特許第6971339号(P6971339)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971339
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】封口体及び電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/12 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   H01G9/12 A
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-9465(P2020-9465)
(22)【出願日】2020年1月23日
(62)【分割の表示】特願2015-212035(P2015-212035)の分割
【原出願日】2015年10月28日
(65)【公開番号】特開2020-74449(P2020-74449A)
(43)【公開日】2020年5月14日
【審査請求日】2020年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 満
(72)【発明者】
【氏名】丸山 尚也
【審査官】 鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭64−006035(JP,U)
【文献】 特開平11−162798(JP,A)
【文献】 実開平01−129819(JP,U)
【文献】 特開2014−099532(JP,A)
【文献】 特開2002−145301(JP,A)
【文献】 特開昭64−000642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/12
H01G 11/00−11/86
H01M 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子を収容するケースを封止するとともに、前記ケース内部と外部とを連通する貫通孔が形成され、当該貫通孔の前記ケース外部側にゴムまたはポリテトラフルオロエチレン製の圧力弁が配置される樹脂製の封口体であって、
前記貫通孔の内部には、中央空間領域と、前記中央空間領域から外方向に延在した複数の枝状空間領域とが形成され、
前記貫通孔の平面視において、
前記中央空間領域が、多角形であり、
前記複数の枝状空間領域のそれぞれは、前記中央空間領域の各辺の全域から延在し、
前記複数の枝状空間領域のそれぞれにおいて、先端の幅と、前記中央空間領域の辺に接した基端の幅とが同じであることを特徴とする封口体。
【請求項2】
前記貫通孔の平面視において、
前記中央空間領域が、三角形、四角形又は五角形であることを特徴とする請求項1に記載の封口体。
【請求項3】
前記貫通孔の平面視において、
前記枝状空間領域が、正方形又は長方形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の封口体。
【請求項4】
コンデンサ素子を収容するケースを封止するとともに、前記ケース内部と外部とを連通する貫通孔が形成され、当該貫通孔の前記ケース外部側にゴムまたはポリテトラフルオロエチレン製の圧力弁が配置される樹脂製の封口体であって、
前記貫通孔の内部には、中央空間領域と、前記中央空間領域から外方向に延在した複数の枝状空間領域とが形成され、
前記貫通孔の平面視において、
前記中央空間領域が、円形であり、
前記複数の枝状空間領域のそれぞれにおいて、先端の幅と、前記中央空間領域の辺に接した基端の幅とが同じであることを特徴とする封口体。
【請求項5】
前記貫通孔の平面視において、
前記貫通孔の周方向に隣り合う枝状空間領域は、前記貫通孔の周方向に離れていることを特徴とする請求項4に記載の封口体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の封口体と、
前記封口体に配置され、前記封口体に形成された前記貫通孔を塞ぐ圧力弁と、
前記封口体によって封止されるケースと、
前記ケースに収容されたコンデンサ素子とを備えていることを特徴とする電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ素子が収容されたケースを封止する封口体及び封口体を備えた電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサとして、コンデンサ素子が収容されたケースと、ケースを封止する封口体(封止板)と、封口体に形成された貫通孔を塞ぐ圧力弁(弁体)とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。ケース内のガスが一定量に達すると、ガスが貫通孔内を通過して圧力弁を押圧する。これにより圧力弁が作動(開弁又は破裂)して、ケース内のガスが放出される。図10に示すように、貫通孔830は、平面視において円形状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−127692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貫通孔830では、ガスが貫通孔全体に均一に拡散せず、拡散方向が不均一になり、特定の箇所(例えば図10に示す領域A)に偏在することがある。この場合、圧力弁810の特定の箇所が強い力で押圧される。その結果、ケース内のガスが一定量に達していなくても、圧力弁が作動(開弁又は破裂)することがある。
【0005】
このように貫通孔内でガス拡散方向が不均一になると、圧力弁の作動時期にばらつきが生じる。これにより電解液が早期に放出され、コンデンサの寿命が期待寿命よりも短くなってしまうことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、圧力弁の作動時期にばらつきが生じることを抑止可能な封口体及び電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コンデンサ素子を収容するケースを封止するとともに、前記ケース内部と外部とを連通する貫通孔が形成され、前記貫通孔の前記ケース外部側にゴムまたはポリテトラフルオロエチレン製の圧力弁が配置される樹脂製の封口体であって、前記貫通孔の内部には、中央空間領域と、前記中央空間領域から外方向に延在した複数の枝状空間領域とが形成され、前記貫通孔の平面視において、前記中央空間領域が、多角形であり、前記複数の枝状空間領域のそれぞれは、前記中央空間領域の各辺の全域から延在し、前記複数の枝状空間領域のそれぞれにおいて、先端の幅と、前記中央空間領域の辺に接した基端の幅とが同じであることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、ケース内部から外部に向かうガスが貫通孔の中央空間領域から径方向に延在した複数の枝状空間領域によって拡散方向が規制される。しかも、複数の枝状空間領域は、平面視において、中央空間領域の中心を通る直線に対して線対称の形状、または中央空間領域の中心に対して点対称の形状を有するので、ガス拡散方向は中央空間領域に対して規則的に定まる。その結果、ケース内部で生じるガス圧力の上昇は均一化された状態で圧力弁に加えられる。このため、特定のガス圧に達した際の圧力弁の作動時期のばらつき発生を抑止できる。
【0009】
また、上記構成において、前記貫通孔の平面視において、前記中央空間領域が、三角形、四角形又は五角形であることが好ましい
【0010】
さらに、上記構成において、前記貫通孔の平面視において、前記枝状空間領域が、正方形又は長方形であることが好ましい
【0011】
別の観点として、本発明は、コンデンサ素子を収容するケースを封止するとともに、前記ケース内部と外部とを連通する貫通孔が形成され、当該貫通孔の前記ケース外部側にゴムまたはポリテトラフルオロエチレン製の圧力弁が配置される樹脂製の封口体であって、前記貫通孔の内部には、中央空間領域と、前記中央空間領域から外方向に延在した複数の枝状空間領域とが形成され、前記貫通孔の平面視において、前記中央空間領域が、円形であり、前記複数の枝状空間領域のそれぞれにおいて、先端の幅と、前記中央空間領域の辺に接した基端の幅とが同じであることを特徴とする。
【0012】
記構成において、前記貫通孔の平面視において、前記貫通孔の周方向に隣り合う枝状空間領域は、前記貫通孔の周方向に離れていることことが好ましい
【0014】
本発明は、上述した封口体と、前記封口体に配置され、前記封口体に形成された前記貫通孔を塞ぐ圧力弁と、前記封口体によって封止されるケースと、前記ケースに収容されたコンデンサ素子とを備えている。
【0015】
上述した封口体を用いると、圧力弁の作動時期にばらつきが生じることを抑止できるため、ケース内に蒸散した電解液が早期に放出されることを抑止できる。これによりコンデンサの寿命が期待寿命よりも短くなることを抑止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、圧力弁の作動時期にばらつきが生じることを抑止できる。これによりコンデンサの寿命が期待寿命よりも短くなることを抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る電解コンデンサの平面図、(b)は本発明の第1実施形態に係る電解コンデンサの全体構成を示す(a)のIB−IB線に沿った部分断面図である。
図2】コンデンサ素子の分解斜視図である。
図3】封口体の貫通孔周辺の平面図である。
図4】第2実施形態の封口体の貫通孔周辺の平面図である。
図5】第3実施形態の封口体の貫通孔周辺の平面図である。
図6】第4実施形態の封口体の貫通孔周辺の平面図である。
図7】第5実施形態の封口体の貫通孔周辺の平面図である。
図8】第6実施形態の封口体の貫通孔周辺の平面図である。
図9】第7実施形態の封口体の貫通孔周辺の平面図である。
図10】従来の封口体の貫通孔周辺の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。ここでは、本発明の第1実施形態である電解コンデンサについて、図1図3を参照しつつ以下に説明する。
【0019】
〔第1実施形態〕
電解コンデンサ1は、図1(a)及び図1(b)に示すように、コンデンサ素子2、ケース3a、封口体3b、底板4、スリーブ5、固定材6、端子7a,7b、および圧力弁10を含む。
【0020】
ケース3aは、コンデンサ素子2を収容するものであり、開口部に封口体3bが嵌合されている。封口体3bは、ケース3aを封止している。ケース3aは金属(アルミニウム等)からなり、封口体3bは絶縁材料(変性フェノール樹脂等)からなる。
封口体3bの上部周縁には、弾性材料(ゴム等)からなるパッキン3xが配置されている。パッキン3xは、封口体3bとケース3aとの隙間からケース3a内のガスが漏出するのを防止する機能を有する。パッキン3xは、ケース3aの上端に加締固定されている。
【0021】
底板4は、絶縁材料(難燃性ポリエステル等)からなる円形のフィルムであり、ケース3aの底部下面に重なるように配置されている。スリーブ5は、絶縁材料(ポリオレフィン等)からなる略円筒状の部材であり、ケース3aの側部周面、底板4の下部周縁、およびケース3aの上部周縁を覆っている。スリーブ5の下部はケース3aの底部との間に、
底板4を狭持し、固定している。
【0022】
固定材6は、コンデンサ素子2をケース3a内に固定するものであり、熱可塑性樹脂(ポリプロピレン等)からなる。
【0023】
端子7a,7bおよび圧力弁10は、封口体3bに配置されている。端子7a,7bは、封口体3bの厚み方向から見て、封口体3bの中心に関して点対称となる位置に、互いに離隔して配置されている。端子7a,7bは金属(アルミニウム等)からなり、陰極端子7aはコンデンサ素子2の陰極リード2a、陽極端子7bはコンデンサ素子2の陽極リード2bとそれぞれ接続されている(図2参照)。
封口体3bには、図1(b)に示すように、封口体3bの厚み方向から見たときの中心(端子7a,7b間の中央)と外縁との間に、ケース3aの内部と外部とを連通する貫通孔30が形成されている。圧力弁10は、当該貫通孔30を塞ぐように配置されており、その上面に配置されたロックワッシャによって、封口体3bに固定されている。圧力弁10は、ケース3a内のガスを放出する機能を有する。圧力弁10は、例えば、ゴムやPTFEなどによって形成されている。
【0024】
次に、図2を参照し、コンデンサ素子2の構成について詳細に説明する。
【0025】
コンデンサ素子2は、陰極リード2aおよび陽極リード2bがそれぞれ取り付けられた陰極箔2yおよび陽極箔2xを、絶縁材料からなるセパレータ(クラフト紙等)2zを介して巻回し、これにより形成された巻回体の外周を素子止めテープ2tで固定し(図1(b)参照)、その後、巻回体を駆動用電解液に含浸させることにより、形成されている。陽極箔2xおよび陰極箔2yはアルミニウム箔の表面を粗面化したものであり、陽極箔2xは当該表面に陽極酸化皮膜を形成したものである。
【0026】
続いて、図3を参照し、封口体3bの貫通孔30の構成について詳細に説明する。
【0027】
図3に示すように、貫通孔30は、平面視において、十字形状に形成されている。貫通孔30は、平面視において、四角状の中央空間領域31と、中央空間領域31から前方向に延在した第1枝状空間領域32と、中央空間領域31から右方向に延在した第2枝状空間領域33と、中央空間領域31から後方向に延在した第3枝状空間領域34と、中央空間領域31から左方向に延在した第4枝状空間領域35とを有している。第1枝状空間領域32、第2枝状空間領域33、第3枝状空間領域34及び第4枝状空間領域35は、中央空間領域31から径方向外側に向かって延在し、中央空間領域31の中心C1を中心に90度間隔で配置されている。
【0028】
中央空間領域31と、第1枝状空間領域32と、第2枝状空間領域33と、第3枝状空間領域34と、第4枝状空間領域35とは、ほぼ同じ大きさである。平面視において、中央空間領域31の面積は、圧力弁10の面積の1〜70%である。
【0029】
貫通孔30は、中心C1に対して点対称の形状である。また、貫通孔30は、中心C1を通る直線(例えば図3中の直線l1)に対して線対称の形状である。
【0030】
圧力弁10が封口体3bに配置されたとき、平面視において、中央空間領域31内に圧力弁10の中心cが配置される。本実施形態では、貫通孔30の中心C1と圧力弁10の中心cがほぼ一致している。つまり、貫通孔30の中央空間領域31の中心C1と圧力弁10の中心cとが対向して配置されている。
【0031】
以上に述べたように、本実施形態の封口体3bを備えた電解コンデンサ1では、ケース
3a内部から外部に向かうガスが貫通孔30の中央空間領域31から径方向に延在した複数の枝状空間領域(第1枝状空間領域32、第2枝状空間領域33、第3枝状空間領域34及び第4枝状空間領域35)によって拡散方向が規制される。しかも、複数の枝状空間領域は、平面視において、中央空間領域31の中心を通る直線に対して線対称の形状、または中央空間領域の中心に対して点対称の形状を有するので、ガス拡散方向は中央空間領域31に対して規則的に定まる。その結果、ケース3a内部で生じるガス圧力の上昇は均一化された状態で圧力弁10に加えられる。このため、特定のガス圧に達した際の圧力弁10の作動時期のばらつき発生を抑止できる。
【0032】
また、貫通孔30において、第1枝状空間領域32、第2枝状空間領域33、第3枝状空間領域34及び第4枝状空間領域35を中心C1を中心に90度間隔で配置し、十字形状としている。このような簡易な形状でも、圧力弁10の作動時期のばらつきを抑止できる。
【0033】
さらに、圧力弁10を封口体3bに配置したとき、貫通孔30の中央空間領域31の中心cと圧力弁10の中心cとが対向して配置される。これにより、圧力弁10の中心c周辺を均等な力で押圧できるため、圧力弁10の作動時期がばらつくことをより抑止できる。
【0034】
また、平面視において、中央空間領域31の面積が圧力弁10の面積の1〜70%であるため、圧力弁の中心周辺を均等な力で押圧できる。これにより圧力弁の作動時期がばらつくことをより抑止できる。
【0035】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について、図4を参照しつつ説明する。第2実施形態において第1実施形態と異なる点は、貫通孔の形状である。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0036】
貫通孔130は、中央から三方に分岐したような形状であり、三角形状の中央空間領域131と、中央空間領域131から図中の前方向に延在した第1枝状空間領域132と、中央空間領域131から右後方に延在した第2枝状空間領域133と、中央空間領域131から左後方に延在した第3枝状空間領域134とを有している。第1枝状空間領域132、第2枝状空間領域133、及び第3枝状空間領域134は、中央空間領域131から径方向外側に向かって延在し、中央空間領域131の中心C2を中心に120度間隔で配置されている。平面視において、中央空間領域131の面積は、圧力弁10の面積の1〜70%である。
【0037】
貫通孔130は、中心C2を通る直線(例えば図4中の直線l2)に対して線対称の形状である。
【0038】
圧力弁10が封口体103bに配置されたとき、中央空間領域131内に圧力弁10の中心cが配置される。本実施形態では、貫通孔130の中心C2と圧力弁10の中心cがほぼ一致している。つまり、貫通孔130の中央空間領域131の中心C2と圧力弁10の中心cとが対向して配置されている。
【0039】
上記形状から、第2実施形態でも第1実施形態と同様に、第1枝状空間領域132、第2枝状空間領域133、及び第3枝状空間領域134によってガスの拡散方向が規制され、ガス拡散方向が中央空間領域131に対して規則的に定まる。その結果、ケース3a内部で生じるガス圧力の上昇は均一化された状態で圧力弁10に加えられるため、特定のガス圧に達した際の圧力弁の作動時期のばらつき発生を抑止できる。
【0040】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について、図5を参照しつつ説明する。第3実施形態において第1実施形態と異なる点は、貫通孔の形状である。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0041】
貫通孔230は、中央から五方に分岐したような形状であり、五角形状の中央空間領域231と、中央空間領域231から図中の前方向に延在した第1枝状空間領域232と、中央空間領域231からやや右前方に延在した第2枝状空間領域233と、中央空間領域231から右後方に延在した第3枝状空間領域234と、中央空間領域231から左後方に延在した第4枝状空間領域235と、中央空間領域231からやや左前方に延在した第5枝状空間領域236とを有している。第1枝状空間領域232、第2枝状空間領域233、第3枝状空間領域234、第4枝状空間領域235、及び第5枝状空間領域236は、中央空間領域231から径方向に延在し、中央空間領域131の中心C3を中心に72度間隔で配置されている。平面視において、中央空間領域231の面積は、圧力弁10の面積の1〜70%である。
【0042】
貫通孔230は、中心C3を通る直線(例えば図5中の直線l3)に対して線対称の形状である。
【0043】
圧力弁10が封口体203bに配置されたとき、中央空間領域231内に圧力弁10の中心cが配置される。本実施形態では、貫通孔230の中心C3と圧力弁10の中心cがほぼ一致している。つまり、貫通孔130の中央空間領域131の中心C3と圧力弁10の中心cとが対向して配置されている。
【0044】
上記形状から、第3実施形態でも第1実施形態と同様に、第1枝状空間領域232、第2枝状空間領域233、第3枝状空間領域234、第4枝状空間領域235、及び第5枝状空間領域236によってガスの拡散方向が規制され、ガス拡散方向が中央空間領域231に対して規則的に定まる。その結果、ケース3a内部で生じるガス圧力の上昇は均一化された状態で圧力弁10に加えられるため、特定のガス圧に達した際の圧力弁の作動時期のばらつき発生を抑止できる。
【0045】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について、図6を参照しつつ説明する。第4実施形態において第1実施形態と異なる点は、貫通孔の形状である。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0046】
貫通孔330は、平面視において、円形状の中央空間領域331と、中央空間領域331から前方に延在した細長状の第1枝状空間領域332と、中央空間領域331から右前方に延在した細長状の第2枝状空間領域333と、中央空間領域331から右後方に延在した細長状の第3枝状空間領域334と、中央空間領域331から後方に延在した細長状の第4枝状空間領域335と、中央空間領域331から左後方に延在した細長状の第5枝状空間領域336と、及び中央空間領域331から左前方に延在した細長状の第6枝状空間領域337とを有している。平面視において、中央空間領域331の面積は、圧力弁10の面積の1〜70%である。
【0047】
第1枝状空間領域332、第2枝状空間領域333、第3枝状空間領域334、第4枝状空間領域335、第5枝状空間領域336、及び第6枝状空間領域337は、中央空間領域331から径方向に延在し、中央空間領域331の中心C4を中心に60度間隔で配置されている。
【0048】
貫通孔330は、中心C4に対して点対称の形状である。また、貫通孔330は、中心C4を通る直線(例えば図6中の直線l4)に対して線対称の形状でもある。
【0049】
圧力弁10が封口体303bに配置されたとき、中央空間領域331内に圧力弁10の中心cが配置される。本実施形態では、貫通孔330の中心C4と圧力弁10の中心cがほぼ一致している。つまり、貫通孔330の中央空間領域331の中心C4と圧力弁10の中心cとが対向して配置される。
【0050】
上記形状から、第4実施形態でも第1実施形態と同様に、6つの枝状空間領域によってガスの拡散方向が規制され、ガス拡散方向が中央空間領域331に対して規則的に定まる。その結果、ケース3a内部で生じるガス圧力の上昇は均一化された状態で圧力弁10に加えられるため、特定のガス圧に達した際の圧力弁の作動時期のばらつき発生を抑止できる。
【0051】
〔第5実施形態〕
次に、本発明の第5実施形態について、図7を参照しつつ説明する。第5実施形態において第1実施形態と異なる点は、貫通孔の形状である。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0052】
貫通孔430は、平面視において、図7中の前後方向に延在した直線状の帯領域(中央空間領域)431と、帯領域431において中心C5より前方の位置から右方向に延在した右前枝状空間領域(第1枝状空間領域)432及びこれと同じ位置から左方向に延在した左前枝状空間領域(第2枝状空間領域)433と、帯領域431において中心C5より後方の位置から右方向に延在した右後枝状空間領域(第1枝状空間領域)434及びこれと同じ位置から左方向に延在した左後枝状空間領域(第2枝状空間領域)435とを備えている。右前枝状空間領域432、左前枝状空間領域433、右後枝状空間領域434及び左後枝状空間領域435は、帯領域431の延在方向(前後方向)に直交している。中心C5は、帯領域431の中心である。平面視において、帯領域431の面積は、圧力弁10の面積の1〜70%である。
【0053】
貫通孔430は、中心C5に対して点対称の形状である。また、貫通孔430は、帯領域431に対して線対称の形状(左右対称の形状)である。
【0054】
圧力弁10が封口体403bに配置されたとき、帯領域431の中心C5と圧力弁10の中心cとがほぼ一致している。つまり、帯領域431の中心C5と圧力弁10の中心cとが対向して配置される。
【0055】
上記形状から、第5実施形態でも第1実施形態と同様に、右前枝状空間領域432、左前枝状空間領域433、右後枝状空間領域434及び左後枝状空間領域435によってガスの拡散方向が規制され、ガス拡散方向が中央空間領域331に対して規則的に定まる。その結果、ケース3a内部で生じるガス圧力の上昇は均一化された状態で圧力弁10に加えられるため、特定のガス圧に達した際の圧力弁の作動時期のばらつき発生を抑止できる。
【0056】
〔第6実施形態〕
次に、本発明の第6実施形態について、図8を参照しつつ説明する。第6実施形態において第1実施形態と異なる点は、貫通孔の形状である。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0057】
貫通孔530は、平面視において、図8中の前後方向に延在した直線状の帯領域(中央空間領域)531と、帯領域531において中心C6より前方の位置から右方向に延在した右枝状空間領域(第1枝状空間領域)532と、帯領域531において中心C6より後方の位置から左方向に延在した左枝状空間領域(第2枝状空間領域)533とを備えている。右枝状空間領域532及び左枝状空間領域533は、帯領域531の延在方向(前後方向)に直交している。中心C6は、帯領域531の中心である。平面視において、帯領域531の面積は、圧力弁10の面積の1〜70%である。
【0058】
貫通孔530は、中心C6に対して点対称の形状である。
【0059】
圧力弁10が封口体503bに配置されたとき、帯領域531の中心C6と圧力弁10の中心cとがほぼ一致している。つまり、帯領域531の中心C6と圧力弁10の中心cとが対向して配置される。
【0060】
上記形状から、第6実施形態でも第1実施形態と同様に、右枝状空間領域532及び左枝状空間領域533によってガスの拡散方向が規制され、ガス拡散方向が帯領域531に対して規則的に定まる。その結果、ケース3a内部で生じるガス圧力の上昇は均一化された状態で圧力弁10に加えられるため、特定のガス圧に達した際の圧力弁の作動時期のばらつき発生を抑止できる。
【0061】
〔第7実施形態〕
次に、本発明の第7実施形態について、図9を参照しつつ説明する。第7実施形態において第1実施形態と異なる点は、貫通孔の形状である。なお、上述した第1実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0062】
貫通孔630は、平面視において、図9中の前後方向に延在した直線状の帯領域(中央空間領域)631と、帯領域631において中心C7より後方の位置から右方向に延在した右枝状空間領域(第1枝状空間領域)632及びこれと同じ位置から左方向に延在した左枝状空間領域(第2枝状空間領域)633とを備えている。右枝状空間領域632及び左枝状空間領域633は、帯領域631の延在方向(前後方向)に直交している。平面視において、帯領域631の面積は、圧力弁10の面積の1〜70%である。
【0063】
貫通孔630は、帯領域631に対して線対称の形状(左右対称の形状)である。
【0064】
圧力弁10が封口体603bに配置されたとき、帯領域631の中心C7と圧力弁10の中心cとがほぼ一致している。つまり、帯領域631の中心C7と圧力弁10の中心cとが対向して配置される。
【0065】
上記形状から、第7実施形態でも第1実施形態と同様に、右枝状空間領域632及び左枝状空間領域633によってガスの拡散方向が規制され、ガス拡散方向が帯領域631に対して規則的に定まる。その結果、ケース3a内部で生じるガス圧力の上昇は均一化された状態で圧力弁10に加えられるため、特定のガス圧に達した際の圧力弁の作動時期のばらつき発生を抑止できる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。
【0067】
実施例のNo.1〜No.5では、封口体の貫通孔を、十字形状の貫通孔とした。これは、図3に示す第1実施形態の「貫通孔30」と同じ形状である。貫通孔において、前後方向及び左右方向の最大長さは6mmであり、中央空間領域から径方向に延在した各枝状空
間領域の幅は2.4mmである。
【0068】
比較例のNo.6〜No.10では、封口体の貫通孔を、従来の円形状の貫通孔(図10に示す「貫通孔830」参照)。比較例の貫通孔の直径は、6mmである。
【0069】
実施例のNo.1〜No.5および比較例のNo.6〜No.10では、直径76.2mm・高さ90mm・定格電圧400V・静電容量4700μFの電解コンデンサ(5000時間保証品)を用いた。圧力弁には、全て同じ弁を用いた。当該電解コンデンサを周囲温度105℃で定格電圧(400V)を印加放置し、信頼性試験を行った。放置前(初期)と5000時間放置した後(5000時間後)と8000時間放置した後(8000時間後)における、各パラメータを表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1の「外観」は、目視により判断した。実施例のNo.1〜No.5では、8000時間が経過しても圧力弁が作動せず、電解コンデンサに故障などの問題が生じなかった。一方、比較例のNo.6,7,10では、5000時間経過後に圧力弁が破裂し、電解コンデンサが故障した。また、比較例のNo.8,9では、8000時間経過後に圧力弁が破裂し、電解コンデンサが故障した。
【0072】
比較例のNo.6〜No.10では、貫通孔内でガスが所定の箇所に偏在し、圧力弁が局所的に強い力で押圧されたため、5000時間経過後又は8000時間経過後に圧力弁が作動(破裂)したと考えられる。また、破裂した部分から電解液が放出したことにより、
静電容量Capが半分程度に低下した。また、損失角の正接tanδが10倍ほど上昇した。
【0073】
これに対し、実施例のNo.1〜No.5では、貫通孔内にガスが均一に分散したことにより、早期に弁が作動しなかった。これにより電解液が放出せず、静電容量Cap、損失角の正接tanδ、及び濡れ電流LCが初期から8000時間を経過してもあまり変化しなかった。
また、第2〜第7実施形態に示す貫通孔の形状でも同様に、比較例に対して優位な結果を得ることができた。
【0074】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0075】
例えば、上述の第1〜第7実施形態では、中央空間領域から径方向に延在した枝状空間領域が2〜6個であるが、枝状空間領域は7個以上でもよい。
【0076】
また、上述の第1〜第7実施形態では、平面視において、貫通孔の中心C1〜C7と圧力弁10の中心cとがほぼ一致したが、本発明の作用効果を奏する限りにおいて、これらが一致していなくてもよい。
【0077】
さらに、上述の第1〜第4実施形態では、平面視において、中央空間領域31,131,231,331の面積が圧力弁10の面積の1〜70%であり、上述の第5〜第7実施形態では、平面視において、帯領域(中央空間領域)431,531,631の面積が圧力弁10の面積の1〜70%であるが、中央空間領域及び帯領域の面積は圧力弁の面積の70%を超えてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1電解コンデンサ
2コンデンサ素子
3aケース
3b,103b,203b,303b,403b,503b,603b封口体
30,130,230,330,430,530,630,830貫通孔
31,131,231,331中央空間領域
32,132,232,332,432,434,532,632第1枝状空間領域
33,133,233,333,433,435,533,633第2枝状空間領域
34,134,234,334第3枝状空間領域
35,235,335第4枝状空間領域
236,336第5枝状空間領域
337第6枝状空間領域
431,531,631帯領域(中央空間領域)
1,C2,C3,C4,C5,C6,C7 中心
c圧力弁の中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10