(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
上皮成長因子受容体EGFR(Epidermal Growth Factor Receptor)はerbB受容体ファミリーの膜貫通タンパク質チロシンキナーゼの一つである。成長因子リガンド(たとえば上皮成長因子(EGF))と結合する場合、受容体が付加するEGFR分子とホモ二量体化するか、あるいはもう一つのファミリーメンバー(たとえばerbB2(HER2)、erbB3(HER3)、またはerbB4(HER4))とヘテロ二量体化する。erbB受容体のホモ二量体化および/またはヘテロ二量体化は、細胞内領域における主要チロシンのリン酸化につながり、そして細胞の増殖と生存に関与する多くの細胞におけるシグナル伝達経路に対する刺激が生じる。erbBファミリーのシグナル伝達の失調は増殖、侵入、転移、血管新生および腫瘍細胞の生存を促進し、そして多くのヒトの癌(包括肺癌、頭・頚部癌や乳癌などを含む)において記述された。
【0003】
そのため、erbBファミリーをはじめとする抗癌薬物としての開発の合理的な標的、たとえばEGFRやerbB2を標的とする多くの薬物は、すでに臨床で幅広く使用され、ゲフィチニブ(IRESSA
TM)、エルロチニブ(TARCEVA
TM)およびラパチニブ(TYKERB
TM)などが含まれる。New England Journal of Medicine(2008)(第358期,1160-1174)およびBiochemical and Biophysical Research Communications(2004)(第319期,1-11)のいずれでも、erbB受容体のシグナル伝達および腫瘍の発生におけるその関与の詳細が提供された。
【0004】
肺癌は世界中で発症率が最も高い癌で、中国で肺癌の発症率がすべての癌のうち1位で、中国で発症率と死亡率が最も高い癌である。中国の肺癌患者のうち、約30%の患者がEGFR突然変異を持ち、中でも、L858Rとエクソン19欠失変異は約90%以上を占め、このような患者はEGFR阻害剤に対してより敏感である。現在市販されている第一世代のEGFR阻害剤、たとえば、エルロチニブ、ゲフィチニブなどは、このような患者に優れた治療効果があり、そのうちの60%以上の患者の腫瘍を縮小させ、患者の無増悪生存期間を顕著に延長させることができる。しかし、ほとんどの患者は6〜12か月で薬剤耐性が生じ、このよう薬剤耐性はEGFRのさらなる突然変異で、これは第一世代のEGFR阻害剤に対する敏感性を低下させる。これらの突然変異で最も見られるのは、いわゆる「ゲートキーパー(gatekeeper)」という突然変異T790Mである(Science,2004,Vol.304,1497-1500;New England Journal of Medicine 2004,350,2129-2139)。元々当該部位にあるL-スレニオン(T)がL-メチオニン(M)に置換され、突然変異後のEGFチロシンキナーゼRはゲフィチニブ、エルロチニブと結合しなくなることで、第一世代のEGFR阻害剤が効かなくなり、このような患者に現在使用できる薬物がない状況になった。臨床で第一世代のEGFR阻害剤に対して薬剤耐性になった患者のうち、50%がEGFR T790M突然変異が検出されることが見出された。T790M変異細胞系H1975において、第一世代のEGFR阻害剤、たとえばゲフィチニブやエルロチニブは、いずれも3 μMで、基本的に活性がない。
【0005】
薬剤耐性のEGFR T790Mなどの突然変異に対する抑制活性を向上させるために、WO2013014448では、EGFR阻害剤として有用なピリミジン誘導体および癌治療におけるその使用が公開され、ここで、Gが4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3-イル基、1H-インドール-3-イル基、1-メチル-1H-インドール-3-イル基または或ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3-イル基から選ばれ、R
2がメチル基またはメトキシ基で、構造が以下の通りである。
【化1】
【0006】
当該特許公開文献では、式IIIで表される化合物(AZD9291)はすでに2015年11月13日に米国FDAによって快速プロセス市販を許可され(商品名:Tagrisso、AZD9291)、上皮成長因子受容体EGFR T790M突然変異陽性の晩期非小細胞肺癌患者の治療に使用される。
【化2】
【0007】
現在、CN104140418BやCN105237515Aなどのいずれでもいくつかの重水素化AZD9291化合物が報告されたが、重水素化AZD9291の薬用可能な塩の結晶形の特許に関する報告はまだない。結晶形は薬物の存在の固体物質の状態で、薬物の結晶形の研究は薬物の基本状態に対する研究で、化学薬物の結晶形の状態に対する十分で全面的な認識ができれば、疾患の治療により適する薬物の結晶形の固体物質がみつかることが可能になる。薬物の結晶形は薬物の物理・化学的性質に影響し、薬物が臨床で発揮する疾患の治療作用の基本に直接影響を与える。同時に、一部の薬物自身の溶解性などの問題があるため、それをその薬学的に許容される塩にし、大幅にその溶解性を改善し、薬物の吸収・利用を向上させる。本社はずっと肺癌薬物の研究を続け、以前からEGFRを標的とする薬物の研究を始め、一連の研究成果、たとえば特許CN102659692、US08916572、CN107382879、WO2017219500やWO2018050052などが得られた。我らの研究過程において、式IIIで表される化合物が血液脳関門を通過して大脳に入ることが見出され、そして文献Clin.Cancer Res.2016,22(20),5130-5140でもこの結果が報告された。しかし、式IIIで表される化合物が体内で代謝によってインドールの窒素におけるメチル基が脱離して生成した式IVで表される化合物(AZ5104)は、血液脳関門を通過しないため、脳部転移の腫瘍に対する作用がなくなる。式IIIで表される化合物のインドールの窒素におけるメチル基を重水素化すると、このメチル基の代謝安定性が増加し、体内における血中薬物濃度および脳部における濃度がより向上することで、より優れた治療効果に達する。そのため、重水素化AZD9291の安定した結晶形の研究に重要な意義がある。
【化3】
【0008】
発明の概要
本発明は、主に、重水素化AZD9291の結晶形、そしてその製造方法および薬物としての使用を提供する。
本発明によって提供される重水素化AZD9291の結晶形は、構造式が式(I)または式(II)で表され、
【化4】
【0009】
当該結晶形は、Cu-Kα線で測定された粉末X線回折分析において、2θ角(2θ角の単位:°)で7.1±0.2、8.5±0.2、9.4±0.2、10.3±0.2、15.1±0.2、16.3±0.2、18.7±0.2、22.0±0.2、25.6±0.2、26.0±0.2に回折ピークを有する。
本発明によって提供される重水素化AZD9291の結晶形は、構造式が式(I)または式(II)で表され、当該結晶形は、Cu-Kα線で測定された粉末X線回折分析において、2θ角(単位:°)で7.1±0.2、8.5±0.2、9.4±0.2、10.3±0.2、15.1±0.2、16.3±0.2、17.0±0.2、17.3±0.2、17.7±0.2、18.7±0.2、19.4±0.2、19.7±0.2、20.2±0.2、20.7±0.2、21.6±0.2、22.0±0.2、22.8±0.2、23.5±0.2、24.2±0.2、24.8±0.2、25.6±0.2、26.0±0.2に回折ピークを有する。
【0010】
本発明によって提供される重水素化AZD9291の結晶形は、構造式が式(I)または式(II)で表され、当該結晶形は、Cu-Kα線で測定された粉末X線回折分析において、2θ角(2θ角の単位:°)で7.1±0.2、8.5±0.2、9.4±0.2、10.3±0.2、12.6±0.2、14.4±0.2、15.1±0.2、15.6±0.2、16.3±0.2、17.0±0.2、17.3±0.2、17.7±0.2、18.2±0.2、18.7±0.2、19.4±0.2、19.7±0.2、20.2±0.2、20.7±0.2、21.6±0.2、22.0±0.2、22.8±0.2、23.5±0.2、24.2±0.2、24.8±0.2、25.6±0.2、26.0±0.2、26.9±0.2、27.7±0.2、28.2±0.2、29.5±0.2、30.7±0.2、31.7±0.2、32.5±0.2、33.1±0.2、33.8±0.2、34.6±0.2、34.9±0.2、35.6±0.2、37.9±0.2、38.7±0.2に回折ピークを有する。
【0011】
本発明によって提供される重水素化AZD9291の結晶形は、構造式が式(I)または式(II)で表され、当該結晶形のCu-Kα線で測定された粉末X線回折スペクトルが基本的に
図1の通りである。
また、本発明は、癌を治療する薬物の製造における重水素化AZD9291の結晶形の使用を提供する。
好適に、前記癌は非小細胞肺癌である。
本発明によって提供される重水素化AZD9291の結晶形の製造方法は、
1)重水素化AZD9291化合物を溶媒系に入れ、40〜80℃に昇温させた後、さらに前記溶媒系にメタンスルホン酸をメタンスルホン酸のモル数が重水素化AZD9291化合物の1〜1.5倍になるように入れ、40〜80℃に維持し、1〜5時間反応させた後、熱時ろ過を行う工程と、
2)熱時ろ過後のろ液を室温で自然冷却し、結晶が析出する工程と、
3)ろ過し、結晶物を収集した後、前記結晶物を洗浄し、乾燥し、重水素化AZD9291メタンスルホン酸塩の結晶物を得る工程と、
を含む。
具体的な実施形態として、前記の溶媒系はメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、水、1,4-ジオキサン、酢酸-t-ブチル、アセトン/水混合液、エタノール/酢酸-t-ブチル混合液、1,4-ジオキサン/水混合液のうちの任意の一つである。
【0012】
好適な実施形態として、前記の溶媒系はアセトニトリルまたはアセトン/水混合液である。
好適な実施形態として、前記アセトン/水混合液におけるアセトンと水の体積比は、アセトン/水=10:1〜15:1である。
本発明の有益な効果について、本発明によって提供される重水素化AZD9291メタンスルホン酸塩の結晶物は、物理・化学的性質が安定し、重水素化率が安定し、インドールの窒素における重水素化メチル基の重水素化率が保証され、体内における代謝安定性が良くなり、生体内で優れた生物利用能になり、たとえばラットの実験において、経口投与の生物利用能が30.9%で、同時にラットのPO(経口投与)の薬物動態学の実験の場合、体内における血中薬物濃度および脳部における濃度分布が良く、最高血中薬物濃度が117ng/mLに達し、AUCが1268h・ng/mLに達し、よってより優れた治療効果が達成した。そして、単一不純物がいずれも0.1%以下で、APIおよびCMCの開発に非常に適する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
具体的な実施形態
以下に、本発明の技術方案を詳細に説明する。
式(I)または式(II)で表される化合物の結晶形の製造
【化5】
【0015】
1)重水素化AZD9291(D-AZD9291)の合成
合成経路は以下の通りである。
【化6】
【0016】
50 mgの中間体B、130 mgの中間体Aおよび35 mgのp-トルエンスルホン酸一水和物を5 mLの2-ペンタノールに溶解させた後、50℃に昇温させ、窒素ガスの保護下において一晩撹拌し、TLCで原料が基本的になくなったことが示され、反応液を回転乾燥した後、20 mLのジクロロメタンおよび20 mLの飽和炭酸ナトリウム水溶液に入れ、分層後、さらに20 mLのジクロロメタンで水層を2回洗浄し、有機層を合併し、乾燥し、回転乾燥し、カラムにかけて分離して50 mgのD-AZD9291製品を得た。D-AZD9291の核磁気共鳴分析のデータ:
1H-NMR(400MHz,d
6-DMSO)δ10.22(s,1H),9.16(s,1H),8.68(s,1H),8.33(d,J=5.2Hz,1H),8.24(d,J=8.0Hz,1H),7.90(s,1H),7.53(d,J=8.2Hz,1H),7.26-7.22(m,2H),7.17-7.13(m,1H),7.04(s,1H),6.46-6.40(m,1H),6.30-6.25(m,1H),5.79-5.76(m,1H),3.86(s,3H),2.90-2.37(m,2H),2.72(s,3H),2.30-2.27(m,2H),2.20(s,6H);m/z(ES+)(M+H)
+=503.3。
2)式(I)または式(II)で表される化合物の結晶形の製造
【化7】
【0017】
方法1:化合物D-AZD9291(5.02g,1mmol)をアセトニトリル(40mL)に入れた後、この溶液を70℃に昇温させ、メタンスルホン酸(0.96g,1mmol)のアセトニトリル溶液(10mL)を上記溶液に滴下し、添加完了後、この混合液を70℃で2時間撹拌し、熱時ろ過を行い、ろ液を室温で静置して10時間結晶を析出させた後、ろ過し、固体を収集し、アセトニトリルで洗浄した後、真空乾燥器において40℃で乾燥し、結晶物を得た。
1H-NMR(400MHz,d
6-DMSO)δ9.54(s,1H),9.22(s,1H),8.78(s,1H),8.53(s,1H),8.33-8.30(m,2H),7.94(s,1H),7.53(d,J=8.2Hz,1H),7.26-7.22(m,2H),7.17-7.13(m,1H),7.01(s,1H),6.72-6.65(m,1H),6.36-6.31(m,1H),5.83-5.80(m,1H),3.89(s,3H),3.30-3.21(m,4H),2.81(s,6H),2.62(s,3H),2.33(s,3H);m/z(ES+)(M+H)
+=503.3。
【0018】
方法2:化合物D-AZD9291(5.02g,1mmol)をアセトン(45mL)および水(4.5mL)に入れた後、この溶液を50℃に昇温させ、メタンスルホン酸(0.96g,1mmol)のアセトン溶液(10mL)を上記溶液に滴下し、添加完了後、この混合液を50℃で2時間撹拌し、熱時ろ過を行い、ろ液を室温で静置して10時間結晶を析出させた後、ろ過し、固体を収集し、アセトンと水の混合物(V
アセトン/V
水=10/1)で洗浄した後、真空乾燥器において40℃で乾燥し、結晶物を得た。
1H-NMR(400MHz,d
6-DMSO)δ9.54(s,1H),9.22(s,1H),8.78(s,1H),8.53(s,1H),8.33-8.30(m,2H),7.94(s,1H),7.53(d,J=8.2Hz,1H),7.26-7.22(m,2H),7.17-7.13(m,1H),7.01(s,1H),6.72-6.65(m,1H),6.36-6.31(m,1H),5.83-5.80(m,1H),3.89(s,3H),3.30-3.21(m,4H),2.81(s,6H),2.62(s,3H),2.33(s,3H);m/z(ES+)(M+H)
+=503.3。
【0019】
ここで、中間体Aの合成経路は以下の通りである。
【化8】
【0020】
化合物2の合成:窒素ガスの保護下において、500mLの三口フラスコに化合物1(15g,128.2mmol)および260mLのテトラヒドロフランを入れた後、0℃に降温させ、水素化ナトリウム(7.7g,192.0mmol)を分けて入れ、添加完了後、0℃で1時間反応させ、さらに反応液の温度を0℃に維持したままで重水素化ヨードメタン(27.8g,192.0mmol)を反応液に滴下した。重水素化ヨードメタンの添加が完了した後、ゆっくり室温に昇温させ、続けて10時間反応させ、反応系を0℃に維持したままで氷水(200mL)を反応混合物に滴下し、この混合物を酢酸エチルで抽出し(100mL×3)、有機相を混合し、乾燥し、カラムにかけて15gの混合物2を得た。m/z(ES+)(M+H)
+=135.1。
中間体Aの合成:窒素ガスの保護下において、250mLの三口フラスコに化合物2(15g,111.9mmol)、化合物3(20.0g,134.3mmol)、三塩化鉄(21.7g,134.3mmol)および150mLのDMEを入れた後、一晩還流させ、反応終了後、反応系を室温に降温させ、ろ過し、ケーキを50mLのメタノールで3回洗浄した後、有機相を回転乾燥し、カラムにかけて13.1gの中間体Aを得た。
1H-NMR(400MHz,d
6-DMSO)δ7.35(2H,m),7.64(1H,dd),7.88(1H,d),8.45-8.52(1H,m),8.56(1H,s),8.62(1H,d);m/z(ES+)(M+H)
+=247.1。
【0021】
中間体Bの合成経路は以下の通りである。
【化9】
【0022】
B1-2の合成:原料B1-1を50g秤量し、500mLのメタノールを入れて全部溶解させ、Pd/Cを10g入れ、35℃で2日水素化反応させた。プレートにサンプリングしてモニタリングし、原料が完全に反応した後、処理した。そのままPd/Cをろ過によって除去し、メタノール相を回転乾燥して粗製品を39g得、そのまま次の工程に投入した。
1-3の合成:原料B1-2を39g取り、500mLの濃硫酸に氷塩浴において入れた。温度を10℃以下にしたままで撹拌して全部溶解させた。温度を10℃以下にしたままで1epの硝酸カリウムを入れ、室温で一晩撹拌した。次の日に、氷水に注ぎ、アンモニア水でpH>7になるように調整し、酢酸エチルで抽出し、乾燥し、カラムにかけ、44gの製品を得た。
1H-NMR(CDCl
3)δ7.39(d,J=7.2Hz,1H),6.63(d,J=12.4Hz,1H),3.94(s,3H),3.90(broad,2H)。
【0023】
B1-4の合成:原料B1-3を20g取り、500mLのジクロロメタンに入れ、氷塩浴で-5℃に冷却した。1.1eqのジカルボン酸ジ-t-ブチルのジクロロメタン溶液を滴下し、滴下終了後、0.2eqのDMAPを入れた。自然に室温に昇温し、一晩撹拌した。次の日に、プレートにサンプリングし、反応完了後、カラムにかけ、24gの黄色固体を得た。
1H-NMR(CDCl
3)δ8.89(s,1H),6.97(s,1H),6.71(d,J=12.4Hz,1H),3.97(s,3H),1.53(s,9H);m/z(ES+)(M+H)
+=285.0。
B1-5の合成:原料B1-4を13.5g取り、200mLのDMAに入れ、撹拌しながら全部溶解させた。さらに2eqのN,N,N’-トリメチルエチレンジアミンおよび3eqのDIEAを入れ、110℃に昇温させて一晩撹拌した。次の日に、反応が完了した。処理し、22gの油状物の粗製品を得、そのまま次の工程に投入した。
1H-NMR(CDCl
3)δ8.54(s,1H),6.85(s,1H),6.60(s,1H),3.90(s,3H),3.22(t,J=6.8Hz,2H),2.81(s,3H),2.55(t,J=7.2Hz,2H),2.26(s,6H),1.49(s,9H);m/z(ES+)(M+H)
+=369.3。
【0024】
B1-6の合成:原料B1-5を22g取り、200mLの酢酸エチルに入れ、撹拌しながら全部溶解させ、さらに4.07gのPd/Cを入れ、20℃で一晩水素化反応させた。次の日に、原料が完全に反応した後、そのままPd/Cをろ過によって除去し、濃縮し、粗製品の黒色の油状物を17g得、そのまま次の工程に投入した。
1H-NMR(CDCl
3)δ7.517(s,1H),6.941(s,1H),6.61(s,1H),4.10(m,2H),3.76(s,3H),2.92(m,2H),2.62(s,3H),2.40(m,2H),2.27(s,6H),1.49(s,9H);m/z(ES+)(M+H)
+=339.4。
B1-7の合成:原料B1-6が17.3gあり、500mLのジクロロメタンおよび1.2eqのDIEAに入れ、氷塩浴で-5℃に冷却し、アルゴンガスで保護した。1.1eqのアクリルクロリドを滴下し、添加終了後、自然に室温に昇温させた。3時間後、反応が完了した。そのまま低温で回転蒸発して濃縮し、溶媒を除去した。23g程度の粗製品を得た。そのまま次の工程に投入した。
【0025】
中間体Bの合成:原料B1-7が23gあり、50mLのTHFに入れ、氷塩浴で-5℃に冷却した。濃塩酸を100mL入れ、温度を10℃未満に制御し、2時間撹拌した後、プレートにサンプリングしたところ反応が完了した。処理し、カラムにかけた。5.2gの製品を得た。
1H-NMR(CDCl
3)δ10.10(s,1H),7.97(s,1H),6.68(s,1H),6.41-6.21(m,2H),5.65(m,1H),3.81(s,3H),3.76(s,2H),2.82(m,2H),2.65(s,3H),2.20(s,6H);m/z(ES+)(M+H)
+=293.3。
製造された式(I)または式(II)で表される化合物の結晶形に対して粉末X線回折分析を行い、得られた粉末X線回折スペクトルを
図1に示す。粉末X線回折ピークのデータを表1に示す。本発明の方法1と方法2で得られた結晶物の粉末X線回折スペクトルは一致した。
【表1-1】
【表1-2】
【0026】
表1において、粉末X線回折ピークの2θ角の値で、その誤差範囲が±0.2°である。もちろん、粉末X線回折スペクトルの2θ値は機械間およびサンプル間で多少かわるが、その数値範囲の差は±0.2単位内であるため、引用された数値は絶対値と理解されない。
2θ角で表示されるピークの強さは変わり、特に一部のピークの強さは最強ピークの20%未満で、その特徴付けのデータの正確度が装置の条件に大きく影響され、大きい誤差の可能性があるため、強さが20%超のピーク値を本発明の結晶形の特徴ピークとした。
製造された式(I)または式(II)で表される化合物の結晶形の融点は239〜240℃であった(融点測定装置で測定された)。DSC(示差走査熱量測定法)では、その融点が249℃〜254℃の間にあることが示された。
【0027】
さらに、式(I)または式(II)で表される化合物の結晶形の安定性を測定したが、使用された装置は薬品加速安定性試験箱で、加速試験条件は40℃、相対湿度75%である。測定結果を表2に示す。
【0029】
式(I)または式(II)で表される化合物の結晶物は薬品加速安定性試験箱で6か月の加速試験を完成した後、サンプリングして粉末X線回折分析を行い、得られた粉末X線回折スペクトルを
図2に示す。
図1と
図2を比較すると、
図1と
図2は形が一致し、2θ角の値が装置の誤差範囲内で一致したことがわかり、本発明の結晶物が6か月の加速試験を経た後、結晶形が一致したことが示された。
【0030】
以上の実験結果から、本結晶形は物理・化学的性質が安定し、重水素化率が変わらず、この重水素化AZD9291結晶形がこれからの製剤などの薬物の研究・開発における使用に非常に適することが説明された。
同時に、本発明の重水素化AZD9291メタンスルホン酸塩の結晶物に対して示差走査熱量測定法(DSC)および熱重量分析法(TGA)などの研究を行ったところ、研究結果を
図3に示す。DSC-TGAグラフから、本発明の結晶物は溶媒の残留が少なく、サンプルの純度が高いことがわかる。後続の薬学研究に非常に適する。
【0031】
そして、本発明の重水素化AZD9291メタンスルホン酸塩の結晶物をラットの経口投与生物利用能試験に使用し、その経口投与生物利用能が30.9%に達した。経口投与生物利用能が高く、この結晶物が経口投与製剤の開発に適する。
本発明の方法1または方法2で製造された式(I)または式(II)で表される化合物の結晶形を使用した場合、室温で1か月置いた後、吸湿などの性状の変化が見られなかった。同時に、加速実験によって、その物理・化学的性質も非常に安定したことがわかった。HPLCによって検出し(HPLCスペクトルを
図4に示す)、HPLC検出のデータを表3に示す。その純度が99.83%と高く、同時に各単一不純物の含有量がいずれも0.1%以下で、後続の原薬および製剤の研究・開発ならびに後続の薬物動態学実験と動物学実験に非常に適する。
【0033】
本発明で製造された重水素化AZD9291メタンスルホン酸塩の結晶物を平に敷いて室温における実験室に置き、室温における安定性を考察し、純度をHPLCによって検出し、結果を表4に示す。
表における結果から、本発明で製造された結晶物は室温における安定性が良く、純度がHPLC検出で一致したことがわかった。
【0035】
本発明によって提供される重水素化AZD9291結晶形は、上皮成長因子受容体EGFR阻害剤、特にEGFR突然変異体阻害剤として有用である。
本発明によって提供される重水素化AZD9291結晶形は、EGFRチロシンキナーゼ活性を調節する薬物またはEGFR関連疾患を治療する薬物の製造に使用することができ、一つまたは複数のEGFRの活性化または抗性突然変異、たとえばL858R活性化突然変異体、Exon19欠失EGFR活性化突然変異体、T790M抗性突然変異体を抑制し、特に癌、たとえば非小細胞肺癌の治療に適する。