特許第6971377号(P6971377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6971377内蔵された横断流路を備えた流体吐出デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971377
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】内蔵された横断流路を備えた流体吐出デバイス
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20211111BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20211111BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   B41J2/14 201
   B41J2/16 507
   B41J2/16 503
   B41J2/14 613
   B41J2/18
   B41J2/14 603
   B41J2/14 605
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-502713(P2020-502713)
(86)(22)【出願日】2017年7月31日
(65)【公表番号】特表2020-527492(P2020-527492A)
(43)【公表日】2020年9月10日
(86)【国際出願番号】US2017044742
(87)【国際公開番号】WO2019027432
(87)【国際公開日】20190207
【審査請求日】2020年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,シ−ラム
(72)【発明者】
【氏名】カンビー,マイケル,ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チエン−フア
(72)【発明者】
【氏名】ポラード,ジェフレイ,アール
【審査官】 高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−511717(JP,A)
【文献】 特表2014−522755(JP,A)
【文献】 特表2016−515952(JP,A)
【文献】 特表2014−531349(JP,A)
【文献】 特開2011−073435(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/065728(WO,A1)
【文献】 特表2017−513741(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0028722(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形可能な材料に埋設された流体吐出ダイであって:
各々のノズルが:
ノズル基板に形成された吐出チャンバ;
開口;および
吐出チャンバ内に配置された流体アクチュエータを含むノズルのアレイ;
ノズル基板の背面に接合された流路基板に形成され、流体を吐出チャンバへ、また吐出チャンバから配送するための通路のアレイ;および
流路基板の背面上に形成された、内蔵された横断流路のアレイであって、アレイの各々の内蔵された横断流路が通路のアレイの複数の通路のそれぞれと流体的に接続されている内蔵された横断流路のアレイを含む、流体吐出ダイと;
流体吐出ダイが配置されている成形可能な材料と、ここで成形可能な材料は流体を流体吐出ダイへ、また流体吐出ダイから配送する供給スロットを含んでおり;および
流体吐出ダイおよび成形可能な材料を支持するキャリア基板とを含む、流体吐出デバイス。
【請求項2】
流体アクチュエータは、サーマルデバイスを含む、請求項1に記載の流体吐出デバイス。
【請求項3】
成形可能な材料はエポキシ成形コンパウンドである、請求項1または請求項2に記載の流体吐出デバイス。
【請求項4】
内蔵された横断流路を通る流体の流れは通路における流体の流れに対して垂直である、請求項1〜3の何れか一項に記載の流体吐出デバイス。
【請求項5】
各々のノズルはさらに、流体を対応する吐出チャンバへ、また対応する吐出チャンバから差し向ける流路を含み;そして
ノズルに対応する流路および通路は微小再循環ループを形成する、請求項1〜4の何れか一項に記載の流体吐出デバイス。
【請求項6】
通路は流路基板の穿孔された層に形成されている、請求項1〜5の何れか一項に記載の流体吐出デバイス。
【請求項7】
一対の通路が対応する吐出チャンバと組み合わせられている、請求項1〜6の何れか一項に記載の流体吐出デバイス。
【請求項8】
成形可能な材料にある供給スロットは複数の内蔵された横断流路へと流体を供給する、請求項1〜7の何れか一項に記載の流体吐出デバイス。
【請求項9】
成形可能な材料から形成された成形パネル;
成形パネルに埋設された複数の流体吐出ダイであって、各々の流体吐出ダイは:
各々のノズルが:
ノズル基板に形成された吐出チャンバ;
開口;および
吐出チャンバ内に配置された流体アクチュエータを含むノズルのアレイと;
ノズル基板の背面に接合された流路基板に形成され、流体を吐出チャンバへ、また吐出チャンバから配送するための通路のアレイと;および
流路基板の背面上に形成された、内蔵された横断流路のアレイであって、内蔵された横断流路のアレイの各々の内蔵された横断流路が通路のアレイの複数の通路のそれぞれと流体的に接続されている内蔵された横断流路のアレイとを含んでいる、流体吐出デバイスであって;
成形パネルは流体を流体吐出ダイへ、また流体吐出ダイから配送する供給スロットを含んでおり;および
流体吐出ダイおよび成形パネルを支持するキャリア基板とを含む、流体吐出デバイス。
【請求項10】
各々のノズルはさらに:
流体を対応する吐出チャンバへ、また対応する吐出チャンバから差し向ける流路;
流体を流路を通して移動させるための2次的流体アクチュエータを含み;そして
ノズルに対応する流路および通路はノズルの微小再循環ループを形成する、請求項9の流体吐出デバイス。
【請求項11】
プリントヘッドが基材幅のプリントバーであり;そして
流体吐出ダイは流体が付着される基材の幅にわたって互い違いに配置されている、請求項9または請求項10に記載の流体吐出デバイス。
【請求項12】
プリントヘッドは多色プリントヘッドであり;
ノズルのアレイの異なる部分集合が異なる色に対応しており;
内蔵された横断流路の異なる部分集合が流体をノズルのアレイの異なる部分集合の行へと配送する、請求項9または請求項10に記載の流体吐出デバイス。
【請求項13】
流体吐出デバイスを作成するための方法であって:
ズルのアレイをノズル基板に形成し、各々のノズルが、
吐出チャンバ;
開口;および
吐出チャンバ内に配置された流体アクチュエータを含んでおり
通路のアレイを流路基板に形成し、ここで通路は流体を対応する吐出チャンバへ、また対応する吐出チャンバから配送し、
流路基板の背面上に多数の内蔵された横断流路を形成し、ここで多数の内蔵された横断流路は流体を通路へ、または通路から配送し;
アレイの各々の内蔵された横断流路が通路のアレイの複数の通路のそれぞれと流体的に接続されるように流路基板をノズル基板の背面に接合して流体吐出ダイを形成し;そして
流体吐出ダイを成形可能な材料に埋設し、ここで成形可能な材料は多数の内蔵された横断流路へと流体を供給する供給スロットを含む、方法。
【請求項14】
多数の内蔵された横断流路を流路基板の背面上に形成することは、流路基板の背面をエッチングしてリブを形成することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
通路のアレイを形成することは、通路を含んでいる膜をノズルが形成されたノズル基板に接合することを含む、請求項13または請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
流体吐出ダイは、流体吐出システムの部品であり、多数の流体吐出ノズルを含んでいる。流体ダイはまた、微小再循環ポンプのような、他の非吐出型アクチュエータを含むことができる。これらのノズルおよびポンプを通じて、流体、中でもインクおよび融合(溶融)剤が吐出または移動される。例えば、ノズルは所定量の流体を保持する吐出チャンバを含んでいてよく、吐出チャンバ内の流体アクチュエータが動作して、流体をノズルの開口を通して吐出する。流体吐出ダイおよび周囲のパッケージは、流体吐出デバイスとして参照されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0002】
添付の図面は、本願に記載された原理の種々の例を図解しており、明細書の一部をなしている。図解された例は単に例示のために与えられたものであり、特許請求の範囲を制限するものではない。
【0003】
図1Aおよび図1Bは、本願に記載された原理の例に従う、内蔵された横断流路を備えた流体吐出ダイを有する流体吐出デバイスの等測図である。
【0004】
図2Aから図2Dは、本願に記載された原理の例に従う、内蔵された横断流路を備えた流体吐出ダイの図面である。
【0005】
図3は、本願に記載された原理の例に従う、内蔵された横断流路を備えた流体吐出ダイの断面図である。
【0006】
図4Aおよび図4Bは、本願に記載された原理の例に従う、内蔵された横断流路を備えた流体吐出ダイを有する流体吐出デバイスの断面図である。
【0007】
図5は、本願に記載された原理の例に従う、内蔵された横断流路を備えた流体吐出ダイの下側の等測図である。
【0008】
図6は、本願に記載された原理の例に従う、内蔵された横断流路を備えた流体吐出ダイを含む、印刷流体カートリッジのブロック図である。
【0009】
図7は、本願に記載された原理の例に従う、基材幅の印刷バー内に内蔵された横断流路を備えた多数の流体吐出ダイを含んでいる印刷デバイスのブロック図である。
【0010】
図8は、本願に記載された原理の例に従う、内蔵された横断流路を備えた多数の流体吐出ダイを含んでいる流体吐出ダイのブロック図である。
【0011】
図9は、本願に記載された原理の例に従う、内蔵された横断流路を備えた流体吐出ダイを形成するための方法の流れ図である。
【0012】
図10Aから図10Dは、本願に記載された原理の例に従う、内蔵された横断流路を備えた流体吐出ダイを製造するための方法を示している。
【0013】
図面を通じて、同一の参照番号は類似した、しかし必ずしも同一ではない要素を指定している。図面は必ずしも縮尺通りではなく、幾つかの部品の大きさは誇張されて、示された例をより明確に図解するようにされていてよい。さらにまた、図面は詳細な説明と矛盾のない例および/または実施態様を提示している;しかしながら、詳細な説明は図面に提示された例および/または実施態様に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
流体デバイスは、本願で使用するところでは、流体ダイを含むデバイスである。流体ダイとは、それを用いて小さな体積の流体が給送、混合、分析、吐出、等々されうるところの、様々な種類の集積デバイスを表していてよい。こうした流体ダイには、流体吐出ダイ、付加製造用の分配器の部品、デジタル滴定用部品、および/または所定体積の流体を選択的および制御可能に吐出するために用いられうる、他のそうしたデバイスが含まれていてよい。流体ダイの他の例には、流体検知デバイス、ラボオンチップデバイス、および/または流体を分析および/または処理しうる他のそうしたデバイスが含まれていてよい。
【0015】
具体的な例においては、これらの流体デバイスは、インクジェットプリンター、多機能プリンター(MFP)、および付加製造装置といった、多くの印刷システムにおいて見出される。これらの印刷システムにおいて流体デバイスは、少量の流体を正確かつ迅速に分配するために使用されている。例えば、付加製造装置においては、流体吐出デバイスは融合剤を分配する。融合剤は構築材料上に付着され、その融合剤が構築材料の硬化を促進して、3次元製品が形成される。
【0016】
他の流体吐出デバイスは、紙のような2次元の印刷媒体上にインクを分配する。例えばインクジェット印刷に際して、流体は、流体吐出デバイス内部に見出される流体吐出ダイへと差し向けられる。印刷される内容に応じて、流体吐出ダイが配置されたシステムは、インク液滴が印刷媒体上へと放出/吐出される時間と位置を決定する。このようにして、流体吐出デバイスのダイは、所定の領域にわたって多数のインク液滴を放出し、印刷すべきイメージ内容の表現を生成する。紙の他にも、他の形態の印刷媒体もまた使用してよい。従って、上述してきたように、本願に記載のシステムおよび方法は2次元印刷、すなわち基材上への流体の付着において、および3次元印刷、すなわち材料ベース上への融合剤または他の機能性剤の付着による3次元印刷製品の形成において実施されてよい。
【0017】
こうした流体吐出デバイスは、様々な種類の流体について吐出効率を増大させてきたが、それらの動作を強化すれば性能の増大がもたらされうる。例えば流体吐出デバイスにあるダイは抵抗素子を含むことができ、これは流体をノズル開口を通して押し進める。幾つかの例においては、流体は懸濁された粒子を含んでいてよいが、それらは懸濁状態から外れて、流体吐出ダイ内部の特定の領域に沈殿物として集積しうる。例えば、インク中に懸濁された顔料粒子は、懸濁状態から外れて、ノズルの吐出チャンバ内部に集積される傾向がありうる。これは流体の吐出を阻止可能であり、および/または印刷品質の低下を招来しうる。
【0018】
粒子のこうした沈積は、流体吐出ダイ内部の微小再循環流路(チャネル)内に配置された、多数の再循環ポンプを包含させることによって修正されてよい。これらの再循環ポンプは微小抵抗素子であってよく、流体吐出ダイの吐出チャンバを介して流体を循環させることにより、顔料の沈殿を低減または排除する。
【0019】
しかしながら、再循環ポンプの付加、ならびに流体吐出器の動作は、流体、流体吐出ダイ、および流体吐出デバイス全体の他の部分に、望ましくない量の廃熱の蓄積を生じうる。廃熱のこうした増大は、流体吐出ダイからの流体の吐出に熱欠損を生じさせ、流体吐出ダイの部品を損傷させ、そして印刷品質を低減させうる。
【0020】
また、これらの微小再循環ポンプの望ましい効果は、流体力学に基づいて低減される。例えば流体は、流体供給スロットを経由して流体吐出デバイスへと供給される。マクロ再循環システムが、これらの流体供給スロットを通して流体を駆動する外部ポンプを含んでいる。流体吐出ダイが狭小であることから、このマクロ再循環流は流体供給スロット中へと十分に深く浸入せず、ノズル内の微小再循環ループ中に引き込まれない。つまり、流体供給スロットはマクロ再循環流を、微小再循環流から分離することになる。
【0021】
従って、微小再循環ループにある流体は補充されず、それに代えて所定体積の同じ流体がループを通って再利用されることになる。これが行われると、ノズルに対して有害な影響がある。例えば動作中に、微小流体ポンプおよび流体吐出器を経由しての多数回の付勢の後に、流体は部分的に蒸発し、かくして流体からは水分が欠乏した状態になる。水分が欠乏した流体はノズルに負の影響を与えうるものであり、また印刷品質の低下という結果をもたらしうる。
【0022】
従って、本明細書は、これらの、および他の問題点を解決する流体吐出デバイスを説明する。すなわち本明細書は、流体吐出デバイス内で流れを横断方向に押し進めるデバイスおよび方法を説明する。この例において、ダイのスロットは流入ポートおよび流出ポートで置き換えられ、これらは流体吐出ダイの背面側にある、内蔵された(囲まれて内部に備えられた)横断流路(クロスチャネル)に繋がっている。より詳しくは、流体が吐出されるノズルは、流体吐出ダイの前面に配置されている。流体はこれらのノズルへと、背面側から供給される。内蔵された横断流路は、流体吐出ダイの近くで流れを促進させる。すなわち、内蔵された横断流路がなければ、供給スロットにより流体吐出デバイスの流入部へと供給される流体は低速であり、微小再循環ループに近接するには不十分である。この例においては、流体は微小流体ループ全体にわたって循環しているが、流体が流体供給部から補充されることはない。
【0023】
内蔵された横断流路は、流体力学によって、微小再循環ループの近傍で流れを増大させ、かくしてループには新たな流体が補充される。すなわち、微小再循環流は、内蔵された横断流路を通って移動しているマクロ再循環流から流体を引き入れ、またはその中へと流体を放出する。従ってこの例において、微小再循環ループおよびノズルには、新たな、新鮮な流体が提供されることになる。
【0024】
すなわち、微小再循環ポンプは脈動的な仕方で流路内へと流体を引き入れ、そして流体を流路から放出し、これが二次的な流れおよび渦を生成する。これらの渦は、流路から所定の距離を置いて消失する。内蔵された横断流路は、マクロ再循環流をこれらの渦へと直接的に引き入れ、かくしてマクロ再循環流体は十分な流速においてこれらの渦と相互作用し、マクロ再循環流体と微小再循環ループにある流体との間で混合が加速されるようになる。内蔵された横断流路がマクロ再循環流体を微小再循環ループの近傍へと押し進めなければ、マクロ再循環流体が十分な速度で流体供給スロット内に到達して微小再循環ループの入口/出口付近において渦と相互作用することはない。この増大した流れはまた、新鮮なインクとして冷却を増大させるが、これは水分の欠乏した、または再利用される流体よりも、流体吐出ダイから熱を取り去るについて有効である。
【0025】
流体吐出デバイスはまた、成形可能な材料を含んでおり、その中に流体吐出ダイが配置される。成形可能な材料は、ダイの近傍においてデバイスの厚さを増大させることなしに、回路を成形体中に一体化させることを可能にする。換言すれば、成形可能な材料中に流体吐出ダイを埋設すると、吐出用ダイの大きさは、キャリア基板および関連する特徴部分の大きさから切り離される。流体吐出ダイを成形可能な材料中に配置すると、流体吐出ダイの流体的なファンアウト(展開拡張)が許容され、流体吐出ダイのノズル側に平滑で平坦な表面がもたらされて媒体が突起や割れ目に引っ掛かることが防止され;電子的ファンアウトが許容され、そして複数個の流体吐出ダイを整列させ、それらの位置を成形可能な材料内に固定することにより組み立てが簡易化される。
【0026】
具体的には、本明細書は流体吐出デバイスを記述している。この流体吐出デバイスは、成形可能な材料中に埋設された流体吐出ダイを含んでいる。流体吐出ダイは、所定量の流体を吐出するためのノズルのアレイを含んでいる。各々のノズルは、所定量の流体を保持するための吐出チャンバ;所定量の流体を分配するための開口;および吐出チャンバ内に配置され、所定量の流体を開口を介して吐出するための流体アクチュエータを含んでいる。流体吐出ダイはまた、流体を吐出チャンバへ、また吐出チャンバから配送するための、基板に形成された通路のアレイを含んでいる。流体吐出ダイはまた、基材の背面上に形成された、内蔵された横断流路のアレイを含んでいる。内蔵された横断流路のアレイの各々の内蔵された横断流路は、通路のアレイをなす複数の通路のそれぞれと流体的に接続されている。流体吐出ダイに加えて、流体吐出デバイスは成形可能な材料を含んでおり、その中に流体吐出ダイが配置されている。成形可能な材料は、流体吐出ダイへ、そして流体吐出ダイから流体を配送するための供給スロットを含んでいる。流体吐出デバイスのキャリア基板が、流体吐出ダイおよび成形可能な材料を支持している。
【0027】
本明細書はまた、プリントヘッドを記述している。このプリントヘッドは、成形可能な材料で形成された成形パネルを含んでいる。プリントヘッドはまた複数個の、例えば1つよりも多い、成形パネルに埋設された流体吐出ダイを含んでいる。流体吐出ダイの各々は、所定量の流体を吐出するノズルのアレイを含んでいる。各々のノズルは、所定量の流体を保持するための吐出チャンバ、所定量の流体を分配するための開口、および吐出チャンバ内に配置され、所定量の流体を開口を介して吐出するための流体アクチュエータを含んでいる。流体吐出ダイはまた、1)流体を吐出チャンバへ、また吐出チャンバから配送するための、基板に形成された通路のアレイ、および2)基材の背面上に形成された、内蔵された横断流路のアレイを含んでいる。内蔵された横断流路のアレイの各々の内蔵された横断流路は、通路のアレイをなす複数の通路のそれぞれと流体的に接続されている。成形パネルは、流体吐出ダイへ、そして流体吐出ダイから流体を配送するための供給スロットを含んでいる。流体吐出デバイスのキャリア基板が、流体吐出ダイおよび成形パネルを支持している。
【0028】
本明細書はまた、流体吐出デバイスを作成するための方法を記述している。この方法によれば、ノズルのアレイ、およびそれを通して流体を吐出するための対応する通路が形成される。多数の内蔵された横断流路もまた形成される。内蔵された横断流路のアレイの各々の内蔵された横断流路は、通路のアレイをなす複数の通路のそれぞれと流体的に接続されている。ノズルのアレイおよび通路は次いで、多数の内蔵された横断流路と接合されて流体吐出ダイが形成され、そして流体吐出ダイは成形可能な材料中に埋設される。成形可能な材料は、多数の内蔵された横断流路へと流体を供給する供給スロットを含んでいる。
【0029】
概略すると、こうした流体吐出ダイの使用は、1)流体中の水分濃度を維持することによってデキャップの蓋然性を低減し、2)ノズル内部でのより効率的な微小再循環を促進し、3)ノズルの健全性を改善し、4)ダイ近傍での流体の混合をもたらして印刷品質を向上させ、5)流体吐出ダイを対流によって冷却し、6)流体吐出ダイから気泡を除去し、7)ノズルの再プライミングを許容し、そして8)スライバー状の流体吐出ダイを使用することを許容する。しかしながら、本願に開示されたデバイスは、多くの技術分野における他の事項および不具合に対処してよいと考えられる。
【0030】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用するところでは、用語「アクチュエータ」はノズル、または別の非吐出型のアクチュエータを指している。例えば、ノズルはアクチュエータであり、流体吐出ダイから流体を吐出するように作動する。非吐出型のアクチュエータの例である再循環ポンプは、流体吐出ダイ内部の通路、流路、および経路を通して流体を移動させる。
【0031】
従って、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用するところでは、用語「ノズル」は、表面上へと流体を分配する、流体吐出ダイの個々の部品を指している。ノズルは少なくとも、吐出チャンバ、吐出器流体アクチュエータ、およびノズル開口を含んでいる。
【0032】
また、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用するところでは、用語「印刷流体カートリッジ」は、印刷媒体上へとインクその他の流体を吐出するのに使用されるデバイスを指してよい。一般に、印刷流体カートリッジは、インク、ワックス、ポリマーまたは他の流体といった、流体を分配する流体吐出デバイスであってよい。プリンターカートリッジは、流体吐出ダイを含んでいてよい。幾つかの例では、プリンターカートリッジは、プリンター、グラフィックプロッター、コピー機およびファクシミリ装置において使用されてよい。これらの例において、流体吐出ダイはインクまたは別の流体を、紙のような媒体上へと吐出して、所望のイメージを形成してよい。
【0033】
さらにまた、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用するところでは、用語「多数の」またはこれに類する言い回しは、1から無限までを含む任意の正の数として、広義に解されることを意図している。
【0034】
以下の記述においては、説明上の目的で、本システムおよび方法の完全な理解を提供するため、数多くの具体的な詳細事項が記載される。しかしながら、本装置、システム、および方法は、そうした具体的な詳細事項なしに実施されてよいことが、当業者には明らかであろう。明細書中における「例」または類似の用語に対する参照は、その例に関して記載された具体的な特徴、構成、または特性が記載通りに含まれていること、しかし他の例には含まれていてもよく、含まれていなくともよいことを意味している。
【0035】
さて添付図面について参照すると、図1Aおよび図1Bは、本願に記載された原理の例に従う、内蔵された横断流路を備えた流体吐出ダイを有する流体吐出デバイス(100)の等測図である。具体的には、図1Aはノズルプレート(104)によって規定された単一の流体吐出ダイを有する流体吐出デバイス(100)の図であり、図1Bはノズルプレート(104−1、104−2)によって規定された複数の流体吐出ダイを有する流体吐出デバイス(100)の図である。
【0036】
幾つかの例においては、流体吐出デバイス(100)は、成形可能な材料(102)に埋設された流体吐出ダイを含んでいる。上述したように、流体吐出ダイは流体吐出デバイス(100)の部品であり、リザーバに由来する流体を表面上へと吐出するように動作する。従って、流体吐出ダイは、この吐出を促進するための、多数の部品を含んでいる。具体的には、流体吐出ダイはノズルのアレイを含んでいる。各々のノズルは吐出チャンバおよび開口を含んでおり、これらはノズル基板(104)に画定されている。流体アクチュエータが吐出チャンバ内に配置されており、吐出チャンバからの流体を開口を介して吐出する。流体吐出ダイはまた、基板に形成された通路のアレイを含んでいる。通路のアレイは、流体を吐出チャンバへ、また吐出チャンバから配送する。内蔵された横断流路のアレイは基板の背面上に形成されており、そして流体を流体供給スロットから通路へと差し向ける。すなわち、内蔵された横断流路の各々は、通路のアレイをなす複数の通路のそれぞれと流体的に接続されている。上述したように、内蔵された横断流路は流体供給スロットからの流体を流体吐出ダイの近くへと引き込み、それがノズルを通って流れる流体と、より完全に混ざり合うようにする。この混合の増大は少なくとも、1)ノズルの寿命を延長させ、2)ダイの冷却を増大させ、そして3)印刷品質を向上させる。
【0037】
流体吐出ダイの全般に戻る。幾つかの例においては、流体吐出ダイは薄い、例えば220マイクロメートル未満の幅のスライバーダイである。流体吐出ダイの寸法は、アスペクト比を使用して相互に関連されていてよく、このアスペクト比とは、流体吐出ダイの長さに対する流体吐出ダイの幅の比である。本出願の流体吐出ダイは、1:3未満のアスペクト比を有していてよい。換言すれば、流体吐出ダイの長さは流体吐出ダイの幅よりも、少なくとも3倍大きくてよく、そして幾つかの場合には50倍よりも大きくてよい。別の例においては、流体吐出ダイの長さは流体吐出ダイの幅よりも、少なくとも100倍大きくてよい。具体的な数値例として、流体吐出ダイは幅が220マイクロメートル未満であり、そして20ミリメートルよりも長くてよい。
【0038】
1つの例においては、流体吐出ダイは圧縮成形されて、可塑性のエポキシ成形コンパウンド(EMC)、または他の成形可能な材料の一体成形体(102)とされてよい。例えば印刷システムは、図1Bに示されたように、細長い単一の成形体内に成形された複数の流体吐出ダイを有する、流体吐出デバイス(102)を含んでいてよい。成形可能な材料(102)内への流体吐出ダイの成形は、流体配送流路の役割を流体吐出ダイから材料成形体(102)へと移すことにより、より小さなダイを使用することが可能になる。このようにして、材料成形体(102)は各々の流体吐出ダイの大きさを有効に拡大し、このことは次いで、外部への流体接続を行うについて、そして流体吐出ダイを他の構造へと取り付けるについて、流体吐出ダイのファンアウトを改善させる。流体供給部から流体吐出ダイの通路への流体の配送を可能にするために、流体吐出ダイが配置されている成形可能な材料(102)は、供給スロットを含んでいる。流体吐出デバイス(100)のキャリア基板(106)は、流体吐出ダイおよび成形可能な材料(102)の両方を支持している。
【0039】
図2Aから図2Dは、本願に記載された原理の例に従う、内蔵された横断流路(212)を備えた流体吐出ダイ(208)の図である。具体的には、図2Aは流体吐出ダイ(208)の等測図である。上述したように、流体吐出ダイ(208)は流体吐出デバイス(図1、100)の部品を指しており、これはリザーバに由来する流体を基材または他の表面上へと吐出する部品を含んでいる。印刷流体を基材上へと吐出するために、流体吐出ダイ(208)はノズル(210)のアレイを含んでいる。簡単化のために図2Aにおいては、1つのノズル(210)が参照番号で示されている。さらにまた、ノズル(210)および流体吐出ダイ(208)の相対的な大きさは縮尺通りではないことに留意すべきであり、ノズルは図示の目的で拡大されている。
【0040】
流体吐出ダイ(208)のノズル(210)は列状またはアレイに配列されてよく、ノズル(210)からの適切に順序付けられた流体の吐出は、流体吐出ダイ(208)および印刷媒体が相互に相対的に移動されるにつれて、文字、符号、および/または他のグラフィックスまたはイメージが印刷媒体上に印刷されるようにする。
【0041】
1つの例では、アレイ内のノズル(210)はさらにグループ化されていてよい。例えば、アレイのノズル(210)第1の部分集合は、インクの1つの色、または1組の流体特性を備えた1つの種類の流体に関連付けられていてよく、これに対しアレイのノズル(210)の第2の部分集合は、インクの別の色、または別の異なる組の流体特性を備えた流体に関連付けられていてよい。
【0042】
流体吐出ダイ(208)は、ノズル(210)から流体を吐出するについて、流体吐出ダイ(208)を制御するコントローラに結合されていてよい。例えば、コントローラは、文字、符号、および/または他のグラフィックスまたはイメージを印刷媒体上に形成する、吐出される流体液滴のパターンを規定する。吐出される流体液滴のパターンは、コンピューティング装置から受け取られる、印刷ジョブコマンドおよび/またはコマンドパラメータによって決定される。
【0043】
図2Bおよび図2Cは、流体吐出ダイ(208)の断面図である。より特定的には、図2Bおよび図2Cは、図2AのA−Aつ断面図である。図2Bおよび図2Cは各々、特定の種類の内蔵された横断流路(212)を図解している。図2Bおよび図2Cにおいては、参照番号212は流体の流れではなく内蔵された横断流路を参照しており、その流体の流れは矢印によって示されていることに留意されたい。
【0044】
何よりも、図2Bおよび図2Cは、ノズル(210)のアレイを示している。簡単化のために、図2Bおよび図2Cにおいては、1つのノズル(210)が参照番号で示されている。流体を吐出するために、ノズル(210)は多数の部品を含んでいる。例えば、ノズル(210)は、吐出すべき量の流体を保持する吐出チャンバ(214)、その量の流体がそれを通って吐出される開口(216)、および吐出チャンバ(214)内部に配置され、その量の流体を開口(216)を通して吐出させるための吐出流体アクチュエータ(218)を含んでいる。吐出チャンバ(214)およびノズル開口(216)は、流路基板(220)の上部に配置されたノズル基板(104)に画定されていてよい。幾つかの例においては、ノズル基板(104)はSU−8または他の材料で形成される。
【0045】
吐出アクチュエータ(218)について見ると、吐出流体アクチュエータ(218)は、噴射抵抗器または他のサーマルデバイス、圧電素子、または吐出チャンバ(214)から流体を吐出するための他の機構を含んでいてよい。例えば、吐出器(218)は噴射抵抗器であってよい。噴射抵抗器は印加された電圧に応じて加熱される。噴射抵抗器が加熱されると、吐出チャンバ(214)内にある流体の一部が気化して気泡を形成する。この気泡は流体を開口(216)から、印刷媒体上へと押し出す。気化された流体の気泡が破裂すると、流体は通路(222)から吐出チャンバ(214)へと引き込まれ、この過程が繰り返される。この例においては、流体吐出ダイ(208)はサーマルインクジェット(TIJ)流体吐出ダイ(208)であってよい。
【0046】
別の例においては、吐出流体アクチュエータ(218)は圧電素子であってよい。電圧が印加されるにつれて、圧電素子は形状を変化させ、これが吐出チャンバ(214)内に圧力パルスを生成して、流体を開口(216)から、印刷媒体上へと押し出す。この例においては、流体吐出ダイ(208)はピエゾ電気型インクジェット(PIJ)流体吐出ダイ(208)であってよい。
【0047】
流体吐出ダイ(208)はまた、流路基板(220)に形成された通路(222)のアレイを含んでいる。流路(222)は流体を対応する吐出チャンバ(214)へ、また吐出チャンバ(214)から配送する。幾つかの例においては、通路(222)流路基板(220)の穿孔された膜に形成される。例えば、流路基板(220)はシリコンから形成されていてよく、そして通路(222)は、流路基板(220)の一部を形成する、穿孔されたシリコン膜に形成されていてよい。すなわち、この膜には孔が穿孔されていてよく、この孔はノズル基板(104)と接合された場合に吐出チャンバ(214)と整列して、吐出過程において流体が流入および流出する経路を形成する。図2Bおよび図2Cに示されているように、各々の吐出チャンバ(214)には2つの通路(222)が対応していてよく、この対のうち1つの通路(222)は吐出チャンバ(214)への入口となり、他方の通路(222)は吐出チャンバ(214)からの出口となる。幾つかの例においては、通路(222)は円形の孔、角が丸められた正方形の孔、または他の種類の通路であってよい。
【0048】
流体吐出ダイ(208)はまた、内蔵された横断流路(212)のアレイを含んでいる。
【0049】
内蔵された横断流路(212)は流路基板(220)の背面側に形成されており、流体を通路(222)へ、また通路(222)から配送する。1つの例では、内蔵された横断流路(212)の各々は、通路(222)のアレイの複数の通路(222)のそれぞれと流体的に接続されている。幾つかの例においては、内蔵された横断流路(212)を通る流体の経路は、矢印によって示されているように、通路(222)を通る流れに対して垂直である。すなわち、流体は流入口から入り、内蔵された横断流路(104)を通過し、それぞれの通路(222)へと通過し、そして流出口から出て、関連する流体配送システムにある他の流体と混合される。流入口、内蔵された横断流路(212)および流出口を通る流れは、図2Bおよび図2Cにおいて矢印によって示されている。
【0050】
内蔵された横断流路(212)は、任意の数の表面によって画定されていてよい。例えば、内蔵された横断流路(212)の1つの表面は、通路(222)が形成されている流路基板(220)の膜部分によって画定される。別の表面は蓋基板(224)によって画定され、そして他の表面は、図2Dに示されているようにリブによって画定されている。
【0051】
アレイの個々の横断流路(212)は、通路(222)および特定の行にある対応する吐出チャンバ(214)に対応していてよい。例えば、図2Aに示されているように、ノズル(210)のアレイは複数の行に配列されていてよく、そして各々の横断流路(212)は1つの行と整列していてよく、かくしてある行にあるノズル(210)は同じ横断流路(212)を共有するようになる。図2Aは複数行のノズル(210)を直線状に示しているが、複数行のノズル(210)は傾斜状、湾曲状、山形状、またはその他の配向であってよい。従って、これらの例においては、内蔵された横断流路(212)も同様に、傾斜状、湾曲状、山形状、またはその他の配向であってよく、ノズル(210)の配置に対して整列される。別の例においては、特定の行の通路(222)は複数の横断流路(212)に対応していてよい。すなわち複数の行は直線状であってよいが、しかし内蔵された横断流路(212)は傾斜されていてよい。ノズル(210)の行ごとについて、内蔵された横断流路(212)を特定的に参照したが、幾つかの例においては、複数行のノズル(210)が単一の内蔵された横断流路(212)に対応していてよい。
【0052】
幾つかの例においては、内蔵された横断流路(212)は流体を、通路(222)のアレイの別の異なる部分集合に属する行へと配送する。例えば、図2Cに示されているように、単一の内蔵された横断流路(212)が流体を、第1の部分集合(226−1)に属するノズル(210)の行および第2の部分集合(226−2)に属するノズル(210)の行に配送してよい。この例においては、1つの種類の流体、例えば1つのインク色を、異なる部分集合(226)へと供給することができる。具体的な例においては、モノクロ流体吐出ダイ(208)は、ノズル(210)の複数の部分集合(226)にわたる、1つの内蔵された横断流路(212)を実施してよい。
【0053】
幾つかの例においては、内蔵された横断流路(212)は流体を、通路(222)のアレイの単一の部分集合(226)に属する行へと配送する。例えば、図2Bに示されているように、第1の横断流路(212−1)は流体を第1の部分集合(226−1)に属するノズル(210)の行へと配送し、そして第2の横断流路(212−2)は流体を第2の部分集合(226−2)に属するノズル(210)の行へと配送する。この例においては、異なる種類の流体、例えば異なるインク色を、異なる部分集合(226)へと供給することができる。こうした流体吐出ダイ(208)は、多色印刷流体カートリッジにおいて使用してよい。
【0054】
これらの内蔵された横断流路(212)は、流体吐出ダイ(208)を通る改善された流体流れを促進する。例えば、内蔵された横断流路(212)がなければ、流体吐出ダイ(208)の背面側を通る流体は通路(222)に十分近接して通過せず、ノズル(210)を透過する流体と十分に混合しない場合がある。しかしながら、内蔵された横断流路(212)は流体をノズル(210)の近傍へと引き入れ、かくしてより向上された流体混合を促進する。この増大された流体流れはまた、使用済の流体がノズル(210)から取り出されることによってノズルの健全性を改善させるが、この使用済の流体は、ノズル(210)全体にわたって再使用された場合には、ノズル(210)に損傷を与える可能性がある。
【0055】
図2Dは、流体吐出ダイ(208)の断面図である。より特定的には、図2D図2AにおけるB−B線に沿って取った断面図である。図2Dは、流体吐出ダイ(208)の長さに沿った、多数の内蔵された横断流路(212)を示している。図2Dは特定の数の内蔵された横断流路(212)を示しているが、流体吐出ダイ(208)はこれらの内蔵された横断流路(212)を任意の数で含んでいてよい。
【0056】
図2Dはまた通路(222)を示しており、流体はこれを通って吐出チャンバ(214)へと渡される。簡単化のために、単一の通路(222)および内蔵された横断流路(212)が参照番号と共に示されている。図2Dは、流路基板(220)から形成されている内蔵された横断流路(212)を部分的に確定するリブを図解しているが、幾つかの例においては、内蔵された横断流路は蓋基板(224)から形成されていてよく、この蓋基板(224)はガラス、シリコン、または他の材料から形成されていてよい。
【0057】
図3は、本願に記載された原理の例に従う、内蔵された横断流路(212)を備えた流体吐出ダイ(図2A、208)の断面図である。具体的には図3は、単一の通路(222)の下側を通る、内蔵された横断流路(212)の一部分を示している。図3に示されている要素は縮尺通りではなく、図解の目的で拡大されていることに注意されたい。図3は、内蔵された横断流路(212)および通路(222)を通る流体の流れを明確に示している。示されているように、流体の流れは垂直になっている。すなわち、流体は内蔵された横断流路(212)を通って流れるにつれ、通路(222)を通過するに際して垂直に方向を変化させ、ノズル(図2A、210)へと差し向けられる。
【0058】
幾つかの例においては、吐出用の流体アクチュエータ(図2B、218)、吐出チャンバ(214−1、214−2)、および開口(216−1、216−2)に加えて、各々のノズル(図2A、210)は、流体を対応する吐出チャンバ(214)へ、また対応する吐出チャンバ(214)から配送するための流路(328−1、328−2)を含んでいてよい。こうした流路(328)は、小体積の流体(例えば、ピコリットル規模、ナノリットル規模、マイクロリットル規模、ミリリットル規模、等々)の搬送を促進するために、十分に小さな大きさ(例えば、ナノメートルサイズの規模、マイクロメートルサイズの規模、ミリメートルサイズの規模、等々)であってよい。この例においては、ノズル(図2A、210)に対応する流路(328−1、328−2)および通路(222)は、微小再循環ループを形成する。幾つかの例においては、ポンプ式流体アクチュエータが流路(328)内部に配置されて、流体を吐出チャンバ(214)へ、また吐出チャンバ(214)から移動させる。こうした微小流路(328−1、328−2)は、そこを通って流れる流体の沈積を防止し、開口(216)を通る吐出のために新鮮な流体が入手可能であることを保証する。流体アクチュエータは、吐出器(図2B、218)およびポンプアクチュエータの両者とも、静電膜アクチュエータ、機械的/インパクト駆動膜アクチュエータ、磁歪式駆動アクチュエータ、または電気的な付勢に応じて流体の移動を生じさせうる、他のこうした要素であってよい。
【0059】
上記したように、こうした微小再循環ループは新鮮な流体を吐出チャンバ(214)へと提供し、かくしてノズル(図2A、210)の有効寿命を増大させる。これは、ノズル(図2A、210)は新鮮な流体を供給された場合に最適に動作するためである。
【0060】
図4Aおよび図4Bは、本願に記載された原理の例に従う、内蔵された横断流路(図2B、212)を備えた流体吐出ダイ(図2A、208)を有する流体吐出デバイス(100)の断面図である。具体的には、図4Aは直線的な流体供給スロットを備えた流体吐出デバイス(100)を示しており、そして図4Bは先細りになっている流体供給スロットを備えた流体吐出デバイス(100)を示している。上記したように、成形可能な材料(102)は流体供給スロットが出口に向けて先細りになることを許容し、これはスライバーダイのような、幅のより狭い流体吐出ダイ(208)を対応する印刷デバイスにおいて実装することを可能にする。
【0061】
図4Aおよび図4Bは、異なる別々の内蔵された横断流路(212−1、212−2)が、相互に異なっていてよい流体を、ノズル(図2A、210)の異なる別々の部分集合(226−1、226−2)へと供給している場合について示している。図4Aおよび図4Bはまた、成形可能な材料(102)中への、流体吐出ダイ(図2A、208)の埋め込みについて示している。図4Aおよび図4Bはまた、成形可能な材料(102)中の供給スロットを示しており、流体はこれを通って通路(図2B、222)に流体的に接続された流入口および流出口へと流れ、図4Bにおいてこの供給スロットはファンアウトされている。幾つかの場合には、成形可能な材料(102)の供給スロットは、蓋基板(224)の下側に配置された、成形可能な材料(102)のインサートによって画定されていてよい。これらの供給スロットは、流体を複数の内蔵された横断流路(図2B、212)へと供給するように、長く延ばされていてよい。図4Aおよび図4Bはまた、成形可能な材料(102)、流体吐出ダイ(図2A、208)、および流体吐出デバイス(100)の全体を支持するキャリア基板(106)を示している。
【0062】
図4Aおよび図4Bはまた、キャリア基板(106)のファンアウトを示している。すなわち、キャリア基板(106)の外側リブは、ダイ(220)の幅を越えたところに位置している。すなわち、成形可能な材料(106)は、流体吐出ダイそれ自体を物理的に拡幅することなしに、流体吐出ダイに対する流体的インタフェースを事実上拡幅している。このことは、より小さな、そしてより費用対効果の良い流体吐出ダイを使用することを可能にする。
【0063】
図5は、本願に記載された原理の例に従う、内蔵された横断流路(212−1、212−2)を備えた流体吐出ダイ(208)の下側の等測図である。簡単化のために、内蔵された横断流路(212−1、212−2)および関連するリブ(530−1、530−2)の僅かなものだけが参照番号で指示されている。
【0064】
図5は、流体吐出ダイ(208)を通る、特に内蔵された横断流路(212)を通る流体の流れ経路を明示している。図5に示された例においては、ノズル(図2A、210)のアレイは2つの部分集合(図2B、226−1、226−2)に分割されていてよいが、しかしノズル(図2A、210)のアレイは任意の数の部分集合(図2B、226)へと分割されることができる。
【0065】
この例においては、流体は流入口へと通過され、この流入口は多数の内蔵された横断流路(212)によって共有されていてよい。流体は次いで内蔵された横断流路(212)へと通され、この内蔵された横断流路(212)は部分的にはリブ(530−1、530−1)および蓋基板(224)によって画定されている。流体が内蔵された横断流路(212)を通って流れると、それは通路(図2B、222)およびノズル(図2A、210)を通って差し向けられ、このノズル(図2A、210)は微小再循環ループを含んでいてよい。過剰の流体は次いで、内蔵された横断流路(212)へと搬送し戻され、そこで内蔵された横断流路(212)の流出口から放出される。
【0066】
図6は、本願に記載された原理の例に従う、内蔵された横断流路(図2B、212)を有する流体吐出デバイス(100)を含んでいる印刷流体カートリッジ(632)のブロック図である。印刷流体カートリッジ(632)は、流体を吐出するために印刷システム内部において使用される。幾つかの例においては、印刷流体カートリッジ(632)は、例えば交換式カートリッジ(632)として、システムから取り外されてよい。幾つかの例においては、印刷流体カートリッジ(632)は基材幅の印刷バーであり、そして流体吐出デバイス(100)のアレイは複数のプリントヘッドへとグループ化されて、それらは流体が付着される基材の幅にわたって互い違いに配置されている。こうしたプリントヘッドの例が図8に示されている。
【0067】
印刷流体カートリッジ(632)は、印刷流体カートリッジ(632)の部品を収容するハウジング(634)を含んでいる。このハウジング(634)は、所定量の流体を流体吐出デバイス(100)に供給するための、流体リザーバ(636)を収容している。一般に、流体はリザーバ(636)および流体吐出デバイス(100)の間を流れる。幾つかの例においては、流体吐出デバイス(100)に供給される流体の一部は動作中に消費され、そして印刷中に消費されなかった流体は、流体リザーバ(636)に戻される。幾つかの例においては、流体はインクであってよい。1つの具体的な例においては、インクは種々の流体の中でも、水系の紫外線(UV)インク、薬液、または3D印刷材料であってよい。
【0068】
図7は、本願に記載された原理の例に従う、基材幅の印刷バー(740)内に内蔵された横断流路(図2B、212)を備えた多数の流体吐出デバイス(100−1、100−2、100−3、100−4)を含んでいる印刷デバイス(738)のブロック図である。印刷デバイス(738)は、印刷基材(742)の幅にわたる印刷バー(740)、印刷バー(740)に関連する多数の流れレギュレータ(744)、基材搬送機構(746)、流体リザーバ(図6、636)のような印刷流体供給部(748)、およびコントローラ(750)を含んでいてよい。コントローラ(750)は、プログラミング、プロセッサ(単数または複数)、および関連するメモリ、並びに印刷デバイス(738)の作動要素を制御する他の電子回路および部品を表している。印刷バー(740)は、カットシートまたは連続紙、或いは他の印刷基材(742)の上に流体を分配するための、流体吐出デバイス(100)の配列を含んでいてよい。各々の流体吐出デバイス(100)は、流体供給部(748)から流れレギュレータ(744)内を通って延びる流体経路を通り、そして印刷バー(740)に規定された多数のトランスファー成形された流体流路(752)を通して、流体を受け取る。
【0069】
図8は、本願に記載された原理の例に従う、内蔵された横断流路(図2A、212)を備えた多数の流体吐出ダイ(208)を含んでいる流体吐出デバイス(841)のブロック図である。幾つかの例においては、流体吐出ダイ(208)は、成形可能な材料(102)で形成された細長い、一体型の成形パネル(843)に埋設され、多数の行(854)でもって端から端まで配置されている。流体吐出ダイ(208)は互い違い構成で配置されており、そこでは各々の行(854)にある流体吐出ダイ(208)は、その同じ行(854)にある別の流体吐出ダイ(208)と重なり合う。この配置において、流体吐出ダイ(208)の各々の行(854)は、図8において点線で図示されているように、トランスファー成形された別の流体流路(856)から流体を受け取る。成形パネル(843)の内部には、流体を流体吐出ダイ(208)へ、また流体吐出ダイ(208)から配送する、流体供給スロットがある。図8は、例えばシアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックといった4つの異なる色で印刷する場合に、互い違いの流体吐出ダイ(208)の4つの行(854)に供給を行う4つの流体流路(856)を示しているが、他の適切な構成もまた可能である。
【0070】
図9は、本願に記載された原理の例に従う、内蔵された横断流路(図2A、212)を備えた流体吐出デバイス(図1、100)を形成するための方法(900)の流れ図である。この方法(900)によれば、ノズル(図2A、210)のアレイおよび通路(図2B、222)が形成される(ブロック901)。幾つかの例においては、通路(図2B、222)は穿孔されたシリコン膜の一部であってよい。このノズル(図2A、210)、または正確にはノズル(図2A、210)の開口(図2B、216)および吐出チャンバ(図2B、214)は、SU−8のようなノズル基板(図1、104)から形成されていてよい。従って、ノズル(図2A、210)のアレイおよび通路(図2B、222)を形成すること(ブロック901)は、穿孔されたシリコン膜をSU−8ノズル基板(図1、104)と接合することを含んでいてよい。
【0071】
次いで、内蔵された横断流路(図2B、212)が形成される(ブロック902)。内蔵された横断流路(図2B、212)を形成すること(ブロック902)は、通路(図2B、222)が形成されている膜の背面側にリブ(図5、530)を接着し、そして蓋基板(図2B、224)を取り付けることを含んでいてよい。別の例においては、形成すること(ブロック902)は、流路基板(図2B、220)をエッチングして、内蔵された横断流路(図2B、212)を部分的に確定するリブ(図5、530)を形成することを含んでいてよい。
【0072】
内蔵された横断流路(図2B、212)が形成され、そしてノズル(図2A、210)および通路(図2B、222)が形成されたなら、2つの部品は接合され(ブロック903)、内蔵された横断流路(図2B、212)を備えた流体吐出ダイ(図2A、208)が形成される。流体吐出ダイ(図2A、208)が形成されたなら、流体吐出ダイ(図2A、208)は成形可能な材料(図1、102)へと埋設(ブロック904)されるが、この成形可能な材料(図1、102)は、通路(図2B、222)および対応する内蔵された横断流路(図2A、212)と整列され、流体を供給するための供給スロットを含んでいる。図10Aから図10Dは、本願に記載された原理の例に従う、内蔵された横断流路(図2B、212)を備えた流体吐出デバイス(図1、100)を製造するための方法である。
【0073】
流体吐出ダイ(208)が、図10Aに示されたようにして形成される。この流体吐出ダイ(208)は、あるゆる任意の方法で形成されてよい。一般には、ノズル開口(216)および吐出チャンバ(214)が、SU−8のような材料から形成されていてよいノズル基板(104)に形成される。ノズル基板(104)への開口(216)および吐出チャンバ(214)の形成は、エッチングまたはフォトリソグラフィを用いて行ってよい。形成された開口(216)および吐出チャンバ(214)を備えたこのノズル基板(104)は、次いで、形成された通路(222)を有すると共に、流体吐出ダイ(208)の流入口、流出口、およびリブ(530)を画定している層(1058)と接合される。
【0074】
図10Bに示されているように、流体吐出ダイ(208)は反転され、銅のような任意の材料から形成されていてよい担持ボード(1060)上に配置される。すなわち、ノズル基板(104)を表面を下向きにして担持ボード(1060)上にある。流体吐出ダイ(208)は、テープまたは他の接着性表面を介して、一時的に担持ボード(1060)に接着されてよい。
【0075】
次に、図10Cに示されているように、溶融状態の成形可能な材料(102)が流体吐出ダイ(208)の周囲に配置される。インサート(1062)が通路(222)のあたりに配置されてよく、かくして成形可能な材料(102)が内蔵された横断流路(図2B、212)、通路(図2B、222)、またはノズル(図2A、210)の部品の中へと流入して閉塞することがないようにされる。これらのインサート(1062)はまた、図10Dに示されているように、成形可能な材料(102)に供給スロットを画定する。
【0076】
図10Dにおいては、構造体は正しい側が上を向くように反転され、担持ボード(1060)およびインサート(1062)は取り除かれ、そして構造体はキャリア基板(図1、106)に接着されて、内蔵された横断流路(212)を備えた流体吐出デバイス(100)が残されるようになる。
【0077】
概略すると、こうした流体吐出ダイの使用は、1)流体中の水分濃度を維持することによってデキャップの蓋然性を低減し、2)ノズル内部でのより効率的な微小再循環を促進し、3)ノズルの健全性を改善し、4)ダイ近傍での流体の混合をもたらして印刷品質を向上させ、5)流体吐出ダイを対流によって冷却し、6)流体吐出ダイから気泡を除去し、そして7)ノズルの再プライミングを許容する。しかしながら、本願に開示されたデバイスは、多くの技術分野における他の事項および不具合に対処してよいと考えられる。
【0078】
以上の説明は、記載された原理の例を図解および記述するために提示されたものである。この説明は完全であることを意図したものではなく、またこれらの原理を開示された任意の形態だけに限定することを意図したものでもない。上記の教示に照らして、多くの修正および変形が可能である。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D