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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971252
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】ポリマーフローインデックス調整剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/38 20060101AFI20211111BHJP
   C08F 10/02 20060101ALI20211111BHJP
   C08F 4/22 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   C08F2/38
   C08F10/02
   C08F4/22
【請求項の数】4
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-551231(P2018-551231)
(86)(22)【出願日】2017年4月17日
(65)【公表番号】特表2019-515058(P2019-515058A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】US2017027872
(87)【国際公開番号】WO2017184483
(87)【国際公開日】20171026
【審査請求日】2020年4月7日
(31)【優先権主張番号】62/325,175
(32)【優先日】2016年4月20日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599168648
【氏名又は名称】ユニベーション・テクノロジーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・ディー・レスター
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ジー・グード
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・アール・リン
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・ジェイ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エイチ・ムーアハウス
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・エイ・マシューズ
(72)【発明者】
【氏名】ケフ・サン
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・アレクサンドル
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0041147(US,A1)
【文献】 特開昭61−258807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/38
C08F 10/02
C08F 4/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーフローインデックスを調整するための方法であって、
エチレンを含むモノマーを重合反応器に提供することと、
酸化クロム触媒を前記重合反応器に提供することと、
活性量のフローインデックス調整剤を前記重合反応器に提供することと
を含み、
前記フローインデックス調整剤は、二酸化炭素であり、前記モノマーを基準として15.00パーツパーミリオン〜50.00パーツパーミリオンであり、
前記活性量の前記フローインデックス調整剤を前記重合反応器に提供することは、異なる密度を有する第2のポリマーと比較して低減された密度を有するポリマーを形成し、前記第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、前記活性量の前記フローインデックス調整剤を利用せずに形成されるものである、前記方法。
【請求項2】
前記活性量の前記フローインデックス調整剤を前記重合反応器に提供することが、異なるポリマーフローインデックスを有する第2のポリマーと比較して低減されたポリマーフローインデックスを有するポリマーを形成し、前記第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、前記活性量の前記フローインデックス調整剤を利用せずに形成されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーフローインデックスが、前記第2のポリマーと比較して5%〜50%低減される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フローインデックス調整剤は、前記モノマーを基準として25.00パーツパーミリオン〜50.00パーツパーミリオンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、ポリマーフローインデックスを調整することに関し、より詳細には、実施形態は、クロム触媒と共にフローインデックス調整剤を利用することによりポリマーフローインデックスを調整することに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーは、中でもフィルム及びパイプを含む多くの製品に利用され得る。ポリマーは、1種以上のモノマーを重合反応において反応させることにより形成され得る。業界では、1つ以上の望ましい特性を有するポリマーを形成するために利用され得る新たな改善された材料及び/または方法の開発に、引き続き焦点が置かれている。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、ポリマーフローインデックスを調整するための方法であって、エチレンモノマーを重合反応器に提供することと、クロム触媒を重合反応器に提供することと、活性量のフローインデックス調整剤を重合反応器に提供することとを含む方法を提供する。
【0004】
フローインデックス調整剤は、二酸化炭素、一酸化炭素、2,4−ヘキサジエン、及びそれらの組み合わせから選択され得る。
【0005】
本開示は、エチレンモノマーを基準として0.50パーツパーミリオン〜50.00パーツパーミリオンの二酸化炭素が利用され得ることを提供する。
【0006】
本開示は、エチレンモノマーを基準として0.010パーツパーミリオン〜2.00パーツパーミリオンの一酸化炭素が利用され得ることを提供する。
【0007】
本開示は、エチレンモノマーを基準として0.05パーツパーミリオン〜5.00パーツパーミリオンの2,4−ヘキサジエンが利用され得ることを提供する。
【0008】
本開示の上記概要は、本開示のそれぞれの開示された実施形態または全ての実践を説明することを意図しない。以下の説明は、例示的実施形態をより具体的に例示する。本出願を通して、いくつかの箇所において例のリストにより指針が提供されるが、これらの例は様々な組み合わせで使用され得る。それぞれの場合において、列挙されたリストは、単なる代表的な群として役立つものであり、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の1つ以上の実施形態による重合システムの一部の例を示す図である。
図2】クロム触媒と共に活性量のフローインデックス調整剤を利用した場合の、ポリマーフローインデックス及び触媒生産性を示す図である。
図3】クロム触媒と共に活性量のフローインデックス調整剤を利用した場合の、ポリマー密度及び流動化かさ密度を示す図である。
図4】クロム触媒と共に活性量のフローインデックス調整剤を利用した場合の、ポリマーフローインデックス及び触媒生産性を示す図である。
図5】クロム触媒と共に活性量のフローインデックス調整剤を利用した場合の、ポリマー密度及び流動化かさ密度を示す図である。
図6】クロム触媒と共に活性量のフローインデックス調整剤を利用した場合の、ポリマーフローインデックス及び触媒生産性を示す図である。
図7】クロム触媒と共に活性量のフローインデックス調整剤を利用した場合の、ポリマー密度及び流動化かさ密度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ポリマーフローインデックスを調整する方法、及びそれにより形成されたポリマーが本明細書において説明される。本明細書において説明されるように、ポリマーフローインデックスは、特定の用途に対するポリマーの好適性に影響し得る。メルトフローインデックスとも呼ばれ得るポリマーフローインデックスは、ポリマー、例えば熱可塑性ポリマーのメルトフローの目安である。ポリマーフローインデックスは、分子量の間接的な目安として利用され得る。例えば、特定のポリマーに関連するより高いポリマーフローインデックスは、その特定のポリマーが、比較的低いポリマーフローインデックスに関連した別のポリマーよりも低い平均分子量を有することを示し得る。特定のポリマーフローインデックスを有するいくつかのポリマーは、いくつかの特定の用途に好適ではない可能性があるため、例えばポリマーがいくつかの特定の用途に好適となるようにポリマーフローインデックスを調整することが望ましくなり得る。
【0011】
本開示の実施形態は、ポリマーフローインデックスを調整するための方法を提供する。ポリマーフローインデックスを調整するための方法は、エチレンモノマー、例えばエチレンモノマー供給物を重合反応器に提供することと、クロム触媒を重合反応器に提供することと、フローインデックス調整剤を重合反応器に提供することとを含んでもよく、フローインデックス調整剤は、例えば、二酸化炭素、一酸化炭素、2,4−ヘキサジエン、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0012】
驚くべきことに、ポリマーフローインデックスは、本明細書においてさらに議論されるように、クロム触媒と共にフローインデックス調整剤を利用することにより調整され得る、例えば減少または増加され得ることが判明した。本開示の実施形態は、フローインデックス調整剤が、二酸化炭素、一酸化炭素、2,4−ヘキサジエン、及びそれらの組み合わせから選択されることを提供する。
【0013】
言及されたように、ポリマーフローインデックスを調整するための方法、及びそれにより形成されたポリマーが本明細書において説明される。本明細書において使用される場合、「ポリマー」は、1つ以上の異なるモノマーから得られる同じまたは異なるポリマー単位の2つ以上を有し、例えば、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー等である。「ホモポリマー」は、同じポリマー単位を有するポリマーである。「コポリマー」は、互いに異なる2つ以上のポリマー単位を有するポリマーである。「ターポリマー」は、互いに異なる3つのポリマー単位を有するポリマーである。ポリマー単位に関して、「異なる」とは、ポリマー単位が少なくとも1つの原子の差で互いに異なる、または異性体的に異なることを示す。したがって、コポリマーの定義は、本明細書において使用される場合、ターポリマー等を含む。
【0014】
本開示の実施形態は、ポリマーがポリオレフィンであってもよいことを提供する。本明細書において使用される場合、「アルケン」と呼ばれ得る「オレフィン」は、炭素及び水素を含み、また少なくとも1つの二重結合を有する直鎖、分岐状、または環式化合物を指す。本明細書において使用される場合、ポリマーまたはコポリマーは、オレフィンを含む、例えばオレフィンから形成されると言及され、そのようなポリマーまたはコポリマー内に存在するオレフィンは、オレフィンの重合形態である。例えば、コポリマーが75重量%〜85重量%のエチレン含量を有すると言われる場合、コポリマー内のポリマー単位が重合反応においてエチレンから誘導され、誘導された単位がポリマーの総重量を基準として75重量%〜85重量%で存在することが理解される。より高次のα−オレフィンは、4個以上の炭素原子を有するα−オレフィンを指す。
【0015】
ポリオレフィンは、エチレン等のオレフィンモノマー(すなわちポリエチレン)、及び3個〜約20個の炭素原子を含有する、直鎖または分岐状のより高次のアルファ−オレフィンモノマーから作製されたポリマーを含む。より高次のアルファ−オレフィンモノマーの例は、これらに限定されないが、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、及び3,5,5−トリメチル−1−ヘキセンを含む。ポリオレフィンの例は、中でもエチレン−1−ブテン、エチレン−1−ヘキセン、及びエチレン−1−オクテンコポリマーを含む、少なくとも50重量%のエチレンを有するエチレン系ポリマーを含む。利用され得る他のオレフィンは、例えば、エチレン性不飽和モノマー、4〜18個の炭素原子を有するジオレフィン、共役または非共役ジエン、ポリエン、ビニルモノマー、及び環式オレフィンを含む。モノマーの例は、これらに限定されないが、ノルボルネン、ノルボルナジエン、イソブチレン、イソプレン、ビニルベンゾシクロブタン、スチレン、アルキル置換スチレン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン及びシクロペンテンを含み得る。いくつかの実施形態において、エチレンのコポリマーが生成され得、エチレンと共に、4〜15個の炭素原子、好ましくは4〜12個の炭素原子、最も好ましくは4〜8個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルファ−オレフィンを有するコモノマーが、例えば気相プロセスにおいて重合される。別の実施形態において、エチレン及び/またはプロピレンが、任意選択でその一方はジエンであってもよい少なくとも2種の異なるコモノマーと重合して、ターポリマーを形成し得る。
【0016】
本開示の実施形態は、ポリマーが0.920〜0.970g/cmの密度を有し得ることを提供する。例えば、ポリマーは、≧0.920g/cm、≧0.930g/cc、≧0.935g/cm、≧0.940g/cmもしくは≧0.945g/cm、及び≦0.970g/cm、≦0.960g/cm、≦0.950g/cm、≦0.935g/cm、≦0.930g/cm、もしくは≦0.925g/cmの密度、または本明細書において列挙される任意の高い値もしくは低い値の任意の組み合わせを有し得る。例えば、ポリマーは、中でも、0.925〜0.950g/cm、0.930〜0.940g/cm、0.935〜0.945g/cm、及び0.935〜0.950g/cmの密度を有し得る。
【0017】
一般に、比較的高いコモノマー含量は、比較的低い密度をもたらし得る。ポリエチレンコポリマーは、本明細書において、ポリエチレンコポリマーの総重量を基準として、≧0〜15重量%まで、例えば1.0〜12.0重量%、2.0〜10.0重量%、2.0〜8.0重量%、2.0〜7.0重量%、2.0〜6.0重量%のコモノマー含量を有し得、例えば、ポリエチレンコポリマーは、1−ブテン及び/または1−ヘキセンから誘導されたコモノマー単位を含む。
【0018】
本開示の実施形態は、ポリマーが、≧約100,000g/mol、≧約150,000g/mol、≧約200,000g/mol、≧約300,000g/mol、≧約400,000g/mol、≧約500,000g/mol、≧約750,000g/mol、または≧約1,000,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有し得ることを提供する。追加的に、または代替として、Mwは、≦約1,000,000g/mol、≦約750,000g/mol、≦約1,000,000g/mol、≦約500,000g/mol、≦約400,000g/mol、≦約300,000g/mol、≦約200,000g/mol、もしくは≦約150,000g/mol、または本明細書において列挙されるような範囲を提供する高い値もしくは低い値の組み合わせであってもよい。
【0019】
本開示の実施形態は、ポリマーが、≧約0.01g/10分、≧約0.02g/10分、≧約0.10g/10分、≧約0.50g/10分、≧約0.75g/10分、≧約1.0g/10分、≧約2.0g/10分、≧約5.0g/10分、≧約10.0g/10分、または≧約25.0g/10のポリマーフローインデックス、例えば調整されたポリマーフローインデックスを有し得ることを提供する。追加的に、または代替として、ポリマーフローインデックスは、≦約50.0g/10分、例えば≦約25.0g/10分、≦約10.0g/10分、≦約5.0g/10分、≦約2.0g/10分、≦約1.0g/10分、または≦約0.50g/10分であってもよい。ポリマーフローインデックスは、本明細書において開示される任意の高い値及び低い値の組み合わせを含む範囲内であってもよい。例えば、ポリマーは、中でも、約0.01〜約50.0g/10分、約0.01〜約25.0g/10分、約0.01〜約10.0g/10分、約0.01〜約5.0g/10分、約0.01〜約2.0g/10分の範囲内のポリマーフローインデックスを有し得る。
【0020】
言及されたように、本開示の実施形態は、フローインデックス調整剤を利用することによりポリマーフローインデックスを調整するための方法を提供する。フローインデックス調整剤は、ポリマーのポリマーフローインデックスを調整する、例えば変化させるために利用され得る。例えば、重合プロセスは、第1のポリマーフローインデックスを有するポリマーを形成するために利用され得るが、フローインデックス調整剤は、ポリマーフローインデックスを第1のポリマーフローインデックスとは異なる第2のポリマーフローインデックスに調整するために、その後重合プロセスに添加され得る。追加的に、または代替として、フローインデックス調整剤を含む重合プロセスは、第1のポリマーフローインデックスを有するポリマーを形成するために利用され得るが、第1のポリマーフローインデックスは、フローインデックス調整剤を利用せずに重合プロセスを介してポリマーを形成することにより達成される第2のポリマーフローインデックスとは異なる。
【0021】
本開示の実施形態は、フローインデックス調整剤が、二酸化炭素、一酸化炭素、2,4−ヘキサジエン、及びそれらの組み合わせから選択されることを提供する。
【0022】
本開示のいくつかの実施形態は、フローインデックス調整剤として二酸化炭素が活性量で利用され得ることを提供する。二酸化炭素、すなわち活性量は、ポリマーを形成するために利用されるエチレンモノマー、例えばエチレンモノマー供給物を基準として、0.50パーツパーミリオン〜50.00パーツパーミリオンであってもよい。0.50パーツパーミリオン〜50.00パーツパーミリオンの全ての個々の値及び部分範囲が含まれ、例えば、二酸化炭素は、エチレンモノマーを基準として0.50パーツパーミリオン、1.00パーツパーミリオン、2.50パーツパーミリオン、5.00パーツパーミリオン、10.00パーツパーミリオン、または15.00パーツパーミリオンの下限値から、エチレンモノマーを基準として50.00パーツパーミリオン、45.00パーツパーミリオン、40.00パーツパーミリオン、37.50パーツパーミリオン、35.00パーツパーミリオン、または30.00パーツパーミリオンの上限値までであってもよい。1つ以上の実施形態に対して、二酸化炭素は、エチレンモノマー供給物を基準として約25パーツパーミリオンであってもよい。本明細書において使用される場合、「パーツパーミリオン」は、別段に指定されない限り、体積パーツパーミリオン(ppmv)を示す。
【0023】
二酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、異なるポリマーフローインデックスを有する第2のポリマーと比較して低減されたポリマーフローインデックス、例えば調整されたポリマーフローインデックスを有するポリマーを提供する、例えば形成することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。例えば、二酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、異なるポリマーフローインデックスを有する第2のポリマーと比較して約5%〜約50%低減されたポリマーフローインデックス、例えば調整されたポリマーフローインデックスを有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。約5%〜約50%の全ての個々の値及び部分範囲が含まれ、例えば、二酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、異なるポリマーフローインデックスを有する第2のポリマーと比較して約5%、約7%、約10%、または約15%の下限値から約50%、約45%、約40%、または約35%の上限値まで低減されたポリマーフローインデックスを有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。1つ以上の実施形態に対して、二酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、異なるポリマーフローインデックスを有する第2のポリマーと比較して約30%低減されたポリマーフローインデックスを有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。
【0024】
二酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、異なる密度を有する第2のポリマーと比較して低減された密度を有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。例えば、二酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、異なる密度を有する第2のポリマーと比較して約0.0002g/cm〜約0.0040g/cmだけ低減された密度を有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。約0.0002g/cm〜約0.0040g/cmの全ての個々の値及び部分範囲が含まれ、例えば、二酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、約0.0002g/cm、0.00025g/cmまたは0.00028g/cmの下限値から約0.0040g/cm、0.0035g/cm、または0.0032g/cmの上限値だけ低減された密度を有するポリマーを提供し得る。
【0025】
二酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、異なる流動化かさ密度を有する第2のポリマーと比較して増加された流動化かさ密度を有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。例えば、二酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、異なる流動化かさ密度を有する第2のポリマーと比較して約0.5%〜約5.5%増加された流動化かさ密度を有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。約0.5%〜約5.5%の全ての個々の値及び部分範囲が含まれ、例えば、二酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、異なる流動化かさ密度を有する第2のポリマーと比較して約0.5%、約0.7%、約1.0%、または約1.5%の下限値から約5.5%、約5.0%、約4.7%、または約4.5%の上限値まで増加された流動化かさ密度を有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。
【0026】
本開示のいくつかの実施形態は、フローインデックス調整剤として一酸化炭素が活性量で利用され得ることを提供する。一酸化炭素、すなわち活性量は、ポリマーを形成するために利用されるエチレンモノマー、例えばエチレンモノマー供給物を基準として、0.010パーツパーミリオン〜2.000パーツパーミリオンであってもよい。0.010パーツパーミリオン〜2.000パーツパーミリオンの全ての個々の値及び部分範囲が含まれ、例えば、一酸化炭素は、エチレンモノマーを基準として0.010パーツパーミリオン、0.015パーツパーミリオン、0.020パーツパーミリオン、0.025パーツパーミリオン、0.030パーツパーミリオン、または0.050パーツパーミリオンの下限値から、エチレンモノマーを基準として2.00パーツパーミリオン、1.750パーツパーミリオン、1.500パーツパーミリオン、1.250パーツパーミリオン、1.150パーツパーミリオン、または1.000パーツパーミリオンの上限値までであってもよい。1つ以上の実施形態に対して、一酸化炭素は、エチレンモノマー供給物を基準として約0.20パーツパーミリオンであってもよい。1つ以上の実施形態に対して、一酸化炭素は、エチレンモノマー供給物を基準として約0.50パーツパーミリオンであってもよい。
【0027】
一酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、異なるポリマーフローインデックスを有する第2のポリマーと比較して低減されたポリマーフローインデックス、例えば調整されたポリマーフローインデックスを有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。例えば、一酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、異なるポリマーフローインデックスを有する第2のポリマーと比較して約5%〜約50%低減されたポリマーフローインデックス、例えば調整されたポリマーフローインデックスを有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。約5%〜約50%の全ての個々の値及び部分範囲が含まれ、例えば、一酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、異なるポリマーフローインデックスを有する第2のポリマーと比較して約5%、約7%、約10%、または約15%の下限値から、約50%、約45%、約40%、または約35%の上限値まで低減されたポリマーフローインデックスを有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。1つ以上の実施形態に対して、一酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、異なるポリマーフローインデックスを有する第2のポリマーと比較して約30%低減されたポリマーフローインデックスを有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。
【0028】
一酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、異なる密度を有する第2のポリマーと比較して低減された密度を有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。例えば、一酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、異なる密度を有する第2のポリマーと比較して約0.0002g/cm〜約0.0040g/cmだけ低減された密度を有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。約0.0002g/cm〜約0.0040g/cmの全ての個々の値及び部分範囲が含まれ、例えば、一酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、約0.0002g/cm、0.00022g/cmまたは0.00024g/cmの下限値から約0.0040g/cm、0.0035g/cm、または0.0032g/cmの上限値だけ低減された密度を有するポリマーを提供し得る。
【0029】
一酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、異なる流動化かさ密度を有する第2のポリマーと比較して増加された流動化かさ密度を有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。例えば、一酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、異なる流動化かさ密度を有する第2のポリマーと比較して約2.0%〜約12.5%増加された流動化かさ密度を有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。約2.0%〜約12.5%の全ての個々の値及び部分範囲が含まれ、例えば、一酸化炭素を含むフローインデックス調整剤の利用は、異なる流動化かさ密度を有する第2のポリマーと比較して約2.0%、約2.5%、約3.0%、または約3.5%の下限値から約12.5%、約12.0%、約11.5%、または約11.0%の上限値まで増加された流動化かさ密度を有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。
【0030】
本開示のいくつかの実施形態は、フローインデックス調整剤として2,4−ヘキサジエンが活性量で利用され得ることを提供する。2,4−ヘキサジエン、すなわち活性量は、ポリマーを形成するために利用されるエチレンモノマー、例えばエチレンモノマー供給物を基準として、0.05パーツパーミリオン〜5.00パーツパーミリオンであってもよい。0.05パーツパーミリオン〜5.00パーツパーミリオンの全ての個々の値及び部分範囲が含まれ、例えば、2,4−ヘキサジエンは、エチレンモノマーを基準として0.05パーツパーミリオン、0.10パーツパーミリオン、または0.50パーツパーミリオンの下限値から、エチレンモノマーを基準として5.00パーツパーミリオン、4.50パーツパーミリオン、または4.00パーツパーミリオンの上限値までであってもよい。1つ以上の実施形態に対して、2,4−ヘキサジエンは、エチレンモノマー供給物を基準として約0.70パーツパーミリオンであってもよい。1つ以上の実施形態に対して、2,4−ヘキサジエンは、エチレンモノマー供給物を基準として約2.78パーツパーミリオンであってもよい。
【0031】
2,4−ヘキサジエンを含むフローインデックス調整剤の利用は、異なるポリマーフローインデックスを有する第2のポリマーと比較して増加されたポリマーフローインデックス、例えば調整されたポリマーフローインデックスを有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。例えば、2,4−ヘキサジエンを含むフローインデックス調整剤の利用は、異なるポリマーフローインデックスを有する第2のポリマーと比較して約10%〜約75%増加されたポリマーフローインデックス、例えば調整されたポリマーフローインデックスを有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。約10%〜約75%の全ての個々の値及び部分範囲が含まれ、例えば、2,4−ヘキサジエンを含むフローインデックス調整剤の利用は、異なるポリマーフローインデックスを有する第2のポリマーと比較して約10%、約12%、または約15%の下限値から約75%、約73%、または約70%の上限値まで増加されたポリマーフローインデックスを有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。1つ以上の実施形態に対して、2,4−ヘキサジエンを含むフローインデックス調整剤の利用は、異なるポリマーフローインデックスを有する第2のポリマーと比較して約50%増加されたポリマーフローインデックスを有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。
【0032】
2,4−ヘキサジエンを含むフローインデックス調整剤の利用は、異なる密度を有する第2のポリマーと比較して増加された密度を有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。例えば、2,4−ヘキサジエンを含むフローインデックス調整剤の利用は、異なる密度を有する第2のポリマーと比較して約0.0005g/cm〜約0.0030g/cm増加された密度を有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。約0.0005g/cm〜約0.0030g/cmの全ての個々の値及び部分範囲が含まれ、例えば、2,4−ヘキサジエン含むフローインデックス調整剤の利用は、約0.0005g/cm、0.0007g/cmまたは0.0010g/cmの下限値から約0.0030g/cm、0.0027g/cm、または0.0025g/cmの上限値まで増加された密度を有するポリマーを提供し得る。
【0033】
2,4−ヘキサジエンを含むフローインデックス調整剤の利用は、異なる流動化かさ密度を有する第2のポリマーと比較して低減された流動化かさ密度を有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。例えば、2,4−ヘキサジエンを含むフローインデックス調整剤の利用は、異なる流動化かさ密度を有する第2のポリマーと比較して約5.0%〜約15.0%低減された流動化かさ密度を有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。約5.0%〜約15.0%の全ての個々の値及び部分範囲が含まれ、例えば、2,4−ヘキサジエンを含むフローインデックス調整剤の利用は、異なる流動化かさ密度を有する第2のポリマーと比較して約5.0%、約6.0%、または約7.0%の下限値から約15.0%、約14.0%、または約13.0%の上限値まで低減された流動化かさ密度を有するポリマーを提供することができ、第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量のフローインデックス調整剤を利用せずに形成される。
【0034】
図2は、クロム触媒と共に活性量のフローインデックス調整剤、すなわち二酸化炭素を利用した場合の、ポリマーフローインデックス及び触媒生産性を示す。図3は、クロム触媒と共に活性量のフローインデックス調整剤、すなわち二酸化炭素を利用した場合の、ポリマー密度及び流動化かさ密度を示す図である。図4は、クロム触媒と共に活性量のフローインデックス調整剤、すなわち一酸化炭素を利用した場合の、ポリマーフローインデックス及び触媒生産性を示す。図5は、クロム触媒と共に活性量のフローインデックス調整剤、すなわち一酸化炭素を利用した場合の、ポリマー密度及び流動化かさ密度を示す図である。図7は、クロム触媒と共に活性量のフローインデックス調整剤、すなわち2,4−ヘキサジエンを利用した場合の、ポリマーフローインデックス及び触媒生産性を示す。図7は、クロム触媒と共に活性量のフローインデックス調整剤、すなわち2,4−ヘキサジエンを利用した場合の、ポリマー密度及び流動化かさ密度を示す図である。図6及び図7は、ポリマーフローインデックス及びポリマー密度が、2,4−ヘキサジエンの増加レベルに伴って最大値を通過し得ること、流動化かさ密度が最小値を通過し得ること、及び触媒生産性が2,4−ヘキサジエンレベルの増加に伴って減少し得ることを示す。本明細書において使用される場合、「最大値」及び「最小値」は、それぞれ、各傾向線、例えば図6及び7に含まれる傾向線に関連した各極値を指し、各傾向線の傾きはゼロとなる。図6及び図7は、それぞれ、観察された最大値及び最小値の応答と比較した変化を示すために、y軸(すなわち、二酸化炭素、一酸化炭素、または2,4−ヘキサジエンが重合に利用されなかった点)から実施例において利用されたより高い2,4−ヘキサジエンの濃度までのそれぞれの点線の直線を含むが、線は最大値及び最小値を直接通過しない。
【0035】
本開示のいくつかの実施形態は、ポリマーの形成において1種以上の触媒が利用され得ることを提供する。触媒組成物を含み、触媒組成物と呼ばれ得る触媒は、クロム触媒であってもよい。本明細書において使用される場合、「クロム触媒」は、クロムを含む触媒を指す。触媒は、還元剤を含んでもよい。本開示のいくつかの実施形態に対して、クロム触媒は、金属アルキルで還元された酸化クロム触媒である。換言すれば、還元された酸化クロム触媒は、本明細書に記載のような調整されたポリマーフローインデックスを有するポリマーを形成するために利用され得る。重合の開始のために、例えばパイロットプラント重合のために、金属アルキルで還元されたシリルクロメート触媒が、還元された酸化クロム触媒への遷移前に使用されてもよい。シリルクロメート触媒は、開始触媒と呼ぶことができる。代替として、還元された酸化クロム触媒は、シリルクロメート触媒と同様の性能で重合を開始させるために使用されてもよい。
【0036】
クロム化合物は、酸化クロム触媒を調製するために使用され得る。クロム化合物は、CrO、及び例えば活性化条件下でCrOに変換可能な他の化合物を含む。CrOに変換可能な化合物の例は、クロムアセチルアセトネート、ハロゲン化クロム、硝酸クロム、酢酸クロム、硫酸クロム、クロム酸アンモニウム、二クロム酸アンモニウム、または他の可溶性クロム含有塩を含む。CrOに変換可能な化合物の他の例は、例えば、米国特許第2,825,721号、同第3,023,203号、同第3,622,251号、及び同第4,011,382号において議論されているものを含む。いくつかの実施形態において、酢酸クロムが利用され得る。
【0037】
シリルクロメート触媒を調製するために、シリルクロメート化合物が使用され得る。シリルクロメート化合物は、ビス−トリエチルシリルクロメート、ビス−トリブチルシリルクロメート、ビス−トリイソペンチルシリルクロメート、ビス−トリ−2−エチルヘキシルシリルクロメート、ビス−トリデシルシリルクロメート、ビス−トリ(テトラデシル)シリルクロメート、ビス−トリベンジルシリルクロメート、ビス−トリフェニルエチルシリルクロメート、ビス−トリフェニルシリルクロメート、ビス−トリトリルシリルクロメート、ビス−トリキシリルシリルクロメート、ビス−トリナフチルシリルクロメート、ビス−トリエチルフェニルシリルクロメート、ビス−トリメチルナフチルシリルクロメート、ポリジフェニルシリルクロメート、及びポリジエチルシリルクロメートを含む。そのような触媒の例は、中でも、例えば、米国特許第3,324,101号、同第3,704,287号、及び同第4,100,105号において議論されている。いくつかの実施形態において、ビス−トリフェニルシリルクロメート、ビス−トリトリルシリルクロメート、ビス−トリキシリルシリルクロメート、及びビス−トリナフチルシリルクロメートが利用され得る。他の実施形態において、ビス−トリフェニルシリルクロメートが利用され得る。
【0038】
シリルクロメート化合物は、従来の触媒担体または基材、例えば無機酸化物材料上に堆積され得る。酸化クロム触媒を生成するために使用されるクロム化合物は、従来の触媒担体上に堆積され得る。「担体」という用語は、本明細書において使用される場合、無機または有機担体材料を含む任意の担体材料、1つの例示的な実施形態においては多孔質担体材料を指す。担体は、第2、3、4、5、13及び14族酸化物、より具体的には第13及び14族原子の無機酸化物を含む無機酸化物であってもよい。本明細書における族元素表記法は、IUPAC 1988表記法(IUPAC Nomenclature of Inorganic Chemistry 1960,Blackwell Publ.,London)に従う元素周期表に定義される通りである。そこでは、第4、5、8、9及び15族は、それぞれ、デミング表記法(Chemical Rubber Company’s Handbook of Chemistry & Physics,48th edition)の第IVB、VB、IIIA、IVA及びVA族、ならびにIUPAC 1970表記法(Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,2nd edition,Vol.8,p.94)の第IVA、VA、IIIB、IVB及びVB族に対応する。担体の限定されない例は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、トリア等の無機酸化物、及び、例えば、シリカ−クロム、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア等のそのような酸化物の混合物を含む。
【0039】
本開示の触媒組成物における担体として使用され得る無機酸化物材料は、可変の表面積及び粒子サイズを有する多孔質材料である。担体は、1グラム当たり50〜1000平方メートルの範囲内の表面積、及び20〜300マイクロメートルの平均粒子サイズを有してもよい。1つ以上の実施形態において、担体は、約0.5〜約6.0cm/gの細孔容積、及び約200〜約600m/gの表面積を有してもよい。1つ以上の実施形態において、担体は、約1.1〜約1.8cm/gの細孔容積、及び約245〜約375m/gの表面積を有してもよい。1つ以上の実施形態において、担体は、約2.4〜約3.7cm/gの細孔容積、及び約410〜約620m/gの表面積を有してもよい。1つ以上の実施形態において、担体は、約0.9〜約1.4cm/gの細孔容積、及び約390〜約590m/gの表面積を有してもよい。上記特性はそれぞれ、当該技術分野において知られているような従来の技術を使用して測定され得る。
【0040】
担体は、非晶質シリカ及び高表面積非晶質シリカを含むシリカを含み得る。そのような担体材料は、いくつかの供給元から市販されている。そのような供給元は、Sylopol 952またはSylopol 955の商品名でシリカ担体材料を市販しているW.R. Grace and Company、及びES70を含む様々な商品表示でシリカ担体材料を市販しているPQ Corporationを含む。シリカは、例えば、噴霧乾燥プロセスにより得られる球状粒子の形態であってもよい。代替として、PQ Corporationは、噴霧乾燥されていないMS3050等の商品名でシリカ担体材料を市販している。調達された時点では、これらのシリカは焼成されていない、すなわち脱水されていない。しかしながら、購入前に焼成されているシリカが、本開示の触媒において使用されてもよい。
【0041】
市販されている酢酸クロム等の担持されたクロム化合物もまた、触媒として使用され得る。商業的供給源は、Sylopol 957、Sylopol 957HS、またはSylopol 957BG等の商品名でシリカ担体材料上のクロムを提供しているW.R. Grace and Company、及びES370等の様々な商品名でシリカ担体材料上のクロムを提供しているPQ Corporationを含む。シリカ担体上のクロムは、噴霧乾燥プロセスにより得られる球状粒子の形態であってもよい。代替として、PQ Corporationは、噴霧乾燥されていないC35100MS及びC35300MS等の商品名でシリカ担体材料上のクロムを提供している。調達された時点では、これらのシリカは活性化されていない。しかしながら、利用可能な場合は、購入前に活性化されたシリカ上に担持されたクロムが、本開示の触媒において使用され得る。
【0042】
担持酸化クロム触媒の活性化は、例えば約300℃から担体の実質的な焼結が生じる温度までの様々な温度で達成され得る。例えば、活性化触媒は、以下のように流動床において調製され得る。活性化中の担持クロム系触媒を通した乾燥空気または酸素のストリームの通過は、担体からの任意の水の排除に役立ち、少なくとも部分的にクロム種をCr+6に変換する。
【0043】
酸化クロム系触媒を活性化するために使用される温度は、担体材料上のクロム化合物の再配列のために十分高くてもよい。1時間超〜48時間の長さまでの期間の、約300℃〜約900℃のピーク活性化温度が利用され得る。担持酸化クロム触媒は、約400℃〜約850℃、約500℃〜約700℃、または約550℃〜約650℃の温度で活性化され得る。1つ以上の実施形態に対して、活性化温度は、約600℃、約700℃、または約800℃である。担持酸化クロム触媒は、約1時間〜約36時間、約3時間〜約24時間、または約4時間〜約6時間の期間、選択されたピーク活性化温度で活性化されてもよい。1つ以上の実施形態に対して、ピーク活性化時間は、約4時間、または約6時間である。活性化は、酸化環境中で行われてもよく、例えば、十分に乾燥した空気または酸素が使用されてもよく、温度は、担体の実質的な焼結が生じる温度未満に維持されてもよい。クロム化合物が活性化された後、粉末状の自由流動粒子酸化クロム触媒が生成される。
【0044】
選択された範囲内のポリマーフローインデックス応答を有する触媒組成物をもたらすために、冷却された活性化酸化クロム触媒は、次いでスラリー化され、選択された期間にわたり選択された供給速度で供給される還元剤と接触され得る。次いで、溶媒がスラリーから実質的に除去されて乾燥自由流動粉末を得ることができ、これがそのまま重合システムに供給され得るか、または供給前に好適な液体中にスラリー化され得る。
【0045】
1つ以上の実施形態において、本明細書に記載の触媒の調製において利用される有機金属成分は水と反応し得るため、担体材料は、好ましくは実質的に乾燥しているべきである。例えば、クロム系触媒がシリルクロメートである場合、未処理担体は、クロム系触媒との接触前に脱水または焼成されてもよい。
【0046】
担体は、水を除去するため、及び/または担体の表面上での化学変化をもたらすために高温で焼成されてもよい。担体の焼成は、当業者に知られている手順を使用して行うことができる。
【0047】
例えば、焼成シリカは、以下のように流動床において調製され得る。シリカ担体材料、例えばSylopol 955は、乾燥窒素または乾燥空気を担体材料を通して、またはその上を通過させながら、周囲温度から所望の焼成温度、例えば600℃まで、段階的または徐々に加熱され得る。シリカは、ほぼこの温度で約1時間〜約4時間維持されてもよく、その後周囲温度まで冷却される。焼成温度は、担体表面上のOH基の数に影響し得、すなわち、担体表面上のOH基(シリカの場合はシラノール基)の数は、乾燥または脱水の温度にほぼ反比例し、温度が高いほどヒドロキシル基含量は低い。
【0048】
担体は、約350℃〜約850℃、約400℃〜約700℃、または約500℃〜約650℃のピーク温度で焼成されてもよい。焼成時間は、約2時間〜約24時間、約4時間〜約16時間、約8時間〜約12時間であってもよい。
【0049】
シリルクロメート化合物は、焼成担体と接触して「結合触媒」を形成し得る。シリルクロメート化合物は、当業者に知られている手順において、焼成担体材料と接触され得る。シリルクロメート化合物は、溶液、スラリー、もしくは固体形態、またはそれらのいくつかの組み合わせで担体と接触されてもよく、また、所望の化学的/物理的変換をもたらすのに十分な所定期間、任意の所望の温度に加熱されてもよい。
【0050】
この接触及び変換は、非極性溶媒中で行われてもよい。好適な非極性溶媒は、接触及び変換温度において液体である材料であってもよく、触媒調製中に使用される成分のいくつか、すなわちシリルクロメート化合物及び還元剤は、その溶媒に少なくとも部分的に可溶である。非極性溶媒は、アルカン、特に約5個〜約10個の炭素原子を含有するもの、例えばペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、ノナン、及びデカンであってもよい。それらは、シクロアルカンであってもよく、特に約5個〜約10個の炭素原子を含有するもの、例えばシクロヘキサン及びメチルシクロヘキサンもまた使用され得る。非極性溶媒はまた、溶媒混合物であってもよい。非極性溶媒は、微量の水、分子酸素、極性化合物、及び触媒活性に悪影響を及ぼし得る他の材料を除去するために、例えば真空及び/もしくは加熱下での脱気により、またはシリカゲル及び/もしくは分子篩を通したパーコレーションにより、使用前に精製されてもよい。次いで、還元剤がスラリーと接触されるが、還元剤は、選択された範囲内のフローインデックス応答を有する触媒を得るために、選択された期間にわたり選択された速度で供給される。代替として、シリルクロメート化合物を担体上に担持させた後、及び還元剤を添加する前に、次いで溶媒が蒸発により実質的に除去され、担体上の自由流動担持シリルクロメートが得られてもよい。このようにして担持されたシリルクロメートは、選択されたフローインデックス応答を得るために、同じ、または異なる非極性溶媒中に再びスラリー化され、還元剤と接触されてもよい。
【0051】
触媒が担持され、また酸化クロム触媒の場合には活性化されたら、クロム系触媒組成物は、次いで、還元剤の添加前に非極性溶媒中にスラリー化されてもよい。担持触媒は、酸化クロム担持触媒、シリルクロメート触媒、またはその両方の混合物であってもよい。このスラリーは、担持触媒と非極性溶媒との混合により調製される。いくつかの実施形態において、担持シリルクロメート化合物は、還元剤の添加前に乾燥されない。
【0052】
本開示のクロム系触媒は、還元剤と接触され得る。還元剤は、例えばアルミニウムアルキル及びアルキルアルミニウムアルコキシド等の有機アルミニウム化合物を含む。一般式RAlORのアルキルアルミニウムアルコキシドは、本開示の実施形態における使用に好適となり得る。上記一般式のRまたはアルキル基は、同じまたは異なってもよく、いくつかの実施形態において約1個〜約12個の炭素原子、他の実施形態において約1個〜約10個の炭素原子、さらに他の実施形態において約2個〜約8個の炭素原子、さらなる実施形態において約2個〜約4個の炭素原子を有してもよい。アルキルアルミニウムアルコキシドの例は、これらに限定されないが、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド(DEAlE)、ジエチルアルミニウムプロポキシド、ジエチルアルミニウムイソ−プロポキシド、ジエチルアルミニウムtert−ブトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジ−イソプロピルアルミニウムエトキシド、ジ−イソブチルアルミニウムエトキシド、メチルエチルアルミニウムエトキシド及びそれらの混合物を含む。
【0053】
還元剤は、担持クロメート触媒と非極性溶媒との混合物に添加されてもよい。還元剤は、活性化酸化クロム触媒と非極性溶媒との混合物に添加されてもよい。還元剤は、非極性溶媒中のシリルクロメート触媒及び活性化酸化クロム系触媒の混合物に添加されてもよい。酸化クロム系触媒及びシリルクロメート系触媒の両方が利用される場合、各触媒は、互いに混合される前に、別個の担体上に堆積され、それぞれの焼成及び/または活性化処理を受けてもよい。触媒スラリーへの還元剤の添加は、高温及び不活性雰囲気下、例えば7バール(100psig)までの窒素上部圧力で行われてもよい。例えば、スラリーは、還元剤の混合中に約30℃〜80℃の間の温度で、約40℃〜約60℃の間の温度で、または約40℃〜約50℃の間の温度で維持されてもよい。
【0054】
説明されたプロセスにより形成されるクロム系触媒は、例えば担体上に、触媒の総重量を基準として約0.15〜約3重量パーセント、約0.2〜約0.3重量パーセント、約0.4〜約0.6重量パーセント;または0.7〜約1.2重量パーセントの範囲のクロム充填量を有し得る。説明されたプロセスにより形成されるクロム系触媒は、いくつかの実施形態において約0.5〜約8、他の実施形態において約2〜約7、さらに他の実施形態において約3.0〜約5.5の範囲の還元剤対クロムのモル比を有し得る。
【0055】
本開示のいくつかの実施形態は、説明されたプロセスにより形成されるクロム系触媒が、例えば担体上に、触媒の総重量を基準として約0.15〜約3重量パーセント、約0.2〜約0.3重量パーセント、約0.4〜約0.6重量パーセント;または0.7〜約2.0重量パーセントの範囲のアルミニウム充填量を有し得ることを提供する。説明されたプロセスにより形成されるクロム系触媒は、いくつかの実施形態において約0.5〜約8、他の実施形態において約1〜約7、さらに他の実施形態において約2.0〜約5.5の範囲の還元剤対アルミニウムのモル比を有し得る。
【0056】
本開示のいくつかの実施形態は、ポリマーの形成において1種以上の添加剤が利用され得ることを提供する。ポリマーは、例えば、得られるポリマーの総重量を基準として約0.1重量%〜約40重量%、または5重量%〜約25重量%の1種以上の添加剤を含み得る。そのような添加剤の例は、これらに限定されないが、中でも、粘着付与剤、ワックス、官能化ポリマー、例えば酸修飾ポリオレフィン及び/または無水物修飾ポリオレフィン、酸化防止剤(例えばヒンダードフェノール、例えばCiba−Geigyから入手可能であるIRGANOX(商標)1010またはIRGANOX(商標)1076)、(例えばCiba−Geigyから入手可能であるIRGAFOS(商標)168)、油、相溶化剤、充填剤、アジュバント、接着促進剤、可塑剤、低分子量ポリマー、遮断剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、離型剤、付着防止(anti−cling)添加剤、着色剤、染料、顔料、加工助剤、UV安定剤、熱安定剤、中和剤、潤滑剤、界面活性剤、核形成剤、軟化剤、ゴム、光学的光沢剤、着色剤、希釈剤、粘度調整剤、酸化ポリオレフィン、及びそれらの任意の組み合わせを含む。
【0057】
ポリマーは、既知の機器及び反応条件を使用して、懸濁液、溶液、スラリー、及び/または気相プロセスにより形成され得る。ポリマー形成は、いかなる特定の種類の重合システムにも限定されない。例として、オレフィン重合温度は、大気圧、大気圧より低い圧力、または大気圧より高い圧力で、約0℃〜約300℃の範囲であってもよい。特に、スラリーまたは溶液重合システムは、大気圧より低い圧力、または代替として大気圧より高い圧力、及び約40℃〜約300℃の範囲内の温度を使用し得る。
【0058】
本開示のいくつかの実施形態は、ポリマーが、0.07〜68.9バール(1〜1000psig)、3.45〜27.6バール(50〜400psig)、または6.89〜24.1バール(100〜350psig)の範囲内の大気圧より高い圧力、及び30℃〜130℃、65℃〜110℃、75℃〜120℃、または80℃〜120℃の範囲内の温度において、気相重合システムにより形成され得ることを提供する。いくつかの実施形態に対して、動作温度は、112℃未満であってもよい。撹拌及び/または流動床気相重合システムが利用されてもよい。
【0059】
一般に、従来の気相流動床プロセスは、反応条件下及び触媒組成物の存在下で、固体粒子の床を懸濁状態に維持するのに十分な速度で1種以上のオレフィンモノマーを含有するストリームを流動床反応器に連続的に通過させることにより行うことができる。未反応モノマーを含むストリームは、反応器から連続的に引き出され、圧縮され、冷却され、任意選択で部分的または完全に凝縮され、再び反応器にリサイクルされ得る。生成物、すなわちポリマーは反応器から引き出されてもよく、代替モノマーがリサイクルストリームに添加されてもよい。また、触媒組成物及び反応物質に対して不活性なガスがガスストリーム中に存在してもよい。重合システムは、例えば、単一の反応器または直列の2つ以上の反応器を含んでもよい。
【0060】
供給物ストリームは、オレフィンモノマー、非オレフィンガス、例えば窒素及び/または水素を含んでもよく、さらに、重合プロセスにおいて凝縮可能であってもよく、反応の熱を除去するために使用され得る1種以上の非反応性アルカンを含んでもよい。例示的な非反応性アルカンは、これらに限定されないが、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、それらの異性体及びそれらの誘導体を含む。供給物は、単一の、または複数の異なる位置で反応器に進入してもよい。
【0061】
本開示のいくつかの実施形態は、酸素が、反応器へのエチレン供給速度に対して約10〜600体積パーツパービリオン(ppbv)、より好ましくは約10〜500ppbvの濃度で重合に添加され得ることを提供する。例えば、酸素は、サイクルガス熱交換器、例えば冷却器の上流側にあるサイクルガス圧縮機の上流側の点で、反応器再循環ラインに20ppbvの濃度で継続的に添加され得る。この酸素は、サイクルライン、圧縮機及び/または熱交換器のポリマーによる汚損を低減するのに役立ち得る。
【0062】
触媒毒を除去し、それにより触媒活性を増加させるため、またはその他の目的のために、有機金属化合物が除去剤として使用されてもよい。添加され得る有機金属化合物の例は、アルミニウムアルキル等の金属アルキルを含む。従来の添加剤もまた、プロセスにおいて使用され得る。
【0063】
反応器に乾燥触媒粉末を継続的に供給するのに好適な例示的触媒貯蔵部は、例えば、米国特許第3,779,712号において示され説明されている。触媒に対して不活性であるガス、例えば窒素またはアルゴンが、触媒を反応床内に運搬するために使用され得る。別の実施形態において、触媒は、鉱物油または液体炭化水素もしくは混合物中、例えば、プロパン、ブタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタンまたはオクタン中等のスラリーとして提供され得る。例示的な触媒貯蔵部は、WO2004/094489において示され説明されている。触媒スラリーは、キャリア流体、例えば窒素もしくはアルゴン、または例えばイソペンタンもしくは他のC〜Cアルカン等の液体等と共に、反応器に送達され得る。
【0064】
図1は、本開示の1つ以上の実施形態による重合システム150の一部の例を示す。重合システム150は、1つ以上の排出タンク175(1つだけが示されている)、サージタンク180(1つだけが示されている)、及びリサイクル圧縮機190(1つだけが示されている)と流体連通した反応器160を含んでもよい。重合システム150はまた、例えば直列、並列に配置された、または他の反応器とは独立して構成された2つ以上の反応器160を含んでもよい。各反応器は、独自の関連したタンク175、180及び圧縮機190を有してもよく、または代替として、関連したタンク175、180及び圧縮機190の任意の1つ以上を共有してもよい。簡潔性及び説明の容易性のために、本開示の実施形態は、単一反応器列に関連してさらに説明される。
【0065】
1つ以上の実施形態において、反応器160は、速度低減ゾーン164と流体連通した反応ゾーン162を含んでもよい。反応ゾーン162は、反応ゾーン162を通る補充供給物及びリサイクル液の形態の重合性及び改質ガス成分の連続流により流動化された成長ポリマー粒子、形成ポリマー粒子、及び触媒粒子の床を含んでもよい。
【0066】
供給ストリーム105は、圧縮機190の前のサイクルラインに進入するように方向付けられてもよいが、例えば代替の供給ストリーム場所147で例示されるように、反応器流動床、拡張セクション、または冷却器の前もしくは後のサイクルラインを含む重合システム150内の任意の点に位置してもよい。「供給ストリーム」という用語は、本明細書において使用される場合、ポリマー生成物を生成するために重合プロセスにおいて使用される、気相または液相のいずれかの原材料を指す。例えば、供給ストリームは、本明細書において議論されるようなモノマーを含んでもよい。例えば、供給ストリームは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、スチレン、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせ等の、2個〜12個の炭素原子を有する置換及び非置換アルケンを含むオレフィンモノマーを含んでもよい。供給ストリームはまた、窒素及び水素等の非オレフィンガスを含んでもよい。供給ストリームは、複数及び異なる場所で反応器に進入してもよい。例えば、モノマーは、床内へのノズル(図示せず)を通した直接注入を含む様々な様式で、重合ゾーン内に導入され得る。供給ストリームは、反応の熱を除去するために、例えば重合プロセスにおいて凝縮可能であってもよい1種以上の非反応性アルカンをさらに含んでもよい。非反応性アルカンは、これらに限定されないが、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、それらの異性体、それらの誘導体及びそれらの組み合わせを含む。
【0067】
アルミニウムアルキルで改質されたものを含むクロム系触媒を利用した重合のために、約0.0〜0.5の範囲内、0.01〜0.4の範囲内、0.03〜0.3の範囲内、または0.005〜0.020の範囲内であってもよい反応器内の水素対エチレンのガスモル比で水素が添加されてもよい。本開示のいくつかの実施形態は、水素ガスを利用する。水素は、ポリマーの分子量及び/または分布に影響し得、またポリマー特性に影響し得る。
【0068】
重合中、流動床は、床を通るガスのパーコレーションにより形成されるような、個々に移動する粒子の高密度塊の一般的外観を有し得る。床を介した圧力降下は、断面積で除した床の重量に等しくてもよく、またはそれより若干大きくてもよい。換言すれば、圧力降下は、反応器160の幾何構造に依存し得る。反応ゾーン162における実行可能な流動床を維持するために、床を通る表面ガス速度は、流動化のための最小流速を超えてもよい。表面ガス速度は、最小流動流速の少なくとも2倍であってもよい。いくつかの実施形態に対して、表面ガス速度は、5.0ft/秒(1.52m/秒)を超えない。いくつかの実施形態に対して、表面ガス速度は、2.5ft/秒(0.76m/秒)以下である。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、反応ゾーン162の高さ対直径の比は、約2:1〜約5:1の範囲内であってもよい。範囲は、例えば所望の生産能力に依存して、より大きい、またはより小さい範囲に変動し得る。速度低減ゾーン164の断面積は、例えば、反応ゾーン162の断面積の約2〜約3倍の範囲内であってもよい。
【0070】
速度低減ゾーン164は、反応ゾーン162より大きい内径を有する。名前が示唆するように、速度低減ゾーン164は、増加した断面積によりガスの速度を遅速化する。このガス速度の低減は、同伴粒子を床内に落とし、主にガスのみを反応器160から流動させる。反応器160の塔頂から出るそのガスは、リサイクルガスストリーム149である。
【0071】
リサイクルストリーム149は、圧縮機190において圧縮され、次いで熱交換ゾーンを通過してもよく、そこで熱が除去されてから床に戻される。熱交換ゾーンは、熱交換器192であってもよく、これは例えば横型または縦型であってもよい。サイクルガスストリームの温度を段階的に低下させるために、いくつかの熱交換器が使用されてもよい。また、圧縮機を熱交換器の下流側に、またはいくつかの熱交換器の間の中間点に位置付けることが可能である。冷却後、リサイクルストリームは反応器160に戻され得る。冷却されたリサイクルストリームは、重合反応により生成された反応の熱を吸収することができる。
【0072】
リサイクルストリームは、ガス分配板195を通して反応器160に、及び流動床に戻され得る。例えば含有されるポリマー粒子が沈降及び固形塊として凝集するのを低減するために、ならびに/または反応器の底部における液体の蓄積を低減すると共に、サイクルガスストリーム中に液体を含有するプロセスと含有しないプロセスとの間、またはその逆の容易な遷移を促進するために、反応器160への入口にガス偏向板196が設置されてもよい。この目的に好適な例示的偏向板は、例えば、米国特許第4,933,149号及び同第6,627,713号において説明されている。
【0073】
集合的に触媒と呼ぶことができるアルミニウムアルキル調整剤を含む、または含まない活性化前駆体組成物は、使用のために、保存される材料に対して不活性であるガス、例えば窒素またはアルゴンのブランケット下で、触媒貯蔵部155内に保存され得る。触媒貯蔵部155は、触媒を反応器160内に継続的に供給するのに好適なフィーダを備えてもよい。例示的な触媒貯蔵部は、例えば、米国特許第3,779,712号において示され、説明されている。触媒に対して不活性であるガス、例えば窒素またはアルゴンが、触媒を床内に運搬するために使用され得る。キャリアガスは、触媒貯蔵部155内に触媒を保存するために使用されるブランケットガスと同じであってもよい。一実施形態において、触媒は、乾燥粉末であり、触媒フィーダは、回転定量ディスクを備える。別の実施形態において、触媒は、鉱物油または液体炭化水素もしくは混合物中、例えば、プロパン、ブタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタンまたはオクタン中等のスラリーとして提供される。例示的な触媒貯蔵部は、WO2004/094489において示され説明されている。触媒スラリーは、キャリア流体、例えば窒素もしくはアルゴン、または例えばイソペンタンもしくは他のC〜Cアルカン等の液体等と共に、反応器に送達され得る。
【0074】
触媒は、例えばポリマー粒子との良好な混合が生じる点で床内に注入され得る。例えば、触媒は、分配板195の上の点で床内に注入され得る。分配板195の上の点での触媒の注入は、流動床重合反応器、例えば反応器160の満足のいく動作を提供し得る。分配板195の下のエリアへの触媒の注入は、そこでの重合の開始をもたらし、最終的には分配板195の閉塞をもたらし得る。流動床への直接的な注入は、床にわたり均一な触媒の分布を補助することができ、「ホットスポット」の形成をもたらし得る高い触媒濃度の局所的スポットの形成を低減するのに役立ち得る。床の上の反応器160内への触媒の注入は、リサイクルライン149内への過剰な触媒のキャリーオーバーをもたらし、重合が生じてライン149及び/または熱交換器192の閉塞をもたらす可能性がある。
【0075】
密度調整剤化合物、例えばアルミニウムアルキル化合物(その限定されない例示的な例は、トリエチルアルミニウム及びジエチルアルミニウムエトキシドである)は、反応システム150の直接流動床内に、または熱交換器192の下流側のいずれかに添加されてもよく、後者の場合、密度調整剤化合物は分注器156からリサイクルシステム内に供給される。クロム系触媒を使用した場合の重合反応器に添加される密度調整剤化合物の量は、約0.005〜約10の範囲内、約0.01〜5の範囲内、約0.03〜3の範囲内、または0.05〜2の範囲内のモル基準のクロムに対する密度調整剤化合物であってもよい。密度調整剤化合物の利用は、流動化かさ密度、及び/または約2〜4lb/ftだけ沈下し得るポリマーの安定化かさ密度を提供し得る。
【0076】
重合反応は、水分、酸素、及びアセチレン等の触媒毒の実質的に非存在下で行うことができる。しかしながら、ポリマー構造及びその生成物性能特性を改変するために、酸素が非常に低濃度で反応器160に添加されてもよい。酸素は、反応器へのエチレン供給速度に対して、約10ppbv〜600ppbv、より好ましくは約10ppbv〜500ppbvの濃度で添加されてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態は、コモノマーが、所望の密度範囲のコポリマーを達成するために、コポリマー中のコモノマーの約0〜5、10または20重量パーセントのいずれかまでのエチレンと重合されることを提供する。コモノマーの量は、利用されている特定のコモノマー(複数種可)、触媒組成、クロムに対するアルミニウムのモル比、触媒調製条件、及び/または反応温度に依存し得る。コモノマー対エチレンの供給速度の比、及び/またはガスモル比は、コポリマー生成物の所望の樹脂密度を得るように制御され得る。
【0078】
リサイクルストリームの組成ならびにストリーム105及び147の組成を決定するために、ガス分析器151が使用され得、反応ゾーン162内の本質的に定常状態のガス組成を維持するために適宜調節され得る。ガス分析器151は、供給ストリーム成分の比を維持するためにリサイクルストリーム組成を決定する従来のガス分析器であってもよい。そのような機器は、広範な販売元から市販されている。ガス分析器151は、速度低減ゾーン164と熱交換器192との間に位置するサンプリング点からガスを受容するように位置付けられてもよい。
【0079】
床内のポリマー生成速度は、触媒注入の速度及び反応ゾーン内のモノマー(複数種可)の濃度に依存し得る。生成速度は、例えば触媒注入の速度を調節することにより制御され得る。触媒注入の速度の変化は、反応速度、ひいては床内で熱が生成される速度を変化させ得るため、反応器に進入するリサイクルストリームの温度は、発熱の速度のいかなる変化にも対応するように調節され得る。これは、床内の本質的に一定の温度を提供するのに役立つ。流動床及びリサイクルストリーム冷却システムの両方の完全装備は、当然ながら、操作者または従来の自動制御システムのいずれかがリサイクルストリームの温度を調節し得るようにするために、床内のいかなる温度変化も検出するのに有用である。
【0080】
所与の組の動作条件下で、流動床は、ポリマー生成物の形成速度で生成物として床の一部を引き出すことにより本質的に一定の高さに維持される。発熱の速度は生成物形成の速度に直接関連しているため、反応器にわたる流体の温度上昇、例えば入口流体温度と出口流体温度との間の差の測定は、例えば、入口流体中に揮発性液体が存在しない、または存在が無視できる場合、一定の流体速度でのポリマー形成の速度を示す。
【0081】
いくつかの実施形態によれば、反応器160からのポリマー生成物の排出後、流体を生成物から分離し、流体をリサイクルライン149に戻すことが好ましくなり得る。この分離を達成するためのいくつかの方法が、当技術分野において知られている。1つ以上の実施形態において、流体及び生成物は反応器160から出て、開いた際に流動の制限が最小となるように設計されたボール弁であってもよい弁177を介して、生成物排出タンク175(1つが図示されている)に進入する。生成物排出タンク175の上及び下には、従来の弁178、179が位置付けられる。弁179は、生成物サージタンク180(1つが図示されている)内への生成物の通過を可能にする。
【0082】
1つ以上の動作モードにおいて、弁177は開いており、弁178、179は閉鎖位置にある。生成物及び流体が、生成物排出タンク175に進入する。弁177が閉じ、生成物は生成物排出タンク175内に沈降され得る。次いで弁178が開き、流体を生成物排出タンク175から反応器162に流動させる。次いで弁178が閉じ、弁179が開いて、生成物排出タンク175内の任意の生成物が生成物サージタンク180内に流動する。次いで弁179が閉じる。次いで、生成物が弁184を介して生成物サージタンク180から排出される。生成物は、残留炭化水素を除去するためにさらにパージされ、保存または配合に運搬され得る。弁177、178、179、184の特定の時間的順序は、当技術分野にいて周知である従来のプログラマブルコントローラの使用により達成される。
【0083】
代替として使用され得る生成物排出システムの別の例は、米国特許第4,621,952号において開示されている。そのようなシステムは、直列に配置された沈降タンク及び移送タンクを備え、沈降タンクの頂部から反応器内の流動床の頂部近くの点に分離された気相が戻される、少なくとも1対(並列)のタンクを使用している。
【0084】
流動床反応器160は、始動及び停止の間床の換気を提供するために、換気システム(図示せず)を備えてもよい。反応器160は、撹拌及び/または壁のかき落としの使用を必要としない。リサイクルライン149及びその中の要素、例えば圧縮機190及び熱交換器192等は、リサイクル流体または同伴粒子の流動を阻害しないように、平滑表面を有し不要な妨害物が存在しなくてもよい。
【0085】
反応器の汚損及びポリマー凝集を防止するための様々な技術が使用され得る。これらの技術の例は、例えば、米国特許第4,994,534号及び米国特許第5,200,477号に記載のような、凝集を防止するための微粉化粒子状物質の導入;米国特許第4,803,251号に記載のような、正電圧を相殺するための負電荷生成化学物質の添加または負電位を中和するための正電荷生成化学物質の添加である。また、静電気発生を防止または中和するために、連続的または断続的に帯電防止物質が添加されてもよい。米国特許第4,543,399号及び同第4,588,790号において開示されるもの等の凝縮モード動作もまた、流動床重合反応器からの熱除去を補助するために使用され得る。
【0086】
重合のための条件は、モノマー、触媒及び機器の利用可能性に依存して変動する。特定の条件は、当業者により知られている、または容易に導出可能である。例えば、温度は、30℃〜130℃、65℃〜110℃、75℃〜120℃、または80℃〜120℃の範囲内であってもよい。1つ以上の実施形態に対して、動作温度は、112℃未満であってもよい。本開示のいくつかの実施形態は、0.07〜68.9バール(1〜1000psig)、3.45〜27.6バール(50〜400psig)、または6.89〜24.1バール(100〜350psig)の範囲内の大気圧より高い圧力での気相重合システムを提供する。重合の追加的な知られている詳細は、参照により組み込まれる米国特許第6,627,713号において説明されている。
【実施例】
【0087】
実施例において、例えば以下を含む材料の様々な用語及び記号表示が使用される。
【0088】
二酸化炭素(フローインデックス調整剤、窒素中10,000ppm、Airgas, Inc.から入手可能);一酸化炭素(フローインデックス調整剤、窒素中5,000ppm、Airgas, Inc.から入手可能);2,4−ヘキサジエン(フローインデックス調整剤、ヘキサン中に希釈、90%工業グレード、CAS592−46−1、Sigma−Aldrichから入手可能);アルキルアルミニウムアルコキシド(イソペンタン中のDEAlE、Akzo Nobelから入手可能)。
【0089】
シリルクロメート触媒(開始触媒)は、以下のように調製された。多孔質シリカ担体(W. R. Grace and Co.のDavison Catalyst division製のGrade Sylopol 955シリカ;約40ミクロンの粒子サイズ;1グラム当たり約300平方メートルの表面積)を、流動床加熱槽に投入し、乾燥窒素下で、1時間当たり約100℃の速度で約325℃まで加熱した。次いで窒素ストリームを乾燥空気のストリームで置換し、担体を1時間当たり約100℃の速度で約600℃まで加熱し、そこで約1.5〜4時間維持した。その後、担体を乾燥した周囲温度の空気で約300℃まで冷却し、次いで、乾燥した周囲温度の窒素で室温までさらに冷却して粉末を得、これを窒素雰囲気下でさらなる処理まで保存した。
【0090】
上述のような担体を、不活性雰囲気下で、二重螺旋リボン撹拌器を有する縦型触媒ブレンダ内に入れた。シリカ1キログラム当たり約5.8リットル(1ポンド当たり0.70ガロン)の脱気及び無水ヘキサン溶媒を投入した。得られた混合物を撹拌し、約45℃まで加熱した。その後、シリカ100キログラム当たり3.15キログラムのビス(トリフェニルシリル)クロメート粉末を投入し、次いで、約45℃に維持しながら10時間撹拌し、スラリーを得た。その後、DEAlEのイソペンタン中25重量%の溶液を、10分未満でスラリーの表面上に添加し、選択されたモル比のDEAlE/Crを得た。添加時間の間、及びその後約2時間の間、混合物を約45℃の温度で30rpmで撹拌した。その後、大気圧を若干超える圧力で、約60℃のジャケット温度で約18〜24時間乾燥させることにより、溶媒を実質的に除去し、シリルクロメート触媒を得た。次いで、シリルクロメート触媒(乾燥自由流動粉末)を、使用するまで窒素下で保存した。
【0091】
還元された酸化クロム触媒は、以下のように調製された。約1重量%のCrを提供するための約5重量%の酢酸クロムを含有する多孔質シリカ担体(Grade C35300MSFクロム担持シリカシリカ;約82ミクロンの粒子サイズ;1グラム当たり約500平方メートルの表面積;PQ Corporation製)を、流動床加熱槽に投入した。その中で、クロム担持シリカを、乾燥窒素下で、1時間当たり約50℃の速度で200℃まで加熱し、その温度で約4時間維持した。その後、クロム担持シリカを、乾燥窒素下で、1時間当たり約50℃の速度で450℃まで加熱し、その温度で約2時間維持した。次いで窒素ストリームを乾燥空気のストリームで置換し、クロム担持シリカを1時間当たり約50℃の速度で600℃まで加熱し、活性化のためのそこで約6時間維持した。次いで、活性化されたクロム担持シリカを、周囲温度の乾燥空気で約300℃まで冷却し、次いで、乾燥した周囲温度の窒素で室温までさらに冷却した。活性化されたクロム担持シリカを、不活性雰囲気下で、二重螺旋リボン撹拌器を有する縦型触媒ブレンダ内に入れた。無水イソペンタン溶媒を縦型触媒ブレンダに添加し、スラリーを得た。その後、DEAlEのイソペンタン中25重量%の溶液を、約40〜60分の期間にわたりスラリーの表面上に添加し、選択されたアルミニウム充填重量パーセントを得た。添加時間の間、及びその後約2時間の間、スラリーを約45℃の温度で30rpmで撹拌した。その後、大気圧を若干超える圧力で、約60℃〜70℃のジャケット温度で約18〜21時間乾燥させることにより、溶媒を実質的に除去し、還元された酸化クロム触媒を得た。次いで、還元された酸化クロム触媒(乾燥自由流動粉末)を、使用するまで窒素下で保存した。
【0092】
比較例Aを、以下のように行った。60kgのシリルクロメート触媒重合シード床を、UNIPOL(商標)パイロットプラント気相流動床反応器に充填した。反応器は、約14インチの公称パイプサイズを有する縦型シリンダ、続いてフリーボード直径遷移スプール部分及び拡張セクションを備えていた。動作中、下から分配板を通って流動床に進入して、床を通過し、反応器の頂部から出てサイクルガス圧縮機(ブロワー)に入り、次いでシェル及びチューブ冷却器を通る連続ループ内で流動化ガスを循環させ、床重合温度を制御した。表面ガス速度は、床を通して連続的に計算し、サイクルライン内のボール弁及びベンチュリアセンブリにより維持した。モノマー及び反応性/非反応性ガスの濃度は、1〜5分毎にガスをサンプリングするクロマトグラフにより監視した。エチレン分圧は、ポリマーフローインデックス及びポリマー密度を制御するためにエチレン分圧に対するガスモル比に変換された水素及び任意のコモノマーレベルと同様に、DCS(分散制御システム)により測定及び制御した。全反応器圧力は、本質的に一定であり、補充窒素または追加的な換気により制御された。ポリマーは、反応器から第1の弁を介して受容タンクに周期的に排出され、そこで窒素でパージされてモノマーの濃度が低減されてから、第2の弁を介して、雰囲気に曝露されたファイバーパックドラムに放出された。
【0093】
反応器及びシード床を2ppm未満の水分まで高温で乾燥させ、続いてトリメチルアルミニウム(TMA)の希釈溶液による高温での不動態化期間を設け、微量の水及び他の不純物を除去した。その後、一連の窒素パージサイクルを行い、続いて低レベルの二酸化炭素を高温で添加して、残留TMAと反応させた。次いで、反応器内で重合のためのガス組成及び温度を確立し、触媒供給を開始した。次いで、イソペンタン中の希釈トリエチルアルミニウムを約48時間反応器に供給し、不純物を除去しながらシリルクロメート触媒反応を保持した。その後、反応器を110℃の温度で6日間維持した。この反応器の始動は予想よりも長かったが、例えば、重合反応は、概して、反応器の内側が空気に曝露された後(反応器の停止中)に開始され得、これは、比較例Aに関して説明されたように、TEAl、及び/または不純物を除去するためのより高温での動作の長期的な期間を利用しない。次いで、反応器は、還元された酸化クロム触媒に移行し、以下の反応器条件が維持された:反応器温度108℃、H/Cガスモル比0.15、C/Cガスモル比0.036、及び反応器内の床の平均滞留時間2.3時間。床の重量は、8〜9フィートの間の反応器内の床レベルを維持するように調節され、窒素中の希釈酸素の汚損防止ストリーム(酸素加減)は、サイクルガス圧縮機の前のサイクルラインに対するエチレン供給を基準として0.020ppmに維持され、サイクルガス圧縮機は、床温度制御のために、サイクルガスシェル及びチューブ熱交換器の上流側にあった(シェル側に水)。いくつかの重合に対しては、酸素は、酸素濃度の増加と共にフローインデックスの増加を提供し得るが、酸素は、本明細書における各実施例及び比較例に対して利用された。図4〜7は、それぞれ、比較例A(0.020ppm酸素重合、すなわち0.0ppmの本明細書に記載のポリマーフローインデックス調整剤)に対するポリマーフローインデックス、触媒生産性、ポリマー密度、及び流動化かさ密度を示している。
【0094】
比較例Bは、比較例Aのように行ったが、エチレン供給物を基準として0.20ppmの二酸化炭素の反応器濃度で二酸化炭素を利用するように変更を加え、濃度は本明細書に記載の活性量未満であり、二酸化炭素は、低流速のBrooks Instrument 5850E Mass Flow Controllerを介して反応器に量り入れられる窒素中に希釈された二酸化炭素の圧縮シリンダから導入された。フローインデックス添加剤濃度は、モル基準で反応器エチレン供給速度に対して調節された。
【0095】
実施例1のポリマーフローインデックスを調整するためのプロセスは、比較例Bのように行ったが、エチレン供給物を基準として25.0ppmの二酸化炭素の反応器濃度で二酸化炭素を利用するように変更を加えた。
【0096】
実施例2のポリマーフローインデックスを調整するためのプロセスは、比較例Bのように行ったが、窒素中に希釈された二酸化炭素ではなく、エチレン供給物を基準として0.20ppmの一酸化炭素の反応器濃度で一酸化炭素を利用するように変更を加えた。
【0097】
実施例3のポリマーフローインデックスを調整するためのプロセスは、比較例Bのように行ったが、窒素中に希釈された二酸化炭素ではなく、エチレン供給物を基準として0.51ppmの一酸化炭素の反応器濃度で一酸化炭素を利用するように変更を加えた。
【0098】
実施例4のポリマーフローインデックスを調整するためのプロセスは、比較例Bのように行ったが、窒素中に希釈された二酸化炭素ではなく、ヘキサン中に希釈された2,4−ヘキサジエンを利用するように変更を加えた。ヘキサン中に希釈された2,4−ヘキサジエンを、エチレン供給物を基準として0.69ppmの2,4−ヘキサジエンの反応器濃度で利用し、1/8インチの注入チューブを介して反応器に直接添加し、Teledyne ISCO Series D Pump Controllerを用いて、2つのTeledyne ISCO Model 100DM Syringe Pump(シリンジポンプ、容量103ml、最大流量25ml/分、最小流量0.00001ml/分)から計量した。
【0099】
実施例5のポリマーフローインデックスを調整するためのプロセスは、実施例4のように行ったが、エチレン供給物を基準として2.78ppmの2,4−ヘキサジエンの反応器濃度でヘキサン中に希釈された2,4−ヘキサジエンを利用するように変更を加えた。
【0100】
比較例A〜Bに関して、二酸化炭素の濃度、反応器温度、H/Cモル比、C/Cモル比、及び滞留時間を表1に示す。実施例1〜5に関して、二酸化炭素、一酸化炭素、及び2,4−ヘキサジエンの濃度、反応器温度、H/Cモル比、C/Cモル比、ならびに滞留時間を表2に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
比較例A〜B及び実施例1〜5に関して、ポリマーフローインデックスを、190/21.60のその測定の標準表示を有する、190℃及び21.6kgの重量で行われるASTM D1238−Fに基づいて決定し、反応器内の流動化かさ密度を、流動床の既知の高さにわたる圧力の差を測定することにより決定し、密度をASTM D−792に従って決定し、触媒生産性を、触媒中のクロム及びポリマー粒子中のクロムに基づくICPES(誘導結合プラズマ発光分光法)により決定し、平均粒子サイズをGRADEX(商標)G203−SP1により決定した。結果をそれぞれ表3及び表4に示す。
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
表3及び4におけるデータは、活性量のフローインデックス調整剤をクロム触媒と共に利用することにより、形成されているポリマーのポリマーフローインデックスが調整されることを示す。例えば、実施例1の場合、活性量の二酸化炭素を利用すると、比較例A及び比較例Bと比較してポリマーフローインデックスが約30%減少し、実施例2及び実施例3の場合、活性量の二酸化炭素を利用すると、比較例Aと比較してポリマーフローインデックスが約8%及び13%減少し、実施例4及び実施例5の場合、活性量の2,4−ヘキサジエンを利用すると、それぞれ比較例Aと比較してポリマーフローインデックスが約47%及び17%増加した。さらに、二酸化炭素の場合の図2、一酸化炭素の場合の図4、及び2,4−ヘキサジエンの場合の図6は、それぞれ、活性量のフローインデックス調整剤をクロム触媒調整剤と共に利用すると、形成されているポリマーのポリマーフローインデックスが調整されることを示している。図2及び4は、それぞれ、活性量の二酸化炭素及び一酸化炭素を利用した場合、ポリマーフローインデックスが減少することを示している。さらに、図6は、活性量の2,4−ヘキサジエンを利用すると、ポリマーフローインデックス値が実施例4の2,4−ヘキサジエンの濃度近くに位置する最大値を通過し得ること、及び、そこから2,4−ヘキサジエン濃度を、例えば実施例5の活性量の2,4−ヘキサジエンまで増加させると、ポリマーフローインデックスが、観察される最大値でのその最高レベルに対して減少し得ることを示している。
【0107】
さらに、表3及び4におけるデータは、活性量のフローインデックス調整剤をクロム触媒と共に利用することにより、形成されているポリマーの密度が調整されることを示す。例えば、実施例1の場合、活性量の二酸化炭素を利用すると、比較例Aと比較して約0.003.1g/cm、及び比較例Bと比較して0.0027g/cm密度が減少し、実施例2及び実施例3の場合、活性量の一酸化炭素を利用すると、それぞれ比較例Aと比較して約0.0022g/cm及び0.0028g/cm密度が減少し、実施例4及び実施例5の場合、活性量の2,4−ヘキサジエンを利用すると、それぞれ比較例Aと比較して約0.0016g/cm及び0.0004g/cm密度が増加した。さらに、二酸化炭素の場合の図3、一酸化炭素の場合の図5、及び2,4−ヘキサジエンの場合の図7は、それぞれ、活性量のフローインデックス調整剤をクロム触媒調整剤と共に利用すると、形成されているポリマーの密度が調整されることを示している。図3及び5は、活性量の二酸化炭素及び一酸化炭素を利用した場合、ポリマー密度が減少することを示している。さらに、図7は、活性量の2,4−ヘキサジエン調整剤を利用すると、密度が実施例4の2,4−ヘキサジエンの濃度近くに位置する最大値を通過し得ること、及び、そこから2,4−ヘキサジエン濃度を、例えば実施例5の活性量の2,4−ヘキサジエンまで増加させると、ポリマー密度が、観察される最大値でのその最高レベルに対して減少し得ることを示している。
【0108】
さらに、表3及び4におけるデータは、活性量のフローインデックス調整剤をクロム触媒と共に利用することにより、形成されているポリマーの流動化かさ密度が調整されることを示す。例えば、実施例1の場合、活性量の二酸化炭素を利用すると、比較例Bと比較して流動化かさ密度が3%増加し、実施例2及び実施例3の場合、活性量の二酸化炭素を利用すると、それぞれ比較例Aと比較して流動化かさ密度が約5.5%及び6.7%増加し、実施例4及び実施例5の場合、活性量の2,4−ヘキサジエンを利用すると、それぞれ比較例Aと比較して流動化かさ密度が約10%及び4%減少した。さらに、二酸化炭素の場合の図3、一酸化炭素の場合の図5、及び2,4−ヘキサジエンの場合の図7は、それぞれ、活性量のフローインデックス調整剤をクロム触媒調整剤と共に利用すると、形成されているポリマーの流動化かさ密度が調整されることを示している。図3及び5は、二酸化炭素及び一酸化炭素の場合、流動化かさ密度が増加することを示している。さらに、図7は、2,4−ヘキサジエンの場合、流動化かさ密度が実施例4の2,4−ヘキサジエンの濃度近くに位置する最小値を通過し得ること、及び、そこから2,4−ヘキサジエン濃度を、例えば実施例5の活性量の2,4−ヘキサジエンまで増加させると、ポリマー流動化かさ密度が、観察される最小値でのその最低レベルに対して増加し得ることを示している。
【0109】
さらに、二酸化炭素の場合の図2、一酸化炭素の場合の図4、及び,4−ヘキサジエンの場合の図6は、それぞれ、活性量のフローインデックス調整剤をクロム触媒と共に利用すると、触媒生産性、すなわち生産性kg/kgが低減され得ることを示している。
なお、本発明には、以下の態様が含まれることを付記する。
〔態様1〕
ポリマーフローインデックスを調整するための方法であって、
モノマーを重合反応器に提供することと、
クロム触媒を前記重合反応器に提供することと、
活性量のフローインデックス調整剤を前記重合反応器に提供することとを含み、前記フローインデックス調整剤は、二酸化炭素、一酸化炭素、2,4−ヘキサジエン、及びそれらの組み合わせから選択される方法。
〔態様2〕
前記フローインデックス調整剤が、二酸化炭素であり、前記モノマーを基準として0.50パーツパーミリオン〜50.00パーツパーミリオンである、態様1に記載の方法。
〔態様3〕
活性量の前記フローインデックス調整剤を前記重合反応器に提供することが、異なるポリマーフローインデックスを有する第2のポリマーと比較して低減されたポリマーフローインデックスを有するポリマーを形成し、前記第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量の前記フローインデックス調整剤を利用せずに形成される、態様2に記載の方法。
〔態様4〕
前記ポリマーフローインデックスが、前記第2のポリマーと比較して約5%〜約50%低減される、態様3に記載の方法。
〔態様5〕
前記フローインデックス調整剤が、一酸化炭素であり、前記モノマーを基準として0.010パーツパーミリオン〜2.000パーツパーミリオンである、態様1に記載の方法。
〔態様6〕
活性量の前記フローインデックス調整剤を前記重合反応器に提供することが、異なるポリマーフローインデックスを有する第2のポリマーと比較して低減されたポリマーフローインデックスを有するポリマーを形成し、前記第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量の前記フローインデックス調整剤を利用せずに形成される、態様5に記載の方法。
〔態様7〕
前記ポリマーフローインデックスが、前記第2のポリマーと比較して約5%〜約50%低減される、態様6に記載の方法。
〔態様8〕
前記フローインデックス調整剤が、2,4−ヘキサジエンであり、前記モノマーを基準として0.05パーツパーミリオン〜5.00パーツパーミリオンである、態様1に記載の方法。
〔態様9〕
活性量の前記フローインデックス調整剤を前記重合反応器に提供することが、異なるポリマーフローインデックスを有する第2のポリマーと比較して増加されたポリマーフローインデックスを有するポリマーを形成し、前記第2のポリマーは、同じ重合プロセスにより形成されるが、活性量の前記フローインデックス調整剤を利用せずに形成される、態様8に記載の方法。
〔態様10〕
前記ポリマーフローインデックスが、前記第2のポリマーと比較して約50%〜約250%増加される、態様9に記載の方法。
〔態様11〕
前記ポリマーフローインデックスが、前記2,4−ヘキサジエンの第1の活性量及び第2の活性量に対する最大値を有する、態様8に記載の方法。
〔態様12〕
前記モノマーが、エチレンを含む、態様1に記載の方法。
〔態様13〕
ポリエチレンを形成することを含む、態様1に記載の方法。
〔態様14〕
前記クロム触媒が、還元された酸化クロム触媒である、態様1に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7