(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも一つの反応器(11)の前記製造能力値が、前記測定器(14)の内の一つを用いて検出された反応器へのリサイクリング流量と転化因子との比として算出される、請求項1に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
以下の記載では、単純化のためであって限定目的ではなく、EPR及びEPDMゴムについての言及がなされる。
【0003】
周知の通り、EPR及びEPDMゴムは、3つの異なる工程、即ち、製造プラントにおける反応区分、ストリップ区分及び仕上区分にてそれぞれ行われる、反応工程、ストリップ工程及び仕上工程に分けることができる複雑な製造プロセスを用いて製造される。
【0004】
反応工程では、反応器に二つの試薬、第一のモノマー及び第二のモノマーが供給され、場合によっては三つ目の試薬、第三のモノマー又はいわゆるジエンが供給される。試薬に加え、触媒、助触媒、活性剤及び連鎖停止剤が反応器内に主として導入される。
【0005】
次のストリップ工程は未反応モノマーを回収する目的を有し、内部に蒸気が注入される(一つの)高圧ストリッパー及び二つの低圧ストリッパーを含むストリップ区分によって成し遂げられる。
【0006】
最後の仕上工程では、生成物、即ち、EPR及びEPDMゴムが押出成形され、乾燥され、そして包装用のベール状に加圧される。
【0007】
EPR及びEPDMゴムの製造プロセスについては当業者に知られているので更なる説明はしない。
【0008】
いずれの場合においても、このプロセスを実施する製造プラントは、単一の試薬を投入する複数の投入デバイス、測定計装機器及び当業者に知られた装置を含む。
【0009】
この種の製造プラントは、一般に、プラントのデバイス、機器及び装置を制御及びモニターすることができる制御システムによって一元的に制御される。この制御システムは、複数のアクチュエータを用いてプラントのデバイス、機器及び装置をモニター及び制御するようにプログラムされ且つ構成された、一つ以上の電子処理及び制御ユニット、例えば、一つ以上のマイクロプロセッサーを含む。製造プロセスは、一般に、異なる試薬の投入、種々の工程における物理的条件等を表した一連の制御パラメータに基づく。これらのパラメータは、特定の製造仕様が確実に満たされるように設計されたプログラム又はレシピで提供される。これらのパラメータの設定は、プラントのデバイス、機器及び装置の調節及び制御によって成し遂げられる。とりわけ、一連の所望の要求を満たした生成物(製品)を得ることを確実にするために、例えば、種々の試薬の投入の調節が遂行される。これらの調節は、定期的に出口で取り出され実験室で分析された、生成物サンプルについて行われた実験分析の結果に基づき;仮にこれらのサンプルが所望の要求又は品質仕様を満たさなければ、操作者は、試行してこれらの仕様に入るような生成物を得るために投入パラメータを修正する。これらの修正は、従って、操作者自身の経験に加え、実験分析の結果、過去の製造データに基づいて決定される。それは、従って、電子処理及び制御ユニットを用いて一連の制御又は操作パラメータを設定することによって行われる、経験的な制御である。この種の制御には種々の欠点がある。
【0010】
第一の欠点は、実際上、操作者の判断および主観的な経験に基づいた調節の非決定的な性質にある。
【0011】
第二の欠点は、調節を成し遂げる必要性が、最終又は中間生成物について直接的にリアルタイムで行われるのではなく、定期的に行われる実験分析の結果として得られるデータの観察に基づいているという事実にある。
【0012】
所望の仕様内の生成物を得る前に多くの細かい調節が必要となり得ること,及び審査中の製造プラントが連続的に稼働することを考慮すると、プラントの製造効率が、製造プロセスの制御方法論の有効性によってどのように大きく影響される可能性があるかを理解することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に関し、これは、全体として10で表示された、ポリマーの連続製造プラントを示す。
【0019】
本明細書では、ポリマーの製造方法における工程については、現在の技術水準で知られているため説明しない。
【0020】
プラント10は、少なくとも第一のモノマー及び第二のモノマーが供給された少なくとも一つの反応器11を含む反応区分と、第一の高圧ストリッパー12、第二の低圧ストリッパー17及び第三の低圧ストリッパー18を含むストリップ区分と、ファイン生成物(fine products)をリサイクルするための少なくとも一つの容器13、プラント10の稼働状態に対する複数の測定装置14並びに第一のストリッパーに供給される油分の流量、少なくとも一つの反応器11に供給される連鎖停止剤の流量及び反応器11のサーモスタット制御回路のベント流量を含む複数の制御変数に基づいて少なくとも一つの中央電子処理及び制御ユニット16によって駆動することができる複数の分散された制御デバイス15を含む制御システムを含む仕上区分とを含む。
【0021】
本明細書では、高圧とは16〜18bargの範囲のストリップ圧力を意味する。
【0022】
低圧とは4.5〜6bargの範囲のストリップ圧力を意味する。
【0023】
第二のストリッパー17は第一のストリッパー12にカスケード接続されており、第三のストリッパー18は第二のストリッパー17にカスケード接続されている。
【0024】
分散された制御デバイス15は、例えば、プラントにおける特定区分への試薬の供給量を変えることができる投入デバイス又はバルブである。
【0025】
これより、単純化のためであって限定目的ではなく、EPRゴム及びEPDRゴムについて言及をする。
【0026】
特に、EPRゴムの製造には、第一のモノマー、典型的にはエチレンと、第二のモノマー、典型的にはプロピレンとが反応器に供給され;EPDRゴムの製造には、第三のモノマー、典型的にはジエンがこれらのモノマーに添加される。
【0027】
単純化のため、これより、第一のモノマーとしてのエチレン、第二のモノマーとしてのプロピレン及び第三のモノマーとしてのジエンについて言及する。エチレン、プロピレン及びジエンに関して述べられるすべての考察は、それぞれ第一、第二及び第三のモノマーに関して一般化可能であると考えることができる。
【0028】
少なくとも一つの中央電子処理及び制御ユニット16は、以下に記載の本発明に従った制御方法における工程を実施するように構成されたソフトウェア手段30を有利に含む。
【0029】
特に、このソフトウェア手段30は、中央電子処理及び制御ユニット16自体のメモリ内にダウンロードすることができ、本発明に従った方法における工程を実施するためのソフトウェアコード部分を含む、コンピュータ用のプログラム又はプログラム一式である。
【0030】
制御方法は、複数の計算モジュールによって算出される複数の変数及び制御指標に基づいてプラント10を制御することを有利に伴う。これらの計算モジュールは、主に、プラント10の制御に寄与する計算命令の群である。計算モジュールは、必ずしも、予め設定された順序に従って互いに連続して実行される必要はないが;ある一つの計算モジュールの計算命令が、他の計算モジュールの計算命令の結果に依存することが可能である。この後者の場合では、実際には、ある一つの計算モジュールの実施が、一つ以上の“予備の”計算モジュールの先の実施に依存することが可能である。
【0031】
いずれの場合も、制御方法は、第一に、レシピパラメータ、実験分析の結果及びデータベース40に格納された既定義係数を含む、複数のデータを集めることと、測定装置によって明らかとなったデータを集めることとを提供する。
【0032】
レシピパラメータは予め定義され、プラントで得られる標準的な操作条件(稼働状態)又は製造仕様を満たす生成物(製品)を得るために必要な試薬の投入量に関連する。一方で、実験分析の結果は、予め設定された時間間隔でプラントの出口において集められたサンプル生成物について行われる分析に関連する。既定義係数は、変数の算出に使用されるパラメータを意味する。
【0033】
測定装置は、例えば、この種のプラントにおいて通常使用されるクロマトグラフ及び他の検出器からなることができる。
【0034】
本発明に従った制御方法は、レシピパラメータ、実験分析結果、既定義係数及び測定装置で検出されたデータに基づいて−上述した複数の計算モジュールの第一の計算モジュール20を用いて−少なくとも一つの反応器11の製造能力値が決定される工程を含む。
【0035】
少なくとも一つの反応器11の製造能力値は、好ましくは、測定器の内の一つを用いて検出された反応器へのリサイクリング流量と転化因子Fとの比として算出される。
【0036】
リサイクリング流量は、“コリオリ式”質量型の測定機器を用いて測定され、とりわけ、この機器を通じて体積量(m
3/h)及び密度(kg/h)を取得することができる。
【0037】
反応器11の能力は製造された乾燥ゴムt/hで表されるのに対し、反応器へのリサイクリング流量はm
3/hで表される。本発明の好適な実施形態では、第一のモジュール20は:
−反応器11に供給されるプロピレンの温度に関連したプロピレン密度;
−仕上能力;
−転化因子F;
−反応器の能力;
−l/hで表された助触媒の流量(COCAT)の設定点(SP_COCAT);
−l/hで表された活性剤の流量(ATT)の設定点(SP_ATT);
−ゴムkg/触媒(CAST)gで表された収率;
−全固形分;
−第二のモノマーがポリプロピレンであり、流量の設定点がSP_プロピレンで表示される場合における;kg/hで表された、反応器11に供給される第二のモノマーの流量の設定点;
を算出するように構成される。
【0038】
プロセスにおいて使用される触媒、助触媒、活性剤は、既知のチーグラー・ナッタ触媒によって提供されるものの内である。
【0039】
全固形分は、反応器内の混合物の全重量に対するゴムの重量パーセントである。
【0040】
転化因子Fの算出は、係数が、プラント経験並びに、プロピレン温度、リサイクリング温度、全固形分及び反応器11の気相内における希釈剤のモルパーセントといった特定の反応変数に連動している多項式関数に基づく。転化因子の算出に使用される係数はレシピパラメータであり、良好な結果を得るために、それらは、非常に多くの生成物を観察しながら、定期的に更新されなければならず、好ましくはプラントの立上げ後又はラインの合同(congruous)稼働期間後6か月毎に更新される。
【0041】
仕上能力は、製造、即ち、ポリマーベールの数とレシピパラメータK
finesとの比として算出される。
【0042】
K
finesは、ポリマー各種に対して生成するファイン廃棄物(fine waste)のパーセントを表し;ファイン廃棄物は反応器によって生成されるもののベールの仕上能力において厳密に測定されないので、このパーセントは十分な考慮の上に維持(held)されなければならない。
【0043】
反応における製造及び仕上における製造間にあり得る不一致を理解するために、仕上能力と反応器の能力との差を用いることができる。
【0044】
COCATの流量の設定点SP_COCATは:
SP_COCAT=(RAPP_COCAT_CAT*(MW_COCAT/MW_CAT)*P_CAT/1000*DENS_CAT*CONC_CAT/100)*1000/DENS_COCAT
として算出され、
ここで:
−RAPP_COCAT_CATは、COCAT及びCATの間のモル比を表し、当該プラントにおけるナッタ触媒の実験法に由来し、且つ、生成物の機械的特徴及び組成に関する制御システムによって修正することができるレシピパラメータであり;
−CONC_CATは、油分中のCATの重量パーセント濃度を表すレシピパラメータであり;
−MW_COCATは、COCATの分子量を表す既定義係数であり;
−MW_CATは、CATの分子量を表す既定義係数であり;
−P_CATは、l/hで表された、検出されたCATの流量であり;
−DENS_CATは、kg/m
3で表されたCATの密度を表す既定義係数であり;
−DENS_COCATは、kg/m
3で表されたCOCATの密度を表す既定義係数である。
【0045】
ATTの流量のSP_ATT設定点は以下の通り算出され:
SP_ATT=(RAPP_ATT_CAT*P_CAT/1000*DENS_CAT*CONC_CAT/100)*1000/DENS_ATT;
ここで:
−RAPP_ATT_CATは、ATT及びCATの間の重量比を表すレシピパラメータであり;
−CONC_CATは、油分中のCATの重量パーセント濃度を表すレシピパラメータであり;
−P_CATは、l/hで表されたCATの流量であり;
−DENS_CATは、kg/m
3で表されたCATの密度を表す既定義係数であり;
−DENS_ATTは、kg/m
3で表されたATTの密度を表す既定義係数である。
【0046】
収率は、反応効率を示すために都合良く使用され、以下の通り算出される:
収率=反応器の能力*1000/(P_CAT/1000*DENS_CAT*CONC_CAT/100*1000*(MW_CATM/MW_CAT))
ここで:
−CONC_CATは、油分中のCATの重量パーセント濃度を表すレシピパラメータであり;
−MW_CATMは、金属CATの分子量を表す既定義係数であり;
−MW_CATは、CATの分子量を表す既定義係数であり;
−P_CATは、l/hで表された、検出されたCATの流量であり;
−DENS_CATは、kg/m
3で表されたCATの密度を表す既定義係数である。
【0047】
反応器に供給されるプロピレンの設定点は、全固形分の算出値及びレシピパラメータである全固形分の目標値に基づいて決定される。プロピレン設定点の算出において、触媒の流量は極わずかであるため、好ましくは考慮されない。とりわけ、EPDRゴムを製造する場合においては、プロピレン設定点SP_プロピレンは以下の通り算出され:
SP_プロピレン=反応器の製造能力*1000/TOTSOL_目標/100−ETHYLENE−P_DIENE/1000*DENS_DIENE−プロピレンフラックス;
ここで:
−TOTSOL_目標は、反応器内の混合物の全重量に対するゴムの重量パーセントを表すレシピパラメータであり;
−P_DIENEは、l/hで表された、検出された反応器に供給されるジエンの流量であり;
−ETHYLENEは、kg/hで表された、検出された反応器に供給されるエチレンの流量であり;
−プロピレンフラックスは、kg/hで表された、検出された反応器に供給されるプロピレンのフラックス流量であり;
−DENS_DIENEは、kg/m
3で表されたジエンの密度を表す既定義係数である。
【0048】
制御方法はまた、第一の計算モジュール20において決定された反応器の製造能力値、レシピパラメータ、実験分析結果、既定義係数及び測定装置で測定されたデータに基づいて、上述した複数の計算モジュールの第二の計算モジュール21を用いて、少なくとも一つの反応器11内、第一のストリッパー12内及びファイン生成物用少なくとも一つのリサイクリング容器13内における、ポリマーの濃度が決定される工程も含む。
【0049】
この第二の計算モジュール21は、好ましくは、第二の17及び第三のストリッパー18内部のポリマーの濃度も決定するように構成される。この算出は、各器具における材料及びエネルギーのバランスに基づく。
【0050】
反応器11内のポリマー濃度は、高濃度に起因した目詰まりを避けるために重要である。ストリップ区分におけるポリマー濃度は、ストリップ効率を最大化するために、そして、操作者が高濃度に起因した詰まりを避けて、低濃度の結果としての低負荷で操作することによって仕上機械の損傷を防止するのに役立つので、極めて重要である。ファイン生成物用リサイクリング容器13内のポリマー濃度は、仕上からリサイクルされた水中のファイン生成物のリサイクルについて考慮するために使用される。
【0051】
この第二の計算モジュール21は、好ましくは、仕上からリサイクルされた、或いは、ストリッパー内のポリマー濃度を一定に保つために再充填又は補給された水の設定点を算出するようにも構成される。
【0052】
非油展グレードの製造中は、仕上区分から来る水は高圧ストリッパーへと完全にリサイクルされる。
【0053】
油展グレードの製造中は、仕上区分から来る水は、ゴム中での油分の最適な分散を得るために、目標ポリマー濃度と呼ばれるそれぞれのレシピパラメータに等しいポリマー濃度と、目標滞留時間と呼ばれるそれぞれのレシピパラメータに等しい装置内における滞留時間とを有するように、部分的には第一の高圧ストリッパー12へとリサイクルされ、部分的には第二の低圧ストリッパー17へとリサイクルされる。
【0054】
リサイクルされた水は通常は第三の低圧ストリッパー18へは送られないが、変則的な場合においては、操作者が、リサイクルされた水を第三のストリッパー18へと送るためのこの操作を選択することができる。
【0055】
制御方法はまた、第一の計算モジュール20によって決定された少なくとも一つの反応器11の製造能力値、第二の計算モジュール20によって決定された第一のストリッパー12内のポリマー濃度値、レシピパラメータ、実験分析結果、既定義係数及び測定装置で測定されたデータに基づいて、上述した複数の計算モジュールの第三の計算モジュール22を用いて、油分の目標重量パーセント分率と呼ばれるそれぞれのレシピパラメータに等しい油分の重量パーセント分率を得るための、第二のストリッパー17に供給するための油分の流量を決定するための工程も有利に含む。
【0056】
油展グレード用に油分が第二の低圧ストリッパー17内に供給され、グレード自体との関係で、ホワイト油又はイエロー油(yellow oil)を供給してもよい。製造プラントには、ホワイト油の流量制御装置又はイエロー油のそれを選択する二つの選別機があり;中央制御ユニットによってレシピパラメータを通じて選択が管理される。第二の低圧ストリッパー17内での油分の流量は、以下の式を用いて算出される:
油分の流量の設定点=(第一の高圧ストリッパー12内のポリマー濃度*第一の高圧ストリッパー12を出る液体量*油分の目標重量パーセント分率)/(100−油分の目標重量パーセント分率)/油分の密度;
ここで、
−第一の高圧ストリッパー12内のポリマー濃度及び第一の高圧ストリッパー12を出る液体量は、第二の計算モジュール21において算出され;特に、“第一の高圧ストリッパー12を出る液体量”とは、第一のストリッパー12を出る全流量を、算出されたその中のポリマー濃度で掛けた積を意味し、ポリマーg/スラリーlで表され;
−油分の密度は、kg/m
3で表された油分の密度を表す既定義係数であり;
−仕上後の生成物についての油分の目標重量パーセント分率は、レシピパラメータである。
【0057】
第二の計算モジュール21は、油分の目標濃度と実験分析データから生じる濃度との間の油分の濃度の差を引き続き制御し、例えば、線形則であり得る所定の力の法則に従って、仕上後の生成物に対する油分の目標重量パーセント分率に達するのに必要な油分量を算出する。この量が所定の閾値よりも高いことが判明したならば、制御方法は、添加されるべき量を示して、操作者が油分を迅速に添加するよう規定する。もし油分が過剰であれば、油分の目標重量パーセント分率を取り戻すために、ストリッパーへの油分の流量の停止時間が、好ましくは分単位で、算出される。
【0058】
本発明に従った制御方法はまた、第一の計算モジュール20によって決定された少なくとも一つの反応器11の製造能力値、レシピパラメータ、実験分析結果、及び既定義係数並びに測定装置から得られたデータに基づいて、上述した複数の計算モジュールの第四の計算モジュール23を用いて、ポリマーの目標粘度と呼ばれるそれぞれのレシピパラメータに等しいポリマーの実質的に一定の粘性値と、TERMの目標パーセントモル分率と呼ばれるそれぞれのレシピパラメータに等しいTERMのモルパーセント分率値とを得るための、少なくとも一つの反応器11に供給するための連鎖停止剤(TERM)の流量を決定することにも関与する。
【0059】
第四の計算モジュール23は:
−Nm
3/hで表された、反応器11に供給される連鎖停止剤(TERM)の流量の設定点SP_TERM;
−Nm
3/hで表された、反応器11のサーモスタット回路からのベント流量の設定点SP_PURGE;
を算出するように構成される。
【0060】
TERMの目標パーセントモル分率は、とりわけ、ムーニー粘度分析値に基づいて決定される。SP_TERM設定点の算出もまた、収率の変動、TERMのモルパーセント分率のクロマトグラフ測定における非線形外挿の傾向及びオンライン粘度推定に依存する。
【0061】
とりわけ、ポリマーの収率は、反応器11内で形成されている鎖の長さの指標である。収率における変動は、従って、ムーニー粘度の変動と相関する重量平均分子量の変動を防止するために制御システムによって使用される。
【0062】
ムーニー粘度の分析データは、定期的に、例えば、2〜4時間毎に中央電子処理及び制御ユニット16へと送信されるが、ある実験測定と他の実験測定との合間においては、制御システムは、統計データ及び相関性に基づいたニューラルネットワークを通じて、粘度のオンライン予測推定を成し遂げる。上述したニューラルネットワークはプロセスから学び、同様の定期的に獲得された分析データを用いて再校正される。
【0063】
もし気相中の連鎖停止剤の成分がそれぞれの連鎖停止剤濃度レシピパラメータによって予測されたものに対して高いならば、停止剤自体が反応器のサーモスタット回路から通気されなければならない。
【0064】
設定点SP_PURGEは、反応器の気相中における連鎖停止剤の過剰分及び気相のリサイクリング流量を考慮して算出される。
【0065】
複数の制御変数は、好ましくは、少なくとも一つの反応器11に供給される第三のモノマーの流量を含み、該方法は、第一の計算モジュール20において決定された少なくとも一つの反応器11の製造能力値、レシピパラメータ、実験分析結果、既定義係数及び測定装置で測定されたデータに基づいて、上述した複数の計算モジュールの第五の計算モジュール24を用いて、第三のモノマーの目標濃度と呼ばれるレシピパラメータに等しい第三のモノマーの濃度を得るための、第三のモノマーの流量が決定される工程を含む。
【0066】
反応器11に供給される第三のジエンモノマーの流量は、以下の単純化された式を用いて算出される:
ジエンの流量の設定点=(反応器の能力*ジエンの目標濃度)/(ジエンの転化*ジエンの純度)
ここで:
−ジエンの目標濃度及びジエンの純度はレシピパラメータであり;
−ジエンの転化は既定義係数である。
【0067】
ジエンの転化は完全な化学量論的転化ではなく、実際上ポリマーに結合した、供給されたジエンの量を示すものであり;このパラメータを算出するためには、二回の連続したサンプリング間の期間に反応器及び第一のストリッパーを通過したポリマーの量を把握しなければならない。
【0068】
ジエンの転化は、以下の式:
−新しいジエンの転化=(ジエンの分析濃度/ジエンの目標濃度)*以前のジエンの転化
を通じた実験分析の結果を使用して、中央電子処理及び制御ユニットによって周期的に更新される。実験分析無しにこれをもってプラントを開始する最初のジエンの転化は、最適な実行の統計的処理、オンラインで行われ且つ適切なデータベースに格納される処理の結果である。
【0069】
複数の制御変数は、好ましくは、第一のストリッパー12に供給される抗パッキング剤(antipacking agent)の流量を含み、制御方法は、第一の計算モジュール20において決定された少なくとも一つの反応器11の製造能力値、レシピパラメータ、実験分析結果、既定義係数及び測定装置で測定されたデータに基づいて、上述した複数の計算モジュールの第六の計算モジュール25を用いて、抗パッキング剤の目標重量パーセント分率と呼ばれるそれぞれのレシピパラメータに等しい抗パッキング剤の重量パーセント分率を得るための、抗パッキング剤の流量を決定する工程を含む。
【0070】
抗パッキング剤は、ゴム凝集体の形成及びストリッパーの目詰まりを避けるために第一のストリッパー内に供給される。第一のストリッパー12に供給される抗パッキング剤ANTISTICKの流量は、以下の単純化された式:
ANTISTICの流量の設定点=(油分を含む反応器の製造能力*ANTISTICKの目標パーセント分率)/(ANTISTICKの濃度)
を用いて算出され、
ここで:
−油分を含む少なくとも一つの反応器11の製造能力は、製造された乾燥ゴム+ストリップ区分において添加された油分のt/hで表され、第一の計算モジュール20において算出される。
−ANTISTICKの濃度は、抗パッキング剤の調製次第で1%又は1.5%に等しい既定義係数であり、プロセス中に抗パッキング剤を運ぶ溶液中の抗パッキング剤g/lで希釈度を示す。
−ANTISTICKの目標重量パーセント分率は、重量ppmで表されたレシピパラメータである。
【0071】
更には、グレードの変更といった非定常状態を管理するために、及びANTISTICKの目標重量パーセント分率に迅速に到達させるために、制御方法は、操作者がANTISTICKの目標重量パーセント分率を変更できるように規定する。加えて、電子的中央処理及び制御ユニット16は、起こり得る目詰まりに対する迅速な応答を得るために、特定のセンサから第一のストリッパー12の撹拌器で吸収された電力(power)を表す信号を受け取るように構成される。
【0072】
第六の計算モジュール25の結果を精査するために、ANTISTICの設定点もまた、現在のプラント経験を踏まえた“力の”因子に基づいて算出される。
【0073】
この力の係数は、電力の吸収が特定の閾値を上回る場合にのみ適用され、電力の吸収が増大している場合には高くなる。
【0074】
複数の制御変数は、好ましくは、少なくとも一つの反応器11の供給タンクに供給する、希釈剤、例えば、アルカンとの混合物中の、第二のモノマー、例えば、プロピレンの流量を含み、制御方法は、第一の計算モジュール20において決定された少なくとも一つの反応器11の製造能力値、レシピパラメータ、実験分析結果、及び既定義係数並びに測定装置で測定されたデータに基づいて、上述した複数の計算モジュールの第七の計算モジュール26を用いて、希釈剤の目標濃度と呼ばれるそれぞれのレシピパラメータに等しい希釈剤の濃度を得るための、第二のモノマーの流量を決定する工程を含む。
【0075】
希釈剤と混合された第二のプロピレンモノマーの流量は、以下の式:
希釈剤と混合されたプロピレンの流量の設定点=反応器の製造能力*希釈剤の目標濃度)/(プロピレンの濃度)
を用いて算出され、
ここで:
−プロピレンの濃度は、通常は97%に等しい、プロピレンの純度に関連した既定義係数であり;
−希釈剤の目標濃度である。
【0076】
更には、希釈剤と混合されたプロピレンの流量の設定点の算出には、C3カラムからのプロピレン及び希釈剤の漏れ並びに反応器の気相中における希釈剤の濃度偏差が考慮される。
【0077】
上述の単純化された式は、(希釈剤の目標濃度)/(ガスクロマトグラフで検出された、希釈剤の濃度+プロピレンの濃度)の比の指数関数である係数で掛け算される。
【0078】
複数の制御変数は、好ましくは、第一のストリッパー12に供給するための抗酸化剤の流量を含み、制御方法は、第一の計算モジュール20において決定された少なくとも一つの反応器11の製造能力値、レシピパラメータ、実験分析結果、及び既定義係数並びに測定装置で測定されたデータに基づいて、上述した複数の計算モジュールの第八の計算モジュール27を用いて、抗酸化剤の目標重量パーセント分率と呼ばれるそれぞれのレシピパラメータに等しい抗酸化剤の重量パーセント分率を得るための、抗酸化剤の流量を決定する工程を含む。
【0079】
保管中のゴムの酸化を防止するために抗酸化剤ANTIOXが第一のストリッパー12に供給される。第一のストリッパー12に供給される抗酸化剤の流量は以下の式:
ANTIOXの流量の設定点=(反応器の能力*ANTIOXの目標重量パーセント分率)/(ANTIOXの濃度)
を用いて算出され、
ここで:
−ANTIOXの濃度は、通常は50%に等しい既定義係数であり、g/lで表された、プロセス中に抗酸化剤を運ぶ溶液中の抗酸化剤の希釈度を示し;
−ANTIOXの目標重量パーセント分率はレシピパラメータであり、製造されるポリマー中の重量パーセントを示す。
【0080】
更には、グレードの変更といった非定常状態を管理するために、及びANTIOXの目標含有量に迅速に到達させるために、制御方法は、ANTIOXの目標濃度を変更する機会を操作者に与える。
【0081】
算出結果の精査を可能にするために、ANTIOXの設定点は、現在のプラント経験を踏まえた倍数的な“力の”及び“移動”因子を考慮して算出される。
【0082】
複数の制御変数は、装置が腐食して塩素が廃水や排気筒内に排出されるリスクを低減するために、好ましくは、第一のストリッパー12に供給するための、例えば、ナトリウム化合物などのpH調整剤の流量を含む。この場合、該方法は、レシピパラメータ、実験分析結果、及び既定義係数並びに測定装置で測定されたデータに基づいて、上述した複数の計算モジュールの第九の計算モジュール28を用いて、目標pHと呼ばれるそれぞれのレシピパラメータに等しいpHを有するストリップ浴を得るための、pH調整剤の流量を決定する工程を含む。
【0083】
ストリップ浴のpHを一定に保つために、pH調整剤が第一の高圧ストリッパーに供給される。触媒残留物の酸性度を中和するためにpH調整剤が供給される。第一の高圧ストリッパー12に供給される、l/hでの、pH調整剤の流量は、以下の式:
pH調整剤の流量の設定点=(COCAT/MW_COCAT*MW_pH調整剤*DENS_COCAT+P_ATT/MW_ATT*MW_pH調整剤*DENS_ATT+K_cond_water*cond_water)/(CONC_pH調整剤)*100/DENS_pH調整剤
を用いて算出され、
ここで:
−COCATは、l/hで表されるCOCATの流れの流量を示し;
−MW_COCATは、COCATの分子量を表す既定義係数であり;
−DENS_COCATは、kg/m
3で表されるCOCATの密度を表す既定義係数であり;
−P_ATTは、l/hで表される、検出されたATTの流量を表し;
−MW_ATTは、ATTの分子量を表す既定義係数であり;
−DENS_ATTは、kg/m
3で表されるATTの密度を表す既定義係数であり;
−DENS_pH調整剤は、kg/m
3で表されるpH調整剤の密度を表す既定義係数であり;
−CONC_pH調整剤は、水溶液中におけるpH調整剤の濃度を表す既定義係数であり;
−MW_pH調整剤は、MW_pH調整剤の分子量を表す既定義係数であり;
−K_cond_waterは、pH調整剤の濃度を表す既定義係数であり、g/lでのpOHの式に関連し;
−cond_waterは、ストリッパーに供給される凝縮蒸気、及び、仕上からの水のリサイクリングシステムに関して問題がある場合は仕上区分からの水を推定する既定義係数である。
【0084】
算出結果の精査を可能にするために、最終的なナトリウム化合物の設定点が、分析データとレシピ目標との差に基づいて、現在のプラント経験を踏まえた倍数的な“力の”及び“移動”因子を考慮して算出される。
【0085】
複数の制御変数は、好ましくは、少なくとも一つの反応器11に供給するための第一のモノマーの流量を含み、制御方法は、レシピパラメータ、実験分析結果、及び既定義係数並びに測定装置で測定されたデータに基づいて、上述した複数の計算モジュールの第十の計算モジュール29を用いて、使用される触媒種に由来するモノマー間のモル比を得るための、第一のモノマーの流量を決定する工程を含む。
【0086】
更には、非定常状態を管理するために、及び計算モジュールの目標に迅速に到達させるために、制御方法は、操作者がこれらの目標パラメータを変更できるように規定する。
【0087】
本発明の主題である制御システム及び制御方法の特徴は、相関的な優位性が明らかであるので、上述の記載から明白である。
【0088】
本発明に従った制御方法及びシステムにより、製造仕様内でのポリマーの製造を確実なものとする、自動的且つリアルタイムでの調整を行うことが可能となる。調整は決定論的であり、それ故に、繰返し可能であり、レシピパラメータ及び理論データに基づくのみでなく、実験分析結果にも基づいている。
【0089】
これらの調整により、プラント製造は製造キャンペーンの季節性からは独立したものとなる。
【0090】
最後に、このように着想された制御システム及び方法は、明らかに、全てが本発明に含まれる、多数の修正及び変形を受けることが可能であり;更には、全ての詳細は技術的に同等な要素で置き換えることが可能である。実のところ、使用される材料は、寸法と同様に、技術的要求に従って変更することができる。