(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係るフェイズドアレイアンテナは、2次元的に又は3次元的に配列した複数のアンテナ素子を有するアンテナ装置である。フェイズドアレイアンテナは、複数のアンテナ素子の間で送信又は受信の信号の移相及び信号が制御され、任意の方向に指向性の主ビームの方向を向けるビームフォーミングが可能である。
【0018】
また、本実施形態のフェイズドアレイアンテナは、ビームフォーミングを必要とする長距離の無線通信又は無線電力伝送における大開口の送信フェイズドアレイアンテナに適する。マイクロ波を用いた無線電力伝送では、ビームフォーミングを必要とするだけでなく、伝送距離に応じたアンテナ開口面積が必要となる。例えば、送電対象が地上の車両等(送電距離が1m以下)の場合はアンテナ開口面積は1m
2以下であるが、送電対象が比較的低い高度(例えば100m以下)の上空を飛行するドローン等の飛行体(送電距離が100m以下)の場合、アンテナ開口面積は数m
2であることが想定される。更に、送電対象が比較的高い高度(例えば数百m以上20km以下)の成層圏を飛行する成層圏滞在型無人機、成層圏プラットフォーム、HAPS(高高度プラットフォーム局、高高度疑似衛星)等の飛行体(送電距離が20km以下)の場合、アンテナ開口面積は数10m
2である。また、送電対象がより高い高度(例えば数10km以上3600km以下)に位置する宇宙太陽光発電所等(送電距離が3600km以下)の場合、アンテナ開口面積は数km
2であることが想定される。このように無線伝送における送電距離に応じてアンテナ開口面積が拡大(アンテナ素子数が増加)するため、簡易且つ安価なフェイズドアレイアンテナが求められる。本実施形態のフェイズドアレイアンテナは、このような長距離の無線電力伝送システムにおけるビームフォーミング可能で簡易且つ安価な大開口のフェイズドアレイアンテナに適する。
【0019】
なお、本実施形態では、フェイズドアレイアンテナを主に送信アンテナとして構成した場合について説明するが、本実施形態のフェイズドアレイアンテナは受信アンテナとして構成することもできる。また、本実施形態では、2次元的に配列するアンテナ素子数が16個(=4個×4個)のフェイズドアレイアンテナの場合について主に説明するが、フェイズドアレイアンテナのアンテナ素子数は、図示の例に限られるものではない。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るフェイズドアレイアンテナのアンテナ素子の配置例を示す説明図である。
図1において、フェイズドアレイアンテナ10は、所定の周波数(例えばマイクロ波又はミリ波)の電磁波を送信して電力を伝送する無線伝送装置であり、4組のリニアアレイ部100(1)〜100(4)を備える。4組のリニアアレイ部100(1)〜100(4)はそれぞれ、図中のY方向(第1方向)に所定の間隔dyで配列した4個のアンテナ素子110(1,1)〜110(1,4)、110(2,1)〜110(2,4)、110(3,1)〜110(3,4)、110(4,1)〜110(4,4)を有する。4組のリニアアレイ部100(1)〜100(4)は図中のY方向と交差するX方向(第2方向)に所定の間隔dxで配列している。なお、アンテナ素子110のY方向の間隔dy及びX方向(第2方向)の間隔dxは同じ間隔dであってもよい。
【0021】
アンテナ素子110は、例えばダイポールアンテナであるが、スロットアンテナ、ホーンアンテナ、マイクロストリップアンテナなどの、他の種類のアンテナ素子であってもよい。また、アンテナ素子110は、単一偏波面の電磁波を送受信可能なアンテナでもよいし、複数偏波面の電磁波又は円偏波面の電磁波を送受信可能なアンテナであってもよい。
【0022】
なお、図示の例では、リニアアレイ部100(1)〜100(4)の配列方向(X方向)と、各リニアアレイ部中のアンテナ素子の配列方向(Y方向)とは実質的に直交しているが、その配列方向の交差角度は90度からずれていてもよい。また、図示の例では、アンテナ素子の配置面が実質的に平面である場合について示しているが、アンテナ素子の配置面は曲面であってもよい。
【0023】
図2(a)〜(c)はそれぞれ、本実施形態に係るフェイズドアレイアンテナ10において制御可能な指向性ビームBmの主方向の一例を示す説明図である。
図2中のX軸及びY軸はそれぞれ、フェイズドアレイアンテナ10のアンテナ素子110が配置された素子配置面10s上に定義された互いに直交する座標軸(基準軸)であり、
図1中のX方向及びY方向に対応する。
図2中のZ軸は、フェイズドアレイアンテナ10の素子配置面10sに垂直な軸である。このZ軸を中心にして、フェイズドアレイアンテナ10の指向性ビームBmの主方向を変化させるビームステアリングが可能である。
【0024】
図2(a)において、アジマス角ψa及びエレベーション角ψeは、フェイズドアレイアンテナ10で送受信される電磁波の指向性ビームBmの主方向を規定する角度である。アジマス角ψaは、指向性ビームBmの主方向の方位角であり、素子配置面10s上の基準軸であるX軸を基準にし、指向性ビームBmの主方向を素子配置面10sに投影した投影方向Bm’の角度である。エレベーション角ψeは、指向性ビームBmの主方向の仰角であり、素子配置面10sを基準にした指向性ビームBmの主方向の角度である。
【0025】
図2(b)は、フェイズドアレイアンテナ10によって制御可能な指向性ビームBmの主方向のY−Z面におけるZ軸を基準にしたエレベーション方向のビームステアリング角θeを示している。このY−Z面上のビームステアリング角θeは、リニアアレイ部100のY方向に配置されたアンテナ素子間の位相差Δφeを制御して変化させることができる。
【0026】
図2(c)は、フェイズドアレイアンテナ10によって制御可能な指向性ビームBmの主方向のZ−X面におけるZ軸を基準にしたアジマス方向のビームステアリング角θaを示している。このZ−X面上のビームステアリング角θaは、リニアアレイ部100のX方向に配置されたアンテナ素子間の第2位相差Δφaを制御して変化させることができる。
【0027】
図3は、本実施形態に係るフェイズドアレイアンテナ10の概略構成の一例を示す説明図である。フェイズドアレイアンテナ10は、複数の第1伝送線路120と、複数の第1移相器121とを備える。
【0028】
第1伝送線路120は、複数のリニアアレイ部100それぞれの長手方向(
図1のY方向参照)に沿って延在し、リニアアレイ部100の複数のアンテナ素子110に結合する複数の第1結合部122を有する。
【0029】
第1移相器(「エレベーション方向のステアリング移相器」ともいう。)121は、複数の第1伝送線路120それぞれにおける互いに隣り合う第1結合部122の間で高周波信号RFを第1位相差(Δφe)だけ移相する。第1位相差(Δφe)は、指向性ビームBmの主方向の仰角であるエレベーション角ψeに対応するエレベーション方向のビームステアリング角θe(
図2(b)参照)を設定するための位相差である。
【0030】
更に、フェイズドアレイアンテナ10は、第2伝送線路130と複数の第2移相器131とを備える。
【0031】
第2伝送線路130は、複数のリニアアレイ部100の配列方向(
図1のX方向参照)に沿って延在し、複数の第1伝送線路120それぞれの一方の端部(図中下側の端部)に結合する複数の第2結合部132を有する。第2結合部132と第1伝送線路120との間には直流成分を遮断するためのキャパシタC1を有する。
【0032】
第2移相器(「アジマス方向のステアリング移相器」ともいう。)131は、第2伝送線路130における互いに隣り合う第2結合部132の間で高周波信号RFを第2位相差(Δφa)だけ移相する。第2位相差(Δφa)は、指向性ビームBmの主方向の方位角であるアジマス角ψaに対応するアジマス方向のビームステアリング角θa(
図2(c)参照)を設定するための位相差である。
【0033】
第2伝送線路130の一方の端部(送信信号発生部である高周波信号源20とは反対側の端部)には、交流成分を遮断するインダクタL1を介して、第2位相差(Δφa)を制御するための直流電圧Vdc1[V]が印加される。
【0034】
第2伝送線路130のもう一方の端部(高周波信号源20側の端部)と高周波信号源20との間には、直流成分を遮断するためのキャパシタC2を有する。
【0035】
第2伝送線路130の高周波信号源20側の端部における直流成分の電位はゼロ電位であるため、第2伝送線路130の端部間には直流成分の電圧Vdc1[V]が印加された状態になっている。この電圧Vdc1[V]により、後述のハイブリッド結合型のアナログ移相器で構成された第2移相器131の第2位相差(Δφa)が制御される。
【0036】
また、複数の第1伝送線路120の一方の端部(第2伝送線路130とは反対側の端部)には、交流成分を遮断するインダクタL0を介して、第1位相差(Δφe)を制御するための直流電圧Vdc2[V]が印加される。電圧0[V]〜Vdc2[V]により、後述のハイブリッド結合型のアナログ移相器で構成された第1移相器121の第1位相差(Δφe)が制御される。
【0037】
図4は、
図3のフェイズドアレイアンテナ10の破線で囲まれた4番目のリニアアレイ部100(4)におけるエレベーション方向のビームステアリング用回路101の構成の一例を示す説明図である。第1伝送線路120における複数のアンテナ素子110に結合する複数の第1結合部122はそれぞれ、アンテナ素子110の下端面に対して、所定の空隙sを介して対向することにより、高周波信号RFを非接触でアンテナ素子110に伝達する結合器を構成している。
【0038】
複数の第1結合部122における結合器の空隙sは、第1伝送線路120に高周波信号が供給される第2伝送線路130との第2結合部から遠ざかるほど狭くして結合度を高めるようにしてもよい。これにより、第1伝送線路120を伝送されている高周波信号RFが減衰する場合でも、複数のアンテナ素子110に伝達される高周波信号RFの強度がアンテナ素子間でばらつかないで互いに均一になるようにすることができる。
【0039】
また、
図4において、複数の第1移相器121はそれぞれ、印加電圧に応じて位相変化量が変化するハイブリッド結合型のアナログ移相器である。第1移相器121は、例えば0°〜90°の範囲で移相することができる一種の可変リアクタンス回路であり、印加電圧により静電容量が変化する可変容量素子であるバラクタダイオード121dを、対象信号の1/4波長より短い伝送線路(インピーダンス線路)121cで接続した構成を有する。
図4の例では、第1伝送線路120に印加される電圧(Vdc2)[V]により、複数の第1移相器121はそれぞれ、第1位相差(Δφe)だけ高周波信号RFを移相する。第1伝送線路120に入力される時点で高周波信号RFは第2伝送線路130の3つの第2移相器131により第2位相差Δφaの3倍分だけ移相済みであるので、図中の4つのアンテナ素子110から放射される電磁波の位相はそれぞれ、3Δφa、3Δφa+Δφe、3Δφa+2Δφe、及び、3Δφa+3Δφeとなる。
【0040】
図5は、
図3のフェイズドアレイアンテナ10における破線で囲まれたアジマス方向のビームステアリング用回路102の構成の一例を示す説明図である。
図5では、図示の都合上、前述の複数のリニアアレイ部100のアンテナ素子110のうち、第2伝送線路130に最も近いアンテナ素子110について図示している。
【0041】
なお、複数のリニアアレイ部100の並び方向(図中の左右方向)に関して、各リニアアレイ部100における結合器の空隙sは、高周波信号源20から遠ざかるほど(図中の右側ほど)狭くして結合度を高めるようにしてもよい。これにより、第2伝送線路130を伝送されている高周波信号RFが減衰する場合でも、各リニアアレイ部100の複数のアンテナ素子110に伝達される高周波信号RFの強度がアンテナ素子間でばらつかないで互いに均一になるようにすることができる。
【0042】
また、
図5において、複数の第2移相器131はそれぞれ、前述の第1移相器121と同様に、印加電圧に応じて位相変化量が変化するハイブリッド結合型のアナログ移相器である。第2移相器131は、例えば0°〜90°の範囲で移相することができる一種の可変リアクタンス回路であり、印加電圧により静電容量が変化する可変容量素子であるバラクタダイオード131dを、対象信号の1/4波長より短い伝送線路(インピーダンス線路)131cで接続した構成を有する。
図5の例では、第2伝送線路130に印加される電圧(Vdc1)[V]により、第2位相差(Δφa)だけ高周波信号RFを移相する。図中の4つのリニアアレイ部の手前側のアンテナ素子110から放射される電磁波の位相はそれぞれ、0°、Δφa、2Δφa、及び、3Δφaとなる。
【0043】
図6は、本実施形態に係るフェイズドアレイアンテナ10における移相器121、131の位相差φ(φe,φa)とステアリング角θ(θe,θa)との関係の一例を示す説明図である。なお、
図6では、説明を簡単にするため、移相器121、131で移相する位相差φe,φaを位相差φと表記し、エレベーション方向及びアジマス方向のステアリング角θe,θaをステアリング角θと表記している。また、複数の移相器121、131を含む伝送線路120,130の両端には直流のVdcが印加される。
【0044】
図6において、高周波信号RFの波長をλ[m]とし、アンテナ素子110の間隔をd[m]とし、アンテナ素子110の個数をn個とすると、指向性ビームBmの主方向のステアリング角θは、次式(1)で計算することができる。
【数1】
【0045】
図7は、本実施形態に係るフェイズドアレイアンテナ10を備える送信装置1の概略構成の一例を示すブロック図である。
図7において、送信装置1は、前述の構成を有するフェイズドアレイアンテナ10と、フェイズドアレイアンテナ10に供給する高周波信号RFを発生する高周波信号源20と、フェイズドアレイアンテナ10に供給する制御信号としての直流電圧Vdc1、Vdc2を生成する直流電源30と、制御部40とを備える。
【0046】
制御部40は、例えば、送信対象の位置情報と、フェイズドアレイアンテナ10又は送信装置1自体の位置情報とに基づいて、指向性ビームBmのエレベーション方向のビームステアリング角θe及びアジマス方向のビームステアリング角θaの目標角度を決定する。更に、制御部40は、ビームステアリング角θe及びθaの目標角度に基づいて、フェイズドアレイアンテナ10に供給する制御信号としての直流電圧Vdc1、Vdc2の目標値を決定し、直流電圧Vdc1、Vdc2を出力するように直流電源30を制御する。また、制御部40は、高周波信号源20から出力される高周波信号RFのON/OFF及び周波数を制御してもよい。
【0047】
以上、
図1〜
図7に例示した実施形態では、16個(4個×4個)のアンテナ素子110を有するフェイズドアレイアンテナ10の指向性ビームBmの主方向を2つの位相制御系統(直流電圧Vdc1及びVdc2)で制御することができるので、装置構成が簡易になり低コスト化を図ることができる。しかも、その指向性ビームBmの主方向の可変角度範囲が制限されることもない。これに対して、従来のフェイズドアレイアンテナでは、16個のアンテナ素子の位相を個別に制御するため16個の位相制御系統が必要になり、装置構成が複雑になり高コストになる。また、従来の複数のアンテナ素子を有するアレイユニットに対して一つの移相器を設けたサブアレイ構成では、ステアリング可能な角度を大きく制限してしまう。
【0048】
なお、本実施形態において、フェイズドアレイアンテナは、前述の複数のリニアアレイ部をそれぞれ有する複数のアレイユニットで構成してもよい。
【0049】
図8は、本発明の他の実施形態に係るフェイズドアレイアンテナ11の概略構成の一例を示す説明図である。なお、
図8において、前述の
図3と共通する部分については同じ符号を付し、説明を省略する。また、
図8の例は、図中のX方向(横方向)に2組のアレイユニット10(1),10(2)を備えた例であるが、X方向(横方向)に3組以上のアレイユニットを展開して備えてもよいし、図中のY方向(縦方向)に2組以上のアレイユニットを展開して備えてもよい。
【0050】
図8において、フェイズドアレイアンテナ11は、16個(4個×4個)のアンテナ素子110を有するアレイユニット10(1),10(2)を2組備える。更に、複数のアレイユニット10(1),10(2)はそれぞれ、アレイユニット10(1),10(2)と送信信号発生部としての高周波信号源20との間で第3位相差(Δφ1,Δφ2)だけ高周波信号RFを移相する複数の第3移相器(「チューニング移相器」ともいう。)133(1),133(2)を備える。第3移相器133は、例えば、直流成分を遮断するためのキャパシタC2とともに、第2伝送線路130と高周波信号源20との間に設けられる。第3移相器133(1),133(2)は、アンテナ全体による指向性ビームBmの主方向の等位相面を調整するための第3位相差Δφn(n=1,2)だけ高周波信号RFを移相するための移相器である。なお、移相器133(1)は省略することも可能である。
【0051】
第3移相器133(1),133(2)で移相する第3位相差Δφ1,Δφ2は、フェイズドアレイアンテナ11の全体目標指向方向(指向性ビームBmの主方向)に対する複数のアレイユニット10(1),10(2)それぞれの等位相面が同一面上に位置するように設定される。
【0052】
図9は、
図8のフェイズドアレイアンテナにおける移相器の位相差とステアリング角と等位相面との関係の一例を示す説明図である。なお、
図9において、前述の
図3と共通する部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0053】
第3移相器133(1),133(2)はそれぞれ、前述の第1移相器121及び第2移相器131と同様に、印加電圧に応じて位相変化量が変化するハイブリッド結合型のアナログ移相器であってもよい。第3移相器133(1),133(2)はそれぞれ、キャパシタC3を介して高周波信号RFが入力され、第3位相差Δφ1,Δφ2だけ移相された後、キャパシタC4を介してアンテナ素子側に出力される。
【0054】
第3移相器133(1),133(2)の第3位相差Δφ1,Δφ2はそれぞれ、交流成分を遮断するインダクタL3を介して印加されるVdc3(1)、Vdc3(2)により制御される。
【0055】
図9において、第3移相器133(1),133(2)の第3位相差Δφ1,Δφ2はそれぞれ、フェイズドアレイアンテナ11の全体目標指向方向(指向性ビームBmの主方向)に対する複数のアレイユニット10(1),10(2)それぞれの等位相面が同一面上に位置するように、例えば次のように設定される。すなわち、高周波信号RFの波長をλ[m]とし、アレイユニット10(1),10(2)のアンテナ素子110の間隔をd[m]とし、各アレイユニット10(1),10(2)のアンテナ素子110の個数をn個とし、指向性ビームBmの主方向のステアリング角をθとすると、第3移相器133(1),133(2)の第3位相差Δφ1,Δφ2は、次式(2)を満たすように設定される。ただし、
図8,
図9および式(2)は第3移相器133(1),133(2)に対して同相信号が入力される条件を想定する。同相信号が入力されない場合、第3移相器133(1),133(2)の出力位相をφ1,φ2と定義し、
図8,
図9および式(2)におけるΔφ1,Δφ2をφ1,φ2とそれぞれ置換してもよい。
【数2】
【0056】
図10は、
図8のフェイズドアレイアンテナにおける第3移相器であるチューニング移相器133(1),133(2)の位相差(Δφ2−Δφ1)と指向性ビームの利得のプロファイルとの関係を計算したコンピュータ・シミュレーション結果の一例を示す説明図である。
図10は、
図8のアンテナ・回路モデルに対して3次元電磁界解析および高周波回路解析の連成解析を行った結果である。このコンピュータ・シミュレーションにおいて、アンテナ素子形状は円形パッチアンテナとし、リニア偏波を想定した。また、解析周波数は5.8GHzに設定し、アレイアンテナ間隔は0.6波長に設定した。フェイズドアレイアンテナ11の全体目標指向方向(指向性ビームBmの主方向)は、フェイズドアレイアンテナ11の素子配置面からZ軸の方向に10°傾いた方向(アジマス方向のビームステアリング角θa=10°)である。
【0057】
図10の実線は、アレイユニット10(1),10(2)の等位相面が同一面上に位置するようにチューニング移相器133(1),133(2)の位相差(Δφ2−Δφ1)を160°に設定したときのシミュレーション結果である。この結果により、指向性ビームBmの主方向は単一であり、目標のアジマス方向のビームステアリング角θa=10°の方向に位置することがわかる。一方、
図10の破線は、チューニング移相器133(1),133(2)の位相差(Δφ2−Δφ1)を0°に設定したときのシミュレーション結果である。この結果により、指向性ビームBmの主方向は2つ存在し、目標のアジマス方向のビームステアリング角θa=10°の方向からずれていることがわかる。
【0058】
図11は、
図8のフェイズドアレイアンテナのアレイユニット10(1),10(2)を備える送信装置1の概略構成の一例を示すブロック図である。
図11において、送信装置1は、前述の構成を有する複数のアレイユニット10(1),10(2)と、フェイズドアレイアンテナのアレイユニット10(1),10(2)それぞれに供給する高周波信号RFを発生する高周波信号源20と、アレイユニット10(1),10(2)に供給する制御信号としての直流電圧Vdc1、Vdc2,Vdc3(1),Vdc3(2)を生成する直流電源30と、制御部40とを備える。
【0059】
制御部40は、例えば、送信対象の位置情報と、フェイズドアレイアンテナのアレイユニット10(1),10(2)又は送信装置1自体の位置情報とに基づいて、指向性ビームBmのエレベーション方向のビームステアリング角θe及びアジマス方向のビームステアリング角θaの目標角度を決定し、そのビームステアリング角θe及びθaの目標角度に基づいて、フェイズドアレイアンテナ10に供給する制御信号としての直流電圧Vdc1、Vdc2の目標値を決定し、その直流電圧Vdc1、Vdc2を出力するように直流電源30を制御する。また、制御部40は、ビームステアリング角θe及びθaの目標角度に基づいて、フェイズドアレイアンテナのアレイユニット10(1),10(2)による指向性ビームBmの主方向の等位相面を調整するための直流電圧Vdc3(1)、Vdc3(2)の目標値を決定し、その直流電圧Vdc3(1)、Vdc3(2)を出力するように直流電源30を制御する。また、制御部40は、高周波信号源20から出力される高周波信号RFのON/OFF及び周波数を制御してもよい。
【0060】
以上、
図8〜
図11に例示した実施形態では、32個(4個×8個)のアンテナ素子110を有する複数アレイユニット統合型のフェイズドアレイアンテナ11の指向性ビームBmの主方向を4つの位相制御系統(直流電圧Vdc1、Vdc2,Vdc3(1),Vdc3(2))で制御することができるので、装置構成が簡易になり低コスト化を図ることができる。しかも、その指向性ビームBmの主方向の可変角度範囲が制限されることもない。
【0061】
図12は、更に他の実施形態に係る進行波型のアンテナ装置2の概略構成の一例を示す説明図である。特に、
図12に例示する進行波型のアンテナ装置2は、簡易且つ安価な大開口のビームフォーミング可能なアンテナ装置を構成することができるため、長距離の無線電力伝送システム及び無線通信システムに適する。
【0062】
図12において、アンテナ装置2は、所定方向(図示の例ではX方向)に配列した複数(M個)の複数アレイユニット統合型のフェイズドアレイアンテナ11(1)〜11(M)を備える。複数のフェイズドアレイアンテナ11(1)〜11(M)はそれぞれ、2次元的に配列された複数(N個)のアレイユニット10(1,1),10(1,2),・・・,10(2,1),10(2,2),・・・を備える。
図12のフェイズドアレイアンテナ11(1)〜11(M)は、2行2列の合計4個のアレイユニット10を備えているが、アレイユニット10は図中のX方向及びY方向それぞれの方向に3個以上備えてもよい。
【0063】
図13は、
図12の進行波型のアンテナ装置2を備える送信装置1の一例を示す説明図である。
図13の送信装置1では、目標の方向に高電力の電磁波を放射することができる。
図13において、送信装置1は、前述の進行波型のアンテナ装置2と、アンテナ装置2の複数のフェイズドアレイアンテナ11(1)〜11(M)それぞれに高電力の高周波信号RF(1)〜RF(M)を供給する位相制御発信機24(1)〜24(M)及び分配器25(1)〜25(M)を備える。
【0064】
位相制御発信機24(1)〜24(M)は、例えば、高電力の高周波信号を出力可能な真空管を用いた位相制御真空管発信機であり、基準信号源21から出力され同期信号経路22を介して伝送される注入同期信号Sに基づいて、所定の周波数及び位相の高周波信号RF(1)〜RF(M)を出力する。図中左から第1番目の位相制御発信機24(1)は、注入同期信号Sに同期した位相θs1の高周波信号RF(1)を出力する。
【0065】
また、同期信号経路22における互いに隣り合う複数の同期信号供給部22aの間で所定の第4位相差(Δθs)だけ注入同期信号Sを移相する複数の移相器23(1)〜23(M−1)を備える。複数の移相器23(1)〜23(M−1)はそれぞれ、例えば、印加電圧に応じて位相変化量が変化するハイブリッド結合型のアナログ移相器である。この移相器23(1)〜23(M−1)により、第2番目以降の位相制御発信機24(2),24(3),・・・,24(M)にはそれぞれ、注入同期信号Sに同期した位相θs1+Δθs,θs1+Δθs×2,・・・,θs1+Δθs×(M−1)の高周波信号RF(2),RF(3),・・・,RF(M)を出力する。
【0066】
分配器25(1)〜25(M)はそれぞれ、位相制御発信機24(1)〜24(M)から出力された高周波信号RF(1)〜RF(M)をN個に分配して、フェイズドアレイアンテナ11(1)〜11(M)に供給する。分配器25(1)〜25(M)は、例えば、高電力の高周波信号を分解可能な導波路型の分配器である。
【0067】
制御部40は、例えば、送信対象の位置情報とアンテナ装置2の位置情報とに基づいて、指向性ビームBmのエレベーション方向のビームステアリング角θe及びアジマス方向のビームステアリング角θaの目標角度を決定する。更に、制御部40は、ビームステアリング角θe及びθaの目標角度に基づいて、移相器23(1)〜23(M−1)が移相する第4位相差(Δθs)に対応する直流電圧Vdc4を同期信号経路22の端部22bに印加するように直流電源30を制御する。また、制御部40は、基準信号源21から出力される注入同期信号SのON/OFF及び周波数を制御したり、位相制御発信機24(1)〜24(M)から出力される高周波信号RF(1)〜RF(M)のON/OFF及び周波数を制御したりしてもよい。
【0068】
以上、本実施形態のフェイズドアレイアンテナ10によれば、従来のサブアレイ構成のフェイズドアレイアンテナに比して、指向性ビームBmの主方向の可変角度範囲を制限することなく、アンテナ素子110の位相制御の制御系統数を抑制することができ、簡易で安価な構成とすることができる。
【0069】
また、本実施形態のフェイズドアレイアンテナ10は、無線電力電送システムにおける無線電力伝送の送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方に用いたり、無線通信システムにおける無線通信の送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方に用いたりすることができる。
【0070】
なお、本明細書で説明された処理工程並びにフェイズドアレイアンテナ、送信装置、無線電力伝送システム及び無線通信システムの構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0071】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、Node B、端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0072】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、FLASHメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0073】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であれよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0074】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。