(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971256
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/30 20060101AFI20211111BHJP
H01Q 9/04 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
H01Q9/30
H01Q9/04
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-556259(P2018-556259)
(86)(22)【出願日】2017年11月8日
(86)【国際出願番号】JP2017040301
(87)【国際公開番号】WO2018110162
(87)【国際公開日】20180621
【審査請求日】2020年10月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-244805(P2016-244805)
(32)【優先日】2016年12月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】山保 威
【審査官】
赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−049249(JP,A)
【文献】
特開2006−222657(JP,A)
【文献】
国際公開第96/035241(WO,A1)
【文献】
特開2005−039594(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/137210(WO,A1)
【文献】
国際公開第2009/004811(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/30
H01Q 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地導体板と、アンテナ・エレメントと、を備え、
前記アンテナ・エレメントは、
それぞれ前記地導体板に対して略垂直に立ち上がる第1及び第2垂直部と、
前記地導体板と略平行に延びる部分を有し、前記第1及び第2垂直部の一端同士を渡す連結部と、を含み、
前記第1垂直部の他端は、給電点とされると共に、前記地導体板の外縁から中心側に離れた位置に存在し、
前記第2垂直部の他端は接地され、
前記連結部は、前記地導体板と垂直な方向から見て前記地導体板の外縁に沿って延びる沿縁部を有する、アンテナ装置。
【請求項2】
前記アンテナ・エレメントの電圧最大点が前記沿縁部に存在する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記沿縁部は、前記地導体板と垂直な方向から見て前記地導体板の角部に沿って折れ曲がる屈曲部を有する、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記沿縁部の長さが、前記アンテナ・エレメントの全長の半分以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記給電点は、前記地導体板の中心とその中心とが共通であり、その面積が前記地導体板の面積の1/2となるように前記地導体板を縦横等倍で縮小した仮想領域に存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第2垂直部の他端は、前記地導体板の外縁部近傍に接続される、請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記沿縁部は、少なくとも一部が、前記第1及び第2垂直部の一端よりも前記地導体板寄りとなる位置に存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地導体板の外縁から中心側に離れた位置を給電点とするアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無線通信では垂直偏波の送受信が主流であったが、近年、例えばLTE(Long Term Evolution)において、水平偏波の送受信も必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−140667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のアンテナ装置では、給電点が基板の縁部に位置するが、地導体板の外縁から中心側に離れた位置を給電点とするアンテナ装置では、主として地導体板と垂直な方向の偏波にしか対応できないという課題があった。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、地導体板の外縁から中心側に離れた位置を給電点とする構成において、地導体板と平行な方向の偏波に対応することの可能なアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、アンテナ装置である。このアンテナ装置は、
地導体板と、アンテナ・エレメントと、を備え、
前記アンテナ・エレメントは、
それぞれ前記地導体板に対して略垂直に立ち上がる第1及び第2垂直部と、
前記地導体板と略平行に延びる部分を有し、前記第1及び第2垂直部の一端同士を渡す連結部と、を含み、
前記第1垂直部の他端は、給電点とされると共に、前記地導体板の外縁から中心側に離れた位置に存在し、
前記第2垂直部の他端は接地され、
前記連結部は、前記地導体板と垂直な方向から見て前記地導体板の外縁に沿って延びる沿縁部を有する。
【0007】
前記アンテナ・エレメントの電圧最大点が前記沿縁部に存在してもよい。
【0008】
前記沿縁部は、前記地導体板と垂直な方向から見て前記地導体板の角部に沿って折れ曲がる屈曲部を有してもよい。
【0009】
前記沿縁部の長さが、前記アンテナ・エレメントの全長の半分以上であってもよい。
【0010】
前記給電点は、前記地導体板の中心とその中心とが共通であり、その面積が前記地導体板の面積の1/2となるように前記地導体板を縦横等倍で縮小した仮想領域に存在してもよい。
【0011】
前記第2垂直部の他端は、前記地導体板の外縁部近傍に接続されてもよい。
【0012】
前記沿縁部は、少なくとも一部が、前記第1及び第2垂直部の一端よりも前記地導体板寄りとなる位置に存在してもよい。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、地導体板の外縁から中心側に離れた位置を給電点とする構成において、地導体板と平行な方向の偏波に対応することの可能なアンテナ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置1の概略斜視図。
【
図3】比較例に係るアンテナ装置800の概略斜視図。
【
図5】実施の形態1のアンテナ装置1及び比較例のアンテナ装置800の各々の、800MHzにおける、XY平面と平行な方向の偏波のXY平面内の指向特性図。
【
図6】実施の形態1のアンテナ装置1及び比較例のアンテナ装置800の各々の、800MHzにおける、XY平面と平行な方向の偏波のXZ平面内の指向特性図。
【
図7】本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置2の概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態1に係るアンテナ装置1の概略斜視図である。
図1に示すように、直交三軸であるXYZ軸を定義する。
図2は、アンテナ装置1の概略平面図である。アンテナ装置1は、699〜960MHz、及び1710〜2690MHzを送受信対象とする。アンテナ装置1は、地導体板5と、アンテナ・エレメント10と、を備える。地導体板5は、アンテナ・エレメント10のアースとして機能するXY平面と平行な平板であり、金属板であってもよいし、少なくとも一方の面にグランドパターンを形成した基板であってもよい。地導体板5の各辺は、X方向又はY方向と平行である。
【0018】
アンテナ・エレメント10は、導体からなり、第1垂直部11、第2垂直部12、第1平行部13、第2平行部14、及び第3平行部15を含む。第1垂直部11及び第2垂直部12は、それぞれ地導体板5から略垂直に(+Z方向に)立ち上がる。第1垂直部11の−Z方向側端部は、給電点7とされると共に、地導体板5の外縁から中心側に離れた位置、例えば、地導体板5の中心とその中心が共通であり、その面積が地導体板5の面積の1/2となるように、地導体板5を縦横等倍で(縦横それぞれ1/√2倍に)縮小した仮想領域8(
図2)に存在する。第2垂直部12の−Z方向側端部は、地導体板5の外縁部近傍に接続される(接地される)。第1垂直部11及び第2垂直部12は、X方向位置が互いに同じである。
【0019】
第1平行部13、第2平行部14、及び第3平行部15は、地導体板5と略平行であって、第1垂直部11及び第2垂直部12の+Z方向側端部同士を渡す連結部を構成する。第1平行部13は、第1垂直部11の+Z方向側端部から+X方向に延び、地導体板5の外縁とXY方向位置が重なる位置に至る。第2平行部14及び第3平行部15は、+Z方向から見て地導体板5の外縁に沿って延びる沿縁部を構成する。第2平行部14は、第1平行部13の+X方向側端部から地導体板5の外縁と平行に−Y方向に延び、地導体板5の角部とXY方向位置が重なる位置に至る。第3平行部15は、第2平行部14の−Y方向側端部から地導体板5の外縁と平行に−X方向に延び、第2垂直部12の+Z方向側端部に至る。第2平行部14及び第3平行部15との境界の屈曲部は、+Z方向から見て地導体板5の角部に沿って折れ曲がる。第2平行部14の中央付近は、アンテナ・エレメント10の電圧最大点となる。第2平行部14及び第3平行部15の合計長(沿縁部の長さ)は、アンテナ・エレメント10の全長の半分以上である。
【0020】
図3は、比較例に係るアンテナ装置800の概略斜視図である。
図4は、アンテナ装置800の概略平面図である。アンテナ装置800は、実施の形態1と同様に、第1垂直部811の−Z方向側端部が地導体板5の中心に位置して給電点7とされる一方、実施の形態1と異なり、アンテナ・エレメントの地導体板5と平行な平行部813が、+Z方向から見て地導体板5の外縁より内側に存在し、地導体板5の外縁に沿う部分を有さない。また、第2垂直部812の−Z方向側端部(接地箇所)は、地導体板5の外縁から離れた位置にある。
【0021】
図5は、実施の形態1のアンテナ装置1及び比較例のアンテナ装置800の各々の、800MHzにおける、XY平面と平行な方向の偏波のXY平面内の指向特性図である。
図5から明らかなように、実施の形態1のアンテナ装置1は、比較例のアンテナ装置800よりも、XY平面と平行な偏波のXY平面内の指向特性(地導体板5と平行な方向の指向特性)が全方向において優れている。また、XY平面内の指向性利得を平均すると、実施の形態1のアンテナ装置1では−3.48dBiであり、比較例のアンテナ装置800では−7.33dBiであり、実施の形態1のアンテナ装置1のほうが約3.8dBi高い。
【0022】
図6は、実施の形態1のアンテナ装置1及び比較例のアンテナ装置800の各々の、800MHzにおける、XY平面と平行な方向の偏波のXZ平面内の指向特性図である。
図6から明らかなように、実施の形態1のアンテナ装置1は、比較例のアンテナ装置800よりも、XY平面と平行な偏波のXZ平面内の指向特性(地導体板5と垂直な方向の指向特性)が全方向において優れている。また、XZ平面内の指向性利得を平均すると、実施の形態1のアンテナ装置1では−1.15dBiであり、比較例のアンテナ装置800では−3.57dBiであり、実施の形態1のアンテナ装置1のほうが約2.4dBi高い。
【0023】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0024】
(1) アンテナ・エレメント10の第2平行部14及び第3平行部15が地導体板5と垂直な方向から見て地導体板5の外縁に沿うため、給電点7である第1垂直部11の−Z方向側端部が地導体板5の外縁から中心側に離れた位置(例えば地導体板5の中心付近)にある構成であっても、地導体板5と平行な方向の偏波に対応することが可能となる(地導体板5と平行な方向の偏波の指向性利得を高めることができる)。
【0025】
(2) アンテナ・エレメント10の電圧最大点が地導体板5と垂直な方向から見て地導体板5の外縁に沿う位置にあるため、地導体板5と平行な偏波の指向性利得を高める効果が大きい。
【0026】
(3) アンテナ・エレメント10の第2平行部14及び第3平行部15との境界の屈曲部が+Z方向から見て地導体板5の角部に沿って折れ曲がるため、地導体板5と平行な偏波の指向性利得を高める効果が大きい。
【0027】
(4) アンテナ・エレメント10の第2垂直部12の−Z方向側端部が地導体板5の外縁部近傍に接続される(接地される)ため、地導体板5と平行な偏波の指向性利得を高める効果が大きい。
【0028】
図7は、本発明の実施の形態2に係るアンテナ装置2の概略斜視図である。
図8は、アンテナ装置2の概略平面図である。本実施の形態のアンテナ装置2は、実施の形態1のアンテナ装置1と比較して、第2平行部14及び第3平行部15から、それぞれ舌片部14a,15aが延びる点で相違し、その他の点で一致する。舌片部14aは、第2平行部14の−Y方向側端部を含む所定長範囲の+X方向側外縁から−Z方向側(地導体板5側)に延びるが、地導体板5とは接触しない。舌片部15aは、第3平行部15の+X方向側端部を含む所定長範囲の−Y方向側外縁から−Z方向側(地導体板5側)に延びるが、地導体板5とは接触しない。舌片部14aの−Y方向側端辺と、舌片部15aの+X方向側端辺とは、互いに接してしてもよいし、離間していてもよい。本実施の形態によれば、舌片部14a,15aを設けたことにより、更に地導体板5と平行な方向の偏波の指向性利得を高めることができる。
【0029】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0030】
1,2 アンテナ装置、5 地導体板、7 給電点、8 仮想領域、10 アンテナ・エレメント、11 第1垂直部、12 第2垂直部、13 第1平行部、14 第2平行部、14a 舌片部、15 第3平行部、15a 舌片部、
800 アンテナ装置、811 第1垂直部、812 第2垂直部、813 平行部