特許第6971400号(P6971400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6971400空調システム、空調方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971400
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】空調システム、空調方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/70 20180101AFI20211111BHJP
   F24F 11/65 20180101ALI20211111BHJP
【FI】
   F24F11/70
   F24F11/65
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-527158(P2020-527158)
(86)(22)【出願日】2018年6月29日
(86)【国際出願番号】JP2018024920
(87)【国際公開番号】WO2020003529
(87)【国際公開日】20200102
【審査請求日】2020年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 隼人
(72)【発明者】
【氏名】内藤 宏治
(72)【発明者】
【氏名】浦田 和幹
【審査官】 石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−118822(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/116160(WO,A1)
【文献】 特開昭60−3144(JP,A)
【文献】 特開平6−341697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00−11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器を順次に介して冷媒が循環する冷媒回路を備え、
前記凝縮器及び前記蒸発器の一方は室外熱交換器であり、他方は室内熱交換器であり、
前記室内熱交換器の付近に配置される室内ファンと、
前記室内ファンの回転速度に対応する所定の設計風量が記憶されている記憶部と、
空調制御を行う制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記室内熱交換器の一端側・他端側の冷媒の温度を含む情報に基づき、前記室内熱交換器における冷媒側熱交換量を推定するとともに、
前記室内熱交換器に向かう空気の温度、前記室内熱交換器で熱交換した空気の温度、及び、前記室内ファンの回転速度に対応する前記設計風量に基づいて、前記室内熱交換器における空気側熱交換量を推定し、
前記冷媒側熱交換量よりも前記空気側熱交換量の方が小さい場合、前記室内熱交換器に向かう空気の温度、前記室内熱交換器で熱交換した空気の温度、前記冷媒側熱交換量、及び前記空気側熱交換量に基づいて、前記室内熱交換器に向かう空気の湿度を推定し、当該湿度に基づいて空調制御を行う空調システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記湿度を推定する際、前記室内熱交換器での空気の熱交換に潜熱が含まれるように、前記室内熱交換器を前記蒸発器として機能させる処理を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
空気調和機の室内熱交換器の一端側・他端側の冷媒の温度を含む情報に基づき、前記室内熱交換器における冷媒側熱交換量を制御部が推定する冷媒側熱交換量推定ステップと、
前記室内熱交換器に向かう空気の温度、前記室内熱交換器で熱交換した空気の温度、及び、前記室内熱交換器の付近に配置された室内ファンの回転速度に対応する所定の設計風量に基づいて、前記室内熱交換器における空気側熱交換量を前記制御部が推定する空気側熱交換量推定ステップと、
前記冷媒側熱交換量よりも前記空気側熱交換量の方が小さい場合、前記室内熱交換器に向かう空気の温度、前記室内熱交換器で熱交換した空気の温度、前記冷媒側熱交換量、及び前記空気側熱交換量に基づいて、前記室内熱交換器に向かう空気の湿度を前記制御部が推定する湿度推定ステップと、
前記湿度に基づいて、前記制御部が空調制御を行う空調制御ステップと、を含む空調方法。
【請求項4】
請求項に記載の空調方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機による空調に関して、室内空気(空調対象空間)の温度の他に、室内空気の湿度も空調の快適性に影響を及ぼすことが知られている。例えば、特許文献1には、室内機に温湿度センサが設けられた空気調和機について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−150764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、温湿度センサの検出値に基づき、快適性の高い空調を行うことが可能になる。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、温度・湿度のそれぞれを検出するセンサ素子が設けられる分、製造コストの増加を招く。このようなことを考慮して、室内空気の湿度を検出せずに、室内空気の温度のみを検出する構成にすると、空調の快適性が低くなる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、快適性が高く、製造コストが安い空調システム等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、冷媒側熱交換量よりも空気側熱交換量の方が小さい場合、室内熱交換器に向かう空気の温度、前記室内熱交換器で熱交換した空気の温度、前記冷媒側熱交換量、及び前記空気側熱交換量に基づいて、前記室内熱交換器に向かう空気の湿度を制御部が推定し、当該湿度に基づいて空調制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、快適性が高く、製造コストが安い空調システム等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る空調システムを含む概略的な構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る空調システムの空気調和機を含む構成図である。
図3】本発明の実施形態に係る空調システムの空調管理装置の機能ブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る空調システムにおいて、室内熱交換器における空気の熱交換が顕熱負荷のみであるときの冷媒側熱交換量Qref及び空気側熱交換量Qairを示す説明図である。
図5】本発明の実施形態に係る空調システムの空調管理装置が備える制御部の処理を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態に係る空調システムにおいて、室内熱交換器での熱交換に潜熱が含まれる場合の点(Qref,Qair)の例を示す説明図である。
図7】本発明の実施形態に係る空調システムにおいて、比率(Qair/Qref)の時間的推移の例を示す説明図である。
図8】本発明の実施形態に係る空調システムにおいて、室内熱交換器の吸込側・吹出側の空気の温湿度に関する空気線図である。
図9】本発明の変形例に係る空調システムを含む概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪実施形態≫
図1は、実施形態に係る空調システムWを含む概略的な構成図である。
なお、図1では配管Jの図示を簡略化し、室外機Uoから4台の室内機Uiに冷媒を導く配管と、4台の室内機Uiから室外機Uoに冷媒を導く配管と、を共通の実線(配管J)で図示している。
【0010】
空調システムWは、空調を行うためのシステムであり、空気調和機100と、空調管理装置200と、を備えている。なお、空調管理装置200が複数のサーバを含む構成であってもよい。図1に示す携帯端末300は、空気調和機100のユーザが所持しているスマートフォン、タブレット、携帯電話等の端末機であり、空調管理装置200との間でネットワークNを介して通信可能になっている。
【0011】
<空気調和機の構成>
空気調和機100は、冷房運転や暖房運転等の空調を行う機器である。図1では、一例として、上吹きタイプの室外機Uoと、天井埋込タイプの4台の室内機Uiと、が配管Jを介して接続されたマルチ型の空気調和機100を図示している。図1に示すように、室外機Uoは、通信線Mを介して室内機Uiに接続されるとともに、通信線Mを介して空調管理装置200にも接続されている。
【0012】
図2は、空気調和機100の冷媒回路Fを含む構成図である。
なお、図2では、4台の室内機Ui(図1参照)のうち2台を図示し、残りの2台については図示を省略している。また、図2では、室外熱交換器12や室内熱交換器16における空気の流れを白抜き矢印で示している。
【0013】
空気調和機100は、室外機Uoに設けられる機器として、圧縮機11と、室外熱交換器12と、室外ファン13と、室外膨張弁14と、四方弁15と、を備えている。
圧縮機11は、低温低圧のガス冷媒を圧縮し、高温高圧のガス冷媒として吐出する機器である。このような圧縮機11として、例えば、スクロール式圧縮機やロータリ式圧縮機が用いられる。
【0014】
室外熱交換器12は、その伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、室外ファン13から送り込まれる外気と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。室外熱交換器12の一端g1は、四方弁15の切替えによって、圧縮機11の吸入側又は吐出側に接続され、他端g2は液側配管J1に接続されている。
【0015】
室外ファン13は、室外熱交換器12に外気を送り込むファンである。室外ファン13は、駆動源である室外ファンモータ13aを備え、室外熱交換器12の付近に配置されている。
室外膨張弁14は、室外熱交換器12に流れる冷媒の流量を調整したり、室外熱交換器12を蒸発器として機能させる際に冷媒を減圧したりする電子膨張弁であり、液側配管J1に設けられている。
四方弁15は、空調時の運転モードに応じて、冷媒の流路を切り替える弁である。
【0016】
また、空気調和機100は、室内機Uiに設けられる機器として、室内熱交換器16と、室内ファン17と、エアフィルタ18と、室内膨張弁19と、を備えている。
室内熱交換器16は、その伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、室内ファン17から送り込まれる室内空気(空調対象空間の空気)と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。室内熱交換器16の一端h1はガス側配管J2に接続され、他端h2は液側配管J3に接続されている。
【0017】
室内ファン17は、室内熱交換器16に室内空気を送り込むファンである。室内ファン17は、駆動源である室内ファンモータ17aを有し、室内熱交換器16の付近に配置されている。
エアフィルタ18は、室内ファン17の駆動に伴って室内熱交換器16に向かう空気から塵埃を捕集するフィルタであり、室内熱交換器16の付近(空気吸込側)に配置されている。
【0018】
室内膨張弁19は、室内熱交換器16に流れる冷媒の流量を調整したり、室内熱交換器16を蒸発器として機能させる際に冷媒を減圧したりする電子膨張弁であり、液側配管J3に設けられている。なお、他の室内機Uiも同様の構成を備えている。
【0019】
液側接続部K1は、それぞれの室内機Uiに一対一で接続された複数の液側配管J3と、室外熱交換器12の他端g2に接続された液側配管J1と、を接続するものである。
ガス側接続部K2は、それぞれの室内機Uiに一対一で接続された複数のガス側配管J2と、室外機Uoの四方弁15に接続されたガス側配管J4と、を接続するものである。
【0020】
そして、空調時の運転モードに応じて、冷媒回路Fにおいて周知のヒートポンプサイクルで冷媒が循環するようになっている。例えば、冷房運転時には、圧縮機11、室外熱交換器12(凝縮器)、室外膨張弁14(膨張弁)、室内膨張弁19(膨張弁)、及び室内熱交換器16(蒸発器)を順次に介して冷媒が循環する。
一方、暖房運転時には、圧縮機11、室内熱交換器16(凝縮器)、室内膨張弁19(膨張弁)、室外膨張弁14(膨張弁)、及び室外熱交換器12(蒸発器)を順次に介して冷媒が循環する。
【0021】
すなわち、空調システムWは、圧縮機11、「凝縮器」、「膨張弁」、及び「蒸発器」を順次に介して冷媒が循環する冷媒回路Fを備え、前記した「凝縮器」及び「蒸発器」の一方は室外熱交換器12であり、他方は室内熱交換器16である。
【0022】
その他、室外機Uoには、吸入圧力センサ21と、吸入温度センサ22と、吐出圧力センサ23と、吐出温度センサ24と、が設けられている。
吸入圧力センサ21は、圧縮機11の吸入側における冷媒の圧力(吸入圧力)を検出するセンサである。吸入温度センサ22は、圧縮機11の吸入側における冷媒の温度(吸入温度)を検出するセンサである。
【0023】
吐出圧力センサ23は、圧縮機11の吐出側における冷媒の圧力(吐出圧力)を検出するセンサである。吐出温度センサ24は、圧縮機11の吐出側における冷媒の温度(吐出温度)を検出するセンサである。
吸入圧力センサ21、吸入温度センサ22、吐出圧力センサ23、及び吐出温度センサ24の各検出値は、室外制御回路31を介して空調管理装置200に出力される。
【0024】
一方、室内機Uiには、冷媒温度センサ25,26と、吸込空気温度センサ27と、吹出空気温度センサ28と、が設けられている。
冷媒温度センサ25は、室内熱交換器16の一端h1の付近を通流する冷媒の温度を検出するセンサである。他方の冷媒温度センサ26は、室内熱交換器16の他端h2の付近を通流する冷媒の温度を検出するセンサである。
【0025】
吸込空気温度センサ27は、室内熱交換器16の空気吸込側(入口側)における空気の温度を検出するセンサである。吹出空気温度センサ28は、室内熱交換器16の空気吹出側(出口側)における空気の温度を検出するセンサである。
冷媒温度センサ25,26、吸込空気温度センサ27、及び吹出空気温度センサ28の各検出値は、室内制御回路32を介して室外制御回路31や空調管理装置200に出力される。
【0026】
また、室外機Uoには室外制御回路31が設けられ、室内機Uiには室内制御回路32が設けられている。室外制御回路31や室内制御回路32は、図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェース等の電子回路を含んで構成されている。そして、ROMに記憶されたプログラムを読み出してRAMに展開し、CPUが各種処理を実行するようになっている。
【0027】
室外制御回路31は、各センサの検出値や空調管理装置200からの指令に基づき、圧縮機11、室外ファン13、室外膨張弁14等を制御し、また、所定の信号を室内制御回路32に送信する。一方、室内制御回路32は、室外制御回路31から受信する信号や空調管理装置200からの指令に基づき、室内ファン17や室内膨張弁19を制御する。
【0028】
リモコンReは、赤外線通信等によって、室内制御回路32との間で所定の情報をやり取りする。例えば、空調の運転/停止、運転モードの設定、タイマ、設定温度の変更等に関する信号が、リモコンReから室内制御回路32に送信される。一方、室内制御回路32からリモコンReに送信される信号として、例えば、室内空気の温度や湿度に関する情報が挙げられる。
【0029】
<空調管理装置の構成>
図2に示す空調管理装置200は、空気調和機100による空調を管理したり、後記するように、各センサの検出値に基づいて、室内空気の湿度を推定したりする機能を有している。空調管理装置200は、図示はしないが、CPU、ROM、RAM、各種インタフェース等の電子回路を含んで構成され、通信線を介して室外制御回路31や室内制御回路32に接続されている。
【0030】
図3は、空調管理装置200の機能ブロック図である(適宜、図2を参照)。
図3に示すように、空調管理装置200は、記憶部210と、制御部220と、報知部230と、を備えている。
記憶部210には、所定のプログラムの他、回転速度−設計風量情報211と、設計体積効率情報212と、顕熱負荷情報213と、が格納されている。回転速度−設計風量情報211とは、室内ファン17の回転速度に対応する所定の設計風量を示す情報である。前記した「設計風量」とは、室内ファン17や室内熱交換器16の仕様に基づき、事前の実験等で得られる室内機Uiの風量である。
【0031】
なお、室内ファン17の回転速度が大きいほど、設計風量も大きくなる。そして、室内ファン17の回転速度に対応する設計風量を算出するための数式等が、回転速度−設計風量情報211として、予め記憶部210に格納されている。
【0032】
図3に示す設計体積効率情報212とは、圧縮機11(図2参照)の設計体積効率を示す情報である。前記した「設計体積効率」とは、圧縮機11の仕様に基づく体積効率であり、圧縮機11のモータ(図示せず)の回転速度等に基づいて算出される。
なお、記憶部210に格納されている顕熱負荷情報213については後記する。
【0033】
制御部220は、各センサの検出値や記憶部210のデータ等に基づき、所定の処理を実行する。図3に示すように、制御部220は、冷媒側熱交換量推定部221と、空気側熱交換量推定部222と、学習部223と、比較部224と、判定部225と、湿度推定部226と、空調制御部227と、を備えている。
【0034】
冷媒側熱交換量推定部221は、冷媒の温度や圧力等の検出値に基づいて、室内熱交換器16における冷媒側熱交換量Qrefを推定する。この冷媒側熱交換量Qrefの「冷媒側」とは、冷媒の温度や圧力等の検出値に基づいて推定された熱交換量であることを意味している。
【0035】
空気側熱交換量推定部222は、室内熱交換器16の吸込側・吹出側の空気の温度や、室内ファン17の回転速度の他、前記した回転速度−設計風量情報211に基づいて、室内熱交換器16における空気側熱交換量Qairとして推定する。この空気側熱交換量Qairの「空気側」とは、空気の温度等に基づいて推定された熱交換量であることを意味している。
【0036】
ところで、室内空気の湿度が高いときに冷房運転が行われると、室内熱交換器16の伝熱管(図示せず)の温度が露点を下回ることがある。その結果、空気中の水蒸気を水に状態変化させる潜熱負荷が生じる。この潜熱負荷は空気の温度変化に反映されないため、吸込側・吹出側の空気の温度差に基づく空気側熱交換量Qair(顕熱)が、冷媒側熱交換量Qref(全熱)よりも小さくなる。本実施形態では、このような冷媒側熱交換量Qrefと空気側熱交換量Qairとの大小関係に基づいて、潜熱の有無を判定するようにしている。
【0037】
図3に示す学習部223は、室内熱交換器16における空気の熱交換に潜熱が含まれていない(顕熱のみである)ことが既知であるときに、冷媒側熱交換量Qrefに対する空気側熱交換量Qairの比率(Qair/Qref)を学習する。
【0038】
図4は、室内熱交換器における空気の熱交換が顕熱負荷のみであるときの冷媒側熱交換量Qref及び空気側熱交換量Qairを示す説明図である。
なお、図4の横軸は、冷媒側熱交換量推定部221(図3参照)によって推定された冷媒側熱交換量Qrefである。図4の縦軸は、空気側熱交換量推定部222(図3参照)によって推定された空気側熱交換量Qairである。
【0039】
図4に示す複数の点は、室内熱交換器16における空気の熱交換が顕熱負荷のみであって、潜熱負荷がほとんどないことが既知の学習期間に得られたデータである。このような学習期間での運転モードとして、例えば、暖房運転の他、設定温度が所定値以上の冷房運転が挙げられる。
【0040】
学習部223(図3参照)は、所定の学習期間に得られた複数の冷媒側熱交換量Qrefや空気側熱交換量Qairを用いて、例えば、最小二乗法に基づき、図4に示す直線L1の数式を導く。なお、直線L1の数式に代えて、時系列的に得られる比率(Qair/Qref)の移動平均を学習部223が算出するようにしてもよい。
【0041】
学習期間においては、前記したように、室内熱交換器16における空気の熱交換において潜熱がほとんど含まれないため、その全熱が顕熱に略等しくなる。その結果、冷媒側熱交換量Qref(全熱)と空気側熱交換量Qair(顕熱)とが略等しくなり、直線L1の傾きが“1”に近い値になる。
【0042】
この直線L1の傾きをaとすると、学習部223は、例えば、傾きが(a+b1)の直線L11よりも下側であり、かつ、傾きが(a−b1)の直線L12よりも上側の所定範囲を学習する。別の観点から説明すると、学習部223は、室内熱交換器16での熱交換がほとんど顕熱のみであるときの比率(Qair/Qref)に関して、(a−b1)≦(Qair/Qref)≦(a+b1)の範囲を示す顕熱負荷情報213(図3参照)を記憶部210に格納する。
【0043】
図3に示す比較部224は、空調運転中に、冷媒側熱交換量Qrefと空気側熱交換量Qairとの大小を比較する。
判定部225は、比較部224の比較結果に基づき、室内熱交換器16での空気の熱交換に関して、潜熱の有無を判定する。
【0044】
湿度推定部226は、室内熱交換器16での空気の熱交換に潜熱が含まれる場合、室内熱交換器16に向かう空気の湿度を推定する。
空調制御部227は、湿度推定部226の推定結果等に基づいて、所定の空調制御を実行する。
【0045】
報知部230は、湿度推定部226の推定結果等を報知する。このような報知部230として、例えば、ディスプレイが挙げられる。その他、報知部230が所定の通信機能を有し、湿度推定部226の推定結果等をリモコンRe(図2参照)やユーザの携帯端末300(図1参照)に報知するようにしてもよい。
【0046】
<空調管理装置の処理>
図5は、空調管理装置200が備える制御部220の処理を示すフローチャートである(適宜、図2図3を参照)。
なお、図5の「START」時には、前記した顕熱負荷情報213が既に学習されているものとする。また、図5の処理中、リモコンReからの指令に基づき、空気調和機100が冷房運転を実行しているものとする。
【0047】
また、室内空気の湿度を推定する際(つまり、S101〜106の処理を行う際)、制御部220が、室内熱交換器16での空気の熱交換に潜熱が含まれる(室内熱交換器16の温度が露点を下回る)ように、室内熱交換器16を蒸発器として機能させる処理を行うことが好ましい。例えば、制御部220が、リモコンReからの指令に基づく所定温度よりも低い設定温度で冷房運転を開始させてもよい。これによって、後記するように、湿度センサ(図示せず)がなくても、室内空気の湿度を推定できるからである(S106)。
【0048】
ステップS101において制御部220は、冷媒側熱交換量推定部221によって、室内熱交換器16の冷媒側熱交換量Qrefを推定する(冷媒側熱交換量推定ステップ)。具体的に説明すると、制御部220は、まず、吸入圧力センサ21の検出値と、吸入温度センサ22の検出値と、圧縮機11の吸入側の冷媒過熱度と、に基づいて、圧縮機11の吸入側の冷媒密度を算出する。なお、圧縮機11の吸入側の冷媒過熱度は、事前の実験に基づき、所定の値が予め記憶されているものとする。
【0049】
そして、制御部220は、圧縮機11の吸入側の冷媒密度と、圧縮機11の行程容積と、圧縮機モータ(図示せず)の回転速度と、圧縮機11の設計体積効率と、に基づいて、冷媒回路Fにおける単位時間当たりの冷媒循環量を算出する。なお、圧縮機11の行程容積は、既知であるものとする。また、圧縮機11の設計体積効率は、前記した設計体積効率情報212(図3参照)に基づいて推定される。
【0050】
さらに、制御部220は、吐出圧力センサ23の検出値と、冷媒温度センサ25,26の検出値と、に基づいて、室内熱交換器16の一端側・他端側(つまり、入口側・出口側)における冷媒の比エンタルピ差を算出する。
【0051】
そして、制御部220は、室内熱交換器16の一端側・他端側における冷媒の比エンタルピ差と、前記した冷媒循環量と、に基づいて、室内熱交換器16の冷媒側熱交換量Qrefを推定する。このように、制御部220は、室内熱交換器16の一端側・他端側の冷媒の温度を含む情報に基づき、室内熱交換器16における冷媒側熱交換量Qrefを推定する。
【0052】
次に、ステップS102において制御部220は、空気側熱交換量推定部222によって、室内熱交換器16の空気側熱交換量Qairを推定する(空気側熱交換量推定ステップ)。具体的に説明すると、制御部220は、まず、回転速度−設計風量情報211を参照し、室内ファン17の回転速度に対応する設計風量を算出する。そして、制御部220は、前記した設計風量と、吸込空気温度センサ27の検出値と、吹出空気温度センサ28の検出値と、に基づいて、室内熱交換器16の空気側熱交換量Qairを推定する。
【0053】
このように、制御部220は、室内熱交換器16に向かう空気の温度、室内熱交換器16で熱交換した空気の温度、及び、室内ファン17の回転速度に対応する設計風量に基づいて、室内熱交換器16における空気側熱交換量Qairを推定する。
【0054】
次に、ステップS103において制御部220は、比較部224によって、冷媒側熱交換量Qrefよりも空気側熱交換量Qairのほうが小さいか否かを判定する。
【0055】
図6は、室内熱交換器での熱交換に潜熱が含まれる場合の点(Qref,Qair)の例を示す説明図である。
なお、図6の横軸は冷媒側熱交換量Qrefであり、縦軸は空気側熱交換量Qairである。また、図6に示す斜線部分は、室内熱交換器16での空気の熱交換が顕熱負荷のみであると想定される範囲である。
【0056】
例えば、点P1に着目すると、冷媒側熱交換量Q1refよりも空気側熱交換量Q1airのほうが小さく、さらに、点(Q1ref,Q1air)が斜線部分の所定範囲から逸脱している。これは、室内熱交換器16における空気の熱交換に潜熱が含まれていたからである。つまり、室内機Ui(図2参照)に吸い込まれた空気に含まれる水蒸気が室内熱交換器16(図2参照)に結露する際、潜熱が生じたからである。なお、図6に示す他の点についても同様である。
【0057】
図5のステップS103において冷媒側熱交換量Qrefよりも空気側熱交換量Qairのほうが小さい場合(S103:Yes)、制御部220の処理はステップS104に進む。
ステップS104において制御部220は、比率(Qair/Qref)が所定範囲外であるか否かを判定する。
【0058】
図7は、比率(Qair/Qref)の時間的推移の例を示す説明図である。
なお、図7の横軸は時刻であり、縦軸は比率(Qair/Qref)である。図7の例では、室内熱交換器16での空気の熱交換が顕熱負荷のみであるときの比率(Qair/Qref)の範囲として、α≦(Qair/Qref)≦βが設定されている。これが、前記した顕熱負荷情報213(図3参照)である。また、図7の例では、時刻t1,t2,t3のそれぞれにおいて、比率(Qair/Qref)が、所定値αよりも小さくなっている。
【0059】
なお、時系列的に算出された複数の比率(Qair/Qref)の移動平均を制御部220が算出し、この移動平均が所定範囲α≦(Qair/Qref)≦βから外れたか否かを判定するようにしてもよい(S104)。
その他、比率(Qair/Qref)を制御部220が算出する際、図6に示す複数の点(Qref,Qair)の近似直線L2を最小二乗法で算出し、この近似直線L2の傾きが所定範囲α≦(Qair/Qref)≦βから外れているか否かを判定するようにしてもよい(S104)。
【0060】
図5のステップS104において比率(Qair/Qref)が所定範囲外である場合(S104:Yes)、制御部220の処理はステップS105に進む。
ステップS105において制御部220は、判定部225によって、室内熱交換器16における空気の熱交換に潜熱が含まれている(「潜熱あり」)と判定する。
【0061】
次に、ステップS106において制御部220は、湿度推定部226によって、室内熱交換器16に向かう空気の湿度を推定する(湿度推定ステップ)。
【0062】
図8は、室内熱交換器の吸込側・吹出側の空気の温湿度に関する空気線図である。
なお、図8の横軸は、空気の乾球温度であり、縦軸は、空気の絶対湿度である。また、曲線Rは、相対湿度が100[%]の状態を示す曲線である。また、点P2は、室内熱交換器16に向かう吸込空気の温湿度の例であり、点P3は、この吸込空気が室内熱交換器16で熱交換した後の吹出空気の温湿度を示している。
【0063】
冷房運転中、室内熱交換器16での空気の熱交換に潜熱が含まれる場合には、吹出側の空気の温度が露点を下回る。つまり、空気線図上では、吹出空気の状態を示す点P3が相対湿度100%の曲線R上にある。したがって、吹出空気温度センサ28(図2参照)の検出値(点P3では、乾球温度10℃)と、「潜熱あり」との判定結果(S105)と、に基づき、空気線図上での点P3の位置が確定される。
【0064】
一方、吸込側の空気に関しては、吸込空気温度センサ27(図2参照)の検出値(点P2では、乾球温度が約27℃)に基づき、点P2が破線L3上に存在することが分かる。そこで、制御部220は、冷媒側熱交換量Qref(全熱:顕熱+潜熱)に対する空気側熱交換量Qair(顕熱)の比率(Qair/Qref)に基づいて、吸込空気の湿度(点P2の位置)を推定する。なお、図8の空気線図に相当するデータが、例えば、データテーブルとして記憶部210(図3参照)に予め格納されているものとする。
【0065】
このように制御部220は、室内熱交換器16における空気の熱交換に潜熱が含まれる場合には(図5のS105)、室内空気の湿度を推定する(S106)。つまり、制御部220は、室内熱交換器16に向かう空気の温度、室内熱交換器16で熱交換した空気の温度、冷媒側熱交換量Qref、及び空気側熱交換量Qairに基づいて、室内熱交換器16に向かう空気の湿度を推定する(S106)。これによって、室内機Ui(図2参照)に湿度センサが設けられていなくても室内空気の湿度を推定できるため、空気調和機100の製造コストを削減できる。
【0066】
図5のステップS107において制御部220は、ステップS106で算出した湿度(例えば、相対湿度)が所定値以上であるか否かを判定する。この所定値は、除湿運転(S108)を行うか否かの判定基準となる閾値であり、予め設定されている。前記した湿度が所定値以上である場合(S107:Yes)、制御部220の処理はステップS108に進む。
【0067】
ステップS108において制御部220は、除湿運転を実行する(空調制御ステップ)。例えば、制御部220は、除湿運転を行う際、室内膨張弁19の開度を小さくする指令信号を生成し、空気調和機100に送信する。これによって、室内熱交換器16(蒸発器)に流入する冷媒の蒸発温度が低くなり、この冷媒の過熱度が大きくなるため、除湿運転を行うことができる。
【0068】
その他、除湿運転を行う際、制御部220が、室内ファン17の回転速度を小さくする指令信号を生成し、空気調和機100に送信するようにしてもよい。このような制御でも、室内熱交換器16(蒸発器)に流入する冷媒の過熱度が大きくなるため、除湿運転を行うことができる。なお、除湿運転(S108)を所定時間行った後、制御部220が再び冷房運転を行うようにしてもよい。
【0069】
また、ステップS107において湿度が所定値未満である場合(S107:No)、制御部220は、除湿運転を行うことなく、一連の処理を終了する(END)。つまり、制御部220は、除湿運転を行わずに、冷房運転を継続する。湿度が低い場合には、除湿運転を行う必要は特にないからである。
【0070】
また、ステップS103においてQref≦Qairである場合や(S103:No)、ステップS104において比率(Qair/Qref)が所定範囲内である場合(S104:No)、制御部220の処理はステップS109に進む。
【0071】
ステップS109において制御部220は、判定部225によって、室内熱交換器16における空気の熱交換に潜熱が含まれていない(「潜熱なし」)と判定する。この場合には、室内空気の湿度がそれほど高くないため、除湿運転を行う必要は特にない。
ステップS109の処理を行った後、制御部220は、一連の処理を終了する(END)。
【0072】
なお、図5では省略しているが、ステップS106で推定された湿度の履歴情報が記憶部210(図3参照)に記憶されるようにしてもよい。そして、記憶部210に記憶された湿度の履歴情報を制御部220がリモコンRe(図2参照)又は携帯端末300(端末機:図1参照)に送信するようにすることが好ましい。これによって、室内空気の湿度の時間的な変化をユーザが容易に把握できる。また、制御部220が、室内空気の湿度や比率(Qair/Qref)の履歴情報を遠隔監視センタ(図示せず)に送信するようにしてもよい。この遠隔監視センタのコンピュータ(図示せず)も「端末機」に含まれる。
【0073】
<効果>
本実施形態によれば、冷媒側熱交換量Qrefと、空気側熱交換量Qairと、の大小関係等に基づいて(図5のS103,S104)、室内熱交換器16での空気の熱交換に潜熱が含まれているか否かを制御部220が判定する(S105,S109)。そして、前記した熱交換に潜熱が含まれると判定した場合(S105)、制御部220は、室内空気の湿度を推定する(S106)。
【0074】
これによって、室内機Uiに湿度センサ(図示せず)が設けられていなくても、室内空気の湿度を正確に推定できるため、空気調和機100の製造コストを削減できる。また、室内空気の湿度に基づき、制御部220が除湿運転を適宜に行うことで(図5のS108)、快適性の高い空調を行うことができる。特に、高温多湿の地域に空気調和機100が設けられる場合には、本実施形態の制御が有効である。
【0075】
≪変形例≫
以上、本発明に係る空調システムWについて実施形態で説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、実施形態では、冷媒側熱交換量Qrefよりも空気側熱交換量Qairのほうが小さく(図5のS103:Yes)、かつ、比率(Qair/Qref)が所定範囲外である場合(S104:Yes)、制御部220が湿度を推定する処理(S106)について説明したが、これに限らない。例えば、ステップS105の判定処理を省略し、冷媒側熱交換量Qrefよりも空気側熱交換量Qairの方が小さい場合、室内熱交換器16に向かう空気の湿度を制御部220が推定するようにしてもよい。このような処理でも、室内空気の湿度を適切に算出することが可能である。
【0076】
また、実施形態では、制御部220(図3参照)が学習部223(図3参照)を備える構成について説明したが、この学習部223を省略してもよい。そして、室内熱交換器16での空気の熱交換に潜熱が含まれないような運転条件で空調が行われた場合において、比率(Qair/Qref)が“1”に略等しいとき、制御部220が、室内空気の湿度を推定するようにしてもよい。具体的には、暖房運転中、又は、設定温度が所定値以上である冷房運転中、冷媒側熱交換量Qrefと空気側熱交換量Qairとが略等しい場合において、その後に設定温度が前記した所定値未満である冷房運転を行うとき、制御部220が、室内空気の湿度を推定する。これによって、室内空気の湿度の推定に関する誤差をさらに小さくすることができる。
【0077】
また、例えば、室内熱交換器16やエアフィルタ18に塵埃が付着していると、室内ファン17の回転速度に対応する設計風量よりも実際の風量の方が小さくなる。その結果、冷媒側熱交換量Qrefよりも空気側熱交換量Qairの方が大きくなることがある。
また、圧縮機11において圧縮室(図示せず)のシール性が低下すると、圧縮室から冷媒が漏れやすくなるため、冷媒側熱交換量Qrefよりも空気側熱交換量Qairの方が小さくなることもある。
そこで、比率(Qair/Qref)が「所定範囲」内である場合に制御部220が室内空気の湿度を推定する処理に関して、さらに次の処理を行うようにしてもよい。すなわち、暖房運転中、又は、設定温度が所定値以上である冷房運転中、冷媒側熱交換量Qref及び空気側熱交換量Qairのうち一方が他方よりも大きい場合、制御部220が、前記した「所定範囲」を補正するようにしてもよい。つまり、室内熱交換器16での空気の熱交換に潜熱が含まれていないと想定されるときの比率(Qair/Qref)に基づき、制御部220が「所定範囲」を補正(学習)するようにしてもよい。これによって、室内熱交換器16等に塵埃が付着していたり、圧縮機11が劣化したりしても、制御部220が、室内空気の湿度を高精度で推定できる。
【0078】
また、実施形態では、空調管理装置200が空気調和機100に指令信号を出力する構成について説明したが、これに限らない。例えば、次に説明するように、空調管理装置200が、空気調和機100及び除湿機400(図9参照)の両方に指令信号を出力する構成であってもよい。
【0079】
図9は、変形例に係る空調システムWAを含む概略的な構成図である。
図9に示すように、空調システムWAは、空気調和機100と、空調管理装置200と、除湿機400と、を備えている。空調管理装置200は、通信線Mを介して室外機Uoや室内機Uiに接続されるとともに、通信線Mを介して除湿機400にも接続されている。つまり、室内ファン17の駆動に伴って空気調和された空気が吹き出される空調対象空間に設けられる除湿機400と、空調管理装置200の制御部220(図3参照)と、が互いに通信可能になっている。図9に示す除湿機400は、主に除湿を行う機器である。なお、除湿機400の構成について周知であるから、詳細な説明を省略する。
【0080】
このような構成において、空調管理装置200の制御部220(図3参照)は、室内空気の湿度が所定値未満である場合には、除湿運転を行わせる信号を除湿機400に出力する。このように、室内空気の湿度がそれほど高くない場合には、除湿機400のみに除湿運転を行わせることで、空調の高効率化を図ることができる。なお、前記した場合において、空気調和機100は停止状態であってもよいし、また、冷房運転等を行っていてもよい。
一方、室内空気の湿度が前記した所定値以上である場合、制御部220は、除湿運転を行わせる信号を除湿機400に出力するとともに、冷媒回路F(図2参照)を用いて除湿運転を行う。これによって、除湿機400では足りない分の除湿を空気調和機100の運転で補うことができる。
【0081】
また、空気の熱交換に潜熱が含まれるように室内熱交換器16を蒸発器として機能させる処理中、室内空気の湿度の履歴情報が記憶部210に記憶される場合において、制御部220が次の処理を行うようにしてもよい。すなわち、制御部220が、室内空気の湿度の履歴情報に基づいて、将来の湿度を予測し、その予測結果に基づいて、前記した処理を将来に行う際の冷房運転の設定温度を決めるようにしてもよい。その一例を挙げると、制御部220は、直近の数日間に推定した室内空気の湿度の移動平均を算出し、この移動平均に基づいて、次回に湿度を推定する際の冷房運転時の設定温度を決定する。これによって、湿度を推定する際の冷房運転の設定温度が高すぎたり、また、低すぎたりすることを防止できる。
【0082】
また、空気の熱交換に潜熱が含まれるように室内熱交換器16を蒸発器として機能させる処理を行う際、制御部220が、通常の冷房運転時よりも風量を小さくするか、又は、室内機Ui(図2参照)の上下方向の風向を通常の冷房運転時よりも水平に近づけることが好ましい。これによって、室内空気の湿度を推定する際、冷風が下方に吹き降ろされることを抑制し、ひいては、ユーザにとっての快適性を高めることができる。
【0083】
また、空気の熱交換に潜熱が含まれるように室内熱交換器16を蒸発器として機能させる処理を行う際、制御部220が、室内熱交換器16を蒸発器として機能させ、この室内熱交換器16を凍結させることが好ましい。より詳しく説明すると、制御部220からの指令に応じて、室外制御回路31や室内制御回路32が、圧縮機11を駆動し、さらに、通常の冷房運転時よりも室内膨張弁19の開度を小さくする。これによって、低圧で蒸発温度の低い冷媒が室内熱交換器16に流入するため、空気中の水分が室内熱交換器16に着霜し、その霜や氷が成長しやすくなる。このとき、室内熱交換器16での空気の熱交換には潜熱が確実に含まれるため、室内空気の湿度を高精度で推定できる。
【0084】
そして、室外制御回路31や室内制御回路32は、室内熱交換器16を凍結させた後、室内熱交換器16を解凍する。例えば、圧縮機11や室内ファン17が停止状態にされることで、室内熱交換器16の霜や氷が室温で自然解凍され、室内熱交換器16のフィン(図示せず)を伝って多量の水が流れ落ちる。その結果、室内熱交換器16の塵埃が洗い流される。このような室内熱交換器16の洗浄方法を「凍結洗浄」という。
なお、前記した「凍結洗浄」に代えて、室内熱交換器16を蒸発器として機能させ、この室内熱交換器16を結露させてもよい。このような「結露洗浄」によっても、室内熱交換器16の塵埃が洗い流される。また、「結露洗浄」を行っているときに制御部220が室内空気の湿度を推定することが好ましい。このような方法でも、室内空気の湿度を高精度で推定できる。
【0085】
また、リモコンReや携帯端末300の指令に応じて、制御部220が、室内空気の湿度を推定する処理を開始するようにしてもよい。これによって、空気調和機100の湿度をユーザが確かめたいとき、室内空気の湿度の推定結果をリモコンRe等に表示させることができる。
【0086】
また、各実施形態では、空調システムW(図2参照)が空調管理装置200を備える構成について説明したが、これに限らない。例えば、空調管理装置200を省略し、湿度の推定に関する一連の処理を室外制御回路31(制御部)や室内制御回路32(制御部)が行うようにしてもよい。
【0087】
また、各実施形態では、複数の室内機Ui(図1参照)が設けられるマルチ型の空気調和機100について説明したが、これに限らない。例えば、室内機と室外機とが一台ずつ設けられた壁掛型の空気調和機(図示せず)の他、さまざまな種類の空気調和機に各実施形態を適用可能である。
【0088】
なお、湿度の推定等の処理(図5参照)をコンピュータに実行させるためのプログラムを通信回線を介して提供することが可能であり、また、CD−ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0089】
また、各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0090】
11 圧縮機
12 室外熱交換器(凝縮器/蒸発器)
13 室外ファン
14 室外膨張弁(膨張弁)
15 四方弁
16 室内熱交換器(蒸発器/凝縮器)
17 室内ファン
18 エアフィルタ
19 室内膨張弁(膨張弁)
31 室外制御回路(制御部)
32 室内制御回路(制御部)
53 フィルタ清掃部
100 空気調和機
200 空調管理装置
210 記憶部
220 制御部
230 報知部
300 携帯端末(端末機)
400 除湿機
F 冷媒回路
Re リモコン
W,WA 空調システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9