【文献】
          CHI,Ki-Whan,Bulletin of the Korean Chemical Society,1999年05月20日,20(5),499-502
        
        【文献】
          CHAMBERS, Richard D.,J. Chem. Soc. Perkin Trans.I,1985年,11(Nov),2209-2213
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0005】
  本明細書で用いる場合、用語
  「a」、「an」、及び「the」という用語は、互換的に使用され、1以上を意味し、
  「及び/又は」は、述べられた事例の一方又は両方が起こり得ることを示すために使用され、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)と(A又はB)とを含み、
  「アルキル」は、飽和炭化水素であるアルカンのラジカルである一価の基を示す。アルキル基は、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせであり得る。
  「連結された」は、炭素鎖(直鎖若しくは分枝鎖又は環内)の少なくとも2個の炭素原子に結合して炭素−ヘテロ原子−炭素結合を形成する、炭素以外の原子(例えば、酸素、窒素、又は硫黄)を意味する。
  「ペルフルオロ/フルオロ化」は、C−H結合中の全ての水素原子がC−F結合で置き換えられている基又は化合物を意味する。
 
【0006】
  本明細書で使用する場合、環の中心に「F」の文字が示された化学構造は、環の全ての記載のない結合がフッ素原子であることを示す。
 
【0007】
  また、本明細書において、端点による範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1〜10は、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98等を含む)。
 
【0008】
  また、本明細書において、「少なくとも1」の記載は、1以上の全ての数(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100等)を含む。
 
【0009】
  熱伝達流体は、ある場所から別の場所に熱を伝達するため、例えば、デバイスの加熱を防ぐため、又は正確な温度制御を維持するため、又は廃熱の捕捉及び電気エネルギー若しくは機械的エネルギーへの変換におけるようなエネルギー変換のために使用することができる。現在、様々な流体が熱伝達のために使用されている。熱伝達流体の適性は、用途プロセスに依存する。例えば、いくつかの電子用途では、不活性であり、低い毒性、良好な環境特性、及び広い温度範囲にわたる良好な熱伝達特性を有する熱伝達流体が望ましい。
 
【0010】
  気相はんだ付けは、特に高温暴露に適した熱伝達流体を必要とするプロセス用途である。このような用途では、170℃〜250℃の温度が典型的には使用され、200℃は、鉛系のはんだを使用するはんだ付け用途に特に有用であり、230℃は、より高い融点の鉛フリーはんだに有用である。現在、この用途で使用される熱伝達流体は、ペルフルオロポリエーテル(PFPE)(perfluoropolyether)類のものである。多くのPFPEは、使用される温度で適切な熱安定性を有するが、それらは非常に長い大気寿命を有し環境残留性があるという顕著な欠点も有しており、これが高い地球温暖化係数(GWP)(global warming potential)を生じさせる。このように、PFPEを、気相はんだ付け及び他の高温熱伝達用途(例えば、化学的不活性、熱安定性及び有効な熱伝達、広い温度範囲にわたる流動性、広い温度範囲にわたる良好な熱伝達特性)において役立つようにする、PFPEの特性を有するが、大気寿命がより短く、GWPはより低い、新しい材料が必要である。
 
【0011】
  いくつかの実施形態において、本開示の非環状フルオロ化合物は、電子産業用の熱伝達流体として特に有用となる特性を示し得る。例えば、非環状フルオロ化合物は、化学的に不活性であり得(即ち、塩基、酸、水等と容易に反応しない)、並びに高沸点(最高300℃)、低凝固点(非環状フルオロ化合物は−40℃以下で液体であり得る)、低粘度、高い熱安定性、良好な熱伝導率、潜在的に有用な溶質の範囲内での適切な溶解力、及び低い毒性を有し得る。本開示の非環状フルオロ化合物はまた、驚くべきことに、室温(例えば、20〜25℃)で液体であり得る。
 
【0012】
  更に、一実施形態において、本開示の化合物は、低コストの出発物質によって高収率で容易に調製することができる。出発物質は、容易に購入できるか、又は電気化学的フルオロ化から誘導され得る。したがって、本開示に記載される化合物は、熱伝達、洗浄、及び電解質用途を含めた様々な用途において潜在的利点を与える、新たな分類の有用かつ潜在的に低コストのフルオロ流体を表す。
 
【0013】
  本開示の非環状化合物(本明細書中、本開示の化合物と互換的に称される)は、一般式(I)によるものであって:
【化2】
  式中、
  Xは、F又はCF
3から選択され、Yは、H、F又はCF
3から選択され、(a)X及びYは両方ともFであるか、(b)XがCF
3であるとき、YはFであるか、(c)YがCF
3であるとき、XはFであり、
  各R
f1は、1〜8個の炭素原子を含み、かつO、N又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの連結された原子を任意選択により含む、直鎖又は分枝鎖のペルフルオロアルキル基から独立して選択されるか、2つのR
f1基は、一緒に結合して、4〜8個の炭素原子を含み、かつO、N又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの連結された原子を任意選択により含む、フルオロ環構造を形成し、
  各R
hは、独立して、H又はCH
3であり、
  Aは、F又はCF
3から選択され、
  Zは、H、F又はCF
3から選択され、
  Qは、F原子、Cl原子、1〜8個の炭素原子を含み、かつO、N若しくはこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの連結された原子を任意選択により含む、直鎖、環状若しくは分枝鎖のペルフルオロアルキル基、又はG(R
f2)
e基(式中、Gは、O原子又はN原子である)から選択され、
  QがCl原子であるとき、Z及びAはF原子であり、
  GがOであるとき、eは1であり、ZはH、F又はCF
3であり、AはFであり、R
f2は1〜10個の炭素原子を含み、かつO、N又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの連結された原子を任意選択により含む、直鎖又は分枝鎖のペルフルオロアルキル基であり、
  GがNであるとき、eは2であり、各R
f2基は、独立して、1〜8個の炭素原子を含み、かつO、N又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの連結された原子を任意選択により含む、直鎖又は分枝鎖のペルフッ素化アルキル基であるか、2つのR
f2基は、一緒に結合して、4〜8個の炭素原子を含み、かつO、N又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの連結された原子を任意選択により含む、フッ素化環構造を形成し、ただし、AがCF
3であるとき、ZはFであり、ZがCF
3であるとき、AはFである。
 
【0014】
  本明細書で使用する場合、非環状エーテルは、エーテル酸素原子が環状環中に含まれていない化合物を指し、したがって、上式(I)中に示される酸素原子は、非環状エーテルである。
 
【0015】
  一実施形態において、Qは、1、2、3、4、5、6、7又は8個の炭素原子を含み、かつO、N又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの連結された原子を任意選択により含む、直鎖、環状又は分枝鎖のペルフルオロアルキル基である。一実施形態において、Qはまた、N(R
f1)
2である。
 
【0016】
  一実施形態において、Qは、ペルフッ素化モルホリン基(すなわち、
【化3】
  )を含む。
 
【0017】
  本開示の例示的な化合物が本明細書で開示される。
 
【0018】
  一実施形態において、本開示のアミン含有非環状ハイドロフルオロエーテルは、置換ジエチルエーテルを含む。このようなアミン含有非環状ハイドロフルオロエーテルとしては以下が挙げられる。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
 
【0019】
  一実施形態において、本開示のアミン含有非環状ハイドロフルオロエーテルは、置換ジメチルエーテルを含む。このようなアミン含有非環状ハイドロフルオロエーテルとしては以下が挙げられる。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
  例示的なアミン含有非環状ハイドロフルオロエーテルとしては以下の、
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
  [式中、「Me」は、メチル(−CH
3)基を指す。]が挙げられる。
 
【0020】
  本開示の化合物は、良好な環境特性を有し、不燃性、化学的不活性、高い熱安定性、良好な溶解力等などの良好な性能属性を有する。
 
【0021】
  一実施形態において、本開示の化合物は、環境への影響が低いものであり得る。この点に関して、本開示の化合物は、100未満、50、又は更には10未満の地球温暖化係数(GWP)を有し得る。本明細書で使用する場合、GWPは、化合物の構造に基づく化合物の地球温暖化の潜在能力の相対的尺度である。化合物のGWPは、1990年に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)(Intergovernmental Panel on Climate Change)によって規定され、2007年に改訂されており、特定の積分期間(ITH)にわたる、1キログラムのCO
2放出による温暖化に対する、1キログラムの化合物放出による温暖化として計算される。
【数1】
 
【0022】
  この等式において、a
iは大気中の化合物の単位質量増加当たりの放射強制力(その化合物のIR吸光度に起因する大気を通る放射束の変化)であり、Cは化合物の大気濃度であり、τは化合物の大気寿命であり、tは時間であり、iは対象化合物である。一般的に許容されるITHは、短期間の効果(20年間)と長期間の効果(500年間以上)との間の折衷点を表す100年間である。大気中の有機化合物iの濃度は、擬一次速度式(すなわち、指数関数的減衰)に従うと仮定する。同じ時間間隔のCO
2の濃度は、大気からのCO
2の交換及び除去に関する、より複雑なモデルを組み込む(Bern炭素循環モデル)。
 
【0023】
  一実施形態において、本開示の化合物は、1年未満、0.5年、又は更には0.1年未満の大気寿命を有する。
 
【0024】
  不燃性は、ASTM  D−3278−96e−1、D56−05「Standard  Test  Method  for  Flash  Point  of  Liquids  by  Small  Scale  Closed−Cup  Apparatus」等の標準方法を使用することによって評価することができる。一実施形態において、本開示の化合物は、ASTM  D−327−96e−1に準拠した密閉式引火点試験に基づいて不燃性である。
 
【0025】
  一実施形態において、本開示の化合物は、動物組織において生体内蓄積しない。例えば、本開示のいくつかの化合物は、動物組織において生体内蓄積する傾向の低減を示す低log  K
ow値を実現することができ、ここでK
owは、オクタノール相及び水性相を含む二相系中の所与の化合物の濃度比として規定される、オクタノール/水の分配係数である。一実施形態において、log  K
ow値は、7、6、5、又は更には4未満である。
 
【0026】
  一実施形態において、本開示の化合物は、U.S.EPA「Health  Effects  Test  Guidelines  OPPTS  870.1100  Acute  Oral  Toxicity」及び/又はOECD  Test  No.436「Acute  Inhalation  Toxicity−Acute  Toxic  Class  Method」に準拠したラットにおける4時間の急性吸入毒性試験又は急性経口毒性試験に基づいて、低い急性毒性をもたらすことが期待される。例えば、本開示の化合物は、スプラーグドーリーラット雌雄において、30、50、100、200、又は更には300mg/kgより高い経口単回投与の半数致死量(LD50)を有する。
 
【0027】
  本開示の化合物の有用な流動性範囲は、その流動点とその沸点との間である。流動点は、化合物をなおも注ぐことができる最低温度である。流動点は、例えば、ASTM  D97−16「Standard  Test  Method  for  Pour  Point  of  Petroleum  Products」によって決定することができる。一実施形態において、本開示の化合物は、0℃、−20℃、−40℃又は更には−60℃未満の流動点を有する。一実施形態において、本開示の化合物は、少なくとも100℃、150℃、200℃、250℃又は更には300℃の沸点を有する。
 
【0028】
  いくつかの実施形態において、本開示の化合物は、疎水性であり、比較的化学反応性に乏しく、熱的に安定であり得る。
 
【0030】
  いくつかの実施形態において、本開示の化合物は、フルオロオレフィンへの非環状エーテルのフリーラジカル付加によって調製することができ、この化学反応は、Chambersらによって、J.Chem.Soc.Perkin  Trans  1,1985,p.2215〜2218に記載されている。
 
【0031】
  式(I)の非環状フルオロ化合物は、以下に記載するように、直鎖又は分枝鎖の非環状エーテル及びアミン含有フルオロオレフィンから調製することができる。
 
【0032】
  一実施形態において、非環状エーテルは、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、及びイソプロピルメチルエーテルから選択される。フルオロオレフィンは、末端又は内部の二重結合と、少なくとも1つのオレフィン性C−F結合とを含む。一実施形態において、フルオロオレフィンは、ペルフルオロ化されている。例示的なアミン含有フルオロオレフィンとしては、フルオロビニルアミン、フルオロ1−プロペニルアミン及びフルオロ2−プロペニルアミンが挙げられる。
 
【0033】
  フルオロビニルアミン及びフルオロプロペニルアミン化合物は、当該技術分野において知られている手順を用いて、適切な窒素含有炭化水素カルボキシレート誘導体を電気化学的にペルフルオロ化し、続いて、窒素含有ペルフルオロカルボキシレートを脱炭酸することによって調製することができる。具体的には、一般式Iの組成物の例示的な調製に使用されるフルオロビニルアミン、1−プロペニルアミン及び2−プロペニルアミンは、当該技術分野において知られている合成手順によって調製することができる。例えば、米国特許第4,985,556号(Abeら)を参照されたい。
 
【0034】
  アミン含有フルオロオレフィン(フルオロビニルアミン、1−プロペニルアミン及び2−プロペニルアミンを含む)を調製するための例示的な低コスト経路は、以下の一連の反応を伴う。
【化18】
 
【0035】
  例示的なペルフルオロビニルアミン及びペルフルオロプロペニルアミンとしては、以下が挙げられる。
【化19】
 
【0036】
  例示的なフルオロビニルアミン及びフルオロプロペニルアミンとしては、以下が挙げられる。
【化20】
 
【0038】
  アミン含有フルオロオレフィンと非環状エーテルとのモル比は、3:1〜1:6、より好ましくは2:1〜1:3であり得る。フルオロオレフィンの反応性及び選択したモル比に応じて、一置換生成物又は二置換生成物が生じ得る。例えば、大過剰のフルオロオレフィンは、二置換生成物に有利である。すなわち、アミン含有フルオロオレフィンは、エーテル酸素原子に隣接する両炭素と反応する。一実施形態において、非環状エーテル部分に結合する2つのフルオロ置換基は同一である。すなわち、−CFZ−CHA−Qは、−CFY−CHX−N(R
f1)
2である。
 
【0039】
  しかしながら、別の実施形態において、アミン含有フルオロオレフィンに加えて、アミン非含有フルオロオレフィンを非環状エーテルと反応させると、非環状エーテル環に結合したアミン含有フルオロオレフィン由来の1つの置換基と、非環状エーテル環に結合したアミン非含有フルオロオレフィン由来の別の置換基とが与えられる。これらのアミン非含有フルオロオレフィンは、得られる非環状フルオロ化合物に異なる化学的特性及び物理的特性を付与することができ、かつ/又は製造コストを抑えることができる。このようなアミン非含有フルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、及びブロモトリフルオロエチレンなどのペルフルオロオレフィン;ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル、ペルフルオロ(n−プロピルビニル)エーテル、ペルフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル、ペルフルオロ−3−メトキシ−n−プロピルビニルエーテル、ペルフルオロ−2−メトキシ−エチルビニルエーテル、ペルフルオロ−メトキシ−メチルビニルエーテル(CF
3−O−CF
2−O−CF=CF
2)、ペルフルオロ−4,8−ジオキサ−1−ノネン(すなわち、CF
2=CFO(CF
2)
3OCF
3)、C
3F
7−O−CF(CF
3)CF
2−O−CF=CF
2、及びCF
3−(CF
2)
2−O−CF(CF
3)−CF
2−O−CF(CF
3)−CF
2−O−CF=CF
2などのペルフルオロビニルエーテル;ペルフルオロ(メチルアリル)エーテル(CF
2=CF−CF
2−O−CF
3)、ペルフルオロ(エチルアリル)エーテル、ペルフルオロ(n−プロピルアリル)エーテル、ペルフルオロ−2−プロポキシプロピルアリルエーテル、ペルフルオロ−3−メトキシ−n−プロピルアリルエーテル、ペルフルオロ−2−メトキシ−エチルアリルエーテル、ペルフルオロ−メトキシ−メチルアリルエーテル、及びCF
3−(CF
2)
2−O−CF(CF
3)−CF
2−O−CF(CF
3)−CF
2−O−CF
2CF=CF
2などのペルフルオロアリルエーテル;CF
3(CF
2)
nOCF=CHF[式中、nは、0〜4の整数である。]、CF
2=CHF、並びにCF
3CF=CHFが挙げられる。このようなアミン非含有フルオロオレフィンは、市販されているか、又は当該技術分野において記載されている既知の方法を使用して合成することができる。
 
【0040】
  アミン非含有フルオロオレフィンとアミン含有フルオロオレフィンは、非環状エーテルと同時に又は連続的に反応させてよい。一般に、アミン非含有フルオロオレフィンと非環状エーテルとのモル比は、3:1〜1:6、より好ましくは2:1〜1:3であり得る。また、アミン非含有フルオロオレフィンの性質及び/又はそのモル比に応じて、アミン非含有フルオロオレフィンは、非環状エーテルの片側又は両側に付加され得る。ただし、本開示において、非環状エーテルに、酸素原子に対してαでフリーラジカル付加されるアミン非含有フルオロオレフィンは、1つのみである。
 
【0041】
  フルオロオレフィンと非環状エーテルとのフリーラジカル付加反応は、照射によって、又はラジカルを発生させるためのパーオキサイド、パーオキシエステル若しくはパーオキシカーボネートを含む好適なフリーラジカル開始剤化合物によって、促進される。このような化学反応開始剤の例としては、tert−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(商品名「LUPEROX  575」にてArkema(Crosby,TX)から入手可能)、ラウリルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、及びこれらの混合物が挙げられる。照射源としては、当該技術分野において知られているもの、例えば、紫外線、X線、及びガンマ線が挙げられる。
 
【0042】
  いくつかの実施形態において、フルオロオレフィン及び非環状エーテルは、50、100、125、150、160、又は更には200℃より高い温度、かつ400、350℃、又は更には300℃以下の温度で、フリーラジカル開始剤と共に加熱される。
 
【0043】
  一実施形態において、得られるフルオロ化合物は、所望のアミン含有非環状ハイドロフルオロエーテルを単離するために精製され得る。精製は、蒸留、吸収、抽出、クロマトグラフィー及び再結晶を含む従来の手段によって行うことができる。精製は、本開示の化合物を(その立体異性体の全ての形態で)出発物質、副生成物等の不純物から単離するために実施することができる。本明細書で使用する用語「精製形態」は、本開示の化合物が少なくとも90、95、98、又は更には99重量%の純度であることを意味する。
 
【0044】
  本開示の化合物を、様々な用途における作動流体として使用することができる。作動流体は、上記の式(I)の化合物を、作動流体の総重量に基づいて少なくとも25重量%、50重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、99重量%、又は更には100重量%含んでもよい。本開示の化合物に加えて、作動流体は、次の構成成分:アルコール、エーテル、アルカン、アルケン、ハロアルケン、ペルフルオロカーボン、ペルフルオロ第三級アミン、ペルフルオロエーテル、シクロアルカン、エステル、ケトン、オキシラン、芳香族、シロキサン、不飽和ハイドロクロロカーボン、不飽和ハイドロクロロフルオロカーボン、不飽和ハイドロフルオロカーボン、ヘテロ原子非含有ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィン、不飽和ハイドロフルオロエーテル、又はこれらの混合物のうちの1種以上を、作動流体の総重量に基づいて合計で最大75重量%、最大50重量%、最大30重量%、最大20重量%、最大10重量%、又は最大5重量%含んでもよい。このような追加成分は、組成物の特性を、特定の用途向けに改変又は強化するために選択できる。
 
【0045】
  一実施形態において、作動流体は、引火点を有さない(例えば、ASTM  D−3278−96e−1に準拠して測定した場合)。
 
【0046】
  一実施形態において、本開示の化合物は、デバイスと、当該デバイスに又は当該デバイスから熱を伝達するための機構とを含む、熱伝達のための装置中で使用され得る。熱を伝達するための機構は、本開示の式(I)の化合物を含む熱伝達作動流体を含んでもよい。
 
【0047】
  提供される、熱を伝達するための装置は、デバイスを含んでもよい。デバイスとは、冷却、加熱又は所定の温度若しくは温度範囲に維持されるコンポーネント、加工対象物、アセンブリ等であってもよい。このようなデバイスには、電気コンポーネント、機械コンポーネント及び光学コンポーネントが含まれる。本開示のデバイスの例として、マイクロプロセッサ、半導体デバイスの製造に用いられるウエハ、出力制御用半導体、配電スイッチギヤ、電力変圧器、回路基板、マルチチップモジュール、パッケージされた及びパッケージされていない半導体デバイス、レーザー、化学反応器、燃料電池並びに電気化学セルが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、デバイスは、冷却器、加熱器又はこれらの組み合わせを含み得る。
 
【0048】
  更に他の実施形態において、デバイスは、マイクロプロセッサを含むプロセッサなどの、電子デバイスを含み得る。これらの電子デバイスが強力になると、単位時間当たりに生成される熱量が増加する。したがって、熱伝達の機構は、プロセッサの性能において重要な役割を果たす。熱伝達流体は、典型的には、良好な熱伝達性能、良好な電気適合性(冷却板を用いるもの等の「間接接触」用途で使用される場合であっても)並びに低い毒性、低い燃焼性(又は不燃性)及び低い環境影響を有する。電気適合性が良好であることは、熱伝達流体候補が、高絶縁耐力、高体積抵抗率及び極性物質に対する乏しい溶解性を呈することを示唆する。加えて、熱伝達流体は、良好な機械適合性を示す必要があり、すなわち、構造体の典型的材料に悪影響を与えないものとする。
 
【0049】
  提供される装置は、熱を伝達するための機構を備えてもよい。当該機構は、熱伝達流体を含んでもよい。熱伝達流体は、1種以上の本開示の化合物を含んでもよい。デバイスと熱接触するように熱伝達機構を配置することによって、熱を伝達し得る。熱伝達機構は、デバイスと熱接触するように配置されると、デバイスから熱を除去するか、若しくはデバイスに熱を供給するか、又は選択された温度若しくは温度範囲にデバイスを維持する。熱流の方向(デバイスから又はデバイスに)は、デバイスと熱伝達機構との間の相対的温度差によって決まる。
 
【0050】
  熱伝達機構としては、これらに限定されるものではないが、ポンプ、弁、流体収納システム、圧力制御システム、凝縮器、熱交換器、熱源、ヒートシンク、冷却システム、能動型温度制御システム及び受動型温度制御システムを含む、熱伝達流体を管理するための設備を挙げることができる。好適な熱伝達機構の例としては、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)ツールの温度制御ウエハチャック、ダイ性能試験のための温度制御試験ヘッド、半導体加工装置内の温度制御作業領域、熱衝撃試験槽液体収容容器及び恒温槽が挙げられるが、これらに限定されない。エッチャー、アッシャー、PECVDチャンバ、気相はんだ付けデバイス、及び熱衝撃試験器等のいくつかの系では、所望の動作温度の上限は、170℃、200℃、又は更には230℃の高温であり得る。
 
【0051】
  デバイスと熱接触するように熱伝達機構を配置することにより、熱を伝達することができる。熱伝達機構は、デバイスと熱接触するように配置されると、デバイスから熱を除去するか、若しくはデバイスに熱を供給するか、又は選択された温度若しくは温度範囲にデバイスを維持する。熱流の方向(デバイスから又はデバイスに)は、デバイスと熱伝達機構との間の相対的温度差によって決まる。提供される装置として、冷蔵システム、冷却システム、試験装置及び機械加工装置も挙げることができる。いくつかの実施形態において、提供される装置は、恒温槽又熱衝撃試験槽であり得る。エッチャー、アッシャー、PECVDチャンバ、気相はんだ付けデバイス、及び熱衝撃試験器等のいくつかの系では、所望の動作温度の上限は、170℃、200℃、250℃又は更にそれより高い高温であり得る。
 
【0052】
  いくつかの実施形態において、本開示の化合物は、気相はんだ付けにおいて使用される熱伝達剤として使用され得る。気相はんだ付けにおいて本開示の化合物を使用する際には、例えば、米国特許第5,104,034号(Hansen)に記載のプロセスを使用することができ、その記載内容は参照により本明細書に組み込まれる。簡潔に述べると、このようなプロセスは、本開示の少なくとも1種の非環状フルオロ化合物を含む蒸気体中に、はんだ付けされる部品をさらして、はんだを溶融させること、を含む。このようなプロセスを実施するにあたり、非環状フルオロ化合物(又は非環状フルオロ化合物を含む作動流体)の液体プールをタンク内で沸騰するまで加熱して、沸騰液体と凝縮手段との間の空間に飽和蒸気を形成する。
 
【0053】
  はんだ付けされるワークピースは、(170℃より高い、200℃より高い、230℃より高い、250℃又は更にそれより高い温度で)蒸気中にさらされ、蒸気はワークピースの表面上に凝縮して、はんだを溶融しリフローさせる。そして最後に、はんだ付けされたワークピースを、蒸気を含む空間から取り出す。
 
【0054】
  別の実施形態において、本開示の化合物は、ランキンサイクルで熱エネルギーを機械エネルギーに変換する装置中で使用される。この装置は、1種以上の式(I)の化合物を含む作動流体を含んでもよい。装置は、作動流体を気化させて気化作動流体を形成するための熱源と、気化作動流体を通過させることにより熱エネルギーを機械エネルギーに変換するタービンと、タービンを通過した後の気化作動流体を冷却するための凝縮器と、作動流体を再循環させるためのポンプとを更に含んでもよい。
 
【0055】
  いくつかの実施形態において、本開示は、ランキンサイクルで熱エネルギーを機械エネルギーに変換するプロセスに関する。このプロセスは、熱源を使用して、1種以上の式(I)の化合物を含む作動流体を気化し、気化作動流体を形成すること、を含み得る。いくつかの実施形態において、熱は、熱源からエバポレーター又はボイラー内の作動流体に伝達される。気化作動流体は、加圧されてもよく、膨張により作動するように使用することができる。熱源は、化石燃料(例えば、石油、石炭又は天然ガス)由来のもの等、任意の形態であってもよい。更に、いくつかの実施形態において、熱源は、原子力、太陽エネルギー、又は燃料電池から得ることができる。他の実施形態において、熱は、他の場合であれば大気に失われていたと思われる他の熱伝達システムからの「廃熱」であり得る。いくつかの実施形態において、「廃熱」は、第2のランキンサイクルシステム、第2のランキンサイクルの凝縮器又は他の冷却デバイスから回収される熱であることができる。
 
【0056】
  「廃熱」の更なる供給源は、メタンガスが燃焼処理される埋立地で見出すことができる。メタンガスが環境に入って地球温暖化の一因になることを防止するために、埋立地によって発生するメタンガスを「フレア」によって燃焼させ、二酸化炭素と水を生成することができ、この二酸化炭素と水はいずれも、地球温暖化係数の点から環境有害性がメタンよりも低い。提供されるプロセスにおいて有用であり得る「廃熱」の他の供給源は、地熱源、並びに排気ガスから著しい熱を出すガスタービンエンジンなどの他の種類のエンジンから水及び潤滑剤などの冷却液への熱である。
 
【0057】
  提供されるプロセスにおいて、気化作動流体は、デバイスを通って膨張し、デバイスは、加圧作動流体を機械的エネルギーに変換することができる。いくつかの実施形態において、気化作動流体は、タービンを通って膨張し、タービンは気化作動流体の膨張圧からシャフトを回転させることができる。このタービンは、その結果、いくつかの実施形態では発電機を作動させ、それにより発電するといった、機械的仕事を行うために使用することができる。他の実施形態では、このタービンは、ベルト、ホイール、ギア、又は取り付けた若しくは連結したデバイスで使用するための機械的仕事若しくはエネルギーを伝達できる他のデバイスを駆動するために使用することができる。
 
【0058】
  気化作動流体が機械エネルギーに変換された後、気化した(その時点で膨張した)作動流体を、冷却源を用いて凝縮し、再使用のために液化することができる。凝縮器によって放出された熱は、同じ又は別のランキンサイクルシステムに再循環させる等、他の目的に使用して、エネルギーを節約することができる。最後に、凝縮された作動流体は、閉鎖系で再使用するため、ポンプによってボイラー又はエバポレーターに戻すことができる。
 
【0059】
  有機ランキンサイクル作動流体の所望の熱力学的特性は、当業者には公知であり、例えば、米国特許公開第2010/0139274号(Zyhowskiら)に説明されている。熱源の温度と凝縮液体又は凝縮後に生成されたヒートシンクの温度との差が大きいほど、ランキンサイクルの熱力学的効率は高い。熱力学的効率は、作動流体を熱源温度と一致させることにより、影響を受ける。作動流体の気化温度が熱源温度に近いほど、システムの効率は高い。トルエンは、例えば、79℃〜約260℃の温度範囲で使用できるが、トルエンは、毒性及び可燃性の点で懸念される。1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン及び1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン等の流体を代替としてこの温度範囲で使用することができる。しかし、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタンは、300℃未満では毒性化合物を生成する可能性があり、かつ気化温度を約93℃〜約121℃に限定する必要がある。したがって、より高い臨界温度を有し、その結果、ガスタービン及び内燃機関排気ガス等の熱源温度を作動流体に、より一致させることができる、環境に優しい他のランキンサイクル作動流体が望まれている。
 
【0060】
  一実施形態において、本開示の化合物は、1種以上の共溶媒と共に洗浄組成物中に使用される。いくつかの実施形態において、本開示は、基材を洗浄するプロセスに関する。洗浄プロセスは、汚染された基材を洗浄組成物と接触させることによって実施できる。本開示の化合物は、単独で使用しても、互いとの又は他の一般に使用される洗浄共溶媒との混合物中で利用してもよい。洗浄組成物に使用できる共溶媒の代表例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール、メチルt−ブチルエーテル、メチルt−アミルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、シクロヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−デカン、テルペン(例えば、a−ピネン、カンフェン、及びリモネン)、トランス−1,2−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、メチルシクロペンタン、デカリン、メチルデカノエート、t−ブチルアセテート、エチルアセテート、ジエチルフタレート、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、ナフタレン、トルエン、p−クロロベンゾトリフルオライド、トリフルオロトルエン、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロトリブチルアミン、ペルフルオロ−N−メチルモルホリン、ペルフルオロ−2−ブチルオキサシクロペンタン、メチレンクロライド、クロロシクロヘキサン、1−クロロブタン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1,1,1−トリフルオロ−2,2−ジクロロエタン、1,1,1,2,2−ペンタフルオロ−3,3−ジクロロプロパン、1,1,2,2,3−ペンタフルオロ−1,3−ジクロロプロパン、2,3−ジハイドロペルフルオロペンタン、1,1,1,2,2,4−ヘキサフルオロブタン、1−トリフルオロメチル−1,2,2−トリフルオロシクロブタン、3−メチル−1,1,2,2−テトラフルオロシクロブタン、1−ハイドロペンタデカフルオロヘプタン、又はこれらの混合物が挙げられる。このような共溶媒は、特定の用途のために洗浄組成物の溶解特性を改変又は強化するように選択でき、得られる組成物が引火点を持たないような比率(式(I)による化合物に対する共溶媒の比率)で用いることができる。特定の用途に望ましい場合、洗浄組成物は、1つ以上の溶解又は分散された気体、液体又は固体添加剤(例えば、炭酸ガス、界面活性剤、安定剤、酸化防止剤又は活性炭)を更に含有することができる。
 
【0061】
  いくつかの実施形態において、本開示は、1種以上の本開示の化合物と、任意選択により1種以上の界面活性剤とを含む、洗浄組成物に関する。好適な界面活性剤としては、本開示の化合物に十分に可溶性である界面活性剤、及び汚れを溶解、分散又は排除することによって汚れの除去を促進する界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の1つの有用な分類は、約14未満の親水性−親油性バランス(HLB)を有するノニオン性界面活性剤である。例としては、エトキシル化アルコール、エトキシル化アルキルフェノール、エトキシル化脂肪酸、アルキルアリールスルホネート、グリセロールエステル、エトキシル化フルオロアルコール及びフルオロスルホンアミドが挙げられる。1種の界面活性剤が油性汚れの除去を促進するために洗浄組成物に添加され、別の界面活性剤が水溶性の汚れの除去を促進するために添加された、相補的特性を有する界面活性剤の混合物を使用してもよい。界面活性剤は、使用する場合、汚れ除去を促進するのに十分な量で添加することができる。典型的には、界面活性剤は、洗浄組成物の0.1〜5.0重量%又は0.2〜2.0重量%の量で添加されてもよい。
 
【0062】
  洗浄組成物は、気体状態又は液体状態のいずれか(又は両方)で使用することができ、基材と「接触させる」ための既知技法又は将来の技法のいずれかを用いることができる。例えば、液体洗浄組成物を基材上に噴霧若しくははけ塗りすることができ、気体洗浄組成物を基材に吹き付けることができ、又は基材を気体若しくは液体組成物のいずれかにさらすことができる。高温、超音波エネルギー及び/又はかき混ぜを使用して、洗浄を促進することができる。様々な異なる溶媒洗浄技術が、B.N.EllisによってCleaning  and  Contamination  of  Electronics  Components  and  Assemblies,Electrochemical  Publications  Limited,Ayr,Scotland,182〜94(1986)に記載されている。
 
【0063】
  有機基材及び無機基材の両方を本開示のプロセスによって洗浄することができる。基材の代表例としては、金属、セラミック、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、天然繊維(及び天然繊維に由来する布地)、例えば、綿、絹、毛皮、スエード、革、リネン及びウール、合成繊維(及び布地)、例えば、ポリエステル、レーヨン、アクリル、ナイロン又はこれらの混紡、天然繊維と合成繊維の混紡を含む布地、並びに上記材料の複合材が挙げられる。いくつかの実施形態において、上記プロセスは、電子部品(例えば回路基板)、光媒体若しくは磁気媒体又は医療機器の精密洗浄に使用され得る。
 
【0064】
  更に別の実施形態において、本開示の化合物を誘電性流体中に使用し、これを電気デバイス(例えば、コンデンサ、スイッチギヤ、変圧器、又は電気ケーブル若しくはバス)内で使用することができる。本出願の目的のために、用語「誘電性流体」は、液体誘電体及び気体誘電体の両方を包含する。流体、気体又は液体の物理的状態は、それが使用される電気デバイスの温度動作条件及び圧力動作条件で決まる。
 
【0065】
  いくつかの実施形態において、誘電性流体は、1種以上の式(I)の化合物と、任意選択により1種以上の第2の誘電性流体とを含む。好適な第2の誘電性流体としては、例えば、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン及び二酸化炭素又はこれらの組み合わせが挙げられる。第2の誘電性流体は、非凝縮性ガス又は不活性ガスであってもよい。一般に、第2の誘電性流体は、25℃又は電気デバイスの動作温度において、蒸気圧が少なくとも70kPaであるような量で使用され得る。
 
【0066】
  式(I)の化合物を含む本出願の誘電性流体は、電気絶縁に有用であり、送電及び配電に使用されるアーク消去及び電流遮断機器に有用である。概して、本開示の流体を使用できる電気デバイスには、(1)ガス絶縁回路遮断器及び電流遮断設備、(2)ガス絶縁送電線、並びに(3)ガス絶縁変圧器の3つの主要な種類がある。このようなガス絶縁設備は、送配電システムの主要構成要素である。
 
【0067】
  いくつかの実施形態において、本開示は、気体誘電体が電極間の空間を満たすように互いに離れた金属電極を備える、コンデンサなどの電気デバイスを提供する。電気デバイスの内部空間は、気体誘電性流体と平衡状態にある液体誘電性流体の収容容器を備えることもある。したがって、収容容器は、誘電性流体のいかなる損失も補充し得る。
 
【0068】
  別の実施形態において、本開示は、(a)1種以上の本開示の化合物を含む溶媒組成物と、(b)この溶媒組成物に可溶性又は分散性である1種以上のコーティング材料とを含む、コーティング組成物に関する。
 
【0069】
  様々な実施形態において、コーティング組成物のコーティング材料としては、顔料、潤滑剤、安定剤、接着剤、酸化防止剤、染料、ポリマー、医薬品、離型剤、無機酸化物等、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。例えば、コーティング材料としては、不飽和ペルフルオロポリエーテル、不飽和炭化水素、及びシリコーン潤滑剤;テトラフルオロエチレンの非晶質コポリマー;ポリテトラフルオロエチレン、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。好適なコーティング材料の更なる例としては、二酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、不飽和ペルフルオロポリエーテル、ポリシロキサン、ステアリン酸、アクリル接着剤、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンの非晶質コポリマー、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
 
【0070】
  いくつかの実施形態において、上記コーティング組成物は、コーティング付着に有用となる可能性があり、この場合、式(I)の化合物がコーティング材料のキャリアとして機能し、基材表面への材料の付着を可能にする。これに関連して、本開示は、更に、コーティング組成物を使用して基材表面にコーティングを付着させる、プロセスに関する。このプロセスは、基材の少なくとも一方の表面の少なくとも一部分に、(a)1種以上の式(I)の化合物を含有する溶媒組成物と、(b)この溶媒組成物に可溶性又は分散性である1種以上のコーティング材料とを含む、液体コーティング組成物のコーティングを適用する工程、を含む。溶媒組成物は、1種以上の共分散剤若しくは共溶媒及び/又は1種以上の添加剤(例えば、界面活性剤、着色剤、安定剤、酸化防止剤、難燃剤等)を更に含んでもよい。好ましくは、プロセスは、例えば、蒸発させることによって(蒸発は、例えば、熱又は真空の適用によって促進することができる)、コーティングから溶媒組成物を除去する工程、を更に含む。
 
【0071】
  様々な実施形態において、コーティング組成物を形成するために、コーティング組成物の構成成分(すなわち、用いられる、式(I)の化合物(複数可)、コーティング材料(複数可)及び任意の共分散剤(複数可)又は共溶媒(複数可))を、コーティング材料を溶解、分散又は乳化するために使用される任意の従来の混合技術によって、例えば、機械的かき混ぜ、超音波かき混ぜ、手動かき混ぜ等によって組み合わせることができる。溶媒組成物及びコーティング材料(複数可)は、所望のコーティング厚に応じて任意の比率で組み合わせることができる。例えば、コーティング材料(複数可)は、コーティング組成物の約0.1〜約10重量パーセントを構成し得る。
 
【0072】
  例示的な実施形態において、本開示の付着プロセスは、任意の従来技術によりコーティング組成物を基材に適用することによって実行することができる。例えば、組成物を基材上にはけ塗りすること若しくは噴霧すること(例えば、エアゾールとして)ができ、又は基材にスピンコーティングすることができる。いくつかの実施形態において、基材は、組成物に浸漬することによりコーティングされてもよい。浸漬は、任意の好適な温度で行うことができ、任意の都合のよい長さの時間にわたって維持することができる。基材が、カテーテルなどの管であり、カテーテルの管腔壁に組成物を確実にコーティングすることが望ましい場合、減圧の適用により管腔内に組成物を引き込んでもよい。
 
【0073】
  様々な実施形態において、基材にコーティングを適用した後、溶媒組成物をコーティングから(例えば、蒸発によって)除去することができる。所望であれば、蒸発速度を、減圧又は穏やかな熱の適用により加速することができる。コーティングは、任意の都合のよい厚さであってよく、実際には、厚さは、コーティング材料の粘度、コーティングが適用される温度及び引き上げ速度(浸漬が用いられる場合)のような要因によって決定されるものとなる。
 
【0074】
  有機基材及び無機基材の両方を本開示のプロセスによってコーティングすることができる。基材の代表例としては、金属、セラミック、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、天然繊維(及び天然繊維に由来する布地)、例えば、綿、絹、毛皮、スエード、革、リネン及びウール、合成繊維(及び布地)、例えば、ポリエステル、レーヨン、アクリル、ナイロン又はこれらの混紡、天然繊維と合成繊維の混紡を含む布地、並びに上記材料の複合材が挙げられる。いくつかの実施形態において、コーティングされ得る基材としては、例えば、ペルフルオロポリエーテル潤滑剤を用いた磁気ハードディスク若しくは電気コネクタ、又はシリコーン潤滑剤を用いた医療機器が挙げられる。
 
【0075】
  いくつかの実施形態において、本開示は更に、1種以上の本開示の化合物を含む電解質組成物に関する。電解質組成物は、(a)1種以上の式(I)による化合物を含む溶媒組成物と、(b)少なくとも1種の電解質塩とを含み得る。本開示の電解質組成物は、優れた酸化安定性を呈し、高圧電気化学セル(例えば、充電式リチウムイオン電池)に使用すると、卓越したサイクル寿命及びカレンダー寿命をもたらす。例えば、黒鉛化炭素電極を有する電気化学セルにこのような電解質組成物を使用すると、電解質は、少なくとも4.5V、最大6.0V(対Li/Li
+)の最大充電電圧に対して安定なサイクルをもたらす。
 
【0076】
  本開示の電解質組成物の調製における使用に好適な電解質塩としては、少なくとも1つのカチオン及び少なくとも1つの弱配位アニオン(炭化水素スルホン酸以上の酸性度を有するアニオン(例えば、PF
6−アニオン又はビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミドアニオン)の共役酸)を含む塩、式(I)の選択化合物(又は式(I)の選択化合物と、1種以上の他の式(I)の化合物若しくは1種以上の従来の電解質溶媒とのブレンド)に少なくとも部分的に可溶性の塩、並びに少なくとも部分的に解離して伝導性電解質組成物を形成する塩が挙げられる。塩は、動作電圧の範囲にわたって安定であり得、非腐食性であり、かつ熱安定性及び加水分解に安定性であり得る。好適なカチオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、IIB族金属、IIIB族金属、遷移金属、希土類金属及びアンモニウム(例えば、テトラアルキルアンモニウム又はトリアルキルアンモニウム)カチオン、並びにプロトンが挙げられる。いくつかの実施形態において、電池に使用するためのカチオンとしては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のカチオンが挙げられる。好適なアニオンとしては、(FSO
2)
2N
−、BF
4−、PF
6−、AsF
6−、及びSbF
6−等のフッ素含有無機アニオン;CIO
4−;HSO
4−;H
2PO
4−;アルカン、アリール、及びアルカリルスルホネート等の有機アニオン;フッ素含有及び非フルオロテトラアリールボレート;カルボラン及びハロゲン置換、アルキル置換、又はハロアルキル置換カルボランアニオン(メタロカルボランアニオンを含む);並びにペルフルオロアルカンスルホネート、シアノペルフルオロアルカンスルホニルアミド、ビス(シアノ)ペルフルオロアルカンスルホニルメチド、(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチド、及びトリス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチド等のフッ素含有有機アニオン等が挙げられる。電池に使用するのに好ましいアニオンとしては、フッ素含有無機アニオン(例えば、(FSO
2)
2N
−、BF
4−、PF
6−及びAsF
6−)並びにフッ素含有有機アニオン(例えば、ペルフルオロアルカンスルホネート、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド及びトリス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチド)が挙げられる。フッ素含有有機アニオンは、完全にフルオロ化されているか、すなわちペルフルオロ化されているか、又は(その有機部分内で)部分的にフルオロ化されているかのいずれかであってよい。いくつかの実施形態において、フッ素含有有機アニオンは、少なくとも約80%がフルオロ化されている(すなわち、アニオンの炭素結合置換基のうちの少なくとも約80%がフッ素原子である)。いくつかの実施形態において、アニオンはペルフルオロ化されている。アニオンは、ペルフルオロアニオンを含め、例えば、窒素、酸素又は硫黄等の1個以上の連結したヘテロ原子を含有してもよい。いくつかの実施形態において、フッ素含有有機アニオンとしては、ペルフルオロアルカンスルホネート、ビス(ペルフルオロアルカンスルホニル)イミド及びトリス(ペルフルオロアルカンスルホニル)メチドが挙げられる。
 
【0077】
  いくつかの実施形態において、電解質塩は、リチウム塩を含んでもよい。好適なリチウム塩としては、例えば、リチウムヘキサフルオロホスフェート、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(ペルフルオロエタンスルホニル)イミド、リチウムテトラフルオロボレート、リチウムパークロレート、リチウムヘキサフルオロアルシネート、リチウムトリフルオロメタンスルホネート、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(Li−FSI)及びこれらの2つ以上の混合物が挙げられる。
 
【0078】
  本開示の電解質組成物は、少なくとも1種の電解質塩と、少なくとも1種の式(I)の化合物を含む溶媒組成物とを組み合わせ、それにより塩を所望の動作温度で溶媒組成物中に少なくとも部分的に溶解させることによって調製することができる。本開示の化合物(又は通常は、それを含み、それからなり、若しくは本質的にそれからなる液体組成物)は、このような調製において使用することができる。
 
【0079】
  いくつかの実施形態において、電解質塩は、電解質組成物の伝導率が最大値又はその近傍となるような濃度(典型的には、例えば、リチウム電池用電解質の場合、Liモル濃度約0.1〜4.0M、又は1.0〜2.0M)で、電解質組成物中に使用されるが、広範囲の他の濃度も使用してもよい。
 
【0080】
  いくつかの実施形態において、1種以上の従来の電解質溶媒が、式(I)の化合物(複数可)と混合される(例えば、式(I)の化合物(複数可)は、得られる溶媒組成物の約1〜約80又は90%を構成する)。有用な従来の電解質溶媒としては、例えば、有機及びフッ素含有電解質溶媒(例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメトキシエタン、7−ブチロラクトン、ジグリム(すなわち、ジエチレングリコールジメチルエーテル)、テトラグリム(すなわち、テトラエチレングリコールジメチルエーテル)、モノフルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、エチルアセテート、メチルブチレート、テトラヒドロフラン、アルキル置換テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、アルキル置換1,3−ジオキソラン、テトラヒドロピラン、アルキル置換テトラヒドロピラン等、及びこれらの混合物)が挙げられる。他の従来の電解質添加剤(例えば、界面活性剤)も、所望であれば存在してもよい。
 
【0081】
  本開示は更に、上記の電解質組成物を含む電気化学セル(例えば、燃料電池、電池、コンデンサ、エレクトロクロミックウインドウ)に関する。このような電気化学セルは、正極、負極、セパレータ及び上記の電解質組成物を含んでもよい。
 
【0082】
  様々な負極及び正極を電気化学セルに用いてもよい。代表的な負極としては、黒鉛炭素、例えば、(002)結晶面同士の間隔(d
002)が3.45A>d
002>3.354Aであり、粉末、フレーク、繊維又は球(例えば、メソカーボンマイクロビーズ)等の形態で存在するもの;米国特許第6,203,944号(Turnerら)及び同第6,255,017号(Turner)に記載のLi
4/3Ti
5/3O
4のリチウム合金組成物;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。代表的な正極としては、LiFePO
4、LiMnPO
4、LiCoPO
4、LiMn
2O
4、LiCoO
2及びこれらの組み合わせが挙げられる。負極又は正極は、当業者によく知られる添加剤、例えば、負極にはカーボンブラック、正極にはカーボンブラック、フレーク状黒鉛等を含有してもよい。
 
【0083】
  本開示の電気化学デバイスは、コンピュータ、電動工具、自動車、通信デバイス等の様々な電子物品に使用することができる。
 
【0084】
  本開示の例示的な実施形態としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
 
【0085】
  実施形態1.式(I)による非環状フルオロフルオロ化合物であって:
【化21】
  式中、
  各R
hは、独立して、H又はCH
3であり、
  Xは、F又はCF
3から選択され、Yは、H、F又はCF
3から選択され、XがCF
3であるとき、YはFであり、YがCF
3であるとき、XはFであり、
  各R
f1は、1〜8個の炭素原子を含み、かつO、N又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの連結された原子を任意選択により含む、直鎖又は分枝鎖のペルフルオロアルキル基から独立して選択されるか、2つのR
f1基は、一緒に結合して、4〜8個の炭素原子を含み、かつO、N又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの連結された原子を任意選択により含む、フルオロ環構造を形成し、
  Aは、F又はCF
3から選択され、
  Zは、H、F又はCF
3から選択され、
  Qは、(i)F原子、(ii)Cl原子、(iii)1〜8個の炭素原子を含み、かつO、N若しくはこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの連結された原子を任意選択により含む、直鎖、環状若しくは分枝鎖のペルフルオロアルキル基、又は(iv)G(R
f2)
e基(式中、Gは、O原子又はN原子である)から選択され、
  QがCl原子であるとき、Z及びAはF原子であり、
  GがOであるとき、eは1であり、ZはH、F又はCF
3であり、AはFであり、R
f2は1〜10個の炭素原子を含み、かつO、N又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの連結された原子を任意選択により含む、直鎖又は分枝鎖のペルフルオロアルキル基であり、
  GがNであるとき、eは2であり、各R
f2基は、独立して、1〜8個の炭素原子を含み、かつO、N又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの連結された原子を任意選択により含む、直鎖又は分枝鎖のペルフッ素化アルキル基であるか、2つのR
f2基は、一緒に結合して、4〜8個の炭素原子を含み、かつO、N又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの連結された原子を任意選択により含む、フッ素化環構造を形成し、ただし、AがCF
3であるとき、ZはFであり、ZがCF
3であるとき、AはFである、
  非環状フルオロフルオロ化合物。
 
【0086】
  実施形態2.QがN(R
f1)
2である、実施形態1に記載の非環状フルオロ化合物。
 
【0087】
  実施形態3.N(R
f1)
2がペルフッ素化モルホリン基である、実施形態1又は2に記載の非環状フルオロ化合物。
 
【0088】
  実施形態4.Qが4個未満の炭素原子を含むペルフルオロアルキル基である、実施形態1に記載の非環状フルオロ化合物。
 
【0089】
  実施形態5.X及びYが両方ともFである、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の非環状フルオロ化合物。
 
【0090】
  実施形態6.A及びZが両方ともFである、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の非環状フルオロ化合物。
 
【0091】
  実施形態7.不飽和フルオロ化合物が、以下の、
【化22】
【化23】
  [式中、Meはメチル基を指す。]のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の非環状フルオロ化合物。
 
【0092】
  実施形態8.ASTM  D−327−96e−1に準拠した密閉式引火点試験に基づいて不燃性である、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の非環状フルオロ化合物。
 
【0093】
  実施形態9.100未満の地球温暖化係数を有する、実施形態1〜8のいずれか1つに記載の非環状フルオロ化合物。
 
【0094】
  実施形態10.ASTM  D−327−96e−1に準拠した密閉式引火点試験に基づいて不燃性である、実施形態1〜9のいずれか1つに記載の非環状フルオロ化合物。
 
【0095】
  実施形態11.100未満の地球温暖化係数を有する、実施形態1〜10のいずれか1つに記載の非環状フルオロ化合物。
 
【0096】
  実施形態12.実施形態1〜11のいずれか1つに記載の非環状フルオロ化合物を含む作動流体であって、当該非環状フルオロ化合物が、作動流体中に、作動流体の総重量に基づいて少なくとも25重量%の量で存在する、作動流体。
 
【0097】
  実施形態13.共溶媒を更に含む、実施形態12に記載の作動流体。
 
【0098】
  実施形態14.実施形態1〜11のいずれか1つに記載の非環状フルオロ化合物の使用であって、当該非環状フルオロ化合物が洗浄組成物中にある、使用。
 
【0099】
  実施形態15.実施形態1〜11のいずれか1つに記載の非環状フルオロ化合物の使用であって、当該非環状フルオロ化合物が電解質溶媒又は添加剤である、使用。
 
【0100】
  実施形態16.実施形態1〜11のいずれか1つに記載の非環状フルオロ化合物の使用であって、当該非環状フルオロ化合物が熱伝達流体である、使用。
 
【0101】
  実施形態17.実施形態1〜11のいずれか1つに記載の非環状フルオロ化合物の使用であって、当該非環状フルオロ化合物が気相はんだ付け流体である、使用。
 
【0102】
  実施形態18.熱を伝達するための装置であって、
  デバイスと、
  当該デバイスに又は当該デバイスから熱を伝達するための機構と、を備え、当該機構が、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の非環状フルオロ化合物を含む熱伝達流体を含む、装置。
 
【0103】
  実施形態19.デバイスが、マイクロプロセッサ、半導体デバイスの製造に用いられる半導体ウエハ、出力制御用半導体、電気化学セル、配電スイッチギヤ、電力変圧器、回路基板、マルチチップモジュール、パッケージ化された又はパッケージ化されていない半導体デバイス、燃料電池及びレーザーから選択される、実施形態18に記載の熱を伝達するための装置。
 
【0104】
  実施形態20.熱を伝達するための機構が、電子デバイスの温度又は温度範囲を維持するシステム中の構成要素である、実施形態18又は19に記載の装置。
 
【0105】
  実施形態21.デバイスが、はんだ付けされる電子部品を備える、実施形態18〜20のいずれか1つに記載の装置。
 
【0106】
  実施形態22.機構が、気相はんだ付けを含む、実施形態18〜21のいずれか1つに記載の装置。
 
【0107】
  実施形態23.熱を伝達する方法であって、
  デバイスを準備することと、
  実施形態1〜11のいずれか1つに記載の非環状フルオロ化合物を含む熱伝達流体を用いて、デバイスに、又はデバイスから熱を伝達することと、を含む、熱を伝達する方法。
 
【0108】
  実施形態24.実施形態1〜11のいずれか1つに記載の非環状フルオロ合物の精製形態を含む、組成物。
 
【実施例】
【0109】
  特に注記がない限り、実施例及び明細書の残りの箇所における全ての部、百分率、比等は重量による。実施例において用いられる全ての試薬は、例えば、Sigma−Aldrich  Corp.(Saint  Louis,MO)などの一般化学品供給業者から入手したものであるか、若しくは入手可能であり、又は従来の方法によって合成されてもよい。
【0110】
  本セクションにおいて、以下の略語を使用する。mL=ミリリットル、min=分、h=時間、g=グラム、mol=モル、mmol=ミリモル。
【0111】
  本セクションにおいて、以下の略語を使用する。mL=ミリリットル、min=分、h=時間、g=グラム、kPa=キロパスカル、psi=重量ポンド毎平方インチ、mol=モル、mmol=ミリモル、GC=ガスクロマトグラフィー、GC−MS=ガスクロマトグラフィー/質量分析。
【表1】
【0112】
  実施例1(EX−1)4−(3−エトキシ−1,2,2−トリフルオロブチル)−2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロモルホリン及び4,4’−(オキシビス(1,2,2−トリフルオロブタン−3,1−ジイル))ビス(2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロモルホリン)の調製
【0113】
  600mLのParr反応器に、ジエチルエーテル(51.1g、689mmol)、MVA(50.2g、161mmol)、及びTAPEH(3.2g、14mmol)を投入した。次いで、反応器を密閉し、得られた混合物を75℃までゆっくり加熱した。16時間の攪拌後、反応混合物を90℃まで加熱し、続いて、0.5時間攪拌して、残っている全ての開始剤を消費させた。室温まで冷却後、粗製反応物質をGC分析したところ、MVA出発物質の変換率は、99%を示した。一段式蒸留により、4−(3−エトキシ−1,2,2−トリフルオロブチル)−2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロモルホリン(大気圧で143℃、24.8g、40%)及び4,4’−(オキシビス(1,2,2−トリフルオロブタン−3,1−ジイル))ビス(2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロモルホリン)(143℃、1.0torr、27.8g、25%)を得た。GC−MSによる分析により、4−(3−エトキシ−1,2,2−トリフルオロブチル)−2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロモルホリン及び4,4’−(オキシビス(1,2,2−トリフルオロブタン−3,1−ジイル))ビス(2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロモルホリン)が生成していることを確認した。
【0114】
  実施例2(EX−2)2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロ−4−(1,2,2−トリフルオロ−3−メトキシプロピル)モルホリン及び4,4’−(オキシビス(1,2,2−トリフルオロプロパン−3,1−ジイル))ビス(2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロモルホリン)の調製
【0115】
  MVA(46.8g、150mmol)、TAPEH(2.0g、8.7mmol)、及びtert−ブタノール(44.3g、598mmol)を入れた、冷却した(ドライアイス/アセトン浴)600mLのParr反応器に、ジメチルエーテル(39.8g、864mmol)を投入した。次いで、反応器を密閉し、得られた混合物を75℃までゆっくり加熱した。16時間の攪拌後、反応混合物を90℃まで加熱し、続いて、0.5時間攪拌して、残っている全ての開始剤を消費させた。室温まで冷却後、粗反応混合物を水(50mL)で洗浄した。フッ素相を冷却し、GC分析したところ、MVA出発物質の変換率は、65%を示した。一段式蒸留により、2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロ−4−(1,2,2−トリフルオロ−3−メトキシプロピル)モルホリン(大気圧で142℃、9.3g、17%)及び4,4’−(オキシビス(1,2,2−トリフルオロプロパン−3,1−ジイル))ビス(2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロモルホリン)(91℃、0.3torr、20.1g、20%)を得た。GC−MSによる分析により、2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロ−4−(1,2,2−トリフルオロ−3−メトキシプロピル)モルホリン及び4,4’−(オキシビス(1,2,2−トリフルオロプロパン−3,1−ジイル))ビス(2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロモルホリン)の生成を確認した。
【0116】
  実施例3(EX−3)2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−(1,2,2−トリフルオロ−3−(2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブトキシ)プロピル)ピロリジンの調製
【0117】
  ジメチルエーテル(51.6g、1.12mol)及びTAPEH(5.5g、24mmol)を入れた、冷却した(ドライアイス/アセトン浴)600mLのParr反応器に、ヘキサフルオロプロペン(HFP、28.6g、191mmol)をゆっくり加えた。内部反応温度を室温までゆっくりと上げてから、50℃までゆっくり加熱した。内部圧力は、1.38×10
3kPa(200psi)に達した。同温度で16時間攪拌すると、圧力は、965kPa(140psi)に下がった。次いで、反応器を80℃まで加熱し、0.5時間攪拌して、残っている全ての開始剤を消費させた。室温まで冷却後、粗反応物質を一段式蒸留により精製して、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−4−メトキシブタン(大気圧で80.6℃、31.6g、85%)を得た。
【0118】
  300mLのParr反応器に、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−4−メトキシブタン(10.5g、53.5mmol)、Pfビニルピロリジン(16.4g、55.6mmol)、及びtBuOOtBu(0.6g、4.0mmol)を投入した。次いで、反応器を密閉し、得られた混合物を125℃までゆっくり加熱した。16時間の攪拌後、反応混合物を160℃まで加熱し、続いて、0.5時間攪拌して、残っている全ての開始剤を消費させた。室温まで冷却後、GC分析したところ、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−4−メトキシブタン出発物質の2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−(1,2,2−トリフルオロ−3−(2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブトキシ)プロピル)ピロリジンへの変換率は、3%を示した。GC−MSによる分析により、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−(1,2,2−トリフルオロ−3−(2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブトキシ)プロピル)ピロリジンの生成を確認した。
【0119】
  実施例4(EX−4)2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロ−4−(1,2,2−トリフルオロ−3−((3,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロペンタン−2−イル)オキシ)ブチル)モルホリンの調製
【0120】
  600mLのParr反応器に、ジエチルエーテル(110g、1.5mol)及びTAPEH(4.3g、18.8mmol)を投入した。反応器を密閉し、75℃まで加熱し、続いて、HFP(56.3g、375mmol)をゆっくり添加した。HFPを完全に添加した後、混合物を16時間攪拌し、その後、90℃まで加熱して、残っている全ての開始剤(TAPEH)を消費させた。0.5時間後、反応混合物を室温まで放冷した。得られた粗反応混合物を一段式蒸留(大気圧で115℃)に供して、4−エトキシ−1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロペンタン(22.5g、27%)を無色液体として得た。
【0121】
  300mLのParr反応器に、4−エトキシ−1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロペンタン(10.1g、45.1mmol)、MVA(14.4g、46.3mmol)、及びtBuOOtBu(0.6g、4.0mmol)を投入した。次いで、反応器を密閉し、得られた混合物を125℃までゆっくり加熱した。16時間の攪拌後、反応混合物を160℃まで加熱し、続いて、0.5時間攪拌して、残っている全ての開始剤を消費させた。室温まで冷却後、GC分析したところ、4−エトキシ−1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロペンタン出発物質の2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロ−4−(1,2,2−トリフルオロ−3−((3,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロペンタン−2−イル)オキシ)ブチル)モルホリンへの変換率は、4.5%を示した。GC−MSによる分析により、2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロ−4−(1,2,2−トリフルオロ−3−((3,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロペンタン−2−イル)オキシ)ブチル)モルホリンの生成を確認した。
【0122】
  実施例5(EX−5)4−(3−エトキシ−1,2−ジフルオロ−2−(トリフルオロメチル)ブチル)−2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロモルホリン及び4,4’−(オキシビス(1,2−ジフルオロ−2−(トリフルオロメチル)ブタン−3,1−ジイル))ビス(2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロモルホリン)の調製
【0123】
  600mLのParr反応器に、ジエチルエーテル(60.4g、815mmol)、M−1P(73.5g、204mmol)、及びTAPEH(4.1g、18mmol)を投入した。次いで、反応器を密閉し、得られた混合物を75℃までゆっくり加熱した。16時間の攪拌後、反応混合物を90℃まで加熱し、続いて、0.5時間攪拌して、残っている全ての開始剤を消費させた。室温まで冷却後、粗反応物質をGC分析したところ、M−1P出発物質の変換率は35%を示し、4−(3−エトキシ−1,2−ジフルオロ−2−(トリフルオロメチル)ブチル)−2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロモルホリン:4,4’−(オキシビス(1,2−ジフルオロ−2−(トリフルオロメチル)ブタン−3,1−ジイル))ビス(2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロモルホリン)の生成比は1:1であった。GC−MSによる分析により、4−(3−エトキシ−1,2−ジフルオロ−2−(トリフルオロメチル)ブチル)−2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロモルホリン及び4,4’−(オキシビス(1,2−ジフルオロ−2−(トリフルオロメチル)ブタン−3,1−ジイル))ビス(2,2,3,3,5,5,6,6−オクタフルオロモルホリン)の生成を確認した。
【0124】
  本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく、本発明の予見可能な改変及び変更が当業者には明らかであろう。本発明は、例示目的のために本出願に記載した実施形態に限定されるものではない。本明細書の記述と本明細書に述べられ参照により組み込まれる任意の文書中の開示との間に何らかの不一致及び矛盾が存在する場合、本明細書の記述が優先される。