(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6971413
(24)【登録日】2021年11月4日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】資産をデジタル資産に変換するための資産処理方法とシステム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/06 20120101AFI20211111BHJP
G06Q 20/06 20120101ALI20211111BHJP
【FI】
G06Q40/06
G06Q20/06
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2021-1738(P2021-1738)
(22)【出願日】2021年1月7日
【審査請求日】2021年1月7日
(31)【優先権主張番号】202010991381.X
(32)【優先日】2020年9月21日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521012474
【氏名又は名称】江蘇傲為控股有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白杰
【審査官】
関 博文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−132209(JP,A)
【文献】
特開2020−027592(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第110619522(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第110458568(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックチェーンネットワークに基づく分割デジタル資産処理スマート・コントラクトを配置することを含み、
前記分割デジタル資産処理スマート・コントラクトは、
資産の属性データを確定するステップと、
前記資産の前記属性データに基づいて、前記資産を単独で使用可能でありかつ前記資産の使用条件を表徴する属性データ部分集合を確定するステップと、
前記属性データ部分集合と資産処分権益データとをバインドして、前記属性データ部分集合に対応する分割デジタル資産を生成するステップと、
前記分割デジタル資産に基づくオンライン取引を実行するために、デジタル署名された前記分割デジタル資産をネットワーク取引プラットフォームに公表するステップと、
を実行するように配置され、
前記分割デジタル資産処理スマート・コントラクトは、さらに
前記分割デジタル資産を複数等分の等分デジタル資産に分割し、前記分割デジタル資産と前記等分デジタル資産のそれぞれに対して単独のデジタル署名操作を実行して、全体取引や持分取引を行うことができるデジタル資産を形成し、この等分デジタル資産集合で前記分割デジタル資産を表現するステップと、
前記分割デジタル資産をさらに次のレベルのデジタル資産に分解して、デジタル資産分割ツリーを形成し、前記分割ツリーのすべてのノードを取引可能なデジタル資産とするステップと、
を実行するように配置され、
前記属性データには、時間属性データと、前記資産を十分かつ効果的に使用させる権利属性データと、が含まれ、
前記属性データにおける前記時間属性を複数の時間帯に分割するステップと、前記時間帯に、前記資産を単独で使用する原則で前記資産に基づいて機能を実現することができる権利属性を配置し、この配置結果に基づいて少なくとも1個の属性データ部分集合を生成するステップと、に従って、前記資産を単独で使用可能な少なくとも1個の属性データ部分集合を確定し、
異なる属性データ部分集合の共通部分には、1個以上の属性が含まれている、
ことを特徴とする資産をデジタル資産に変換するための資産処理方法。
【請求項2】
前記資産は、関連性及び/又は非関連性を有する複数の資産を含む資産データパケットである、
ことを特徴とする請求項1に記載の資産処理方法。
【請求項3】
ブロックチェーンネットワークに基づく資産処理プラットフォームと、分割デジタル資産に基づくオンライン取引を実行するように配置されるネットワーク取引プラットフォームと、を備える資産をデジタル資産に変換するための資産処理システムであって、
前記資産処理プラットフォームは、ブロックチェーンネットワークに基づく分割デジタル資産処理スマート・コントラクトを配置し、
前記分割デジタル資産処理スマート・コントラクトは、
資産の、時間属性データと、前記資産を十分かつ効果的に使用させる権利属性データと、を含む属性データを確定するステップと、
前記属性データにおける前記時間属性を複数の時間帯に分割するステップと、
前記時間帯に、前記資産を単独で使用する原則で前記資産に基づいて機能を実現することができる権利属性を配置し、この配置結果に基づいて少なくとも1個の属性データ部分集合を生成するステップと、
前記資産の使用条件を表徴する前記属性データ部分集合と資産処分権益データとをバインドして、前記属性データ部分集合に対応する分割デジタル資産を生成するステップと、
分割デジタル資産に基づくオンライン取引を実行するために、デジタル署名された前記分割デジタル資産をネットワーク取引プラットフォームに公表するステップと、
を実行するように配置され、
前記分割デジタル資産処理スマート・コントラクトは、さらに
前記分割デジタル資産を複数等分の等分デジタル資産に分割し、この分割デジタル資産集合で前記分割デジタル資産を表現するステップと、
前記分割デジタル資産と前記等分デジタル資産とのそれぞれに対して単独のデジタル署名操作を実行して、全体取引や持分取引を行うことができるデジタル資産を形成するステップと、
前記分割デジタル資産をさらに次のレベルのデジタル資産に分解して、デジタル資産分割ツリーを形成し、前記分割ツリーのすべてのノードを取引可能なデジタル資産とするステップと、
を実行するように配置され、
前記属性データには、時間属性データと、資産を十分かつ効果的に使用させる権利属性データと、が含まれ、
前記属性データにおける前記時間属性を複数の時間帯に分割するステップと、前記時間帯に、前記資産を単独で使用する原則で前記資産に基づいて機能を実現することができる権利属性を配置し、この配置結果に基づいて少なくとも1個の属性データ部分集合を生成するステップと、に従って、前記資産を単独で使用可能な少なくとも1個の属性データ部分集合を確定し、
異なる属性データ部分集合の共通部分には、1個以上の属性が含まれている、
ことを特徴とする資産をデジタル資産に変換するための資産処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、インターネットデータ処理に関し、特にブロックチェーンネットワークに基づく資産処理に関する。
【0002】
資産は、一般に過去の取引や事項によって形成された、経済的収益を創出することが予期される資源を意味する。資産の構成は、ある程度の複雑さがあり、例えば、資産回転特徴の相違によって、流動資産、固定資産、無形資産などに区分されることができる。資産は、自然資源と社会資源とに起源する複雑なものであり、取引などの手段によってその価値を創造することができ、様々の形態があり、例えば、固定資産には、一般に機械、工場建物などの有形物が含まれ、無形資産には、特許権、著作権などの無形物が含まれる。これらの「物」が資産として価値を創造する根本的原因は、それが使用価値があり、つまり使用属性があるため、資産は、流動や流通により、その権利を求める者に集結されて、権利者の社会的属性によってその使用属性に関する革新、創造のための自然資源関連の製品、設備の使用を組織し、動員させることができる。よって、資産の流動性は、自然資源の組織化や利用効率に大きな影響を与える。
【0003】
鍵となる問題は、どのように資産を処理して取引などの形式による流動に有利にするかである。従来の方法は、資産を販売しようとする商品としてプラットフォームなどのルートで宣伝し、取引などによって特定の取引先に譲渡する。この方法の欠点は、取引先の数が少ないので、取引が大幅に制限されることである。例えば、知的財産権における特許資産取引を例として、特許取引の前提は、売り手が自分の特許を販売することである。しかしながら、多くの権利者は、自分の市場を保護するために特許を出願し、販売のために出願するのではないため、特許取引は、必然的に小衆的行為とされてしまう。なお、競争者にも、通常的に各自の技術準備があり、製品や特許の衝突が存在するとしても、それは発生確率が非常に低いため(特許権侵害訴訟の件数は、特許出願や有効登録の件数よりはるかに少ない)、訴訟リスクによる特許取引は、必然的に小衆的行為とされてしまう。また、特許とそれに係る実物資産(例えば、ソフトウェア、生産プロセス、技術秘密、データ成果などのような仮想の実物資産の場合もある)は、不可分割性を有し、単純な特許目的としての特許取引は、一般に少数の特許衝突がある競争者同士に限定されるので、特許取引は、必然的に小衆的行為とされてしまう。なお、特許資産の産業化の深さが悪くなる、または、低くなるほど、特許資産の取引が不確定になるので、特許資産の取引を実現しにくい。
【0004】
どのように資産を処理して、この資産を高頻度取引対象に変換させて多くの人が取引に参与する形式でその流通を促進し、さらに自然資産がより合理的に組織され利用されるのに有利であるかは、解決すべき緊急な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術的問題によれば、本願が解決しようとする課題は、資産自体の属性に基づいて、低頻度取引の資産を高頻度取引のデジタル資産に変換するための資産処理方法とシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る資産をデジタル資産に変換するための資産処理方法は、ブロックチェーンネットワークに基づく分割デジタル資産処理
スマート・コントラクトを予め配置し、
前記分割デジタル資産処理
スマート・コントラクトは、
資産の属性データを確定するステップと、
資産の属性データに基づいて、前記資産を単独で使用可能な属性データ部分集合を確定するステップと、
前記属性データ部分集合と資産処分権益データとをバインドして、前記属性データ部分集合に対応する分割デジタル資産を生成するステップと、
分割デジタル資産に基づくオンライン取引を実行するために、デジタル署名された分割デジタル資産をネットワーク取引プラットフォームに公表するステップと、
を実行するように配置されている。
【0007】
本願に係る資産をデジタル資産に変換するための資産処理方システムは、ブロックチェーンネットワークに基づく資産処理プラットフォームと、分割デジタル資産に基づくオンライン取引を実行するように配置されるネットワーク取引プラットフォームと、を備え、
前記資産処理プラットフォームは、ブロックチェーンネットワークに基づく分割デジタル資産処理
スマート・コントラクトを配置し、
前記分割デジタル資産処理
スマート・コントラクトは、
資産の、時間属性データと、資産を十分かつ効果的に使用させる権利属性データと、を含む属性データを確定するステップと、
属性データにおける時間属性を複数の時間帯に分割するステップと、
前記時間帯に、資産を単独で使用する原則で資産に基づいて機能を実現することができる権利属性を配置し、この配置結果に基づいて少なくとも1個の属性データ部分集合を生成するステップと、
資産の使用条件を表現する前記属性データ部分集合と資産処分権益データとをバインドして、前記属性データ部分集合に対応する分割デジタル資産を生成するステップと、
分割デジタル資産に基づくオンライン取引を実行するために、デジタル署名された分割デジタル資産をネットワーク取引プラットフォームに公表するステップと、
を実行するように配置されている。
【0008】
本願の技術方案による技術的効果は、本願の実施形態で説明する。
【0009】
本願の実施例や従来技術における技術的解決手段をより明瞭に説明するために、以下、実施例に必要な図面について簡単に説明するが、以下に記載した図面は、単純に本願の実施例の一部にすぎず、当業者であれば、創造的な働き無しで、これらの図面に基づいて他の図面を得ることもできるのは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】資産をデジタル資産に変換することができる資産処理の実施例のフローチャートである。
【
図2】資産をデジタル資産に変換することができる資産処理システムを説明するための図である。
【
図3】資産を分割デジタル資産に変換することについて説明するための図である。
【
図4】デジタル資産データデータパケットツリーとデジタル資産分割ツリーとを含むデジタル資産の派生の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
経済的および技術的観点によると、人間社会における自然資源の組織と利用効率とは、人間の需要に依存する。資産的観点によると、使用価値があり、経済的収益を創出する一般的意味での資産は、小衆的需要、低頻度取引から大衆的需要、高頻度取引に変換可能であることを満たすと、資産流通を加速化することにより、自然資産の組織、利用効率を比較的高い水準に達することに有利である。ここで、固定資産、知的財産権などのような各種の資産をオンラインでの取引可能なデジタル資産に変換させることは、鍵となる環節である。
【0012】
デジタル資産は、一般に電子データの形で存在する非貨幣性資産であり、一般的意味での資産をデジタル資産に変換してのみ、その高い流動性を実現することができる。資産は、主に取引によって経済的収益を創出し、その鍵となるのは、使用価値があるためであるので、各種や各項の具体的な資産には、いずれもそれ自身が客観的に有する使用可能な属性が存在している。本願に係る資産をデジタル資産に変換する実施例では、資産が有している客観的属性を利用して、あるいはその属性に基づいて、資産を電子データの形の取引可能なデジタル資産に変換する。
【0013】
図1に示す流れに従って、予め配置されたブロックチェーンネットワークに基づく分割デジタル資産処理
スマート・コントラクトが1個の変換しようとする資産を獲得した後、ステップ1で資産の属性データを確定する。本例では、前記資産は、知的財産権における音楽作品(例えば、XX.MP3)のような著作権類の資産である。音楽作品として、前記資産の使用可能な属性データには、法律によって与えられた属性と権利者が資産の自然状況に応じて確定するカスタム属性とが含まれ、後者は、取引者双方が資産の自然状況に応じて協議したカスタム属性であることもでき、特に、実物資産、例えばその設備がこの場合に属することが多い。ここで、法律によって与えられた属性には、例えば、複製権、発行権、貸与権、上演・演奏権、公衆送信権、公の伝達権、翻案権、翻訳権、編集権が含まれている。カスタム属性には、例えば、権利や権利の集合体の行使期間や回数、権利の行使地域、行使対象が含まれている。例えば、作品XX.MP3の上演・演奏権は、特定の劇場に限定されている。
【0014】
資産の属性における異なる属性や属性の組み合わせにより、資産が創出する経済的収益の程度も異なり、したがって、ステップ1では、取引可能なデジタル資産の生成に有利である属性データ、例えば時間属性データと、資産を十分かつ効果的に使用させるのに有利である権利属性データとを選択することにより、取引需要者が取得したデジタル資産を十分に使用して、経済的利益を創出ことができ、さらに、デジタル資産の流通を促進させることができる。
【0015】
例示として、本例では、作品XX.MP3において、最終的に選択して確定した属性データは、{上演・演奏権、複製発行権、演奏期間、上演・演奏地域、上演・演奏条件、作品の発行時間と地域}である。
【0016】
ステップ2では、属性データ部分集合を確定する。前記部分集合の属性に従って資産を使用し、資産使用に矛盾が発生しないように、ステップ1の結果を基に、前記資産を単独で使用することができる属性データ部分集合を確定する。
【0017】
ステップ2の結果は、一般に取引可能なデジタル資産を計画するための属性部分集合表を生成するのであり、具体的には表1を参照されたい。前記属性部分集合表は、実質的に資産自体の使用関係を反映する。例えば、1件の音楽作品は、演唱や上演・演奏によって宣伝される。一人の演技者による宣伝速度が複数の演技者による宣伝速度より遅く、かかる資源の利用率や活躍度にも顕著な差異があることは勿論である。したがって、属性部分集合で作品自体の使用(つまり、上演・演奏)を制限することは、作品の並行宣伝に有利であり、作品の利用率を向上させることで、客観的により多くの自然資源の使用を動員させることができ、例えば、直接的には上演・演奏場所、演奏設備などの使用頻度を向上させ、間接的には交通手段の使用頻度を向上させるなどことができる。前記属性データ部分集合は、資産が同じ時間帯で異なる需要者や権利者が異なる形式で並行使用されることができるように、資産の使用条件を表徴するためのものであるのは勿論である。
【0018】
【表1】
ステップ3では、分割デジタル資産を生成する。通常の資産取引形式においては、資産は一体として取引に参与され、理論的には、1個の資産は1人の需要者によって獲得され、資産自体がどのような属性及びいくつの属性を有するかに関わらず、一体として取引に参与されるので、資産の単独で経済的収益を創出できる一部が強制的にバインドされ、一部の需要者の参与が大幅に制限され、資産の高頻度の循環や流通の実現が難しくなる。
【0019】
ステップ3の具体的な操作は、前記属性データ部分集合と資産処分権益データとをバインドする。前記資産処分権益データには、許可タイプ、資産の引渡しと審査などを表明するためのデータなどのような資産を処分する権利や義務データなどが含まれ、こられのデータは、資産の相違や属性の相違に応じて比較的大きな差異がある。異なる属性データ部分集合に対応する資産処分権益データも異なり、各属性データ部分集合と資産処分権益データとを組み合わせて、XX.MP3の分割デジタル資産として対応する電子データ契約を生成する。本例では、前記電子データ契約には、さらに作品であるXX.MP3が付随されている。
【0020】
ステップ3の結果は、一般に分割デジタル資産表を生成するのであり、この表には、電子データ契約の非標準条項の詳細内容が記載されており、具体的には表2を参照されたい。
【0021】
【表2】
このステップの中核は、資産に対して論理的な分解を行い、前記属性データ部分集合を利用して対応する分割デジタル資産を生成するのであり、つまり、1個の具体的な属性データ部分集合は、1個の分割デジタル資産に対応するか、あるいは、属性データ部分集合の数は、1個の資産が論理的に分解されて生成された分割デジタル資産の数である。多くの例では、異なる属性データ部分集合の共通集合には、1個または複数個の属性が含まれており、つまり、ステップ2の操作では、ある属性が異なる属性データ部分集合に重複して割り当てされ、例えば、表1において、番号1、2の属性データ部分集合のいずれにも、属性「時間帯1」が含まれている。このように、1個の具体的な属性データ部分集合が分解されて生成された分割デジタル資産の数は、確定された属性の数よりも多くなる可能性がある。1個の資産が10個の属性を有し、各属性データ部分集合に平均的に3個の属性が含まれているとすると、生成される分割デジタル資産の数は、120個になる。よって、需要者の数が大幅増加され、資産の取引頻度が向上される。
【0022】
ステップ4は、分割デジタル資産を公表するステップである。デジタル署名された分割デジタル資産をネットワーク取引プラットフォームに公表して、分割デジタル資産に基づくオンライン取引を実行する。本例では、前記ネットワーク取引プラットフォームは、ブロックチェーンネットワークに基づく取引プラットフォームであるが、他の例では、インターネット取引プラットフォームでもよい。取引プラットフォームがブロックチェーンネットワークに配置されているので、ブロックチェーンネットワークに基づく分割デジタル資産
スマート・コントラクトを配置して、需要者にオンラインでの自動的又はセルフサービスの取引を提供してもよい。
【0023】
多くの例では、需要者がデジタル資産を購入する目的は、デジタル資産の使用や権利の行使によって経済的収益を創出することである。よって、各分解されたデジタル資産については、前記分割デジタル資産を複数等分の等分デジタル資産に分割し、等分デジタル資産集合で新たに分割デジタル資産を構築することができ、つまり、分割デジタル資産は、複数等分の等分デジタル資産から構成される。このように、1個の分割デジタル資産が取引によって複数の需要者に持分に従って販売されることができ、これらの需要者から構成された権利者団体は、電子データ契約の約定に従って共同に作品XX.MP3のある分割デジタル資産の権利者になる。ここで、分割デジタル資産が分割可能なものであるかの判断基準は、購入者間のクラウドファンディング契約に依拠することもできるし、分割デジタル資産の取引と権利の行使とに有利であるかに依拠することもできる。例えば、表1における番号1の属性データ部分集合に対応する分割デジタル資産を30等分に分割して、複数の需要者が共同に持分に従って購入することができ、新たな権利者Aがそのうちの5等分、権利者Bが10等分、権利者Cが15等分を購入したと仮定すると、権利者A、B、Cが共同に権利を行使して創出した経済的収益において、5/30、10/30、15/30の比率で当該分割デジタル資産による経済的収益(欠損の可能性もある)を共有する。
【0024】
また、取引の遡及や否認防止を可能にするために、分割デジタル資産と等分デジタル資産とのそれぞれに対して単独のデジタル署名操作を実行して、分割デジタル資産の全体取引や持分取引が可能になるようにする。
【0025】
多くの資産をデジタル資産に変換する例において、前記資産には、一般に時間属性データと、資産を十分かつ効果的に使用させる権利属性データと、が含まれている。この場合、以下のような手順で属性データ部分集合を確定できる。
まずは、属性データにおける時間属性を複数の時間帯に分割し、当該時間帯は、1個または複数に分割されることができるが、それは取引形式や戦略に依存する。続いて、前記時間帯に資産によって実現可能な機能の権利属性を配置し、ここで、資産を単独で使用する原則に従って前記配置操作を行う。最後に、配置結果に基づいて少なくとも1個の属性データ部分集合を生成する。
【0026】
以上で言及された例において、前記資産は、関連性或いは非関連性、または、同時に関連性と非関連性とを有する複数の資産を含む資産データデータパケットであってもよい。例えば、
図1に示す例では、前記資産には、複数の音楽作品が含まれていてもよく、音楽作品や音楽作品集、および当該音楽作品の上演・演奏に関する音楽説明、上演・演奏の開催方法、背景デザインなどの文書が含まれていてもよく、上記資産を構成する内容のうえで、さらに作品の評価、締結済みの契約などの上演・演奏自体とは関係ない資産が含まれていてもよい。
【0027】
よって、本願に係る実施形態では、資産は、いずれかの経済的収益の創出と関連する法的拘束力のある電子データ情報を含む広い概念である。他の機械設備や工場建物などの固定資産をデジタル資産に変換する例では、資産データデータパケットには、設備、工場建物の所有権の公証文書だけではなく、取引自体の電子データ契約、品質保証電子契約なども含まれる。
【0028】
以上によれば、1個の資産は、一般に複数の分割デジタル資産と呼ばれるデジタル資産に変換されることができる。極端な場合、1個の資産のすべての属性は、1個の部分集合になり、この場合、資産全体を1個のデジタル資産に変換する。
【0029】
図2は、資産をデジタル資産に変換することができる資産処理システムを説明するための図である。
図2に示すシステムは、ブロックチェーンネットワークPと、ブロックチェーンネットワークのノードまたは専用サブチェーン(subchain)として配置されるものとしての、資産処理プラットフォーム21及びネットワーク取引プラットフォーム22と、を備える。1個のすべての属性を持っている処理対象である資産データが資産処理プラットフォームに入力されると、異なる属性部分集合に対応する、オンライン取引可能なサブデジタル資産の集合としての分割デジタル資産に論理的に分解されて、1個の資産が異なる属性部分集合を有する複数のサブ資産に円滑に調整される。前記分割デジタル資産は、ネットワーク取引プラットフォームに送信され、従来の資産の全体取引の場合に比べてより多くの資産需要者である大衆取引対象に適応されることができるため、資産の取引頻度を向上させることができ、具体的には
図3を参照されたい。
図3によれば、資産処理プラットフォーム21とネットワーク取引プラットフォーム22とにブロックチェーンネットワークに基づく分割デジタル資産処理
スマート・コントラクトが配置されているので、資産処理の各ステップの結果によってアップリンク操作を実行して、各資産処理ステップの真実性、信頼性や可遡及性を保証することができる。
図3における分割デジタル資産のさらなる分解は、後述の関連説明を参照されたい。
【0030】
図2におけるネットワーク取引プラットフォーム22は、分割デジタル資産に基づくオンライン取引機能に対応するプログラムが実行されるように配置されている。資産処理プラットフォーム21には、ブロックチェーンネットワークに基づく分割デジタル資産処理
スマート・コントラクトが予め配置されており、前記分割デジタル資産処理
スマート・コントラクトは、以下の資産処理ステップを実行するように配置されている。
ステップ1では、プラットフォームが受信した資産データに基づいて、資産データのうちの資産属性に関連するデータを確定し、前記資産属性に関連するデータは、無関係のデータが無視または削除されたデータとして、時間属性データと、資産の十分かつ効果的に使用される権利属性データと、を含む。たとえば、掘削機を資産とする場合、その重量の属性データは、一般に無視される。
【0031】
ステップ2では、資産の機能、関連属性が機能する時間の長さなどの要素に基づいて、取引方法や戦略を確定する。本例では、時間属性は、取引戦略を実現するための基礎となり、まずは、取引時間を1個または複数の時間帯に分割し、例えば、資産を一次的に取引する戦略を採用する場合は、時間帯が1個であり、資産を期限に従って取引する戦略を採用する場合、時間帯が2個以上であることができる。次には、各時間帯に、資産に基づいて機能を実現することができる権利属性を配置し、ここで、前記資産を単独で使用する原則で前記配置操作を実行し、その配置結果に基づいて少なくとも1個の属性データ部分集合を生成する。例えば、掘削機設備の段階的使用権を販売することができ、各段階での使用権が異なるため、資産としての掘削機の取引戦略は、時間期限に従って取引する戦略に設定される必要があり、掘削機の設備状況などの要素を考慮すれば、各時間帯での取引内容が異なる可能性があるため、異なる時間帯に異なる権利部分集合を配置する必要がある。
【0032】
ステップ3では、前記属性データ部分集合と資産処分権益データとをバインドして、前記属性データ部分集合に対応する分割デジタル資産を生成する。上記のように、前記属性データ部分集合は、資産の使用条件を表徴するためのものである。
ステップ4では、デジタル署名された分割デジタル資産をネットワーク取引プラットフォーム22に公表する。
ステップ3で生成された分割デジタル資産は、依然として価格、資産使用などの要因によって取引や流通が制限され、分割デジタル資産をさらに複数の等分デジタル資産に分割し、等分デジタル資産の集合が分割デジタル資産の代わりに取引に参与することができる。例えば、価格が1000万元である分割デジタル資産を1000等分の等分デジタル資産に分割すれば、各等分デジタル資産の価格は10000元に下降される。したがって、ステップ3で分解された各デジタル資産については、前記分割デジタル資産を複数等分の等分デジタル資産に分割することができ、等分デジタル資産集合で新たに分割デジタル資産を構築し、つまり、分割デジタル資産は、複数等分の等分デジタル資産から構成される。このように、1個の分割デジタル資産が取引によって複数の需要者に持分に従って販売されることができ、これらの需要者から構成された権利者団体は、電子データ契約の約定に従って共同に分割デジタル資産の権利者になる。この場合、取引の便利上、分割デジタル資産と等分デジタル資産とのそれぞれに対して単独のデジタル署名操作を実行して、全体取引や持分取引が可能なデジタル資産が形成され、またブロックチェーンネットワークに基づく資産の検証操作が容易になる。
【0033】
なお、本明細書において、前記デジタル資産とデジタル資産データデータパケット、デジタル資産集合データパケットなどのような表現は、同じ意味であり、つまり、本願における資産処理の対象であるデータパケットにおけるデジタル資産は、1個以上であることができ、上記に言及された資産以外、法律・法規によって禁止されていない各種の資産やその集合も含まれる。例えば、知的財産権(専利権、商標権、著作権などを含む)、技術秘密、先物(定期物)、株式、基金、債券、黄金、売掛金、非上場会社の株式、それ以外の各種の収入権(income right)、使用権(例えば、土地使用権)など、および各種の機械設備、製品、工場建物などであることもできる。要するに、大部分の資産や資産集合は、高頻度取引デジタル資産に変換されることができる。
【0034】
上記方法及びシステムの例では、任意の資産は、いずれも他の資産と組み合わせて新たな資産データパケットになって、デジタル資産データパケットツリーを形成することができる。いずれかの1個の分割デジタル資産がさらに次のレベルのデジタル資産に分解されて、デジタル資産分割ツリーを形成することもでき、前記分割ツリーのすべてのノードは、取引可能なデジタル資産となることができる。
【0035】
図4を参照すれば、資産Pと他の異なる資産とが組み合わせて、資産データパケットB1、B2、…、Bnを構成し、前記資産データパケットB1、B2、…、Bnは、さらに別の資産と組み合わせて新たなデータパケットを構成することができる。例えば、B1を基にして、異なる資産や資産データパケットを追加して次のレベルの資産データパケットB11、B12、…、B1nを形成する。同様に、資産データパケットB2を基にして、B2の次のレベルの資産データパケットB21、B22、…、B2n(図示せず)を派生することができる。このように、資産Pが直接または間接的に新たな資産や新たな資産データパケットと組み合わせて、資産データパケットツリー42(以下、Bツリーと略称する)を派生する。
【0036】
Bツリーにおける任意のノードの資産データパケットは、資産P自身を含み、その属性によって分割デジタル資産に分解されることができる。例えば、
図4において、資産Pが分割デジタル資産A1、A2、…、Anに分解される。さらに、前記分割デジタル資産A1、A2、…、Anがその属性によって次のレベルの分割デジタル資産に分解されることができ、例えば、A1がA11、A12、…、A1nに分解される。このように、資産Pが直接また間接的に複数レベルの分割デジタル資産に分解されて、分割デジタル資産ツリー41(以下、Aツリーと略称する)が派生される。Aツリーにおけるすべてのノードは、資産Pが全体的に変換されて生成されたデジタル資産を含み、いずれも前記ネットワーク取引プラットフォームで取引可能なデジタル資産であることは勿論である。
【0037】
当業者であれば、明細書及びこの明細書に開示の発明を実践することを考慮して、本発明の他の実施形態を容易に想到することができる。本願は、本発明の任意の変形、用途や適応変化をカバーすることを意図し、これらの変形、用途や適応変化は、本発明の一般原理に従うとともに、本発明に未開示の技術分野における常識や慣用技術的手段を含む。明細書及び実施形態は、例示的なものにすぎず、本発明の真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲によって限定される。
【0038】
本発明は、以上の説明、図面に示された正確な構造に限定されず、その範囲から逸脱しない限り、様々な修正および変更を行うことができる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって限定される。
【要約】 (修正有)
【課題】資産自体の属性に基づいて、低頻度取引の資産を高頻度取引のデジタル資産に変換するための資産処理方法とシステムを提供する。
【解決手段】資産をデジタル資産に変換するための資産処理方法は、資産の属性データを確定するブロックチェーンネットワークに基づく分割デジタル資産処理スマート契約を予め配置するステップと、資産の属性データに基づいて資産を単独で使用可能な属性データ部分集合を確定するステップと、属性データ部分集合と資産処分権益データとをバインドして属性データ部分集合に対応する分割デジタル資産を生成するステップと、分割デジタル資産に基づくオンライン取引を実行するためにデジタル署名された分割デジタル資産をネットワーク取引プラットフォームに公表するステップと、を実行する。
【効果】低頻度取引の資産を高頻度取引の資産に変換するに有利し、資産の流動性を向上させることができる。
【選択図】
図4