(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971333
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】複数の超伝導量子ビットにおけるいずれか2つのビットを結合する方法およびそのシステム
(51)【国際特許分類】
H01L 39/00 20060101AFI20211111BHJP
H01L 29/82 20060101ALI20211111BHJP
H01L 43/02 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
H01L39/00 CZAA
H01L29/82 Z
H01L43/02 Z
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-567584(P2019-567584)
(86)(22)【出願日】2019年3月5日
(65)【公表番号】特表2020-528662(P2020-528662A)
(43)【公表日】2020年9月24日
(86)【国際出願番号】CN2019076924
(87)【国際公開番号】WO2019205810
(87)【国際公開日】20191031
【審査請求日】2019年12月5日
(31)【優先権主張番号】201810380235.6
(32)【優先日】2018年4月25日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519154623
【氏名又は名称】南方科技大学
【氏名又は名称原語表記】SOUTH UNIVERSITY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY OF CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】505294816
【氏名又は名称】▲復▼旦大学
【氏名又は名称原語表記】Fundan University
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107216
【弁理士】
【氏名又は名称】伊與田 幸穂
(72)【発明者】
【氏名】兪 大鵬
(72)【発明者】
【氏名】呉 健生
(72)【発明者】
【氏名】肖 江
(72)【発明者】
【氏名】劉 松
(72)【発明者】
【氏名】袁 少杰
【審査官】
棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−186274(JP,A)
【文献】
特開2013−045840(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/118374(WO,A1)
【文献】
国際公開第2014/207818(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0125311(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0296516(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 39/00
H01L 29/82
H01L 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の超伝導量子ビットからなる複数の超伝導量子ビットアレイ(200)と、スピン波及び当該スピン波が通過するチャネルを形成するための磁性薄膜材料(100)とを有する場合に適用される複数の超伝導量子ビットにおけるいずれか2つのビットを結合する方法であって、
前記磁性薄膜材料(100)を前記複数の超伝導量子ビットアレイ(200)の下方に設けることと、
前記磁性薄膜材料(100)における磁区の磁化方向の組み合わせにより、前記スピン波が通過する複数のチャネルを形成することと、
前記複数の超伝導量子ビットアレイ(200)における量子ビットを前記スピン波が通過するチャネルの上方に対応して設けることにより、単一の前記量子ビットと前記スピン波との結合を実現することと、
前記スピン波が通過するチャネルに少なくとも2つの前記量子ビットが設けられ、単一の前記量子ビットと前記スピン波との間の結合により、2つの前記量子ビット間の結合を実現することと、
を含む、ことを特徴とする複数の超伝導量子ビットにおけるいずれか2つのビットを結合する方法。
【請求項2】
前記磁性薄膜材料(100)における磁区の磁化方向の組み合わせを変更することにより、前記スピン波が通過するチャネルを変更することを更に含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の複数の超伝導量子ビットにおけるいずれか2つのビットを結合する方法。
【請求項3】
前記スピン波は、第1スピン(101)および第2スピン(102)を少なくとも含むことと、
前記第1スピン(101)は、前記複数の超伝導量子ビットアレイ(200)における第1量子ビット(201)に対応して作用することと、
前記第2スピン(102)は、前記複数の超伝導量子ビットアレイ(200)における第2量子ビット(202)に対応して作用することと、
を更に含む、ことを特徴とする請求項1に記載の複数の超伝導量子ビットにおけるいずれか2つのビットを結合する方法。
【請求項4】
前記第1スピン(101)と前記第1量子ビット(201)との間の結合を実現することと、
前記第2スピン(102)と前記第2量子ビット(202)との間の結合を実現することと、
前記第1量子ビット(201)と前記第2量子ビット(202)とが前記スピン波により結合を実現することと、
を含む、ことを特徴とする請求項3に記載の複数の超伝導量子ビットにおけるいずれか2つのビットを結合する方法。
【請求項5】
前記スピン波内の第1スピン(101)および第2スピン(102)の数密度を調節することにより、超伝導量子ビットコイルと前記スピン波との結合エネルギーを調節することを更に含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の複数の超伝導量子ビットにおけるいずれか2つのビットを結合する方法。
【請求項6】
前記超伝導量子ビットコイルと前記磁性薄膜材料(100)との鉛直距離を調節することにより、前記超伝導量子ビットコイルと前記スピン波との結合エネルギーを調節することを更に含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の複数の超伝導量子ビットにおけるいずれか2つのビットを結合する方法。
【請求項7】
前記超伝導量子ビットコイルと前記磁性薄膜材料(100)との鉛直距離を調節することにより、前記超伝導量子ビットコイルと前記スピン波との結合エネルギーを調節することを更に含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の複数の超伝導量子ビットにおけるいずれか2つのビットを結合する方法。
【請求項8】
複数の量子ビットコイルを含む複数の超伝導量子ビットアレイ(200)と、
磁区間の磁壁を導波路とすることによりスピン波チャネルを形成する磁性薄膜材料(100)と、
前記磁性薄膜材料に磁界を付加して前記スピン波チャネル内にあるスピン波を駆動するための駆動装置(300)と、
を備え、
前記複数の超伝導量子ビットアレイ(200)、前記磁性薄膜材料(100)、および前記駆動装置(300)は、鉛直方向において順に設けられている、
ことを特徴とする量子ビット結合システム(10)。
【請求項9】
前記磁性薄膜材料(100)は複数の磁区ユニットに分割され、前記磁区ユニットの磁化方向は前記駆動装置により変更される、ことを特徴とする請求項8に記載の量子ビット結合システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導量子の分野に関し、特に、複数の超伝導量子ビットにおけるいずれか2つのビットを結合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導量子ビットは、制御可能性、低損失および拡張可能性等の面での利点により、量子コンピュータの実現に最も有望なソリッドステート態様の1つとして考えられている。量子ビット間のコヒーレント制御可能結合は、大規模な量子計算を実現するための必要な条件である。
【0003】
現在、公知の超伝導量子ビット間の結合は、コンデンサ、インダクタンス、または超伝導ジョセフソン接合により行われる。このような結合態様は、固定の配線で結合しようとする2つの量子ビットを接続する(ハード接続)必要があり、このような方法は、空間の制約があり、且つ、1つの超伝導量子ビット近傍の数個のビット、または数個の遠隔のビット間の結合しか実現できない。一方、量子計算および量子情報の応用においては、複数の量子ビット間のいずれか2つの結合を実現する必要があることが多く、ハード接続の態様では実現できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに基づき、ハード接続の態様で複数の量子ビット間のいずれか2つの結合を実現できないという問題に対し、複数の超伝導量子ビットにおけるいずれか2つのビットを結合する方法およびそのシステムを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
複数の超伝導量子ビットからなる複数の超伝導量子ビットアレイ
と、スピン波
及び当該スピン波が通過するチャネルを形成するための磁性薄膜材料
とを有する場合に適用される複数の超伝導量子ビットにおけるいずれか2つのビットを結合する方法であって、
前記磁性薄膜材料を前記複数の超伝導量子ビットアレイの下方に設けることと、
前記磁性薄膜材料における磁区の磁化方向の組み合わせにより、前記スピン波が通過する複数のチャネルを形成することと、
前記複数の超伝導量子ビットアレイにおける量子ビットを前記スピン波が通過するチャネルの上方に対応して設けることにより、単一の前記量子ビットと前記スピン波との結合を実現することと、
前記スピン波
が通過するチャネルに少なくとも2つの前記量子ビットが設けられ、単一の前記量子ビットと前記スピン波との間の結合により、2つの前記量子ビットの間の結合を実現することと、
を含む複数の超伝導量子ビットにおけるいずれか2つのビットを結合する方法。
【0006】
上記複数の超伝導量子ビットにおけるいずれか2つのビットを結合する方法は、磁性薄膜材料層および超伝導量子ビット層の上下2層が重なった構造を採用し、磁性薄膜材料層のスピン波を用いて超伝導量子ビット層の量子ビットの状態変化を伝達する。最終的に、超伝導量子ビットとスピン波との結合を利用するとともにスピン波のソフト接続を利用することにより、いずれか2つの超伝導量子ビットの結合を実現することを達成する。
【0007】
そのうちの1つの実施例において、前記磁性薄膜材料における磁区の磁化方向の組み合わせを変更することにより、前記スピン波が通過するチャネルを変更する。
【0008】
そのうちの1つの実施例において、前記スピン波は、第1スピンおよび第2スピンを少なくとも含み、前記第1スピンは、前記複数の超伝導量子ビットアレイにおける第1量子ビットに対応して作用し、前記第2スピンは、前記複数の超伝導量子ビットアレイにおける第2量子ビットに対応して作用する。
【0009】
そのうちの1つの実施例において、前記第1スピンと前記第1量子ビットとの間の結合を実現し、前記第2スピンと前記第2量子ビットとの間の結合を実現し、前記第1量子ビットと前記第2量子ビットとが前記スピン波により結合を実現する。
【0010】
そのうちの1つの実施例において、前記スピン波内の第1スピンおよび第2スピンの数密度を調節することにより、前記超伝導量子ビットコイルと前記スピン波との結合エネルギーを調節する。
【0011】
そのうちの1つの実施例において、前記超伝導量子ビットコイルと前記磁性薄膜材料との鉛直距離を調節することにより、前記超伝導量子ビットコイルと前記スピン波との結合エネルギーを調節する。
【0012】
そのうちの1つの実施例において、前記超伝導量子ビットコイルと前記磁性薄膜材料との鉛直距離を調節することにより、前記超伝導量子ビットコイルと前記スピン波との結合エネルギーを調節する。
【0013】
複数の量子ビットコイルを含む複数の超伝導量子ビットアレイと、
磁区間の磁壁を導波路とすることによりスピン波チャネルを形成する磁性薄膜材料と、
前記磁性薄膜材料に磁界を付加して前記スピン波チャネル内にあるスピン波を駆動するための駆動装置と、
を備え、
前記複数の超伝導量子ビットアレイ、前記磁性薄膜材料、および前記駆動装置は、鉛直方向において順に設けられている量子ビット結合システム。
【0014】
そのうちの1つの実施例において、前記磁性薄膜材料は複数の磁区ユニットに分割され、前記磁区ユニットの磁化方向は前記駆動装置により変更される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例に係る量子ビット結合の方法フローチャートである。
【
図2】本発明の実施例に係る磁性薄膜材料およびビットアレイの平面模式図である。
【
図3】本発明の実施例に係る磁性薄膜材料およびビットアレイの側面模式図である。
【
図4】本発明の実施例に係るスピン波内の単一のスピンおよび量子ビットの構造模式図である。
【
図5】本発明の実施例に係る結合強度の変化曲線図である。
【
図6】本発明の実施例に係る量子ビット結合システムの模式図である。
【符号の説明】
【0016】
磁性薄膜材料 100
第1スピン 101
第2スピン 102
超伝導量子ビットアレイ 200
第1量子ビット 201
第2量子ビット 202
駆動装置 300
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る目的、特徴および利点をより明確に理解しやすくするために、以下、図面を参照しながら本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。本発明を十分に理解するために、以下の説明において多くの具体的な詳細を説明する。しかし、本発明は、ここで説明するものと異なる多くの他の形態で実現することができ、当業者は本発明の内容から逸脱することなく類似する改良を行うことができるため、本発明は、以下に開示される具体的な実施例に限定されない。
【0018】
図1に示すように、本発明は、複数の超伝導量子ビットにおけるいずれか2つのビットを結合する方法を提供し、該方法は、複数の超伝導量子ビットアレイ200を有してスピン波を実現できる磁性薄膜材料100の場合に適用される。前記方法は、具体的に以下のステップを含む。
【0019】
S100において、磁性薄膜材料100を前記複数の超伝導量子ビットアレイ200の下方に設ける。
【0020】
S200において、磁性薄膜材料100における磁区の磁化方向の組み合わせにより、スピン波が通過する複数のチャネルを形成する。
【0021】
S300において、複数の超伝導量子ビットアレイ200における量子ビットを前記スピン波が通過するチャネルの上方に対応して設けることにより、単一の前記量子ビットと前記スピン波との結合を実現する。
【0022】
S400において、スピン波チャネルに少なくとも2つの量子ビットが設けられ、単一の量子ビットとスピン波との間の結合により、2つの量子ビットの間の結合を実現する。
【0023】
S100において、前記磁性薄膜材料100を前記複数の超伝導量子ビットアレイ200の鉛直方向の下方に設けることにより、前記磁性薄膜材料100で前記複数の超伝導量子ビットアレイ200における複数の量子ビットを結合する。
【0024】
前記複数の超伝導量子ビットアレイ200は複数の量子ビットから構成され、前記複数の量子ビットは複数の量子ビットコイルで形成され、各量子ビットコイルの状態はそれぞれ付加回路により制御される。前記磁性薄膜材料100は、スピン波チャネルを形成するために使用される。前記磁性薄膜材料100は複数のユニットに分割され得、各ユニットは1つの磁区であり、且つ、各ユニットの磁区の磁化方向は個別に制御できる。
【0025】
具体的には、
図2を参照する。磁性材料において、交換作用、結晶磁気異方性および磁気双極子相互作用間の競合により、システムは、総エネルギーを低減するために、方向が異なる小型の磁化領域、すなわち磁区を自発的に形成し、隣接する磁区の遷移領域は磁壁となる。理論計算によれば、スピン波が磁壁に束縛状態解(Bound State Solutions)を有し、交換作用および結晶磁気異方性のみを考える場合、該スピン波モードのエネルギーギャップはゼロであり、このような特性により、磁壁はスピン波チャネルとしてスピン波を伝導するために使用できることが分かった。
なお、この理論計算については、文献「PHYSICAL REVIEW X 5, 041049 (2015)」に詳しい。
【0026】
S200において、磁性薄膜材料100における磁区の磁化方向の組み合わせにより、スピン波が通過する複数のチャネルを形成する。前記磁性薄膜材料100は複数の磁区ユニットを備え、前記磁区ユニットは、自体特有の磁化方向を有し、隣接する磁区ユニットの遷移領域が磁壁を形成し、すなわち、本発明におけるスピン波チャネルは、単一または複数のスピン波を伝導するために使用される。
【0027】
更に、磁区の形成は、磁界を付加する態様により制御することができ、隣接する磁区間の方向が同じか異なるかにより、磁区間に磁壁が存在するか否かを直接決定することができる。隣接する磁区ユニット間の磁化方向が異なる場合、磁壁、すなわちスピン波チャネルが存在する。逆に、磁壁が存在しない。磁区の配列態様が異なると、磁壁の配置も対応して変化する。磁区の配列態様を編集することにより、任意のスピン波線の分布態様を取得することができるため、磁区間は再構成できる。
【0028】
具体的には、磁性薄膜材料100の下、前記磁性薄膜材料100に磁界を付加し、磁壁、すなわちスピン波チャネル内にある単一または複数のスピン波を駆動するための1つの駆動装置300を設ける。
【0029】
1つの実施例において、前記磁性薄膜材料100の下に設けられた駆動装置300は、1つの特定の配線態様の回路基板である。
【0030】
S300において、前記複数の超伝導量子ビットアレイ200における量子ビットを前記スピン波が通過するチャネルに対応して設けることにより、単一の前記量子ビットと前記スピン波との結合を実現する。
【0031】
図3および
図4に示すように、前記複数の超伝導量子ビットアレイ200における量子ビットコイルを前記スピン波チャネルに設けることにより、スピン波チャネルにおけるスピン波を用いて前記量子ビットと結合する効果を実現する。磁性薄膜材料100における磁区ユニットの磁化方向の組み合わせを調節することにより、スピン波の進行可能な経路を規定することができ、経路における超伝導量子ビットは、スピン波によって接続を確立して結合することができる。
【0032】
S400において、前記スピン波チャネルに少なくとも2つの前記量子ビットが設けられ、単一の前記量子ビットと前記スピン波間の結合により、2つの前記量子ビット間の結合を実現する。
【0033】
図3に示すように、前記スピン波チャネルは、第1スピン101および第2スピン102を少なくとも含み、前記第1スピン101は、前記複数の超伝導量子ビットアレイ200の第1量子ビット201に対応して作用し、前記第2スピン102は、複数の超伝導量子ビットアレイ200における第2量子ビット202に対応して作用する。更に、前記第1スピン101と前記第1量子ビット201との結合が実現され、前記第2スピン102と前記第2量子ビット202との結合が実現される。
【0034】
1つの実施例において、前記第1スピン101と前記第1量子ビット201との結合が実現され、且つ、前記第2スピンと前記第2量子ビット202との結合が実現されると、超伝導量子ビット層にある第1量子ビット201の状態変化は、層間の結合により、スピン波における第1スピン101に作用し、その後、スピン波がスピン波チャネルの特定の経路に従って進行することにより、変化状態を第2スピン102に伝達し、更に層間の結合により、第2量子ビット202に作用し、このように、第1スピン101と第2スピン102間の相互作用を確立するとともに、第1量子ビット201と第2量子ビット202間の相互作用も確立する。スピン波の進行経路、すなわちスピン波チャネルの路線は、磁性薄膜材料100における複数の磁区の磁化方向の組み合わせを調節することにより制御でき、これにより、いずれか2つの量子ビットの結合を実現することができる。
【0035】
1つの実施例において、1つの量子ビットは、少なくとも1つのスピン波と結合することができ、複数のスピン波と結合することもできる。
【0036】
図4に示すように、1つの具体的な実施例において、単一の量子ビットコイルは、磁界を発生させることにより、スピン波チャネルにおけるスピンに作用する。1つの半径R=1μm、超伝導限界電流I=100nAのコイルの中心では、その磁界が約0.001ガウスである。このような磁界が単一のスピンで発生するエネルギーは約1ピコボルトであり、超伝導量子ビットコイルの下に磁性薄膜材料100が設けられ、単一の超伝導量子ビットコイルの下に100万〜1000万個のスピンが収納できると、そのエネルギー全体は1〜10マイクロボルトに達することができ、そのエネルギーが1つの超伝導量子ビットの2つの量子状態のエネルギーレベルの差に相当するため、このような超伝導量子ビットコイルと磁性薄膜材料100との結合は、超伝導量子ビットの状態を変更することができる。同時に、スピン波のエネルギー幅が3000〜10000マイクロボルト以内にあり、結合エネルギーよりも遥かに大きく、且つ、この結合のエネルギーを伝達することができることは既に知られている。
【0037】
更に、(1)磁性薄膜材料100における磁区内のスピンの数密度を調節する手段、(2)超伝導量子ビットコイルと磁性薄膜材料100との距離を調節する手段、(3)磁性薄膜材料100における磁区の分極方向または磁化強度を調整する手段により、結合エネルギーの大きさを調節することができる。
【0038】
図5に示すように、1つの実施例において、超伝導量子ビットコイルとスピン波が位置する平面との距離の増加に伴い、前記量子ビットコイルと前記スピン波間の相互作用は急速に減衰し、両者の鉛直距離によって相互作用の大きさを調節することができる。
【0039】
1つの実施例において、超伝導量子ビットのコイルにより覆われたスピン波の両側の強磁性体の磁化方向を互いに逆にすることにより、磁束全体はゼロとなり、超伝導を破壊しない。同様の目的を達成するために、強い磁界による超伝導の破壊を回避するように強磁性磁区を反強磁性に変換してもよい。
【0040】
本発明に係る複数の超伝導量子ビットにおけるいずれか2つのビットを結合する方法は、磁性薄膜材料100層および超伝導量子ビット層の上下2層が鉛直方向に設けられた構造を採用し、磁性薄膜材料100層のスピン波を用いて超伝導量子ビット層の量子ビットの状態変化を伝達する。最終的に、超伝導量子ビットとスピン波との結合を利用するとともにスピン波のソフト接続を利用することにより、いずれか2つの超伝導量子ビットの結合を実現することを達成する。それと同時に、磁性薄膜材料100における磁区内のスピンの数密度を調節する、超伝導量子ビットコイルと磁性薄膜材料100との距離、磁性薄膜材料100における磁区の分極方向または磁化強度を調整する等の複数種の方法により結合エネルギーの大きさを調節することができる。また、磁区ユニットの分布を調整することにより、スピン波チャネルの進行路程を変更することができるため、いずれか2つの超伝導量子ビットの結合を更に実現する。
【0041】
図6に示すように、本発明は、鉛直方向において上から下へ順に設けられた複数の超伝導量子ビットアレイ200と、磁性薄膜材料100と、駆動装置300とを備える量子ビット結合システムを更に提供する。前記駆動装置300は、前記磁性薄膜材料100に磁界を付加して前記スピン波チャネル内にあるスピン波を駆動するために使用される。
【0042】
前記複数の超伝導量子ビットアレイ200は複数の量子ビットから構成され、前記複数の量子ビットは複数の量子ビットコイルで形成され、各量子ビットコイルの状態は付加回路により制御され、且つ、それにより影響される。前記磁性薄膜材料100はスピン波チャネルを形成するために使用される。前記磁性薄膜材料100は複数のユニットに分割され得、各ユニットは1つの磁区であり、且つ、各ユニットの磁区の磁化方向は個別に制御できる。
【0043】
1つの実施例において、前記磁性薄膜材料100は、スピン波チャネルを形成するために使用される。前記磁性薄膜材料100は複数のユニットに分割され得、各ユニットは1つの磁区であり、且つ、各ユニットの磁区の磁化方向は個別に制御できる。磁性材料において、交換作用、結晶磁気異方性および磁気双極子相互作用間の競合により、システムは、総エネルギーを低減するために、方向が異なる小型の磁化領域、すなわち磁区を自発的に形成し、隣接する磁区の遷移領域は磁壁となる。理論計算によれば、スピン波が磁壁に束縛状態解を有し、交換作用および結晶磁気異方性のみを考える場合、該スピン波モードのエネルギーギャップはゼロであり、このような特性により、磁壁はスピン波チャネルとしてスピン波を伝導するために使用できることが分かった。上記スピン波の分極方向は、
図3、
図4、
図6に示すように、超伝導量子ビットコイルに垂直である。なお、上記スピン波の分極方向は上記超伝導量子ビットコイルに平行であってもよく、両者の間に結合作用が発生できれば良い。
【0044】
1つの実施例において、隣接する磁区ユニット間で、磁壁を磁区ユニットの境界に固定するためにトレンチを製造する等のような構造の修飾を人工的な方法で行うことができる。
【0045】
1つの実施例において、磁区の形成は、磁界を付加する態様により制御することができ、隣接する磁区間の方向が同じか異なるかにより、磁区間に磁壁が存在するか否かを直接決定することができる。隣接する磁区ユニット間の磁化方向が異なる場合、磁壁、すなわちスピン波チャネルが存在する。逆に、磁壁が存在しない。磁区の配列態様が異なると、磁壁の配置も対応して変化する。磁区の配列態様を編集することにより、任意のスピン波線の分布態様を取得することができるため、磁区間は再構成できる。
【0046】
1つの実施例において、前記磁性薄膜材料100の下に設けられた駆動装置300は、1つの特定の配線態様の回路基板であり、前記磁性薄膜材料100に磁界を付加し、磁壁、すなわちスピン波チャネル内にある単一または複数のスピン波を駆動するために使用される。
【0047】
1つの具体的な実施例において、前記磁壁は、結晶磁気異方性が一軸異方性である場合、材料に180度の磁壁のみが存在し、結晶磁気異方性が二軸または三軸異方性である場合、材料に90度または180度の磁壁が現れる。より高い倍の対称性を有する材料は、その磁壁がより多くの種類を有することができる。
【0048】
1つの実施例において、前記第1スピン101と前記第1量子ビット201との結合が実現され、且つ、前記第2スピンと前記第2量子ビット202との結合が実現されると、超伝導量子ビット層にある第1量子ビット201の状態変化は、層間の結合により、スピン波における第1スピン101に作用し、その後、スピン波がスピン波チャネルの特定の経路に従って進行することにより、変化状態を第2スピン102に伝達し、更に層間の結合により、第2量子ビット202に作用し、このように、第1スピン101と第2スピン102との間の相互作用を確立するとともに、第1量子ビット201と第2量子ビット202との間の相互作用も確立する。スピン波の進行経路、すなわちスピン波チャネルの路線は、磁性薄膜材料100における複数の磁区の磁化方向の組み合わせを調節することにより制御でき、これにより、いずれか2つの量子ビットの結合を実現することができる。
【0049】
1つの実施例において、1つの量子ビットは、少なくとも1つのスピン波と結合することができ、複数のスピン波と結合することもできる。
【0050】
本発明に係る量子ビット結合システムは、磁性薄膜材料100層および超伝導量子ビット層の上下2層が鉛直方向に設けられた構造を採用し、駆動装置300を用いて前記磁性薄膜材料100層に磁界を付加し、磁壁、すなわちスピン波チャネル内にある単一または複数のスピン波を駆動する。該システムは、磁性薄膜材料100層のスピン波を用いて超伝導量子ビット層の量子ビットの状態変化を伝達する。最終的に、超伝導量子ビットとスピン波との結合を利用するとともにスピン波のソフト接続を利用することにより、いずれか2つの超伝導量子ビットの結合を実現することを達成する。それと同時に、磁性薄膜材料100における磁区内のスピンの数密度、超伝導量子ビットコイルと磁性薄膜材料100との距離、磁性薄膜材料100における磁区の分極方向または磁化強度を調整する等の複数種の方法により結合エネルギーの大きさを調節することができる。また、磁区ユニットの分布を調整することにより、スピン波チャネルの進行路程を変更することができるため、いずれか2つの超伝導量子ビットの結合を更に実現する。
【0051】
上記実施例の各技術的特徴は、任意に組み合わせることができ、説明を簡単にするために、前記実施例における各技術的特徴の可能な全ての組み合わせは説明しないが、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾が存在しない限り、本明細書に記載される範囲にあるものと考えられるべきである。
【0052】
上記実施例は、本発明のいくつかの実施形態を示すものに過ぎず、その説明は具体的で詳細であるが、特許請求の範囲を限定するものとして理解することはできない。なお、当業者にとって、本発明の思想から逸脱しない前提で、複数の変形および改良を行うことができ、これらはいずれも本発明の保護範囲に属する。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲に準ずるべきである。