散媒(例えば水)中に可溶であるように選択されてもよい。更に、重合性材料の全体組成を3D印刷可能な組成物の他の成分との相溶性を調整するため、又は重合した材料の強度、可撓性及び均一性を調整するために選択してもよい。更にまた、重合性材料の全体組成を、焼結前の重合材料の燃焼特性を調整するために選択してもよい。バインダ材料の様々な組み合わせが可能であり、当業者にとって利用可能である。異なる重合性バインダ材料の混合物を使用してもよい。例えば、架橋ネットワークを生成する、二官能性又は多官能性の重合性バインダ材料を含むことができる。好結果の構築には、典型的には、ある程度のグリーン体ゲル強度及び形状の解像度が必要とされる。架橋させる手法は、重合によってより強固なネットワークが形成されるため、多くの場合、より低いエネルギー線量で、より大きなグリーン体ゲル強度が実現できる。複数の重合性基を有するモノマーが存在すると、プリンティングゾルを重合する際に、形成されるゲル組成物の強度を高める傾向がある。複数の重合性基を有するモノマーの量は、グリーン体の可撓性及び強度を調整するために用いることができ、グリーン体の解像度及び最終物品の解像度を間接的に最適化することができる。
【0117】
以下、例示的なバインダ材料は、上記の材料の代替物として又はそれらと組み合わせて有用であると考えられる。
【0118】
例としては、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート及びモノ−2−(メタクリルオキシエチル)サクシネートが挙げられるが、これらに限定されない。バインダとして使用するか、又はバインダ組成物を調製するための、例示的な重合(polymerization)ヒドロキシル含有モノマーとしては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート及びヒドロキシブチルメタクリレートが挙げられる。アクリルオキシ及びメタクリルオキシ官能性ポリエチレンオキサイド、並びにポリプロピレンオキサイドもまた、重合性ヒドロキシル含有モノマーとして使用してもよい。
【0119】
例示的なラジカル重合性バインダ材料は、モノ−(メタクリルオキシポリエチレングリコール)サクシネートを含む。
【0120】
ラジカル重合性バインダ材料(光開始剤により活性化(activitatted)される)の別の例は、重合性シランである。例示的な重合性シランとしては、メタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン又はアクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン(例えば、3−(メタクリルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン及び3−(アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシランとしての、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン及び3−(メタクリルオキシ)プロピルトリエトキシシラン)、メタクリルオキシアルキルジアルキルアルコキシシラン又はアクリルオキシアルキルジアルキルアルコキシシラン(例えば、3−(メタクリルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン)、メルカプトアルキルトリアルコキシシラン(例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、アリールトリアルコキシシラン(例えば、スチリルエチルトリメトキシシラン)、ビニルシラン(例えば、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン)が挙げられる。
【0121】
2個の(メタ)アクリロイル基を有する例示的なモノマーとしては、1,2−エタンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,12−ドデカンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレン/ポリプロピレンコポリマージアクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリントリ(メタ)アクリレート及びネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート変性カプロラクトンが挙げられる。
【0122】
3個又は4個の(メタ)アクリロイル基を有する例示的なモノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、Cytec Industries,Inc.(Smyrna,GA,USA)から商品名TMPTA−Nで、またSartomer(Exton,PA,USA)から商品名SR−351で市販)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR−444で市販)、エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR−454で市販)、エトキシル化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR−494で市販)、トリス(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR−368で市販)、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物(例えば、Cytec Industries,Inc.から、商品名PETIAでテトラアクリレート対トリアクリレートの比が約1:1のもの、及び商品名PETA−Kでテトラアクリレート対トリアクリレートの比が約3:1のものが市販)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR−295で市販)及びジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR−355で市販)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
5個又は6個の(メタ)アクリロイル基を有する例示的なモノマーとしては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例えば、Sartomerから商品名SR−399で市販)及び六官能性ウレタンアクリレート(例えば、Sartomerから商品名CN975で市販)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
重合性バインダとして使用するための例示的なモノマーとしては、直鎖状、分枝状又は環式の構造を有するアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。好適なアルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−メチル−2−ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−オクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、2−オクチルデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びヘプタデカニル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
最適量のバインダ材料を、使用される具体的な系に適合させることができる。一般に、重合性バインダ材料の好適な量は、1〜50%、又は2〜25%、又は10〜20%(組成物の総重量に基づいた重量%)である。重合したバインダは、仕上げ手順の際に除去する必要があり得、物品の構造破損を引き起こし得るため、フルオロポリマー粒子を上回る大過剰量で使用されるべきではない。重合性バインダ材料に対するフルオロポリマーの最適比は、バインダ材料のタイプ及び性質に依存し、典型的には、フルオロポリマーの重合性バインダ材料に対する重量比としては、5:1〜1:2、好ましくは4:1〜1:1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
いくつかの用途では、反応混合物中の、重合性バインダ材料のフルオロポリマー粒子に対する重量比を最小化することが有利であり得る。これは、焼結物品の形成に先立って燃焼させる必要がある有機材料の分解生成物の量を低減する傾向がある。バインダの量は、フルオロポリマー粒子が焼結する速度にもまた、依存し得る。焼結が迅速に進行すると、バインダ材料からの燃焼ガスが物品の内部にトラップされ、密度の低下又は表面欠陥をもたらし得る。この場合、酸化触媒を使用してよく、又はバインダの量を低減してもよい。
【0127】
好ましくは、重合性バインダ材料は、100〜5,000g/モルの重量を有する、又は100〜5,000g/モルの分子量を有する重合性モノマー又はオリゴマーを含む。これにより、好都合な低粘度の3D印刷可能な組成物の形成が促進される。また、低分子量重合性バインダ材料は、高分子量材料よりも良好に水性分散体に溶解し得る。
【0128】
本明細書にて検討される他の例示的な重合性バインダ材料としては、重合性基を有する材料が挙げられ、それには、エポキシド、シラン及び重合してポリウレタンを形成可能な反応性成分(例えば、ヒドロキシル基、エステル基、イソシアネート基)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
他の添加剤
重合開始剤
3D印刷可能な組成物中に、重合性バインダ材料の重合を開始させる1種以上の重合開始剤が存在していてもよい。重合開始剤は、エネルギー源に暴露されると、例えば、紫外線若しくは電子ビーム又は熱に暴露されると、活性化される。可視光又は不可視光の照射により活性化する開始剤を光開始剤と称する。重合開始剤は、有機物であっても無機物であってもよい。重合開始剤は、当該技術分野において既知であり、市販されている。好ましくは、以下の部類の光開始剤(複数可)が使用可能である。すなわち、a)ラジカルが、ドナー化合物からの水素原子の引き抜きによって生成される二成分系、b)2つのラジカルが開裂によって生じる一成分系、が使用可能である。
【0130】
タイプ(a)による光開始剤の例は、典型的には、脂肪族アミンと組み合わせた、ベンゾフェノン、キサントン又はキノンから選択される部分を含有する。
【0131】
タイプ(b)による光開始剤の例は、典型的には、ベンゾインエーテル、アセトフェノン、ベンゾイルオキシム又はアシルホスフィンから選択される部分を含有する。
【0132】
例示的なUV開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルベンゾフェノン(例えば、Ciba Specialty Chemicals Corp.(Tarrytown,NY)から商品名「IRGACURE184」で入手可能)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(例えば、Ciba Specialty Chemicals Corp.から商品名「IRGACURE2529」で入手可能)、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(例えば、Ciba Specialty Chemicals Corp.から商品名「DAROCURE D111」で入手可能)及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(例えば、Ciba Specialty Chemicals Corp.から商品名「IRGACURE819」で入手可能)が挙げられる。
【0133】
本開示の一実施形態において、重合開始剤は、アクリレートから選択される重合性バインダ材料とともに使用される。典型的には、重合開始剤は光開始剤であり、可視光又は不可視光の照射によって、好ましくは紫外線照射によって活性化される。開始剤の最適量は、使用する系に依存する。典型的な量としては、使用する重合性バインダ材料の重量の、1〜0.005倍の量が挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
光開始剤によって、重合性バインダ材料の重合が開始される(start or initiate)。典型的な光開始剤(複数可)の量としては、3D印刷可能な組成物の重量に対する重量%として、下限量:少なくとも0.01重量%、又は少なくとも0.1重量%、又は少なくとも0.5重量%、上限量:最大で0.5重量%、又は最大で1.5重量%、又は最大で3重量%、範囲:0.01〜3重量%、又は0.5〜1.5重量%、の量が挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
可視光又は不可視光(紫外線等)により活性化される重合開始剤に代えて、熱的に又は化学線により活性化される開始剤を使用することも可能である。その場合、エネルギー源を適切に選択して、開始剤の活性化を可能にする。
【0136】
重合阻害剤
3D印刷可能な組成物はまた、重合反応を積層プロセスマシンのエネルギー源に暴露された領域に局在化させておく一助とするために、1種以上の重合阻害剤を含むことができる。このような重合阻害剤は、例えばラジカルスカベンジャ(scavangers)として作用することにより、重合反応を遅くしたり、終了させたりすることができる。紫外線を含む光照射による重合に対する阻害剤は、当該技術分野では「光阻害剤」として知られており、Sigma−Aldrich(St Louis,MO,USA)から入手可能な、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等の、市販の材料が挙げられる。阻害剤の最適量は、重合性バインダ材料、開始剤の系、及び使用されるエネルギー源に依存する。阻害剤の典型的な量としては、重合開始剤の量(重量による)の0.9〜0.001倍の量が挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
フィラー、顔料、紫外線増強剤及び酸化触媒
3D印刷可能な組成物は、使用される3Dプリンタ及び熱により後処理に適合する場合、フィラー、顔料又は染料を更に含むことができる。フィラーとしては、炭化ケイ素、窒化ホウ素、硫化モリブデン、酸化アルミニウム、炭素粒子(黒鉛又はカーボンブラック等)、炭素繊維、カーボンナノチューブを挙げることができるが、これらに限定されない。フィラーの含有量は、使用する系に最適化することができ、典型的には、使用されるフルオロポリマー及びバインダ材料に応じて、0.01〜10重量%の間、又は30重量%以下、又は50重量%以下(組成物の総重量に基づく)であってよい。フィラーは、微粒子の形態であり、3D印刷可能な組成物中での均一な分散が可能となるよう、十分に小さい粒子径を有するべきである。3D印刷可能な組成物に適合させるために、フィラー粒子は、有利には500μm未満、好ましくは50μm未満、又は5μm未満の粒子径を有する。
【0138】
顔料は、熱による後処理手順において加えられる温度、すなわち、少なくとも非溶融加工性フルオロポリマーの溶融温度で熱的に安定である必要がある。
【0139】
3D印刷可能な組成物には、エネルギーからの(from the energy)照射エネルギーを増加させる成分もまた、含まれていてもよい。例えば、紫外線照射によって活性化することによる、紫外線増強剤(「蛍光増白剤」)が組成物中に含有されてもよい。これらは、紫外線及び紫色領域(通常340〜370nm)の光を吸収し、青色領域(典型的には420〜470nm)の光を蛍光により再発光させる化合物である。有用な蛍光増白剤は、Benetex OB−M1(Lakefieldct.Suwanee,GA30024)である。この紫外線増白剤は、エネルギー源からの放射線が、3D印刷可能な組成物を通って透過するのを制限すること、及び重合を局所的な領域へと制御すること、の一助にもなり得る。
【0140】
また、3D印刷可能な組成物中に酸化触媒を含有させて、熱による後処理手順の際に、バインダの燃焼を促進することもできる。これは、より平滑な表面を生成すること、及び表面欠陥の形成を回避すること、の一助になり得る。焼結工程中に表面粒子が融合したときに、バインダ材料の燃焼が完了していない場合には、トラップされた燃焼ガスが、焼結物品の表面上に微細気泡又は微細な亀裂の形成をもたらし得ると考えられる。酸化触媒は、表面上のフルオロポリマー粒子が融合する前に、燃焼ガスが蒸発してしまっているように、燃焼を促進し得る。酸化触媒は、例えば米国特許第4,120,608号に記載されており、酸化セリウム又は他の金属酸化物を含む。酸化セリウムは、Nyacol Nano Technologies Inc.から市販されている。これは、US源(US source)からの散乱効果を低減し得る。
【0141】
3D印刷可能な組成物の積層プロセス
3D印刷可能な組成物は、好ましくは、フルオロポリマー粒子を含有する溶液又は分散体である。粒子は、不活性有機溶媒若しくは水若しくは重合性バインダ材料、又はこれらの組み合わせ中に分散していてよい。好ましくは、フルオロポリマー粒子は水性媒体中に分散され、3D印刷可能な組成物はフルオロポリマー粒子の水性分散体を含む。該組成物のフルオロポリマー含有量は可能な限り高いことが好ましいが、分散体の安定性(フルオロポリマーの凝集又は沈殿)により制限され得、又は、分散体がペーストに変換され、固化した層が作製されないほどに、重合の進行が遅くなり得る。一般に、非融解加工性フルオロポリマーの濃度としては、組成物の総重量に基づいて、約25〜60%、約30〜50%又は約31〜45重量%の濃度を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0142】
積層プロセスマシン(3Dプリンタ)(例えば、光造形又は液槽重合について記載されたもの)に、組成物を投入し、積層プロセスに供して、「グリーン体」とも称される、三次元物体を作製する。3D印刷可能な組成物として水性分散体を使用する場合、典型的には、グリーン体は、水性ゲルの形態であり、乾燥させて水を除去する必要がある。分散剤として水を使用しない他の組成物では、重合(固化又はゲル化)した構造体から分散剤を除去する必要がある。グリーン体を3Dプリンタから取り出し、未反応の組成物から分離する。未反応組成物は廃棄しても、別の積層プロセスにおいて再利用してもよい。
【0143】
得られたグリーン体を乾燥して、溶媒又は分散媒を、これらを使用した場合には、除去する。乾燥は、グリーン体の全体が可能な限り均一に乾燥することを確保して行うべきである。乾燥は、好ましくはゆっくりと行い、物体中の亀裂又は歪みの形成を避ける。典型的には、乾燥は室温にて12又は24時間で、又は真空オーブンを使用して(例えば、30〜80℃又は40〜70℃の温度、760〜1×10トールの間の圧力を使用して)実施することができる。また、制御湿度下(例えば50〜90%の湿度)で乾燥を実施してもよい。最適な処理は、使用する3D印刷可能な組成物並びに作製する物品の寸法及び形状に依存し得る。
【0144】
重合したバインダ材料を、加熱レジームとは別個に、又は並行してグリーン体から除去することができる。都合がよいことに、これは、熱処理によって行われ、重合した材料を分解(例えば、酸化又は燃焼)及び/又は蒸発させる。とりわけMFIの低いフルオロポリマー及びとりわけ「非溶融加工性」フルオロポリマーについては焼結を使用してもよく、その際は、融点を上回る加熱を実施してもよいが、温度は、典型的には、フルオロポリマー物品が溶融も破壊もされないように選択される。しかしながら、好ましくは(prefably)、焼結は、後の別個の熱処理において実施される。典型的には、物品は、熱処理の燃焼工程中に黒色となる。追加の加熱工程では、非溶融加工性フルオロポリマーの溶融温度以上に昇温してもよい(「焼結」)。このような温度では、フルオロポリマー粒子は融合するが、これらのポリマーの溶融粘度が非常に高いため、それらはその形状を維持する。この焼結工程を介して、物品の密度を更に増加させることができる。焼結工程では、物品をフルオロポリマー(特に非溶融加工性フルオロポリマー)の溶融温度以上(但し、その分解温度未満)に加熱する。熱処理は、使用されるフルオロポリマーのメルトフローインデックスに依存し得る。フルオロポリマー(特に非融解加工性フルオロポリマー)の融点を、20℃以内、40℃以内、又は60℃以内で上回る熱処理を、焼結工程において実施してもよい。焼結工程では残りのバインダ材料が焼き切れ、物品は白色になる。しかしながら、いくつかの用途で所望され得ることであるが、バインダ材料が完全に焼き切れず、物品に残留量が残存するように、焼結を制御することができる。分解したバインダ材料の残留物の存在により、特定の用途に望ましい場合があるいくつかの特性を、物品に付加することができる。
【0145】
最終的な物品は、グリーン体と比較して幾分かの収縮が観察され得るが、典型的にはグリーン体と同じ形状を有する。積層プロセスマシンのプログラミング時には、制御及び試験運転を行うことにより、収縮を考慮することができる。3D印刷可能な組成物のフルオロポリマー含有量を最大化することによって、収縮を最小化することができる。TFEコポリマーにおけるコモノマー含有量、特にPAVE又はPAAE含有量が高くなると、収縮の低減に至り得る。
【0146】
焼結後に得られたフルオロポリマー物品は、驚くほど少ないボイドを有する。理論に束縛されるものではないが、フルオロポリマー粒子は、焼結工程中に互いに融合し、バインダを除去することにより生じた空隙をなくすと考えられる。20%(200‰)未満、好ましくは10%(100‰)未満又は2%(20‰)未満の空隙率を有する、成形フルオロポリマーを得ることができる。例えば、0.1〜1.5%(1〜15‰)の間の、2.2〜5.5%(22〜55‰)の間の、6.0〜12.0%(60〜120‰)の間の、又は12.5〜18.5%(125〜185‰)の間の空隙率を有する、成形フルオロポリマーを提供することができる。一実施形態では、フルオロポリマーは、1‰〜55‰の空隙率(Voi)を有する。更に、3D印刷可能な組成物中のフルオロポリマーの粒子径が小さいことは、このような、低空隙率を特徴とする、高密度な成形フルオロポリマーを作製するのに有益であるとも考えられる。
【0147】
200%又は100%での伸びでの、ストレッチボイドインデックス(stretch void index、SVI)が200未満又は100未満又は更に9未満である、成形フルオロポリマーを得ることができると考えられる。
【0148】
フルオロポリマー物品、特にPTFE物品であって、フルオロポリマーが2.00g/cmを上回る密度、例えば2.05〜2.11g/cmの間の密度である、物品を、本明細書にて開示される方法によって得ることができる。一実施形態では、フルオロポリマー物品は、2.13〜2.17g/cmの密度を有する。周囲気圧(1バール)での焼結によって、このような密度及び空隙率を達成することができる。フルオロポリマーの融点を10〜40℃又は30℃〜60℃の間の温度だけ上回るが、ポリマーの分解温度は下回る温度にて、焼結を実施することができる。このような条件下でポリマー粒子が融合(合着)するが、ポリマーの溶融粘度が高いため、ポリマー物品全体の構造は維持される。温度が高すぎる、又は長すぎると、物品は変形し得る。このような場合、より低温又は短時間を使用すべきである。
【0149】
物品
上記フルオロポリマーを、本開示において提供される方法によって、成形して物品にすることができる。成形フルオロポリマーは、物品であり、「フルオロポリマー物品」とも称される。フルオロポリマー(fluorpolymer)物品はまた、他の物品の構成部品であってもよい。
【0150】
成形フルオロポリマーは、1種以上のフィラー、又は1種以上の他の成分を含有し得る。一実施形態では、成形フルオロポリマーは、50〜100%のフルオロポリマーを含む。一実施形態では、成形フルオロポリマーは、1種以上のフィラーを含み、フィラーの量は、フルオロポリマー物品の重量に基づいて、1重量%以下、又は10重量%以下、又は50重量%以下であってもよい。
【0151】
本開示の方法及び組成物の利点は、非溶融加工性フルオロポリマーを成形し、成形ツールを使用した機械加工によっては製造できなかった形状及びデザインの物品にし得ることである。この物品(This)としては、本質的に中空構造を含む一体型物品が挙げられる。中空構造は、機械加工によって作製することができるが、ある程度だけである。通常は、中空構造は、いくつかの工程で作製され、別個の部品を例えば溶接により接合する。これでは、肉眼で確認できる、継ぎ目(例えば、溶接継ぎ目)又はボンドラインが残る。本明細書で使用する「一体型物品」は、2個以上の部品が共に接合された接合部も境界面も有していない。それは、継ぎ目もボンドラインも有していない。本明細書にて提供される3D印刷可能な組成物を使用して、複雑な形状を有する一体型フルオロポリマー物品を、作製することができる。例としては、一体型の、本質的に中空のフルオロポリマー物品が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用する「本質的に中空の物品」は、中空構造物又は中空構成部品(これらに限定されないが、例えば、連続した又は本質的に連続した表面を有する中空球、円柱、立方体又は角錐)を含む物品である。本明細書で使用する「本質的に連続した表面」は、表面を貫く1つ以上の開口を含む。連続した表面ののうち、好ましくは、40%未満、又は30%未満、より好ましくは10%未満又は1%未満の表面領域が、表面を中空部内まで貫く1つ以上の開口により中断されている。従来の機械加工によっては製造が困難又は不可能ですらあった、他の構造物としては、溶接継ぎ目のないハニカム構造体が挙げられる。更なる例としては、1つ以上のアンダーカットを有する一体型物品、例えば、1つ以上の開口部(opening又はaperture)を有するが、開口部の内側又は開口部の後ろに1つ以上のアンダーカットを更に含む一体型物品が挙げられる。
【0152】
大型及び小型寸法のフルオロポリマー物品を製造することができる。積層プロセスデバイスの寸法のみが、製造可能な物品の寸法に制限を設け得る。寸法の小さい物品も、本明細書に記載の方法によって都合よく製造することができる。形成されたフルオロポリマーを含み、1.0cmより小さい、又は0.7mmより小さい長軸(場合により、長軸は直径であってもよい)を有する、物品を作製することができる。一実施形態では、約0.01〜約1.0mm、又は0.7〜1.5cmの長軸又は直径を有する、小型のフルオロポリマー物品を製造してもよい。別の実施形態では、例えば少なくとも1.1mmの、短軸又は直径を有する、物品を製造してもよい。
【0153】
従来の機械加工によって作製されたフルオロポリマー物品に匹敵する機械的特性を有する、フルオロポリマー物品を、本明細書に記載の積層プロセスによって製造することができる。例えば、少なくとも5MPa以上の、これらに限定されないが、例えば、12〜24MPa(DIN EN ISO12086−2)の引張り強度を有する成形フルオロポリマー、特に非溶融加工性フルオロポリマーを、本開示の方法によって製造することができる。成形フルオロポリマー、特に非溶融加工性成形フルオロポリマーは、少なくとも100%の破断点伸び、これらに限定されないが例えば、150〜400%の破断点伸びを有してもよい(DIN EN ISO12086−2、引張速度50mm/分)。
【0154】
本開示の方法及び組成物を用いて、全く圧力を加えることなく、すなわち、周囲圧力(1バール)又は更に減圧下で、2.05g/cmを上回る密度(specific density)を有する、成形フルオロポリマー及び物品を製造することができる。その結果、形成フルオロポリマーは配向されず、3つの空間方向のうちの少なくとも2つにおいて、本質的に等方性である。このことは、本明細書にて提供される方法及び組成物の、別の利点を提示する。例えば、50g/10分(MFI372/5)を下回る低MFIを有するフルオロポリマー、特にいわゆる非溶融加工性フルオロポリマーは、従来、高圧(及び温度)下において、フルオロポリマーに力をかけることにより、都合よく成形されてきた。その結果、成形フルオロポリマーは配向し(異方性)、成形フルオロポリマーは、異なる空間座標系において、異なる機械的特性を有し得る(例えば、縦方向及び横方向での異なる特性)。
【0155】
本開示の組成物及び方法を使用して、本質的に等方性である成形フルオロポリマーを作製することができる。例えば、20%未満、又は更に10%未満、又は更に5%未満の配向度(偏光顕微鏡法により決定される)を有する成形フルオロポリマーを、本明細書にて提供される3D印刷方法によって作製することができる。
【0156】
一実施形態では、その引張り強度及び/又は破断点伸びに関しては、本質的に等方性である成形フルオロポリマーを提供することができる。このことは、フルオロポリマーが3つの全空間配向(x−、y−、及びz−方向、xは縦方向、yは横方向、及びzはx及びy方向に対し垂直)のうち少なくとも2つにおいて本質的に同一の特性を有すること、又は特性のずれが50%未満、又は20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満及び最も好ましくは1%未満であることを意味する。
【0157】
良好な機械的特性を有する、成形フルオロポリマーを得ることができる。例えば、少なくとも5MPaの引張り強度、及び/又は少なくとも50%、好ましくは少なくとも100%の伸びを有する、成形フルオロポリマーを得ることができる。
【0158】
フルオロポリマー、特に非溶融加工性フルオロポリマーを成形し、規定の幾何学的形状の少なくとも1つの要素又は一部を有する物品にすることができる。規定の幾何学的形状としては、円、半円、楕円、半球体、正方形、長方形、立方体、多角形(三角形、六角形、五角形及び八角形が挙げられるがこれらに限定されない)及び多面体が挙げられるが、これらに限定されない。形状は、三次元であってもよく、角錐、直方体、立方体、円柱、半円柱、球体、半球体を含んでもよい。形状はまた、ダイヤモンド(2種の三角形の組合せ)のような異なる形状からなる形状を含む。例えば、ハニカム構造体は、幾何学的要素として数種類の六角形を含む。一実施形態では、幾何学的形状は、少なくとも0.5mm、少なくとも1mm又は少なくとも2mm、又は少なくとも1cmの軸又は直径を有する。
【0159】
不確かさを回避するために、成形フルオロポリマーは、コーティングを含まない。コーティングは、任意の種類のコーティングであり、スプレーコーティング、回転成形(roto molding)、ディップコーティング、バーコーティング、溶液キャスティング、ペーストコーティングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0160】
成形フルオロポリマーは、好ましくは焼結フルオロポリマーである。すなわち非溶融加工性フルオロポリマーは、焼結されている。
【0161】
本明細書で提供される3D印刷方法によって得られた成形フルオロポリマーは、従来の方法によって成形したものとは、その表面が、成形ツールによる痕跡を全く示さないという点において、異なる。これは、例えば、光学顕微鏡法又はラスタ電子顕微鏡法によって決定することができる。
【0162】
本明細書で提供される方法及び組成物の別の利点として、フィラーを含有する、フィラーの分布について本質的に等方性である、成形フルオロポリマーを作製できることがある。非溶融加工性フルオロポリマー(fluroopolymers)を、従来の成形方法により成形する際、非球形のフィラーは配向し得る。本明細書で提供される方法では、このようなフィラーは配向し得ず、フルオロポリマー組成物中にランダムに分布させることができる。このようなフィラーの例としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、ポリアラミド繊維、窒化ホウ素、酸化アルミニウム及び酸化アルミニウム含有フィラー、及び黒鉛、炭素及びカーボンナノチューブが挙げられるが、これらに限定されない。サンプルのフィラーの分布は、光学又は電子顕微鏡法によって決定することができる。
【0163】
本明細書で提供される方法及び組成物の別の利点として、その電子伝導性(electronically conductive properties)に関して本質的に等方性である成形フルオロポリマーを作製できることがある。このようなフルオロポリマー物品は、例えば、黒鉛及びカーボンナノチューブを含む、1種以上の電子伝導性フィラーを含む。電気伝導率及び電気体積抵抗率は、例えば1998年11月に公表されたASTM F84−98に従って測定することができる。
【0164】
本明細書で提供される方法及び組成物の別の利点として、熱伝導性に関して等方性である成形フルオロポリマーを作製できることがある。このようなフルオロポリマー物品は、熱伝導性であり、例えば黒鉛及び窒化ホウ素を含む、フィラーを含有する。熱伝導率及び熱抵抗率は、例えばASTM E1461−13(2013年10月に公表)に準拠して決定することができる。
【0165】
本開示の一実施形態では、「グリーン体」である成形フルオロポリマーを含む、フルオロポリマー物品が製造される。このような実施形態において、物品は、10〜50重量%の重合したバインダ材料、例えば本明細書に記載の重合性バインダ材料を重合させることにより得られたバインダ材料を含む。
【0166】
本開示の別の実施形態では、「グリーン体」である成形フルオロポリマーを含む、フルオロポリマー物品が製造される。このような実施形態において、物品は、重合させたバインダ材料、例えば本明細書に記載の重合性バインダ材料を重合させることにより得られたバインダ材料の、1〜25重量%の、燃焼反応の反応生成物を含む。
【0167】
様々な形状、デザイン及び機能のフルオロポリマー物品を得ることができる。また、様々なデザイン及び機能のフルオロポリマー物品を含む、物品を得ることができる。物品及びフルオロポリマー物品の例としては、ベアリング(例えば、摩擦ベアリング又はピストンベアリング)、ガスケット、軸封部、リングリップシール、ウォッシャシール、Oリング、溝付きシール、バルブ及びバルブシート、コネクタ、蓋及び容器が挙げられるが、これらに限定されない。物品は、医療用インプラント、化学反応器、スクリュー、はめば歯車、継手、ボルト、ポンプ、電極、熱交換器、ミキサー、タービン、変圧器、電気絶縁体、押出機であってよく又は、物品は、上記の物品を含む他の物品の構成部品であってもよい。物品は、酸、塩基、燃料、炭化水素に対する耐性が要求される用途、非粘着特性が要求される用途、耐熱性が要求される用途及びこれらの組み合わせにおいて使用することができる。
【0168】
好ましくは、その構成部品の物品は、成形フルオロポリマーを含み、フルオロポリマーは、1個以上のチャネル、穿孔、ハニカム構造、本質的に中空である構造及びこれらの組み合わせを含む構造体に形成されている。かかる構造体は、平坦であっても、曲面であっても、球状であってもよい。このような材料は、当該技術分野の非溶融加工性フルオロポリマーに使用される押出プロセスによってより都合良く作製することができるので、好ましくは、物品はチューブでもシートでもない。
【0169】
特定の実施形態の一覧
以下の例示的な実施形態の一覧は、本開示を列挙する特定の実施形態に限定することを意図せずに、本開示を更に説明するために提供するものである。
【0170】
一覧1
実施形態1.成形フルオロポリマーを含む物品であって、成形フルオロポリマーが、テトラフルオロエテン(TFE)のホモポリマー、又はTFEのコポリマーであり、フルオロポリマーの重量に基づいて20重量%以下の(up to and including 20% by weight)式
−CX=CX
[式中、X、X、Xは全てFであるか、又はX、X及びXのうちの少なくとも1個がFであり、その他はClであるかのいずれかであり、Rは、炭素原子が1〜12個、好ましくは1〜3個である直鎖状又は分枝状アルキル基であり、アルキル鎖は、酸素原子が1回以上介在し得て、その全水素原子はフッ素原子によって置換されている。]
に対応する1種以上のα−オレフィンを含み、フルオロポリマーは本質的に等方性であって、20%未満、好ましくは10%未満、又は2%未満の空隙率を有する、物品。
実施形態2.フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロペン、式
−O−(CF−CF=CF
[式中、nは1又は0を表し、Rは、直鎖状又は分枝状、環式又は非環式のペルフッ素化アルキル残基を表し、少なくとも1個のカテナリー酸素原子を含有する。]
に対応する1種以上のペルフッ素化α−オレフィンエーテル及びこのようなコモノマーの組み合わせから選択される、1種以上のコモノマーとの、コポリマーである、実施形態1に記載の物品。
実施形態3.フルオロポリマーが、TFEのホモポリマー、又はテトラフルオロエチレンと、フルオロポリマーの重量に基づいて1重量%以下の、式
−CX=CX
[式中、X、X、Xは全てFであるか、又はX、X及びXのうちの2個がFであり、1個はClであるかのいずれかであり、Rは、炭素原子が1〜12個、好ましくは1〜3個である直鎖状又は分枝状アルキル基であり、アルキル鎖は、酸素原子が1回以上介在し得て、その全水素原子はフッ素原子によって置換されている。]
に対応する1種以上のα−オレフィンとのコポリマーである、実施形態1又は2に記載の物品。
実施形態4.フルオロポリマーが、0.1〜1.5%の間の空隙率を有する、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の物品。
実施形態5.フルオロポリマーが、2.2〜5.5%の間の空隙率を有する、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の物品。
実施形態6.フルオロポリマーが、少なくとも317℃の融点を有する、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の物品。
実施形態7.フルオロポリマーが、327℃±10℃の範囲の融点を有する、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の物品。
実施形態8.フルオロポリマーが、330℃±7℃の範囲の融点を有する、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の物品。
実施形態9.フルオロポリマーが、372℃及び5kgの荷重で、1.0g/10分以下のメルトフローインデックスを有する、実施形態1〜8のいずれか1つに記載の物品。
実施形態10.成形フルオロポリマーが、少なくともMPaの引張り強度を有し、引張り強度は、x、y及びz方向で異なっていないか、又は差が20%未満である、実施形態1〜9のいずれか1つに記載の物品。
実施形態11.成形フルオロポリマーが、少なくとも100%の破断点伸びを有し、伸びは、x、y及びz方向で異なっていないか、又は差が20%未満である、実施形態1〜10のいずれか1つに記載の物品。
実施形態12.フルオロポリマーが、約2.13〜2.23g/cmの盛込密度を有する、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の物品。
実施形態13.約2.13〜2.23g/cmの盛込密度を有する、実施形態1〜12のいずれか1つに記載の物品。
実施形態14.フルオロポリマーが電子伝導性フィラーを含み、x、y及びz方向における電子伝導率の差は、20%未満である、実施形態1〜13のいずれか1つに記載の物品。
実施形態15.フルオロポリマーが熱伝導性フィラーを含み、x、y及びz方向における熱伝導率の差は、20%未満である、実施形態1〜14のいずれか1つに記載の物品。
実施形態16.30〜100%のフルオロポリマー、及び0%〜50%の重合したバインダ材料、及び0%〜50%のフィラーを含む(百分率は100%である物品の総重量に基づいた重量%である)、実施形態1〜15のいずれか1つに記載の物品。
実施形態17.ベアリング、ガスケット、シール、バルブ、バルブシート、コネクタ、蓋、容器、医療用インプラント、化学反応器、スクリュー、はめば歯車、継手、ボルト、ポンプ、電極、熱交換器、ミキサー、タービン、変圧器、電気絶縁体、スイッチ及び押出機からなる群から選択される、実施形態1〜16のいずれか1つに記載の物品。
実施形態18.ベアリング、ガスケット、シール、バルブ、バルブシート、コネクタ、蓋、容器、医療用インプラント、化学反応器、スクリュー、はめば歯車、継手、ボルト、ポンプ、電極、熱交換器、ミキサー、タービン、変圧器、電気絶縁体及び押出機からなる群から選択される物品の構成部品から選択される、実施形態1〜17のいずれか1つに記載の物品。
実施形態19.フルオロポリマーが、1つ以上のチャネル、1つ以上のアンダーカット、1つ以上の穿孔及びこれらの組み合わせを含むように成形されている、実施形態1〜18のいずれか1つに記載の物品。
実施形態20.一体型物品である、実施形態1〜19のいずれか1つに記載の物品。
実施形態21.フルオロポリマーが、ハニカム構造及び本質的に中空の構造から選択される構造を含むよう形成されている、実施形態1〜20のいずれか1つに記載の物品。
実施形態22.フルオロポリマーが、ハニカム構造及び本質的に中空の構造から選択される、平坦、曲面状又は球状である(that or flat, curved or spherical)構造に成形されている、実施形態1〜21のいずれか1つに記載の物品。
実施形態23.成形フルオロポリマーが、3D印刷により得られたものである、実施形態1〜22のいずれか1つに記載の物品。
実施形態24.3D印刷で得られたものである、実施形態1〜23のいずれか1つに記載の物品。
実施形態25.5cm以下の直径を含む長軸を有する、実施形態1〜24のいずれか1つに記載の物品。
実施形態26.1cm以下の直径を含む長軸を有する、実施形態1〜25のいずれか1つに記載の物品。
実施形態27.3D印刷で得られたものである、実施形態1〜26のいずれか1つに記載の物品。
実施形態28.成形フルオロポリマーを含む物品であって、物品が、1cm以下の長さの長軸又は直径を有し、(wherein the fluoropolymer)成形フルオロポリマーは、テトラフルオロエテン(TFE)のホモポリマー、又はTFEと、フルオロポリマーの重量に基づいて20重量%以下の(up to and including 20% by weight)式
Rf−CX=CX
[式中、X、X、Xは全てFであるか、又はX、X及びXのうちの少なくとも1個がFであり、残りはClであるかのいずれかであり、Rfは、炭素原子が1〜12個、好ましくは1〜3個である直鎖状又は分枝状アルキル基であり、アルキル鎖は、酸素原子が1回以上介在し得て、その全水素原子はフッ素原子によって置換されている。]
に対応する1種以上のα−オレフィンとのコポリマーである、物品。
実施形態29.フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロペン、式
−O−(CF−CF=CF
[式中、nは1又は0を表し、Rは、直鎖状又は分枝状、環式又は非環式のペルフッ素化アルキル残基を表し、少なくとも1個のカテナリー酸素原子を含有する。]
に対応する1種以上のペルフッ素化α−オレフィンエーテル及びこのようなコモノマーの組み合わせから選択される、1種以上のコモノマーとの、コポリマーである、実施形態28に記載の物品。
実施形態30.フルオロポリマーが、TFEのホモポリマー、又はテトラフルオロエチレンと、フルオロポリマーの重量に基づいて1重量%以下の、式
−CX=CX
[式中、X、X、Xは全てFであるか、又はX、X及びXのうちの少なくとも1個がFであり、他はClであるのいずれかであり、Rは、炭素原子が1〜12個、好ましくは1〜3個である直鎖状又は分枝状アルキル基であり、アルキル鎖は、酸素原子が1回以上介在し得て、その全水素原子はフッ素原子によって置換されている。]
に対応する1種以上のα−オレフィンとのコポリマーである、実施形態28又は29に記載の物品。
実施形態31.0.5cmよりも小さい直径を含む長軸を有する、実施形態28〜30に記載の物品。
実施形態32.20%未満、好ましくは10%未満、又は2%未満の空隙率を有する、実施形態28〜31に記載の物品。
実施形態33.フルオロポリマーが本質的に等方性である、実施形態28〜32に記載の物品。
実施形態34.ベアリング、ガスケット、シール、バルブ、バルブシート、コネクタ、蓋、容器、医療用インプラント、化学反応器、スクリュー、はめば歯車、継手、ボルト、ポンプ、電極、熱交換器、ミキサー、タービン、変圧器、電気絶縁体及び押出機からなる群から選択される、実施形態28〜33に記載の物品。
実施形態35.ベアリング、ガスケット、シール、バルブ、バルブシート、コネクタ、蓋、容器、医療用インプラント、化学反応器、スクリュー、はめば歯車、継手、ボルト、ポンプ、電極、熱交換器、ミキサー、タービン、変圧器、電気絶縁体及び押出機からなる群から選択される物品の構成部品から選択される、実施形態28〜34に記載の物品。
実施形態36.フルオロポリマーが、1つ以上のチャネル、1つ以上のアンダーカット、1つ以上の穿孔及びこれらの組み合わせを含むように成形されている、実施形態28〜35に記載の物品。
実施形態37.一体型物品である、実施形態28〜36に記載の物品。
実施形態38.フルオロポリマーが、ハニカム構造及び本質的に中空の構造から選択される構造を構成するように成形されている、実施形態28〜37に記載の物品。
実施形態39.フルオロポリマーが、ハニカム構造及び本質的に中空の構造から選択される、平坦、曲面状又は球状である(that or flat, curved or spherical)構造に成形されている、実施形態28〜38に記載の物品。
実施形態40.成形フルオロポリマーが、3D印刷により得られたものである、実施形態28〜39に記載の物品。
実施形態41.3D印刷により得られたものである、実施形態28〜40に記載の物品。
実施形態42.積層プロセスによって物品を製造するための組成物であって、該組成物はフルオロポリマー粒子及び反応性材料を含み、反応性材料は、該反応性材料がエネルギー源からのエネルギーに暴露されると、重合及びフルオロポリマー粒子を含有するネットワークの形成可能な、重合性バインダ材料を含み、フルオロポリマーは、372℃及び5kgの荷重で、1.0g/10分以下のメルトフローインデックスを有する、組成物。
実施形態43.フルオロポリマーが、372℃及び5kgの荷重で、0.1g/10分以下のメルトフローインデックスを有する、実施形態42に記載の組成物。
実施形態44.フルオロポリマーが、少なくとも300℃の、好ましくは327℃±10℃の範囲の融点を有する、実施形態42及び43のいずれかに記載の組成物。
実施形態45.フルオロポリマーが、約2.13〜2.23g/cmのSSG密度を有する、実施形態42〜44のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態46.フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンと、ペルフッ素化α−オレフィン又はα−オレフィンエーテルから選択される、1種以上のコモノマーとの、コポリマーであり、コモノマー含有量は、コポリマーの重量に基づいて、20重量%以下である、実施形態42〜45のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態47.フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンと、式
−CX=CX
[式中、X、X、Xは全てFであるか、又はX、X及びXのうちの2つがFであり、1つはClであるかのいずれかであり、Rは、炭素原子が1〜3個である直鎖状又は分枝状アルキル基であり、その全水素原子はフッ素原子によって置換されている。]
に対応するペルフッ素化α−オレフィンから選択される、1種以上のコモノマーとの、コポリマーであり、コモノマー含有量は、コポリマーの重量に基づいて、20重量%以下である、実施形態42〜46のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態48.フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンと、式
−O−(CF−CF=CF
[式中、nは1又は0を表し、Rは、直鎖状又は分枝状、環式又は非環式のペルフッ素化アルキル残基を表し、少なくとも1個のカテナリー酸素原子を含有する。]
に対応するペルフッ素化α−オレフィンエーテルから選択される、1種以上のコモノマーとの、コポリマーであり、コモノマー含有量は、コポリマーの重量に基づいて、3重量%以下である、実施形態42〜47のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態49.フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレンと、式
−O−(CF−CF=CF
[式中、nは1又は0を表し、Rは、直鎖状又は分枝状、環式又は非環式のペルフッ素化アルキル残基を表し、少なくとも1個のカテナリー酸素原子を含有する。]
に対応するペルフッ素化α−オレフィンエーテルから選択される、1種以上のコモノマーとの、コポリマーであり、コモノマー含有量は、コポリマーの重量に基づいて、1重量%以下である、実施形態42〜48のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態50.フルオロポリマー粒子が、50〜500nmの平均粒子径(D50)を有する、実施形態42〜49のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態51.分散体であり、フルオロポリマー粒子が分散している、実施形態42〜50のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態52.分散体であり、フルオロポリマー粒子が重合性バインダ材料中に分散している、実施形態42〜51のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態53.水性分散体である、実施形態42〜52のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態54.反応性材料が、重合性バインダ材料の重合を開始させることができる1種以上の重合開始剤を含む、実施形態42〜53のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態55.反応性材料が、重合性バインダ材料の重合を開始させることができ、紫外線照射に対して反応性である、1種以上の重合開始剤を含む、実施形態42〜54のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態56.重合性バインダ材料が、重合性不飽和結合を含む、実施形態42〜55のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態57.重合性バインダ材料が、重合性アクリレート基及びメタクリレート基並びにこれらの組み合わせを含む、実施形態42〜56のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態58.重合性バインダ材料が、ジアクリレート、ジメタクリレート、トリアクリレート、トリメタクリレート、4個以上のアクリレート基を有するアクリレート、4個以上のメタクリレート基を有するメタクリレート及びこれらの組み合わせから選択される、重合性アクリレート及びメタクリレートを含む、実施形態42〜57のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態59.重合性バインダ材料が、5,000g/モル未満の分子量を有する、実施形態42〜58のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態60.重合性バインダ材料が、水に可溶又は分散可能である、実施形態42〜59のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態61.1種以上のノニオン性乳化剤を更に含む、実施形態42〜60のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態62.エトキシル化アルコール、エトキシル化アミン、アミンオキサイド及びこれらの組合せから選択される、1種以上のノニオン性乳化剤を更に含む、実施形態42〜61のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態63.1種以上の酸化触媒を更に含む、実施形態42〜62のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態64.1種以上の重合阻害剤を更に含む、実施形態42〜63のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態65.5〜50重量%の重合性バインダ材料、10〜60重量%のフルオロポリマー粒子及び0〜75重量%の水を含み、これらの量が、100%である成分の総量を与えるよう選択される(全百分率は、成形フルオロポリマーの総重量に基づいた重量%である)、実施形態42〜64のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態66.フルオロポリマー粒子及び重合性バインダ材料を、5:1〜1:5、好ましくは4:1〜1:1の重量比で含む、実施形態42〜65のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態67.260〜315℃の間の融点及び1.0g/10分を上回る、及び好ましくは1.1g/10分〜50g/10分のメルトフローインデックス(MFI(372℃/5kg))を有する、熱可塑性フルオロポリマーを更に含み、熱可塑性ポリマーの、非溶融加工性フルオロポリマーに対する重量比が、1:1〜1:1000である、実施形態42〜66のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態68.積層プロセスによる、物品の製造方法であって、
(i)フルオロポリマー粒子及び反応性材料を含む組成物であって、反応性材料は、該反応性材料がエネルギー源からのエネルギーに暴露されると、重合及びフルオロポリマー粒子を含有するネットワークの形成可能な、重合性バインダ材料を含み、フルオロポリマーは、372℃及び5kgの荷重で、1.0g/10分以下のメルトフローインデックスを有する、組成物を提供すること、
(ii)エネルギー源からのエネルギーを組成物の選択した位置に向けること、及び重合性バインダを選択した位置において重合させること、
(iii)工程(i)及び(ii)を繰り返すことで、複数の層を形成し、物品を作製すること、
を含む、実施形態1〜28に記載の物品の製造方法。
実施形態69.エネルギーが、UV光源からの紫外線である、実施形態68に記載の方法。
実施形態70.重合したバインダ材料を除去すること、を更に含む、実施形態68又は69に記載の方法。
実施形態71.重合したバインダ材料を熱処理又は溶媒抽出によって除去すること、を更に含む、実施形態68〜70のいずれか1つに記載の方法。
実施形態72.物品を焼結すること、を更に含む、実施形態68〜71のいずれか1つに記載の方法。
【0171】
例示的な実施形態の別の一覧(一覧2)としては、次の例示的な実施形態が挙げられる。これらの実施形態も、本開示を、例示される実施形態に限定することを意図したものではない。
【0172】
一覧2
実施形態1.フルオロポリマー粒子を含む組成物を、少なくとも1つのエネルギー源を含む積層プロセスデバイス内にて積層プロセスに供すること、を含む、フルオロポリマー物品の製造方法。
実施形態2.組成物が、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された組成物の一部においてフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、該方法は、組成物の一部をエネルギー源に暴露することで、層を形成すること、を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態3.組成物が、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された組成物の一部においてフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、バインダ材料は重合性であって、組成物を積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露すると重合によって固化し、該方法は、組成物の一部をエネルギー源に暴露することで、層を形成すること、を含む、実施形態1又は2に記載の方法。
実施形態4.組成物が、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された組成物の一部においてフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、バインダ材料は重合性であって、組成物を積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露すると重合によって固化し、該方法は、組成物の一部をエネルギー源に暴露することで、層を形成すること、を含み、エネルギー源は、電磁照射から選択される、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の方法。
実施形態5.組成物が、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された組成物の一部においてフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、バインダ材料は重合性であって、組成物を積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露すると重合によって固化し、該方法は、組成物の一部をエネルギー源に暴露することで、層を形成すること、を含み、エネルギー源は、10nm〜1000nmの間の単一又は複数の波長を有する電磁照射である、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の方法。
実施形態6.組成物が、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された組成物の一部においてフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、バインダ材料は重合性であって、組成物を積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露すると重合によって固化し、該方法は、組成物の一部をエネルギー源に暴露することで、層を形成すること、を含み、エネルギー源は、紫外線照射を含む、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の方法。
実施形態7.組成物が、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された組成物の一部においてフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、バインダ材料は重合性であって、組成物を積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露すると重合によって固化し、該方法は、組成物の一部をエネルギー源に暴露することで、層を形成すること、を含み、組成物は、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露することによって反応開始する少なくとも1種の重合開始剤を更に含む、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の方法。
実施形態8.バインダ材料が、重合性不飽和結合を含む、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の方法。
実施形態9.バインダ材料が、アクリレート及びメタクリレートから選択される重合性基を含む、実施形態1〜8のいずれか1つに記載の方法。
実施形態10.バインダ材料が、ジアクリレート、ジメタクリレート、トリアクリレート、トリメタクリレート、4個以上のアクリレート基を有するアクリレート、4個以上のメタアクリレート(methaacrylate)基を有するメタクリレート及びこれらの組み合わせから選択される、重合性アクリレート及びメタクリレートを含む、実施形態1〜9のいずれか1つに記載の方法。
実施形態11.組成物が、フルオロポリマー粒子の水性分散体を含む、実施形態1〜10のいずれか1つに記載の方法。
実施形態12.組成物が、約50〜500nmの直径を有するフルオロポリマー粒子を含む、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の方法。
実施形態13.組成物が、約50〜約500nmの平均粒子径(Z−平均)を有するフルオロポリマー粒子を含む、実施形態1〜12のいずれか1つに記載の方法。
実施形態14.組成物が、組成物を積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露して溶融すると、エネルギー源に暴露された組成物の一部においてフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な、少なくとも1種のバインダ材料を含み、該方法は、組成物の一部をエネルギー源に暴露することで、層を形成すること、を含む、実施形態1〜13のいずれか1つに記載の方法。
実施形態15.フルオロポリマーが、非融解加工性フルオロポリマーである、実施形態1〜14のいずれか1つに記載の方法。
実施形態16.バインダ材料を除去するための少なくとも1つの熱処理、を更に含む、実施形態1〜15のいずれか1つに記載の方法。
実施形態17.組成物が、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された領域にフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、該方法は、物品を熱処理に供することで、蒸発によってバインダ材料を除去すること、を更に含む、実施形態1〜16のいずれか1つに記載の方法。
実施形態18.組成物が、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された領域にフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、該方法は、物品を熱処理に供することで、熱分解によってバインダを除去すること、を更に含む、実施形態1〜17のいずれか1つに記載の方法。
実施形態19.積層プロセスによって、例えば、実施形態1〜18に記載の方法のいずれか1つによって得られた、フルオロポリマー物品。
実施形態20.0.1〜30重量%の1種以上のフィラーを含む、実施形態19に記載の物品。
実施形態21.フルオロポリマーが、非溶融加工性フルオロポリマーである、実施形態19又は20に記載の物品。
実施形態22.フルオロポリマーが、約2.13〜2.23g/cmのSSG密度を有する非溶融加工性フルオロポリマーである、実施形態19〜21のいずれか1つに記載の物品。
実施形態23.構成部品を含む物品であって、該構成部品が、積層プロセスによって得られたフルオロポリマー物品である、物品。
実施形態24.フルオロポリマー物品が、実施形態1〜18のいずれか1つに記載の積層プロセスによるものである、実施形態23に記載の物品。
実施形態25.照射をエネルギー源とする3D印刷用の、3D印刷可能なフルオロポリマー組成物であって、フルオロポリマー粒子、重合性バインダ材料を含み、重合性バインダ材料は、組成物がエネルギー源に暴露されると固化する、組成物。
実施形態26.フルオロポリマー粒子の分散体を含む、実施形態25に記載の3D印刷可能な組成物。
実施形態27.エネルギー源に暴露されると重合を開始させる重合開始剤を更に含む、実施形態25又は26に記載の3D印刷可能な組成物。
実施形態28.液体組成物、例えば、液体分散体である、実施形態25〜27に記載の3D印刷可能な組成物。
【0173】
例示的な実施形態の別の一覧(一覧3)としては、次の例示的な実施形態が挙げられる。これらの実施形態も、本開示を、例示される実施形態に限定することを意図したものではない。
【0174】
一覧3
実施形態1.フルオロポリマー物品の製造方法であって、フルオロポリマー粒子を含む組成物を、少なくとも1つのエネルギー源を含む積層プロセスデバイス内にて積層プロセスに供すること、を含み、組成物が、積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露された組成物の一部においてフルオロポリマー粒子を結合させて層の形成可能な少なくとも1種のバインダ材料を含み、該方法は、組成物の一部をエネルギー源に暴露することで、層を形成すること、を含み、バインダ材料は重合性であって、組成物を積層プロセスデバイスのエネルギー源に暴露すると重合によって固化する、方法。
実施形態2.エネルギー源が、電磁照射から選択される、実施形態1に記載の方法。
実施形態3.組成物が、約50〜500nmの平均粒子径(Z−平均)を有するフルオロポリマー粒子を含む、実施形態1又は2に記載の方法。
実施形態4.組成物が、フルオロポリマー粒子の水性分散体を含む、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の方法。
実施形態5.組成物が、押出可能なペーストである、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の方法。
実施形態6.フルオロポリマーが、テトラフルオロエテンホモポリマーと、1重量%以下のペルフッ素化α−オレフィンコモノマーを含有するテトラフルオロエテンコポリマーと、ポリマーの重量に基づいて、1重量%より多く30重量%以下のペルフッ素化コモノマー、部分フッ素化コモノマー及び非フッ素化コモノマーを含有する、テトラフルオロエテンコポリマーと、からなる群から選択される、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の方法。
実施形態7.フルオロポリマーが、372℃及び5kgの荷重で、1g/10分未満のメルトフローインデックス(MFI372/5)を有する、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の方法。
実施形態8.フルオロポリマーが、372℃及び5kgの荷重で、0.1g/10分未満のメルトフローインデックス(MFI372/5)を有する、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の方法。
実施形態9.フルオロポリマーが、372℃及び5kgの荷重で、1g/10分〜50g/10分のメルトフローインデックス(MFI372/5)を有する、実施形態1〜8のいずれか1つに記載の方法。
実施形態10.フルオロポリマーが、ポリマーの重量に基づいて、1重量%より多く30重量%以下のペルフッ素化コモノマー、部分フッ素化コモノマー及び非フッ素化コモノマーを含有する、テトラフルオロエテンコポリマーであり、フルオロポリマーは、260℃〜315℃の間の融点を有する、実施形態1〜9のいずれか1つに記載の方法。
実施形態11.バインダ材料が、重合性不飽和結合を含む、実施形態1〜10のいずれか1つに記載の方法。
実施形態12.バインダ材料が、アクリレート及びメタクリレートから選択される重合性基を含む、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の方法。
実施形態13.バインダ材料が、5,000g/モル未満の分子量を有する、実施形態1〜12のいずれか1つに記載の方法。
実施形態14.組成物が、他の成分を更に含む、実施形態1〜13のいずれか1つに記載の方法。
実施形態15.好ましくはフルオロポリマーの焼結を含む、バインダ材料を除去するための少なくとも1つの熱処理、を更に含む、実施形態1〜14のいずれか1つに記載の方法。
実施形態16
(i)フルオロポリマー粒子及びバインダ材料及び任意に他の成分を含有する、組成物を提供する工程、
(ii)(a)積層造形デバイスのエネルギー源からのエネルギーを3D印刷可能な組成物の選択した位置に向け、バインダ材料を重合及び固化させ、フルオロポリマー粒子を結合させること、又は(b)3D印刷可能な組成物の選択した位置をエネルギー源に向け、バインダ材料を重合及び固化させ、フルオロポリマー粒子を結合させること、又は(a)及び(b)の組み合わせのいずれかによって、バインダ材料を重合及び固化させることで、フルオロポリマー粒子を結合させる工程、
(iii)(c)エネルギー源を、3D印刷可能な組成物から離すように向けること、又は(d)3D印刷可能な組成物をエネルギー源から離すように向けること、又はその両方のいずれかで、バインダ材料が非選択の位置において重合することを、避ける工程、又は(c)及び(d)の組み合わせ、
(iv)工程(ii)及び(iii)並びに必要に応じてまた工程(i)を繰り返すことで、複数の層を形成し、物品を作製する工程、
を含む、実施形態1〜15のいずれか1つに記載の方法。
実施形態17.積層プロセスによって物品を製造するための組成物であって、フルオロポリマー粒子を含み、フルオロポリマー粒子を結合させるために、組成物が積層プロセスデバイスのエネルギー源からエネルギーに暴露されると、重合及び固化してフルオロポリマー粒子を結合可能な、重合性バインダ材料を含む、組成物。
実施形態18.フルオロポリマー粒子の水性分散体を含む、実施形態17に記載の組成物。
実施形態19.約50〜500nmの平均粒子径(Z−平均)を有するフルオロポリマー粒子を含む、実施形態17又は18に記載の組成物。
実施形態20.押出可能なペーストである、実施形態17〜19のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態21.エネルギー源が、電磁照射である、実施形態17〜20のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態22.フルオロポリマーが、テトラフルオロエテンホモポリマーと、1重量%以下のペルフッ素化α−オレフィンコモノマーを含有するテトラフルオロエテンコポリマーと、ポリマーの重量に基づいて、1重量%より多く30重量%以下のペルフッ素化コモノマー、部分フッ素化コモノマー及び非フッ素化コモノマーを含有する、テトラフルオロエテンコポリマーと、からなる群から選択される、実施形態17〜21のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態23.フルオロポリマーが、372℃及び5kgの荷重で、1g/10分未満のメルトフローインデックス(MFI372/5)を有する、実施形態17〜22のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態24.フルオロポリマーが、372℃及び5kgの荷重で、0.1g/10分未満のメルトフローインデックス(MFI372/5)を有する、実施形態17〜22のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態25.フルオロポリマーが、372℃及び5kgの荷重で、1g/10分〜50g/10分のメルトフローインデックス(MFI372/5)を有する、実施形態17〜22のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態26.フルオロポリマーが、ポリマーの重量に基づいて、1重量%より多く30重量%以下のペルフッ素化コモノマー、部分フッ素化コモノマー及び非フッ素化コモノマーを含有する、テトラフルオロエテンコポリマーであり、フルオロポリマーは、260℃〜315℃の間の融点を有する、実施形態17〜25のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態27.バインダ材料が、重合性不飽和結合を含む、実施形態17〜26のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態28.バインダ材料が、アクリレート及びメタクリレートから選択される重合性基を含む、実施形態17〜27のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態29.バインダ材料が、5,000g/モル未満の分子量を有する、実施形態17〜28のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態30.他の成分を更に含む、実施形態17〜29のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態31.積層プロセスにおける、実施形態17〜30のいずれか1つに記載の組成物の使用。
実施形態32.3D印刷されたフルオロポリマーであって、3D印刷されたフルオロポリマーが、2.00g/cmを上回る密度、及び/又は200‰未満、好ましくは1‰〜185‰の間、より好ましくは20‰未満、最も好ましくは1‰〜15‰の間の空隙率(Voi)を有し、フルオロポリマーは、372℃及び5kgの荷重で、50g/10分未満、好ましくは1g/10分未満、より好ましくは0.1g/10分未満のメルトフローインデックス(MFI372/5)を有する、3D印刷されたフルオロポリマー。
実施形態33.偏光顕微鏡法により測定すると、少なくとも1つの面配向において20%以下、好ましくは10%以下の配向度を有する、実施形態32に記載の3D印刷されたフルオロポリマー。
実施形態34.x−y平面内において50%未満、好ましくは20%未満の、その平面のx及びy方向におけるSVIインデックスの比により決定される異方性を有する、実施形態32又は33に記載の3D印刷されたフルオロポリマー。
実施形態35.少なくとも100%の破断点伸び、及び/又は少なくとも5Mpaの引張り強度を有する、実施形態32〜34のいずれか1つに記載の3D印刷されたフルオロポリマー。
実施形態36.フルオロポリマーが、テトラフルオロエテンホモポリマーと、1重量%以下のペルフッ素化α−オレフィンコモノマーを含有するテトラフルオロエテンコポリマーと、ポリマーの重量に基づいて、1重量%より多く30重量%以下のペルフッ素化コモノマー、部分フッ素化コモノマー及び非フッ素化コモノマーを含有する、テトラフルオロエテンコポリマーと、からなる群から選択される、実施形態32〜35のいずれか1つに記載の3D印刷されたフルオロポリマー。
実施形態37.実施形態1〜16のいずれか1つに記載の方法によって得られる、実施形態32〜36のいずれか1つに記載の3D印刷されたフルオロポリマー。
実施形態38.実施形態32〜37のいずれか1つに記載の3D印刷されたフルオロポリマーを含む、物品。
実施形態39.一体型物品である、実施形態38に記載の物品。
実施形態40.ベアリング、ガスケット、シール、バルブ、バルブシート、コネクタ、蓋、容器、医療用インプラント、化学反応器、スクリュー、はめば歯車、継手、ボルト、ポンプ、電極、熱交換器、ミキサー、タービン、変圧器、電気絶縁体及び押出機又は構成部品からなる群から選択される、実施形態38又は39に記載の物品。
実施形態41.フルオロポリマーが、1つ以上のチャネル、1つ以上のアンダーカット、1つ以上の穿孔及びこれらの組み合わせを含むように成形されている、実施形態38〜40のいずれか1つに記載の物品。
実施形態42.一体型物品であり、成形フルオロポリマーが、ハニカム構造及び本質的に中空の構造から選択される、1種以上の構造を構成する、実施形態38〜41のいずれか1つに記載の物品。
実施形態43.実施形態1〜16のいずれか1つに記載の方法によって得られる、実施形態38〜42のいずれか1つに記載の物品。
【0175】
本開示は、実施例及び試験方法によって更に例示されるが、本開示が以下の試験及び実施例に限定されることを意図しない。
【0176】
試験手順
メルトフローインデックス(MFI)
メルトフローインデックスは、メルトインデクサ(melt indexer)(Goettfert,Werkstoffprufmaschinen GmbH,(Germany)から)を使用して、DIN EN ISO1133に準拠して、5kgの荷重を使用し、及び372℃の温度にて(MFI372/5)測定することができる。
【0177】
平均粒子径
分散体中のポリマー粒子の平均粒子径は、ISO13321に準拠して、Malvern Autosizer2cを使用して、電子光散乱によって測定することができる。この方法では、球状粒子径(partical size)と仮定している。平均粒子径は、Z−平均として測定される。
【数1】
式中、Sは、粒子iの散乱強度であり、Dは、粒子iの直径である。本明細書で使用する粒子径の範囲では、この式は、典型的には、次の式に相当する。
【数2】
母集団の平均粒子径は、D50値(メディアン)として表される。
【0178】
固形分含有量
分散体の固形分含有量(フルオロポリマー含有量)は、ISO12086に準拠した重量測定で決定できる。不揮発性無機塩類の補正は行わなかった。
【0179】
融点
融点は、ASTM D4591に準拠して、DSC(Perkin Elmer示差走査熱量計Pyris1)により決定することができる。5mgのサンプルを、10℃/分の制御された速度で380℃の温度まで加熱し、これによって第1の溶融温度を記録する。次いで、サンプルを10℃/分の速度で300℃の温度まで冷却した後、10℃/分にて380℃の温度に到達させる。第2の加熱期間に観察された融点を、本明細書においてポリマーの融点(一度溶融した材料の融点)と称する。
【0180】
フルオロポリマーの密度
原材料として使用したフルオロポリマー(すなわち、未焼結のフルオロポリマー)について、SSG密度を、ASTM D4895−15の手順及びD4895−15の方法Aに従って決定した。
【0181】
成形フルオロポリマー及びフルオロポリマー物品について、ASTM D4895−15に従って標準比重(standard specific gravity、SSG)を測定した。しかし、焼結手順には従わなかった。従って、ASTM D4895−15が参照しているASTM D792−13に準拠した密度の結果(density termination)のみを使用した。SSG密度は、ASTM D792−13の密度に対応する(本明細書においては、「密度」又は「盛込密度」とも称する)。ASTMD 792−13の方法Aを使用したが、水の代わりにn−ブチルアセテートを使用した(及び従って、計算のために23℃の水の密度の代わりに23℃のn−ブチルアセテートの密度を使用した。)。この方法を、成形(及び焼結)したフルオロポリマーに適用した。得られたサンプルを採取し、又はサンプルを物品から切り出した。
【0182】
破断点伸び及び破断点引張り強度
破断点伸び及び破断点引張り強度は、DIN EN ISO527−1に準拠して、Zwick引張試験機を使用して決定することができる。試験片は、室温(22℃+/3℃)にて、50mm/分の速度で引き延ばされる。
【0183】
切り出したものをサンプルに使用してもよい。規格によって要求されるよりも小さい寸法の物品については、より小さい試験片を使用することができる。試験片は同一形状であるが、縮小された寸法を有する。長さは、最小0.5mmで、最小厚さが0.125mmであってもよい。
【0184】
空隙率
空隙率(Voi)は、試験サンプル中の空隙が占める体積を示すことから、フルオロポリマー粒子がどの程度良好に合着しているかの指標となる。空隙率が低いほど、合着は良好である。空隙率は、‰で表される。次式
Voi(‰)=1000×(1−d/dIR
[式中、dはサンプルの盛込密度であり、dIRはサンプルの赤外濃度(infrared density)である。]に従って計算することができる。盛込密度は、ASTM D792−13に記載されているように、押しのけによって決定することができる(ASTM D792−13では「密度」と称されている)。好ましくは、ASTM D792−13の方法Aを、n−ブチルアセテート(及びn−ブチルアセテートの密度)を方法Aの液体媒体として使用して、踏襲することができる。ASTM D792−13は、1〜50gのサンプル重量を必要とするが、それより軽量のサンプルを使用して、本方法に準拠して測定することもできる。ここで、赤外密度(DIR)は、米国特許第3,855,191号(Doughtyら)に記載されている方法に準拠して決定でき、本明細書に参照により組み込まれる。米国特許第3,855,191号では、凝集したフルオロポリマー粉末を測定する方法が記載されているが、変法にて、成形物品に使用することができる。従って、例えば、当技術分野において既知のマイクロトームを用いて、約0.5mm(0.43〜0.89mm)の厚さを有するテストプローブを切断して、試験片を作製することができる。dIRを決定するため、試験片を、778cm−1及び2353cm−1にての吸収を測定するIR分光測定法により検査することができる。次に、次の式に従って、アモルファス含有量の百分率(重量比)を算出する。
重量%(アモルファス)=30.26×A778/A2353+1.73×(A778/A2353
【0185】
以下の端点、すなわちアモルファス含有量100重量%に対して1.966g/cmの密度及びアモルファス含有量0%(100%結晶性)に対して2.340g/cmの密度を使用して、アモルファス含有量(重量%)に対する密度(g/cm)の直線を引く。次いで、Y値を直線上に配置することによってか、又は直線の傾きを使用してY値を計算することによってかのいずれかにより、所与の値の(アモルファスの)重量%についての、対応する密度を求めて、サンプルの赤外密度を決定することができる。
【0186】
次いで、同一の試験片を測定して、その比重(dg)(gravimetric specific density)をブチルアセテート中で、(ASTM D792−13、方法Aに従って)決定する。次に空隙率を計算する。
【0187】
ストレッチボイドインデックス(SVI)
本方法では、力を加えた状態で、フルオロポリマーサンプルの比重を比較する。この方法は、EN ISO12086−2−2006(D)に記載されている。SVIは、サンプルの未延伸形態での密度と延伸形態での密度との差に1000を乗じて算出される。物品から試験サンプルを作製する。サンプルは、EN ISO12086−2−2006(D)に記載の、ドッグボーン形状及び寸法を有することができる。規格に準拠したドッグボーンテストストリップは、38mmの最短長を有する。より小型のサンプルについては、すなわち1cm未満の長さを有する物品からは、同一形状ではあるが、10mm、又は5mm、又は0.5mmの最短長のサンプルを作製することができ、それに応じて幅が調節されてドッグボーン形状とされる。サンプルの厚さは、規格に記載されているように、0.125〜1.5mmの間にすることができる。サンプルをそのまま使用し、規格に記載されているような焼結は行わない。
【0188】
上述のとおり、試験サンプルの密度を酢酸ブチル中にて決定する。
【0189】
試験サンプルを、次に引張試験機にて、5mm±1mm/分の速度で、50%、100%、好ましくは200%だけ延伸(引き延ばし)する。次に、延伸サンプルの密度を上述したように決定し、SVIを計算する。SVI=(d−dg(stretched))×1000。
【0190】
SVI値はサンプルの引き延ばし(延伸)に応じて異なるが、その延伸の程度(50mm/分の速度での50%〜440%の間の延伸)にわたってサンプルのSVIy/SVIxの比は一定であった。従って、延伸の程度とは無関係であった。SVIyは、y方向に(すなわち、押出方向を横切る)切り出されたサンプルを測定したSVIである。SVIxは、x方向に(すなわち、押出方向に沿って)切り出されたサンプルから決定したSVIである。SVIy及びSVIxサンプルは、同一の製品サンプルから取り出されたものである。単にサンプルをX又はY方向、すなわち、互いに直交している方向に切り出したものである。理想的な等方性材料でのSVIy/SVIx比の比は、1.00である。この値からの偏差は、サンプルの異方性の%に対応する。例えば、1.12のSVY/SVIx比は、12%の異方性に対応する。
【0191】
配向度(偏光顕微鏡法)
サンプル中に存在する配向構造の程度について、偏光顕微鏡法によって試験サンプルを分析した。ここでは、入射光の偏光面に対して異なる角度に配置されたサンプルの光透過率を、定量化した。この目的のために、Universal Axioplan顕微鏡(Carl Zeiss Microscopy GmbH(Oberkochen,Germany))を透過光モード(倍率2.5)にて使用した。装置に、偏光フィルタとラムダ板(Carl Zeiss Microscopy GmbHの、シリアル部分#453656)を更に装着した。カラー画像を、ディジタルカメラ(ソニーのMC3250P3CCDカラービデオカム)により撮影し、画像ソフトウェア(Carl Zeiss VisionのAxioVs40)を使用した。試験サンプルは、50μm〜1,600μmの厚さを有していた。測定光の透過が可能である程度にサンプルがなお十分に半透明である限りは、結果は、サンプルの厚さとは独立しているものに見えた。サンプルが偏光に対して様々な角度で配置されるよう、サンプルプレートを10°の刻み幅でz方向に回転させることによって、固定したサンプルを時計回りに回転させ、1回転が終了するまで(サンプルを360°回転する)、10°毎に画像を撮影した。
【0192】
透過度は、入射光の偏光面に対して様々な角度で記録された、顕微鏡画像の輝度によって示された。輝度を定量化するために、カラー画像を、各写真のRGB(赤色、緑色、青色)値(RGB規格)について解析した。RGB規格では、原色の赤色、青色及び緑色の各々が、0〜255の間の値で与えられる。0が最も強度が低く、255が最も強度が高い。例えば、RGBの0/0/0は、黒色を表し、RGBの255/255/255は、最も明るく、白色を表す。装置の供給元から提供された画像処理ソフトウェア(Carl Zeiss VisionのAxioVs40)を使用して、カラー画像をRGBコードについて解析した。あるいは、任意の他の商用グラフィック処理ソフトウェア(例えば、Corel Corporation(Ottawa,Canada)のCorel Photo−Paint X5)を用いることができる。各画像で、RGB値を加算し、単一の数を得た。例えば、特定の角度で得た画像についてのRGB値が(50/100/255)である場合は、加算されたRGB値は、405(50+100+255)である。この手順を、z平面における、0〜360°の間の角度でのサンプル回転において、撮影した全ての画像について行った。
【0193】
配向性の高いサンプルの場合には、様々な角度で記録された顕微鏡写真において、認識可能な透過偏光の輝度の差(RGB値の合計)が、観察される。最も大きい加算RGB値(vB)及び最も小さい加算RGB値(vL)を決定し、vB/vLの比を算出した。画像間の輝度のコントラストを、様々な画像間での加算RGB値の変化により監視した。高輝度コントラストは、サンプル内の配向を示す。配向度を、vB/vLの比で与えられる輝度コントラストにより定量化した。vB/vL=1.10である値は、10%の異方性又はサンプル中の配向材料の、10%の配向度を表す。一方、vB/vL=1.00に近い輝度コントラストは、サンプル中に光学異方性がないことを示す。このような無配向材料では、配向材料の度合いが0である。
【実施例】
【0194】
実施例1
ASIGA(Anaheim Hills,California,USA)のPICO2「3Dプリンタ」(エネルギー源:385nmのLED)を使用して、フルオロポリマー物品を光造形(液槽重合)によって製造した。以下の設定を除いて、デフォルト設定を使用した。スライス厚さ=50μm、バーンイン層(Burn-In Layers)=2、分離速度=5mm/秒、層あたりのスライド=2、バーンイン暴露時間(Burn-In Exposure Time)=20.0秒、通常暴露時間=8.000秒。
【0195】
図1に示す物品を、3Dプリンタで読み取り可能な形式の電子ファイルで作製した。デバイスを図1に示す。
【0196】
フルオロポリマー分散体を以下のとおりに調製した。10gの脱イオン水を、40gのPTFE分散体(0.03重量%のHFPの、コモノマー含有物を有するPTFE)で、固形分含有量58重量%、平均粒子径が190nmのもの、50ppm未満のフッ素化乳化剤、PTFE含有量に基づいて6%のノニオン性脂肪族安定化乳化剤に添加した。続いて、穏やかに撹拌しながらバインダとして7gのアクリル樹脂(Sartomer Americas(Exton,PA,USA)のSARTOMER SR415)、及び0.58gの光開始剤(IRGACURE819DW、BASF(Charlotte,NC,USA)から入手可能)、0.075gの阻害剤(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、(BHT)、製品#34750、Sigma−Aldrich(St Louis,MO,USA)から入手可能)を添加した。この分散体を重合液槽に入れて3Dプリンタで3D印刷した。
【0197】
この処理工程の完了後、物品を脱イオン水ですすいだ。得られた物品を図3Aに示す(The resulting article is shown in Figure 3A was obtained.)。この「グリーン体」を次に、室温で24時間乾燥させた。
【0198】
次に、乾燥した物品(図3Bに示す)を加熱して、バインダ樹脂を除去した。オーブン内にて、次の順序で加熱を実施した。6時間で室温から320℃までの温度勾配、6時間で330℃までの温度勾配、330℃にて36時間保持する、8時間で340℃までの温度勾配、8時間で370℃までの温度勾配、370℃にて4時間保持、室温に到達。加熱プロセスの初期では、図(図3C)に示すように物品は黒色となった。加熱サイクル全体の終了時には、得られた物品は、再度白色であった(図3D)。収縮がわずかであり、肉眼で検査すると、最終品は多孔質ではなかった。これは、従来の切削成形技術で得られたフルオロポリマー物品の密度に匹敵する、2.15g/cmの密度を有した。これは、バインダを焼き切ることによって生じた可能性がある空隙が、加熱中に形成された、融合したポリマー粒子によって充填されたことを示す。図3Dに示すように、同一形状であるが異なる寸法の物品を、本明細書に記載の方法によって製造した。図2に示すように、キャリパを使用して、その寸法(「直径」)を決定することができる。得られた最小の物品は、キャリパによって測定すると、約7.7mmの「直径」を有した。
【0199】
実施例2a〜2d
実施例1のポリマー組成物を、より高いコモノマー含有量を有するポリマー組成物と比較した。以下の組成の、様々な3D印刷可能な組成物2a〜2dを、表1に示すとおりの成分を使用して、実施例1に記載したのと同一の方法で作製した。
【表1】
【0200】
フルオロポリマー分散体2は、実施例1で使用した分散体であった。フルオロポリマー分散体1は、変性PTFE(コモノマーとしてのPPVE(ポリマーの重量に基づいて0.07重量%)、0.1g/10分未満のMFI(372/5)、粒子径(D50)190nm)、50ppm未満の含有量のフッ素化乳化剤、PTFE含有量に基づいて、6重量%のノニオン性脂肪族安定化乳化剤を含有していた。3D印刷可能な組成物を、実施例1に記載したように、3D印刷した。
【0201】
厚さが3mmで、直径が8mmの最終寸法を有する、シリンダを印刷した。CADモデルを1.47倍して、乾燥及び焼結を通しての、32%の等方性収縮を補償(account for)した。
【0202】
焼結条件は、以下のとおりとした。
12時間で350℃までの温度勾配、72時間、350℃で保持、12時間で400℃までの温度勾配、24時間、400℃で保持、室温まで冷却(積極的な冷却はしない)。
【0203】
組成物2aから作製された物品は、肉眼で視認できる表面欠陥を示さなかった。組成物2bから印刷した物品は、いくつかの表面欠陥を示し、トラップされた燃焼ガスに起因すると考えられる隆起を示した。
【0204】
組成物2c及び2dから作製した物品もまた、いくつかの表面欠陥を示し、フルオロポリマー組成物とは、そのコモノマー含有量が異なっていた。フルオロポリマー組成物1のコモノマー含有量がより高いため、ポリマー粒子のより良好でより緻密な融合が可能になると考えられる。燃焼したバインダ材料によって生成した空隙は、融合粒子によってより容易に充填され得て、全体的に、より少ない、又はより制御された収縮をもたらす。
【0205】
3D印刷方法の、構造的精度を決定するために、同一物品(目標とする直径が8.0mm、厚さが3.0mmのシリンダ)を、a)機械加工により、焼結PTFEブロックから、及びb)組成物2aを使用した3D印刷によって作製した。
【0206】
表2に、得られたシリンダの寸法の比較を示す(4個のシリンダを、両方法により製造した)。表2は、3D印刷方法の寸法精度を示す。
【表2】
【0207】
実施例3 3D印刷した物品の物理的特性対3D印刷していない物品の物理的特性。
実施例3A 押出材料
PTFE組成物(実施例2のPTFE組成物)で、一次粒子径190nm(D50)のものを凝集及び塊化させ、ペースト押出に好適な微細粉末を得た。得られた微細粉末は、180μm(D50)の粒子径(二次粒子)を有していた。微細粉末を、押出の際に潤滑剤として機能する、18.7重量%のShellSol T(Shell Chemicals)と混合した。タンブリングミキサーで30分間、混合を実施した。次に混合物を、30℃のオーブンで15時間エージングさせた。シリンダ状予備形成品を液圧プレスでプレスし、その後、ペースト押出機で押し出した。Keicher Engineering AG(Ulm)によって製造されたペースト押出機により、最小直径11.2mmのダイを使用して、ロッドのペースト押出を実施した。リダクション比、すなわち、押出シリンダの断面積と、押出ダイの断面積との比は32であった。
【0208】
押し出されたロッドをその後、2ロールカレンダを使用したカレンダ加工によって、異なる厚さ、すなわち50μm、100μm、300μm及び1600μmの様々なシートにカレンダ加工した。
【0209】
押し出されたシートを、150℃で12時間乾燥させて潤滑剤を除去した。その後、以下の焼結手順により焼結した。初期温度:RT、加熱速度:60℃/時間〜100℃、保持温度:100℃、保持時間:48時間、加熱速度:120℃/時間〜260℃、保持温度:260℃、保持時間:24時間、加熱速度:120℃/時間〜380℃、保持時間:26時間、冷却速度:60℃/時間。
【0210】
SVIを決定するため、引張試験片を、EN ISO12086−2に記載されているマイクロ引張試験用ダイ(microtensile die)を使用して、上の方法によって作製された300μm及び1600μmの厚さを有するシートサンプルから切り出し、SVIy/SVIxの比を決定した。試験片を5.0mm/分の一定速度で、440%の破断点伸びまで、又はより早期の場合は、サンプルが破壊されるまで、引っ張った。最小伸びは約50%であった。SVIy/SVIxの比は、1.6であることが見出された。このため、ストレッチボイドインデックスが方向に依存し、材料の異方性は60%であった。SVIとは異なり、SVIx/SVIyの比は、サンプルの厚さとは独立していることが見出された。
【0211】
偏光顕微鏡法により決定された、押し出された、及びカレンダー加工されたシートの異方性は48%であった(最大及び最小の加算RGB値の比が1.48であった)。結果は、サンプルの厚さとは独立し、同一であった。厚さが50、100及び300μmのサンプルシートを使用した。
【0212】
実施例3B(3D印刷したシート)
フルオロポリマー組成物2の分散体を使用して、実施例1に記載した手順と類似の3D印刷によってシートを作製した。フルオロポリマー物品を、Rapid Shape GmbH(Germany)のS30「3Dプリンタ」(エネルギー源:405nmLED)を使用して、光造形(液槽重合)によって製造した。
【0213】
印刷したシートを次の手順によって熱処理した。初期温度;RT、加熱速度:60℃/時間〜100℃、保持温度:100℃、保持時間:48時間、加熱速度:120℃/時間〜260℃、保持温度:260℃、保持時間:24時間、加熱速度:120℃/時間〜380℃、保持時間:26時間、冷却速度:60℃/時間。熱処理後のサンプル厚さは、約1mm程度であった。材料は、2.170g/cmの密度、6o/ooのボイドインデックスを有していた。
【0214】
ストレッチボイドインデックス(SVI)測定による材料の特性決定を実施例3Aに記載されているように実施し、20%の異方性に相当するSVIy/SVIx比1.2を得た。印刷したシートについて、偏光顕微鏡画像の色の差は観察されなかった。従って、異方性は無視できる。偏光顕微鏡法(microspcopy)による定量測定では、最大及び最小の加算RGB値の比1.03を得た。これは3%の異方性に相当する。
【0215】
実施例3C(凝固及び焼結したPTFE)
500mLのフルオロポリマー分散体2(但し、固形分含有量は20%であり、安定化ノニオン性乳化剤を含有しない)を、10重量%(w%)のシュウ酸溶液(10g)を使用して、室温で凝集させた。極微細粒子として凝集したラテックスは、該粒子がフラスコの底部でゆっくり沈降した。水を慎重にデカントした。ポリマー層をALLUMINOXパン(Φ7cm)に移し、実施例3Aに記載されているように、乾燥及び焼結した。焼結した材料の片から密度が2、005g/cmであると測定した。アモルファス含有量を測定して得られた空隙率は76(o/oo)であった。実施例3Cは、同一の焼結条件で加工された同一材料が、本開示による方法に従って3D印刷した材料よりも、低い密度及び高い空隙率を有したことを示す。
【0216】
実施例4 ペースト押出
この実施例では、PTFEペーストを、シリンジ押出機3Dプリンタを介して押し出し、一部を形成した。ペーストを、下記組成物から配合した。
【表3】
【0217】
MEK(メチルエチルケトン)とアクリレートとを混合して、透明溶液を形成し、次いで、光開始剤を含有するPTFE分散体に移した。混合物は、混合するとペーストとなった。
【0218】
ペーストを、ペースト用(meant for pastes)VCD−25押出ヘッドを使用して、HyRel 3DのSystem 30M(Hyrel3D(Norcross,GA 30071))で印刷した。ペーストを、慎重にシリンジ内に装填し、いく分かの材料を手動で押し出し、閉じ込められた空気の大部分が除去されることを担保した。2mmのノズルを使用した。押出機の底部に取り付けたUV LEDは、365nmの波長で発光するものである。印刷した物品への光の強度を増加させるために、取り付けたLEDに加えて、50+4mW、365nmのLEDを含むUV LEDストリップもまた使用した。
【0219】
この実施例では、シンプルなプリズムを作製した。プリンタの設定を、適切な層厚さ、線間隔、及び構造忠実度を達成するよう調節した。例えば、典型的な印刷を目的とした、標準的な設定からの調整は、層高さ=0.5mm、ランダムなシーム位置、100%直線充填、10mm/秒の移動速度、2.5mmの押出幅及び3.5の押出乗数とすることができた。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d