【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、独立請求項の特徴を有する繊維強化中空構造部品の製造方法、金型コア、金型コアの使用方法、及び中空構造部品により解決される。
【0007】
本発明は、金型コアが製造された繊維強化中空構造部品の製造方法に関する。金型コア及び繊維をマトリックス材料と共に成形型に導入する。その結果、第1の繊維部をマトリックス材料と共に金型コアと成形型の間に配置する。繊維は、短繊維、短繊維糸(short-cut threads)、長繊維、ストリップ、布マット、敷設構造物(laid structures)及び/又はプリプレグの形式で利用可能にすることができる。「プリプレグ」という用語は、樹脂、好ましくは熱硬化性マトリックス材料で予め含浸され、或いは予め硬化されたストリップ、布マット又は布象嵌(cloth inlays)を指す。マトリックス材料は、好ましくは、エポキシ樹脂又はポリウレタン樹脂、特に、単一成分、二成分又は三成分樹脂である。中空構造部品の部品壁は、第1の繊維部及びマトリックス材料から少なくとも部分的に形成される。
【0008】
最初に粘性状態で存在する熱硬化性及び/又は熱可塑性マトリックス材料は、温度及び/又は圧力の変化により硬化されて、中空構造部品を形成する。このために、成形型は閉じられ、かつ圧力又は温度によって作用する。この場合、金型コアは可溶性コアである。さらに、金型コアは、好ましくは、周囲条件の変化により膨張するため、少なくとも第1の繊維部は、マトリックス材料と共に成形型に押し付けられる。マトリックス材料が硬化した後、金型コアを中空構造部品から流出させて、部品キャビティを形成する。
【0009】
本発明では、金型コアを貫通する少なくとも1つの流路は、金型コア内に形成される。流路は、金型コアの製造時に金型コアと共に一次成形される。この場合、流路は、金型コアの本体の製造時に金型コア内に形成される。この場合、一次成形時に、ワークピース、具体的にはその流路を含む金型コアは、定形のない物質から作られる。この場合、材料の凝集を生じさせることにより、幾何学的立体の初期形状を生成することを目的とする。金型コアは、好ましくは、一体成形として存在し、それにより、該方法は、できるだけ簡単で、かつ少ない作業ステップを含むように設計することができる。例えば、このタイプの織物、敷設構造物、及び/又はチューブとして設計できる少なくとも1つの第2の繊維部は、流路に導入される。追加的又は代替的に、この第2の繊維部は、短繊維、短繊維糸又は連続糸(continuous threads)として設計することもできる。第2の繊維部は、含浸された繊維又は含浸されていない繊維であってよい。第2の繊維部に加えて、マトリックス材料は、流路に導入される。代替的には、第2の繊維部を流路に予め導入せずに、単にマトリックス材料を流路に注入することも考えられる。この場合、補強要素、特に補強支柱は、マトリックス材料のみによって形成される。
【0010】
第2の繊維部及び/又はマトリックス材料は、マトリックス材料が硬化し、かつ金型コアが流出した後、補強要素、特に補強支柱を中空構造部品内に形成するように流路に導入される。補強要素、特に補強支柱は、部品キャビティを貫通する。さらに、補強要素は、その2つの端部の領域において、特にフォームロック及び/又は一体接合の方式で部品壁に接続される。したがって、中空構造部品の製造方法は、簡単かつ時間を節約する方式で実行することができる。製造方法は、特に1つのステップで金型コアをその少なくとも1つの流路と共に製造するという事実により、非常に時間を節約するように設計することができ、費用効果が高い。補強要素、特に補強支柱は、中空構造部品の部品壁への接続により、極限状態であっても安定性を保証するための手段であるため、品質を永久に保証することができる。さらに、本方法により、コアが中空構造部品のキャビティ内に残らず、むしろ取り除かれるので、非常に軽量の繊維強化中空構造部品を形成することができる。
【0011】
少なくとも1つの流路及び/又は溶媒を金型コアの内部に迅速に導入するために設けられた供給流路を、ラピッドプロトタイピング方法、特に3D印刷法で金型コアと共に一次成形するか、又は金型コアを、その少なくとも1つの流路及び/又は供給流路とラピッドプロトタイピング方法で一次成形すると、有利である。その結果、特に少なくとも1つのアンダーカットを含み、好ましくは、少なくとも2つのアンダーカットを含む非常に複雑な流路形状又は湾曲した自由形状(freeform geometry)を形成することもできる。さらに、金型コアは、その流路と共に非常に迅速かつ費用効果的に製造することができる。さらに、金型コアが製造される場所は固定されていない。例えば、金型コアの形状を顧客に実質的に送り、顧客が自分の3Dプリンタを用いて金型コアの形状を現場で印刷することができる。
【0012】
補強要素が少なくとも1つの補強壁(特に全閉され、好ましくは互いに離間している2つの室が形成される)、補強支柱、トラス及び/又は補強構造であると、有利である。さらに、補強要素が中空になるように設計されていると、有利である。補強要素は、少なくとも幾つかの領域において、直線状及び/又は湾曲状に設計することもできる。補強要素は、「X」形状及び/又は「Y」形状を有することができる。
【0013】
また、第1の繊維部を金型コアの周囲に巻き付ける場合に有利である。この場合、第1の繊維部は、好ましくは、予め含浸された長繊維から形成される。第1の繊維部は、プリプレグとして金型コアの周囲に敷設することもできる。この場合、繊維が既にマトリックス材料で含浸されているか否かは、最初は無関係である。巻き付けられた金型コアは、成形用の成形型に導入される。代替的には、まずプリプレグを成形型に入れて、第1の繊維部を形成し、その後に金型コアを導入することが考えられる。形成される中空構造部品内に繊維を固定するために、代替的又は追加的には、成形型が閉じられた後にマトリックス材料を成形型内に注入すると、有利である。その結果、第1及び第2の繊維部の繊維がマトリックス材料で含浸されるため、硬化後の繊維は、所定の位置に保持され、部品壁及び補強支柱に生じる張力を伝達し分配することができる。
【0014】
マトリックス材料は、有利には、成形型に面する金型コアの側面から流路に注入される。このために、金型コアは、少なくとも1つの流路開口を含み、それを介してマトリックス材料が第1の繊維部を通って流路に導入される。さらに、マトリックス材料を押して第1の繊維部を通るように、マトリックス材料に圧力を印加することにより、マトリックス材料は、その意図された流路に入ることが考えられる。第2の繊維部を、好ましくは流路に配置することにより、押し込まれたマトリックス材料で第2の繊維部を含浸する。しかしながら、補強支柱がマトリックス材料のみによって形成されることも考えられる。追加的又は代替的に、マトリックス材料は、好ましくは、2つの流路開口の間の領域において、流路に接続された供給流路を介して、流路に注入される。供給流路は、少なくともマトリックス材料が注入される成形型の領域から流路まで延びている。その結果、マトリックス材料は、標的化方式で流路に導入することができる。溶媒に直接接触可能な金型コアの表面が供給流路により大幅に拡大されるため、金型コアの流出は容易になる。
【0015】
流路は、有利には、第1の繊維部を金型コアに配置する前に形成される。
【0016】
さらに、流路が直線状であり、急カーブを有し、及び/又は、湾曲状であるように設計されると、有利である。追加的又は代替的に、流路は、流路の長手延在方向又は長手方向に互いに離間している少なくとも2つのアンダーカットを含むように設計されると、有利である。流路は、自由形状を有することもできる。流路は、同一及び/又は互いに異なる複数の突出部分で構成することもできる。その結果、補強支柱の後続の形状は、要求される剛性に個別に適合することができる。
【0017】
一次成形、特にラピッドプロトタイピングの間に、流路の第1の長手方向の半分が最初に第1の金型コア部に形成され、かつ他の長手方向の半分が第2の金型コア部に形成されると、有利である。その後に、これらの2つの金型コア部を互いに接続することにより、2つの端部のみで開いた仕上げ流路を形成する。したがって、流路又は補強支柱の形状は、非常に多様な条件に容易に適合することができる。
【0018】
特に機械的及び/又は空気圧導入装置を用いて、第2の繊維部の繊維を流路に導入する。この場合、機械的導入装置は、例えば、特に可撓性針である。例えば、針を用いて第2の繊維部の繊維を金型コアに導入することにより、繊維は、第1の流路開口から第2の流路開口まで延びている。この場合、第1の流路開口は、繊維入口開口であり、第2の流路開口は、繊維出口開口であり、この配置は逆にすることもできる。2つの流路開口が繊維入口開口と繊維出口開口となるように、2つの流路開口を介して繊維を流路に縫い込むことも可能である。
【0019】
代替的又は追加的には、空気流を用いて、第2の繊維部の繊維を流路に導入すると、有利である。したがって、繊維導入は、空気圧導入装置、特に針を用いて行うことができる。この場合、流路は、繊維が注入される前に、コアと共に、又はコアの製造時に一次成形され、任意の考えられる流路形状が原理的に可能である。繊維は2つの流路開口のうちの1つを介して注入可能であり、その結果、繊維は他の流路開口から出るため、流路を完全に通って延びる。この場合、流路は、その2つの端部開口の間に更なる開口を含まない。繊維の導入は、流路の形状に依存せずに行うことができるので、繊維の注入は、様々な方法による流路の設計を可能にする。また、急激に曲げられた流路を通って繊維を案内するために、例えば、空気流の流速を増加させることで十分である。
【0020】
この場合、2つの流路開口は、金型コア自体にのみ形成することができる。第1の繊維部が2つの流路開口を含むことも考えられる。流路開口の配置は、製造方法と、第1の繊維部を金型コアに巻き付ける時点に応じて変化し得る。例えば、繊維マットを成形型に配置する場合、成形型に配置する前に、流路及び第2の繊維部を形成することは合理的である。したがって、金型コアのみが流路開口を含むが、第1の繊維部は流路開口を含まない。しかしながら、まず第1の繊維部を金型コアの周囲に配置し、次に第2の繊維部を流路に導入すると、第1の繊維部が第2の繊維部によって貫入されなければならないので、第1の繊維部も、2つの流路開口の少なくとも1つを含む。
【0021】
さらに、第2の繊維部が第1の繊維部の特定の割り当て領域に特に一体接合及び/又はフォームロック方式で接続されると、有利である。この場合、第2の繊維部は、好ましくは、その2つの端部で第1の繊維部に接続されると共に、2つの接続領域を形成する。この場合、第2の繊維部の繊維は、第1の繊維部に接合され、特に縫い込まれる。このように、2つの繊維部は、互いに固定的に接続することができるため、特に高いレベルの安定性を保証する。さらに、接続点で発生する力は、損失なく効果的に伝達することができる。
【0022】
有利には、2つの接続領域の少なくとも1つは、第1の繊維部の外側に形成される。この場合、スロット又は開口は、好ましくは、第1の繊維部に切り込まれる。その後に、この開口を通って第2の繊維部を案内する。第2の繊維部は、空気圧及び機械的導入装置を用いて導入することができる。一実施形態において、第2の繊維部は、特にスロットも開口も第1の繊維部に切り込まれていない場合、機械的導入装置、特に針を用いて、金型コアの周囲に位置する第1の繊維部を貫通する。代替的には、第2の繊維部の繊維は、特に流路が第1の繊維部の外側から金型コアを通って第1の繊維部の反対の他の外側に延びている場合、空気流又は針を用いて導入することができる。
【0023】
第2の繊維部の特定の突出端部が2つの流路開口の領域において第1の繊維部の外側に折り畳まれると、有利である。注入され硬化されたマトリックス材料は、第2の繊維部を第1の繊維部の外側に永久に接続するために既に十分である可能性がある。さらに、突出端部を第1の繊維部の外側と共に縫い込むか又は織り込むことも考えられる。その結果、部品へ負荷を効果的に導入することができるため、部品の安定性は確実に影響を受ける。
【0024】
2つの接続領域の少なくとも1つは、有利には、第1の繊維部の内側に形成される。このために、まず第2の繊維部を流路に導入し、次にその突出端部を金型コアの円周に折り畳む。その後に金型コアを第1の繊維部で包む。安全な接続点を形成するために、これらの2つの繊維部は、さらに互いに縫い込むことができる。
【0025】
2つの接続領域の少なくとも1つが第1の繊維部の内部に形成される場合も、有利である。この場合、第1の繊維部の1つの繊維層は、好ましくは、金型コアの周囲に、特に数回、次々に配置される。繊維層を形成するために、第1の繊維部は、金型コアの周囲に数回巻き付けることができ、また繊維マットの形式で金型コアの周囲に配置することもできる。その間又はその後に、繊維層は、第2の繊維部の繊維の一部によって貫入され、特に貫通され、或いは、ストット又は開口が形成されると、第2の繊維部の繊維の一部は、繊維層を通過する。この部分の突出端部は、第1の繊維部の外側に折り畳まれ、及び/又は、そこに縫い込まれる。その後に、更なる第2の繊維層を、第1の繊維層を含む既存の金型コアの周囲に敷設するか又は巻き付けることにより、第2の繊維部の端部を覆う。このように、製造方法は、繊維部間の接続領域の安定性に悪影響を与えず、簡単に設計することができる。
【0026】
マトリックス材料の注入の前に、充填材料、特にワックスのような膨張材料で金型コアの供給流路を充填することも、有利である。成形型にマトリックス材料を注入する時に、マトリックス材料は、第1の繊維部を通って金型コアの流路に押し込まれるため、第2の繊維部もマトリックス材料で含浸される。供給流路を充填材料で充填することにより、流路のみをマトリックス材料で充填することを保証する。したがって、最後に改善された方法で金型コアの流出に用いられる供給流路は、自由に保持される。マトリックス材料が硬化した後、充填材料が金型コアと共に流出するため、金型コアは、溶媒を用いて中空構造部品から理想的に取り除くことができる。
【0027】
温度が上昇すると、金型コアは有利に膨張する。その結果、金型コアの断面が増加するため、マトリックス材料に埋め込まれた第1の繊維部は、成形型のネガ型に押し付けられる。このように、繊維部及びマトリックス材料にある全ての気泡は、部品から効率的に取り除くことができるため、部品の品質を保証する。
【0028】
さらに、マトリックス材料が硬化した後、溶媒を金型コアの供給流路に流し込むことにより、金型コアを中空構造部品から分離すると、有利である。代替的は追加的には、溶媒を金型コアの断面に流し込むと、有利である。例えば、砂中子又は塩中子である金型コアは、特に供給流路を介して、ほとんど残留物がなく、中空構造部品から確実に流出することができる。
【0029】
本発明は、さらに、前記特徴が個別にまたは任意の組み合わせで存在することができる金型コアであって、前述の説明による繊維強化中空構造部品の製造のための、及び/又はその製造方法において使用される金型コアに関する。中空構造部品が硬化した後、部品キャビティを形成するために、金型コアは、中空構造部品から流出することができる。金型コアを貫通する少なくとも1つの流路は、金型コア内に形成され、流路は、金型コアの製造時にラピッドプロトタイピング方法で金型コアと一体成形される。
【0030】
金型コアが前述の説明に従って設計され、前記装置特徴が個別にまたは任意の組み合わせで存在することができる場合に、有利である。
【0031】
本発明は、さらに、前記特徴が個別にまたは任意の組み合わせで存在することができる金型コアであって、前述の説明に係る繊維強化中空構造部品(2)の製造方法における前述の説明に係る金型コアの使用に関する。
【0032】
本発明は、さらに、部品壁を含む、繊維複合材料からなる中空構造部品に関する。部品キャビティは、部品壁の内部に形成される。少なくとも1つの補強要素、特に補強支柱は、この部品キャビティを貫通する。本発明によれば、中空構造部品は、前記特徴が個別にまたは任意の組み合わせで存在することができる前述の説明に従って、設計される。中空構造部品は、補強要素、特に補強支柱が部品キャビティ全体を横切って延びるため、支持効果を有するので、非常に安定するように設計される。さらに、部品に発生する負荷を効率的に導くことができるため、部品は、高負荷に確実に耐えることもできる。
【0033】
さらに、補強要素、特に補強支柱が、その端部で、一体接合及び/又はフォームロック方式で特定の接続領域における部品壁に接続され、特に縫い込まれると、有利である。その結果、構造的に簡単な方法で、高負荷による補強支柱の引き裂きを防止することができる。
【0034】
本発明のさらなる利点は、以下の例示的な実施形態において説明される。