特許第6971312号(P6971312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971312
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】運転支援フロントガラス
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20211111BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20211111BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   B60R11/02 Z
   C03C27/12 N
   B60J1/00 H
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-520569(P2019-520569)
(86)(22)【出願日】2017年10月17日
(65)【公表番号】特表2019-533603(P2019-533603A)
(43)【公表日】2019年11月21日
(86)【国際出願番号】FR2017052847
(87)【国際公開番号】WO2018073528
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2020年8月19日
(31)【優先権主張番号】1660036
(32)【優先日】2016年10月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】カプラン,バンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】シュマールブーフ,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ドロステ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】フェルツ,クリスティアン
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102008014089(DE,A1)
【文献】 特開2016−168996(JP,A)
【文献】 特開2004−138436(JP,A)
【文献】 再公表特許第2014/208090(JP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0162827(US,A1)
【文献】 再公表特許第2017/188412(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02、04
C03C 27/00−29/00
B60J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側ガラスシート(4)および内側ガラスシート(5)である2つのガラスシートを含み、該2つのガラスシートが、屈折率nの熱可塑性材料から成る中間膜(6)によって互いに接合された、自動車用積層フロントガラス(1)であって、前記フロントガラスが、前記ガラスシートのうちの少なくとも1つを貫通する孔(8)を備え、前記孔には光学素子(2)が埋め込まれ、該光学素子が、車両の外側に向けられたフロントガラスの面にほぼ水平に到達する光束(3)を偏向させるために適合されており、また該光束を車両の室内の方へ向けられたフロントガラスの面の正面に配置されたCCD検出器またはCMOS検出器のようなカメラの画像捕捉装置(7)の方へほぼ変形なく収束させるために適合されており、前記検出器が、前記フロントガラスの表面(13)にほぼ平行して配置され、前記フロントガラスが、前記ガラスシート(4、5)と前記中間膜とを貫通する孔(8)を備える、または、外側ガラスシート(4)だけを貫通する孔(8)を備え、該孔の中に前記光学素子が挿入される、自動車用積層フロントガラス。
【請求項2】
光学素子(2)が、1つ以上の収束レンズと1つ以上の発散レンズとの組合せを含む、請求項1に記載の積層フロントガラス
【請求項3】
光学素子が、グレージングユニットの外側から内側の方へ向かって、1番目にある収束レンズ(9)、発散レンズ(10)および収束レンズ(11)を含む、請求項1または2に記載の積層フロントガラス。
【請求項4】
光学素子がさらに、屈折率n以下である屈折率nのプラスチック材料(12)を含む、請求項1からのいずれか1つに記載の積層フロントガラス。
【請求項5】
光学素子がさらに、屈折率n未満である屈折率nのプラスチック材料を含む、請求項1からのいずれか1つに記載の積層フロントガラス。
【請求項6】
光学素子が、グレージングユニットの外側から内側の方へ向かって、1番目にある収束レンズ(9)、発散レンズ(10)、収束レンズ(11)、および前記レンズ間に配置された、屈折率n未満である屈折率nのプラスチック材料(12)を含む、請求項1からのいずれか1つに記載の積層フロントガラス。
【請求項7】
屈折率nが、少なくとも0.05、好ましくは少なくとも0.1だけ屈折率nよりも低い、請求項1からのいずれか1つに記載の積層フロントガラス。
【請求項8】
中間膜(6)がPVB製であり、また光学素子の中に含まれるプラスチック材料(12)が、1.31〜1.43の屈折率nを有する、請求項1からのいずれか1つに記載の積層フロントガラス。
【請求項9】
屈折率nの層のプラスチック材料が、場合によってはフッ素化された、脂肪族ウレタンアクリレートポリマーの中から選択される、請求項からのいずれか1つに記載の積層フロントガラス
【請求項10】
前記フロントガラスが、外側ガラスシート(4)だけを貫通する孔(8)を備え、該孔の中に前記光学素子が挿入され、光学素子が、グレージングユニットの外側から内側の方へ向かって、収束レンズ(9)と発散レンズ(10)とを含む、請求項に記載の積層フロントガラス。
【請求項11】
前記フロントガラスが、外側ガラスシート(4)だけを貫通する孔(8)を備え、該孔の中に前記光学素子が挿入され、収束レンズ(11)が、内側ガラスシート(5)の裏面に配置される、請求項または10に記載の積層フロントガラス。
【請求項12】
前記光学素子が、グレージングユニットの中央上方領域に配置される、請求項1から11のいずれか1つに記載の積層フロントガラス。
【請求項13】
フロントガラスを介した画像収集装置であって、画像は、車両の外側に向けられたフロントガラスの面の上にほぼ水平に到達する光放射の捕捉領域に由来するものであり、前記装置が、
−イメージセンサ(7)を含むカメラ、とりわけADASカメラ、
−請求項1から12のいずれか1つに記載のフロントガラス(1)、
を含むことを特徴とし、
カメラのイメージセンサ(7)の表面が、前記フロントガラスの表面にほぼ平行して配置される、画像収集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ADAS(Advanced Driver Assistance Systems、先進運転支援システム)カメラシステムとの組み合わせにより、自動車における画像データ収集を可能にするグレージングユニット、とりわけフロントガラスに関するものである。本発明はまた、そのような情報視覚化のための、前記カメラと前記グレージングユニット(前記フロントガラス)とを組み合わせた装置も記述している。
【背景技術】
【0002】
車両用グレージングユニットおよび組み合わされた科学技術は、とりわけ安全性を高めるために絶えず進展している。重要な新技術は、運転支援システムまたはADAS(Advanced Driver Assistance Systems)に存在する。一般的原理によると、フロントガラスの裏に配置されたカメラにより、これらのADASが運転中に運転手を支援することが可能となる。このようなADAS装置は、特に次のような機能を有し得るが、以下のリストは完全なものではない。
−車両が故意ではなく車線から離れる際に運転手に警告する、
−緊急停止を知らせる、
−夜間の視力を改善する、
−運転手から可視の制御画面を通して360度の視界を可能にする、
−沿道に設置された標識を認識する、
−2次元さらには3次元モード(例えば複数のカメラを使った特に立体効果による)によって、距離および物体の正確な検出を保証する。
【0003】
最も従来的な方法では、装置は、車両のフロントガラスの裏に配置されたカメラを少なくとも1つ含む。そのような装置の現行バージョンにおいて、嵩の問題が提起される。実際、そのような装置のために車両のフロントグレージングユニット上で利用可能な場所は非常に制限されており、というのも、安全性という明らかな理由により、そのような装置が運転手の視覚を妨げてはならないからである。本分野において時にはY0と呼ばれるそのような領域100は通常、添付の図1に示されるようにフロントガラスの中央上方部分に位置する。この領域100において、単数または複数のカメラは、フロントガラスの表面と向かい合って特定の角度を伴って方向付けられる。特に、カメラに搭載されたレンズおよびイメージセンサ(CCDまたはCMOS)は、添付の図面で示されるように、地面に対する平行線に近い方向、すなわち道路に対してわずかに傾けられた方向に沿って、画像収集領域の方に向かって直接方向付けられる。つまりカメラは、先の機能を果たすように適合されたわずかな角度に沿って、道路に向かって方向付けられる。
【0004】
添付の図1で示されるように、具体的には、フロントガラスで、カメラのレンズ、センサおよびその本体の大きさを考慮して、各カメラにアクセス可能な正しい視野はつまり、集められた外の光束(またはむしろ予め定義された立体角にしたがって集められた光束の全体)が、前記カメラのそれぞれに対して、フロントガラス上の台形の特殊な窓101を貫通することを必要とする。
【0005】
添付の図1で示されるように、フロントガラスそれ自体が、画像捕捉領域において道路に対して比較的小さい角度を有することから、小型カメラの利用にはつまり、フロントガラス上で比較的大きな寸法の、観察すべき立体角が大きいだけにいっそう広い台形窓101の利用が必要となる。
【0006】
そのような構造にはさらに、ADASカメラ(その本体を含む)を内蔵する装置の正面に配置されるグレージングユニットの全表面にわたって、装置を隠すように、黒いエナメル層またはラッカー層のような、黒いコーティング102の使用が含まれる。
【0007】
さらに、例えば前述のような複数の機能を保証するために、さらには3次元モード(立体モード)での復元および/または解析のために複数のカメラを併用する場合、図1に示されるように、各カメラに対応するさまざまな台形領域を互いに分け隔てることがさらに必要であることは明白である。そのような場合は特に、グレージングユニット上の黒く下塗りされた表面102は、フロントガラスを介した運転手の全体的な視野を著しく減少させる可能性のある規模の、非常に大きな寸法となり得る。複数のADASカメラを内蔵した現行の構造物の大半において、添付の図1に示されるように黒い下塗り層で覆われなければならないのは、フロントガラスの中央上方部分のほぼ全表面と言えよう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前述の問題を解決することを可能にし、特に、具体的にはグレージングユニットの裏側にあるADASカメラを分離させるかまたは覆い隠すためのフロントガラス上にある黒い表面を減少させることによって、前述の嵩の問題を回避することを可能にする、解決案を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
先の問題は特に、カメラを垂直線の方へ角度βだけ傾けるようにカメラの光学部品の向きを変更することによって、解決することができた。
【0010】
本発明はより詳細には、自動車用積層フロントガラスに関しており、該フロントガラスは、外側および内側の2つのガラスシートを含み、該2つのガラスシートは、屈折率n1の熱可塑性材料から成る中間膜によって互いに接合され、前記フロントガラスは、前記ガラスシートのうちの少なくとも1つを貫通し好ましくは前記中間膜を貫通する孔を備え、前記孔には光学素子が埋め込まれ、該素子は、車両の外側に向けられたフロントガラスの面にほぼ水平に到達する光束を偏向させるために適合されており、また該光束を、車両の室内の方へ向けられたフロントガラスの面の正面に配置されたCCD検出器またはCMOS検出器のようなカメラの画像捕捉装置の方へほぼ変形なく収束させるために適合されており、前記検出器の表面は、前記フロントガラスの表面にほぼ平行して配置される。
【0011】
「ほぼ水平に」なる語は、地面と光束の光線との間で形成される角度が、30°未満、特に20°未満、さらには10°未満であることを例として意味する。
【0012】
「ほぼ平行して」なる語は、フロントガラスの内側表面とCCD検出器表面の検出表面との間で形成される角度が、30°未満、特に20°未満、さらには10°未満であることを例として意味する。
【0013】
本発明の有利な、ただし非限定的な特定の実施形態が以下に記述されるが、これらは当然のことながら必要があれば互いに組み合わせることができる。
−前記フロントガラスは、前記ガラスシートと前記中間膜とを貫通する孔を備える、
−光学素子は、1つ以上の収束レンズと1つ以上の発散レンズとの組合せを含む、
−光学素子は、グレージングユニットの外側から内側の方へ向かって、1番目にある収束レンズ、発散レンズおよび収束レンズを含む、
−選択的に、前記フロントガラスは、外側ガラスシートだけを貫通する孔を備え得、該孔の中に前記光学素子が挿入される。このような構造物において、光学素子は例えば、グレージングユニットの外側から内側の方へ向かって、収束レンズと発散レンズを含む。有利には、内側ガラスシートの裏面に、収束レンズが接着される、
−光学素子はさらに、屈折率n1以下である屈折率n2のプラスチック材料を含む、
−光学素子はさらに、屈折率n1未満である屈折率n2のプラスチック材料を含む、
−光学素子は、グレージングユニットの外側から内側の方へ向かって、1番目にある収束レンズ、発散レンズ、収束レンズ、および任意には、前記レンズ間に配置され屈折率n1未満である屈折率n2のプラスチック材料を含む、
−前記屈折率n2は、少なくとも0.05、好ましくは少なくとも0.1だけ屈折率n1よりも小さい、
−中間膜はPVB製である、
−中間膜はPVB製であり、また光学素子の中に含まれる材料は、1.31〜1.43の屈折率n2を有する、
−屈折率n2の層の材料は、場合によってはフッ素化された、脂肪族ウレタンアクリレートポリマーから選択される、
−前記光学素子は、グレージングユニットの中央上方領域に配置される。
【0014】
本発明はまた、フロントガラスを介した画像収集装置にも関しており、画像は、車両の外側に向けられたフロントガラスの面の上にほぼ水平に到達する光放射の捕捉領域に由来するものであり、前記装置は、イメージセンサを含むカメラ、特にADASカメラと、先に記述したようなフロントガラスとを含むことを特徴とし、該装置において、カメラのイメージセンサの表面は、前記フロントガラスの表面にほぼ平行して配置される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】先に記述したような、現在商品化されている画像収集装置の斜視図を示している。
図2】本発明にかかる第1の構造によるフロントガラス、ならびに車両の外側からフロントガラスの裏に配置されたADASカメラのレンズまでの光放射の道筋を、矢状断面で図示している。
図3】本発明にかかる第2の構造によるフロントガラス、ならびに車両の外側からフロントガラスの裏に配置されたADASカメラのレンズまでの光放射の道筋を、矢状断面で図示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
さらに厳密に言えば、図2は、本発明の実施形態をより詳細にただし非限定的に示している。
【0017】
この図で、矢状断面にしたがった積層グレージングユニットが示された。初期光束3は、車両の外側環境から、特に、フロントガラス1の上方部分に配置され図2でその唯一のセンサ7によって図示されるカメラによって観察しようと努める道路の領域から、フロントガラスの最も外側のガラスシート4の面の上に到達する。前記センサ7は好ましくは、マトリクス表面のCCD(電荷結合素子)またはCMOS(相補型金属酸化膜半導体)を含む。
【0018】
光束とは、本発明の趣旨で、カメラ7を経由して捕捉しようと努める、特定の立体角にしたがって到達する光線の全体を意味する。より明確にするために、図2においてただ2つの光線だけでこの放射を示した。
【0019】
図2によって示されるように、車両の外側の光束3は、原則として30°未満、さらには20°未満、さらには10°未満である、水平の位置に対して若干の入射角αを伴ってフロントガラス上に到達する。フロントガラス1の裏側へカメラを直接設置するには、従来、前記光束を捕捉するために、つまりカメラの配向軸それ自体が、図2に点線で示されるように、前記カメラの設置領域において、道路に対する若干の角度α、およびフロントガラスの内側表面13の垂線に対して大きい角度を有することが必要不可欠である。
【0020】
図1との関連で先に述べたように、このような構造において、設置物全体を隠すためにグレージングユニット上に施された黒いラッカー塗装またはエナメル加工表面102は、場合によっては、フロントガラス自体を介した運転手の視野全体を著しく減少させるに至るほどの非常に大きな寸法であり得る。
【0021】
図2で示されるグレージングユニット1は、第1のガラスシート4および第2のガラスシート5を含む従来の積層フロントガラスであり、2つのガラスシートは、熱可塑性材料で大抵の場合ポリビニルブチラール(PVB)製の中間膜6によって互いに接合されている。公知である従来の方法により、フロントガラスは、構成要素4、5および6の熱ラミネート加工によって得られる。中間膜は当然のことながら、本発明の範囲を逸脱することなく、異なった性質の熱可塑性材料製の複数の膜、とりわけ異なった硬度のPVB膜の集合を含み得、例えば米国特許第6132882号明細書中で記述されているような、音響機能を保証するための異なった硬度のものが挙げられる。同様に、ガラスシートのうちの1つは、従来使用されている厚みと比べて薄くすることが可能である。本発明によると中間膜はまた、特にHUD(ヘッドアップディスプレイ)アプリケーション用にくさび形を呈することもできる。さらに、中間膜のうちの1つはバルク着色され得る。
【0022】
中間膜6において、求められているカメラの最終的な位置づけ部位に準備される、グレージングユニットの領域内で、フロントガラスの中に切抜きを行って孔8を作るが、該孔は厚みがフロントガラスの厚みとほぼ等しく、本発明による光学素子2をそこに挿入するのに十分かつ必要な寸法のものである。
【0023】
図2に示される素子2は、収束レンズと発散レンズのセットを含み、このような構造物は、本発明の範囲の制限例として見做され得ない。レンズは、前述したように初めはほぼ水平の放射3が前記光学素子を経由してセンサ7の感知部の方へ偏向しまた収束するように、先行技術を用いて寸法決めされ間隔があけられ、センサはそれに伴い、今度はその作用面が画像捕捉領域において第2のガラスシート5の内側表面にほぼ平行して配置されるように、位置づけ直されることができる。そのようにして、カメラ全体を傾けること、したがって、グレージングユニットの裏側で画像の処理に使用される全ての構成要素およびそれらの本体が占める場所を最小にすることが可能となる。また、カメラのセンサ7をグレージングユニットのできるだけ近くに近づけることも可能であり、それはまた、その使用に関連する嵩の著しい減少となって現れる。
【0024】
先にも説明されたように、このような構造はそのようにして、フロントガラス上の光束が貫通する台形領域の寸法、したがって最終的にはグレージングユニット上の黒く下塗りされた領域102の全面積を、極めて大幅に制限することを可能にする。例として、カメラの僅か5°の傾斜βにより、前記台形領域の面積を50%以上減少させることが可能になることを算出することができた。このようにして、図1に、現行の構造による台形領域を実線で、また本発明にかかる構造における台形領域を点線で示した。
【0025】
したがって本発明によると、フロントガラス上の黒く下塗りされた領域の面積を大幅に制限すること、または代替的に、とりわけ立体視を目ざしてさらには道路上のチェックポイントおよび/または前述のような機能の数を増やすために、フロントガラスのアクセス可能な領域内により多くのカメラを配置することが可能となる。
【0026】
より詳細には、図2で、光学素子内の光線3の道筋を示す点線で示されているように、入射放射は、1番目にある収束レンズ9によって偏向される。このように偏向された光束は次に、2番目にある発散レンズ10によってまっすぐにされ、有利には熱可塑性膜6の屈折率よりも低い屈折率n2の熱可塑性材料12によって光学素子内に閉じ込められる。
【0027】
屈折率n2のこの材料は、より詳細には、ガラス表面またはプラスチック表面に対する粘着特性を有するプラスチック材料の中から選択される。
【0028】
材料12は特に、その屈折率n2が、中間膜6を構成する材料の屈折率よりも有意に低くなるように、有利にまた好ましくは選択される。有意に低いとは、少なくとも0.05、好ましくは少なくとも0.1の屈折率の違いを意味する。
【0029】
特に、例えば材料6が、屈折率がおよそ1.48であるPVBタイプの熱可塑性樹脂である場合、屈折率n2の材料を構成するために選択される材料は、有利には屈折率が製造方法に応じて1.31〜1.42の間で変化し得るアクリレートポリマー、特に、場合によってはフッ素化された脂肪族ウレタンアクリレートポリマーの中から選択され得る。このような粘着性ポリマーは例えば、Nordland社によって、NOA 1315、NOA 132、NOA 1327、NOA 1328、NOA 133、NOA 13685、NOA 1375、NOA 138、NOA 142の参照番号で商品化されている。
【0030】
フロントガラス内の切抜き部分8は通常、フロントガラスまたはグレージングユニットの面積との関係において小さい寸法である。
【0031】
切抜き部分8の形および寸法はまた、先行技術によって設定され、カメラを経由して捕捉しようと努める、車両の前の領域から来て車両の外側の立体角の範囲に由来する、フロントガラスを貫通する入射光放射の全体を、効果的にかつ選択的に収集するようになっている。
【0032】
図3は、本発明の別の実施形態を示しており、該実施形態において、フロントガラスは、今度は外側ガラスシート4だけを貫通する孔8を備えており、該孔の中に、収束レンズと発散レンズの組合せを含む前記光学素子2が挿入される。この形態によると、内側ガラスシート5は切り抜かれておらず、光学素子2によって偏向された光線が貫通している。この形態によると、収束レンズ11はここでは、カメラのセンサ7の方へほぼ変形なく光束を偏向させるために、内側ガラスシート5の裏面13に配置(接着)される。
【符号の説明】
【0033】
1 フロントガラス
2 光学素子
3 光束
4 外側ガラスシート
5 内側ガラスシート
6 中間膜
7 センサ
8 孔
9 収束レンズ
10 発散レンズ
11 収束レンズ
12 熱可塑性材料
13 フロントガラスの内側表面
102 黒く下塗りされた領域
図1
図2
図3