特許第6971335号(P6971335)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971335
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】オイルレベルゲージ案内装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/04 20060101AFI20211111BHJP
   F01M 11/12 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   G01F23/04 Z
   F01M11/12 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-80(P2020-80)
(22)【出願日】2020年1月6日
(65)【公開番号】特開2021-110537(P2021-110537A)
(43)【公開日】2021年8月2日
【審査請求日】2020年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】原田 徹
(72)【発明者】
【氏名】林 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】浅見 敬
【審査官】 大森 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−063906(JP,A)
【文献】 特開2005−273786(JP,A)
【文献】 特開2015−034528(JP,A)
【文献】 特開2015−102042(JP,A)
【文献】 特開平09−088539(JP,A)
【文献】 特開平01−085832(JP,A)
【文献】 実開平02−105123(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0238206(US,A1)
【文献】 特開2012−107518(JP,A)
【文献】 特開2004−270510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/04
F01M 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルレベルゲージをオイルパンに向けて案内するオイルレベルゲージ案内装置であって、
内燃機関本体と、
該内燃機関本体の側面に配置される駆動部品を覆うように前記内燃機関本体に取り付けられるケース部材と、
前記内燃機関本体と前記ケース部材との間に前記オイルレベルゲージを挿入可能なレベルゲージ通路を形成するように、前記側面に対向する前記ケース部材の対向面から突設され、略上下方向に延設された帯状ガイドと、
前記側面から前記対向面に向けて突設され、前記オイルレベルゲージを前記レベルゲージ通路に案内する案内部と、を備え、
前記案内部は、前記帯状ガイドと前記駆動部品との間に位置して前記レベルゲージ通路に沿うように延設され
前記側面のうち、前記案内部に連なって前記レベルゲージ通路を形成する部位は、下方にかけて前記対向面に向けて傾斜する傾斜面を有することを特徴とするオイルレベルゲージ案内装置。
【請求項2】
請求項1に記載のオイルレベルゲージ案内装置において、
記側面は、厚肉部を有し、
前記案内部は、前記厚肉部と一体に設けられることを特徴とするオイルレベルゲージ案内装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のオイルレベルゲージ案内装置において、
前記傾斜面は、凹状に湾曲して形成されることを特徴とするオイルレベルゲージ案内装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のオイルレベルゲージ案内装置において、
前記傾斜面は、第1傾斜面であり、
前記レベルゲージ通路に面して前記第1傾斜面の下方に配置された突出部品をさらに備え、
前記突出部品は、下方にかけて前記対向面に向けて傾斜する第2傾斜面を有することを特徴とするオイルレベルゲージ案内装置。
【請求項5】
請求項4に記載のオイルレベルゲージ案内装置において、
前記第2傾斜面は、前記第1傾斜面よりも前記対向面側に配置されることを特徴とするオイルレベルゲージ案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルレベルゲージをオイルパンに案内するオイルレベルゲージ案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、オイルレベルゲージを管状ガイドに挿入させてオイルパンに向けて案内する装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1記載の装置では、オイルレベルゲージのゲージ部を把持部に回転可能に連結させることで挿入中のゲージ部の姿勢を適当に変化させ、オイルパンへの挿入性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−120407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の装置では、管状ガイドを別途設けるため、レイアウト上の制約が大きい。一方、既存の空間にオイルレベルゲージの通路を形成すると、オイルレベルゲージの先端が種々の部品と干渉するおそれがあり、オイルレベルゲージの挿入性に問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、オイルレベルゲージをオイルパンに向けて案内するオイルレベルゲージ案内装置であって、内燃機関本体と、内燃機関本体の側面に配置される駆動部品を覆うように内燃機関本体に取り付けられるケース部材と、内燃機関本体とケース部材との間にオイルレベルゲージを挿入可能なレベルゲージ通路を形成するように、側面に対向する前記ケース部材の対向面から突設され、略上下方向に延設された帯状ガイドと、側面から対向面に向けて突設され、オイルレベルゲージをレベルゲージ通路に案内する案内部と、を備える。案内部は、帯状ガイドと駆動部品との間に位置してレベルゲージ通路に沿うように延設され、側面のうち、案内部に連なってレベルゲージ通路を形成する部位は、下方にかけて対向面に向けて傾斜する傾斜面を有する
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、既存の空間をレベルゲージ通路とした構成においても、オイルレベルゲージの挿入性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係るオイルレベルゲージ案内装置が設けられるエンジンの要部構成を示す斜視図。
図2図1のエンジンからケース部材が取り外された状態のエンジン本体の側面部の構成を示す側面図。
図3】ケース部材の単体の内側の構成を示す平面図。
図4図2の収容室の要部構成を詳細に示す部分拡大図。
図5図4に示す案内部の前方のレベルゲージ通路を示す図4のV−V線に沿った断面図。
図6】エンジン本体の側面およびカバー部材の対向面の両方に案内部を設ける構成を示す図4のVI−VI線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図6を参照して本発明の一実施形態について説明する。本発明の実施形態に係るオイルレベルゲージ案内装置は、オイルレベルゲージをオイルパンに向けて案内するレベルゲージ通路を有する。レベルゲージ通路は、エンジンに設けられる。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係るオイルレベルゲージ案内装置が設けられるエンジン1の要部構成示す斜視図である。以下では、便宜上、図示のような前後方向、上下方向および左右方向(幅方向)を定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。上下方向の下方は、例えば重力方向に相当する。なお、厳密には、上下方向はエンジン1のシリンダが延在する方向(図2の軸線L)に相当する。
【0010】
図1に示すように、エンジン1は、エンジン本体2(内燃機関本体)と、エンジン本体2の右側の端面である側面20を覆ってエンジン本体2の側方に収容室4を形成するケース部材3とを備える。エンジン1には、エンジンオイルの量や劣化の程度を目視にて検知するためのオイルレベルゲージ7が挿脱可能に設けられる。
【0011】
エンジン本体2は、シリンダブロック21と、シリンダブロック21の上面に取り付けられるシリンダヘッド22と、シリンダブロック21の下面に取り付けられるオイルパン23とを備える。
【0012】
図2は、図1のエンジン1からケース部材3が取り外された状態のエンジン本体2の側面部の構成を示す側面図(エンジン本体2を右方から見た図)である。図3は、ケース部材3の単体の内側の構成を示す平面図(ケース部材3を左方から見た図)である。
【0013】
図1から図3に示すように、エンジン本体2の側面20にはケース部材3が取り付けられ、これにより、エンジン本体2の側面20とケース部材3の対向面31との間に、シリンダヘッド22からオイルパン23に亘る収容室4が形成される。収容室4には、タイミングトレーン機構5およびオイルポンプの駆動機構6が収容される。さらに、収容室4には、オイルパン23にかけて略上下方向に、オイルレベルゲージ7が通過するレベルゲージ通路40が形成される。
【0014】
図2に示すように、エンジン本体2の側面20の前後両端部には、右方に向けて膨出する前後一対の側縁部24,24が設けられる。これら前後一対の側縁部24,24の内側にタイミングトレーン機構5とオイルポンプの駆動機構6とが設けられる。前後一対の側縁部24,24は、それぞれ上下方向に延在し、平坦なフランジ面を形成する。前後一対の側縁部24,24には、複数のボルト(図示せず)を挿通可能な複数のボルト挿通穴25が形成されている。複数のボルトは、ケース部材3をエンジン本体2の側面20に取り付けるために用いられる。
【0015】
タイミングトレーン機構5は、第1クランクスプロケット51と、一対のカムスプロケット52,52と、タイミングチェーン(駆動部品)53と、テンショナ54と、を有する。
【0016】
第1クランクスプロケット51は、シリンダブロック21の下部で左右方向に延びるクランク軸211の右端部に取り付けられている。より詳細には、クランク軸211は、側面20から右方に所定量突出した状態で、軸受を介して回転自在に支持されており、このクランク軸211の端部に、第1クランクスプロケット51がクランク軸211と同軸に取り付けられている。
【0017】
一対のカムスプロケット52,52は、シリンダヘッド22の上方において左右方向に延びる、吸排気用の前後一対のカム軸221,221に取り付けられている。より詳細には、前後一対のカム軸221,221は、それぞれ側面20から右方に所定量突出した状態で、軸受を介して回転自在に支持されており、これら各カム軸221の端部に、一対のカムスプロケット52それぞれが前後一対のカム軸221,221それぞれと同軸に取り付けられている。
【0018】
タイミングチェーン53は、無端伝動帯を構成し、第1クランクスプロケット51と、一対のカムスプロケット52,52とに巻き掛けられている。これにより、クランク軸211の回転がタイミングチェーン53を介して一対のカムスプロケット52,52に伝達され、前後一対のカム軸221,221がクランク軸211の回転に同期して回転する。
【0019】
テンショナ54は、第1クランクスプロケット51と後側のカムスプロケット52との間に、タイミングチェーン53に面して配置されている。テンショナ54は、タイミングチェーン53の後方からタイミングチェーン53に所定の押圧力を付与してタイミングチェーン53に所定の張力を与えつつ、タイミングチェーン53をガイドする。
【0020】
第1クランクスプロケット51と前側のカムスプロケット52との間に、タイミングチェーン53に面してチェーンガイド55が配設されている。チェーンガイド55は、タイミングチェーン53の前方への移動を規制してタイミングチェーン53をガイドする。
【0021】
図示は省略するが、オイルポンプは、オイルパン23に配設されている。より詳細には、オイルポンプは、エンジン本体2の側面20の右方に位置して、エンジンオイルを貯留するオイルパン23内のオイル溜め室(図示せず)に隣接して配置されている。オイルポンプの駆動機構6は、第2クランクスプロケット61と、オイルポンプと、タイミングベルト62と、テンショナ63とを有する。
【0022】
第2クランクスプロケット61は、クランク軸211の右端部にクランク軸211と同軸に取り付けられている。第2クランクスプロケット61は、第1クランクスプロケット51の左側に配置され、第1クランクスプロケット51と一体に回転する。
【0023】
タイミングベルト62は、第2クランクスプロケット61と不図示のオイルポンプの駆動軸に巻き掛けられている。これにより、クランク軸211の回転がタイミングベルト62を介して不図示のオイルポンプに伝達され、クランク軸211の回転と同期して不図示のオイルポンプが駆動される。
【0024】
テンショナ63は、チェーンガイド55の下方における第2クランクスプロケット61と不図示のオイルポンプとの間に、タイミングベルト62に面して配置されている。テンショナ63は、タイミングベルト62の前方からタイミングベルト62に所定の押圧力を付与してタイミングベルトに所定の張力を与えつつ、タイミングベルト62をガイドする。
【0025】
より詳細には、テンショナ63は、タイミングベルト62を押圧する押圧部631と、押圧部631を前後方向に駆動する駆動部632とを有する。押圧部631は、タイミングベルト62に沿って湾曲した押圧面631aを有しており、押圧面631aにてタイミングベルト62の前面を押圧する。駆動部632は、押圧部631の後方に配置され、押圧部631を略前後方向に駆動する摺動可能なピストンを内蔵し、エンジン本体2の側面20に取り付けられる。駆動部632は、側面視でレベルゲージ通路40の延長線上に位置する(図4参照)。駆動部632は、エンジン本体2の側面20から右方に突出しており、レベルゲージ通路40の延長線と交差する(図5参照)。
【0026】
図3に示すように、ケース部材3の対向面31(内面)は、エンジン本体2の側面20との間にタイミングトレーン機構5およびオイルポンプの駆動機構6等を収容可能な収容室4を構成可能に凹状に形成される。より詳細には、ケース部材3は、エンジン本体2の側面20と対向する対向面31と、対向面31からエンジン本体2の側面20に向かって延出する前後一対の側縁部32,32とを有する。
【0027】
ケース部材3の対向面31には、前側の側縁部32の近傍において上下方向所定範囲にわたって所定高さ(左右方向長さ)の帯状ガイド312が突設される。帯状ガイド312は、レベルゲージ通路40を主に構成する。帯状ガイド312が前側の側縁部32に沿って形成されることで、収容室4における前側の隙間をレベルゲージ通路40とすることが可能になり、収容室4に配置される部品等に干渉し難い通路を形成することができる。
【0028】
対向面31の下部には、前後方向中央部に略円形状の挿通孔311が形成されている。挿通孔311には、ケース部材3をエンジン本体2に固定した状態でクランク軸211の軸端部が挿通される。
【0029】
前後一対の側縁部32,32は、エンジン本体2の前後一対の側縁部24,24に対応してそれぞれ上下方向に延設されている。前後一対の側縁部32,32には、複数のボルトを挿通可能な複数のボルト挿通穴33が形成されている。ケース部材3のボルト挿通穴33とエンジン本体2のボルト挿通穴25とにボルトを挿通させてナットを螺合することで、ケース部材3がエンジン本体2の側面20に固定される。
【0030】
前側の側縁部32は、下端から鉛直上方に延在した後、上下方向の略中央部で前方に屈曲して形成される。この側縁部32の形状に対応して、帯状ガイド312も屈曲形状に形成され、これによりレベルゲージ通路40が屈曲形状に形成される。
【0031】
帯状ガイド312は、図2に示すように、ケース部材3をエンジン本体2の側面20に固定した状態において、チェーンガイド55の前方に位置するように設けられる。つまり、帯状ガイド312は、ケース部材3をエンジン本体2の側面20に固定した状態で、チェーンガイド55と前側の側縁部32との間に位置する。
【0032】
帯状ガイド312は、図3に示すように、ケース部材3の上端部近傍から挿通孔311の上方に亘って設けられている。帯状ガイド312の下端は、図2に示すように、ケース部材3をエンジン本体2の側面20に固定した状態で、チェーンガイド55の下端よりも上方に位置し、かつ、テンショナ63の上方に位置している。
【0033】
図1に示すように、オイルレベルゲージ7は、作業者が把持する把持部71と、把持部71から下方に延在するゲージ部72とを有する。ゲージ部72は、弾性変形可能な長尺の金属製の棒状部材からなり、断面が全長にわたり略矩形の平板状を呈し、断面の左右方向の長さ(幅)は前後方向の長さ(厚さ)よりも長い。オイルレベルゲージ7は、エンジン1の上部に設けられた開口からレベルゲージ通路40を介してオイルパン23内のオイル溜め室に至るまで挿入される。
【0034】
オイルレベルゲージ7をオイル溜め室まで挿入すると、オイルレベルゲージ7の先端部はオイル溜め室内に所定長さ没入する。この状態からオイルレベルゲージ7を引き抜くと、先端部に付着したオイルの位置からオイル溜め室内に貯留されているエンジンオイルの量を確認することができる。また、付着したオイルの質(色など)からエンジンオイルの劣化の程度(交換の要否)を確認することができる。
【0035】
図2に示すように、本実施形態におけるレベルゲージ通路40は、一直線に延びるのではなく途中で屈曲して形成される。また帯状ガイド312の下端は、ケース部材3をエンジン本体2の側面20に固定した状態で、チェーンガイド55の下端よりも上方に位置しており、チェーンガイド55は、タイミングチェーン53が第1クランクスプロケット51に掛け回される位置よりも上方に位置する。
【0036】
そのため、弾性変形可能に構成されたオイルレベルゲージ7のゲージ部72の先端が、帯状ガイド312の下端を通過した後に、第1および第2クランクスプロケット51,61側(後側)に変位した状態で挿入されるおそれがあり、その結果、ゲージ部72の先端が第1および第2クランクスプロケット51,61と干渉するおそれがある。このようなゲージ部72の先端と第1および第2クランクスプロケット51,61との干渉を防止するため、本実施形態に係るオイルレベルゲージ案内装置は、以下のような構成を有する。
【0037】
図4は、図2の収容室4の要部構成を詳細に示す図である。図4に示すように、エンジン本体2の右方に位置する収容室4には、帯状ガイド312(図2参照)の下方かつレベルゲージ通路40とチェーンガイド55との間に案内部41が設けられる。図3には、ケース部材3をエンジン本体2に固定した状態で、ケース部材3の対向面31に面する案内部41が示されている。
【0038】
案内部41は、レベルゲージ通路40に沿ってオイルレベルゲージ7がオイルパン23に向けて移動されるとき、オイルレベルゲージ7の先端が第1および第2クランクスプロケット51,61側に変位することを規制するものである。
【0039】
案内部41は、レベルゲージ通路40に沿って延設されるとともに、エンジン本体2の側面20からケース部材3の対向面31に向けて右方に突設され、上下方向に延在するリブ状の凸状部を構成する。案内部41の突出長さは、案内部41の右端面がケース部材3の対向面31に当接するように設定されている。案内部41の右端面がケース部材3の対向面31に当接することで、例えば、側面20またはケース部材3に発生する振動を抑制することができる。
【0040】
エンジン本体2の側面20には、右方に向けて、円柱部42が突設される。円柱部42は、肉厚が厚い厚肉部を構成し、側面20の剛性を高めるためのリブ部材として機能する。案内部41は、円柱部42と一体に形成される。なお、案内部41は、既存の円柱部42と一体に、すなわち連続的に形成したが、他の厚肉部分と一体形成して剛性を高めるようにしてもよい。
【0041】
案内部41は、その上端が、ケース部材3をエンジン本体2の側面20に固定した状態で、帯状ガイド312の下端に近接するように設けられる。これにより、帯状ガイド312の下端と案内部41の上端との間の隙間をオイルレベルゲージ7が通過することを防止することができ、オイルレベルゲージ7の先端が、第1および第2クランクスプロケット51,61側と干渉することを防止することができる。
【0042】
図5は、図4に示す案内部41の前方に位置するレベルゲージ通路40を示す断面図(図4のV−V線に沿った断面図)である。図4,5に示すように、エンジン本体2の側面20には、案内部41の前方において案内部41と連続して、エンジン本体2の側面20から右側に向かって下り勾配に傾斜した第1傾斜面43が設けられている。第1傾斜面43はレベルゲージ通路40の延長上に位置する。より詳細には、第1傾斜面43は、シリンダブロック21の右端部21aにレベルゲージ通路40に突出して設けられる。第1傾斜面43は、凹状に湾曲して形成される。
【0043】
第1傾斜面43を設けることで、例えば、レベルゲージ通路40を移動中にオイルレベルゲージ7の先端が側面20側(左側)に移動した場合に、オイルレベルゲージ7の先端が第1傾斜面43に当接する。その結果、オイルレベルゲージ7を第1傾斜面43に沿ってシリンダブロック21の右側のレベルゲージ通路40に案内することができる。特に第1傾斜面43が湾曲して形成されることで、オイルレベルゲージ7をシリンダブロック21の右側のレベルゲージ通路40にスムーズに移動させることができる。
【0044】
第1傾斜面43の下方にはテンショナ63の駆動部632が位置する。レベルゲージ通路40側に突出している駆動部632の右面には、側面20側から右側に向かって下り勾配に傾斜した第2傾斜面633が形成されている。このように第2傾斜面633を設けることで、テンショナ63の駆動部632がエンジン本体2の側面20からレベルゲージ通路40側に突出して設けられている場合において、オイルレベルゲージ7の先端が駆動部632に干渉して挿入性を低下させることを抑制することができる。
【0045】
次に、以上のように構成されたオイルレベルゲージ案内装置による動作の一例について説明する。レベルゲージ通路40にオイルレベルゲージ7を挿入する場合、オイルレベルゲージ7をエンジン1の上部に設けられた開口から収容室4に挿入する。収容室4に挿入されたオイルレベルゲージ7は、レベルゲージ通路40に沿って収容室4の前側に沿って移動する。オイルレベルゲージ7の挿入量が増加すると、オイルレベルゲージ7の先端が帯状ガイド312の屈曲部分に接触し、オイルレベルゲージ7の先端は前側に向きを変えて、オイルパン23の前側に向けて移動する。
【0046】
このとき、帯状ガイド312の下端に近接する位置に案内部41が設けられることから、帯状ガイド312の下端よりも下方においてオイルレベルゲージ7の先端が、第1および第2クランクスプロケット51,61側に移動することを防止することができる。また例えば、エンジン本体2の側面20には右方向に傾斜する第1傾斜面43が設けられているので、オイルレベルゲージ7の先端が側面20側(左側)に移動した場合に、オイルレベルゲージ7の先端をケース部材3側(右側)に戻すことができる。
【0047】
さらに、テンショナ63の駆動部632にはレベルゲージ通路40の延長線上に右側に向けて傾斜する第2傾斜面633が設けられることから、レベルゲージ通路40側に突出している駆動部632にオイルレベルゲージ7の先端が干渉することを防止できる。
【0048】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)オイルレベルゲージ案内装置は、エンジン1に取り付けられたオイルレベルゲージ7をオイルパン23に向けて案内するように構成される(図1)。より詳細には、オイルレベルゲージ案内装置は、エンジン本体2と、エンジン本体2の側面20に配置されるタイミングチェーン53を覆うようにエンジン本体2に取り付けられるケース部材3と、エンジン本体2とケース部材3とにより形成される、オイルレベルゲージ7を挿入可能なレベルゲージ通路40と、レベルゲージ通路40とタイミングチェーン53との間に位置し、オイルレベルゲージ7をレベルゲージ通路40に案内する案内部41と、を備える(図2)。案内部41は、レベルゲージ通路40に沿うように延設されるとともに、エンジン本体2の側面20からケース部材3に向けて突設される(図2)。
【0049】
この構成により、エンジン本体2の側面20とケース部材3との間に形成される収容室4、すなわちエンジン1内の既存の空間をレベルゲージ通路40として構成した場合に、オイルレベルゲージ7の挿入性を向上させることができる。
【0050】
これに対し、例えばオイルレベルゲージを挿入可能な管状ガイドを、エンジンの外部からオイルパンに接続させてオイルレベルゲージをオイルパンに案内するような構成では、エンジンの振動により、管状ガイドが破損し、あるいは管状ガイドとオイルパンとの接続部からオイルが漏れるおそれがある。またオイルパンに管状ガイドを接続させる場合には、これらを接続するための部品点数や取付け工程が増え、エンジンの製造コストが増大してしまう。さらにオイルパンに管状ガイドを直接接続させる場合には、エンジンに接続される様々な部品や車体への配置等の観点からレイアウト上の制約も大きい。
【0051】
一方、エンジン内の既存の空間をオイルレベルゲージをオイルパンに案内するレベルゲージ通路とする場合、エンジンの側面に設けられ、タイミングチェーン等が収容される収容室(例えばタイミングトレーン室)に設けることが適当である。しかし、この収容室にレベルゲージ通路を設ける場合においても、オイルレベルゲージがオイルパンに到達するまでに様々な部品(タイミングチェーン等の回転体)に干渉することから、オイルレベルゲージをスムーズにオイルパンに到達させることは困難である。特に、エンジンの形状等から、レベルゲージ通路の延在する方向と、オイルレベルゲージを収容室に挿入させる方向とが異なる場合(例えば上述したようにレベルゲージ通路が途中で屈曲する場合)、他の部品と干渉することなくオイルパンのオイル溜め室にオイルレベルゲージの先端を到達させることは一層困難である。
【0052】
この点、本実施形態においては、タイミングチェーン53等が収容される収容室4内、より詳しくはタイミングチェーン53と前側の側縁部24,32との間の隙間に、レベルゲージ通路40が設けられる。さらに、レベルゲージ通路40に挿入されたオイルレベルゲージ7の先端部が、途中でレベルゲージ通路40から逸脱しないようにレベルゲージ通路40とタイミングチェーン53との間に案内部41を設ける。これにより、オイルレベルゲージ7を他の部品と干渉することなく、オイルパン23内のオイル溜め室に到るまで容易に挿入させることができる。
【0053】
(2)エンジン本体2の側面20は、肉厚が厚く、側面20の剛性を高めるために側面20から突設された円柱部42を有する。案内部41は、円柱部42と一体に、すなわち補強用の円柱部42に連なって設けられる(図4)。このように、案内部41を単独で設けるのではなく、厚肉の円柱部42と一体に設けることで、案内部41自体を厚肉に形成することなく、案内部41の剛性を容易に高めることができる。
【0054】
(3)エンジン本体2の一部(シリンダブロック21の右端部21a)により構成される、オイルレベルゲージ7の挿入方向上流側から視たレベルゲージ通路40の延長線上に介在する介在部(シリンダブロック21の右端部21aの一部)をさらに備える。シリンダブロック21の右端部21aの一部は、下方かつ右方(挿入方向下流側)に向けて傾斜する第1傾斜面(傾斜面)43を有する(図5)。これにより、入口側が広く、下方にいくに従い狭く形成されるレベルゲージ通路40に沿ってオイルレベルゲージ7を容易に挿入することができる。すなわち、オイルレベルゲージ7の先端が他の部品と干渉するようにレベルゲージ通路40を途中で狭く形成した場合であっても、オイルレベルゲージ7の先端部をレベルゲージ通路40に容易に導くことができる
【0055】
(4)第1傾斜面43は、案内部41と連続して設けられる。すなわち、案内部41の前側に、左側に向けて凹状に第1傾斜面43が形成される(図4)。これにより、オイルレベルゲージ7が第1クランクスプロケット51側(後側)に移動することを防止することができるとともに、オイルレベルゲージ7をレベルゲージ通路40に容易に導くことができる。
【0056】
(5)エンジン本体2の側面20に、レベルゲージ通路40側に突出するテンショナ63の駆動部(突出部品)632をさらに備える。駆動部632は、レベルゲージ通路40側に突出した部分に、オイルレベルゲージの挿入方向下流側に向けて傾斜する第2傾斜面633を有する(図5)。これにより、レベルゲージ通路40側に突出するテンショナ63と干渉することなく、オイルレベルゲージ7をオイルパン23に向けて挿入させることができる。
【0057】
(6)テンショナ63の駆動部632に設けられる第2傾斜面633は、シリンダブロック21の右端部21aの一部に設けられる第1傾斜面43の下方に設けられ、かつ第1傾斜面43に対してレベルゲージ通路40側(右側)にオフセットして設けられる。これにより、オイルレベルゲージ7を段階的にレベルゲージ通路40に誘導することが可能になり、オイルレベルゲージ7をオイルパン23にスムーズに移動させることができる。
【0058】
図6は、エンジン本体2の側面20およびケース部材3の対向面31の両方に案内部(第1案内部41aおよび第2案内部41b)を設ける構成を示す図4のVI−VI線に沿った断面図である。上記実施形態では、エンジン本体2の側面20から右方に突設する案内部41を用いたが、図6に示すように、案内部41は、エンジン本体2の側面20から右方に突設する第1案内部41aと、ケース部材3の対向面31から左方に突出する第2案内部41bとから構成してもよい。第1案内部41aと第2案内部41bとは、先端面どうしが互いに当接していてもよく、当接していなくてもよい。すなわち、端面同士は連続している必要はなく、離れていてもよい。また、第1案内部41aは、エンジン本体2の側面20の厚肉部(例えば、円柱部42)と一体に設けてもよく、第2案内部41bは、ケース部材3の対向面31の厚肉部と一体に設けてもよい。
【0059】
上記実施形態では、案内部41は、エンジン本体2の側面20に設けられる円柱部42と一体に設ける構成としたが、案内部41は、例えば、エンジン本体2の側面20に設けられる他の厚肉部と一体に設ける構成であってもよい。
【0060】
上記実施形態では、エンジン本体2の側面20から右側に向かって下り勾配に傾斜した第1傾斜面43を設けたが、ケース部材の対向面31から左側に向かって下り勾配に傾斜した傾斜面を設ける構成であってもよく、側面および対向面のそれぞれに傾斜面を設ける構成であってもよい。
【0061】
上記実施形態では、オイルレベルゲージ7の挿入方向上流側から視たレベルゲージ通路40の延長線上に介在するシリンダブロック21の右端部21aの一部を介在部としたが、介在部は、エンジン本体2およびケース部材3の少なくとも一部であればよい。すなわち、エンジン本体2およびケース部材3の少なくとも一部であれば、傾斜面(第1傾斜面)が形成される介在部は上述したものに限らない。また傾斜面(第1傾斜面)が形成される介在部は、エンジン本体2およびケース部材3以外の部品であってもよい。
【0062】
なお、挿入方向上流側とは、エンジン1の上部に設けられた開口からオイルレベルゲージ7をレベルゲージ通路40に挿入させるときの挿入方向における上流側であり、エンジンの上側である。また挿入方向下流側とは、オイルレベルゲージ7をレベルゲージ通路40に挿入させるときの挿入方向における下流側であり、エンジンの下側(オイルパン23側)である。
【0063】
上記実施形態では、オイルレベルゲージ7の挿入方向上流側から視たレベルゲージ通路40の延長線上に介在するテンショナ63の駆動部632を突出部品としたが、突出部品は、エンジン本体2およびケース部材3の少なくとも一部であってもよい。すなわち、エンジン本体2およびケース部材3の少なくとも一部であれば、第2傾斜面が形成される突出部品は上述したものに限らない。
【0064】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例を任意に組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 エンジン、2 エンジン本体(内燃機関本体)、3 ケース部材、4 収容室、5 タイミングトレーン機構、6 オイルポンプの駆動機構、7 オイルレベルゲージ、20 側面、23 オイルパン、31 対向面(内面)、40 レベルゲージ通路、41 案内部、43 傾斜面、51 第1クランクスプロケット、53 タイミングチェーン(駆動部品)、54 テンショナ、55 チェーンガイド、61 第2クランクスプロケット、63 テンショナ、211 クランク軸、221 カム軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6