(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フレキシブルディスプレイは、平板状に開いた使用時に、その裏面が硬質の部材で支持されていることが好ましい。そこで、上記特許文献1の構成では、左右一対のプレートの表面にディスプレイを貼り付けている。この際、ディスプレイは、その折曲動作を可能とするため、実際に折れ曲がる部分(折曲領域)はプレートに固定せずにフリーにしておく必要がある。その結果、ディスプレイの折曲領域は、平板状に開いた使用時に凸状のしわを生じ、視認性や外観品質を低下させる要因となる。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、折り曲げ可能な領域を有するディスプレイでのしわの発生を抑制できるディスプレイアセンブリ、携帯用情報機器、ディスプレイアセンブリの製造方法、及び携帯用情報機器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係るディスプレイアセンブリは、ディスプレイアセンブリであって、第1プレートと、前記第1プレートと隣接して設けられた第2プレートと、一枚のシート状に形成され、前記第1プレートの表面に固定された第1領域と、前記第2プレートの表面に固定された第2領域と、前記第1プレート及び前記第2プレートの隣接端面を跨ぐように前記第1領域と前記第2領域との間の領域であり、前記第1プレート及び前記第2プレートの表面に固定されておらず折り曲げ可能な第3領域と、を有するディスプレイと、を備え、当該ディスプレイアセンブリは、前記第1プレート及び前記第2プレートの表面同士が面方向に並んで平板状に配置される平板形態と、前記第3領域が折り曲げられることで前記第1プレートの前記表面と前記第2プレートの前記表面とが対向する積層形態と、を有し、前記平板形態において、前記第3領域には、前記第1領域及び前記第2領域に向かう幅方向への張力が付与される。
【0007】
前記第3領域は、前記張力が付与された状態での前記幅方向の寸法が、前記張力が付与されていない状態での前記幅方向の寸法に対して、0.3%以上引き伸ばされた状態となる構成としてもよい。
【0008】
前記第3領域は、前記張力が付与された状態での前記幅方向の寸法が、前記張力が付与されていない状態での前記幅方向の寸法に対して、3.3%以下の範囲で引き伸ばされた状態となる構成としてもよい。
【0009】
前記ディスプレイの裏面には、複数の孔部が形成されたシート状部材が設けられ、
前記シート状部材は、前記第3領域での前記孔部の開口率が、前記第1領域及び前記第2領域での前記孔部の開口率よりも大きい構成としてもよい。
【0010】
前記平板形態において、前記第1プレート及び前記第2プレートは、互いの隣接端面同士が当接する構成としてもよい。
【0011】
本発明の第2態様に係る携帯用情報機器は、携帯用情報機器であって、第1筐体と、前記第1筐体と相対的に回動可能に連結された第2筐体と、前記第1筐体に固定された第1プレートと、前記第1筐体に固定され、前記第1プレートと隣接して設けられた第2プレートと、一枚のシート状に形成され、前記第1プレートの表面に固定された第1領域と、前記第2プレートの表面に固定された第2領域と、前記第1プレート及び前記第2プレートの隣接端面を跨ぐように前記第1領域と前記第2領域との間の領域であり、前記第1プレート及び前記第2プレートの表面に固定されておらず折り曲げ可能な第3領域と、を有するディスプレイと、を備え、当該携帯用情報機器は、前記第1筐体及び前記第2筐体が面方向に並んで平板状に配置される平板形態と、前記第3領域が折り曲げられることで前記第1プレートの前記表面と前記第2プレートの前記表面とが対向する積層形態と、を有し、前記平板形態において、前記第3領域には、前記第1領域及び前記第2領域に向かう幅方向への張力が付与される。
【0012】
前記第3領域は、前記張力が付与された状態での前記幅方向の寸法が、前記張力が付与されていない状態での前記幅方向の寸法に対して、0.3%以上引き伸ばされた状態となる構成としてもよい。
【0013】
前記平板形態において、前記第1プレート及び前記第2プレートは、互いの隣接端面同士が当接する構成としてもよい。
【0014】
前記平板形態において、前記第1プレート及び前記第2プレートは、互いの隣接端面同士が離間している構成としてもよい。
【0015】
本発明の第3態様に係るディスプレイアセンブリの製造方法は、ディスプレイアセンブリの製造方法であって、第1プレート及び第2プレートを互いに隣接した状態で治具にセットし、前記第1プレート及び前記第2プレートの表面同士を180度未満の角度姿勢に保持する第1工程と、一枚のシート状に形成されたディスプレイの第1領域を前記第1プレートの表面に固定すると共に、前記ディスプレイの第2領域を前記第2プレートの表面に固定し、その際、前記ディスプレイの前記第1領域と前記第2領域との間の第3領域を前記第1プレート及び前記第2プレートの隣接端面を跨ぐ位置で、前記第1プレート及び前記第2プレートの表面には固定せずに配置する第2工程と、を含む。
【0016】
前記第2工程は、前記治具にセットされた前記第1プレート及び前記第2プレートの表面を下向きに配置した状態で、前記ディスプレイを下から上に向かって移動させて前記第1プレート及び前記第2プレートに固定するようにしてもよい。
【0017】
本発明の第4態様に係る携帯用情報機器の製造方法は、携帯用情報機器の製造方法であって、第1プレート及び第2プレートを互いに隣接した状態で治具にセットし、前記第1プレート及び前記第2プレートの表面同士を180度未満の角度姿勢に保持する第1工程と、一枚のシート状に形成されたディスプレイの第1領域を前記第1プレートの表面に固定すると共に、前記ディスプレイの第2領域を前記第2プレートの表面に固定し、その際、前記ディスプレイの前記第1領域と前記第2領域との間の第3領域を前記第1プレート及び前記第2プレートの隣接端面を跨ぐ位置で、前記第1プレート及び前記第2プレートの表面には固定せずに配置することで、前記ディスプレイを前記第1プレート及び前記第2プレートに固定したディスプレイアセンブリを形成する第2工程と、前記ディスプレイアセンブリの前記第1プレートを第1筐体に取り付けると共に、前記第2プレートを前記第1筐体と隣接し、且つ回動可能に連結された第2筐体に取り付ける第4工程と、を含む。
【0018】
本発明の第5態様に係る携帯用情報機器の製造方法は、携帯用情報機器の製造方法であって、一枚のシート状に形成されたディスプレイの第1領域を第1プレートの表面に固定すると共に、前記ディスプレイの第2領域を前記第1プレートと隣接する第2プレートの表面に固定し、その際、前記ディスプレイの前記第1領域と前記第2領域との間の第3領域を前記第1プレート及び前記第2プレートの隣接端面を跨ぐ位置で、前記第1プレート及び前記第2プレートの表面には固定せずに配置する第1工程と、前記第1プレートを第1筐体に取り付けると共に、前記第2プレートを前記第1筐体と隣接し、且つ回動可能に連結された第2筐体に取り付ける第2工程と、を含み、前記第2工程は、前記第1プレートを前記第1筐体に取り付けた後、前記第3領域に前記第1領域及び前記第2領域に向かう幅方向への張力を付与した状態で、前記第2プレートを前記第2筐体に取り付ける。
【発明の効果】
【0019】
本発明の上記態様によれば、折り曲げ可能な領域を有するディスプレイでのしわの発生を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るディスプレイアセンブリ及び携帯用情報機器について、その製造方法を例示して好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は、一実施形態に係る携帯用情報機器10を閉じて積層形態とした状態を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す携帯用情報機器10を開いて平板形態とした状態を模式的に示す平面図である。
【0023】
図1及び
図2に示すように、携帯用情報機器10は、第1筐体12A及び第2筐体12Bと、背表紙部材14と、ディスプレイアセンブリ16と、を備える。本実施形態の携帯用情報機器10は、本のように折り畳み可能なタブレット型PCである。携帯用情報機器10は、携帯電話、スマートフォン、携帯用ゲーム機等であってもよい。
【0024】
各筐体12A,12Bは、互いに隣接して配置されている。各筐体12A,12Bは、それぞれ背表紙部材14に対応する辺(隣接端部12Aa,12Ba)以外の3辺に側壁を起立形成した矩形の板状部材で形成されている。各筐体12A,12Bは、例えばステンレス、マグネシウム、若しくはアルミニウム等の金属板、又は、炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板等で構成される。背表紙部材14は、
図1に示す積層形態で形成される隣接端部12Aa,12Ba間の隙間を隠す部材である。ディスプレイアセンブリ16は、筐体12A,12B間に亘って延在している。
【0025】
以下、
図1及び
図2に示すように、携帯用情報機器10について、筐体12A,12Bの並び方向をX方向、これと直交する隣接端部12Aa,12Baに沿った方向をY方向、と呼んで説明する。
【0026】
筐体12A,12Bは、互いの隣接端部12Aa,12Baが一対のヒンジ17,17を介して連結されている。筐体12A,12B間は、ヒンジ17により、
図1に示す積層形態と
図2に示す平板形態との間で相対的に回動可能に連結されている。ヒンジ17は、例えば筐体12A,12Bの隣接端部12Aa,12BaのY方向両端部にそれぞれに配置され、ディスプレイアセンブリ16の外周縁部の外側に位置している。本実施形態の携帯用情報機器10は、ヒンジ17による筐体12A,12B間の回動中心がディスプレイアセンブリ16の表面16a(
図3参照)と一致するように設定されている。
【0027】
各筐体12A,12Bの内面には、マザーボード及びこれに実装されたCPU等の各種半導体チップ、通信モジュール、バッテリ装置、冷却装置等の各種電子部品等が取付固定されている。
【0028】
図3は、
図2に示す携帯用情報機器10の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
図3に示すように、ディスプレイアセンブリ16は、第1プレート18A及び第2プレート18Bと、プレート18A,18Bで支持されたディスプレイ20と、を備える。
【0029】
第1プレート18A及び第2プレート18Bは、その表面18Ab,18Bbでディスプレイ20を支持している。プレート18A,18Bは、薄く且つ硬質のプレート状部材である。ディスプレイ20は、その裏面20aが粘着部材22を用いてプレート18A,18Bの表面18Ab,18Bbに貼り付けられる。本実施形態のプレート18A,18Bは、炭素繊維等による繊維強化樹脂板である。プレート18A,18Bは、ステンレス等の金属板等で形成されてもよい。第1プレート18Aは、第1筐体12Aの上面開口を覆うように配置される。第2プレート18Bは、第2筐体12Bの上面開口を覆うように配置される。
【0030】
図2及び
図3に示すように、プレート18A,18Bは、隣接端面18Aa,18Baを除く3辺の外周端面に複数の取付片24が突設されている。各取付片24は、例えば筐体12A,12Bの内面から起立したボス部25にねじ止めされる(
図3参照)。これによりプレート18A,18Bは、それぞれ筐体12A,12Bに固定され、ディスプレイアセンブリ16が筐体12A,12Bに固定される。プレート18A,18Bは、取付片24の一部又は全部を用いず、その裏面をボス部25に当ててねじ止めする構成等で筐体12A,12Bに固定されてもよい。
【0031】
図3に示す平板形態において、プレート18A,18Bは、互いに面方向に並んで隣接し、互いの隣接端面18Aa,18Ba同士が当接する。これによりディスプレイ20は、平板状に開かれた1枚の大画面を形成する。
図1に示す積層形態では、プレート18A,18Bは、互いの隣接端面18Aa,18Ba同士が離間する(
図5B参照)。この際、ディスプレイ20は、例えば略U字状に折り畳まれる。
【0032】
ディスプレイ20は、例えばタッチパネル式の液晶ディスプレイである。ディスプレイ20は、柔軟性の高いペーパー構造を持った有機EL等のフレキシブルディスプレイである。
図3に示すように、ディスプレイ20は、左右のプレート18A,18B間に亘るように設けられる。ディスプレイ20は、平板形態でのプレート18A,18Bの外形と略同一の外形を有する。
図2及び
図3に示すように、ディスプレイ20は、第1領域R1と、第2領域R2と、第3領域である折曲領域R3と、を有する。
【0033】
第1領域R1は、ディスプレイ20が第1プレート18Aに重なる部分のうち、隣接端面18Aaに沿った一部領域(折曲領域R3)を除いた部分である。第1領域R1は、粘着部材22を用いて第1プレート18Aの表面18Abに固定される。第2領域R2は、ディスプレイ20が第2プレート18Bに重なる部分のうち、隣接端面18Baに沿った一部領域(折曲領域R3)を除いた部分である。第2領域R2は、粘着部材22を用いて第2プレート18Bの表面18Bbに固定される。粘着部材22は、例えば両面テープや粘着剤である。
【0034】
折曲領域R3は、筐体12A,12B間が平板形態から積層形態に変化する際に折り曲げられる部分である(
図5A及び
図5B参照)。折曲領域R3は、第1領域R1と第2領域R2との間に設けられた帯状の幅狭な領域であり、プレート18A,18Bの隣接端面18Aa,18Baを跨ぐように配置されている。折曲領域R3の裏面20aには、粘着部材22が設けられない。つまり折曲領域R3は、プレート18A,18Bの表面18Ab,18Bbには固定されず、表面18Ab,18Bbに対して相対的に移動可能な状態にある。
【0035】
図2中の参照符号17A,17Bは、各プレート18A,18Bの裏面から、他方のプレート18B、18Aに向かって突出した爪状の係止片である。係止片17A,17Bは、
図3等に示す平板形態時、その先端上面が相手側のプレート18A,18Bの裏面に当接し、プレート18A,18B間の段差を抑制し、表面18Ab,18Bbをより平坦な平面に形成するためのものである。係止片17A,17Bは、省略してもよい。
【0036】
図4Aは、ディスプレイ20の模式的な側面断面図である。
図4Bは、
図4Aに示すディスプレイ20の模式的な底面図である。
【0037】
図4A及び
図4Bに示すように、本実施形態のディスプレイ20は、タッチパネルや液晶表示部からなるディスプレイ本体28の裏面にシート状部材30が積層されている。ディスプレイ本体28は、その表面16aが映像や画像の表示面やタッチ操作面となる。シート状部材30は、ディスプレイ20の裏面20aを構成している。シート状部材30は、ディスプレイ本体28の裏面を覆うように、両面テープや粘着剤等で固定される。シート状部材30は、可撓性を有する薄いシートである。なお、ディスプレイアセンブリ16は、少なくとも折曲領域R3に対応する部分が柔軟であれば、他の部分(領域R1,R2)は硬質でもよい。
【0038】
シート状部材30は、例えば多数の孔部30aが貫通形成されたパンチングメタルシートやメッシュシート等の金属シートである。
図4Bに示すように、シート状部材30は、折曲領域R3での孔部30aの開口率(単位面積当たりの開口面積)が、領域R1,R2での孔部30aの開口率よりも大きい。これによりシート状部材30は、折曲領域R3での柔軟な折曲動作を確保している。一方、折り曲げされない領域R1,R2は、孔部30aは省略してもよいが、孔部30aを設けることで軽量化を図っている。また折曲領域R3の開口率が、左右の領域R1,R2の開口率よりも大きいことで、折曲動作時にディスプレイアセンブリ16が安定したU字形状を描くことができる。シート状部材30は、孔部30aを持たないシートでもよい。シート状部材30とディスプレイ本体28との間に、孔部30aを持たない別の金属シートを設け、電磁波に対するシールド構造を構築してもよい。
【0039】
図5Aは、平板形態でのディスプレイアセンブリ16の状態を模式的に示す側面断面図である。
図5Bは、
図5Aに示すディスプレイアセンブリ16を積層形態に変化させた状態での側面断面図である。
【0040】
図5Aに示すように、本実施形態のディスプレイ20は、プレート18A,18Bの表面18Ab,18Bb同士が面方向に並んで配置された平板形態において、折曲領域R3には、X方向で左右外側に向かって引き伸ばされる方向の張力Fが付与される。例えばディスプレイ20がプレート18A,18Bに固定されていない状態、つまり無負荷時の折曲領域R3のX方向の幅寸法をW0と称する。そうすると、ディスプレイ20がプレート18A,18Bに固定され、プレート18A,18Bの隣接端面18Aa,18Ba同士が当接した平板形態において、折曲領域R3の幅寸法は、W0よりも大きいW1となる。つまり折曲領域R3は、張力Fが付与された
図5Aの平板形態において、第1領域R1の第1プレート18Aの表面18Abに固定された部分の折曲領域R3側の端部と、第2領域R2の第2プレート18Bの表面18Bbに固定された部分の折曲領域R3側の端部とを結ぶ仮想線の寸法である幅寸法W1が、張力Fが付与されていない状態の幅寸法W0よりも大きい。
【0041】
このように、ディスプレイ20の折曲領域R3は、平板形態において、プレート18A,18Bに固定された領域R1,R2から左右に引っ張られ、張力Fが作用した状態となる。その結果、本実施形態のディスプレイアセンブリは、筐体12A,12B間を平板形態とした際、プレート18A,18Bに固定されていないディスプレイ20の折曲領域R3が張力Fによって幅方向に引き伸ばされ、この部分が凸状のしわ等を生じることが抑制される。また、ディスプレイアセンブリ16は、折曲領域R3がプレート18A,18Bに固定されていないため、
図5Bに示すように、円滑に積層形態へと変化させることができる。
【0042】
次に、ディスプレイアセンブリ16の製造方法の一手順を説明する。
図6A及び
図6Bは、ディスプレイアセンブリ16の製造方法を説明するための模式的な平面図である。
図7A〜
図8Cは、ディスプレイアセンブリ16の製造方法を説明するための模式的な側面断面図である。
【0043】
この製造方法は、先ず、第1治具32にプレート18A,18Bをセットする(
図6A及び
図7A参照)。また、第2治具34にディスプレイ20をセットする(
図6B及び
図7B参照)。
【0044】
図6A及び
図7Aに示すように、第1治具32は、平面視が略矩形状で、側面視が略ブーメラン形状の金属板である。第1治具32は、第1プレート18Aの裏面がセットされる第1セット面32Aと、第2プレート18Bの裏面がセットされる第2セット面32Bと、を有する。第1セット面32Aと第2セット面32Bとの間には、180度未満の角度が形成されている。本実施形態では、セット面32A,32B間の角度は、175度〜165度程度になっている。セット面32A,32B間の角度は、製造対象となるディスプレイアセンブリ16の外形や材質等にもよるが、十分な張力Fの生成と、セット面32A,32B上でのプレート18A,18Bの安定性とを考慮すると、175度〜120度程度の範囲に設定することが好ましい。
【0045】
第1治具32は、セット面32A,32B間の境界部分に、隣接端面18Aa,18Baに沿って延在した凹状部32aを有する。凹状部32Cは、係止片17A,17Bが干渉することを防止するための逃げ溝である。
【0046】
セット面32A,32Bには、複数のストッパ部材32bと、一対のカメラ部32c、32cと、が設けられている。ストッパ部材32bは、プレート18A,18Bの外周端面を位置決めするための金属ブロックである。ストッパ部材32bは、
図6A中でプレート18A,18Bの下側端面と、プレート18Bの右側端面とを位置決めし、これによりプレート18A,18Bを所定のセット位置に位置決めする。各カメラ部32cは、プレート18A,18Bの角部を挟んで直交するように配置された2台のカメラを備える。一方のカメラ部32cの2台のカメラは、第1プレート18Aの
図6A中で左側の辺(隣接端面18Aa側とは逆側の辺)と、第1プレート18Aの
図6A中で上側の辺とを、それぞれ垂直方向に撮像可能である。他方のカメラ部32cの2台のカメラは、第2プレート18Bの
図6A中で右側の辺(隣接端面18Ba側とは逆側の辺)と、第2プレート18Bの
図6A中で上側の辺とを、それぞれ垂直方向に撮像可能である。これにより各カメラ部32cは、各プレート18A,18Bの角部の位置を高精度に読み取ることができる。なお、第1治具32は、ストッパ部材32bが設けられない
図6A中の上側及び左側から所定の空気Aをプレート18A,18Bの外周端面に吹き付けるエアーコンプレッサが敷設されている。これにより第1治具32は、プレート18A,18Bを容易に位置決めでき、プレート18A,18Bの合わせ面(隣接端面18Aa,18Ba)間の隙間をなくすことができる。
【0047】
プレート18A,18Bは、第1治具32にセットされると、
図7Aに示すように、互いの表面18Ab,18Bb同士がセット面32A,32B間に形成された角度と同一の角度に保持される。つまりプレート18A,18Bの隣接端面18Aa,18Ba間は、その表面18Ab,18Bb側の角部Cが当接した状態で、裏面側は離間した状態になる。本実施形態の場合、セット面32A,32Bには、図示しない微細な空気吸引孔が貫通形成されている。つまり第1治具32は、プレート18A,18Bがセット面32A,32Bにセットされた状態で空気吸引孔から空気を吸引し、プレート18A,18Bをセット面32A,32B上で保持できる。
【0048】
図6B及び
図7Bに示すように、第2治具34は、可撓性を有するゴムや樹脂で形成された矩形状のプレートである。第2治具34は、第1治具32と略同一の外形を有する。第2治具34は、ディスプレイ20の表面がセットされるセット面34aを有する。セット面34aには、一対のカメラ部34b、34bが設けられている。各カメラ部34bは、第1治具32の各カメラ部32cと同様な構成であり、それぞれ2台のカメラを備える。これにより各カメラ部34bは、ディスプレイ20の角部の位置を高精度に読み取ることができる。
【0049】
ディスプレイ20は、第2治具34にセットされると、
図7Bに示すように、その裏面20aが上を向いた状態となる。この裏面20aの領域R1,R2には、粘着部材22を塗布する。なお、セット面34aにも、第1治具32のセット面32A,32Bと同様な微細な空気吸引孔が貫通形成され、ディスプレイ20を保持可能となっている。
【0050】
次に、第1治具32にセットしたプレート18A,18Bに対し、第2治具34にセットしたディスプレイ20を貼り付ける。この工程は、先ず、
図8Aに示すように、プレート18A,18Bがセットされた第1治具32を上下反転させ、プレート18A,18Bを下向きに配置する。続いて、第1治具32の下に第2治具34を配置し、ディスプレイ20の裏面20aに塗布した粘着部材22をプレート18A,18Bの表面18Ab,18Bbに対向させる。この際、治具32,34間は、それぞれのカメラ部32c,34bによる位置合わせが実行され、プレート18A,18Bの合計2つの角部と、これに対応するディスプレイ20の2つの角部とが高精度に位置合わせされる。
【0051】
続いて、
図8Bに示すように、第2治具34を上昇させて粘着部材22を介してディスプレイ20の裏面20aをプレート18A,18Bの表面18Ab,18Bbに貼り付ける。この際、プレート18A,18Bの並び方向に沿って転動する押圧ローラ36を第2治具34の裏面から押し付ける。これによりディスプレイ20が粘着部材22による粘着部でエア噛み等を生じることなく、確実にプレート18A,18Bに貼り付けされる。その結果、ディスプレイ20がプレート18A,18Bに固定され、プレート18A,18B間に180度未満の角度を持ったディスプレイアセンブリ16が形成される。
【0052】
なお、ディスプレイ20をプレート18A,18Bに貼り付ける工程は、第1治具32を上下反転させず、プレート18A,18Bを上向きのまま、上から下向きに反転させた第2治具34を押し付ける方法としてもよい。但し、第2治具34及びこれにセットされたディスプレイ20は柔軟なため、これを上からプレート18A,18Bに当てるよりも、下から当てて押圧ローラ36で押し付ける方法の方がディスプレイ20をきれいに貼り付けることができる。
【0053】
次に、第1治具32及び第2治具34のセット面32A,32B,34aでの空気吸引孔からの空気吸引を停止し、製造されたディスプレイアセンブリ16を治具32,34から取り外す。続いて、セット面32A,32Bの角度に設定されていたディスプレイアセンブリ16を
図5Aに示す平板形態に変化させる(
図8C参照)。この際、左右のプレート18A,18B間の回動動作の中心は、
図8Bに示す製造完了時に互いに当接している隣接端面18Aa,18Baの角部Cにある。このため、この回動中心(角部C)よりも回動方向で内側(
図8C中で上側)にあるディスプレイ20には、
図8Cから
図5Aに変化する際に張力Fが付与される。その結果、
図5Aに示す平板形態において、折曲領域R3に張力Fが付与された構造のディスプレイアセンブリ16の製造が完了する。
【0054】
以上のように、本実施形態のディスプレイアセンブリ16は、プレート18A,18B間が平板形態とされた際、折曲領域R3には、幅方向で引き伸ばし方向の張力Fが付与される。このため、ディスプレイアセンブリ16は、これを組み込んだ携帯用情報機器10の使用時に筐体12A,12B間を開いた際、折曲領域R3が浮き上がりやしわを生じることを抑制でき、視認性や外観品質が向上する。また、上記製造方法は、180度未満の角度に設定されたプレート18A,18Bにディスプレイ20を貼り付けた後、これを180度に開くことで、折曲領域R3に張力Fが付与されるディスプレイアセンブリ16を効率よく製造できる。
【0055】
ところで、折曲領域R3が
図8B及び
図8Cに示す製造完了時点での幅寸法(W0)から、
図5Aに示す平板形態での幅寸法(W1)へと引き伸ばされる際の引張率は、しわ抑制の観点と、ディスプレイ20の過度な引張によるダメージ抑制の観点とを考慮して決定することが好ましい。
【0056】
図9は、平板形態時の折曲領域R3の幅寸法W1(mm)と、幅寸法W1が引張前の幅寸法W0から実際に引き伸ばされた距離である引張量(mm)と、幅寸法W0から幅寸法W1への引き伸ばし率である引張率(%)とを変更した際の評価結果を示す実験データである。
【0057】
図9に示すように、この実験は、折曲領域R3の幅寸法W1を15(mm)とし、この幅寸法W1に対して引張量(mm)を適宜変化させることで、しわの抑制効果とディスプレイ20が受けるダメージとを総合的に評価した。
【0058】
先ず、引張量を0.05(mm)とした場合、つまり引張率を0.33(%)とした場合は、ある程度のしわの抑制効果はあったが、他の結果に比べてしわの抑制効果は低かった。そこで、引張率0.33(%)の評価は、可(三角)とした。
【0059】
次に、引張量を0.1(mm)以上とした場合、つまり引張率を0.67(%)以上とした場合は、いずれの条件でも十分なしわの抑制効果が確認できた。但し、ディスプレイ20は、ダメージ防止の観点からは引張率が最小限であることが好ましい。そこで、高いしわの抑制効果が得られた結果のうち、最も引張率が低い0.67(%)の条件の評価を、最良(二重丸)とした。また、引張率1.33(%)〜2.67(%)の各条件は、ディスプレイ20に与えるダメージは十分に抑えることができると考えられたため、いずれの評価も良(一重丸)とした。一方、引張率3.33(%)の条件は、張力過多によるディスプレイ20のダメージが懸念されるため、その評価は可(三角)とした。
【0060】
勿論、ディスプレイ20の仕様や構造等によっては、ダメージを受けない最大の引張率が異なるため、評価を可(三角)とした2つの条件についても、全く引張されない従来の条件に比べると、しわ抑制の観点からは十分に有用である。従って、本実験結果より、ディスプレイアセンブリ16は、ディスプレイ20の折曲領域R3の引張率を少なくとも0.3(%)〜3.3(%)の範囲(
図9の結果から小数点以下は切り捨てている)に設定することで、しわの抑制効果とディスプレイのダメージ抑制効果とを両立できることがわかった。
【0061】
なお、折曲領域R3の引張率が0.33(%)未満の場合にも、従来の引張率0(%)よりはしわの抑制効果が認められるため、ディスプレイ20の仕様や構造等によっては十分に利用可能である。同様に、ディスプレイ20の引張限度は、その仕様や構造によって異なるため、引張率が3.33%より大きい場合もディスプレイ20の仕様や構造等によっては十分に利用可能である。
【0062】
このような引張率の調整は、上記した治具32,34を用いた製造方法では、第1治具32のセット面32A,32B間の角度を調整することで、容易に所望の値に調整できる。
【0063】
なお、本実施形態のディスプレイアセンブリ16は、ディスプレイ本体28の裏面にシート状部材30を設けている。そして、このシート状部材30は、折曲領域R3に対応する部分と、それ以外の部分とで孔部30aの開口率が異なる。つまりシート状部材30は、折曲領域R3に対応する部分の方が、他の部分よりも柔軟性が高い構造となっている。このため、ディスプレイアセンブリ16は、このようなシート状部材30の剛性の変化により、折曲領域R3が一層浮き上がりやしわを生じ易くなっている。この点、当該ディスプレイアセンブリ16は、折曲領域R3に上記した張力Fが付与されるため、シート状部材30を設けた構成であってもしわの発生を抑制できる。
【0064】
次に、変形例に係るディスプレイアセンブリ16の製造方法を説明する。
図10Aは、変形例に係る製造方法に用いるディスプレイアセンブリ16を模式的に示す側面断面図である。
図10Bは、変形例に係る製造方法によって、
図10Aに示すディスプレイアセンブリ16を筐体12A,12Bに取り付けた状態を示す模式的な側面断面図である。
【0065】
この製造方法は、先ず、
図10Aに示すように、互いの隣接端面18Aa,18Ba同士を当接させ、互いの表面18Ab,18Bb同士が面方向に並んだ平板形態でプレート18A,18Bを所定の治具にセットする。そして、このプレート18A,18Bに対し、粘着部材22を用いてディスプレイ20を貼り付ける。これによりディスプレイアセンブリ16を製造する。但し、このディスプレイアセンブリ16は、単体では折曲領域R3に張力Fが付与されてはいない。
【0066】
そこで、次に、
図10Bに示すように、
図10Aに示すディスプレイアセンブリ16を筐体12A,12Bに取り付ける。この際、ディスプレイアセンブリ16の取付片24のねじ穴に対して、筐体12A,12Bのボス部25のねじ穴がX方向で多少外側(隣接端面18Aa,18Baから離間する方向)にオフセットした位置に配置されている。つまり
図10B中の左右のボス部25,25間のピッチは、
図10A中の左右の取付片24,24間のピッチよりも大きい。このため、ディスプレイアセンブリ16は、筐体12A,12Bにねじ止めされると、各プレート18A,18Bが互いに離間する方向に引っ張られる。
【0067】
その結果、ディスプレイアセンブリ16は、筐体12A,12Bに取り付けられた際、隣接端面18Aa,18Ba間に隙間が形成され、折曲領域R3に張力Fが付与される。このため、折曲領域R3でのしわの発生が抑制される。つまり、この製造方法に用いるディスプレイアセンブリ16は、筐体12A,12Bへの取付前は折曲領域R3の幅寸法がW0であり、取付後は幅寸法がW1となる。
【0068】
但し、この製造方法では、携帯用情報機器10が平板形態の際、ディスプレイ20の裏面20aの中央にプレート18A,18Bで支持されない領域が形成され、ディスプレイ20の支持剛性が低下する。この点、上記した
図7A〜
図8Cに示す製造方法で製造したディスプレイアセンブリ16は、平板形態時にプレート18A,18Bの隣接端面18Aa,18Ba同士が当接し、ディスプレイ20の完全な支持が可能となっている。
【0069】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0070】
上記では、本のように二つ折りに折り畳み可能な携帯用情報機器10を例示したが、本発明は、同形の筐体部材同士を二つ折りに折り畳む構成以外、例えば大形の筐体部材の左右縁部にそれぞれ小形の筐体部材を折り畳み可能に連結した観音開きの構成、1つの筐体部材の左右縁部にそれぞれ折り畳み方向の異なる筐体部材を連結したS型の折り畳み構成、大形の筐体部材の左右一方の縁部に小形の筐体部材を折り畳み可能に連結したJ型の折り畳み構成等、各種構成に適用可能であり、筐体部材の連結数は4以上としてもよい。