(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971360
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】高吸収性材料SAT(高吸収性薄紙)
(51)【国際特許分類】
D21H 17/37 20060101AFI20211111BHJP
A47K 10/16 20060101ALI20211111BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20211111BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20211111BHJP
D21H 13/10 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
D21H17/37
A47K10/16 D
B01J20/26 D
B01J20/30
D21H13/10
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-114256(P2020-114256)
(22)【出願日】2020年7月1日
(62)【分割の表示】特願2018-555818(P2018-555818)の分割
【原出願日】2016年1月20日
(65)【公開番号】特開2020-186508(P2020-186508A)
(43)【公開日】2020年11月19日
【審査請求日】2020年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】518255086
【氏名又は名称】パルンボ ジャンフランコ
【氏名又は名称原語表記】PALUMBO, Gianfranco
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】特許業務法人森脇特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パルンボ ジャンフランコ
【審査官】
長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−172598(JP,A)
【文献】
特表2003−503114(JP,A)
【文献】
特開平11−189997(JP,A)
【文献】
特開昭61−113900(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0007169(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K7/00
10/16
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
B01J20/00−20/281
20/30−20/34
D21B1/00−1/38
D21C1/00−11/14
D21D1/00−99/00
D21F1/00−13/12
D21G1/00−9/00
D21H11/00−27/42
D21J1/00−7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性材料の湿式製造方法であって、前記方法は、
a)イオン濃度が0.01以上4.5N以下である食塩水溶液を調整するステップ
b)完全中和されていない少なくとも1種類の酸性ポリマー、又は完全中和されていない少なくとも1種類の塩基性ポリマーから選択される吸水ポリマー(SAP)を、前記食塩水溶液に分散させ、
完全中和されていない少なくとも1種類の前記酸性ポリマーを含む前記吸水ポリマー(SAP)の場合、0以上6.0以下のpHを有する前記吸水ポリマー(SAP)の分散液を形成する、又は
完全中和されていない少なくとも1種類の前記塩基性ポリマーを含む吸水ポリマーの場合、8.0から14.0のpHを有する前記吸水ポリマー(SAP)の分散液を形成するステップ
c)メッシュスクリーンベルトの堆積領域へ、前記吸水ポリマー(SAP)の分散液を層化及び吸引することによりウエブを製造するステップと、
d)前記食塩水溶液中に分散された前記酸性ポリマーを含む前記吸水ポリマー(SAP)の分散液に対して、塩基性溶液を用いて酸が所望の中和レベルとなるまで前記ウエブを洗い流す、又は、前記食塩水溶液中に分散された前記塩基性ポリマーを含む前記吸水ポリマー(SAP)の分散液に対して、酸性溶液を用いて塩基が所望の中和レベルとなるまで前記ウエブを洗い流すステップ
e)水を加え及び吸引することにより、前記ウエブを洗浄するステップ
f)前記ウエブを乾燥させるステップ
を備え、
ここで、pHと塩分濃度との関係は、前記吸水ポリマー(SAP)の水の吸収が30.00gH2O/gSAP以下となる関係であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記吸水ポリマー(SAP)の前記食塩水溶液に分散させるステップは、
天然又は人工のセルロース繊維及び/又は人工及び/又は合成繊維を分散し、適宜に界面活性剤により表面又はバルクの処理で水和性とすることを含み、
前記食塩水を調整するステップは、用いる前記吸水ポリマー(SAP)の種類に応じてpH0以上6.0以下又は8以上14.0以下で、繊維と前記吸水ポリマー(SAP)との食塩水溶液における分散を調製することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ステップb)における前記吸水ポリマー(SAP)は、前記吸水ポリマー(SAP)が食塩水に分散されると、ステップbのpHが達成されるように、その官能基に応じた塩化されることを含む
ことを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記ステップb)における前記吸水ポリマー(SAP)の官能基の塩化は70%未満であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項記載の方法であって、
前記吸水ポリマー(SAP)は、
ポリアクリル酸、加水分解アクリロニトリル重合体、加水分解アクリルアミド共重合体、デンプン−アクリル酸グラフト共重合体、加水分解デンプン―アクリロニトリルグラフト共重合体、ポリ(乳酸)、ポリ(アスパラギン酸)、エチレン―無水マレイン酸共重合体、イソブチレン―無水マレイン酸共重合体、けん化酢酸ビニル―アクリル酸エステル共重合体、スルホン化ポリスチレン、ポリ(ビニルリン酸)、ポリ(ビニルホスホン酸)、ポリ(ビニル硫酸)、ポリ(ビニルスルホン酸)、及びそれらの混合物の群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項記載の方法であって、
ステップe)で得られる前記ウエブ上に、ステップc)〜e)を繰り返すことにより層形成して更なるウエブを得られ、
又は、ステップa)〜e)によってアニオン性吸水ポリマー(SAP)を層形成して得られた前記ウエブに、ステップa)〜e)によるカチオン性吸水ポリマー(SAP)のウエブを直接積層し、その後ステップf)を施し、
又は、前記アニオン性吸水ポリマー(SAP)の層形成に続いて前記カチオン性吸水ポリマー(SAP)の層形成を1回以上繰り返し、
又は、前記層形成される前記ウエブは、請求項2に記載の繊維の有無にかかわらず異なる組成物を有することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項記載の方法であって、
食塩水溶液に分散したSAPは、顆粒、粉末、繊維、薄片、又は真珠(形状)、又はそれらの混合物から成ることと、
pHと塩分濃度との関係は、SAPの水の吸収が20.00gH2O/gSAP以下、H2O/gSAP未満、又は、10.00gH2O/gSAP以下0.05gH2O/gSAP以上となる関係であることと、
少なくとも一枚のウエブは、例えばポリアミド―アミン―エピクロロヒドリン(PAE)樹脂又は類似の樹脂といった、湿潤強力樹脂を含むこと
のうち少なくとも1つを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式製造の高吸収性材料の製造方法に関する。
具体的には、本発明の方法は、完全中和されていない少なくとも1種類の酸性樹脂を含み、又は完全中和されていない少なくとも1種類の塩基性樹脂を含む、ポリマーから選択される高吸収性ポリマー(SAP)を含有する単層又は複数層からなるウエブ、又は、完全中和されていない塩基性SAP層と酸性SAP層とが交互に形成された複数層からなるウエブの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
「薄紙」は、例えば吸収力のあるキッチンタオルロール、使い捨ての化粧紙、梱包用吸水性マット、トイレットペーパー、テーブルナプキン、女性の生理用ナプキン、乳児用おむつ、又は尿失禁の成人用おむつ等の製品の形で、液体を吸収するために一般的に用いられる。
これらの材料の基本的特性は、吸収、比重量、厚み、比体積、明るさ、引張強さ、外観、及び快適さ(例えば表面の粗さ及び/又は柔らかさ)である。
【0003】
薄紙は主に製紙プラントで湿式方法を用いて製造され、また、いくつかの種類の湿式不織布又はNW(nonwoven:不織布)が製紙プラントと同様のプラントで得られるが、化学的結合剤の有無にかかわらず、セルロースに加えて他の繊維を使用することによっても製造される。
【0004】
クリープ加工とエンボス加工による機械処理と、主に乾燥処理Trough a Air Dried(TAD)のための熱処理とにより、薄紙及び湿式NWは若干の質的改善が得られる。それにより、柔らかさ、嵩高さ、及び吸収能力などの特性が改善される。
上記特徴は、この種の材料を使用するのに重要である。自由吸収(外部応力のない吸収)としての薄紙の吸収限界は、すなわち、浸漬及び滴下によるものであり、圧力を付与することない吸収限界では、材料1グラムあたり、水は約10〜16グラムとなる。
【0005】
従って、液体吸収の能力を高めるために、また、消費量及びエネルギーコストを最適化するために、薄紙及び湿式NWの製造で多量のエネルギーが使用されるので、使用する材料及び生産技術に関する新しい工夫が必要とされる。
【0006】
さらにまた、これらの材料が用いられる製品は、単一の用途又は限定された用途であり、考慮される更なる態様は、エコで地球に優しい廃棄性の新しい形を備えた製品の製造である。
【0007】
従ってこれらの材料については、例えば、使用されている材料と同一又は類似する材料であって、しかもセルロース繊維よりも1、2桁大きい吸収能力を備えた、例えば高吸収性ポリマー(SAP)のような材料を、他の材料と組み合わせて用いる可能性は非常に興味深い。例えば、乳児又は尿失禁の成人用おむつに使用される材料では、1グラムあたり140〜150g以上の自由吸収を示すことができる。
【0008】
SAPを他の材料と組み合わせて用いる際に起こる主要な問題の1つは、SAPは、超低濃度であっても、多量の水を吸収してゲル化することにより、大きなゲル状の塊が内部に形成され、実質的にプラントが機能できなくなるということである。これは、湿式不織布プラントで混合する場合でも製紙用プラントで混合する場合でも同様である。
従って、ゲル化したSAPに吸収される多量の水は、機械の稼働時間乃至稼働率に関して技術的な課題を与える。主に、その乾燥コストが経済的に大きな課題となっている。
【0009】
この目的のために、いくつかの試みがなされたが、実際的結果は不十分である。オフライン製造ではあるが著しい結果を有する数少ない試みの1つは、国際公開第2005098134号に記載されている。上記文献では、粒経が異なる粉末形状のSAP粒子が2枚の層の薄紙の間に配置され、積層体の形状を取る。セルロース繊維中にSAP粒子は封入されない。
従って、特に水を吸収した後、一定限度量のSAPが結合された材料は、結果として剥離され易くなる傾向がある。そして、特に、微粉末を使用すると環境(大気中)に分散することにより、労働環境の安全性に関する問題が生じる。
【0010】
欧州特許出願公開第0359615号には、乾燥ステップの前に、水分を含んだ薄紙のウエブ上にSAPの固形乾燥粒子を付着させる方法が記載されている。それらは乾燥したウエブ(例えば薄紙又は不織布等)で被覆され、その後、押圧及び乾燥される。
【0011】
欧州特許出願公開第0437816号には、SAP吸水性能を低減するために、水又は低いアルコール(例えばメタノール又はエチルアルコール)含有量の水溶液を使用して、繊維分散体にSAP粒子を加えることにより、湿式不織布を製造する方法について記載されている。乾燥によって、水及び/又はアルコールは蒸発し、SAPの吸収能力は回復する
【0012】
米国特許第5516585号には、セルロースウエブについて記載されている。セルロース繊維は、ウエブ形成及び圧縮工程の前に、SAPの固形粒子が接着され、ホットメルト型結合剤によって少なくとも部分的に被覆される。
【0013】
米国特許第5607550号には、SAP繊維とSAP繊維より吸収性の低い繊維とを混合してなる湿式不織布について記載される。そして、低吸収性繊維の水性分散液に乾燥SAP繊維ウエブを加えることによりウエブを製造する。
変形例によると、水溶性の有機液体中に、乾燥SAP繊維を分散させておく。有機液体中では、乾燥SAP繊維は膨張せず、そして、ウエブ形成の直前に再び、他の吸収性の低い繊維の水性分散液と混ぜられる。
【0014】
特許米国5795439号には、適切な低温状態(SAPの膨張能力を抑制する0℃〜25℃の範囲内)で繊維とSAPとを水溶媒質に加えることによって、湿式不織布を製造するための方法が記載される。
水溶媒質は、膨張するSAPを抑制する化合物を含むこともでき、それは例えば濃度が1〜6重量%のNaCl、NaBr、KCl、及びKBrの群からの塩類である。
【0015】
米国特許第5997690号には、この種のSAPの繊維及び粒子(使用前のサイズは250ミクロン未満)を含む分散液を準備することにより、イオンの影響を受けるSAPが注入される湿式不織布を製造する方法が記載される。
分散液は、食塩水溶液と混合され、そして引き続いて真空吸引下のフィルタリングメッシュスクリーンベルト上へ堆積し、過剰な塩を取り除くために水で洗い流されたのち、最終的に乾燥する。
【0016】
米国特許第6056854号には、繊維構造にSAP粒子を含浸させて湿式NWを製造する方法が記載されている。この製造方法は、SAPを水又は水溶液に接触させた際の膨潤速度論に基づく。
実際、この特許は、繊維を含んだ水溶液にSAP粒子を加え、SAPが水溶液に接触してから5秒以内に、その混合物を、湿式NW処理機の真空吸引堆積部分下のメッシュスクリーンベルトに移し、更にSAPが水に接触してから45秒以内に前記ウエブを乾燥エリアに到達させることによって製造できると主張する。
【0017】
米国特許第6979386号には、製紙プラントのヘッドボックスで、繊維状セルロース物質と予めゲル化させたSAP粒子(吸収能力の少なくとも30%)とを混合し、0.1〜約5.0重量%のSAPを含むセルロースウエブを得、最後に押圧し、少なくとも部分的に乾燥する方法による、薄紙製造方法が記載されている。
【0018】
米国特許出願公開第2003/0127202号には、少なくとも2枚のウエブの薄紙間にSAP繊維のウエブが挿入された複合ウエブ材料をオフラインで製造する方法が記載されている。SAP繊維は、接着剤によって薄紙ウエブの内側に接着される。
【0019】
米国特許出願公開第2008/0115898号には、単一層又は多層ウエブの薄紙又は湿式NWをオフラインで製造する方法が記載されている。接着剤が塗布されかつエンボス加工されたウエブ上にSAP粉末を分散させる。そして、必要に応じてその上を別のウエブで被覆する。
【0020】
国際公開第2005/098134号及び米国特許出願公開第2005/0224200号には、複数層のウエブ材料をオフラインで製造する方法について記載される。少なくとも2枚の予めエンボス加工されているウエブについては、そのうち少なくとも1枚のウエブは水性接着剤で処理されており、そして、単一層のSAP粒子が、積層する前に接着面上に広げられる。
【0021】
国際公開第02/100032号は、中和されてない、酸性樹脂と塩基性樹脂の両方の吸水性樹脂粒子を組み合わせることによって連続してシートを製造することを目的とする。当該製造は、湿式、乾燥、又は乾燥と湿式の混合方式、好ましくは乾燥エアレイド方式、又は、湿式混合処理のために熱圧力下の押出によって、紙を製造する装置を用いて実行される。
粒状SAPが砕けやすいため乾燥エアレイド法で、60%より多いSAP含有量の低い比重(<200g/m
2)のシートを製造するのは困難である。この欠点を克服するために、結合剤、接着剤、又は糊剤が用いられる。
この特許を用いて製造される材料は、塩の形態を吸水性に変質させるために、接触する液体を脱塩することを目的とする。ただし、純水又は薄い食塩水溶液では、高い吸収能を示さない。
【0022】
国際公開第03/092757号は、SAP、可塑化成分、及び他の任意成分の適切な混合物から吸収材料シートを製造することに関連し、上記は、SAPと可塑剤間で反応が起きないような時間と温度と圧力とで、加熱と圧力を受ける。
【0023】
高価なオフラインプロセスや高温押出の使用を回避し、高い吸収能と適切な機械強度とを備えた材料の製造プロセスを開発することが必要であるのは明らかである。しかしまた、薄紙又は湿式不織布の準備で用いられる公知で安価な技術を有する湿式法を使用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】国際公開第2005098134号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0359615号
【特許文献3】欧州特許出願公開第0437816号
【特許文献4】米国特許第5516585号
【特許文献5】米国特許第5607550号
【特許文献6】米国特許第5795439号
【特許文献7】米国特許第5997690号
【特許文献8】米国特許第6056854号
【特許文献9】米国特許第6979386号
【特許文献10】米国特許出願公開第2003/0127202号
【特許文献11】米国特許出願公開第2008/0115898号
【特許文献12】国際公開第2005098134号
【特許文献13】米国特許出願公開第2005/0224200号
【特許文献14】国際公開第02/100032号
【特許文献15】国際公開第03/092757号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、紙製製品又は湿式不織布製品の吸水性能を実質的に高めるために、高吸収性ポリマー(SAP)製品の使用について提案する。
【0026】
高吸収性ポリマー(SAP)製品は長い間、乳児用おむつ及び成人の失禁用おむつ、そして女性の衛生品から、体液の吸収が重要な要因である、使い捨て製品の他の応用に亘って、さまざまな適用において公知である。
【0027】
本発明によると、例えば顆粒、粉末、繊維、薄片、又はビーズ等(規則的又は不規則)のいずれの形状のSAPを内容物に組み込ませ、薄紙又は湿式NW(不織布)の繊維構造内に最高で100%まで取り込ませることができる。上記に関して、従来の技術では、安全性に関する起こりうる二次的な問題がなく、そして、製紙又は湿式不織布の作業(プロセス)における通常の生産と比較して、同等又はわずかに高い乾燥コストで実現させることは不可能である。
【0028】
さらにまた、従来は製造するのが困難若しくは不可能であるか、又は、2層以上の薄紙を合わせることにより紙のオフライン製造で作られる複合材料の使用を必要とするような製品を、吸水性能を顕著に増加させたことによって、単層又は複数層のSAPのみで製造し、市場に出すことができ、そして、製造/加工コストについても恩恵を受けることができる。
【0029】
有利には、SAP繊維は、セルロース繊維及び/又は他の天然の、人工、及び合成繊維と完全に置き換えられることができる。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は一態様において、請求項1による高吸収性材料の湿式製造のための方法に関する。
本発明による方法は、以下のステップを含む。
食塩水溶液に強酸又は強塩基を加えることにより、イオン濃度が0.01〜4.5N、pHが0〜6.0又は8.0〜14.0である食塩水溶液を調製するステップ。
酸性の食塩水溶液の場合は、完全中和でない(完全には中和されていない)少なくとも1種類の酸性樹脂を含み、又は、塩基性の食塩水溶液の場合は、完全中和でない少なくとも1種類の塩基性樹脂を含む、ポリマーから選択される高吸収性ポリマー(SAP)を食塩水溶液に分散させるステップ。
【0031】
ここで、pHと塩分濃度とは、SAPの水の吸収が約30.00g
H2O/g
SAP以下となるような関係にある。(1グラムのSAPあたり、水の吸収量は約30.00グラム以下)
【0032】
従って、真空吸引下でメッシュスクリーンベルト上へ、このSAPが分散した溶液を堆積及び層化(層状に形成)することによって、ウエブ(第1のウエブ)を製造する。その後、SAPの中和レベルとその吸水性能を再び高めるために、酸性の食塩水溶液にSAPが分散する場合は塩基性溶液でウエブを洗い流し、又は、塩基性の食塩水溶液にSAPが分散する場合は酸性溶液でウエブを洗い流す(洗浄する)。
【0033】
最後に、残余食塩を取り除くために、ウエブを水(放水)及び真空吸引で洗い流すこともできる。それからウエブは乾燥される。
【0034】
本発明による方法の変形例では、食塩水溶液の中に入れられると、それが所望のpHを作り出すように、適切な、より少ない食塩で処理されたSAPの使用を提示する。
【0035】
好ましい実施例によると、高吸水性ポリマー(SAP)の食塩水溶液の分散液はまた、天然又は人工のセルロース繊維及び/又は人工又は合成繊維(適宜に(繊維に応じ)界面活性剤で表面又はバルクの処理がなされ水和性とされた)の分散物を含み、用いるSAPの種類により、pH0〜6.0、又は8〜14.0で食塩水溶液中に繊維及びSAPの分散をする。
【0036】
好ましい実施例によると、本発明による方法は、同一のSAP及び/又は、好ましくはアニオン性SAPの層化(層の形成)により得られる第1のウエブとカチオン性SAPの層化(層の形成)とによる第2のウエブとの、ウエブ形成のステップを繰り返し、最後に最終乾燥によって連続した多層形成も提示される。
【0037】
食塩水溶液に分散するSAPは好ましくは、顆粒、粉末、繊維、薄片、又は真珠(形状)の単独又はそれらの混合として形成される。
【0038】
更に、キッチンペーパー及びキッチンタオル、トイレットペーパー及び化粧紙、吸水性衛生用品(例えば乳児及び尿失禁の成人用のおむつ)、医療/衛生ウェットティッシュ、尿失禁者のためのベッド及び手術室のベッドのためのマットレスカバー、脇下ライナーなどの製造に、本発明の方法により得られる吸収材料を使用することについても提示する。
【0039】
現在市販されるSAP、好ましくは70〜80%で塩化処理されたSAPは、官能基の食塩処理の程度に依存して、それらがアニオン性(例えばポリアクリレート)又はカチオン性(例えばポリビニルアミン)であるかに関わらず、その水分吸収量が減少し、最小値である2〜4g
H2O/g
SAP未満まで低下することが実験で明らかとなった。本発明はこれらの実験結果に基づく。なお、比較として、純粋なセルロースの場合の水分吸収量はおおよそ4〜6g
H2O/g
celluloseである。
【0040】
完全に酸性又は完全に塩基性、又は異なる低いレベルの塩化処理であってもこの種のSAPは、所望のレベルに塩化処理されたSAPから直接始めるか、又は、市販されている材料(現状70−80%に塩化されている)を直接パルパー又は混合タンク内で分散し、その中でセルロース繊維が、水又は、製紙プラントへの移送に適した2〜4%未満の濃度の食塩水溶液に分散され、そして、用いるSAPの種類に応じて、所望のpHの値まで酸性化又は塩基性化することによっても得ることができる。
この方法によりSAPは、所望の低いゲル化状態にあり、食塩水溶液及び/又は使用するSAPに応じ、pH<6又はpH>8によってゲル化する塊の形成は阻止され、存在しておらず、そして、SAPは、抄紙機の真空メッシュスクリーンベルトの堆積部分上へ均一に堆積される。
SAPの繊維又は粒子が分散した混合物は、セルロース繊維を用いた好ましい実施例により、そして、適切な最低限度の食塩での処理で、紙又は湿式不織布の通常の製造のように、メッシュスクリーンベルト真空堆積部分に移送され得る。
【0041】
好ましい実施例によると、完全に酸性化又は塩基性化すると不都合なことになるが、最低限の食塩での処理を達成すれば十分であり、そして、最低限の食塩での処理とは、前記SAPの水の吸収が30g
H2O/g
SAP未満であり、実質的なゲル化された塊が形成されず、従って、SAPを組み合わせる(結合する)薄紙又は湿式NWの生産性、機械加工性、品質、及び乾燥コストを損なうことがない。
【0042】
最大の吸水性能を有するSAP粒子を含む適切なSAT(高吸収性薄紙)材料を得るために必要とされる次のステップは、メッシュスクリーン堆積ベルト上で、湿式の薄紙ウエブ(酸性又は塩基性のSAP粒子を含む)の処理(吸引下)が含まれる。
このステップは、ウエブの形成部と乾燥シリンダ上での移送部との間の領域のメッシュスクリーンベルト堆積部分上で行われ、(所望程度の食塩のレベルまで)SAPを再塩化(再度の食塩処理)して、その吸収能力を再度高めるために、NaOH又はHClをそれぞれ供給するものである。
【0043】
SAPのゲル化反応速度は、再塩化反応速度及び、抄紙機又は湿式不織布製造機の処理速度より適度に遅いので、その時点でSAPは、著しい量の水をゲル化することはなく、基本的に乾燥コストは不変に保たれる。
【0044】
未使用、再利用、もしくは回収された繊維かどうかに関わらず、セルロース繊維の異なる組成物と異なる層化で、薄紙又は湿式NWを得るため、そして機械の高速化のためにも、ある種のプラント(例えばTAD)は、より多くのパルパー(特定の繊維の混合物に対して一台ずつ)を用い、ヘッドボックスを介して、真空下のメッシュスクリーンベルト上へ、同時かつ共層状の形成を行う。
この種のプラントでは、セルロース繊維の有無にかかわらず、例えばパルパーで、SAPを食塩水溶液に投入することができ、SAPの性質に応じて、適切に酸性化又は塩基性化することができる。しかし、他のパルパーについては、メッシュスクリーンベルト堆積部上で混合する際に、前者のパルパーの内容物の酸又は塩基がそれぞれ中和されるような濃度で、NaOH又はHClを有するセルロース繊維を投入することができる。
これにより、上記の再塩化処理に続く塩基性又は酸性処理の必要又は統合を排除又は低減させる。
【0045】
発明者は、SAPのUVAT(Under Vacuum Absorbency Test)方法に従って、pH及び塩分濃度の関数として、SAPのゲル化反応速度を定量化した。
【0046】
UVATの目的は、SAP(高吸収性高分子)により吸収される液体の保持(能力)を測定することにあり、そして当該測定は、pH及び塩分濃度、及び他の条件(例えば液体試料の温度)の異なる値において、また、他のタイプの溶媒(例えばメタノール又はエチルアルコール等)が存在する場合に、紙又は湿式不織布の製造装置の技術において通常用いられる状態を再現する、真空下の吸引による濾過により行われる。
【0047】
用いられている器材は、ガラスビーカー、真空漏斗タイプブフナー(Buchner)、濾紙Ederolタイプ3/N、エルレンマイヤー(Erlenmeyer)真空フラスコ、真空ポンプを含む。
【0048】
測定は、0.01gの精度の分析天秤と、0.01pHの精度のpHメーターと、0.01mg/L〜600g/LのKCl、又は470g/LのNaClの見かけの塩分濃度に対応する、0.01μS/cm〜1000mS/cmの測定範囲の導電率計とによって実行された。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1は、表1(SAP)を図示したものであり、1グラムのSAPが吸収するH
2Oの重さ(g)を示している。図中の線は、同じ塩分濃度で測定したpHと吸収量を結んだものである。
【
図2】
図2は、表2(SAF)を図示したものであり、1グラムのSAFが吸収するH
2Oの重さ(g)を示している。図中の線は、同じ塩分濃度で測定したpHと吸収量を結んだものである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
(例えば酸性SAPに対して)
以下の特徴を有する水溶液を準備した。
1.250mlの目盛り付きフラスコ内に、検査する溶液のpHを低下させるため、濃度が0.5−1.0−1.5−2.0−2.5−3.0−3.5−4.0−4.5、及び5.0NのHCl水溶液
2.100mlの目盛り付きフラスコ内に、検査する非酸性溶液のpHを上昇させるため、濃度2NのNaOH水溶液
3.10リットルの目盛り付きビーカーに、検査する各塩分濃度のレベルについて、濃度0.00−0.025−0.05−0.10−0.15−0.30−0.75−1.50−3.0、又は4.5NのNaClの食塩水溶液
【0051】
用いられる方法は、以下の通りである。
−各塩分濃度レベルに対して、検査するpHレベルごとに250mlのガラスビーカーの対によって試験セットが準備される。
−各対のビーカーに、分析天秤の較正に続いて、以下の量の1つが、加えられる。
0.0−0.50−1.0−1.50−2.0−2.50−3.0−3.50−4.0−4.50−5.0−5.50−6.0−6.5−7.0−7.5−9.0−11.0−15.0−20.0、又は25.0mEq HCl、又は、
0.5−1.0−1.5−2.0−2.5、又は3.0mEq NaOH
その後、最終的に溶液の重量が200.0gになるまで、試験食塩水溶液を加えていく。
−各対の内1つのビーカーだけに、SAP1.00gが加えられる。もう一方のビーカーはすすぎ洗い用に使用され、このステップ間のSAPの状態の変化を防止する。
−SAPを含んでいるビーカーは、吸収量を均一にするために、少なくとも2時間攪拌される。その後、pH及び伝導率、又は見かけの塩分濃度(NaClの見かけの等量として)(伝導度測定において、溶液に存在するすべてのイオンの寄与による)が測定され、そして、真空濾過される。
−溶液に加えられる有効なNaClに加えて、他のイオンの寄与は、使用するNaClの規定度1.0/1.5まで重要で、この塩分濃度を越える(塩分濃度1.5Nを越える)と不適切になる。そして後者は、用いられるNaClの規定度に等しいとみなされることができる。
このようにして得られた吸水したSAPの正味重量から使用した乾燥SAPの1.00gを差し引いた値により、測定されたpH及び塩分濃度での吸収量が求められる。
【0052】
表1は、異なるNaCl濃度ごとの、H
2Oの吸収量を、1gのSAPあたりのg(重さ)として示す。ここで、SAPは、Danson手順、製品タイプDSorb A100―228(SAP)に従って得られた顆粒の高吸収性ポリマーである。
【0056】
同様に、表2は、異なるNaCl濃度ごとにH
2Oの吸収量を、1gのSAFあたりのg(重さ)として示す。ここで、SAFは、Technical Absorbents社の高吸収性繊維(型番:SAF111/6/10)である。
【0060】
図1及び
図2はそれぞれ、表1(SAP)及び表2(SAF)を図示したものであり、1グラムのSAP又はSAFが吸収するH
2Oの重さ(g)を示している。図中の線は、凡例に従って、同じ塩分濃度での値を結んだものである。但し、冗長を避けるため表中のデータの一部は省略した。これらのグラフが示すように、pH5.00〜4.50未満で、SAP又はSAFの吸水量は、10g
H2O/g
SAP又は10g
H2O/g
SAF未満である。
【0061】
本発明による方法は、湿式製造のための製紙プラントを使用する。特に、高吸収性材料の湿式製造のための方法であり、以下を備える。
a)食塩水溶液に強酸又は強塩基を加えることにより、イオン濃度が0.01〜4.5N、pHが0〜6.0又は8.0〜14.0である食塩水溶液を調製するステップ
b)酸性の食塩水溶液の場合は完全中和されていない少なくとも1種類の酸性樹脂を含み、及び/又は、塩基性の食塩水溶液の場合は完全中和されていない少なくとも1種類の塩基性樹脂を含む、ポリマーから選択される高吸収性ポリマー(SAP)を食塩水溶液に分散させるステップ
c)堆積用メッシュスクリーン上へ、SAPの分散液を層化(層状形成)及び吸引することにより第1のウエブを製造するステップ
d)酸性の食塩水溶液に分散するSAPに対して、塩基性溶液を用いて酸が所望の中和レベルとなるまでウエブを洗い流す、又は、塩基性の食塩水溶液に分散するSAPに対して、酸性溶液を用いて塩基が所望の中和レベルとなるまでウエブを洗い流すステップ
e)水(放水)及び吸引により、ウエブを洗い流すステップ
f)ウエブを乾燥させるステップ
ここで、pHと塩分濃度とは、SAPの水の吸収が約30.00g
H2O/g
SAP以下となる関係にある。
【0062】
図1及び2に示すように、クレームに記載された作業条件の下では、比較的多量の食塩水溶液をSAPに触れさせた場合でも水の吸収量が制限され、すなわちSAPによる吸水とゲル化の現象は抑制される。
その結果、乾燥のためのコストが抑えられる。そして、例えば、プラントの中で大きなゼリー状の塊が形成されることやプラントの中断といったすべての問題点が回避される。
塊が形成されると、紙綿の不十分な均質化及び均一性に加えて、乾燥時間が長時間となったり、稼動率が不経済であったり、また、経費が生じ、紙材の製造プラント独自の技術による実施や製造を阻む。
【0063】
好ましい実施例によると、本発明による方法は、食塩水溶液中の高吸収性ポリマー(SAP)を天然又は人工のセルロース繊維及び/又は人工又は合成繊維(界面活性剤による表面またはバルクの処理で適宜に(繊維に応じ)水和性となった)と共に分散し、そして、用いるSAPの種類に依存して、pH0〜6.0、又は8〜14.0の食塩水溶液に繊維及びSAPを分散することを提示する。
【0064】
SAPは、ポリアクリル酸、加水分解アクリロニトリル重合体、加水分解アクリルアミド重合体、デンプン−アクリル酸グラフト共重合体、加水分解デンプン―アクリロニトリル・グラフト共重合体、ポリ(乳酸)、ポリ(アスパラギン酸)、エチレン―無水マレイン酸共重合体、無水マレイン酸―イソブチレン・コポリマー、けん化酢酸ビニル―アクリル酸エステル共重合体、スルホン化ポリスチレン、ポリ(ビニルリン酸)、ポリ(ビニルホスホン酸)、ポリ(ビニル硫酸)、ポリ(ビニルスルホン酸)、及びそれらの混合物の群から選択される。好適には、酸性樹脂は、ポリアクリル酸である。
【0065】
本発明の他の実施例によれば、塩基性水溶液中の以下の群から選択される、軽度に架橋されたカチオン性吸水性樹脂(SAP)の分散液である。
ポリ(ビニルアミン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルグアニジン)、ポリ(アリルアミン)、ポリ(アリルグアニジン)、ポリ(ジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド)、N―(ジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド)のエステル類似体から準備されるポリマー、ポリ(ジメチルジアルキルアンモニウムヒドロキシド)、グアニジン変性ポリスチレン、四級化ポリスチレン、四級化ポリ(メタ)アクリルアミド又はそのエステル類似体、ポリ(ビニルアルコール―コ―ビニルアミン)(poly(vinylalcohol−co−vinylamine))、及びそれらの混合物。好適には、樹脂は、ポリ(ビニルアミン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルグアニジン)、ポリ(ジメチルアミノエチル・アクリルアミド)ポリ(DMAPMA)である。
【0066】
ステップc)〜e)を繰り返すことによってステップe)から得られるウエブ上にさらに積層してウエブを得ることができる。
アニオン性SAPの層化によって得られた第1のウエブの更なる実施例では、カチオン性SAPの層が直接積層され、その後に、ウエブの乾燥ステップが行われる。もしくは、その後に、アニオン性SAPの層の形成の後にカチオン性SAPの層の形成が数回繰り返される。
【0067】
食塩水溶液に分散するSAPは、顆粒、粉末、繊維、薄片、又は真珠(形状)、もしくはそれらの混合から成ることができる。
【0068】
好ましい実施例によれば、pHと塩分濃度との関係は、SAPの水の吸収が約20.00g
H2O/g
SAP以下、好ましくは15.00g
H2O/g
SAP未満となるような関係とする。
【0069】
本発明による方法によると、適宜、湿潤強力樹脂(例えばポリアミド―アミン―エピクロロヒドリン(PAE)樹脂、又は類似の樹脂)が加えられるウエブを提示する。
【0070】
本発明により得られる吸収材料は、キッチンペーパー及びキッチンタオル、トイレットペーパー及び化粧紙、乳児、尿失禁の成人、月経中/間の女性のための吸水性衛生用品、尿失禁者のためのベッド及び手術室のベッドのためのマットレスカバー、脇下ライナー、食品産業のための層を成す紙又は吸水性マット(下に敷き、肉、魚、又は野菜からの排液(ドリップ)を吸収する食品容器)、ペット用、又は腐敗中に分泌される体液を吸収するために棺で使用する吸水性の紙又は吸水性マット、そして、例えば損傷部から滲出液を吸収する医薬関連品の生産を可能にする。
【0071】
当業者であれば、本発明の他の変形及び修正が可能であり、この種の変形例及び修正例も含むことは明らかである。そして、添付の特許請求の範囲を目的とする。
【0072】
上記の特定の値及び特定の設定は変更可能であり、本発明の特定の実施例は単なる具体例として挙げられており、本発明の技術分野を制限することを目的としない。
【0073】
本発明の技術分野は、添付の請求項によって定められるものとする。