【文献】
Sridhar Mahadevan,"Imagination Machines: A New Challenge for Artificial Intelligence",Proceedings of the AAAI Conference on Artificial Intelligence [online],2018年04月29日,Vol. 32, No. 1,pp.7988-7993,[2021年10月18日検索], インターネット:<URL:https://ojs.aaai.org/index.php/AAAI/article/view/12214>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取得部は、前記主情報として全体像を司る情報部分を取得し、前記従情報として前記全体像に対する細部を司る情報部分を取得することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
前記取得部は、前記主情報として原因を司る情報部分を取得し、前記従情報として前記原因に基づく結果を司る情報部分を取得することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
前記学習部は、前記曲面空間の学習を通して概念的で柔軟性のある内容を学習し、リーマン面で構成される前記ベクトル空間の学習を通して代数演算が可能な距離が定まった内容を学習する、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0010】
〔1.情報処理装置10の一例〕
図1は、実施形態に係る情報処理装置10の一例を説明する説明図である。実施形態に係る情報処理装置の一例である情報処理装置10は、
図1に示すように、入力装置21によって入力された入力情報25に対して、情報の段階処理を実行して、得られた出力情報26を出力装置22に出力する。
【0011】
情報処理装置10は、
図1に示すように、入力情報25に基づいて、主情報31と、主情報31の下位に属する従情報32とを取得し(後述する取得ステップS11)、モデル19が、主情報31と対応する曲面空間35を生成するとともに、曲面空間35の曲面を構成する各点に対応付けられ、従情報32と対応するベクトルを含むベクトル空間37a,37bを曲面空間35における主情報31と対応するベクトル38a,38bがそれぞれ示す位置と紐付けることで、主情報31と従情報32とが有する概念を示す概念空間を学習する(後述する学習ステップS12)。
【0012】
以下において、ベクトル空間37a,37bを互いに区別する必要がない場合には、単にベクトル空間37と記す。また、ベクトル空間37a,37bを紐付ける位置をそれぞれ示す曲面空間35における主情報31と対応するベクトル38a,38bを互いに区別する必要がない場合には、単にベクトル38と記す。
【0013】
また、入力情報25、出力情報26、主情報31、従情報32、曲面空間35、ベクトル空間37及びベクトル38の具体的な事例については、後述する。
【0014】
〔2.情報処理システム1の一例〕
情報処理システム1は、
図1に示すように、情報処理装置10と、入力装置21と、出力装置22と、を含んで構成される。情報処理システム1では、情報処理装置10と入力装置21及び出力装置22とは、有線または無線により情報通信可能に接続される。なお、情報処理システム1は、
図1に示す装置等を含む構成に限定されず、その他の装置や端末を含んでもよく、通信ネットワーク等を介して互いに情報通信可能に接続されていてもよい。
【0015】
入力装置21は、高機能携帯電話(いわゆる、スマートフォン)を含む携帯電話機、タブレット端末、ノート型またはデスクトップ型のPC(Personal Computer)、携帯情報端末であるPDA(Personal Digital Assistant)、及び、眼鏡型や時計型のウェアラブルデバイス(Wearable Device)等に例示される情報処理端末である。
【0016】
入力装置21は、情報処理装置10が実行する情報の段階処理に対する入力情報25を入力するための機能、例えば、情報処理装置10からの入力情報25の入力を受け付けるための入力画面等を入力装置21の表示部に表示する機能、及び、入力を受け付けた入力情報25を情報処理装置10に送信する機能を有する。入力装置21は、これらの様々な機能を、情報処理装置10を利用するためのソフトウェアまたはアプリケーションを実行したり、情報処理装置10を利用するためのインターネットブラウザ機能を実行したりすることで、実現する。
【0017】
出力装置22は、受信した情報に基づいて、文字、画像、動画等により表示する。出力装置22は、情報処理装置10が実行する情報の段階処理の結果として得られる出力情報26を出力するための機能、例えば、情報処理装置10から出力された出力情報26を受信する機能、及び、出力情報26に基づく出力画面等を出力装置22の表示部に表示する機能を有する。出力装置22は、これらの様々な機能を、情報処理装置10を利用するためのソフトウェアまたはアプリケーションを実行したり、情報処理装置10を利用するためのインターネットブラウザ機能を実行したりすることで、実現する。
【0018】
なお、情報処理システム1は、本実施形態では、入力装置21と出力装置22とを別々に設けたが、本発明はこれに限定されず、入力装置21と出力装置22とが一体化された形態であってもよい。この場合、入力装置21の表示部が出力装置22として機能する。
【0019】
入力情報25は、情報処理装置10が実行する情報の段階処理における初期条件や環境条件等の情報であり、出力情報26は、入力情報25に基づく条件下で、情報処理装置10が実行する情報の段階処理によって得られた処理結果等の情報である。
【0020】
〔3.情報処理装置10の構成〕
図2は、
図1の情報処理装置10の制御ブロック図である。情報処理装置10は、
図2に示すように、処理部11と、記憶部12と、情報通信インターフェイス13と、を有する。
【0021】
(処理部11について)
処理部11は、コントローラ(controller)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、情報処理装置10内部の記憶装置である記憶部12に記憶されている各種プログラム(情報処理プログラムの一例に相当)がRAM(Random Access Memory)を作業領域として実行されることにより実現される。また、処理部11は、例えば、コントローラであり、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。処理部11は、入力装置21から入力情報25の入力を受け付けたり、出力装置22に出力情報26の出力を行ったりする情報通信インターフェイス13が接続されている。
【0022】
処理部11は、
図2に示すように、記憶部12及び情報通信インターフェイス13と、互いに情報通信可能に電気的に接続されており、これらの各構成要素をそれぞれ制御する制御部として機能する。すなわち、処理部11は、記憶部12とともに、制御部として機能して、本発明の実施形態に係る情報処理方法を情報処理装置10に実行させるものである。
【0023】
処理部11は、
図2に示すように、取得部14と、学習部15と、演算処理部16と、を有する。処理部11に含まれる各部、すなわち、取得部14、学習部15及び演算処理部16は、いずれも、処理部11が情報処理プログラムを実行することにより、実現される機能部である。なお、取得部14、学習部15及び演算処理部16の具体的な機能については、後述する。
【0024】
(記憶部12について)
記憶部12は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部12は、入力された入力情報25に対して情報の段階処理を実行して出力情報26を得るための演算処理に関するモデル19を記憶して保存する。
【0025】
記憶部12は、処理部11に含まれる各部、すなわち、取得部14、学習部15及び演算処理部16による処理によって生成された種々の情報を、記憶して保存する。
【0026】
(情報通信インターフェイス13について)
情報通信インターフェイス13は、処理部11と入力装置21及び出力装置22とを有線または無線で互いに情報通信可能に接続している。情報通信インターフェイス13は、入力情報25を入力装置21から受信して処理部11に送信する。また、情報通信インターフェイス13は、処理部11で生成される各情報、例えば、入力情報25に基づいて得られた出力情報26を処理部11から受信し、出力装置22等に向けて送信する。
【0027】
なお、本実施形態では、情報処理装置10は、本発明の実施形態に係る情報処理方法を実行する際に使用する入力情報25を入力装置21から受信することで取得する形態について説明しているが、本発明はこれに限定されることなく、情報通信インターフェイス13に有線または無線で互いに情報通信可能に接続したその他の外部記憶装置から取得する形態も、予め記憶部12に記憶させておいて記憶部12から取得する形態も、好適に採用することができる。
【0028】
図3は、
図1の情報処理装置10が取り扱う情報の第1例を説明する説明図である。
図4は、
図1の情報処理装置10が取り扱う情報の第2例を説明する説明図である。以下において、
図3及び
図4を用いて、本実施形態に係る入力情報25、出力情報26、主情報31、従情報32、曲面空間35、ベクトル空間37及びベクトル38について、具体的な事例を挙げてその詳細を説明するとともに、処理部11に含まれる各部の具体的な機能について説明する。なお、以下において、情報処理装置10が取り扱う情報の第1例に関する要素と、情報処理装置10が取り扱う情報の第2例に関する要素とを互いに区別するため、第1例に関する各要素の符号の末尾に「c」を記載し、第2例に関する各要素の符号の末尾に「d」を記載する。
【0029】
(情報処理装置10が取り扱う情報の第1例について)
情報処理装置10が取り扱う情報の第1例に係る入力情報25cは、全体像を司る情報部分と、細部を司る情報部分とを有し、全体像を司る情報部分が主、細部を司る情報部分が従となる主従の階層構造を形成することで、各情報部分が互いに関係性の連鎖を有している。入力情報25cは、具体的には、人の顔の画像が例示され、人の顔の輪郭曲面が、全体像を司る情報部分を形成しており、人の顔の輪郭曲面上に配置された首、髪、耳、眉毛、目、鼻及び口等の各パーツが、細部を司る各情報部分を形成している。
【0030】
取得部14は、
図3に示すように、第1例に係る入力情報25cを取り扱う場合、主情報31cとして、全体像を司る情報部分を取得し、各従情報32cとして、細部を司る各情報部分を取得する。取得部14は、より詳細には、情報全体の土台となる情報部分を、全体像を司る情報部分と認識して主情報31cとして取得し、情報全体の土台に乗っかっている各情報部分を、細部を司る各情報部分と認識して、各従情報32cとして取得する。
【0031】
取得部14は、第1例に係る入力情報25cを取り扱う場合、具体的には、人の顔の輪郭曲面という1個の主情報31cと、首、髪、左右の耳、左右の眉毛、左右の目、鼻及び口という10個のパーツに関する10個の従情報32cと、を取得する。
【0032】
なお、取得部14は、入力情報25cを主情報31c及び従情報32cに分離して取得する方法としては、上記した方法に限定されず、入力情報25cに付随して入力されるその他の情報等に基づいて実行されてもよい。例えば、取得部14は、入力情報25cに付随して、人の顔の輪郭曲面が主情報31cとして取得される部分であることの入力を受け付けて、この入力に基づいて、入力情報25cを主情報31c及び従情報32cに分離して取得してもよい。
【0033】
学習部15は、
図3に示すように、第1例に係る入力情報25cを取り扱う場合、主情報31cと対応する主空間としての曲面空間35cを生成するとともに、曲面空間35cの曲面を構成する各点に対応付けられ、各従情報32cと対応する各ベクトルを含む複数のベクトル空間37cを生成し、各ベクトル空間37cを曲面空間35cにおける主情報31cと対応する各ベクトル38が示す位置と紐付けることで、主情報31cと各従情報32cとが有する概念を示す概念空間を学習する。ここで、曲面空間35cは、主空間として生成され、ベクトル空間37cは、主空間である曲面空間35cに従属する従空間として生成される。なお、「曲面空間」とは、2次元の曲面のみならず、より高次元空間内における曲面により構成される空間であってもよい。すなわち、本願における「曲面」とは、任意の次元数における曲面(多様体)を含む概念である。学習部15による学習結果は、随時、モデル19に反映される。
【0034】
学習部15は、詳細には、曲面空間35cを生成し、なおかつ、ベクトル空間37cをいずれもリーマン曲面となるように生成し、生成された曲面空間35c、及び、リーマン曲面となるように生成されたベクトル空間37cを学ぶことにより、主情報31cと各従情報32cとが有する概念を示す概念空間を学習する。このため、学習部15は、曲面空間35cにベクトル空間37cを配置して学習することができるので、より精密に主情報31cと各従情報32cとが織りなす空間構造を学習することができる。より詳細には、学習部15は、曲面空間35cの学習を通して概念的で柔軟性のある、すなわち、類似と判断する対象にバリエーションがある内容を学習し、リーマン面で構成されるベクトル空間37cの学習を通して代数演算が可能な距離が定まった内容を学習することができる。このような処理の結果、学習部15は、例えば、全体像を司る情報部分と、細部を司る情報部分との関係性に応じた曲がり方やトポロジ(空間上に存在する孔の数等)を有する空間上において、全体像を司る情報部分と、細部を司る情報部分とを配置することができるので、情報全体が有する特徴を各空間に反映させることができる。例えば、学習部15は、人類の顔が有する特徴等を自然と各空間に反映させることができる。
【0035】
学習部15は、第1例に係る入力情報25cを取り扱う場合、具体的には、人の顔の輪郭曲面という主情報31cに基づく1個の曲面空間35cと、首、髪、左右の耳、左右の眉毛、左右の目、鼻及び口という10個のパーツに関する10個の従情報32cにそれぞれ基づく10個のベクトル空間37cとを生成し、首、髪、左右の耳、左右の眉毛、左右の目、鼻及び口という10個のパーツのそれぞれの中心部分の位置を示す各ベクトル38によってこれらの10個のベクトル空間37cを曲面空間35cに紐付けることで、人の顔の輪郭曲面と首、髪、左右の耳、左右の眉毛、左右の目、鼻及び口という10個のパーツとが有する概念を示す概念空間を学習する。
【0036】
なお、学習部15は、主情報31cに基づいて曲面空間35cを生成するとともに、各従情報32cに基づいて複数のベクトル空間37cを生成して、複数のベクトル空間37cを曲面空間35cに紐付ける電算処理について、適宜、非特許文献1「naturomics/CapsNet-Tensorflow;https://github.com/naturomics/CapsNet-Tensorflow」等に記載されているような様々な考え方や取り扱い方を好適に活用することが好ましい。
【0037】
演算処理部16は、第1例に係る入力情報25cを取り扱う場合、学習部15が学習した
図3に示すような人の顔の輪郭曲面と各パーツとが有する概念を示す概念空間を使用して、全体像を司る情報部分である人の顔の輪郭曲面と、細部を司る情報部分である各パーツとに階層構造に分けて演算処理して出力情報26を得る。演算処理部16は、学習部15による学習結果を反映したモデル19を使用して、この演算処理を実行する。
【0038】
演算処理部16は、第1例に係る入力情報25cを取り扱う場合、例えば、顔認証処理を実行することができ、すなわち、2つの人の顔の画像が同一人物である可能性がどの程度であるかを、出力情報26として得ることができる。演算処理部16は、第1例に係る入力情報25cを取り扱う場合、具体的には、加齢や疲労等に起因する顔の筋肉の変化に起因して人の顔の輪郭曲面に基づく曲面空間35cに想定内の歪みが発生し、この歪みに基づいて複数のベクトル空間37cに変化が発生していると認められる場合には、2つの人の顔の画像に差異があっても、同一人物である可能性が高い旨の出力情報26を得る。
【0039】
(情報処理装置10が取り扱う情報の第2例について)
情報処理装置10が取り扱う情報の第2例に係る入力情報25dは、原因を司る情報部分と、結果を司る情報部分とを有し、原因を司る情報部分が主、結果を司る情報部分が従となる主従の因果構造を形成することで、各情報部分が互いに関係性の連鎖を有している。入力情報25dは、具体的には、人の思考に関する情報が例示され、人の持つ背景が、原因を司る情報部分を形成しており、人の思考結果が、結果を司る各情報部分を形成している。ここで、人の持つ背景としては、人種、生い立ち、置かれた環境、思想、信条、学習内容、習得技術、業種、職種、趣味、嗜好等が例示される。また、人の思考結果としては、会話内容、発見、発明、意匠、商標、文筆物や絵画や音楽などの著作物等が例示される。
【0040】
取得部14は、
図4に示すように、第2例に係る入力情報25dを取り扱う場合、主情報31dとして、原因を司る情報部分を取得し、各従情報32dとして、結果を司る各情報部分を取得する。取得部14は、より詳細には、情報全体の原因となる各情報部分を一体として、原因を司る情報部分と認識して主情報31dとして取得し、情報全体の原因に起因して発生したと考えられる各情報部分を、結果を司る各情報部分と認識して、各従情報32dとして取得する。
【0041】
取得部14は、第2例に係る入力情報25dを取り扱う場合、具体的には、人種、生い立ち、置かれた環境、思想、信条、学習内容、習得技術、業種、職種、趣味、嗜好等という複数の各情報部分を一体化させた人の持つ背景全体である主情報31dと、会話内容、発見、発明、意匠、商標、文筆物や絵画や音楽などの著作物等という人の思考結果のそれぞれである複数の従情報32dと、を取得する。
【0042】
なお、取得部14は、入力情報25dを主情報31d及び従情報32dに分離して取得する方法としては、上記した方法に限定されず、入力情報25dに付随して入力されるその他の情報等に基づいて実行されてもよい。例えば、取得部14は、入力情報25dに付随して、人種、生い立ち、置かれた環境、思想、信条、学習内容、習得技術、業種、職種、趣味、嗜好等が一体の主情報31dを構成する情報部分として取得される部分であることの入力を受け付けて、この入力に基づいて、入力情報25dを主情報31d及び従情報32dに分離して取得してもよい。
【0043】
学習部15は、
図4に示すように、第2例に係る入力情報25dを取り扱う場合、主情報31dと対応する曲面空間35dを生成するとともに、曲面空間35dの曲面を構成する各点に対応付けられ、各従情報32dと対応する各ベクトルを含む複数のベクトル空間37dを生成し、各ベクトル空間37dを曲面空間35dにおける主情報31dと対応する各ベクトル38が示す位置と紐付けることで、主情報31dと各従情報32dとが有する概念を示す概念空間を学習する。ここで、曲面空間35dは、主空間として生成され、ベクトル空間37dは、主空間である曲面空間35dに従属する従空間として生成される。学習部15による学習結果は、随時、モデル19に反映される。
【0044】
学習部15は、詳細には、曲面空間35dを生成し、なおかつ、ベクトル空間37dをいずれもリーマン曲面となるように生成し、生成された曲面空間35d、及び、リーマン曲面となるように生成されたベクトル空間37dを学ぶことにより、主情報31dと各従情報32dとが有する概念を示す概念空間を学習する。このため、学習部15は、曲面空間35dにベクトル空間37dを配置して学習することができるので、より精密に主情報31cと各従情報32dとが織りなす空間構造を学習することができる。より詳細には、学習部15は、曲面空間35dの学習を通して概念的で柔軟性のある、すなわち、類似と判断する対象にバリエーションがある内容を学習し、リーマン面で構成されるベクトル空間37dの学習を通して代数演算が可能な距離が定まった内容を学習することができる。このような処理の結果、学習部15は、例えば、原因を司る情報部分と、結果を司る情報部分との関係性に応じた曲がり方やトポロジ(空間上に存在する孔の数等)を有する空間上において、原因を司る情報部分と、結果を司る情報部分とを配置することができるので、情報全体が有する特徴を各空間に反映させることができる。例えば、学習部15は、ある特定の人物により記述された文章の特徴等を自然と各空間に反映させることができる。
【0045】
学習部15は、第2例に係る入力情報25dを取り扱う場合、具体的には、人の持つ背景全体である主情報31dに基づく1個の曲面空間35dと、人の思考結果のそれぞれである複数の従情報32dにそれぞれ基づく複数のベクトル空間37dとを生成し、人の思考結果のそれぞれの抽象的な位置付けを示す各ベクトル38によってこれらの複数のベクトル空間37dを曲面空間35dに紐付けることで、原因となる人の持つ背景全体と、結果となる人の思考結果とが有する概念を示す概念空間を学習する。
【0046】
なお、学習部15は、主情報31dに基づいて曲面空間35dを生成するとともに、各従情報32dに基づいて複数のベクトル空間37dを生成して、複数のベクトル空間37dを曲面空間35dに紐付ける電算処理について、適宜、前述の非特許文献1に加えて、非特許文献2「Dynamic Routing Between Capsules;https://papers.nips.cc/paper/6975-dynamic-routing-between-capsules.pdf」等に記載されているような様々な考え方や取り扱い方を好適に活用することで、第1例に係る入力情報25cよりも抽象的な第2例に係る入力情報25dに例示される種類の概念について、好適に取り扱うことが好ましい。
【0047】
演算処理部16は、第2例に係る入力情報25dを取り扱う場合、学習部15が学習した
図4に示すような人の持つ背景全体と人の思考結果のそれぞれとが有する概念を示す概念空間を使用して、原因を司る情報部分である人の持つ背景全体と、結果を司る情報部分である人の思考結果のそれぞれとの因果関係に基づいて演算処理して出力情報26を得る。演算処理部16は、学習部15による学習結果を反映したモデル19を使用して、この演算処理を実行する。
【0048】
演算処理部16は、第2例に係る入力情報25dを取り扱う場合、例えば、自動発明処理を実行することができ、すなわち、人の持つ背景の組み合わせの結果として想到される発明を、出力情報26として得ることができる。演算処理部16は、第2例に係る入力情報25dを取り扱う場合、具体的には、人の持つ背景に含まれる学習内容及び習得技術をよりたくさん詰め込んで、有限の人生を送る人では極めて困難な量及び質の学習内容及び習得技術に基づいて想到される発明を、出力情報26として得ることができる。
【0049】
(モデル19について)
モデル19は、情報の段階処理における初期条件や環境条件等の情報である入力情報25に基づいて、情報の段階処理を実行して、その処理結果等の情報である出力情報26を取得する演算処理に関する分類機である。モデル19は、学習部15による学習結果を反映することで、学習部15による学習内容に基づく情報の段階処理を扱うことが可能となる。
【0050】
〔4.評価処理の一例〕
本発明の実施形態に係る情報処理装置10の作用について以下に説明する。
図5は、実施形態に係る情報処理方法のフローチャートである。情報処理装置10によって実行される本発明の実施形態に係る情報処理方法について、
図5を用いて説明する。実施形態に係る情報処理方法は、
図5に示すように、取得ステップS11と、学習ステップS12と、演算処理ステップS13と、を有する。
【0051】
実施形態に係る情報処理方法において、処理部11は、まず、取得ステップS11を実行する前に、実施形態に係る情報処理方法において取り扱う情報の段階処理に関する環境条件を決定する。例えば、処理部11は、情報通信インターフェイス13を介して入力装置21から入力情報25を受信し、入力情報25に含まれている情報の段階処理に関する環境条件に基づいて、実施形態に係る情報処理方法において取り扱う情報の段階処理に関する環境条件を決定することができる。また、処理部11は、記憶部12に記憶されている情報の段階処理に関する環境条件に基づいて、実施形態に係る情報処理方法において取り扱う情報の段階処理に関する環境条件を決定してもよい。
【0052】
取得ステップS11は、取得部14が、主情報31と、主情報31の下位に属する従情報32とを取得するステップである。
【0053】
取得ステップS11では、具体的には、取得部14が、まず、入力情報25の種類について、主従の階層構造を形成している場合であるか、それとも、主従の因果構造を形成している場合であるか、を判別する。取得ステップS11では、取得部14が、次に、入力情報25が入力情報25cに例示されるように全体像を司る情報部分と細部を司る情報部分とが主従の階層構造を形成していると判別した場合、主情報31として全体像を司る情報部分を取得し、各従情報32として細部を司る各情報部分を取得する。また、取得ステップS11では、取得部14が、入力情報25が入力情報25dに例示されるように原因を司る情報部分と結果を司る情報部分とが主従の因果構造を形成していると判別した場合、主情報31として原因を司る情報部分を取得し、各従情報32として結果を司る各情報部分を取得する。
【0054】
学習ステップS12は、学習部15が、取得ステップS11で取得した主情報31と対応する曲面空間35を生成するとともに、曲面空間35の曲面を構成する各点に対応付けられ、取得ステップS11で取得した従情報32と対応するベクトルを含むベクトル空間37を曲面空間35における主情報31と対応するベクトル38が示す位置と紐付けることで、主情報31と従情報32とが有する概念を示す概念空間を学習するステップである。
【0055】
学習ステップS12では、具体的には、学習部15が、まず、主情報31に基づいて、主情報31と対応する曲面空間35を生成するとともに、従情報32に基づいて、曲面空間35の曲面を構成する各点に対応付けられ、従情報32と対応するベクトルを含むベクトル空間37を生成する。学習ステップS12では、学習部15が、次に、ベクトル空間37を曲面空間35における主情報31と対応するベクトル38が示す位置と紐付ける。学習ステップS12では、このようにして、学習部15が、主情報31と従情報32とが有する概念を示す概念空間を学習する。学習ステップS12では、学習部15による学習結果は、随時、モデル19に反映される。
【0056】
演算処理ステップS13は、演算処理部16が、学習ステップS12で学習部15が学習した概念空間を使用して、情報の段階処理を実行して出力情報26を得るステップである。演算処理ステップS13では、演算処理部16が、学習部15による学習結果が反映されたモデル19を使用して、この情報の段階処理を実行する。
【0057】
演算処理ステップS13では、具体的には、演算処理部16が、取得ステップS11で入力情報25が入力情報25cに例示されるように全体像を司る情報部分と細部を司る情報部分とが主従の階層構造を形成していると判別した場合、全体像を司る情報部分と細部を司る情報部分とに階層構造に分けて演算処理する。また、演算処理ステップS13では、演算処理部16が、入力情報25が入力情報25dに例示されるように原因を司る情報部分と結果を司る情報部分とが主従の因果構造を形成していると判別した場合、原因を司る情報部分と結果を司る情報部分との因果関係に基づいて演算処理する。
【0058】
実施形態に係る情報処理方法において、処理部11は、演算処理ステップS13を実行して得た出力情報26を、情報通信インターフェイス13を介して出力装置22に出力することができる。
【0059】
〔5.ハードウェア構成〕
上述してきた実施形態に係る情報処理装置10は、例えば
図6に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。
図6は、情報処理装置10の機能を実現するコンピュータ1000の一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM1300、HDD1400、通信インターフェイス(I/F)1500、入出力インターフェイス(I/F)1600、及びメディアインターフェイス(I/F)1700を有する。
【0060】
CPU1100は、ROM1300又はHDD1400に記憶されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を記憶する。
【0061】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、及び、かかるプログラムによって使用されるデータ等を記憶する。通信インターフェイス1500は、通信網500を介して他の機器からデータを受信してCPU1100へ送り、CPU1100が生成したデータを、通信網500を介して他の機器へ送信する。
【0062】
CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、及び、キーボードやマウス等の入力装置を制御する。CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、入力装置からデータを取得する。また、CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して生成したデータを出力装置へ出力する。
【0063】
メディアインターフェイス1700は、記録媒体1800に記憶されたプログラム又はデータを読み取り、RAM1200を介してCPU1100に提供する。CPU1100は、かかるプログラムを、メディアインターフェイス1700を介して記録媒体1800からRAM1200上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記録媒体1800は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0064】
例えば、コンピュータ1000が実施形態に係る情報処理装置10として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされたプログラムを実行することにより、処理部11の機能を実現する。また、HDD1400には、記憶部12内のデータが記憶される。コンピュータ1000のCPU1100は、これらのプログラムを記録媒体1800から読み取って実行するが、他の例として、他の装置から通信網500を介してこれらのプログラムを取得してもよい。
【0065】
〔6.その他〕
また、上記実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0066】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、
図2に示した記憶部12に記憶される情報は、情報通信インターフェイス13等のネットワークを介して、外部に備えられた所定の記憶装置に記憶されてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、情報処理装置10が、例えば、主情報31と、主情報31の下位に属する従情報32とを取得する取得ステップS11と、取得ステップS11で取得した主情報31と対応する曲面空間35を生成するとともに、曲面空間35の曲面を構成する各点に対応付けられ、取得ステップS11で取得した従情報32と対応するベクトルを含むベクトル空間37を曲面空間35における主情報31と対応するベクトル38が示す位置と紐付けることで、主情報31と従情報32とが有する概念を示す概念空間を学習する学習ステップS12と、学習ステップS12で学習した概念空間を使用して、情報の段階処理を実行して出力情報26を得る演算処理ステップS13と、を行う例を示した。しかし、上述した情報処理装置10は、取得ステップS11を行う取得装置と、学習ステップS12を行う学習装置と、演算処理ステップS13を行う演算処理装置とに分離されてもよい。そして、上記の情報処理装置10による処理は、取得装置と、学習装置と、演算処理装置との各装置を有する情報処理システムによって実現される。
【0068】
また、上述した学習内容は、あくまで一例であり、情報処理装置10は、任意の態様で学習し、モデル19に反映させてよい。すなわち、どのような態様で主情報31と従情報32とが有する概念を示す概念空間学習し、モデル19に主情報31と従情報32とが有する概念を示す概念空間の学習を反映させるかについては、任意の態様が採用可能である。例えば、情報処理装置10は、学習時においては、曲面空間35、ベクトル空間37及びベクトル38を組合せて記憶する形で学習してもよいし、曲面空間35、ベクトル空間37及びベクトル38を導出する経路を記憶する形で学習してもよい。
【0069】
また、上述してきた実施形態及び変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0070】
〔7.効果〕
上述してきたように、実施形態に係る情報処理装置10は、取得部14と、学習部15と、を有する。取得部14は、主情報31と、主情報31の下位に属する従情報32とを取得する。学習部15は、主情報31と対応する曲面空間35を生成するとともに、曲面空間35の曲面を構成する各点に対応付けられ、従情報32と対応するベクトルを含むベクトル空間37を曲面空間35における主情報31と対応するベクトル38が示す位置と紐付けることで、主情報31と従情報32とが有する概念を示す概念空間を学習する。
【0071】
このように、実施形態に係る情報処理装置10は、情報の関係性の連鎖に着目して情報を段階に応じて情報を分離して取得し、分離した情報及びそれらの関係性の連鎖が有する概念を示す概念空間を学習するので、人間の思考に見られるような階層に基づいて比重を変更して情報を処理したり、因果に基づいて情報を処理したりするといった情報の段階処理をすることができる。
【0072】
また、実施形態に係る情報処理装置10は、取得部14が、主情報31として全体像を司る情報部分を取得し、従情報32として全体像に対する細部を司る情報部分を取得することができる。さらに、実施形態に係る情報処理装置10は、学習部15が学習した概念空間を使用して、全体像を司る情報部分と細部を司る情報部分とに階層構造に分けて演算処理する演算処理部16と、をさらに有する。
【0073】
このように、実施形態に係る情報処理装置10は、情報の階層構造に着目して情報を分離して取得し、分離した情報及びそれらの階層構造が有する概念を示す概念空間を学習するので、好適に、階層に基づいて比重を変更して情報を処理することができる。
【0074】
また、実施形態に係る情報処理装置10は、取得部14が、取得部14が、主情報31として原因を司る情報部分を取得し、従情報32として原因に基づく結果を司る情報部分を取得することができる。さらに、実施形態に係る情報処理装置10は、学習部15が学習した概念空間を使用して、原因を司る情報部分と結果を司る情報部分との因果関係に基づいて演算処理する演算処理部16と、をさらに有する。
【0075】
このように、実施形態に係る情報処理装置10は、情報の因果関係に着目して情報を分離して取得し、分離した情報及びそれらの因果関係が有する概念を示す概念空間を学習するので、好適に、因果に基づいて情報を処理することができる。
【0076】
また、実施形態に係る情報処理装置10は、学習部15が、曲面空間35の学習を通して概念的で柔軟性のある内容を学習し、リーマン面で構成されるベクトル空間37の学習を通して代数演算が可能な距離が定まった内容を学習する。
【0077】
このように、実施形態に係る情報処理装置10は、曲面空間35とリーマン面で構成されるベクトル空間37との空間の数学的性質の差異を生かすことで、概念的で柔軟性のある包括的な内容と、代数演算を要する詳細さが求められる内容とを、情報の関連性の連鎖によって生じる階層に分けて、情報処理並びに情報処理に関する学習をすることができる。
【0078】
また、実施形態に係る情報処理方法は、取得ステップS11と、学習ステップS12と、を有する。取得ステップS11は、主情報31と、主情報31の下位に属する従情報32とを取得するステップである。学習ステップS12は、主情報31と対応する曲面空間35を生成するとともに、曲面空間35の曲面を構成する各点に対応付けられ、従情報32と対応するベクトルを含むベクトル空間37を曲面空間35における主情報31と対応するベクトル38が示す位置と紐付けることで、主情報31と従情報32とが有する概念を示す概念空間を学習するステップである。
【0079】
このように、実施形態に係る情報処理方法は、情報の関係性の連鎖に着目して情報を段階に応じて情報を分離して取得し、分離した情報及びそれらの関係性の連鎖が有する概念を示す概念空間を学習するので、人間の思考に見られるような階層に基づいて比重を変更して情報を処理したり、因果に基づいて情報を処理したりするといった情報の段階処理をすることができる。
【0080】
また、実施形態に係る情報処理プログラムは、コンピュータ1000に、取得手順と、学習手順と、を実行させるためのものである。取得手順は、主情報31と、主情報31の下位に属する従情報32とを取得する手順である。学習手順は、主情報31と対応する曲面空間35を生成するとともに、曲面空間35の曲面を構成する各点に対応付けられ、従情報32と対応するベクトルを含むベクトル空間37を曲面空間35における主情報31と対応するベクトル38が示す位置と紐付けることで、主情報31と従情報32とが有する概念を示す概念空間を学習する手順である。
【0081】
このように、実施形態に係る情報処理プログラムは、コンピュータ1000に、情報の関係性の連鎖に着目して情報を段階に応じて情報を分離して取得させ、分離した情報及びそれらの関係性の連鎖が有する概念を示す概念空間を学習させるので、人間の思考に見られるような階層に基づいて比重を変更して情報を処理させたり、因果に基づいて情報を処理させたりするといった情報の段階処理をさせることができる。
【0082】
以上、本願の実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0083】
また、上述してきた「部(section、module、unit)」は、「手段」や「回路」などに読み替えることができる。例えば、処理部は、処理手段や処理回路に読み替えることができる。