特許第6971291号(P6971291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971291
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】多気筒内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/42 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   F02F1/42 L
   F02F1/42 G
   F02F1/42 K
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-214578(P2019-214578)
(22)【出願日】2019年11月27日
(65)【公開番号】特開2021-85365(P2021-85365A)
(43)【公開日】2021年6月3日
【審査請求日】2020年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠島 祐也
(72)【発明者】
【氏名】山口 義博
(72)【発明者】
【氏名】長尾 淳司
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−205042(JP,A)
【文献】 特開2011−157827(JP,A)
【文献】 特開2014−145284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/42
F01N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気口(37)から第1距離(L1)で離れたシリンダー軸線(C)を有する第1シリンダーを塞ぐ第1天井面(24a)と、
前記排気口(37)から前記第1距離(L1)よりも小さい第2距離(L2)で離れたシリンダー軸線(C)を有する第2シリンダーを塞ぐ第2天井面(24b)と、
個々のシリンダーごとに燃焼室(18)に開口する2つのポート口(26)から前記排気口(37)に向かって延びる排気ポート(32)とを備えるシリンダーヘッド(15)を含む多気筒内燃機関(11)において、
前記排気ポート(32)は、個々の前記ポート口(26)から個別に延びて各シリンダーごとに合流するとともに、隣接する各シリンダーごとの排気ポート(32)も合流して前記排気口(37)に繋がり、ポート口(26)から個別に延びる各排気ポート(41a、41b、41c、41d)間を仕切る壁体(45,47,49,52)の先端と、隣接する各シリンダーごとの排気ポート(32)間を仕切る壁体(53,54)の先端とは、何れも平面視で、シリンダーブロック(13)に対するシリンダーヘッド(15)の合わせ面(27)よりも外側にあることを特徴とする多気筒内燃機関。
【請求項2】
請求項1に記載の多気筒内燃機関において、前記第2シリンダーで2つの前記排気ポート(41b)を仕切る壁体(47)は、前記第1シリンダーのシリンダー軸線(C)および前記第2シリンダーのシリンダー軸線(C)を含む仮想平面に平行であって前記第1シリンダーで2つの前記排気ポート(41a)を仕切る壁体(45)の先端に接する仮想平面(FV)よりも排気口(37)側に延びることを特徴とする多気筒内燃機関。
【請求項3】
請求項1または2に記載の多気筒内燃機関において、前記第2シリンダーで2つの前記排気ポート(41b)を仕切る壁体(47)は、前記第1シリンダーのシリンダー軸線(C)および前記第2シリンダーのシリンダー軸線(C)を含む仮想平面に平行であって前記第1シリンダーの前記排気ポート(41a)と前記第2シリンダーの前記排気ポート(41b)とを仕切る壁体(53)の先端に接する仮想平面(SV)まで延び、あるいは、前記仮想平面(SV)よりも排気口(37)側に延びることを特徴とする多気筒内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気口から第1距離で離れたシリンダー軸線を有する第1シリンダーを塞ぐ第1天井面と、排気口から第1距離よりも小さい第2距離で離れたシリンダー軸線を有する第2シリンダーを塞ぐ第2天井面と、個々のシリンダーごとに燃焼室に開口する2つのポート口から排気口に向かって延びる排気ポートとを備えるシリンダーヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
多気筒内燃機関においては、シリンダーヘッドの内部に複数の吸気ポートおよび排気ポートを形成し、シリンダーヘッドの吸気側側面および排気側側面に対し、吸気を分配する吸気マニホールドおよび排気を合流させる排気マニホールドをそれぞれ接合する形態が一般的である。近年では、シリンダーヘッドの内部に排気を合流させる排気集合部をも形成し、シリンダーヘッドの排気側側面の排気口に単一の排気管を接合する形態のものも知られている。
【0003】
排気集合部がシリンダーヘッド内に形成された多気筒内燃機関は、排気マニホールドを別体で設ける必要がないため、内燃機関全体を小型化できるほか、排気ガスの放熱量を抑制でき、暖機時に排気ガス浄化装置の温度を早期に高めて触媒を活性化することができる。その一方、過度な温度上昇による触媒の熱劣化を防止するために排気ガスを適正に冷却する必要もある。
【0004】
このような多気筒内燃機関の冷却構造として、特許文献1は、クランクシャフトの軸方向に直列に4つのシリンダーボアを並べた多気筒内燃機関のシリンダーヘッドを開示する。シリンダーヘッドには、4つのうち内側2つのシリンダーボアを塞ぐ第1天井面と、外側2つのシリンダーボアを塞ぐ第2天井面とが形成される。個々の第1天井面および第2天井面には燃焼室に開口する2つのポート口が形成される。個々のポート口から単一の排気口に向かって排気ポートは延びる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−309158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シリンダーヘッドには、個々の第1天井面および第2天井面周りでシリンダーブロックに液密に重ねられる合わせ面が形成される。合わせ面では第1天井面および第2天井面周りでウオータージャケットを形成する肉厚が要求される。特許文献1ではポート口から延びる2つの排気ポートは比較的に燃焼室に近い位置で相互に合流する。ポート口ごとの排気ポートは短い。したがって、排気に接する排気ポートの表面積は大きくない。冷却効果は期待されるほど大きくない。しかも、内側2つのシリンダーボアに接続される排気ポートの排気温度と、外側2つのシリンダーボアに接続される排気ポートの排気温度とにばらつきが生じてしまう。その結果、排気ガスを適正に冷却することができず、過度な温度上昇による触媒の熱劣化を防止することができない。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、さらに効果的に排気を冷却することができる排気ポートを備えるシリンダーヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1側面によれば、排気口から第1距離で離れたシリンダー軸線を有する第1シリンダーを塞ぐ第1天井面と、前記排気口から前記第1距離よりも小さい第2距離で離れたシリンダー軸線を有する第2シリンダーを塞ぐ第2天井面と、個々のシリンダーごとに燃焼室に開口する2つのポート口から前記排気口に向かって延びる排気ポートとを備えるシリンダーヘッドを含む多気筒内燃機関において、前記排気ポートは、個々の前記ポート口から個別に延びて各シリンダーごとに合流するとともに、隣接する各シリンダーごとの排気ポートも合流して前記排気口に繋がり、ポート口から個別に延びる各排気ポート間を仕切る壁体の先端と、隣接する各シリンダーごとの排気ポート間を仕切る壁体の先端とは、何れも平面視で、シリンダーブロックに対するシリンダーヘッドの合わせ面よりも外側にある。
【0009】
第2側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記第2シリンダーで2つの前記排気ポートを仕切る壁体は、前記第1シリンダーのシリンダー軸線および前記第2シリンダーのシリンダー軸線を含む仮想平面に平行であって前記第1シリンダーで2つの前記排気ポートを仕切る壁体の先端に接する仮想平面よりも排気口側に延びる。
【0010】
第3側面によれば、第1または第2側面の構成に加えて、前記第2シリンダーで2つの前記排気ポートを仕切る壁体は、前記第1シリンダーのシリンダー軸線および前記第2シリンダーのシリンダー軸線を含む仮想平面に平行であって前記第1シリンダーの前記排気ポートと前記第2シリンダーの前記排気ポートとを仕切る壁体の先端に接する仮想平面まで延び、あるいは、前記仮想平面よりも排気口側に延びる。
【発明の効果】
【0011】
第1側面によれば、シリンダーごとに2つの排気ポートは燃焼室から個別に延びる。シリンダーごとに2つの排気ポートは個々の前記ポート口から個別に延びて各シリンダーごとに合流するとともに、隣接する各シリンダーごとの排気ポートも合流して排気口に繋がり、ポート口から個別に延びる各排気ポート間を仕切る壁体の先端と、隣接する各シリンダーごとの排気ポート間を仕切る壁体の先端とは、何れも平面視で、シリンダーブロックに対するシリンダーヘッドの合わせ面よりも外側にある。排気に接する排気ポートの表面積は増大する。排気ポート内の排気からシリンダーヘッドの金属体に熱は伝達されることから、表面積の増大に応じて効果的に排気は冷却されることができる。
【0012】
第2側面によれば、排気ポートでは、ポート口から排気口まで通路長さが長いほど、排気に接する表面積が増加し、排気の冷却効果は高まる。排気ポートが合流するごとに排気に接する表面積は減少する。冷却効果は弱まる。第1シリンダーから排気口までの通路長さは第2シリンダーから排気口までの通路長さよりも長いことから、第2シリンダーで2つの排気ポートを仕切る壁体が第1シリンダーのそれに比べて長いと、第1シリンダーおよび第2シリンダーで排気ポートの冷却効果はバランスすることができる。シリンダーごとの排気温度のばらつきは縮小されることができる。排気温度が特定の温度に収斂することで触媒の熱劣化を防止することができる。排気ガスを適正に冷却することができる。
【0013】
第3側面によれば、第1シリンダーから延びる排気ポートと第2シリンダーから延びる排気ポートとを仕切る壁体の長さが調整されることで、第1シリンダーおよび第2シリンダーで排気ポートの冷却効果はバランスすることができる。シリンダーごとの排気温度のばらつきは縮小されることができる。排気温度が特定の温度に収斂することで触媒の熱劣化を防止することができる。排気ガスを適正に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るエンジンの部分断面図であって、吸気弁および排気弁の軸心を含む断面の構造を概略的に示す図である。
図2】シリンダーブロックに対する合わせ面から見たシリンダーヘッドの下面図である。
図3図2に対応し、シリンダーヘッド内の排気ポートと合わせ面との位置関係を示す概念図である。
図4図3の4−4線に沿った断面図である。
図5】シリンダーヘッドの鋳造にあたって排気ポートの形成に用いられる中子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1は本発明の実施形態に係る多気筒内燃機関を概略的に示す概念図である。多気筒内燃機関11は、シリンダー軸線Cに同軸の円筒空間を区画するシリンダーボア(シリンダー)12を有するシリンダーブロック13と、シリンダーブロック13の上端に結合されて、動弁機構14を支持するシリンダーヘッド15とを備える。シリンダーブロック13には、シリンダー軸線Cに沿って往復運動自在にシリンダーボア12に案内されるピストン16が収容される。ピストン16は、シリンダーヘッド15に向き合う冠面17でシリンダーヘッド15との間に燃焼室18を形成する。シリンダーボア12の開口はシリンダーヘッド15を受け止める座面19で囲まれる。座面19はシリンダー軸線Cに直交する平面SP内で広がる。シリンダーブロック13は例えばアルミニウム合金といった金属材料から鋳造されて成形される。
【0017】
ピストン16には回転軸線Rx回りで回転自在にクランクケースに支持されるクランクシャフト22が接続される。ここでは、シリンダーブロック13にはクランクシャフト22の軸方向に直列に4つのシリンダーボア12(一方から順番に第1シリンダーボア、第2シリンダーボア、第3シリンダーボアおよび第4シリンダーボア)が並べられる。コネクティングロッド23はピストン16とクランクシャフト22のクランクピンとを連結する。個々のピストン16は特定の位相角でクランクシャフト22に連結される。ピストン16の線形運動はコネクティングロッド23の働きでクランクシャフト22の回転運動に変換される。
【0018】
図2に示されるように、シリンダーヘッド15には、第1シリンダーボアを塞ぐ第1天井面24aと、第2シリンダーボアを塞ぐ第2天井面24bと、第3シリンダーボアを塞ぐ第3天井面24cと、第4シリンダーボアを塞ぐ第4天井面24dとが形成される。第1、第2、第3および第4天井面24a〜24dには、燃焼室18に並んで開口し、後述される吸気ポートに接続される2つのポート口25と、燃焼室18に並んで開口し、後述される排気ポートに接続される2つのポート口26とが形成される。シリンダーヘッド15は例えばアルミニウム合金といった金属材料から鋳造されて成形される。
【0019】
シリンダーヘッド15には、第1、第2、第3および第4天井面24a〜24d周りでシリンダーブロック13に液密に重ねられる合わせ面27が形成される。合わせ面27には、第1、第2、第3および第4天井面24a〜24d周りでシリンダーブロック13のウオータージャケット(図示されず)に接続されるウオータージャケット28が開口する。シリンダーヘッド15は、第1、第2、第3および第4天井面24a〜24d周りでウオータージャケット28を形成する肉厚を有する。合わせ面27の広がりは第1、第2,第3および第4天井面24a〜24d周りの肉厚を反映する。
【0020】
図1に示されるように、シリンダーヘッド15には、個々のポート口25で燃焼室18に接続される吸気ポート31と、個々のポート口26で燃焼室18に接続される排気ポート32とが形成される。吸気ポート31のポート口25および排気ポート32のポート口26にはそれぞれバルブシート33が固定される。動弁機構14は、軸方向に変位自在にシリンダーヘッド15に支持されて、燃焼室18に臨んで吸気ポート31を開閉する吸気弁34と、軸方向に変位自在にシリンダーヘッド15に支持されて、燃焼室18に臨んで排気ポート32を開閉する排気弁35とを備える。吸気弁34および排気弁35はそれぞれ吸気ポート31および排気ポート32の開閉時にバルブシート33に着座する。
【0021】
動弁機構14は、クランクシャフト22の回転軸線Rxに平行な軸心回りで回転自在にシリンダーヘッド15に支持されるカムシャフト(図示されず)の働きで、吸気弁34および排気弁35の軸方向変位を引き起こす。吸気弁34および排気弁35の軸方向変位にあたって吸気弁34および排気弁35とカムシャフトとの間にはロッカーアーム(図示されず)が介在することができる。
【0022】
図3および図4に示されるように、排気ポート32は、4つのシリンダーボア12のシリンダー軸線Cを含む仮想平面に平行な結合面36で開口する排気口37を有する。結合面36には排気管ユニット(図示されず)が結合される。第1天井面24aで閉じられる第1シリンダーボアは排気口37から第1距離L1で離れたシリンダー軸線Cを有する。第2天井面24bで閉じられる第2シリンダーボアは排気口37から第1距離L1よりも小さい第2距離L2で離れたシリンダー軸線Cを有する。距離の起点は結合面36内で排気口37を二等分する二等分線38に設定される。ここでは、第3天井面24cで閉じられる第3シリンダーボアは、第2シリンダーボアと同様に、排気口37から第2距離L2で離れたシリンダー軸線Cを有する。第4天井面24dでとじられる第4シリンダーボアは、第1シリンダーボアと同様に、排気口37から第1距離L1で離れたシリンダー軸線Cを有する。
【0023】
排気ポート32は、第1シリンダーボアのポート口26から排気口37に向かって個別に延びる第1個別ポート41aと、第2シリンダーボアのポート口26から排気口37に向かって個別に延びる第2個別ポート41bと、第1個別ポート41aおよび第2個別ポート41bに連結されて第1個別ポート41aおよび第2個別ポート41bを1つに合流させ、排気口37に向かって徐々に縮小する第1合流ポート42と、第3シリンダーボアのポート口26から排気口37に向かって個別に延びる第3個別ポート41cと、第4シリンダーボアのポート口26から排気口37に向かって個別に延びる第4個別ポート41dと、第3個別ポート41cおよび第4個別ポート41dに連結されて第3個別ポート41cおよび第4個別ポート41dを1つに合流させ、排気口37に向かって徐々に縮小する第2合流ポート43と、第1合流ポート42および第2合流ポート43を1つに合流させて排気口37に繋げる集合ポート44とを有する。各々の第1個別ポート41aは、平面視で、シリンダーブロック13に対するシリンダーヘッド15の合わせ面27よりも外側で合流する。すなわち、第1個別ポート41a同士を仕切る第1壁体45は、シリンダー軸線Cに平行な母線を有して合わせ面27の輪郭に接する仮想面46よりも外側に延びる。各々の第2個別ポート41bは、平面視で、シリンダーブロック13に対するシリンダーヘッド15の合わせ面27よりも外側で合流する。すなわち、第2個別ポート41b同士を仕切る第2壁体47は、シリンダー軸線Cに平行な母線を有して合わせ面27の輪郭に接する仮想面48よりも外側に延びる。第3シリンダーボアは、第2シリンダーボアと同様に排気口37から第2距離L2で離れたシリンダー軸線Cを有することから、第3個別ポート41c同士を仕切る第3壁体49は第2壁体47と等しい長さで延びる。ここでは、各々の第3個別ポート41cは、平面視で、シリンダーブロック13に対するシリンダーヘッド15の合わせ面27よりも外側で合流する。すなわち、第3壁体49は、シリンダー軸線Cに平行な母線を有して合わせ面27の輪郭に接する仮想面51よりも外側に延びる。第4シリンダーボアは、第1シリンダーボアと同様に排気口37から第1距離L1で離れたシリンダー軸線Cを有することから、第4個別ポート41d同士を仕切る第4壁体52は第1壁体45と等しい長さで延びる。ここでは、各々の第4個別ポート41dは、平面視で、シリンダーブロック13に対するシリンダーヘッド15の合わせ面27よりも外側で合流する。
【0024】
第2壁体47は、第1、第2、第3および第4シリンダーボアのシリンダー軸線Cを含む仮想平面に平行であって第1壁体45の先端に接する仮想平面FVよりも排気口37側に延びる。同様に、第3壁体49は、第1、第2、第3および第4シリンダーボアのシリンダー軸線Cを含む仮想平面に平行であって第4壁体52の先端に接する仮想平面FVよりも排気口37側に延びる。
【0025】
第2壁体47は、第1、第2、第3および第4シリンダーボアのシリンダー軸線Cを含む仮想平面に平行であって第1シリンダーボアの第1個別ポート41aと第2シリンダーボアの第2個別ポート41bとを仕切る壁体53の先端に接する仮想平面SVまで延びる。ただし、第2壁体47は仮想平面SVよりも排気口37側に延びてもよい。同様に、第3壁体49は、第1、第2、第3および第4シリンダーボアのシリンダー軸線Cを含む仮想平面に平行であって第4シリンダーボアの第4個別ポート41dと第3シリンダーボアの第3個別ポート41cとを仕切る壁体54の先端に接する仮想平面SVまで延びる。ただし、第3壁体49は仮想平面SVよりも排気口37側に延びてもよい。
【0026】
図4に示されるように、シリンダーヘッド15内のウオータージャケット28は、排気ポート32の上側でシリンダーヘッド15内に冷却水を流通させる第1流路28aと、排気ポート32の下側でシリンダーヘッド15内に冷却水を流通させる第2流路28bとを備える。ウオータージャケット28には例えばウオーターポンプ(図示されず)から冷却水が供給される。冷却水はウオータージャケット28から例えばラジエーターに流出する。排気ポート32内の排気の熱はシリンダーヘッド15の金属体に伝達され金属体から冷却水に伝達される。
【0027】
図5はシリンダーヘッド15の鋳造にあたって用いられる排気ポート32用の中子56を示す。中子56は、第1個別ポート41aの形成にあたってシリンダーヘッド15の金属体内に空間を区画する第1管形成部57と、第2個別ポート41bの形成にあたってシリンダーヘッド15の金属体内に空間を区画する第2管形成部58と、第3個別ポート41cの形成にあたってシリンダーヘッド15の金属体内に空間を区画する第3管形成部59と、第4個別ポート41dの形成にあたってシリンダーヘッド15の金属体内に空間を区画する第4管形成部61とを有する。第1管形成部57、第2管形成部58、第3管形成部59および第4管形成部61は湾曲しながら延びる棒形状に形成される。
【0028】
中子56は、第1合流ポート42の形成にあたってシリンダーヘッド15の金属体内に空間を区画する第1塊部62と、第2合流ポート43の形成にあたってシリンダーヘッド15の金属体内に空間を区画する第2塊部63と集合ポート44の形成にあたってシリンダーヘッド15の金属体内に空間を区画する第3塊部64とを有する。第1管形成部57および第2管形成部58は第1塊部62に合流する。第3管形成部59および第4管形成部61は第2塊部63に合流する。第1塊部62および第2塊部63は第3塊部64に合流する。第3塊部64には、シリンダーヘッド15の結合面36に合わせ込まれる端面65が区画される。端面65はシリンダーヘッド15の結合面36に排気口37を区画する。
【0029】
第1管形成部57同士の間に金属体で第1壁体45は確立される。第2管形成部58同士の間に金属体で第2壁体47は確立される。第3管形成部59同士の間に金属体で第3壁体49は確立される。第4管形成部61同士の間に金属体で第4壁体52は確立される。隣接する第1管形成部57および第2管形成部58の間には金属体で壁体53が確立される。隣接する第3管形成部59および第4管形成部61の間には金属体で壁体54が確立される。
【0030】
第2管形成部58同士の合流位置66は、第1、第2、第3および第4シリンダーボアのシリンダー軸線Cを含む仮想平面に平行であって第1管形成部57同士の合流位置67に接する仮想平面FVよりも端面65側に位置する。第3管形成部59同士の合流位置68は、第1、第2、第3および第4シリンダーボアのシリンダー軸線Cを含む仮想平面に平行であって第4管形成部61同士の合流位置に接する仮想平面FVよりも端面65側に位置する。
【0031】
第2管形成部58同士の合流位置66は、第1、第2、第3および第4シリンダーボアのシリンダー軸線Cを含む仮想平面に平行であって隣接する第1管形成部57および第2管形成部58の合流位置67に接する仮想平面SV内に位置する。第3管形成部59同士の合流位置68は、第1、第2、第3および第4シリンダーボアのシリンダー軸線Cを含む仮想平面に平行であって隣接する第3管形成部59および第4管形成部61の合流位置72に接する仮想平面SV内に位置する。ただし、前述の第2壁体47および第3壁体49と同様に、合流位置66、68は仮想平面SVよりも端面65側に位置してもよい。
【0032】
本実施形態に係るシリンダーヘッド15では、シリンダーごとに2つの個別ポート41a、41b、41c、41dは燃焼室18から個別に延びて各シリンダーごとに合流するとともに、隣接する各シリンダーごとの排気ポート32も合流して排気口37に繋がり、ポート口26から個別に延びる各排気ポート41a、41b、41c、41d間を仕切る壁体45,47,49,52の先端と、隣接する各シリンダーごとの排気ポート32間を仕切る壁体53,54の先端とは、何れも平面視で、シリンダーブロック13に対するシリンダーヘッド15の合わせ面27よりも外側にある。排気に接する排気ポート32の表面積は増大する。排気ポート32内の排気からシリンダーヘッド15の金属体に熱は伝達されることから、表面積の増大に応じて効果的に排気は冷却されることができる。
【0033】
排気ポート32では、ポート口26から排気口37まで通路長さが長いほど、排気に接する表面積が増加し、排気の冷却効果は高まる。排気ポート32が合流するごとに排気に接する表面積は減少する。冷却効果は弱まる。直列4つのうち外側の第1シリンダーボアおよび第4シリンダーボアに対応するポート口26から排気口37までの通路長さは内側の第2シリンダーボアおよび第3シリンダーボアに対応するポート口26から排気口37までの通路長さよりも長いことから、第2シリンダーボアおよび第3シリンダーボアに対応して個別ポート41b、41c同士を仕切る第2壁体47および第3壁体49が第1シリンダーボアおよび第4シリンダーボアに対応して個別ポート41a、41b同士を仕切る第1壁体45および第4壁体52に比べて長いと、第1および第4シリンダーボアに対応する排気ポート41a、41dおよび第2および第3シリンダーボアに対応する排気ポート41b、41cで冷却効果はバランスすることができる。シリンダーごとの排気温度のばらつきは縮小されることができる。排気温度が特定の温度に収斂することで触媒の熱劣化を防止することができる。排気ガスを適正に冷却することができる。
【0034】
本実施形態では、直列4つのうち内側の第2シリンダーボアおよび第3シリンダーボアに対応して個別ポート41b、41c同士を仕切る第2壁体47および第3壁体49は、第1、第2、第3および第4シリンダーボアのシリンダー軸線Cを含む仮想平面に平行であって、隣接する第1個別ポート41aおよび第2個別ポート41bを仕切る壁体53並びに隣接する第3個別ポート41cおよび第4個別ポート41dを仕切る壁体54の先端に接する仮想平面SVまで延びる。こうして壁体53、54の長さが調整されることで、直列4つのうち内側の第2シリンダーボアおよび第3シリンダーボアに対応する排気ポート32の冷却効果は外側の第1シリンダーボアおよび第4シリンダーボアに対応する排気ポート32の冷却効果にバランスすることができる。シリンダーごとの排気温度のばらつきは縮小されることができる。排気温度が特定の温度に収斂することで触媒の熱劣化を防止することができる。排気ガスを適正に冷却することができる。なお、冷却効果のバランスにあたって第2壁体47および第3壁体49は仮想平面SVよりも排気口37に延びてもよい。
【符号の説明】
【0035】
11…多気筒内燃機関、12…第1または第2シリンダー(第1または第2シリンダーボアおよび第4または第3シリンダーボア)、13…シリンダーブロック、15…シリンダーヘッド、18…燃焼室、24a…第1天井面、24b…第2天井面、26…(排気ポートの)ポート口、27…合わせ面、32…排気ポート、37…排気口、41a…排気ポート(第1個別ポート)、41b…排気ポート(第2個別ポート)、45…壁体(第1壁体)、47…壁体(第2壁体)、53…壁体、C…シリンダー軸線、FV…仮想平面、L1…第1距離、L2…第2距離、SV…仮想平面。
図1
図2
図3
図4
図5