(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷は、凹凸のない平面状の印刷版を使用した印刷方式であり、雑誌、書籍、新聞、商業広告などの印刷用途で主流となっている。オフセット印刷版は、印刷過程でインクを受容する親油性の画線部と湿し水を受容する親水性の非画線部とからなる。従来のオフセット印刷版は、親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けた版に、リスフイルムを介してマスク露光した後、非画線部を現像液によって溶解除去することにより製版(PS版)することが一般的であった。
近年では、コンピュータが画像をデジタル情報として電子的に処理し、蓄積して、出力する。従って、デジタル画像情報に応じた画像形成処理は、レーザー光のような指向性の高い活性放射線を用いる走査露光により、リスフイルムを介することなく、オフセット印刷原版に対して直接画像を形成し、非画線部を現像液によって溶解除去することにより製版する。このようにデジタル画像情報からリスフイルムを介さずに印刷版を製版する技術は、コンピュータ・トゥ・プレート(CTP)とよばれている。
【0003】
オフセット印刷では、製版された印刷版を印刷機に設置し、印刷版表面に湿し水を給水ローラーにより浸透させて印刷版の非画線部を湿し水により被覆した後、インキを画線部にのせ、その後、紙へインキを転写することで印刷する。オフセット印刷方式は、水と油の混じり合わない性質を利用して印刷されるが、インキを画線部にのせる際、インキ中に水が乳化して取り込まれるため、画線部上で水を取り込んだインキが安定している場合にのみ良好な印刷品質が得られる。印刷開始から長時間の間、インキを安定化させて、品質の良い印刷を得るために、湿し水には、様々な化学物質を添加し、その性能を最大限に発揮できるように鋭意検討されてきた。
【0004】
特許文献1は、プロピレンオキサイド基とエチレンオキサイド基からなる化合物、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムまたはジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、および2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールまたは2,5,8,11−テトラメチル−6−デシン−5,8−ジオールを含むオフセット印刷用湿し水濃縮組成物であり、これら物質を組み合わせて含有することで、刷り出しからの損紙の削減ができ、ロングラン印刷時のローラーはげや転移不良等のトラブルが発生せず、高速印刷時の非画線部のぬれ性が維持できるとあり、CTP版にて実施した場合に良好な結果が記載されている。
【0005】
これら、従来のPS版やCTP版を用いる印刷版では、製版時に、露光の後に非画像部を溶解除去する工程(現像処理)、および現像処理された印刷版を水洗後、界面活性剤を含有するリンス液で処理し、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で処理する後処理工程が必要であり、各処理における廃液による環境負荷が問題となっていた。
【0006】
そこで、環境負荷の抑制の観点から、使用材料や廃棄物を削減するために、これらの付加的な処理を使用しない無処理型(機上現像型)のオフセット印刷版が開発され、近年、使用されてきている。このような無処理型オフセット印刷版を用いたオフセット印刷では、画像形成後の版をそのまま印刷機に設置して、印刷と同じ工程を開始し、湿し水を浸透・膨潤させた版の非画線部を、インキのタック力を利用して剥がし、湿し水で洗い落として除去する「機上現像」と呼ばれる処理を行い、その後に印刷を行うものである。機上現像の処理では、従来のPS版やCTP版に通常用いられる湿し水を用いた場合、非画線部が十分剥がれず、得られた印刷物の非画像部に汚れが発生し、印刷初期の損紙が増えるといった機上現像特有の問題が発生することがあった。
【0007】
特許文献2は、ポリアリルアミン構造、ポリアリルアミン塩構造、ポリジアリルアミン構造、及び、ポリジアリルアミン塩構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構造を有するポリマーを含有するオフセット印刷用湿し水組成物であり、湿し水汚れの抑制性およびインキ着肉性に優れ、機上現像にも用いることができると記載されている。
【0008】
しかし、近年、オフセット印刷に対しては、印刷コストの面から、高品質な印刷品質を保持しながら短時間で印刷を行う高品質・高速化の要望が高まっている。
湿し水を使用するオフセット印刷では、湿し水が浸透する非画線部にインキが残ると印刷に汚れが生じて印刷品質の低下に繋がる。このため、湿し水に要求される適性としては、印刷を開始してから短時間で汚れのない印刷物となる性能(刷り出し性)や、印刷機の再起動時に短時間で汚れのない印刷物となる性能(整面性)、および機上現像型の印刷版の場合は、現像した感光膜などを洗い落とすこと(機上現像性)が求められている。
また、同時に長時間印刷時の高品質な印刷も求められ、給水ローラー表面にインキ成分由来の汚れが堆積すると印刷品質の低下に繋がるため、この汚れが堆積しないよう湿し水が常時汚れを溶かし洗い流すことが、また長時間の印刷においてインキへの水の乳化量が変化(水幅)してもインキが湿し水へ安定して乳化する状態を保ち、画線部の印刷品質に影響を与えないことが湿し水に求められていた。しかし、これら高品質・高速化のすべての要求を満たす湿し水はこれまでなかった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更、実施の形態が可能である。
【0015】
本明細書中、「〜」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを示す。また、分子量とは、特段の記載のない場合は、水酸基価を測定して求められる数平均分子量のことである。
【0016】
本発明に係るオフセット印刷用湿し水組成物は、現像液による現像処理を行うオフセット印刷版のオフセット印刷方法においても、機上現像を行うオフセット印刷版の作製方法及びオフセット印刷方法においても、好適に使用することができる。中でも本発明に係る湿し水組成物は、機上現像を行うオフセット印刷に用いる湿し水組成物として特に好適に用いることができる。
湿し水組成物は、商業ベースとするときは濃縮化し商品化する場合が多く、使用するときに、そのようなオフセット印刷用湿し水濃縮組成物を水により適宜希釈して湿し水組成物として使用する。
【0017】
以下、本発明のオフセット印刷用湿し水組成物について詳細に説明する。
【0018】
本発明の湿し水組成物は、リンを含む化合物と、3、6−ジメチル−4−オクチン−3、6−ジオールとを含有することが好ましい。
【0019】
3、6−ジメチル−4−オクチン−3、6−ジオールは、リンを含む化合物と併用することで、印刷初期における刷り出し性に優れ、長時間使用時の給水ローラー汚れの低減、及び乳化の変化の少ない安定した水幅適性、並びに印刷機を停止後に再稼働させた際の整面性が良好となる効果を有する。これは、富士フィルム和光純薬株式会社などから入手することができる。
【0020】
3、6−ジメチル−4−オクチン−3、6−ジオールの含有量は、湿し水組成物に対し0.001〜1質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%であることがより好ましい。1質量%を超えると、インキに湿し水が過乳化し、印刷初期の刷り出し性が低下し、また長時間印刷時に給水ローラーが汚れるおそれがあり、0.001質量%より少ないと、水幅適性や印刷初期の刷り出し性が低下し、また長時間印刷時に給水ローラーに汚れがたまるおそれがある。
【0021】
前記リンを含む化合物としては、リン酸系化合物が好ましい。リン酸系化合物の具体例として、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、フィチン酸、オルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸(トリポリリン酸、テトラリン酸など)、メタリン酸、ウルトラリン酸などが挙げられる。上記の中でも、特にリン酸、フィチン酸が好ましく使用できる。これらリン酸系化合物はリン酸塩として含まれてもよく、これらの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、2種以上を併用してもよい。前記塩類としては、上記有機酸および/または無機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩あるいはアンモニウム塩、有機アミン塩などが挙げられ、具体的には、硝酸アンモニウム、リン酸塩、クエン酸塩、およびp−トルエンスルホン酸塩が好ましい。
【0022】
前記リンを含む化合物の含有量は、湿し水組成物に対し0.25〜90mg/lが好ましく、15〜80mg/lであることがより好ましい。90mg/lを超えると画線部を侵す可能性があり、紙面品質の低下が懸念される。0.25mg/lより少ないと整面性が低下し、給水ローラーに汚れが発生する恐れがある。
【0023】
本発明のオフセット印刷用湿し水組成物は、さらに、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコールを含むことが好ましい。
【0024】
前記ポリオキシエチレンポリプロピレングリコールは、分子量が1,000〜11,000であることが好ましい。分子量が1,000未満や11,000を超えると水幅適性が低下するおそれがある。
ここで、分子量とは、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコールの水酸基価を測定して求められる数平均分子量のことである。
【0025】
前記ポリオキシエチレンポリプロピレングリコールの含有量は、湿し水組成物に対し0.0005〜1質量%が好ましく、0.001〜0.1質量%であることがより好ましい。範囲内でリンを含む化合物と併用することで、現像性及び水幅適性を向上する効果を有する。
【0026】
<水>
本発明のオフセット印刷用湿し水組成物は、水を溶媒とする。
水としては、特に制限はなく、水道水、井水、蒸留水、イオン交換水、純水等を用いることができる。中でも、蒸留水、イオン交換水、又は、純水を使用することが好ましい。
水の含有量は、後述する各成分以外の残余であるが、湿し水組成物の全質量に対し、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上99.99質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上99.9質量%以下であることが更に好ましく、40質量%以上99質量%以下であることが特に好ましい。
【0027】
<pH調整剤>
また、本発明のオフセット印刷用湿し水組成物は、pH調整剤によってpHを好ましい値に調整することが好ましい。pH値は3〜7の範囲の酸性領域で用いることが好ましいが、pH7〜11のアルカリ性領域で用いることもできる。上記pH調整剤としては、水溶性の有機酸、無機酸又はそれらの塩が使用できる。
好ましい有機酸としては、酢酸、クエン酸、蓚酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、乳酸、アスコルビン酸、グルコン酸、ヒドロキシ酢酸、マロン酸、フタル酸、レブリン酸、スルファニル酸、p−トルエンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸等が挙げられ、無機酸としては、硝酸、硫酸、ポリリン酸が挙げられ、前記リン酸及びリン酸を用いてもよく、更にこれら有機酸及び無機酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、あるいは有機アミン塩も好適に用いられる。これらは2種以上の混合物として使用してもよい。これらpH調整剤は、湿し水において一般的に0.001〜0.3質量%の範囲の含有量である。
【0028】
<キレート化合物>
本発明のオフセット印刷用湿し水組成物は、キレート化合物を含有してもよい。特に、湿し水組成物を水道水、井戸水等を加えて希釈し、湿し水として使用する場合、キレート化合物を含むことにより、希釈する水道水や井戸水に含まれているカルシウムイオン等の印刷への影響を抑制し、印刷物汚れを抑制することができる。
キレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなアミノポリカルボン酸類や2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4,そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2−ホスホノブタントリカルボン酸−2,3,4,そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2,2,そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類又はホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。
上記のキレート剤のナトリウム塩又はカリウム塩の代わりにアンモニウム又は有機アミンの塩も有効である。
【0029】
前記キレート化合物は、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
キレート化合物の含有量は、湿し水組成物の全質量に対し、0.001質量%〜3質量%であることが好ましく、0.01質量%〜1質量%であることがより好ましい。
【0030】
<有機溶剤>
本発明のオフセット印刷用湿し水組成物は、濡れ性向上の観点から、グリコール類および/またはアルコール類などの有機溶剤を湿潤剤として含有してもよい。
グリコール類としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコールおよびペンタプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられ、なかでもプロピレングリコール、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルがより好ましい。
アルコール類としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−アミルアルコール、ベンジルアルコール、ペンタエリスリトール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、ブトキシエタノールなどが挙げられる。
【0031】
本発明のオフセット印刷用湿し水組成物は、有機溶剤を、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。有機溶剤の含有量は、湿し水組成物の全質量に対し、0.1質量%〜6質量%であることが好ましく、0.3質量%〜2質量%であることがより好ましい。6質量%を超えるとインキが過乳化するおそれがあり、0.1質量%より少ないと版面への濡れ性が低下するおそれがある。
【0032】
湿し水組成物には、2個のOH基を有し、該2個のOH基間の最短の炭素数が2〜6であり、かつ総炭素数が9であるジオール系非環状炭化水素化合物を含有してもよい。OH基間の最短の炭素数が2のものとして、具体的には、1,2−ノナンジオール、2,3−ノナンジオール、3,4−ノナンジオール、2−メチルオクタン−2,3−ジオール、2−メチル−3,4−オクタンジオール、2,2,5−トリメチル−3,4−ヘキサンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ヘプタンジオール、2−エチルヘプタン−1,2−ジオール、3−エチル−5−メチル−1,2−ヘキサンジオール、2,3−ジメチルヘプタン−2,3−ジオール、3−エチル−4−メチルヘキサン−3,4−ジオール、4−メチル−4,5−オクタンジオール、3−イソプロピル−4−メチル−2,3−ペンタンジオールなどが挙げられる。OH基間の最短の炭素数が3のものとして、具体的には、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチルヘプタン−3,5−ジオール、1,3−ノナンジオール、2,4−ノナンジオール、4,6−ノナンジオール、2,4−ジメチルヘプタン−1,3−ジオール、2,4−ジメチル−3,5−ヘプタンジオール、2,2−ジメチル−3,5−ヘプタンジオール、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオール、3,4−ジメチル−3,5−ヘプタンジオール、2−メチルオクタン−3,5−ジオール、2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオール、2−[(1R)−1−メチル−3−メチルブチル]−1,3−プロパンジオール、2−sec−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2−ヘキシルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−(1−メチルブチル)−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ペンチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−オクタンジオール、2−メチルオクタン−1,3−ジオール、2,2−ジプロピル−1,3−プロパンジオール、2,4,5−トリメチルヘキサン−2,4−ジオール、2,2,4,4−テトラメチルペンタン−1,3−ジオール、2,4−ジメチルヘプタン−2,4−ジオール、3−プロピル−1,3−ヘキサンジオールなどが挙げられる。OH基間の最短の炭素数が4のものとして、具体的には、1,4−ノナンジオール、2,5−ノナンジオール、3−メチルオクタン−1,4−ジオール、4,6−ジメチル−2,5−ヘプタンジオール、2−(1,2−ジメチルプロピル)ブタン−1,4−ジオール、2−イソペンチル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,4−ヘプタンジオール、2,2,3,3−テトラメチル−1,4−ペンタンジオール、2,4−ジメチルヘプタン−1,4−ジオール、4−メチルオクタン−1,4−ジオール、6,6−ジメチル−2,5−ヘプタンジオールなどが挙げられる。OH基間の最短の炭素数が5のものとして、具体的には、1,5−ノナンジオール、2,6−ノナンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、4,6−ジメチルヘプタン−1,5−ジオール、2,6−ジメチルヘプタン−1,5−ジオール、2−イソプロピル−1,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,5−ヘプタンジオール、2,6−ジメチル−2,6−ヘプタンジオール、3,3,5−トリメチルヘキサン−1,5−ジオール、6,6−ジメチル−1,5−ヘプタンジオール、7−メチル−1,5−オクタンジオールなどが挙げられる。OH基間の最短の炭素数が6のものとして、具体的には、1,6−ノナンジオール、2−メチル−2,7−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられる。なかでも、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールおよび2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールが好ましい。
これらの中から選ばれる少なくとも1種であり、2種以上を併用してもよく、前記有機溶剤と併用してもよい。
【0033】
<水溶性高分子化合物>
本発明のオフセット印刷湿し水組成物には、水溶性高分子化合物を含有してもよい。水溶性高分子化合物としては、具体的には、アラビアゴム、澱粉誘導体(例えばデキストリン、酵素分解デキストリン、ヒドロキシプロピル化酵素分解デキストリン、カルボキシメチル化澱粉、燐酸澱粉、オクテニルコハク化澱粉など)、アルギン酸塩、繊維素誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、それらのグリオキサール変性体など)の天然物とその変性体およびポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドおよびその共重合体、ポリアクリル酸およびその共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体などの合成物などが挙げられる。
これらの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、2種以上を併用してもよい。
水溶性高分子化合物の含有量は、湿し水組成物の全質量に対し、0.00005質量%〜0.5質量%であることが好ましく、0.0005質量%〜0.05質量%であることがより好ましい。0.5質量%を超えるとインキが過乳化するおそれがあり、0.0005質量%より少ないと紙面に汚れが発生するおそれがある。
【0034】
<糖類およびグリセリンからなる群>
本発明の湿し水組成物には、糖類およびグリセリンからなる群を含有してもよい。糖類としては、単糖類、二糖類及びオリゴ糖類などから選択することができ、水素添加によって得られる糖アルコールもこれに含まれる。具体例としてD−エリトロース、D−スレオース、D−アラビノース、D−リボース、D−キシロース、D−エリスロ−ペンテュロース、D−アルロース、D−ガラクトース、D−グルコース、D−マンノース、D−タロース、β−D−フラクトース、α−L−ソルボース、6−デオキシ−D−グルコース、D−グリセロ−D−ガラクトース、α−D−アルロ−ヘプチュロース、β−D−アルトロ−3−ヘプチュロース、サッカロース、ラクトース、D−マルトース、イソマルトース、イヌロビオース、ヒアルビオウロン、マルトトリオース、D,L−アラビット、リビット、キシリット、D,L−ソルビット、D,L−マンニット、D,L−イジット、D,L−タリット、ズルシット、アロズルシット、マルチトール、還元水あめなどが挙げられる。
これらの中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記糖類およびグリセリンからなる群の含有量は、湿し水組成物に対し0〜5質量%であり、0〜4質量%であることがより好ましく、0.01〜3質量%であることがさらに好ましい。
【0036】
本発明の湿し水組成物には、エチレンジアミンのポリエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド付加化合物を含有してもよい。エチレンジアミンのポリエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド付加化合物としては、ポリプロピレングリコール部(疎水基)の分子量が1,500〜5,000、総分子中のエチレンオキサイド付加重量%が10〜40%、分子量が2,000〜8,500のものが使用でき、なかでも、ポリプロピレングリコール部の分子量が2,000〜4,000、総分子中のエチレンオキシド付加重量%が10〜20重量%のものがより好ましい。
これらの付加化合物の含有量は、湿し水組成物に対し0〜5質量%であり、0.0001〜3質量%であることがより好ましく、0.001〜2質量%であることがさらに好ましい。
【0037】
<界面活性剤>
本発明の湿し水組成物には、少量の界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤として、アニオン型界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホこはく酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホこはく酸モノアミド2ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硬化ひまし油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などが挙げられ、なかでもジアルキルスルホこはく酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類が好ましく用いられる。
ノニオン型界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸部分エステル類、蔗糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどが挙げられ、なかでもポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー類、アセチレングリコール類やアセチレンアルコール類およびこれらの酸化エチレンおよび/または酸化プロピレン付加物などが好ましく用いられる。
カチオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などが挙げられる。
また両性界面活性剤の例としては、アルキルイミダゾリン類が挙げられる。
さらに、フッ素系界面活性剤が挙げられる。フッ素系アニオン界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、フッ素系ノニオン界面活性剤としては、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルプロピレンオキサイド付加物、フッ素系カチオン界面活性剤としては、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などが挙げられる。
これらの界面活性剤の含有量は、発泡の問題やインキとの乳化を考慮すると、湿し水組成物に対し5質量%以下が好ましく、0〜2質量%が適当である。
【0038】
<防腐剤>
本発明のオフセット印刷用湿し水組成物は、保存安定性の観点から、防腐剤を含有することが好ましい。
防腐剤の具体例としては、安息香酸及びその誘導体、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンズトリアゾール誘導体、アミジン又はグアニジンの誘導体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン又はグアニジンの誘導体、ダイアジン又はトリアゾールの誘導体、オキサゾール又はオキサジンの誘導体、ハロゲノニトロプロパン化合物、ブロモニトロアルコール系のブロモニトロプロパノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、3−ブロモ−3−ニトロペンタン−2,4−ジオール等が挙げられる。
【0039】
本発明のオフセット印刷用湿し水組成物は、防腐剤を、1種単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
防腐剤の含有量は、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、湿し水組成物の全質量に対し、0.0001質量%〜1質量%であることが好ましい。
【0040】
<その他の添加剤>
本発明のオフセット印刷用湿し水組成物は、上述した以外のその他の添加剤を含有してもよい。
その他の添加剤としては、特に制限はなく、公知の添加剤を用いることができ、例えば、着色剤、防錆剤、消泡剤、香料、マスキング剤などが挙げられる。
着色剤としては、食品用色素等が好ましく使用できる。例えば、黄色色素としてはCINo.19140、15985、赤色色素としてはCINo.16185、45430、16255、45380、45100、紫色色素としてはCINo.42640、青色色素としてはCINo.42090、73015、緑色色素としてはCINo.42095等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、チオサリチル酸、ベンゾイミダゾール及びその誘導体等が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン消泡剤が好ましく挙げられる。シリコーン消泡剤としては、乳化分散型及び可溶化型などのいずれも使用することができる。また、非シリコーン系の消泡剤を併用又は単独で使用することができる。
【0041】
本発明のオフセット印刷用湿し水組成物は、更に、硝酸マグネシウム、硝酸亜鉛、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、硝酸アンモニウムなどの腐食防止剤、クロム化合物、アルミニウム化合物のような硬膜剤、環状エーテル:例えば4−ブチロラクトンなどの有機溶剤、水溶性界面活性有機金属化合物などを含有していてもよい。
【0042】
これらその他の添加剤の含有量としてはそれぞれ独立に、湿し水組成物の全質量に対し、0.0001質量%〜1質量%であることが好ましい。
【0043】
<印刷版>
本発明の湿し水組成物は、種々のオフセット印刷版に対して使用することができる。
例えば、アルミニウム板を支持体とし、その上に感光層を有する感光性オフセット印刷版(あらかじめ感光性を付与した印刷版で、PS版と呼ばれる。)を画像露光及び現像して得られたオフセット印刷版に対して好適に使用できる。
可視や赤外線のレーザーで直接露光するCTP用のオフセット印刷版(CTPプレート)にも好適に使用することができる。具体例としてはフォトポリマータイプデジタルプレート(例えば、コダック合同会社製:エクスサーモTP−W)や、サーマルポジタイプデジタルプレート(例えば、富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(株)製:XPシリーズ)などが挙げられる。
本発明は、さらに無処理型オフセット印刷版にも好適に使用できる。無処理型オフセット印刷版では、印刷機上で可視や赤外線のレーザーで直接露光し、露光部分以外の非画線部を湿し水組成物で洗い流し、その後、通常のオフセット印刷方法により印刷する。従って、無処理型オフセット印刷版では、従来のPS版やCTP版で使用されてきた現像処理、水洗、リンス液処理等の後処理工程が不要となるため、これらの廃棄物が排出されない。無処理型オフセット印刷版としては、例えば、BLUE EARTH(コニカミノルタビジネスソリューションズ(株)製)、SUPERIA ZDシリーズ(富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(株)製)、アズーラシリーズ(日本アグファ・ゲバルト(株)製)、SONORAシリーズ(コダック合同会社製)などが挙げられる。
【0044】
<オフセット印刷方法>
上述したPS版、CTP版および無処理型オフセット印刷版を用いるには、前記オフセット印刷版を作製し、これを用いて一般的なオフセット印刷方法による印刷工程を経て、印刷物が形成される。
【0045】
本発明の印刷物に用いる基材としては、通常のオフセット印刷が可能な用紙であれば使用できるが、特に、オフセット印刷に適する更紙(非塗工紙)、微塗工紙、コート紙、アート紙などが好ましく用いられる。
【0046】
<機上現像>
本発明に係るオフセット印刷用湿し水は、現像液による現像処理を行うオフセット印刷版のオフセット印刷方法においても、機上現像を行うオフセット印刷版の作製方法及びオフセット印刷方法においても、好適に使用することができる。
【0047】
<機上現像工程>
機上現像と呼ばれる工程において、画像露光されたオフセット印刷版原版に対し、印刷機上で印刷インキ、本発明のオフセット印刷用湿し水組成物を供給することにより、非画像部の画像記録層が除去されてオフセット印刷版が作製される。
すなわち、オフセット印刷版原版を画像露光後になんらの現像処理を施すことなくそのまま印刷機に装着するか、またはオフセット印刷版原版を印刷機に装着した後に印刷機上で画像露光し、印刷インキと本発明のオフセット印刷用湿し水組成物の水希釈物とを供給して印刷すると、印刷途上の初期の段階で、非画像部においては、供給された印刷インキ及び湿し水の成分によって、非画像部の画像記録層が膨潤し、溶解又は分散して除去され、除去された部分に親水性の表面が露出する。一方、画像部においては、画像記録層が、親油性表面を有する印刷インキ受容部を形成する。
このようにして、オフセット印刷版原版は印刷機上で機上現像され、前記の非画像部の画像記録層の除去の後、そのまま多数枚の印刷に用いられる。印刷インキとしては、通常のオフセット印刷用の印刷インキが好適に用いられる。
【0048】
本発明に係るオフセット印刷用湿し水は、前記機上現像工程において、機上現像型の印刷版の非画像部を効果的に膨潤させ、剥離した非画像部の画像記録層を洗い流すことができるため、好適に使用することができる。
【0049】
<湿し水濃縮組成物>
湿し水は、商業ベースとするときは濃縮化し商品化する場合が多く、使用するときに、オフセット印刷用湿し水濃縮組成物を水により適宜希釈して湿し水組成物として使用する。
本発明のオフセット印刷用湿し水濃縮組成物は、水で1.1〜1,000倍に希釈することにより、本発明のオフセット印刷用湿し水組成物の組成となる。水による希釈が1.1倍未満であると成分が十分な効果を発揮せず、1,000倍より大きいと印刷中に過乳化を起こし、印刷適性を阻害するおそれがある。
【0050】
本発明の湿し水濃縮組成物の希釈に使用される水としては、特に制限はなく、水道水、井水、蒸留水、イオン交換水、純水等を用いることができる。中でも、蒸留水、イオン交換水、又は、純水を使用することが好ましい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示す。
【0052】
実施例および比較例で用いた材料を表1に記載した。
【0053】
[湿し水濃縮組成物および湿し水組成物の作製]
表2及び表3の処方にしたがって、オフセット印刷用湿し水濃縮組成物を各々作製した。作成したオフセット印刷用湿し水濃縮組成物を、水道水にて50倍に希釈し、実施例1〜11、および比較例1〜6の各々オフセット印刷用湿し水組成物を作製した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
実施例1〜11、および比較例1〜6のオフセット印刷用湿し水組成物について、下記の条件にて機上現像型の印刷版を用いた機上現像印刷試験を行い、機上現像性を評価し、その結果を表4に示した。
印刷機: (株)小森コーポレーション製 菊全判片面4色機
印刷回転数:12,000sph
印刷版: コダック合同会社製 SONORA CX2
印刷インキ:東京インキ(株)製 VP NSニューセルボ Yタイプ
用紙: 日本製紙(株)製 OKコートL
【0058】
[機上現像性]
上記機上現像印刷試験時において、印刷版を印刷機に設置し、湿し水とインキ供給を開始し、印刷開始から約20,000枚を印刷した後にインキローラー、湿しローラー上に非画像部の残分などが残っているかを目視により評価した。
評価は、◎:残っていない、○:ほとんど残っていない、×:汚れが残っている、の3段階で評価した。
【0059】
実施例1〜11、および比較例1〜6のオフセット印刷用湿し水組成物の刷り出し性、整面性、水幅適性、給水ローラー汚れ防止適性の評価のため、下記の条件にて印刷試験を行ない、評価した。評価の結果を表4に示した。
印刷機: (株)小森コーポレーション製 菊全判片面4色機
印刷回転数:12,000sph
印刷版: 富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(株)製 XP−F(CTP版) AM175線
印刷インキ:東京インキ(株)製 VP NSニューセルボ Yタイプ
用紙: 日本製紙(株)製 OKコートL
【0060】
[刷り出し性]
上記印刷試験時において、印刷開始より、印刷物を10枚毎に目視により観察し、印刷物の網部で絡み汚れが見られなくなった枚数を評価した。評価は、◎:20枚未満、○:20枚以上30枚未満、△:30枚以上50枚未満、×:50枚以上、の4段階で評価した。
【0061】
[整面性]
上記印刷機試験時において、20,000枚を印刷後に印刷機を60分停止させた後、再稼働して印刷を行った際に印刷物に汚れが発生していないことを評価した。
評価は、◎:印刷の汚れが見られない、×:印刷に汚れが見られる、の2段階で評価した。
【0062】
[水幅適性]
湿し水の送り量のダイヤル値を15にして印刷を開始し、10,000枚を印刷したところで、湿し水の送り量のダイヤル値を30まで上げ、20,000枚印刷を行った。湿し水の送り量を上げたことで過乳化による印刷物への汚れや濃度ムラが発生していないことを評価した。
評価は、◎:送り量を上げても紙面に一切汚れが発生しない、×:送り量を上げたことで、紙面に汚れや濃度ムラが発生した、の2段階で評価した。
【0063】
[給水ローラー汚れ防止適性]
上記印刷試験により10,000枚印刷した。10,000枚の印刷後、給水ローラー上の汚れを目視により確認し、評価を行った。
評価は、◎:汚れがみられない、○:ほとんど汚れなし、△:やや汚れが見られる、×:ロール全体が汚れる、の4段階の評価を行った。
【0064】
【表4】
【課題】印刷初期における現像性に優れ、長時間使用時の給水ローラー汚れの低減、及び乳化の変化の少ない安定した水幅適性、並びに印刷機を停止後に再稼働させた際の整面性が良好なオフセット印刷用湿し水組成物を提供するを提供する。
【解決手段】オフセット印刷に用いる湿し水組成物であって、リンを含む化合物と、3、6−ジメチル−4−オクチン−3、6−ジオールとを含有することを特徴とするオフセット印刷用湿し水組成物。