特許第6971326号(P6971326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6971326車両の走行速度を制御するための方法、装置、端末及びソフトウェアプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971326
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】車両の走行速度を制御するための方法、装置、端末及びソフトウェアプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/14 20060101AFI20211111BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20211111BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20211111BHJP
【FI】
   B60W30/14
   G08G1/16 C
   B60W30/08
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-556906(P2019-556906)
(86)(22)【出願日】2018年9月12日
(65)【公表番号】特表2020-518503(P2020-518503A)
(43)【公表日】2020年6月25日
(86)【国際出願番号】CN2018105321
(87)【国際公開番号】WO2019052487
(87)【国際公開日】20190321
【審査請求日】2019年10月18日
(31)【優先権主張番号】201710818341.3
(32)【優先日】2017年9月12日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514187420
【氏名又は名称】テンセント・テクノロジー・(シェンジェン)・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ビン
【審査官】 戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−145095(JP,A)
【文献】 特開2008−162564(JP,A)
【文献】 特開2012−162221(JP,A)
【文献】 特開2015−018447(JP,A)
【文献】 特開2017−043171(JP,A)
【文献】 特開2007−230440(JP,A)
【文献】 特開2010−282508(JP,A)
【文献】 特開2016−215917(JP,A)
【文献】 特開2009−029343(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/051524(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/099391(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/14
G08G 1/16
B60W 30/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行速度を制御するための方法であって、
当該車両の前方車両の走行速度、当該車両と前記前方車両との間の距離及び予想衝突時間に基づき、前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度を決定し、現在位置の道路属性情報の各々に対して予め決定されている他の走行制限速度を決定することと、
前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度及び前記他の走行制限速度のうち小さい方を当該車両の総合走行制限速度として決定することと、
前記総合走行制限速度に基づいて当該車両の走行速度を制御することと、
を含み、前記前方車両の走行速度、当該車両と前記前方車両との間の距離及び予想衝突時間に基づき、前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度を決定することは、
+d/tlcに基づいて当該車両の第1走行制限速度を決定することであって、vは前記前方車両の走行速度を示し、dは当該車両と前記前方車両との間の距離を示し、tlcは予想衝突時間を示す、ことと、
当該車両の速度と、上限加速度に所定の加速時間を乗算したものとの和に基づき、当該車両の第2走行制限速度を決定することであって、前記上限加速度は、(d−d)/(t×t)に比例する項と、(v−v)/tに比例する項との結合に基づいて決定され、dは所定の当該車両と前記前方車両との間の安全距離を示し、tは当該車両と前記前方車両との間の距離を前記安全距離に調整するために必要な所定の走行時間を示し、vは当該車両の走行速度を示す、ことと、
前記前方車両の走行速度が当該車両の走行速度以上である場合、第1走行制限速度と第2走行制限速度のうちの最小値を前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度として決定することと、
前記前方車両の走行速度が当該車両の走行速度より小さい場合、第1走行制限速度と第2走行制限速度のうちの最大値を前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度として決定することと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記他の走行制限速度は車線の当該車両に対する走行制限速度、カーブ道路の当該車両に対する走行制限速度及び道路タイプの当該車両に対する走行制限速度のうちの1つ又は任意の組み合わせを含むことを特徴とする
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記他の走行制限速度が車線の当該車両に対する走行制限速度を含む場合、前記現在位置の道路属性情報に基づいて当該車両の他の走行制限速度を決定することは、現在車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定することを含むことを特徴とする
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記他の走行制限速度がカーブ道路の当該車両に対する走行制限速度を含む場合、前記現在位置の道路属性情報に基づいて当該車両の他の走行制限速度を決定することは、現在位置の道路曲率に基づき、カーブ道路の当該車両に対する走行制限速度を決定することを含むことを特徴とする
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記他の走行制限速度が道路タイプの当該車両に対する走行制限速度を含む場合、前記現在位置の道路属性情報に基づいて当該車両の他の走行制限速度を決定することは、現在位置の道路タイプ及び予め記憶される道路タイプと走行制限速度との対応関係に基づき、前記道路タイプの当該車両に対する走行制限速度を決定することを含むことを特徴とする
請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記現在車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定することは、
当該車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更しない場合、現在車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定することと、
当該車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更したことがあり、且つ現在車線の走行制限速度が前記現在車線から車線変更する前の車線の走行制限速度以上である場合、現在車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定することと、を含むことを特徴とする
請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記当該車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更しない場合、現在車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定することは、
当該車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更せず、且つ現在時刻に車線変更命令を受信したことがない場合、現在車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定することを含むことを特徴とする
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
現在車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定することは、
当該車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更せず、且つ現在時刻に車線変更命令を受信したことがあり、現在車線の走行制限速度が入ろうとする車線の走行制限速度以上である場合、現在車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定すること、又は
当該車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更せず、且つ現在時刻に車線変更命令を受信したことがあり、現在車線の走行制限速度が入ろうとする車線の走行制限速度より小さい場合、前記入ろうとする車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定すること、を含むことを特徴とする
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
現在車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定することは、
当該車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更したことがあり、且つ現在車線の走行制限速度が前記現在車線から車線変更する前の車線の走行制限速度より小さい場合、車線変更前の車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定することを含むことを特徴とする
請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度及び前記他の走行制限速度に基づき、当該車両の総合走行制限速度を決定することは、
前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度と前記他の走行制限速度のうちの最小値を当該車両の総合走行制限速度として決定することを含むことを特徴とする
請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度及び前記他の走行制限速度に基づき、当該車両の総合走行制限速度を決定することは、
前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度、前記他の走行制限速度、及び当該車両の運転手により設定された第3走行制限速度のうちの最小値を当該車両の総合走行制限速度として決定することを含むことを特徴とする
請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
車両の走行速度を制御するための装置であって、
当該車両の前方車両の走行速度、当該車両と前記前方車両との間の距離及び予想衝突時間に基づき、前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度を決定し、現在位置の道路属性情報の各々に対して予め決定されている他の走行制限速度を決定するための第1決定モジュールと、
前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度及び前記他の走行制限速度のうち小さい方を当該車両の総合走行制限速度として決定するための第2決定モジュールと、
前記総合走行制限速度に基づいて当該車両の走行速度を制御するための制御モジュールと、を備え、前記第1決定モジュールは
+d/tlcに基づいて当該車両の第1走行制限速度を決定することであって、vは前記前方車両の走行速度を示し、dは当該車両と前記前方車両との間の距離を示し、tlcは予想衝突時間を示す、ことと、
当該車両の速度と、上限加速度に所定の加速時間を乗算したものとの和に基づき、当該車両の第2走行制限速度を決定することであって、前記上限加速度は、(d−d)/(t×t)に比例する項と、(v−v)/tに比例する項との結合に基づいて決定され、dは所定の当該車両と前記前方車両との間の安全距離を示し、tは当該車両と前記前方車両との間の距離を前記安全距離に調整するために必要な所定の走行時間を示し、vは当該車両の走行速度を示す、ことと、
前記前方車両の走行速度と当該車両の走行速度との大小関係に従って、前記第1走行制限速度又は前記第2走行制限速度のうちの一方を、前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度として決定することと、
前記前方車両の走行速度が当該車両の走行速度以上である場合、第1走行制限速度と第2走行制限速度のうちの最小値を前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度として決定することと、
前記前方車両の走行速度が当該車両の走行速度より小さい場合、第1走行制限速度と第2走行制限速度のうちの最大値を前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度として決定することと、
を行うことを特徴とする装置。
【請求項13】
端末であって、
プロセッサ及びメモリを備え、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法を前記プロセッサに実行させる命令セットが前記メモリに記憶されていることを特徴とする端末。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法をプロセッサに実行させるソフトウェアプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年09月12日に提出した中国特許出願第201710818341.3号(発明の名称「車両運転を制御するための方法及び装置」)に基づく優先権を主張し、その全内容が本願の一部として援用される。
【0002】
本願は高度道路交通の技術分野に関し、特に車両運転を制御するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
高度道路交通分野の発展に伴って、自動運転車等が徐々に人々の生活に普及しつつある。自動運転車の走行過程において、ナビゲーションシステムを利用して、現在の走行道路の関連情報、例えば水浸し路面、学校区間等を取得し、現在の走行道路の関連情報に基づいて総合走行制限速度を計算し、次に、実際に走行するとき、現在の走行速度を常に総合走行制限速度以下に制御することができる。
【0004】
本願の実現過程において、発明者は関連技術に少なくとも以下の問題があることに着目した。
【0005】
自動車が総合走行制限速度を計算するとき、判断要素が単純すぎるため、計算された総合走行制限速度が走行中の複雑な状況に適用できず、走行安全性が低下してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
関連技術の問題を解決するために、本願の実施例は車両運転を制御するための方法及び装置を提供する。具体的な内容は以下のとおりである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本願の実施形態の第1態様によれば、車両の走行速度を制御するための方法が提供され、方法は、
当該車両の前方車両の走行速度、当該車両と前記前方車両との間の距離及び予想衝突時間に基づき、前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度を決定し、現在位置の道路属性情報の各々に対して予め決定されている他の走行制限速度を決定することと、
前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度及び前記他の走行制限速度のうち小さい方を当該車両の総合走行制限速度として決定することと、
前記総合走行制限速度に基づいて当該車両の走行速度を制御することと、
を含み、前記前方車両の走行速度、当該車両と前記前方車両との間の距離及び予想衝突時間に基づき、前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度を決定することは、
+d/tlcに基づいて当該車両の第1走行制限速度を決定することであって、vは前記前方車両の走行速度を示し、dは当該車両と前記前方車両との間の距離を示し、tlcは予想衝突時間を示す、ことと、
当該車両の速度と、上限加速度に所定の加速時間を乗算したものとの和に基づき、当該車両の第2走行制限速度を決定することであって、前記上限加速度は、(d−d)/(t×t)に比例する項と、(v−v)/tに比例する項との結合に基づいて決定され、dは所定の当該車両と前記前方車両との間の安全距離を示し、tは当該車両と前記前方車両との間の距離を前記安全距離に調整するために必要な所定の走行時間を示し、vは当該車両の走行速度を示す、ことと、
前記前方車両の走行速度が当該車両の走行速度以上である場合、第1走行制限速度と第2走行制限速度のうちの最小値を前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度として決定することと、
前記前方車両の走行速度が当該車両の走行速度より小さい場合、第1走行制限速度と第2走行制限速度のうちの最大値を前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度として決定することと、
を含むことを特徴とする方法である。
【0008】
(2)前記他の走行制限速度は車線の当該車両に対する走行制限速度、カーブ道路の当該車両に対する走行制限速度及び道路タイプの当該車両に対する走行制限速度のうちの1つ又は任意の組み合わせを含んでもよい。
(3)前記他の走行制限速度が車線の当該車両に対する走行制限速度を含む場合、前記現在位置の道路属性情報に基づいて当該車両の他の走行制限速度を決定することは、現在車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定することを含んでもよい。
(4)前記他の走行制限速度がカーブ道路の当該車両に対する走行制限速度を含む場合、前記現在位置の道路属性情報に基づいて当該車両の他の走行制限速度を決定することは、現在位置の道路曲率に基づき、カーブ道路の当該車両に対する走行制限速度を決定することを含んでもよい。
【0009】
(5)前記他の走行制限速度が道路タイプの当該車両に対する走行制限速度を含む場合、前記現在位置の道路属性情報に基づいて当該車両の他の走行制限速度を決定することは、現在位置の道路タイプ及び予め記憶される道路タイプと走行制限速度との対応関係に基づき、前記道路タイプの当該車両に対する走行制限速度を決定することを含んでもよい。
【0010】
(6)前記現在車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定することは、
当該車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更しない場合、現在車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定することと、
当該車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更したことがあり、且つ現在車線の走行制限速度が前記現在車線から車線変更する前の車線の走行制限速度以上である場合、現在車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定することとを含んでもよい。
【0011】
(7)前記当該車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更しない場合、現在車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定することは、
当該車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更せず、且つ現在時刻に車線変更命令を受信したことがない場合、現在車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定することを含んでもよい。
【0012】
(8)現在車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定することは、
当該車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更せず、且つ現在時刻に車線変更命令を受信したことがあり、現在車線の走行制限速度が入ろうとする車線の走行制限速度以上である場合、現在車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定すること、又は
当該車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更せず、且つ現在時刻に車線変更命令を受信したことがあり、現在車線の走行制限速度が入ろうとする車線の走行制限速度より小さい場合、前記入ろうとする車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定することを含んでもよい。
【0013】
(9)現在車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定することは、
当該車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更したことがあり、且つ現在車線の走行制限速度が前記現在車線から車線変更する前の車線の走行制限速度より小さい場合、車線変更前の車線の走行制限速度を車線の当該車両に対する走行制限速度として決定することを含んでもよい。
【0014】
(10)前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度及び前記他の走行制限速度に基づき、当該車両の総合走行制限速度を決定することは、
前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度と前記他の走行制限速度のうちの最小値を当該車両の総合走行制限速度として決定することを含んでもよい。
【0015】
(11)前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度及び前記他の走行制限速度に基づき、当該車両の総合走行制限速度を決定することは、
前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度、前記他の走行制限速度、及び当該車両の運転手により設定された第3走行制限速度のうちの最小値を当該車両の総合走行制限速度として決定することを含んでもよい。
【0016】
(12)本願の実施形態の第2態様によれば、車両の走行速度を制御するための装置が提供され、装置は、
当該車両の前方車両の走行速度、当該車両と前記前方車両との間の距離及び予想衝突時間に基づき、前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度を決定し、現在位置の道路属性情報の各々に対して予め決定されている他の走行制限速度を決定するための第1決定モジュールと、
前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度及び前記他の走行制限速度のうち小さい方を当該車両の総合走行制限速度として決定するための第2決定モジュールと、
前記総合走行制限速度に基づいて当該車両の走行速度を制御するための制御モジュールと、を備え、前記第1決定モジュールは
+d/tlcに基づいて当該車両の第1走行制限速度を決定することであって、vは前記前方車両の走行速度を示し、dは当該車両と前記前方車両との間の距離を示し、tlcは予想衝突時間を示す、ことと、
当該車両の速度と、上限加速度に所定の加速時間を乗算したものとの和に基づき、当該車両の第2走行制限速度を決定することであって、前記上限加速度は、(d−d)/(t×t)に比例する項と、(v−v)/tに比例する項との結合に基づいて決定され、dは所定の当該車両と前記前方車両との間の安全距離を示し、tは当該車両と前記前方車両との間の距離を前記安全距離に調整するために必要な所定の走行時間を示し、vは当該車両の走行速度を示す、ことと、
前記前方車両の走行速度と当該車両の走行速度との大小関係に従って、前記第1走行制限速度又は前記第2走行制限速度のうちの一方を、前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度として決定することと、
前記前方車両の走行速度が当該車両の走行速度以上である場合、第1走行制限速度と第2走行制限速度のうちの最小値を前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度として決定することと、
前記前方車両の走行速度が当該車両の走行速度より小さい場合、第1走行制限速度と第2走行制限速度のうちの最大値を前記前方車両によって課される当該車両に対する走行制限速度として決定することと、
を行うことを特徴とする装置である。
【0017】
(13)本願の実施形態の第3態様によれば、端末が提供され、端末は、プロセッサ及びメモリを備え、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法を前記プロセッサに実行させる命令セットが前記メモリに記憶されていることを特徴とする端末である。
【0018】
(14)本願の実施形態の第4態様によれば、ソフトウェアプログラムが提供され、ソフトウェアプログラムは、(1)〜(11)のいずれか1項に記載の方法をプロセッサに実行させることを特徴とするソフトウェアプログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本願の実施例は以下の有益な効果を有する。
【0020】
本願の実施例において、総合走行制限速度を計算するとき、判断要素がより全面的であり、走行中の複雑な状況に適用でき、走行安全性を向上させる。
【0021】
以上の一般的な説明及び以下の詳細な説明は例示的及び解釈的なものであって、本願を制限するためのものではないと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は本願の実施例に係る車両運転を制御するための方法のフローチャートである。
図2図2は本願の実施例に係る車両が車線変更するシーンの模式図である。
図3図3は本願の実施例に係る車両が車線変更するシーンの模式図である。
図4図4は本願の実施例に係る車両がカーブ道路を走行するシーンの模式図である。
図5図5は本願の実施例に係る車両運転を制御するための装置の構造模式図である。
図6図6は本願の実施例に係る端末の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願の実施例をより明確に説明するために、以下に実施例の記述において必要な図面を用いて簡単に説明を行うが、当然ながら、以下に記載する図面は単に本願の実施例の一例であって、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面に想到しうる。
【0024】
上記図面で本願の明確な実施例を示し、後述でより詳しく説明する。これらの図面及び文字説明はいかなる方式で本願の構想範囲を制限するためのものではなく、特定の実施例を参照して当業者に本願の概念を説明するためのものである。
【0025】
本願の目的、解決手段及び利点をより明確にするために、以下に図面を参照しながら本願の実施形態を更に詳しく説明する。
【0026】
本願の実施例は車両運転を制御するための方法を提供し、該方法が端末により実現されてもよく、端末には距離検出装置、ナビゲーション測位装置等を有してもよい。該端末は自動走行機能を有する装置、又は自動走行機能を有する装置に搭載される端末であってもよい。本実施例において、端末が車載端末である場合を例として解決手段を詳しく説明し、他の場合にもこれに類似するため、本実施例では詳細な説明は省略する。
【0027】
端末はプロセッサ、メモリ等の部材を備えてもよい。プロセッサは信号が所定のトリガー条件を満たすかどうかを判断し、命令を受信するといった処理を行うことに用いられてもよいCPU(Central Processing Unit、中央処理ユニット)であってもよく、本願の実施例において、プロセッサは現在車両の現在車線情報を検出し、異なる場合の現在車両の走行制限速度等を計算することができる。メモリは受信されたデータ、処理中に必要なデータ、処理中に生成したデータを記憶することに用いられてもよいRAM(Random Access Memory、ランダムアクセスメモリ)、Flash(フラッシュメモリ)等であってもよく、本願の実施例において、メモリは前方車両の走行速度、現在車両と前方車両との間の距離、所定の予想衝突時間、プロセッサにより計算された様々な走行制限速度、最終的に決定された現在車両の総合走行制限速度等を記憶することができる。なお、「現在車両(current vehicle)」は自車両を意味し、前方車両(preceding vehicle)は自車両の前方を走行する車両を意味する。
【0028】
端末は更にスクリーン、送受信機、画像検出部材、オーディオ出力部材及びオーディオ入力部材等を備えてもよい。スクリーンは状態情報及び制御ページを表示することに用いられてもよく、タッチ信号を検出することに用いられてもよいタッチパネルであってもよく、本願の実施例において、スクリーンは現在車両の車速等の車両状態情報、現在車線の道路状況、及び車線変更、ステアリング等の制御ボタンを表示することができる。送受信機は他の装置とデータ伝送を行い、例えばサーバから送信された装置リスト及び制御ページを受信することに用いられてもよく、前記装置リスト及び制御ページはアンテナ、整合回路、モデムを含んでもよい。画像検出部材がWebカメラであってもよい。オーディオ出力部材がスピーカー、イヤホン等であってもよい。オーディオ入力部材がマイクロフォン等であってもよい。
【0029】
図1に示すように、該方法の処理プロセスは以下のステップを含んでもよい。
【0030】
ステップ101において、前方車両の走行速度、現在車両と前方車両との間の距離及び所定の予想衝突時間に基づき、前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度を決定し、現在位置の道路属性情報に基づき、現在車両の他の走行制限速度を決定する。
【0031】
前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度、他の走行制限速度がそれぞれ様々な条件下で計算した走行速度の上限値である。前方車両が現在車両前方の所定距離範囲内に現在車両に最も近い車であり、所定距離範囲が距離aより小さい範囲であってもよく、aの値が100〜200メートル、例えば150メートルであってもよい。
【0032】
実施中において、車両が走行するとき、車に取り付けられる車載端末は所定周期で測位検出を行って、測位検出により取得された各情報に基づいて現在車両の走行制限速度を計算して、最終的に取得された走行制限速度を実際の走行速度の計画の策定根拠とする。所定周期の時間を0.05〜0.2s、例えば0.1sに設定してもよい。
【0033】
車載端末は距離検出装置によって現在車両の前方に他の車両が走行しており、且つ該車両が現在車両の所定距離範囲内にあって、現在車両に最も近い車であると検出する場合、該車両を前方車両として決定する。車載端末が前方車両の走行速度、現在車両と前方車両との間の距離、所定の予想衝突時間等の情報を取得し、所定のアルゴリズムで前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度を計算する。以下に所定のアルゴリズムについての具体的な説明がある。
【0034】
車載端末は更に現在車両の現在位置の道路属性情報を取得し、道路属性情報に基づいて現在車両の他の走行制限速度を決定することができる。
【0035】
好ましくは、前方車両の走行速度に基づき、前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度を計算する際に様々な解決手段があり、以下にいくつかの実現可能な解決手段を説明する。
【0036】
解決手段1
前方車両の走行速度、現在車両と前方車両との間の距離及び所定の予想衝突時間に基づき、前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度を決定する。
【0037】
所定の予想衝突時間は事故が起こらないために要求される予想衝突時間の最小値であり、当業者がその数値を予め設定し、予想衝突時間は前方車両と現在車両が走行速度を変えない場合、現在車両が前方車両と衝突するために必要な時間である。複数回の実験によって、当業者が予想衝突時間を取得でき、前記予想衝突時間が一般的に運転手の反応速度によって決定される。
【0038】
実施中において、以下の公式(1)で前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度を計算することができる。
【0039】
【数1】
式中、vLimitが前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度を示し、vが前方車両の走行速度を示し、dが現在車両と前方車両との間の距離を示し、tlcが予想衝突時間を示し、一般的にtlc=6.0sに設定する。計算されたvLimitを前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度として決定する。
【0040】
解決手段2
前方車両の走行速度、現在車両と前方車両との間の距離及び所定の予想衝突時間に基づき、現在車両の第1走行制限速度を決定する。前方車両の走行速度、現在車両と前方車両との間の距離、所定の現在車両と前方車両との間の安全距離、現在車両と前方車両との間の距離を安全距離に調整するために必要な所定の走行時間及び所定の加速時間に基づき、現在車両の第2走行制限速度を決定する。前方車両の走行速度が現在車両の走行速度以上である場合、第1走行制限速度と第2走行制限速度のうちの最小値を前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度として決定する。前方車両の走行速度が現在車両の走行速度より小さい場合、第1走行制限速度と第2走行制限速度のうちの最大値を前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度として決定する。
【0041】
実施中において、本解決手段は2つの走行制限速度すなわち第1走行制限速度及び第2走行制限速度を中間量として用い、次にそれらに基づいて最終的な前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度を決定する。
【0042】
まず、本解決手段における第1走行制限速度の計算方式は上記解決手段1における前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度の計算方式と同じであり、解決手段1におけるステップを参照して処理して、第1走行制限速度を取得することができる。
【0043】
次に、以下の公式(2)でまず現在車両と前方車両との間の距離を計算して安全距離の加速度上限alimitに調整する。
【0044】
【数2】
式中、alimitが加速度上限を示し、aaddが人工的に設定された調整値を示し、様々なニーズに応じて加速度上限を微調整し、aadd=0.2m/sに設定してもよい。aがt時間内に現在車両から前方車両までの距離を安全距離に調整する加速度を示し、一般的にaの値範囲が[−4,1.5]であり、上記公式(3)で計算されたaが値範囲内の最大値より大きい場合、aの値を値範囲内の最大値に修正し、上記公式(3)で計算されたaが値範囲内の最小値より小さい場合、aの値を値範囲内の最小値に修正する。dが現在車両から前方車両までの距離を示し、dが所定の現在車両と前方車両との間の安全距離であり、dがd=v×tによって計算されてもよく、vが現在車両の走行速度を示し、tがシステムパラメータであり、具体的な数値を設定する際に車両のブレーキ作用時間を考慮してもよく、t=3sに初期設定する。tが現在車両と前方車両との間の距離を安全距離に調整するために必要な所定の走行時間を示し、具体的な数値を設定する際に車両タイプの加速に対する要求を考慮してもよく、一般的にt=3.0sに設定する。vが前方車両の走行速度を示す。
【0045】
計算された加速度上限alimitに基づき、以下の公式(4)で現在車両の第2走行制限速度を計算する。
【0046】
【数3】
式中、vLimitが現在車両の第2走行制限速度を示し、vが現在車両の走行速度を示し、alimitが上記ステップによって計算された加速度上限を示し、tが所定の加速時間を示し、具体的な数値が車両タイプの加速時間に対する要求を考慮してもよく、一般的にはt=1.5sに設定する。
【0047】
最後に、第1走行制限速度及び第2走行制限速度を計算した後、前方車両の走行速度及び現在車両の走行速度を比較する。前方車両の走行速度が現在車両の走行速度以上である場合、それらのうちの最小値を前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度として決定し、前方車両の走行速度が現在車両の走行速度より小さい場合、それらのうちの最大値を前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度として決定する。
【0048】
車載端末が現在位置の道路属性情報を取得した場合、複数の異なる道路属性情報に基づいて複数の異なる走行制限速度を計算し、この複数の異なる走行制限速度が他の走行制限速度と併称される。
【0049】
好ましくは、道路属性情報が様々あってもよく、他の走行制限速度も様々あってもよく、車線の現在車両に対する走行制限速度、カーブ道路の現在車両に対する走行制限速度及び道路タイプの現在車両に対する走行制限速度を含んでもよく、以下にこのいくつかの状況を例として他の走行制限速度の決定処理を説明する。
【0050】
状況1
他の走行制限速度が車線の現在車両に対する走行制限速度を含む場合、現在位置の道路属性情報に基づき、現在車両の他の走行制限速度を決定することは、現在車線の走行制限速度を車線の現在車両に対する走行制限速度として決定することを含む。
【0051】
1つの道路は1つ又は複数の車線を含んでもよく、現在位置の属する車線が現在道路のいくつかの車線のうち、現在車両の走行中の現在車線である。
【0052】
実施中において、車載端末はナビゲーション測位装置によって電子地図を取得して、現在車両の電子地図における位置を測位し、現在車両がある道路におけるある具体的な車線に位置すると決定して、現在車両の位置する車線の走行制限速度を取得することができ、該走行制限速度は交通管理部門が現在車線の状況に応じて設定した走行制限速度である。例えば、三車線の高速幹線道路の左側車線の走行制限速度が120キロメートル/時間であり、中央車線の走行制限速度が100キロメートル/時間であり、右側車線の走行制限速度が80キロメートル/時間であり、車載端末はナビゲーション測位装置によって現在車両が該三車線の中央車線を走行していると決定する場合、現在車両の該車線における走行制限速度が100キロメートル/時間であると決定でき、更に該走行制限速度を車線の現在車両に対する走行制限速度として決定する。
【0053】
好ましくは、現在車両が車線変更するとき、交通安全のために一定時間内に車線の現在車両に対する走行制限速度が減速しないように制御でき、対応処理は、現在車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更しない場合、現在車線の走行制限速度を車線の現在車両に対する走行制限速度として決定し、現在車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更したことがあり、且つ現在車線の走行制限速度が前車線から車線変更する前の車線の走行制限速度以上である場合、現在車線の走行制限速度を車線の現在車両に対する走行制限速度として決定し、現在車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更したことがあり、且つ現在車線の走行制限速度が現在車線から車線変更する前の車線の走行制限速度より小さい場合、車線変更前の車線の走行制限速度を車線の現在車両に対する走行制限速度として決定するということであってもよい。
【0054】
所定時間は当業者が車載端末に予め設定したものであってもよく、具体的な数値は後車の運転手の一般的な反応速度を考慮してもよく、一般的に5秒に設定してもよい。
【0055】
実施中において、車載端末は運転手が車線変更ボタンを手動で押さえるといった挙動で車両の車線変更情報を取得してもよく、周期的に検出するとき、ナビゲーション測位装置によって車線変更情報を検出してもよい。車載端末は周期的に検出するとき、前の所定時間内に車線変更したかどうかを決定するように、各周期でいずれも現在車両の位置する車線を決定して、現在周期の車線及び前の所定時間内の各周期の車線を比較する。所定時間内のこれらの周期内に、現在車両の位置する車線がいずれも現在車線と同じである場合、この時間内に現在車両が車線変更したことがないと説明され、現在車線の走行制限速度を車線の現在車両に対する走行制限速度として決定する。
【0056】
上記所定時間内に、少なくとも1つの周期に対応する車線が現在車線と異なる場合、現在車両が車線変更したと見なされてもよく、この時、車線変更後の車線の走行制限速度が車線変更前の車線の走行制限速度以上である場合、図2に示すように、車線変更後の車線の走行制限速度(すなわち、現在車線の走行制限速度)を車線の現在車両に対する走行制限速度として決定する。現在車両が一回車線変更した又は複数回車線変更した場合、いずれも上記処理方法で処理する。
【0057】
上記所定時間内に、少なくとも1つの周期に対応する車線が現在車線と異なる場合、現在車両が車線変更したと見なされてもよい。現在車両が一回車線変更したと検出し、且つ車線変更後の走行制限速度が車線変更前の車線の走行制限速度より小さい場合、図3に示すように、車線変更前の車線の走行制限速度を車線の現在車両に対する走行制限速度として決定する。現在車両が複数回車線変更したと検出し、且つ各回の車線変更後の走行制限速度がいずれも車線変更前の車線の走行制限速度より小さい場合、最終回の車線変更前の車線の走行制限速度を車線の現在車両に対する走行制限速度として決定する。
【0058】
なお、現在車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更したことがないと検出した上記状況は、車載端末が現在周期に車線変更命令を受信したことがない条件を暗に含む。つまり、上記処理状況は、現在車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更せず、且つ現在時刻に車線変更命令を受信したことがない場合、現在車線の走行制限速度を車線の現在車両に対する走行制限速度として決定するということであってもよい。
【0059】
また、上記処理によれば、車載端末が現在周期に車線変更命令を受信した場合には、現在周期に車線変更命令を受信したことがあり、且つ現在車線の走行制限速度が入ろうとする車線の走行制限速度より小さい場合、入ろうとする車線の走行制限速度を車線の現在車両に対する走行制限速度として決定するという特別な処理を行う。現在車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更せず、且つ現在時刻に車線変更命令を受信したことがあって、現在車線の走行制限速度が入ろうとする車線の走行制限速度以上である場合、現在車線の走行制限速度を車線の現在車両に対する走行制限速度として決定する。
【0060】
上記状況の処理によれば、車両が低速車線から高速車線に車線変更する場合、車線変更命令を受信してから該車線変更命令に基づいて実際に車線変更しないとき、車線の現在車両に対する走行制限速度を予め加速し、車両を高速車線に加速で車線変更させる。車両が高速車線から低速車線に変速する場合、車線変更命令を受信してから該車線変更命令に基づいて実際に車線変更しないとき、現在車線の現在車両に対する走行制限速度を維持しながら、車両を加速で車線変更させることができる。
【0061】
状況2
他の走行制限速度がカーブ道路の現在車両に対する走行制限速度を含む場合、現在位置の道路属性情報に基づき、現在車両の他の走行制限速度を決定することは、現在位置の道路曲率に基づき、カーブ道路の現在車両に対する走行制限速度を決定することを含む。
【0062】
実施中において、車載端末は現在車両の電子地図における測位に基づき、現在車両が現在カーブ道路に位置すると決定し、図4に示すように、車載端末はナビゲーション測位装置によって現在カーブ道路をサンプリングし、現在カーブ道路の最大曲率kを計算し、計算された曲率kに基づき、以下の公式(5)でカーブ道路の現在車両に対する走行制限速度を計算する。
【0063】
【数4】
vLimit_kがカーブ道路の現在車両に対する走行制限速度を示し、kが現在カーブ道路の最大曲率を示し、具体的な数値は車載端末がナビゲーション測位装置によってサンプリングして決定したものであり、uは横力係数であり、当業者が予め設定したものであってもよく、具体的な数値の設定が一般的なカーブ道路の平均湾曲状況を考慮してもよく、現在車両の車載端末がu=0.2に初期設定され、gが重力加速度を示し、g=9.8m/sである。
【0064】
カーブ道路の現在車両に対する走行制限速度を計算した後、該カーブ道路を走行するとき、該走行速度をカーブ道路の現在車両に対する走行制限速度として決定する。
【0065】
状況3
他の走行制限速度が道路タイプの現在車両に対する走行制限速度を含む場合、現在位置の道路属性情報に基づき、現在車両の他の走行制限速度を決定することは、現在位置の道路タイプ及び予め記憶される道路タイプと走行制限速度との対応関係に基づき、道路タイプの現在車両に対する走行制限速度を決定することを含む。
【0066】
実施中において、車両が異なるタイプの道路を走行し、現在車両の走行制限速度も異なり、交通法は様々なタイプ道路に対応する走行制限速度を規定したが、様々なタイプ道路と走行制限速度との対応関係を対応関係表の形式で車載端末に記憶してもよく、表1に示される。
表1
【0067】
【表1】
車載端末はナビゲーション測位装置によって現在車両の走行中の現在道路のタイプを決定して、上記対応関係表から現在道路タイプの現在車両に対する走行制限速度を検索し、該走行制限速度を道路タイプの現在車両に対する走行制限速度として決定する。
【0068】
上記に基づき、車両走行過程において、そのうちの1つの状況を考慮してもよく、任意の複数の状況を総合的に考慮してもよく、つまり、上記他の走行制限速度は上記いくつかの走行制限速度のうちの1つ又は任意の組み合わせを含んでもよい。
【0069】
ステップ102において、前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度及び他の走行制限速度に基づき、現在車両の総合走行制限速度を決定する。
【0070】
総合走行制限速度はすべての状況に基づいて計算されたすべての走行制限速度であって、決定された最終的な走行制限速度である。
【0071】
好ましくは、前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度と他の走行制限速度のうちの最小値を現在車両の総合走行制限速度として決定する。
【0072】
実施中において、前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度及びすべての他の走行制限速度を決定した後、前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度及びすべての他の走行制限速度を比較して、そのうちの最小値を決定し、それを現在車両の総合走行制限速度として決定する。他の走行制限速度は、様々な走行状況において、車線の現在車両に対する走行制限速度、カーブ道路の現在車両に対する走行制限速度及び道路タイプの現在車両に対する走行制限速度のうちの1つの又は任意の組み合わせを含んでもよい。
【0073】
好ましくは、上記取得された前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度、他の走行制限速度及び所定の第3走行制限速度によって、現在車両の総合走行制限速度を決定することができ、対応処理は、前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度、他の走行制限速度及び所定の第3走行制限速度のうちの最小値を現在車両の最大走行速度として決定するということであってもよい。
【0074】
所定の第3走行制限速度は、運転手がその必要に応じて設定した走行制限速度であってもよい。例えば、車に乳児又は妊婦がいる場合、更に乗客の安全を確保するように、運転手が第3走行制限速度を60キロメートル/時間として設定することができる。
【0075】
実施中において、前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度、他の走行制限速度及び第3走行制限速度を決定した後、前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度、他の走行制限速度及び第3走行制限速度を比較し、そのうちの最小値を決定し、それを現在車両の総合走行制限速度として決定する。他の走行制限速度は、様々な走行状況において、車線の現在車両に対する走行制限速度、カーブ道路の現在車両に対する走行制限速度、道路タイプの現在車両に対する走行制限速度のうちの1つの又は任意の組み合わせを含んでもよい。
【0076】
ステップ103において、総合走行制限速度に基づいて運転を制御する。
【0077】
実施中において、総合走行制限速度を決定した後、車両運転を行うように、総合走行制限速度を実際の走行速度の計画の策定根拠とし、実際の走行速度が総合走行制限速度を超えることがない。
【0078】
本願の実施例において、総合走行制限速度を計算するとき、判断要素がより全面的であり、走行中の複雑な状況に適用でき、走行安全性を向上させる。
【0079】
同じ技術的構想に基づき、本願の実施例は更に車両運転を制御するための装置を提供し、該装置が上記実施例における車載端末であってもよい。図5に示すように、該装置は第1決定モジュール510、第2決定モジュール520及び制御モジュール530を備える。
【0080】
第1決定モジュール510は、前方車両の走行速度、現在車両と前記前方車両との間の距離及び所定の予想衝突時間に基づき、前記前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度を決定し、現在位置の道路属性情報に基づき、現在車両の他の走行制限速度を決定するように構成され、
第2決定モジュール520は、前記前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度及び前記他の走行制限速度に基づき、現在車両の総合走行制限速度を決定するように構成され、
制御モジュール530は、前記総合走行制限速度に基づいて運転を制御するように構成される。
【0081】
好ましくは、前記他の走行制限速度は車線の現在車両に対する走行制限速度、カーブ道路の現在車両に対する走行制限速度及び道路タイプの現在車両に対する走行制限速度のうちの1つ又は任意の組み合わせを含み、
前記第1決定モジュール510は、
前記他の走行制限速度が車線の現在車両に対する走行制限速度を含む場合、現在車線の走行制限速度を車線の現在車両に対する走行制限速度として決定し、
前記他の走行制限速度がカーブ道路の現在車両に対する走行制限速度を含む場合、現在位置の道路曲率に基づき、カーブ道路の現在車両に対する走行制限速度を決定し、
前記他の走行制限速度が道路タイプの現在車両に対する走行制限速度を含む場合、現在位置の道路タイプ及び予め記憶される道路タイプと走行制限速度との対応関係に基づき、道路タイプの現在車両に対する走行制限速度を決定するように構成される。
【0082】
好ましくは、前記第1決定モジュール510は、
現在車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更しない場合、現在車線の走行制限速度を車線の現在車両に対する走行制限速度として決定し、
現在車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更したことがあり、且つ現在車線の走行制限速度が前記現在車線から車線変更する前の車線の走行制限速度以上である場合、現在車線の走行制限速度を車線の現在車両に対する走行制限速度として決定するように構成される。
【0083】
好ましくは、前記第1決定モジュール510は、
現在車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更せず、且つ現在時刻に車線変更命令を受信したことがない場合、現在車線の走行制限速度を車線の現在車両に対する走行制限速度として決定するように構成される。
【0084】
好ましくは、前記第1決定モジュール510は、
現在車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更せず、且つ現在時刻に車線変更命令を受信したことがあって、現在車線の走行制限速度が入ろうとする車線の走行制限速度以上である場合、現在車線の走行制限速度を車線の現在車両に対する走行制限速度として決定し、
現在車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更せず、且つ現在時刻に車線変更命令を受信したことがあって、現在車線の走行制限速度が入ろうとする車線の走行制限速度より小さい場合、前記入ろうとする車線の走行制限速度を車線の現在車両に対する走行制限速度として決定するように構成される。
【0085】
好ましくは、前記第1決定モジュール510は、
現在車両が現在時刻以前の所定時間内に車線変更したことがあり、且つ現在車線の走行制限速度が前記現在車線から車線変更する前の車線の走行制限速度より小さい場合、車線変更前の車線の走行制限速度を車線の現在車両に対する走行制限速度として決定するように構成される。
【0086】
好ましくは、前記第1決定モジュール510は、
前記前方車両の走行速度、現在車両と前記前方車両との間の距離及び所定の予想衝突時間に基づき、現在車両の第1走行制限速度を決定し、
前記前方車両の走行速度、現在車両と前記前方車両との間の距離、所定の現在車両と前記前方車両との間の安全距離、現在車両と前記前方車両との間の距離を前記安全距離に調整するために必要な所定の走行時間及び所定の加速時間に基づき、現在車両の第2走行制限速度を決定し、
前記前方車両の走行速度が現在車両の走行速度以上である場合、第1走行制限速度と第2走行制限速度のうちの最小値を前記前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度として決定し、
前記前方車両の走行速度が現在車両の走行速度より小さい場合、第1走行制限速度と第2走行制限速度のうちの最大値を前記前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度として決定するように構成される。
【0087】
好ましくは、前記第2決定モジュール520は、前記前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度と前記他の走行制限速度のうちの最小値を現在車両の総合走行制限速度として決定するように構成される。
【0088】
好ましくは、前記第2決定モジュール520は、
前記前方車両によって課される現在車両に対する走行制限速度、前記他の走行制限速度及び所定の第3走行制限速度のうちの最小値を現在車両の総合走行制限速度として決定するように構成される。
【0089】
上記実施例における装置について、各モジュールが操作を実行する具体的な方式は既に該方法に関わる実施例において詳しく説明したため、ここで詳細な説明は省略する。
【0090】
本願の実施例において、総合走行制限速度を計算するとき、判断要素が様々な複雑な状況における要素を含み、従って、計算された総合走行制限速度が走行中の複雑な状況に適用でき、走行安全性を向上させる。
【0091】
なお、上記実施例に係る車両運転を制御するための装置は車両を運転制御するとき、上記各機能モジュールの分割のみを例として説明し、実際の応用では、以上に説明される全部又は一部の機能を完了するように、必要に応じて上記機能を異なる機能モジュールで完了するように分配し、つまり、装置の内部構造を異なる機能モジュールに分割することができる。また、上記実施例に係る車両運転を制御するための装置は車両運転を制御するための方法の実施例と同じ構想に属し、その具体的な実現過程は方法実施例を参照してもよく、ここで詳細な説明は省略する。
【0092】
図6には本願の実施例に係る端末の構造模式図を示し、該端末は上記実施例に係る車両運転を制御するための方法を実施することに用いられてもよい。
【0093】
具体的には、端末600はセンサシステム102、プロセッサ104、周辺装置106、メモリ150等の部材を備えてもよい。当業者であれば、図6に示される端末構造が端末を制限するためのものではなく、図示より多く又は少ない部材を備え、又はいくつかの部材を組み合わせ、又は異なる部材を配置してもよいと理解される。
【0094】
センサシステム102は必要なデータを測定することに用いられてもよく、具体的に、センサシステム102は全地球測位システムモジュール108、慣性測定ユニット110、RADAR(radio detection and ranging、電波による探知及び測距)112、レーザー距離計114、カメラ116、(複数の)アクチュエータ118を備えてもよい。全地球測位システムモジュール108は全地球範囲内に自動車をリアルタイムに測位、ナビゲーションすることに用いられてもよく、慣性測定ユニット110は自動車の三軸姿勢角(又は角速度)及び加速度を測定することに用いられてもよく、RADAR 112は自動車の距離、方位、速度等の状態パラメータを測定することに用いられてもよく、RADAR 112はアンテナ、送信機、受信機(信号プロセッサ)及びディスプレイ等の部分で構成されてもよく、レーザー距離計114は変調レーザーのあるパラメータによって自動車の距離測定を実現することができ、カメラ116は現在の道路状況の画像を取得することに用いられてもよく、(複数の)アクチュエータ118は自動車のモータの回転運動をプッシュロッドの直線運動に変換することができる。端末600に更に配置できるジャイロスコープ、気圧計、湿度計、温度計、赤外線センサ等の他のセンサは省略する。
【0095】
プロセッサ104は端末600のコントロールセンターであり、様々なインターフェース及び回路を利用して自動車全体の各部分に接続され、メモリ150に記憶されるソフトウェアプログラム及び/又はモジュールを動作又は実行し、メモリ150に記憶されるデータを呼び出すことにより、端末600の様々な機能及び処理データを実行し、それにより自動車全体を監視する。具体的に、プロセッサ104はステアリング制御モジュール120、スロットル制御モジュール122、ブレーキユニット124、コンピュータビジョンシステム126、ナビゲーション/経路制御システム128、障害物回避システム130、地図データ132を備えてもよい。ステアリング制御モジュール120は自動車がステアリングするように指示することに用いられてもよく、スロットル制御モジュール122は自動車が加速走行するように指示することに用いられてもよく、ブレーキユニット124は自動車が減速走行又は停止するように指示することに用いられてもよく、コンピュータビジョンシステム126は自動車の各パラメータを表示することに用いられてもよく、ナビゲーション/経路制御システム128は自動車の現在の走行道路の状況を示すことに用いられてもよく、障害物回避システム130は自動車が現在の走行経路における障害物を回避するように指示して、走行経路を適切に変更及び調整することに用いられてもよい。好ましくは、プロセッサ104は1つ又は複数の処理コアを備えてもよく、好ましくは、プロセッサ104はアプリケーションプロセッサ及びモデムプロセッサを統合することができ、アプリケーションプロセッサは主にオペレーティングシステム等を処理し、モデムプロセッサは主に無線通信を処理する。上記モデムプロセッサがプロセッサ104に統合されなくてもよいと理解される。
【0096】
周辺装置106は無線通信132、タッチパネル134、マイクロフォン136、拡声器138を備えてもよい。無線通信132は主にマイクロ波通信及び衛星通信を含み、電磁波信号が空間を自由に伝播できるという特性を利用して情報交換を行うことができ、対応機能を実現するように、タッチパネル134は自動車の関連パラメータ及び道路状況等の情報を表示して、ユーザーのタッチ信号を受信することに用いられてもよく、マイクロフォン136、拡声器138はユーザーと端末600とのオーディオインターフェースを提供することができる。オーディオ回路は受信されたオーディオデータを変換した電気信号を拡声器138に伝送し、拡声器138によって音声信号に変換して出力することができる一方、マイクロフォン136が収集された音声信号を電気信号に変換し、オーディオ回路によって受信してからオーディオデータに変換し、更にオーディオデータをプロセッサ104に出力して処理した後、RF回路によって例えば他の端末に送信し、又は、更なる処理を行うように、オーディオデータをメモリ150に出力する。
【0097】
メモリ150は自動車の制御に関連する命令及びデータを記憶することに用いられてもよく、特に、メモリ150は地図データ140を含んでもよく、地図データ140は自動車近傍範囲内の地図経路及び関連データを示すことに用いられてもよい。
【0098】
図示しないが、端末600は更にWebカメラ、ブルートゥース(登録商標)モジュール等を備えてもよく、ここで詳細な説明は省略する。具体的に、本実施例において、端末600は更にメモリ及び1つ又は1つ以上のプログラムを備え、1つ又は1つ以上のプログラムがメモリに記憶され、且つ構成によって1つ又は1つ以上のプロセッサでこの1つ又は1つ以上のプログラムを実行することにより上記各実施例に記載の車両運転を制御するための方法を実行する。
【0099】
本願の実施例は更にコンピュータ可読記憶媒体を提供し、前記記憶媒体に少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットが記憶され、上記車両運転を制御するための方法を実現するように、前記少なくとも1つの命令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット又は命令セットが前記プロセッサによりロード・実行される。
【0100】
当業者であれば、上記実施例の全部又は一部のステップの実現はハードウェアにより完了してもよく、プログラムによって関連するハードウェアを命令することで完了してもよく、前記プログラムがコンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよく、上記言及した記憶媒体が読み出し専用メモリ、磁気ディスク又は光ディスク等であってもよいと理解される。
【0101】
以上の説明は本願の好適な実施例であって、本願を制限するためのものではなく、本願の趣旨及び原則内に行ったいかなる修正、等価置換、改良等は、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0102】
【特許文献1】特開2007−145095号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6