(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回動機構(50)は、前記車体前部構造体(3)および車体後部構造体(5)の前記軸線(C1)回りの相対揺動を、メインスイッチの操作に基づき規制する揺動規制部(93)を備えている請求項1に記載の電動車両。
前記車体後部構造体(5)は、後輪(4a,4b)の上方に少なくとも一部が設けられる荷台(75)と、前記荷台(75)の下方に設けられる前記バッテリ収納部(76)と、前記バッテリ収納部(76)における前記バッテリ(100)を挿脱可能とする開口(77)を開閉する開閉部(78)と、を備えている請求項1から3の何れか一項に記載の電動車両。
前記バッテリ収納部(76)は、前記バッテリ(100)を垂直方向に対して傾斜した傾斜方向(C41,C42)で挿脱させるように支持するバッテリケース(100A)を備えている請求項4又は5に記載の電動車両。
前記車体後部構造体(5)は、後車体フレーム(21)と、後輪(4a,4b)を上下揺動可能に支持するスイングアーム(40)と、前記後車体フレーム(21)と前記スイングアーム(40)とを連結するリアクッション(28)と、を備え、
前記リアクッション(28)は、前記バッテリ(100)の後方において前後方向視で前記バッテリ(100)と少なくとも一部が重なるように、あるいは前記バッテリ(100)の側方において側面視で前記バッテリ(100)と少なくとも一部が重なるように配置されている請求項4から6の何れか一項に記載の電動車両。
前記電気モータ(30)は、前記スイングアーム(40)の長さ方向(C2)の中央部(40a)よりもスイング軸(41)側に配置されている請求項8に記載の電動車両。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UPが示されている。
【0010】
(車両全体)
図1〜
図3に示すように、本実施形態の電動車両1は、操向輪である一輪の前輪2を前車体(車体前部構造体)3に支持している。電動車両1は、駆動輪である左右一対の後輪4a,4bを後車体(車体後部構造体)5に支持している。電動車両1は、左右後輪4a,4bを接地させた後車体(非揺動側車体)5に対して、乗員が乗車した前車体(揺動側車体)3を左右揺動(ローリング動)可能とする。電動車両1は、揺動式の電動三輪車として構成されている。
【0011】
前車体3は、前輪転舵用のバーハンドル6と、乗員着座用のシート7と、を備えている。前車体3は、バーハンドル6とシート7との間を跨ぎ空間8とする。前車体3は、跨ぎ空間8の下方に低床フロア9を備えている。
前車体3および後車体5は、回動機構(ローリングジョイント)50を介して互いに連結されている。図中符号C1は回動機構50における車両前後方向に延びる回動軸線、線CL1は前車体3の左右中心線、線CL2は後車体5の左右中心線をそれぞれ示している。
【0012】
(前車体)
図1を参照し、前車体3は、前車体フレーム11を備えている。前車体フレーム11は、ヘッドパイプ12の後側から下方へ延びた後に後方へ湾曲する単一の前部フレーム14と、前部フレーム14の湾曲部両側から左右に分岐して後方へ延びる左右一対の下部フレーム15と、左右下部フレーム15の後端部から斜め後上方へ湾曲して延びる左右一対の後部フレーム16と、を備えている。前部フレーム14の後端部は、左右下部フレーム15の後部間に渡るロアクロスフレーム17の中間部に結合されている。ヘッドパイプ12には、例えばボトムリンク式の前輪懸架装置13が操向可能に支持されている。前輪懸架装置13の下端部には、前輪2が支持されている。
【0013】
ロアクロスフレーム17の後方には、左右後部フレーム16の下部間に渡るリアロアクロスフレーム18が配置されている。ロアクロスフレーム17およびリアロアクロスフレーム18には、回動機構50の前構造体51が固定的に支持されている。
電動車両1の旋回走行時において、前車体3は、左右後輪4a,4bを路面Gに接地させた後車体5に対して、回動機構50を介して旋回方向に揺動(バンク)する。これにより、前車体3は、操向輪である前輪2に舵角を生じさせる。
【0014】
前車体フレーム11を含む前車体3の全体は、前車体カバー60に覆われている。前車体カバー60は、ヘッドパイプ12及び前部フレーム14の周辺を前方から覆うフロントカバー61と、ヘッドパイプ12及び前部フレーム14の周辺を後方から覆うインナカバー62と、インナカバー62の下端部の後方に連なるフロアボード63と、フロアボード63の後方で斜め上後方に傾斜して連なる後部傾斜ボード64と、後部傾斜ボード64の左右内側の部位で立ち上がりシート7の下方に至るシート下カバー65と、を備えている。図中符号61aはフロントカバー61の上端部両側に支持された左右一対のバックミラーを示している。
【0015】
フロアボード63は、左右下部フレーム15等とともに、低床フロア9を構成している。後部傾斜ボード64は、左右後部フレーム16等とともに、低床フロア9の後方に連なる後部傾斜部9aを構成している。シート7の後方には、略垂直な前面を形成するバックレスト66が立ち上がる。バックレスト66は、左右後部フレーム16の上端部に支持されている。バックレスト66の後面側は、後車体5における荷台75の前端部上方に起立する荷台前壁部66bを構成している。バックレスト66の上方には、左右一対の支柱66aが延びている。フロントカバー61の上方には、ウインドスクリーン67が延びている。ウインドスクリーン67の上端部には、後方に湾曲して延びるルーフ68が連なっている。ルーフ68の後端部は、左右支柱66aの上端部に支持されている。
【0016】
(後車体)
図1〜
図3に示すように、後車体5は、前車体フレーム11から独立した後車体フレーム21を備えている。後車体フレーム21は、回動機構50の上部から斜め後上方へ延びる第二後部フレーム22と、第二後部フレーム22の上端部から後方へ湾曲して延びる後上部フレーム23と、後上部フレーム23の後部に結合されて左右方向に延びる後上部クロスフレーム24と、後上部フレーム23の前部に結合されて左右方向に延びる中間上部クロスフレーム24aと、第二後部フレーム22の下端部に結合されて左右方向に延びる第二リアロアクロスフレーム25と、第二リアロアクロスフレーム25の左右両側から後方へ延びる左右一対のリアロアサイドフレーム26と、左右リアロアサイドフレーム26の後端部から斜め後ろ上方へ湾曲して延びる左右一対のリアサイドフレーム27と、を備えている。左右リアサイドフレーム27は、後上部クロスフレーム24の左右両側に結合されている。第二後部フレーム22は、側面視で後部フレーム16と略平行をなしている。
【0017】
第二後部フレーム22の下部には、回動機構50の後構造体52が固定的に支持されている。後構造体52の後端部には、スイングユニット40の前端部が、左右方向に沿う(延びる)スイング軸(ピボット軸)41を介して上下揺動可能に支持されている。例えば、スイングユニット40の後部に設けられた後輪車軸42の外筒42aには、左右一対のリアクッション28の下端部が連結されている(
図3参照)。左右リアクッション28の上端部は、後上部クロスフレーム24の左右両側にそれぞれ連結されている。スイングユニット40の後端部は、左右リアクッション28を介して後車体フレーム21の上後部に連結、支持されている。後車体5には、スイングユニット40、左右リアクッション28および後車体フレーム21を含む後輪懸架装置(リアサスペンション)29が構成されている。
【0018】
図4を併せて参照し、後車体フレーム21を含む後車体5の全体は、後車体カバー70に覆われている。後車体カバー70は、第二後部フレーム22と略平行な傾斜前面を形成する前壁部71と、前壁部71の上端部から後方へ略水平に延びる上壁部72と、上壁部72の後端部から下方へ延びる後壁部73と、前壁部71および後壁部73の間に渡る左右一対の側壁部74と、を備えている。左右側壁部74には、左右後輪4a,4bの上方を覆うリアフェンダ74aが形成されている。上壁部72は、後上部フレーム23、後上部クロスフレーム24および中間上部クロスフレーム24a等とともに、後車体5の上面(収納部76の上面でもある)に荷台75を構成している。前壁部71は、前車体3の後部傾斜部9aと略平行をなしている。前壁部71は、後部傾斜部9aとの間に、前後車体3,5の相対揺動時に後部傾斜部9aと干渉しない程度の隙間S1(
図2参照)を空けて配置されている。なお、図示都合上、
図1〜
図3には後車体カバー70の一部のみ示している。
【0019】
(スイングユニット)
図1〜
図3を参照し、スイングユニット40は、左右後輪4a,4bの間に配置されている。スイングユニット40は、側面視でスイング軸41から後輪車軸42まで延びるように配置されている。スイングユニット40は、長さ方向を前後方向に向けて配置されている。スイングユニット40は、側面視でスイング軸41と後輪車軸42とを結ぶ軸線C2に沿って延びている。以下、軸線C2に沿う方向をスイングユニット40の長さ方向(アーム長さ方向)C2という。
【0020】
スイングユニット40は、電動車両1の駆動源である電気モータ30を含んだパワーユニットとして構成されている。スイングユニット40は、左右後輪4a,4bを上下揺動可能に支持する構造体(スイングアーム)としてのユニットケース43と、ユニットケース43の前部内に収容される電気モータ30と、ユニットケース43の後部内に収容される差動機構44と、電気モータ30の駆動軸から差動機構44の入力部に延びるドライブシャフト45と、を備えている。ユニットケース43は、側面視でスイング軸41と後輪車軸42との間を軸線C2に沿って延びる単一のアーム部43aを備えている。アーム部43aは、電気モータ30を収容する部位に、他部位に対して上下に膨出させたモータケース43bを備えている。
【0021】
スイングユニット40の後部内の左右両側には、左右後輪4a,4bをそれぞれ支持する左右一対の後輪車軸(出力軸)42がそれぞれ延出している。単一の電気モータ30の駆動力は、ドライブシャフト45を介して差動機構44に伝達される。差動機構44に伝達された駆動力は、左右後輪車軸42に適宜分配されて、左右後輪4a,4bを駆動する。差動機構44の左右両側には、左右後輪車軸42をそれぞれ収容する外筒42aが延出している。
【0022】
(回動機構)
図2、
図9、
図10を参照し、回動機構50は、互いに相対回動可能な前構造体51および後構造体52を備えている。前構造体51および後構造体52の間には、いわゆるナイトハルト機構55が構成されている。前構造体51は、前車体フレーム11に固定的に支持される前ケーシング51aを備えている。後構造体52は、後車体フレーム21に固定的に支持される後支軸52aを備えている。後支軸52aの前部は、前ケーシング51aに軸線C1に沿って挿入され、軸線C1回りに回動可能に支持されている。
【0023】
後支軸52aにおける前ケーシング51aの後方に突出する後部には、ピボットブラケット52bが一体に結合されている。ピボットブラケット52bは、スイングユニット40の前端部を上下揺動可能に支持する。ピボットブラケット52bには、スイングユニット40のユニットケース43の前端部が、左右方向に沿うスイング軸41を介して上下揺動可能に連結されている。後支軸52aには、後車体フレーム21の前下端部が一体に結合されている。後車体フレーム21ひいては後車体5と前車体フレーム11ひいては前車体3とは、軸線C1中心で相対揺動可能に連結される。
【0024】
図9、
図10を参照し、後支軸52aにおける前ケーシング51a内に挿入される前部には、ナイトハルトカム56が一体回動可能に設けられている。ナイトハルトカム56は、軸方向視で凹状の四辺を有する略ひし形をなしている。前ケーシング51aにおけるナイトハルトカム56を挿入する部位には、軸方向視で略矩形のケース部57が設けられている。ケース部57内の空間の軸方向視の四隅には、例えば円筒状のナイトハルトラバー58が配置されている。各ナイトハルトラバー58は、ケース部57と軸方向を略平行にして配置されている。各ナイトハルトラバー58には、前車体3の直立状態A(前後方向視で前後車体3,5の左右中心線CL1,CL2が一致した状態、
図7参照)において、ナイトハルトカム56の軸方向視の四辺が当接している。
【0025】
回動機構50には、前ケーシング51aおよび後支軸52aの相対回動に非線形の復元力(減衰力)を与えるナイトハルト機構(ダンパー機構)55が構成されている。各ナイトハルトラバー58は、前車体3が直立状態Aから揺動し、前ケーシング51aおよび後支軸52aが相対回動することで、以下の作用を奏する。各ナイトハルトラバー58は、ケース部57の四隅でナイトハルトカム56に圧縮されて、前車体3の揺動に対する非線形の復元力を発生させる。
【0026】
(パーキングロック装置)
図1、
図2、
図9を参照し、電動車両1は、パーキングロック装置90を備えている。パーキングロック装置90は、揺動ロック機構93を作動させるとともにパーキングブレーキ(パーキングロック機構99)を作動させて、前車体3の揺動および後輪4a,4bの回転を規制する。
パーキングロック装置90は、例えばバーハンドル6の左右中央近傍に配置されたパーキングレバー91(
図1参照)と、パーキングレバー91から延びるパーキングケーブル92(
図9参照)と、回動機構50に設けられた揺動ロック機構93(
図9参照)と、スイングユニット40に設けられたパーキングロック機構99(
図2参照)と、を備えている。パーキングケーブル92は、揺動ロック機構93およびパーキングロック機構99の各々に係合している。パーキングロック装置90は、パーキングレバー91が操作されると、パーキングケーブル92を介して揺動ロック機構93およびパーキングロック機構99が作動し、車体の揺動および前後移動がロックされる。
【0027】
パーキングレバー91は、ロック位置とアンロック位置との何れかに向けて操作可能である。ロック位置では、前車体3の揺動および後輪4a,4bの回転が規制される。アンロック位置では、前車体3の揺動および後輪4a,4bの回転の規制が解除される。パーキングレバー91は、電動車両1の不図示のメインスイッチがオンのときに操作可能である。パーキングレバー91は、ロック位置に操作した状態でメインスイッチがオフになると、例えば機械的にロックされてアンロック位置への操作が不能となる。パーキングレバー91は、ロック位置において施錠可能である。パーキングロック装置90は、前車体3の揺動および後輪4a,4bの回転を規制したロック状態において施錠可能である。
【0028】
パーキングレバー91の作用端には、パーキングケーブル92におけるインナケーブル92aの基端が係合されている。パーキングケーブル92は、パーキングレバー91の作用端から車体下部を通じて後方に延出し、先端側を回動機構50の側方に至らしめる。回動機構50の側方において、インナケーブル92aは、揺動ロック機構93の入力端に係合される。
【0029】
パーキングケーブル92は、回動機構50の側方からさらに後方に延出し、先端側をスイングユニット40の側方に至らしめる。スイングユニット40の側方において、インナケーブル92aは、パーキングロック機構99の入力端に係合される。パーキングレバー91がロック位置に操作されると、パーキングケーブル92のインナケーブル92aが引かれ、揺動ロック機構93をロック作動させるとともにパーキングロック機構99をロック作動させる。
【0030】
図9を参照し、回動機構50において、前ケーシング51aと後支軸52aとの間には、平面視L字状の空間が形成されている。この空間は、後支軸52aの前部の側方から前端部の前方に渡るように形成されている。この空間内に、揺動ロック機構93が配置されている。後支軸52aの側方において、前ケーシング51aの前壁には、前アウタ保持部51bが設けられている。前アウタ保持部51bは、パーキングケーブル92のパーキングレバー91側の前アウタケーブル92bの後端を保持する。後支軸52aの側方において、前ケーシング51aの後壁には、後アウタ保持部51cが設けられている。後アウタ保持部51cは、パーキングケーブル92のパーキングロック機構99側の後アウタケーブル92cの前端を保持する。前後アウタ保持部51b,51cの間において、前ケーシング51a内には、インナケーブル92aの中間部が挿通されている。
【0031】
前ケーシング51a内において、インナケーブル92aには、揺動アーム94の一端が係合されている。揺動アーム94の長さ方向中間部は、前ケーシング51aに支持された揺動軸94aに揺動可能に支持されている。揺動アーム94の他端には、チェンリンク95を介してストッパポール96の先端部が連結されている。ストッパポール96の基端部は、前ケーシング51aに支持された揺動軸96aに揺動可能に支持されている。ストッパポール96は、先端側を後支軸52aの前端部の前方に延ばしている。ストッパポール96の先端部には、後支軸52aの前端部を向く爪部96bが突設されている。後支軸52aの前端部には、ストッパプレート97が一体回動可能に設けられている。ストッパプレート97は、軸方向視で軸線C1を中心とした扇状に設けられている。ストッパプレート97の外周部には、ストッパポール96の爪部96bを係合可能な複数の溝部97bが、軸線C1を中心に周方向に並んで形成されている。
【0032】
係る構成において、パーキングレバー91の操作によりインナケーブル92aが引かれると、揺動ロック機構93の揺動アーム94が作動し、ストッパポール96の爪部96bをストッパプレート97の複数の溝部97bの何れかに係合させる。これにより、爪部96bが係合した溝部97bの軸線C1回りの角度において、揺動ロック機構93がロック状態となり、前ケーシング51aに対する後支軸52aの回動を規制する。すなわち、前ケーシング51aに対する後支軸52aの回動は、ストッパプレート97の複数の溝部97bを形成した角度範囲において、任意の角度において規制される。このため、後車体5に対する前車体3の揺動は、前記角度範囲において任意の揺動角度でロック可能である。
【0033】
インナケーブル92aは、後アウタケーブル92cとともに前ケーシング51aの後方に延出し、スイングユニット40の後部の側方に至る。スイングユニット40の後部を構成するギアケース内には、揺動ロック機構93と同様、ストッパポールおよびストッパプレートを用いたパーキングロック機構99が構成されている。このパーキングロック機構99の入力端に、インナケーブル92aが係合されている。
係る構成において、インナケーブル92aが引かれると、パーキングロック機構99がロック状態となり、後輪車軸42の回転を規制する。これにより、後輪4a,4bの回転が規制されたパーキングブレーキ作動状態となり、電動車両1の前後移動が規制される。
【0034】
(電気モータ)
図6を参照し、電気モータ30は、バッテリ100の電力により駆動する。電気モータ30は、例えばVVVF(variable voltage variable frequency)制御による可変速駆動がなされる。電気モータ30は、無段変速機を有する如く変速制御されるが、これに限らない。例えば、電気モータ30は、有段変速機を有する如く変速制御されてもよい。
【0035】
図2を併せて参照し、電気モータ30は、駆動軸を車両前後方向に向けたいわゆる縦置きに配置されている。図中線C3は電気モータ30の駆動軸線を示している。電気モータ30(およびモータケース43b)は、側面視で後輪4a,4bを避けた位置に配置されている。モータケース43bは、車両側方に露出している。電気モータ30(およびモータケース43b)は、後輪4a,4bに対して車両前方へオフセットして配置されている。
電気モータ30(およびモータケース43b)は、側面視で全体が後輪4a,4bの外周よりも前方に配置されている。電気モータ30(およびモータケース43b)は、スイングユニット40の長さ方向C2の中央部40aよりも前方(スイング軸41側)に配置されている。電気モータ30は、スイング軸(ピボット軸)41に隣接する位置に配置されている。スイング軸41は、モータケース43bの前方に隣接して設けられている。これにより、スイング軸41から重量物である電気モータ30までの揺動半径が短縮し、スイングユニット40の作動性(リアサスペンション29の路面追従性や悪路走破性)を向上させている。
【0036】
電気モータ30は、側面視で駆動軸線C3を前記軸線C2と一致させている。電気モータ30は、スイングユニット40のアーム部43aと同じ高さに配置されている。これにより、スイングユニット40の上下に電気モータ30(およびモータケース43b)が張り出すことを抑え、スイングユニット40の揺動スペースの縮小に寄与している。また、電気モータ30(およびモータケース43b)がスイングユニット40の下方に張り出す場合に比べて、電気モータ30(およびモータケース43b)の地上高を確保し、車両下方(路面側)からの外乱の影響を抑え、かつ路面側からの被水を抑えている。
【0037】
なお、
図11に示すように、電気モータ30(およびモータケース43b)は、スイングユニット40の上方に変位して(側面視で駆動軸線C3を前記軸線C2よりも上方にオフセットして)配置されてもよい。電気モータ30(およびモータケース43b)は、スイングユニット40のアーム部43aに対して上方に配置されてもよい。この場合、電気モータ30(およびモータケース43b)の地上高をより確保し、路面側からの外乱および被水をより抑えている。
【0038】
電気モータ30は、側面視で後輪4a,4bを避けて配置されているので、以下の作用を奏する。電気モータ30は、インホイールモータのように側面視で後輪4a,4bと重なる配置と比べて、車両側方から電気モータ30へのアクセスが容易になり、組み付け性やメンテナンス性を向上させる。
電動車両1が左右後輪4a,4bを備える場合、インホイールモータでは左右後輪4a,4bにそれぞれ電気モータ30を要する。本実施形態では、側面視で後輪4a,4bを避けた位置に単一の電気モータ30を設け、この電気モータ30で左右後輪4a,4bを駆動することで、後輪駆動システムの簡略化に寄与している。なお、電気モータ30は、側面視で後輪4a,4bを避けた配置であれば、後輪4a,4bの後方に配置してもよい。また、本実施形態は、電気モータ30の少なくとも一部が側面視で後輪4a,4bと重なる配置(電気モータ30の少なくとも一部が左右後輪4a,4b間にある配置)としたり、左右後輪4a,4bにインホイールモータを採用したりすることを除外するものではない。
【0039】
(電装部品)
図2、
図5を参照し、荷台75の下方には、電気モータ30の電源であるバッテリ100が配置されている。荷台75の下方には、電気モータ30およびバッテリ100に係る電装部品130として、ジャンクションボックス123、PCU(Power Control Unit)120、DC−DCコンバータ126およびチャージャー(充電器)125が配置されている。後車体5は、バッテリ100、ジャンクションボックス123、PCU120、DC−DCコンバータ126およびチャージャー125といった電装部品130を、リアサスペンション29のバネ上である後車体フレーム21に支持している。後車体5は、電装部品130を収納する収納部76の上面を大型の荷台75として活用している。以下、収納部76をバッテリ収納部76または電装部品収納部76ということがある。
電装部品130の配置は種々考えられるが、本実施形態では
図1〜
図5に示す配置について説明する。
【0040】
(バッテリ)
図2、
図3を参照し、バッテリ100は、荷台75の下方に搭載されている。バッテリ100は、複数(例えば左右二つ)の単位バッテリ101,102で構成されている。複数の単位バッテリ101,102(以下、単にバッテリまたは左右バッテリということがある)は、互いに同一構成とされている。左右バッテリ101,102は、車体左右中心線CL2を挟んで左右対称に設けられている。
本実施形態では、後車体5の荷台75よりも低い位置に左右バッテリ101,102を搭載することで、重量物である左右バッテリ101,102を持ち上げる高さが低くて済み、左右バッテリ101,102の着脱が容易になる。また、バッテリ収容スペースの上面は大型の荷台75となるので、電動車両1の利便性が向上する。
【0041】
図5を併せて参照し、左右バッテリ101,102は、それぞれ断面矩形状(例えば略正方形状)をなして長手方向に延びる角柱状(直方体状)をなしている。左右バッテリ101,102は、それぞれ矩形状の上面101c,102cを斜め上前方に向けるように、側面視で傾斜して配置されている。左右バッテリ101,102は、斜め上後方を向く背面の法線方向から見て、V字状をなすように配置されている。左右バッテリ101,102は、左右方向と直交する車体側面に対しても傾斜している。上面101c,102cには、使用者が把持するための取っ手が設けられている。
【0042】
左右バッテリ101,102は、斜め上前方を向いた上面101c,102cを、さらに左右外側に向けている。左右バッテリ101,102は、それぞれ上側ほど前側かつ左右外側に位置するように傾斜した起立姿勢で配置されている。左右バッテリ101,102の間には、前記法線方向から見てV字状の空間が形成されている。左右バッテリ101,102の長手方向に沿う軸線を
図2、
図3中線C41,C42で示している。以下、軸線C41,C42に沿う方向をそれぞれ傾斜方向C41,C42という。
【0043】
バッテリ100は、左右バッテリ101,102を適宜結線することで、所定の高電圧(48〜72V)を発生させる。左右バッテリ101,102は、それぞれ充放電可能なエネルギーストレージとして、例えばリチウムイオンバッテリで構成されている。左右バッテリ101,102は、充放電状況や温度等を監視する不図示のBMU(Battery Managing Unit)を備えている。
【0044】
(制御システム)
図6を参照し、左右バッテリ101,102は、コンタクタ(電磁開閉器)を含むジャンクションボックス(分配器)123を介して、不図示のPDU(Power Driver Unit)に接続されている。PDUは、不図示のECU(Electric Control Unit)とともに、一体のPCU(Power Control Unit)120を構成している。バッテリ100からの電力は、メインスイッチと連動するコンタクタを介して、モータドライバたるPDUに供給される。バッテリ100からの電力は、PDUにて直流から三相交流に変換された後、三相交流モータであるモータ30に供給される。電気モータ30は、PDUによる制御に応じて力行運転を行い、電動車両1を走行させる。
【0045】
バッテリ100からの出力電圧は、DC−DCコンバータ126を介して降圧され、12Vのサブバッテリ(不図示)の充電等に供される。サブバッテリは、灯火器等の一般電装部品、及びECU等の制御系部品に電力を供給する。サブバッテリを搭載することで、メインバッテリ100の取り外し時にも各種電磁ロック等を操作可能である。
【0046】
バッテリ100は、車体に搭載された状態で、外部電源に接続したチャージャー(DC−ACインバータ)125によって充電される。バッテリ100(左右バッテリ101,102)は、車体から取り外した状態で、車外の充電器により充電することも可能である。
【0047】
左右バッテリ101,102とジャンクションボックス123との間には、第一接続ケーブル101a,102aが配索されている。ジャンクションボックス123とPCU120との間には、第二接続ケーブル123aが配索されている。ジャンクションボックス123とチャージャー125との間には、第三接続ケーブル125aが配索されている。
ジャンクションボックス123とDC−DCコンバータ(ダウンレギュレータ)126との間には、第四接続ケーブル126aが配索されている。PDUからは三相ケーブル80が延び、この三相ケーブル80が電気モータ30に接続されている。チャージャー125には、充電ケーブル125bが接続されている。充電ケーブル125bは、チャージャー125に対して着脱可能か否かは問わず、かつ外部充電器の構成であってもよい。
【0048】
(バッテリケース)
図2、
図3、
図5を参照し、バッテリ100は、後車体5に固定されたバッテリケース100Aに対して挿脱される。バッテリケース100Aは、左右一対の単位バッテリ101,102に対応する左右一対の単位バッテリケース103,104(以下、単にバッテリケースまたは左右バッテリケースということがある)を備えている。左右バッテリ101,102は、それぞれ垂直方向に対して、斜め上前方かつ左右外側から長手方向(傾斜方向C41,C42)に沿って挿脱される。左右バッテリケース103,104は、それぞれ斜め上前方かつ左右外側に向けて開口している。左右バッテリケース103,104は、互いに一体でも別体でもよい。左右バッテリケース103,104には、それぞれケース内に挿入した左右バッテリ101,102の上方への離脱を規制する不図示のロック機構が設けられている。
【0049】
左右バッテリ101,102は、それぞれ垂直方向に対して斜めにスライドしながら挿脱される。左右バッテリ101,102が垂直方向に対して斜めに挿脱されることで、バッテリ挿脱時のバッテリ重量の一部がバッテリケース103,104の下向きの壁部(斜面部)100Bに支持される。これにより、左右バッテリ101,102の挿脱作業がしやすくなる。なお、バッテリケース100Aは、左右バッテリ101,102を垂直方向に対して前方および左右外側の少なくとも一方に傾斜した傾斜方向C41,C42で挿脱させるように支持するものであればよい。
【0050】
左右バッテリ101,102の下端部には、それぞれバッテリ側接続端子(不図示)が設けられている。左右バッテリケース103,104の底部には、前記バッテリ側接続端子を着脱可能に接続するケース側接続端子(不図示)が設けられている。例えば、左右バッテリ101,102をバッテリケース103,104に収納し、前記ロック機構をロック状態に操作することで、前記バッテリ側接続端子と前記ケース側接続端子とが接続される。
【0051】
前記ロック機構の操作および左右バッテリ101,102の挿脱は手動であり、左右バッテリ101,102は工具不要で車体に対して着脱される。左右バッテリ101,102は、車体に対して着脱可能なモバイルバッテリである。左右バッテリ101,102は、それぞれ車外の充電器で充電したり、モバイルバッテリとして外部機器の電源として利用する等、単独で用いることが可能である。
【0052】
後述するように、左右バッテリ101,102は、後車体5に対して前車体3を揺動させた状態で、車体に対して着脱可能となる。左右バッテリ101,102は、前車体3を揺動させた状態にあるか否かにより、車体に対して着脱可能な状態と着脱不能な状態とが切り替えられる。
【0053】
(リアクッションの配置)
左右バッテリ101,102の後方には、左右リアクッション28が配置されている。
左右リアクッション28は、軸方向(伸縮方向)を上下方向に沿わせるように配置されている。左右リアクッション28は、前後方向視において左右バッテリ101,102と少なくとも一部が重なるように配置されている。これにより、左右バッテリ101,102に対する後方からの外乱の影響が左右リアクッション28によって抑えられる。例えば、後面衝突時の左右バッテリ101,102への荷重入力が、左右リアクッション28によって抑制される。
【0054】
なお、
図11に鎖線で示すように、左右バッテリ101,102の左右方向外側に左右リアクッション28が配置されてもよい。この場合、左右リアクッション28は、左右方向視において左右バッテリ101,102と少なくとも一部が重なるように配置されている。これにより、左右バッテリ101,102に対する左右方向外側からの外乱の影響が左右リアクッション28によって抑えられる。例えば、転倒時や側面衝突時の左右バッテリ101,102への荷重入力が、左右リアクッション28によって抑制される。
【0055】
(電装部品の配置)
図2〜
図5を参照し、左右バッテリ101,102、PCU120、ジャンクションボックス123、チャージャー125およびDC−DCコンバータ126を含む電装部品130は、後車体5に搭載されている。電装部品130は、後車体5に構成されたリアサスペンション29のバネ上に搭載されている。これにより、リアサスペンション29のバネ下重量の増加を抑えて作動性を向上させ、路面追従性や悪路走破性を向上させている。
【0056】
PCU120は、上下厚さを抑えた偏平をなしている。PCU120は、例えば後車体カバー70の前壁部71の背後で、前壁部71と略平行に傾斜して配置されている。PCU120の上面には、複数の放熱フィン120aが立設されている。放熱フィン120aの前方には、後車体カバー70の前壁部71に形成された走行風取入口71aが対向配置されている。これにより、走行風取入口71aから取り入れた走行風でPCU120が効果的に冷却されるとともに、他の電装部品130も併せて冷却される。走行風取入口71aは、前壁部71に限らず側壁部74や上壁部72に設けてもよく、かつ導風フードを有してもよい。後車体カバー70内に取り入れた走行風を排出する排風口を、後車体カバー70の後部に設けてもよい。
【0057】
側面視でPCU120、バッテリ100およびリアロアサイドフレーム26に囲まれる空間には、ジャンクションボックス123およびDC−DCコンバータ126が配置されている。ジャンクションボックス123およびDC−DCコンバータ126は、それぞれ上下厚さを抑えた偏平状をなしている。ジャンクションボックス123およびDC−DCコンバータ126は、例えば左右リアロアサイドフレーム26間に渡る支持部材上に、略水平に支持されている。
【0058】
側面視でバッテリ100、後上部フレーム23およびリアサイドフレーム27に囲まれる空間には、チャージャー125が配置されている。チャージャー125は、上下厚さを抑えた偏平状をなしている。チャージャー125は、例えば左右リアサイドフレーム27間に渡る支持部材上に、リアサイドフレーム27と略平行な傾斜姿勢で支持されている。チャージャー125は、後車体5の後端近傍に配置されることで、使用者がアクセスしやすい。また、チャージャー125から充電コードを引き出す、あるいは外部の充電コードを接続するといった充電作業を容易にしている。チャージャー125は、後車体5の後端近傍に配置されることで、バッテリ充電時の放熱性を高めている。
【0059】
チャージャー125は、バッテリ100の後方に配置されている。このため、バッテリ100(左右バッテリ101,102)に対する後方からの外乱の影響がチャージャー125によって抑えられる。例えば、後面衝突時の左右バッテリ101,102への荷重入力が、チャージャー125によって抑制される。
【0060】
PCU120は、例えば車体左右中心線CL2を左右に跨いで配置されている。ジャンクションボックス123およびDC−DCコンバータ126は、例えば車体左右中心線CL2を挟んで左右に並んで配置されている。チャージャー125は、例えば車体左右中心線CL2を左右に跨いで配置されている。
【0061】
これらの電装部品130は、後車体5の外側部(左右後輪4a,4bの左右外側端部)よりも左右方向内側に配置されている。これにより、電装部品130に対する車両外側方からの外乱による影響が抑えられる。
電装部品130は、後輪車軸42よりも上方で、かつ後車体フレーム21の下端に位置する左右リアロアサイドフレーム26よりも上方に配置されている。これにより、電装部品130の地上高を確保し、車両下方(路面側)からの外乱の影響を抑え、かつ路面側からの被水も抑えている。
【0062】
電装部品130の内、左右バッテリ101,102、PCU120、ジャンクションボックス123およびDC−DCコンバータ126といった駆動系のものは、後輪車軸42よりも前方に配置されている。これにより、駆動系の電装部品130は、後輪4a,4bの前方にオフセットした電気モータ30と接続しやすく、かつ後車体5の前側への集中配置により配線長さの短縮が図られる。
電装部品130は、後車体5にまとめて配置することで、各部品間を繋ぐ配線の長さを抑え、かつ各部品の相対移動による配線の屈曲や干渉による摩耗等の発生を抑えている。
【0063】
電装部品130は、非揺動側車体である後車体5に搭載されるので、電装部品130の重量が揺動側車体である前車体3の揺動に影響することを抑え、電動車両1の旋回性能への影響を抑えている。
【0064】
(バッテリの挿脱)
図2、
図4を参照し、後車体カバー70の前壁部71には、左右バッテリ101,102の上面101c,102cと挿脱方向(長手方向)で対向する位置に、左右開口77がそれぞれ形成されている。左右開口77は、バッテリ収納部76を前方に向けて開放する。左右開口77は、例えば前後方向視で矩形状をなし、角柱状の左右バッテリ101,102をそれぞれ挿脱可能とする。左右開口77は、前後車体3,5間の隙間S1に臨んでいる。
【0065】
図7を併せて参照し、前車体3が直立状態Aにあるとき、前車体3の後部傾斜部9aの少なくとも一部が、開口77と隙間S1を空けて対向する位置にある。隙間S1は、左右バッテリ101、102の挿脱方向の長さより小さい。このため、左右バッテリ101,102の挿脱は不能となる。左右バッテリ101,102の挿脱を可能とするには、前車体3を揺動させて揺動状態Bとし(
図8参照)、後部傾斜部9aを開口77との対向位置から退避させる必要がある。
【0066】
図8を参照し、前車体3は、直立状態A(
図7参照)から回動機構50の軸線C1回りに予め定めた角度θだけ回動することで、揺動状態Bとなる。前車体3は、揺動状態Bにおいて後部傾斜部9aを開口77との対向位置から退避させ、左右バッテリ101,102の挿脱を可能とする。このとき、前車体3の揺動角度θは、回動機構50が相対回動をロック可能な角度範囲にある。これにより、左右バッテリ101,102の挿脱時に、前車体3を揺動状態Bでロック可能である。
【0067】
左右開口77には、それぞれ開閉可能なリッド78が設けられている。車両前方を向いた左右開口77にリッド78を設けることで、バッテリ側への異物や雨水等の進入が抑えられる。リッド78には、バッテリ側への走行風(冷却風)を取り入れ可能とする走行風取入口を形成してもよい。リッド78は、メインスイッチと連動して(または独立して)施錠可能としてもよい。
【0068】
左右開口77は、前車体3の直立状態Aでは、前車体3の後部傾斜部9aによって、左右バッテリ101,102を着脱不能となる。左右開口77は、前車体3が左右何れかに揺動して揺動状態Bになると、左右バッテリ101,102の何れかを着脱可能となる。前車体3が揺動状態Bになると、揺動方向と反対側の開口77から後部傾斜部9aが退避し、この開口77に対して左右バッテリ101,102の対応するものを着脱可能となる。
【0069】
すなわち、
図8に示すように、前車体3を右側にロールさせると、後車体5の左側の開口77が前方に露出し、左側のバッテリ101を着脱可能となる。一方、図示は略すが、前車体3を左側にロールさせると、後車体5の右側の開口77が前方に露出し、右側のバッテリ102を着脱可能となる。前車体3の傾斜方向(揺動方向)と反対側から左右バッテリ101,102の何れかを着脱可能となるので、前車体3の傾斜方向と反対側に立つ使用者から左右バッテリ101,102の着脱作業をしやすい。
【0070】
このように、前後車体3,5の相対揺動に応じて、左右バッテリ101,102を着脱可能な状態と左右バッテリ101,102を着脱不能な状態とが切り替わる。このため、電動車両1の駐車時には、パーキングロック操作をすることのみで確実に左右バッテリ101,102の着脱が不能となり、バッテリ100の防盗性を向上させる。バッテリ100の周囲は後車体カバー70に覆われて外部から遮蔽されるので、この点でもバッテリ100の防盗性を向上させる。
【0071】
電動車両1は、パーキングレバー91の操作により前車体3の揺動を規制するパーキングロック装置90を備えている。パーキングレバー91は、前車体3の揺動をロックしたロック位置において、メインスイッチのオフに応じて施錠状態となる。電動車両1は、以下の手順により、左右バッテリ101,102を取り出し不能としたロック状態で施錠可能である。
【0072】
すなわち、前車体3を直立状態A相当としてパーキングレバー91をロック位置に操作し、この状態でメインスイッチをオフにする。すると、前車体3の揺動が直立状態A相当でロックされ、もって左右バッテリ101,102を取り出し不能な状態でロックされる。この状態からパーキングレバー91を操作して前車体3の揺動ロック(左右バッテリ101,102の取り出しのロック)を解除するには、メインスイッチをオンにする操作が必要となる。
【0073】
このように、電動車両1は、駐車時等において左右バッテリ101,102を取り出し不能な状態で施錠可能であり、バッテリ100の防盗性を向上させている。そして、電動車両1の旋回走行時にバンクする前車体3の揺動ロック機構93(パーキングロック装置90)を利用して、バッテリ100の盗難防止用のロックを行うので、簡素な構成で盗難防止ロック構造の実現が可能となる。
【0074】
以上説明したように、上記実施形態における電動車両1は、前車体3と、前記前車体3から分離した後車体5と、前記前車体3および後車体5を、車両前後方向を向く軸線C1回りに相対揺動可能に連結する回動機構50と、車両走行用の電気モータ30と、前記電気モータ30へ電力を供給するバッテリ100と、を備えている。前記後車体5は、前記バッテリ100を脱着可能に収納するバッテリ収納部76を備えている。前記バッテリ収納部76は、前記バッテリ100(左右バッテリ101,102)を挿脱可能とする開口77を備えている。前記前車体3は、前記バッテリ収納部76の開口77に対向配置されて前記バッテリ100の挿脱を規制可能な挿脱規制部(後部傾斜部9a)を備えている。前記挿脱規制部は、前記前車体3および後車体5が前後方向視で互いに左右中心線CL1,CL2を一致させた直立状態Aにおいて、前記バッテリ収納部76の開口77に対向配置されて前記バッテリ100の挿脱を規制する。前記挿脱規制部は、前記前車体3および後車体5が前記軸線C1回りに予め定めた角度θだけ相対揺動した揺動状態Bにおいて、前記バッテリ収納部76の開口77との対向位置から退避して前記バッテリ100の挿脱を許容する。
【0075】
この構成によれば、後車体5に搭載したバッテリ100は、前車体3に設けた挿脱規制部により、以下の作用を奏する。バッテリ100は、前車体3および後車体5が相対揺動する前の直立状態Aでは、バッテリ収納部76に対する挿脱が規制される。バッテリ100は、前車体3および後車体5が規定角度θを超えて相対揺動した揺動状態Bでは、バッテリ収納部76に対する挿脱が許容される。これにより、前車体3および後車体5の相対揺動を規制したパーキングロック状態では、バッテリ100が着脱不能な状態に維持される。このため、電動車両1を駐車する際には併せてバッテリ100を着脱不能な状態に維持可能となり、バッテリ100の防盗性を向上させることができる。また、パーキングロック装置90をバッテリ100の盗難防止用のロックとして利用可能とし、構成の増加を抑えた上で利便性を向上させることができる。
【0076】
上記電動車両1において、前記回動機構50は、前記前車体3および後車体5の前記軸線C1回りの相対揺動を、メインスイッチの操作に基づき規制する揺動規制部(揺動ロック機構93)を備えている。
この構成によれば、回動機構50に備える揺動ロック機構93により、前車体3および後車体5の相対揺動を規制することができる。揺動規制部を用いて、メインスイッチの操作に基づきバッテリ100が着脱不能な状態を維持することが出来る。このため、揺動規制部をバッテリ100の盗難防止用のロックとして利用可能とし、構成の増加を抑えた上で利便性を向上させることができる。具体的に、メインスイッチがオフになると、パーキングレバー91をアンロック位置へ操作不能となる(ひいては前車体3の揺動が規制される)。このため、バッテリ100が着脱不能な状態(盗難防止)を維持することが出来る。
なお、メインスイッチの操作に連動する機構又はアクチュエータを設け、メインスイッチのオンオフに応じて揺動規制部を直接作動させる構成としてもよい。
【0077】
上記電動車両1において、前記後車体5は、接地状態を維持する左右一対の後輪4a,4bを備えている。前記バッテリ収納部76は、前記後車体5に備えられている。前記挿脱規制部は、前記前車体3に備えられている。前記前車体3が前記後車体5に対して揺動した前記揺動状態Bにおいて、前記挿脱規制部は、前記バッテリ収納部76の開口77との対向位置から退避して前記バッテリ100の挿脱を許容する。
この構成によれば、旋回走行時にバンクさせる前車体3の揺動は、揺動規制部を利用してロックすることが可能である。この揺動規制部により前車体3の揺動をロックすることで、バッテリ100の挿脱を規制した盗難防止ロックとすることが可能となる。バッテリ100の盗難防止ロック構造を専用に設ける場合に比べて、バッテリ100の盗難防止ロックを簡素な構成で実現することができる。
【0078】
上記電動車両1において、前記後車体5は、後輪4a,4bの上方に少なくとも一部が設けられる荷台75と、前記荷台75の下方に設けられる前記バッテリ収納部76と、前記バッテリ収納部76における前記バッテリ100を挿脱可能とする開口77を開閉する開閉部(リッド78)と、を備えている。
この構成によれば、バッテリ収納部76を荷台75の下方に設けることで、バッテリ100を着脱する際にバッテリ100を持ち上げる高さを抑えることができる。このため、重量物であるバッテリ100の着脱を容易にすることができる。また、バッテリ収納部76の開口77に開閉部を設けることで、バッテリ収納部76内への異物の進入を抑止するとともに、バッテリ100の防盗性をより向上させることができる。
【0079】
上記電動車両1において、前記後車体5は、前記バッテリ収納部76の後方にチャージャー125を備えている。
この構成によれば、後車体5におけるバッテリ収納部76よりも後方にチャージャー125を配置することで、チャージャー125が車体全体の後端寄りに配置され、チャージャー125へのアクセスが容易になる。高電圧部品でかつ重量物であるバッテリ100は、相対的に車体全体の前後中央寄りに配置されるので、後方からの外乱の影響が抑えられるとともに、マスの集中に寄与することができる。
【0080】
上記電動車両1において、前記バッテリ収納部76は、前記バッテリ100を垂直方向に対して傾斜した傾斜方向C41,C42で挿脱させるバッテリケース103,104を備えている。バッテリケース103,104は、前記傾斜方向C41,C42で挿脱される前記バッテリ100の重量の少なくとも一部を受ける。
この構成によれば、バッテリ100を垂直方向に挿脱させる場合に比べて、重量物であるバッテリ100を持ち上げやすくなる。また、バッテリケース103,104がバッテリ重量の少なくとも一部を受けるので、バッテリ100の着脱作業を容易にすることができる。
【0081】
上記電動車両1において、前記後車体5は、後車体フレーム21と、後輪4a,4bを上下揺動可能に支持するスイングユニット40と、前記後車体フレーム21と前記スイングユニット40とを連結し、前記バッテリ100の後方あるいは側方に配置されるリアクッション28と、を備えている。
この構成によれば、後輪懸架装置29のリアクッション28を利用して、バッテリ100に対する後方あるいは側方からの外乱の影響を抑える。このため、バッテリ100の保護性を向上させることができる。
【0082】
上記電動車両1において、前記後車体5は、後輪4a,4bを上下揺動可能に支持するスイングユニット40を備えている。前記スイングユニット40における側面視で後輪4a,4bを避けた位置には、前記電気モータ30が設けられている。
この構成によれば、例えばインホイールモータのように、側面視で後輪4a,4bと重なるように電気モータ30を配置する場合に比べて、車両側方から電気モータ30へのアクセスが容易になる。このため、電気モータ30の組み付け性やメンテナンス性を向上させることができる。
【0083】
上記電動車両1において、前記電気モータ30は、前記スイングユニット40の長さ方向の中央部40aよりもスイング軸41側に配置されている。
この構成によれば、重量物である電気モータ30をスイングユニット40におけるスイング軸41に近い位置に設ける。このため、スイングユニット40の作動性を向上させることができる。
【0084】
上記電動車両1において、前記電気モータ30は、前記スイングユニット40の上部に配置されてもよい。
この構成によれば、電気モータ30をスイングユニット40の上部に設けることで、電気モータ30に対する路面側からの外乱や被水を抑えることができる。
【0085】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、実施形態では屋根付きの自動三輪車を例示したが、これに限らない。本発明は、屋根なしの車両を含め、前後の車体を相対回動可能な鞍乗り型車両に広く適用可能である。前記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪の車両も含まれる。
【0086】
電装部品130をリアサスペンション29のバネ上に搭載する構成であればよい。例えば、前車体3に後輪4a,4bの上方を後方へ延びるリアフレームを一体に設け、このリアフレームに電装部品130を搭載してもよい。
電気モータ30を後車体フレーム21に搭載し、チェーン等で後輪4a,4bへ駆動力を伝達する構成でもよい。この場合、スイングユニット40に代わり、構造体としてのスイングアームを設ければよい。
リアクッション28は、バッテリ100よりも前方に配置してもよい。この場合、リアクッション28を単一に設けてもよい。また、リアクッション28は、リンク機構を介して車体に連結されてもよい。
【0087】
バッテリ100は、被揺動側車体である後車体5に限らず、揺動側車体である前車体3に搭載する構成でもよい。すなわち、シート7の下方等にバッテリ100を搭載し、このバッテリ100が前後車体3,5の相対揺動時に挿脱可能となる構成でもよい。さらに、バッテリ100を前後車体3,5にそれぞれ搭載し、これらのバッテリ100が前後車体3,5の相対揺動時に挿脱可能となる構成でもよい。これらの場合も、電動車両1の駐車時におけるバッテリ100の防盗性を向上させるとともに、構成の増加を抑えた上で利便性を向上させることができる。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。