特許第6971340号(P6971340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971340
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】吸収式冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 43/04 20060101AFI20211111BHJP
   F25B 15/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   F25B43/04 A
   F25B15/00 303J
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-10876(P2020-10876)
(22)【出願日】2020年1月27日
(65)【公開番号】特開2021-116972(P2021-116972A)
(43)【公開日】2021年8月10日
【審査請求日】2020年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】518101750
【氏名又は名称】ジョンソンコントロールズビルディングエフィシェンシージャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤居 達郎
(72)【発明者】
【氏名】土井 茂裕
(72)【発明者】
【氏名】宮内 稔
(72)【発明者】
【氏名】蛭田 健太郎
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−53499(JP,A)
【文献】 特開2007−309555(JP,A)
【文献】 特公昭59−24773(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/04
F25B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度が異なる2つの吸収溶液が独立した2つの吸収溶液サイクルを構成する吸収式冷凍機であって、
前記2つの吸収溶液サイクルはそれぞれ、吸収器を有し、
前記吸収器のそれぞれの気相部は、分離され、
前記吸収器のそれぞれの気相部は、それぞれ設けられたエゼクタの吸引側に接続され、
前記エゼクタのそれぞれの駆動液は、いずれも前記2つの吸収溶液サイクルのうち、濃度が高い方の吸収溶液サイクルの前記吸収溶液の一部である、吸収式冷凍機。
【請求項2】
前記駆動液は、前記2つの吸収溶液サイクルのうち、濃度が高い方の吸収溶液サイクルに設けられた前記吸収器に接続された溶液ポンプから供給される、請求項1記載の吸収式冷凍機。
【請求項3】
前記駆動液は、前記溶液ポンプの吐出側から前記エゼクタに供給され、それぞれのエゼクタが接続された吸収器から不凝縮ガスを吸引した後、前記溶液ポンプの吸込側に導かれる、請求項2記載の吸収式冷凍機。
【請求項4】
不凝縮ガスを吸引した前記エゼクタの駆動液を、吸収溶液と不凝縮ガスとに分離する気液分離器を設け、濃度が低い方の吸収溶液サイクルに設けられた前記吸収器の気相部に設けられた前記エゼクタで不凝縮ガスを吸引した前記駆動液は、前記気液分離器に導かれる、請求項1または2に記載の吸収式冷凍機。
【請求項5】
前記吸収器のそれぞれの内部には、不凝縮ガスを吸引して排出する抽気ダクトが設けられ、
前記それぞれの抽気ダクトは、それぞれ設けられたエゼクタの吸引側に接続され、
前記エゼクタのそれぞれの駆動液は、いずれも前記2つの吸収溶液サイクルのうち、濃度が高い方の吸収溶液サイクルの前記吸収溶液の一部である、請求項1に記載の吸収式冷凍機。
【請求項6】
前記駆動液は、前記2つの吸収溶液サイクルのうち、濃度が高い方の吸収溶液サイクルに設けられた前記吸収器に接続された溶液ポンプから供給される、請求項5に記載の吸収式冷凍機。
【請求項7】
低温吸収器と低温再生器と溶液熱交換器などを接続した第一の溶液サイクルと、
補助吸収器と補助再生器と補助溶液熱交換器などを接続した第二の溶液サイクルと、
蒸発器と、凝縮器から構成され、
前記低温吸収器と補助吸収器それぞれの気相部は、分離され、
前記低温吸収器と補助吸収器のそれぞれの気相部は、それぞれ設けられたエゼクタの吸引側に接続され、
前記エゼクタのそれぞれの駆動液は、いずれも前記低温吸収器に接続された溶液ポンプから供給される、吸収式冷凍機。
【請求項8】
前記第一の溶液サイクルに高温再生器が接続されている、請求項7に記載の吸収式冷凍機。
【請求項9】
前記低温吸収器に接続された前記エゼクタの駆動液は、前記低温吸収器に接続された溶液ポンプの吸込側に導かれる、請求項7または8記載の吸収式冷凍機。
【請求項10】
前記2つの吸収溶液サイクルのうち、濃度が高い方の吸収溶液サイクルの吸収器を低圧部と高圧部に分離するとともに、前記エゼクタをこの低圧部と高圧部の各領域に対応してそれぞれ設けた、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収式冷凍機。
【請求項11】
前記2つの吸収溶液サイクルのうち、濃度が低い方の吸収溶液サイクルの吸収器に設けられた前記エゼクタは、駆動液が通液されるエゼクタ本体を前記吸収器の筐体外部に設け、吸引部分を前記吸収器の気相部に連通させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸収式冷凍機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収式冷凍機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸収式冷凍機の機内から不凝縮ガスを吸引して外部に排出する抽気エゼクタでは、駆動液(溶液)をノズルから噴出させて周囲の不凝縮ガスを駆動液に随伴させる原理であることから、駆動液(溶液)を供給するポンプはこのノズルの抵抗に対応した高揚程ポンプとする必要がある。
特許文献1には、2つの吸収溶液が独立した2つの吸収溶液サイクルを構成する吸収式冷凍機であって、2つの吸収溶液サイクルのそれぞれの吸収器の内部には、エゼクタが設けられ、エゼクタのそれぞれの駆動液は、吸収器のそれぞれの吸収溶液の一部であり、吸収器のそれぞれに接続された溶液ポンプから供給される構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−53499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、低温吸収器の抽気エゼクタを低温吸収器の溶液で、補助吸収器の抽気エゼクタを補助吸収器の溶液で駆動する構成であったため、それぞれの吸収器に高揚程ポンプを設置する必要があり、消費電力とコストの増大を招いていた。
さらに特許文献1では、補助吸収器の抽気エゼクタの駆動液として、濃度が低く飽和圧力が高い補助吸収器の溶液を用いていたことから、抽気エゼクタの吸引力が低く、不凝縮ガスを十分に吸引、除去できないという課題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、補助吸収器の抽気エゼクタの駆動液として、低温吸収器の溶液を用いることにより、補助吸収器のポンプを低揚程とすることができ、省電力で安価なポンプを使用することができる、吸収式冷凍機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、濃度が異なる2つの吸収溶液が独立した2つの吸収溶液サイクルを構成する吸収式冷凍機であって、前記2つの吸収溶液サイクルはそれぞれ、吸収器を有し、前記吸収器のそれぞれの気相部は、分離され、前記吸収器のそれぞれの気相部は、それぞれ設けられたエゼクタの吸引側に接続され、前記エゼクタのそれぞれの駆動液は、いずれも前記2つの吸収溶液サイクルのうち、濃度が高い方の吸収溶液サイクルの前記吸収溶液の一部である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、補助吸収器の抽気エゼクタの駆動液として、低温吸収器の溶液を用いることにより、補助吸収器のポンプを低揚程とすることができ、省電力で安価なポンプを使用することができる。
また、補助吸収器の抽気エゼクタの駆動液として、補助吸収器に比べて濃度が高い低温吸収器の溶液を用いることにより、補助吸収器の抽気エゼクタの吸引力を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】第1の実施形態に係わる吸収式冷凍機を概略的に示す全体構成図である。
図1B】第2の実施形態に係わる吸収式冷凍機の要部を示す構成図である。
図1C】第3の実施形態に係わる吸収式冷凍機の要部を示す構成図である。
図1D】第4の実施形態に係わる吸収式冷凍機を概略的に示す全体構成図である
図2】第5の実施形態に係わる吸収式冷凍機を概略的に示す全体構成図である。
図3】第6の実施形態に係わる吸収式冷凍機の要部を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における主要な装置構成について説明する。
【0010】
本発明の吸収式冷凍機は、蒸発器、吸収器、高圧再生器、低圧再生器、凝縮器、補助吸収器、補助再生器、熱交換器(低温、中温、高温)、冷媒ポンプ、溶液ポンプ、冷却水ポンプ及び冷却塔、並びにこれらを機能的に接続する配管系から概ね構成されている。冷媒蒸気を吸収する溶液のフローは、吸収器、高圧再生器、低圧再生器などを備えているメインサイクルフローと、補助吸収器、補助再生器などを備えている補助サイクルフローの2系統で構成されている。冷凍能力を維持するために、各サイクルフローに必要な溶液循環量は、それぞれ定まっており、お互いの溶液が混合または分配されないようにそれぞれが独立した配管系を成している。上記のようにメインサイクルフローと補助サイクルフローとから構成されている吸収式冷凍機を、ここではダブルリフトサイクル吸収式冷凍機と呼ぶ。
【0011】
以下、本発明の実施の態様について4つに分けて説明する。
【0012】
まず、第1の実施の態様(図1A参照)について説明する。
【0013】
メインサイクルフローにおいて、溶液ポンプの下流側配管(吐出側配管)を低温溶液熱交換器の手前で分岐し、吸収器内部へ導く。その分岐配管を吸収器から取り出し、吸収器と溶液ポンプとをつなぐ配管の途中に接続する。さらに、吸収器内を通過する分岐配管の途中にエゼクタを設ける。そのエゼクタによって吸収器内部に溜まった不凝縮ガスを抽気する。なお、エゼクタの駆動液は、溶液ポンプの下流側(吐出側)を流れる溶液(メインサイクルフロー側)の一部とする。エゼクタの駆動液は、溶液ポンプの吐出側からエゼクタに流入し、エゼクタから溶液ポンプの吸込側に流出する。
【0014】
また、補助サイクルフローにおいては、上記メインサイクルフローの溶液ポンプの下流側配管(吐出側配管)を低温溶液熱交換器の手前で分岐し、補助吸収器内部へ導く。その分岐配管を補助吸収器から取り出し、吸収器と溶液ポンプとをつなぐ配管の途中に接続する。さらに、補助吸収器内を通過する分岐配管の途中にエゼクタを設ける。そのエゼクタによって補助吸収器内部に溜まった不凝縮ガスを抽気する。上記と同様に、エゼクタの駆動液は、溶液ポンプの下流側(吐出側)を流れる溶液(メインサイクルフロー側)の一部とする。エゼクタの駆動液は、溶液ポンプの吐出側からエゼクタに流入し、エゼクタから溶液ポンプの吸込側に流出する。
【0015】
各フローで抽気された不凝縮ガスは、溶液の流れに乗って高圧再生器(メインサイクルフロー側)に送られる。そして、高圧再生器で生成された冷媒蒸気と送られてきた不凝縮ガスとが凝縮器に流れ込む。
【0016】
加えて、凝縮器内部には、次の構造を備える。すなわち、メインサイクルフロー側の溶液ポンプの下流側配管を低温溶液熱交換器の手前で分岐し、凝縮器内部へ導く。その分岐配管を凝縮器から取り出し、気液分離器に接続する。さらに、凝縮器内部を通過する分岐配管の途中にエゼクタを設ける。そして、そのエゼクタによって、上記の各サイクルフローから集められた不凝縮ガスをまとめて抽気する。なお、エゼクタの駆動液は、メインサイクルフローを循環する溶液の一部とする。
【0017】
次に、気液分離器内部で溶液と不凝縮ガスに分離して、溶液は、メインサイクルフローに戻される。一方、不凝縮ガスは、貯気タンクに一時的に保持されて、排出用のエゼクタによって不凝縮ガスを機外へ排出する。
【0018】
次に、第2の実施の態様(図1B参照)について説明する。
【0019】
第1の実施の態様において、駆動液となる吸収溶液の一部は、メインサイクルフローの分岐配管を吸収器に導く前に蒸発器の内部を経由するように配置することにより、蒸発器の内部にて熱交換を行い、蒸発器から取り出した分岐配管を吸収器に導くものである。
【0020】
次に、第3の実施の態様(図1C参照)について説明する。
【0021】
第1又は第2の実施の態様において、吸収式冷凍機の運転中に、冷凍能力を取得して能力低下が認められた場合にのみ抽気動作を実施するものである。つまり、各サイクルフローの抽気用分岐配管の途中に電磁弁を設置し、冷凍能力の低下に応じて電磁弁を開き、抽気を行うものである。なお、冷凍能力の判定は、蒸発器からの冷水出口の温度データなどを参照する。
【0022】
<実施形態1>
図1Aは、ダブルリフトサイクル吸収式冷凍機を概略的に示す全体構成図である。
【0023】
吸収式冷凍機100は、メインサイクルと補助サイクルとから構成されており、それぞれのサイクルで吸収溶液(単に「溶液」ともいう。)が独立して循環する。メインサイクルは、蒸発器101、吸収器102、高圧再生器103、低圧再生器104、凝縮器105、低温溶液熱交換器106、高温溶液熱交換器107、冷媒ポンプ108、溶液ポンプ109、110などを備えている。補助サイクルは、補助吸収器111、補助再生器112、中温溶液熱交換器113、溶液ポンプ114、115などを備えている。蒸発器101、吸収器102、高圧再生器103、低圧再生器104、補助吸収器111及び補助再生器112は、流下液膜式の熱交換器を有する。低圧再生器104と補助吸収器111とは、連通する気相部を有し、高圧再生器103及び補助再生器112は、共通の凝縮器105に接続され、高圧再生器103と補助再生器112と凝縮器105とは、連通する気相部を有する。
【0024】
メインサイクルフローについて説明する。
【0025】
高い真空圧力に維持された蒸発器101では、冷媒ポンプ108で蒸発器101底部に溜められた冷媒を冷媒配管116に通して散布装置101aに導き、伝熱管群101bの外面に散布する。散布した冷媒は、その伝熱管内を流れる冷水に加熱され、その一部が冷媒蒸気となり、エリミネータ117を介して吸収器102に導かれる。このときに冷媒が蒸発する際の蒸発潜熱が、その伝熱管内を流れる冷水を冷却する。
【0026】
吸収器102では、後述の低圧再生器104及び高圧再生器103で濃縮された溶液が、散布装置102aから伝熱管群102bの外面に散布される。その散布された溶液は、蒸発器101から流入した冷媒蒸気を吸収し、濃度の薄い溶液(以下、「稀溶液」という。)となり、吸収器102底部に溜まる。吸収器102底部に溜まった稀溶液は、溶液ポンプ109によって、稀溶液配管118を通して高圧再生器103へ送液される。吸収器102から高圧再生器103までの稀溶液配管118の途中には、低温溶液熱交換器106及び高温溶液熱交換器107が設置されており、その稀溶液は、高圧再生器103に到達するまでに順次、昇温される。
【0027】
また、低温溶液熱交換器106と高温溶液熱交換器107とをつなぐ稀溶液配管118の途中に分岐部fを設け、分岐部fから低圧再生器104までを分岐配管136で接続する。その分岐配管136の流路途中には、流量調整弁137を備える。その流量調整弁137によって低圧再生器104及び高圧再生器103への溶液散布量を制御できる。
【0028】
高圧再生器103では、外部から投入した伝熱管群103bの内部を通る熱媒体(図示なし)によって、稀溶液が加熱濃縮されて冷媒蒸気と濃度の濃い溶液(濃溶液)に分離される。分離された冷媒蒸気は、通路119を通って凝縮器105へ送られる。一方、濃溶液は、溶液ポンプ110の駆動力によって、濃溶液配管138へ導かれ、高温溶液熱交換器107を通過したのち、濃溶液配管138の途中の合流部gで、後述する低圧再生器104から送られてきた濃溶液と合流し、低温溶液熱交換器106を通過して、吸収器102の上部に設置されている散布装置102aへ送液される。
【0029】
低圧再生器104では、分岐部fから送られた稀溶液が、低圧再生器104の上部にある散布装置104aから伝熱管群104bに散布され、管群内を通る熱媒体によって加熱濃縮され、濃度の濃い溶液(濃溶液)になる。その濃溶液は、低圧再生器104の底部に溜まり、溶液ポンプ110の駆動力によって濃溶液配管120を通って、高圧再生器103から送られてくる濃溶液と合流部gで合流して、低温溶液熱交換器106を通過したのち、吸収器102へ送液される。
【0030】
凝縮器105では、高圧再生器103から送られてきた冷媒蒸気と、後述の補助再生器112からの冷媒蒸気とが合流して、それらの冷媒が凝縮液化したのち、蒸発器101底部へ送液される。
【0031】
以下、上記フローが繰り返し循環する。また、このように吸収器102から出た稀溶液が、高圧再生器103と低圧再生器104に分配送液され、並行してそれらの溶液を加熱濃縮するフローをパラレルフローと呼ぶ。
【0032】
補助サイクルフローについて説明する。
【0033】
補助吸収器111では、後述の補助再生器112で濃縮された濃溶液が、散布装置111aから伝熱管群111bの外面に散布される。その散布された濃溶液は、低圧再生器104から流入した冷媒蒸気を吸収し、稀溶液となる。その稀溶液は、補助吸収器111の底部に溜まり、溶液ポンプ114によって、稀溶液配管121を通過して、補助再生器112へ送られる。補助吸収器111と補助再生器112とをつなぐ稀溶液配管121の途中には中温溶液熱交換器113が設置されており、その稀溶液は補助再生器112に到達するまでに昇温される。
【0034】
補助再生器112では、補助吸収器111から送液された稀溶液が、散布装置112aによって伝熱管群112bの外面に散布される。散布された稀溶液は、外部から投入した伝熱管群112bの内部を流れる熱媒体によって、加熱濃縮されて冷媒蒸気と濃溶液に分離される。その濃溶液は、補助再生器112の底部に溜まり、溶液ポンプ115によって濃溶液配管122を通って、補助吸収器111に送られる。補助再生器112から補助吸収器111への濃溶液配管122の途中には中温溶液熱交換器113が設置され、補助吸収器111から補助再生器112へ向かう稀溶液と熱交換する。
【0035】
凝縮器105では、補助再生器112で発生した冷媒蒸気が通路123を通って送られてきて、前述の高圧再生器103からの冷媒蒸気と合流して、それらの冷媒が凝縮液化したのち、蒸発器101底部へ送液される。
【0036】
また、ダブルリフトサイクル吸収式冷凍機の駆動力である熱媒体は、高圧再生器103、低圧再生器104、補助再生器112の伝熱管群(103b、104b、112b)内に投入して、熱を回収する。
【0037】
吸収器102、補助吸収器111、凝縮器105には、熱回収用の冷却水が、伝熱管群(102b、111b、105b)内を通して送液されている。熱を回収した冷却水は、図示していない冷却塔によって冷却され、再度冷却水として循環される。
以上の構成をもとに、メインサイクルと補助サイクルの溶液濃度の高低関係について説明する。メインサイクルにおける低圧再生器104で発生した冷媒蒸気は補助サイクルの補助吸収器111によって吸収されるのに対して、補助サイクルにおける補助再生器112で発生した冷媒蒸気は凝縮器105によって吸引され、凝縮する。ここで、補助吸収器111の伝熱管群111bと、凝縮器105に伝熱管群105bに供給される冷却水の温度はほぼ同等である。しかしながら、これらの器内の蒸気圧力は、凝縮器115においては冷却水の温度に対応した凝縮圧力となるのに対して、補助吸収器111においては、冷却水の温度と補助再生器112から供給された吸収溶液濃度に対する平衡圧力となり、凝縮器内の圧力よりも低圧となる。
したがって、低圧再生器104と補助再生器112の溶液濃度は、より低い圧力の下で濃縮される低圧再生器の方が高濃度となり、この低圧再生器104を有するメインサイクルの方が、吸収溶液が補助再生器112のみによって濃縮される補助サイクルに対して濃度が高くなる。すなわち、濃度が高い方の吸収溶液サイクルは、メインサイクルとなる。
また、本実施形態の構造的な特徴は、濃度が高い方、すなわち吸収器における吸収力が高いメインサイクルの吸収器102の気相部が、冷水を冷却する蒸発器101の気相部に連通している点にある。
【0038】
本発明が提案する不凝縮ガスの抽気、排出動作について説明する。
【0039】
吸収式冷凍機内部で発生した不凝縮ガスは、機内で最も低圧となる吸収器102(メインサイクル側)と補助吸収器111(補助サイクル側)に溜まる。
【0040】
まず、吸収器102内部(メインサイクル側)に溜まる不凝縮ガス124の抽気手段について説明する。
【0041】
抽気構造について説明する。溶液ポンプ109下流に接続されている稀溶液配管118の分岐部aから分岐配管125を接続し、吸収器102内部を通過させるように配置する。吸収器102通過後の分岐配管125は、吸収器102と溶液ポンプ109をつなぐ稀溶液配管118の途中(合流部b)に接続し、合流させる。また、吸収器102内部を通過する分岐配管125の途中には、エゼクタ126を設置する。
【0042】
抽気動作について説明する。分岐部aで稀溶液の一部が、分岐配管125を通って吸収器102内部のエゼクタ126に送液される。そして、エゼクタ効果により吸収器102内部の不凝縮ガス124を抽気し、送液された稀溶液に回収後、分岐配管125を通って稀溶液配管118の合流部bに送液される。合流部bでは吸収器102から出た稀溶液と、抽気による不凝縮ガス124を含んだ稀溶液とが合流する。
【0043】
次に、補助吸収器111(補助サイクル側)に溜まる不凝縮ガス127の抽気手段について説明する。
【0044】
抽気構造について説明する。溶液ポンプ109下流に接続されている稀溶液配管118の分岐部cから分岐配管501を接続し、補助吸収器111内部を通過させるように配置する。補助吸収器111通過後の分岐配管501は、吸収器102と溶液ポンプ109をつなぐ稀溶液配管118の途中(合流部d)に接続し、合流させる。また、補助吸収器111内部を通過する分岐配管501の途中にはエゼクタ129を設置する。
【0045】
抽気動作について説明する。分岐部cで稀溶液の一部が、分岐配管501を通って補助吸収器111内部のエゼクタ129に送液される。そして、エゼクタ効果により補助吸収器111内部の不凝縮ガス127を抽気し、送液された稀溶液に回収後、分岐配管501を通って稀溶液配管118の合流部dに送液される。合流部dでは、吸収器102から出た稀溶液と、抽気による不凝縮ガス127を含んだ稀溶液とが合流し、さらに、上述した通り、抽気による不凝縮ガス124を含んだ稀溶液とが合流する。
抽気されたメインサイクル側と補助サイクル側の不凝縮ガス(124、127)は、稀溶液に含まれた状態で高圧再生器103へ送られる。高圧再生器103に送られた不凝縮ガス(124、127)を含む稀溶液は、加熱濃縮されて冷媒蒸気と、不凝縮ガス(124、127)と、濃溶液に分離される。その内、冷媒蒸気と不凝縮ガス(124、127)は、通路119を通って凝縮器105に送られる。上記の抽気動作によって、吸収器102に溜まった不凝縮ガス124および補助吸収器111に溜まった不凝縮ガス127が凝縮器105に送られる。凝縮器105の内部にもエゼクタ139が設けられている。
【0046】
また、吸収器102と補助吸収器111のそれぞれの内部には、不凝縮ガスを吸引して排出する抽気ダクト(不図示)が設けられ、それぞれの抽気ダクトは、それぞれ設けられたエゼクタ126、129の吸引側に接続されていてもよい。
【0047】
次に、凝縮器105に集められたメインサイクル側と補助サイクル側の不凝縮ガス(124、127)の排出方法について説明する。
【0048】
不凝縮ガス(124、127)の排出を行う構造について説明する。
【0049】
メインサイクル側の稀溶液配管118で、溶液ポンプ109と低温溶液熱交換器106をつなぐ稀溶液配管118の途中に分岐部eを設け、稀溶液が分岐部eから分岐配管130を接続し、凝縮器105の内部を通過するように配置する。分岐配管130により送られた稀溶液は、凝縮器105の内部に設けたエゼクタ139の駆動液となる。そして、凝縮器105通過後の分岐配管130は、気液分離器131に接続される。凝縮器105の内部の不凝縮ガスは、凝縮器105の内部に設けたエゼクタ139により気液分離器131に導かれる。
【0050】
気液分離器131で分離された不凝縮ガスは、貯気タンク132に一定期間保持される。一方、稀溶液は配管133によって吸収器102へ戻される。そして、貯気タンク132内部の圧力値の変化をモニターし、設定値よりも圧力が上がった場合は、不凝縮ガスは、エゼクタ134によって配管135に吸引され、エゼクタ駆動液とともに機外(大気中)へ排出される。このときのエゼクタ駆動液は、上記の冷却水などを利用すればよい。
【0051】
本実施形態では、高圧再生器103と低圧再生器104に分配送液され、並行してそれらの溶液を加熱濃縮するパラレルフローの場合での不凝縮ガス抽気、排出方法を説明したが、高圧再生器103と低圧再生器104の順にそれらの溶液を加熱濃縮するシリーズフローの場合でも同様の効果が得られる。
【0052】
<実施形態2>
図1Bは、吸収式冷凍機の要部の構成を示したものである。
【0053】
本実施形態は、実施形態1の不凝縮ガス124の抽出性能を向上させるものである。
【0054】
すなわち、溶液ポンプ109下流の稀溶液配管118の途中の分岐部aから分岐接続された分岐配管201を蒸発器101内部に通し(図1B中、A1で示す。)、蒸発器101から出た分岐配管201を吸収器102に導く配管構造にしたものである(図1B中、A2で示す。)。この配管構造により、分岐部aで分岐された稀溶液の一部を蒸発器101に導き、その稀溶液を蒸発器101内の温度で冷却し、その後、吸収器102内部のエゼクタ126に送ることができる。稀溶液を蒸発器101内部で冷却したことによりエゼクタ126の駆動液となる稀溶液の圧力が下がり、エゼクタの抽気性能が向上する。
【0055】
<実施形態3>
図1Cは、吸収式冷凍機の要部の構成を示したものである。
【0056】
本実施形態は、上記実施形態1、2において、必要に応じて不凝縮ガス124の抽気動作を実施させるものである。
【0057】
すなわち、メインサイクル側で、稀溶液の分岐配管301の途中(分岐部aからエゼクタ126の間)に電磁弁302を設ける。また、蒸発器101から出る冷水配管303には、冷水の温度をモニターする温度検知部304(温度検知手段)を設ける。そして、冷水温度測定値を制御ユニット305で取得し、冷水が設定温度に到達しない場合は、不凝縮ガスが発生したものと判定し、電磁弁302を開けてエゼクタ126を駆動する。
なお、冷水温度の異常は、不凝縮ガス124の発生に限ったものではないが、性能低下の一因であるため、これを排除するために上記の制御を行う。
【0058】
<実施形態4>
図1Dは、実施形態4のダブルリフト吸収式冷凍機を概略的に示す全体構成図である。本実施形態は、実施形態1の不凝縮ガス127の抽出性能を向上させるものである。すなわち、補助吸収器111内部の不凝縮ガス127を抽気した稀溶液の配管501を、凝縮器105通過後の分岐配管130と同様に、気液分離器131に直接接続したものである。この配管構造により、気液分離器131が大型化する代わりに、不凝縮ガス127が分岐配管501、合流点d、溶液ポンプ109、分岐点fおよび分岐配管136を経て低圧再生器104および補助吸収器111に再循環することを防止できる。従って、不凝縮ガス127を抽気して機外へ排出する性能が向上する。
【0059】
以上の実施形態においては、メインサイクルと補助サイクルの溶液循環サイクルとが独立して循環し、メインサイクルにおいて高温再生器と低温再生器に並列 に溶液が供給されているパラレルフローのダブルリフト吸収式冷凍機について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、シリーズフロー、二重効用、三重効用等のサイクルにも適用可能である。
【0060】
<実施形態5>
図2の実施形態5は、実施形態1から4において、高圧再生器103、分岐部f、合流部gおよび高温溶液熱交換器107がない構成である。実施形態1と異なる構成について説明し、同じ構成は説明を省略する。
吸収器102内部(メインサイクル側)に溜まる不凝縮ガス124の抽気手段と補助吸収器111(補助サイクル側)に溜まる不凝縮ガス127の抽気手段は、実施形態1と同様である。ただし、不凝縮ガス127を抽気するエゼクタ129を設置した分岐配管501の出口は、実施形態4と同様に気液分離器131に接続する。
抽気されたメインサイクル側の不凝縮ガス(124)は、稀溶液に含まれた状態で、低圧再生器104へ送られる。一方、補助サイクル側の不凝縮ガス(127)は、稀溶液に含まれた状態(図2中、Bで示す。)で、気液分離器131へ送られる。
低圧再生器104へ送られた不凝縮ガス(124)を含む稀溶液は、低圧再生器104の上部にある散布装置104aから伝熱管群104bに散布され、管群内を通る熱媒体によって加熱濃縮され、冷媒蒸気と、不凝縮ガス(124)と、濃度の濃い溶液(濃溶液)に分離される。その内、冷媒蒸気と不凝縮ガス(124)は、補助吸収器111に送られ、冷媒蒸気は補助吸収器内の溶液に吸収され、濃溶液は、低圧再生器104の底部に溜まり、溶液ポンプ110の駆動力によって濃溶液配管120を通って、低温溶液熱交換器106を通過したのち、吸収器102へ送液される。
一方、不凝縮ガス(124)は補助吸収器内の不凝縮ガス(127)とともにエゼクタ129によって抽気され、稀溶液に含まれた状態(図2中、Bで示す。)で、気液分離器131へ送られる。気液分離器131へ送られた不凝縮ガス(124、127)を含む稀溶液は、凝縮器105の内部からエゼクタ139により気液分離器131に導かれた稀溶液と同様、気液分離器131内で稀溶液と不凝縮ガスとに分離され、分離された不凝縮ガスは貯気タンク132に一定期間保持される。そして、エゼクタ134によって機外へ排出される。
【0061】
なお、実施形態5は、実施形態2(図1B)および3(図1C)の態様を適用することができる。
【0062】
<実施形態6>
図3の実施形態6は、実施形態1において、メインサイクル側の蒸発器101と吸収器102とがそれぞれ低圧部(1011、1021)と高圧部(1012、1022)に分離されている構成である。低圧部吸収器1021に第一エゼクタ1261が、高圧部吸収器1022に第二エゼクタ1262が設けられている。実施形態1と異なる構成について説明し、同じ構成は説明を省略する。
溶液ポンプ109下流に接続されている稀溶液配管118の分岐部aから分岐配管125を接続し、この分岐配管125から分岐された第一分岐配管1251が低圧吸収器1021内部を通過させるように配置する。低圧吸収器1021通過後の分岐配管1251は、高圧吸収器1022と溶液ポンプ109をつなぐ稀溶液配管118の途中(合流部b1)に接続し、合流させる。低圧吸収器1021内部を通過する第一分岐配管1251の途中には、第一エゼクタ1261を設置する。
また、分岐配管125から分岐された第二分岐配管1252が高圧吸収器1022内部を通過させるように配置する。高圧吸収器1022通過後の分岐配管1252は、高圧吸収器1022と溶液ポンプ109をつなぐ稀溶液配管118の途中(合流部b2)に接続し、合流させる。高圧吸収器1022内部を通過する第二分岐配管1252の途中には、第二エゼクタ1262を設置する。
【0063】
抽気動作について説明する。分岐部aで稀溶液の一部が、分岐配管125及び第一分岐配管1251を通って低圧吸収器1021内部の第一エゼクタ1261に送液される。そして、エゼクタ効果により低圧吸収器1021内部の不凝縮ガスを抽気し、送液された稀溶液に回収後、第一分岐配管1251を通って稀溶液配管118の合流部b1に送液される。合流部b1では低圧吸収器1021から出た稀溶液と、抽気による不凝縮ガスを含んだ稀溶液とが合流する。
また、分岐部aで稀溶液の一部が、分岐配管125及び第二分岐配管1252を通って高圧吸収器1022内部の第二エゼクタ1262に送液される。そして、エゼクタ効果により高圧吸収器1022内部の不凝縮ガスを抽気し、送液された稀溶液に回収後、第二分岐配管1252を通って稀溶液配管118の合流部b2に送液される。合流部b2では高圧吸収器1022から出た稀溶液と、抽気による不凝縮ガスを含んだ稀溶液とが合流する。
【0064】
以上の構成によれば、蒸発器と吸収器を2段に分離して高性能化を図ったダブルリフトサイクル吸収冷凍機に対して、分離された各段にそれぞれ不凝縮ガスを抽気するエゼクタを設けることにより、吸収冷凍機の性能低下をより効果的に防止することができる。
【0065】
補助吸収器111(補助サイクル側)に溜まる不凝縮ガスの抽気手段である、第三エゼクタ1291は、駆動液が通液されるエゼクタ本体を補助吸収器111の筐体外部に設け、吸引部分を補助吸収器111の気相部に連通させた構成である。
溶液ポンプ109下流に接続されている稀溶液配管118の分岐部cから分岐配管501を接続し、分岐配管501を補助吸収器111の筐体外部に設けられたエゼクタ本体を通過させ、吸収器102と溶液ポンプ109をつなぐ稀溶液配管118の途中(合流部d)に接続し、合流させる。
分岐部cで稀溶液の一部が、分岐配管501を通って第三エゼクタ1291に送液される。そして、エゼクタ効果により補助吸収器111内部の不凝縮ガスを抽気し、送液された稀溶液に回収後、分岐配管501を通って稀溶液配管118の合流部dに送液される。合流部dでは、低圧吸収器1022から出た稀溶液と、抽気による不凝縮ガスを含んだ稀溶液とが合流し、さらに、上述した通り、抽気による不凝縮ガスを含んだ稀溶液とが合流する。
【0066】
以上の構成によれば、運転中や停止直後に、濃度が高い方の吸収溶液サイクルの吸収溶液が濃度の低い方の吸収溶液サイクルに移動することによる、各吸収溶液サイクル間の吸収溶液量の配分の変化を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0067】
100:吸収式冷凍機、101:蒸発器、102:吸収器、103:高圧再生器、104:低圧再生器、105:凝縮器、106:低温溶液熱交換器、107:高温溶液熱交換器、108:冷媒ポンプ、109:溶液ポンプ、110:溶液ポンプ、111:補助吸収器、112:補助再生器、113:中温溶液熱交換器、114:溶液ポンプ、115:溶液ポンプ、116:冷媒配管、117:エリミネータ、118:稀溶液配管、119:通路、120:濃溶液配管、121:稀溶液配管、122:濃溶液配管、123:通路、124:不凝縮ガス、125:分岐配管、126:エゼクタ、127:不凝縮ガス、129:エゼクタ、130:分岐配管、131:気液分離器、132:貯気タンク、133:配管、134:エゼクタ、135:配管、136:分岐配管、137:流量調整弁、138:濃溶液配管、139:エゼクタ、201:分岐配管、301:分岐配管、302:電磁弁、303:冷水配管、304:温度検知部、305:制御ユニット、501:分岐配管、第一分岐配管1251、第二分岐配管1252、第一エゼクタ1261、第二エゼクタ1262、第三エゼクタ1263。
【0068】
ただし、添え字a:器内の散布装置、添え字b:器内の伝熱管群。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3