【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の上位概念に基づいて、そこに記載の特徴に関連して解決される。請求項1に続く従属請求項は、それぞれ、本発明の有利な発展実施形態を表す。さらに、本発明による変速機が使用される自動車のドライブトレインは、請求項15の主題である。
【0007】
本発明により、変速機は、変速機入力部と、変速機出力部と、第1、第2、第3、第4、及び第5遊星歯車セットと、を備える。この場合遊星歯車セットは、それぞれ、複数の要素を備え、変速機入力部から変速機出力部へとパワーフローを導くよう機能する。さらに、6つのシフト要素が備えられている。シフト要素を選択的に作動させることにより、変速機入力部と変速機出力部との間で、異なる速度を切り替えて、遊星歯車セットを介する異なるパワーフロー経路を実現可能である。
【0008】
本発明の意味において、変速機入力部は、好適には駆動軸の端部に構成されている。駆動軸を介して、駆動運動が変速機に導入される。本発明の範囲において、変速機出力部は、出力軸の端部に画定できる。出力軸を介して、その都度切り替えられた速度に応じて変速された駆動運動が、変速機から導き出される。しかしながら、変速機出力部を、歯車の歯部により構成することもできる。変速された駆動運動は、歯車に作用可能である。好適には、変速機入力部及び変速機出力部は、軸方向で、変速機の相互に反対側に位置する端部に備えられている。
【0009】
本発明の意味において、「軸」との用語は、変速機の回転可能な構成部分、と理解される。変速機の関連するコンポーネントが、この構成部分を介して、軸方向及び/又は径方向で相対回転不能に相互接続されている。または、その種の接続を、この構成部分を介して、対応するシフト要素が作動すると、作り出すことが可能である。そのため、各軸は中間部品として存在することもできる。中間部品を介して、各コンポーネントは、例えば径方向で変速機出力部と接続される。
【0010】
本発明の意味において、「軸方向」との用語は、変速機入力軸の方向の配向を意味する。この方向に沿って、遊星歯車セットは、相互に同軸で配置されている。次いで、「径方向」との用語は、変速機入力軸上に存在する軸の直径方向の配向、と理解される。
【0011】
遊星歯車セットは、軸方向で、好適には、第1遊星歯車セット、第2遊星歯車セット、第3遊星歯車セット、第4遊星歯車セット、及び第5遊星歯車セットの順番で配置されている。しかしながら、原則的には、本発明の範囲において、他の配置をとることもできる。
【0012】
本発明は、以下の技術的教示を含む。つまり、第2遊星歯車セットの第3要素及び第3遊星歯車セットの第2要素は、相対回転不能に相互接続され、共に第1シフト要素を介して、相対回転不能な構成要素に固定できる。また、第4遊星歯車セットの第1要素も、第2シフト要素を用いて、この相対回転不能な構成要素に固定可能である。さらに、変速機入力部は、第2遊星歯車セットの第1要素と相対回転不能に接続されている。第2遊星歯車セットの第2要素は、第4遊星歯車セットの第3要素と相対回転不能に接続している。これに対して、第4遊星歯車セットの第2要素は、変速機出力部と相対回転不能に接続され、第3シフト要素を介して、第5遊星歯車セットの第2要素と相対回転不能に接続できる。さらに、第5遊星歯車セットの第2要素は、第4シフト要素を用いて、第4遊星歯車セットの第1要素と相対回転不能に接続可能である。さらに、第3遊星歯車セットの第1要素は、第5遊星歯車セットの第3要素と相対回転不能に接続している。第5遊星歯車セットの第1要素は、常時、相対回転不能な構成要素に固定されている。第3遊星歯車セットの第3要素は、第5シフト要素を介して、第2遊星歯車セットの第2要素及び第4遊星歯車セットの第3要素と相対回転不能に接続できる。最後に、第1遊星歯車セットでは、第1遊星歯車セットの第1要素の、相対回転不能な構成要素との第1連結、第1遊星歯車セットの第2要素の、変速機入力部との第2連結、及び第1遊星歯車セットの第3要素の、第3遊星歯車セットの第3要素との第3連結が存在する。これらの連結のうち、2つの連結は、常時の相対回転不能な接続として存在する。一方残りの連結では、第6シフト要素を用いて、相対回転不能な接続を作り出すことが可能である。
【0013】
換言すると、本発明による変速機では、つまり、第2遊星歯車セットの第3要素及び第3遊星歯車セットの第2要素が、常時、相対回転不能に相互接続されている。一方、第2遊星歯車セットの第2要素と第4遊星歯車セットの第3要素との間には、常時の相対回転不能な接続が存在する。同様に、第3遊星歯車セットの第1要素及び第5遊星歯車セットの第3要素は、常時、相対回転不能に相互接続されている。一方、第5遊星歯車セットの第1要素は、常時、相対回転不能な構成要素に固定されている。変速機入力部は、さらに、第2遊星歯車セットの第1要素と、常時、相対回転不能に接続している。一方、第4遊星歯車セットの第2要素及び変速機出力部は、常時、相対回転不能に相互接続されている。
【0014】
第1シフト要素の作動により、第2遊星歯車セットの第3要素及び第3遊星歯車セットの第2要素が、共に、相対回転不能な構成要素に固定される。第2シフト要素を閉じることにより、第4遊星歯車セットの第1要素も、相対回転不能な構成要素で停止させることができる。第2シフト要素の相対回転不能な構成要素は、個別に構成されてもよい。第3シフト要素を閉じることにより、第5遊星歯車セットの第2要素は、第4遊星歯車セットの第2要素と相対回転不能な接続を有する。それに伴って、第5遊星歯車セットの第2要素が、結果的に変速機出力部とも相対回転不能な接続を有する。さらに、第5遊星歯車セットの第2要素は、第4シフト要素の作動によっても、第4遊星歯車セットの第1要素と相対回転不能に接続できる。第5シフト要素は、閉じられた状態で、第2遊星歯車セットの第2要素及び第4遊星歯車セットの第3要素を、共に、第3遊星歯車セットの第3要素と接続する。
【0015】
第1遊星歯車セットの場合、本発明による変速機では、第1遊星歯車セットの要素の3つの連結が存在する。そのため、第1連結は、第1遊星歯車セットの第1要素が相対回転不能な構成要素と連結する形状で存在する。一方、第1遊星歯車セットの第2要素の場合、変速機入力部への第2連結が存在する。次に、第3連結は、第1遊星歯車セットの第3要素が第3遊星歯車セットの第3要素と連結する形状で存在する。この場合、前述の3つの連結のうち、2つの連結は、常時の相対回転不能な接続として実現されている。一方、その都度の残りの連結は、第6シフト要素を閉じることによってのみ、相対回転不能に作り出される接続として存在する。
【0016】
本発明の意味において、「連結」との用語は、常時の相対回転不能な接続として存在する接続、又は、各シフト要素の作動によってのみ相対回転不能に作り出される接続、と理解される。
【0017】
変速機の相対回転不能な構成要素は、本発明によれば、変速機の常時静止しているコンポーネントであり、好適には、変速機ハウジング、又はその種の変速機ハウジングの一部、又は変速機ハウジングと堅固に接続されたコンポーネントである。第5遊星歯車セットの第1要素は、相対回転不能な構成要素と相対回転不能に接続され、したがって常時静止している。同様に、第2遊星歯車セットの第3要素及び第3遊星歯車セットの第2要素、並びに第4遊星歯車セットの第1要素は、それぞれ関連するシフト要素の作動によってのみ、停止できる。
【0018】
本発明による変速機では、第1及び第2シフト要素はブレーキとして構成されている。ブレーキは、制御の際に、変速機の各回転可能なコンポーネント又は相対回転不能に相互接続された回転可能なコンポーネントを停止するよう制動し、相対回転不能な構成要素に固定する。これに対して、第3、第4、及び第5シフト要素はクラッチとして存在する。クラッチは、作動すると、その都度、変速機の関連する回転可能なコンポーネントの回転運動を相互に同期させ、続いて回転不能に相互接続する。第1遊星歯車セットの連結のうちの何れの連結において、第6シフト要素を介する相対回転不能な接続が作り出されるかに応じて、第6シフト要素は、ブレーキ又はクラッチとなる。
【0019】
好適には、第1シフト要素は、軸方向で、第3遊星歯車セットと第4遊星歯車セットとの間に備えられている。一方、第2シフト要素は、特に、第5遊星歯車セットの、変速機入力部と反対に位置し、変速機出力部に面して位置する側にある。好適には、第3シフト要素及び第4シフト要素は共に、軸方向で、第4遊星歯車セットと第5遊星歯車セットとの間に備えられ、さらに好適には軸方向で直接に、相互に隣接する。さらに、第3及び第4シフト要素は、この場合、実質的に同じ径方向の高さに備えられている。この場合、第3及び第4シフト要素の空間的配置により、これら2つのシフト要素の共通供給を考慮できる。第5シフト要素は、軸方向で、好適には第1遊星歯車セットと第2遊星歯車セットとの間に位置する。
【0020】
遊星歯車セットの回転可能な要素の相対回転不能な各接続は、本発明によれば、1つ又は複数の介在する軸を介して実現することが好適である。これらの軸は、この場合、要素の位置が空間的に密である際には、軸方向及び/又は径方向の短い中間部材として存在してもよい。具体的には、遊星歯車セットの常時相対回転不能に相互接続された要素は、それぞれ、相対回転不能に相互接続された個別コンポーネントとして又はワンピースとして存在できる。後者の場合には、各要素及び場合によって存在する軸は、共通の構成部分によって構成される。このケースは、特に、各要素が変速機において空間的に密に近接して位置する場合に実現される。
【0021】
遊星歯車セットにおいて、各シフト要素の作動によってのみ相対回転不能に相互接続される要素では、同様に、1つ又は複数の介在する軸を介して接続が実現される。
【0022】
全体として、本発明による変速機は、設計がコンパクトであり、構成部分に対する負荷が低く、噛み合い効率が良好であり、伝達損失が僅かであることを特徴とする。
【0023】
本発明の一実施形態に対応して、第1遊星歯車セットの第2要素は、変速機入力部と相対回転不能に接続している。第1遊星歯車セットの第3要素は、第3遊星歯車セットの第3要素と相対回転不能に接続している。一方、第1遊星歯車セットの第1要素は、第6シフト要素を用いて、相対回転不能な構成要素に固定できる。
【0024】
この場合つまり、第1遊星歯車セットの第2要素は、変速機入力部と、常時、相対回転不能に接続されている。第1遊星歯車セットの第3要素は、第3遊星歯車セットの第3要素と相対回転不能に接続されている。一方、第1遊星歯車セットの第1要素は、第6シフト要素の作動によってのみ、相対回転不能な構成要素に固定される。この場合、第6シフト要素は、軸方向で、第1遊星歯車セットの変速機入力部に面する側に位置することが好適である。
【0025】
本発明の代替的な実施形態の可能性によれば、第1遊星歯車セットの第1要素は相対回転不能な構成要素に固定されており、一方、第1遊星歯車セットの第3要素は、第3遊星歯車セットの第3要素と相対回転不能に接続している。これに対して、第1遊星歯車セットの第2要素は、第6シフト要素を用いて、変速機入力部と相対回転不能に接続できる。
【0026】
このバリエーションでは、つまり、第1遊星歯車セットの第1要素は、常時、相対回転不能な構成要素に固定されており、一方、第1遊星歯車セットの第3要素は、第3遊星歯車セットの第3要素と、常時、相対回転不能に接続している。第1遊星歯車セットの第2要素は、第6シフト要素を閉じることにより、変速機入力部と相対回転不能に接続される。この場合、第6シフト要素は、軸方向で、第1遊星歯車セットと第2遊星歯車セットとの間に位置することが好適であり、さらに好適には、軸方向で第5シフト要素に隣接し、第5シフト要素に対して径方向内側に備えられている。
【0027】
本発明の更なる代替的な実施形態によれば、第1遊星歯車セットの第1要素は相対回転不能な構成要素に固定されており、一方、第1遊星歯車セットの第2要素は、変速機入力部と相対回転不能に接続している。これに対して、第1遊星歯車セットの第3要素は、第6シフト要素を用いて、第3遊星歯車セットの第3要素と相対回転不能に接続できる。
【0028】
この場合つまり、第1遊星歯車セットの第1要素は、再び、常時、相対回転不能な構成要素に固定されている。第1遊星歯車セットの第2要素は、常に、変速機入力部と相対回転不能に接続されている。一方、第1遊星歯車セットの第3要素の、第3遊星歯車セットの第3要素に対する相対回転不能な接続は、第6シフト要素を閉じることによってのみ作り出される。この場合、第6シフト要素は、軸方向で、好適には第1遊星歯車セットの歯車面にあり、それに伴って第1遊星歯車セットと実質的に同じ軸方向の高さで、第1遊星歯車セットを径方向で包囲するよう位置する。
【0029】
本発明による変速機の前述のバリエーションでは、前進10速及び後退2速を、3つのシフト要素を選択的に閉じることにより実現することができる。この場合、前進第1速は第1、第4、及び第5シフト要素を作動させることにより切り替えられる。一方、前進第2速は第1、第2、及び第5シフト要素を閉じることにより形成される。しかしながら、これに対して代替的に、前進第2速を、第1、第2、及び第6シフト要素を閉じること、又は第1、第2、及び第3シフト要素を作動させること、又は第1第2、及び第4シフト要素を作動させることによっても、実現できる。さらに、前進第3速は第2、第4、及び第5シフト要素を作動させることにより生じる。一方、前進第4速は第2、第4、及び第6シフト要素を作動させることにより、切り替え可能である。さらに、前進第5速は第2、第3、及び第6シフト要素を閉じることにより実現できる。前進第6速に切り替えるには、第2、第5、及び第6シフト要素を作動させる。これに対して、前進第7速は第3、第5、及び第6シフト要素を作動させることにより生じる。一方、前進第8速は第4、第5、及び第6シフト要素を作動させることにより切り替え可能である。前進第9速は第3、第4、及び第6シフト要素を作動させることにより切り替えることができる。一方、前進第10速に切り替えるには、第3、第4、及び第5シフト要素が閉じられる。
【0030】
後退第1速は第1、第4、及び第6シフト要素を作動させることにより生じる。一方、後退第2速は第1、第3、及び第5シフト要素を閉じることにより切り替えられる。
【0031】
遊星歯車セットの固定変速比が適切に選択された場合、これにより、自動車分野での使用に適した変速比列が実現される。この場合、先行する前進速に関与していたシフト要素のうちの1つのシフト要素を開き、続く前進速を実現するために他の1つのシフト要素を閉じる。そのため、前進速を連続的に順番に従って切り替えるために、常に2つのシフト要素の状態を変化させる。これにより、速度の間の切り替えを極めて迅速に進行させることができる、という結果にもなる。
【0032】
有利には、本発明による変速機では、後退速を、変速機に前置接続された駆動機関を介する駆動用に実現することができる。これは、電気機械が故障した場合にも自動車の後退走行を実現可能とするために、変速機における電気機械の配置に対して代替的又は補完的にも実現することができる。
【0033】
本発明の発展実施形態において、追加第1速は第1、第3、及び第6シフト要素を作動させること、追加第2速は第1、第3、及び第4シフト要素を作動させること、並びに追加第3速は第2、第3、及び第5シフト要素を作動させることにより切り替えることができる。これらの追加速度も、本発明による変速機の前述の個々のバリエーションにおいて実現できる。
【0034】
本発明の更なる実施形態の可能性は、各遊星歯車セットがマイナス遊星歯車セット(シングルピニオン式遊星歯車セット)として存在することである。その場合、各遊星歯車セットの各第1要素は各太陽歯車であり、各遊星歯車セットの各第2要素は各遊星キャリアであり、各遊星歯車セットの各第3要素は各内歯車である。太陽歯車、遊星キャリア、及び内歯車の要素から、当業者にとって原則的に既知の態様で、マイナス遊星歯車セット(シングルピニオン式遊星歯車セット)が構成される。遊星キャリアは、少なくとも1つの、しかしながら好適には複数の、遊星歯車を導く。遊星歯車は、それぞれ個別に、太陽歯車及び周囲の内歯車の両方と噛み合う。この場合、5つの遊星歯車セットのうち、1つ又は複数の遊星歯車セットが、この種のマイナス遊星歯車セット(シングルピニオン式遊星歯車セット)として構成されている。しかしながら、特に好適には、全ての遊星歯車セットが、マイナス遊星歯車セット(シングルピニオン式遊星歯車セット)として存在する。これにより、特にコンパクトな構成が実現される。
【0035】
これに対して代替的又は補完的にも、各遊星歯車セットがプラス遊星歯車セット(ダブルピニオン式遊星歯車セット)として存在する。プラス遊星歯車セット(ダブルピニオン式遊星歯車セット)の場合、各遊星歯車セットの各第1要素は各太陽歯車であり、各遊星歯車セットの各第2要素は各内歯車であり、各遊星歯車セットの各第3要素は各遊星キャリアである。プラス遊星歯車セット(ダブルピニオン式遊星歯車セット)でも、同様に、太陽歯車、内歯車、及び遊星キャリアの要素が存在する。遊星キャリアは、少なくとも1つの遊星歯車対を導く。遊星歯車対では、一方の遊星歯車は内側の太陽歯車と、他方の遊星歯車は周囲の内歯車と噛み合う。また、対の遊星歯車は相互に噛み合う。本発明による変速機では、1つ又は複数の遊星歯車セットが、この種のプラス遊星歯車セット(ダブルピニオン式遊星歯車セット)として構成されてよい。
【0036】
個々の要素の結合が許す場合、マイナス遊星歯車セット(シングルピニオン式遊星歯車セット)をプラス遊星歯車セット(ダブルピニオン式遊星歯車セット)に移行させることができる。その場合、マイナス遊星歯車セット(シングルピニオン式遊星歯車セット)としての実施形態と比較して、内歯車及び遊星キャリアの結合を相互に交換し、変速機固定変速比を、それぞれ、1だけ高める必要がある。逆に、変速機の要素の結合がそれを可能とする場合、プラス遊星歯車セット(ダブルピニオン式遊星歯車セット)も、マイナス遊星歯車セット(シングルピニオン式遊星歯車セット)により置き換えることができる。この場合、プラス遊星歯車セット(ダブルピニオン式遊星歯車セット)と比較して、同様に、内歯車及び遊星キャリアの結合を相互に交換し、変速機固定変速比を、それぞれ、1だけ低減させる必要がある。しかしながら、既述のように、好適には、全ての遊星歯車セットが、マイナス遊星歯車セット(シングルピニオン式遊星歯車セット)として構成されている。
【0037】
本発明の更なる実施形態により、1つ又は複数のシフト要素は、それぞれ、摩擦結合型シフト要素として実現されている。摩擦結合型シフト要素には、負荷がかかった状態で切り替え可能であるため、トラクション力を中断させずに速度間の変更を実行可能である、という利点がある。しかしながら、特に好適には、第1シフト要素は、例えば噛合型クラッチ又はロックシンクロナイザ装置のような形状結合型シフト要素として構成されている。第1シフト要素は、最初の2つの前進速及び2つの後退速の実現に関与するため、この場合、自動車が停止している際に閉じられる。摩擦結合型シフト要素に対して、形状結合型シフト要素には、開かれた状態で、ごく僅かなスリップモメントのみが発生するために、より高い効率が実現される、という利点がある。
【0038】
本発明の発展実施形態において、変速機入力部は、パワーテイクオフと相対回転不能に連結されている。この場合、本発明による変速機は、つまりパワーテイクオフを備えている。パワーテイクオフを介して、補助ユニット等を駆動することができる。この場合、パワーテイクオフは、変速機の変速機入力部に直接に連結されてよい。しかしながら、好適には、パワーテイクオフが第1遊星歯車セットの第2要素に回転不能に接続されている。この場合、さらに好適には、パワーテイクオフは、軸方向で、第1遊星歯車セットと変速機入力部との間に位置する。
【0039】
本発明の更なる実施形態により、変速機入力部は駆動軸に構成され、変速機出力部は出力軸に構成されている。駆動軸及び出力軸は、相互に同軸に位置する。この場合、好適には、変速機入力部は変速機の一方の軸方向端部に備えられている。一方、変速機出力部は、変速機の、これに対して反対側の軸方向端部に構成されている。この種の配置は、特に、ドライブトレインが自動車の走行方向に配向された自動車における使用に適している。しかしながら、これに対して代替的に、変速機出力部を変速機入力部に対して横向きに配向させ、自動車の走行方向に対して横向きのドライブトレインに適した構造を実現することもできる。この場合、変速機出力部は歯部により構成できる。歯部は、変速機入力軸に対して軸線方向で平行に配置された軸の歯部と噛み合う。この場合、駆動軸の車軸差動装置をこの軸上に配置することができる。
【0040】
本発明の発展実施形態には、電気機械が備えられている。電気機械のロータは、変速機の回転可能な構成要素のうちの1つの回転可能な構成要素と、相対回転不能に連結されている。好適には、この場合、電気機械のステータは、変速機の相対回転不能な構成要素と、相対回転不能に接続されている。電気機械は、ここでは、異なる機能を実現するために、電気モータ的に及び/又は発電機的に作動することができる。特に、この場合、純粋な電気走行、電気機械を介するブースト、電気機械を介する、制動及び回生及び/又は変速機における同期を実行できる。電気機械のロータは、この場合、構成要素に対して同軸に位置することができる、又はそれに対して軸方向にオフセットして配置することができる。後者の場合には、例えば平歯車段の形状である1つ又は複数の介在する変速比段を介して、又はチェーン駆動などの牽引機構駆動を介しても、連結を実現することができる。
【0041】
しかしながら、好適には、電気機械のロータは、変速機入力部と相対回転不能に連結されている。これにより、自動車の純粋な電気走行が適切な方法で実現される。さらに好適には、シフト要素のうちの1つ又は複数のシフト要素は、電気走行用の内部始動要素として使用される。特に、第1シフト要素、第4シフト要素、又は第5シフト要素はそれに適している。なぜなら、これらは、それぞれ、後退速のうちの1つの後退速と前進第1速の両方で閉じられているためである。しかしながら、更なる選択肢として、別個の発進クラッチを使用することもできる。発進クラッチは、電気機械と変速機歯車セットとの間に位置する。
【0042】
純粋な電気走行のために、速度のうちの1つの速度に、変速機において切り替えられる。この場合、反対方向の回転運動が電気機械を介して始動され、これにより、自動車の後退走行が各前進速の変速比で生じることで、前進速において、自動車の後退走行も実現可能である。結果的に、前進速の変速比を、電気的前進走行と電気的後退走行の両方に使用することができる。しかしながら、電気機械のロータは、変速機入力部を除いて、変速機の残りの回転可能な構成要素のうちの1つの回転可能な構成要素にも、結合できる。
【0043】
特に電気機械の上述の配置と組み合わせて実現される、本発明の更なる実施形態の可能性により、さらに、分離クラッチを備える。変速機入力部は、分離クラッチを介して、連結軸と相対回転不能に接続可能である。この場合、連結軸は、自動車のドライブトレイン内部で、駆動機関へ結合するよう機能する。分離クラッチを装備することには、純粋な電気走行の過程で駆動機関への接続を中断可能であり、それによって駆動機関が引きずられない、という利点がある。この場合分離クラッチは、好適には、例えば多板クラッチのような摩擦結合型シフト要素として構成されている。しかしながら、分離クラッチは、同様に、例えば噛合型クラッチ又はロックシンクロナイザ装置のような形状結合型シフト要素として存在してもよい。
【0044】
一般に、例えばハイドロダイナミック式トルクコンバータ又は摩擦クラッチである始動要素を変速機に前置接続することは、原則的に可能である。この場合、この始動要素は変速機の構成部分であってよい。始動要素は、内燃機関と変速機の変速機入力部との間のスリップ回転数を可能にすることで、始動プロセスを構成するよう機能する。この場合、変速機のシフト要素のうちの1つのシフト要素又は存在しうる分離クラッチを摩擦型シフト要素とし、これらをそうした始動要素として構成することもできる。さらに、変速機の各軸上に、原則的に、変速機ハウジングへの又は他の軸へのフリーホイールを配置することができる。
【0045】
本発明による変速機は、特に自動車のドライブトレインの一部であり、特に内燃機関として構成された自動車の駆動機関と、パワーフロー方向で自動車の駆動輪へ続く、ドライブトレインの更なるコンポーネントとの間に配置されている。この場合、変速機の変速機入力部は、常時、内燃機関のクランク軸と相対回転不能に連結されている、又は介在する分離クラッチ又は始動要素を介して、クランク軸と接続可能である。内燃機関と変速機との間には、さらに、ねじり振動ダンパを備えることもできる。出力側では、変速機が、自動車のドライブトレイン内部で、好適には自動車の駆動軸のトランスアクスルと連結されている。しかしながら、この場合、インターアクスルディファレンシャルへの結合が存在してもよい。インターアクスルディファレンシャルを介して、自動車の複数の被動軸への分配が行われる。この場合、トランスアクスル又はインターアクスルディファレンシャルは、変速機と共に、共通のハウジング内に配置されてよい。同様に、ねじり振動ダンパも、共にこのハウジングに一体化されてよい。
【0046】
変速機の2つの構成要素が、相対回転不能に、「接続」又は「連結」されている、又は「相互接続している」との用語は、本発明の意味において、これらの構成要素の常時接続を意味する。そのため、これらの構成要素は、相互に独立して回転することができない。これに関連して、これらの構成要素が遊星歯車セットの要素、又は軸、又は変速機の相対回転不能な構成要素であってよい場合、これらの構成要素の間にはシフト要素は備えられず、対応する構成要素は相互に堅固に連結されている。
【0047】
これに対して、シフト要素が変速機の2つの構成要素の間に存在する場合、これらの構成要素は、常時には、相対回転不能に相互連結されておらず、介在するシフト要素の作動によってのみ、相対回転不能に連結される。この場合、本発明の意味において、シフト要素の作動とは、関連するシフト要素が閉じられた状態に移行され、その結果、それに直結された構成要素の回転運動が相互に同期されることを意味する。関連するシフト要素が形状結合型シフト要素として構成されている場合、これを介して直接に相対回転不能に相互接続された構成要素は、同一の回転数で作動する。一方、摩擦結合型シフト要素の場合、関連するシフト要素の作動の後も、構成要素の間に回転数差が存在する可能性がある。しかしながら、これらの意図した又は意図していない状態は、本発明の範囲において、シフト要素を介する各構成要素の相対回転不能な接続と称される。
【0048】
本発明は、主請求項またはそれに従属する請求項に記載の特徴の、特定の組み合わせに限定されるものではない。さらに個々の特徴が、請求項から、本発明の好適な実施形態に関する以下の記載から、または直接的に図面から明らかである限り、それらの個々の特徴を互いに組み合わせる可能性が生じる。請求項において符号を使用して図面を参照する記載は、請求項の保護の範囲を限定するものではない。
【0049】
以下に詳説する本発明の有利な実施形態を、図面に記載する。