(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記前処理部と、前記第1のネットワークインタフェースと、の間に設けられ、前記第1の計測データと、前記第2の計測部による計測結果と、を同期させ、時系列で配置する共通データロガーをさらに備える
ことを特徴とする請求項5に記載の環境監視システム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の前提]
まず、音声データには、音圧波形と音圧レベル波形の2種類が考えられるが、特許文献1では何れの波形データを利用するのか、特に記載されていない。音圧レベル波形に比べ、音圧波形はデータ容量が大きいため、逐次、音圧波形データを送信するとネットワークに多大な負荷がかかるという課題がある。一方、音圧レベル波形はデータ容量が小さいものの、音声として再生できないことから、異常原因が特定できないという課題もあった。そこで、後述する実施形態では、環境データを常時収集し、遠隔で環境監視する場合に、ネットワーク負荷を抑えつつ、環境データの原データを参照可能にすることにより、環境データを適切に取得しようとするものである。
【0009】
[第1実施形態]
〈第1実施形態の構成〉
図1は、第1実施形態による環境監視システム101のブロック図である。
図1において、環境監視システム101は、監視対象設備10(監視対象物)と、サーバ機40と、ユーザ端末50と、を備えている。監視対象設備10とサーバ機40とは、例えばインターネット等のネットワーク30を介して接続されている。
【0010】
監視対象設備10は、例えば、各種工場等であり、騒音計20(第1の計測部)と、ネットワークインタフェース12(第1のネットワークインタフェース)と、を備えている。騒音計20は、後述するレベル波形SL(第1の計測データ)と、音圧波形SW(第2の計測データ)と、をネットワークインタフェース12およびネットワーク30を介して、サーバ機40に供給する。
【0011】
騒音計20は、騒音センサ21と、増幅部22と、A/D変換部23と、音圧レベル演算部24と、レベル波形記憶部25と、音圧波形記憶部26と、を備えている。
【0012】
騒音センサ21は、例えばマイクロフォンであり、監視対象設備10から、音声信号である騒音信号を収集する。増幅部22は、該騒音信号を増幅する。A/D変換部23は、増幅された該騒音信号を、デジタル信号に変換する。音圧レベル演算部24は、該デジタル信号に基づいて、レベル波形SLと、音圧波形SWとを生成する。
【0013】
ここで、音圧波形SWは、上述のデジタル信号と同様の内容を有する波形である。
また、レベル波形SLは、音圧波形SWの所定のレベル算出周期(例えば1秒)内における平均レベルであり、例えば下式(1)によって求めることができる。
【0015】
式(1)において、p
iはレベル算出周期内における音圧波形SWの、あるサンプルの音圧であり、Nはレベル算出周期内に含まれるサンプルの総数である。また、p
oは、「10μPa(2×10
-5 N/m
2)」となる基準音圧である。
【0016】
レベル波形記憶部25および音圧波形記憶部26は、それぞれ、レベル波形SLおよび音圧波形SWを一時的に記憶する。レベル波形記憶部25および音圧波形記憶部26は、取り扱うデータのサンプリングレート等が異なるため、別体の記憶装置によって実現されることが好ましい。ネットワークインタフェース12は、ネットワーク30を介して、レベル波形SLおよび音圧波形SWの全部または一部を、サーバ機40に供給する。レベル波形SLのうち、サーバ機40に伝送される部分を伝送レベル波形STL(第1の伝送データ)と呼ぶことがある。同様に、音圧波形SWのうち、サーバ機40に伝送される部分を伝送音圧波形STW(第2の伝送データ)と呼ぶことがある。
【0017】
但し、本実施形態においては、レベル波形SLは全てサーバ機40に伝送されることを想定しているため、この場合はレベル波形SLは伝送レベル波形STLに等しくなる。レベル波形SLは、テキストファイル形式のデータであり、上述のレベル算出周期(例えば1秒)につき、1行のデータが記述されている。従って、レベル波形SLのサンプリングレートは1Hzである。この場合、レベル波形SLを9文字(9バイト)の数字で表現したとすると、レベル波形SLの1秒あたりのデータ量は、9バイトになる。また、音圧波形SWは、例えばサンプリングレートが48kHz、分解能が16ビットのデータである。この場合において音圧波形SWの1秒あたりのデータ量は、96000バイトになる。
【0018】
レベル波形SLおよび音圧波形SWのデータ形式は上述したものに限定されるわけではないが、レベル波形SLの単位時間当たりのデータ量は、音圧波形SWの単位時間当たりのデータ量に対して「1/1000」以下にすることが好ましく、「1/10000」以下にすると一層好ましい。また、レベル波形SLのサンプリングレートは、音圧波形SWのサンプリングレートの「1/1000」以下にすることが好ましく、「1/10000」以下にすると一層好ましい。これにより、レベル波形SLを伝送する際のネットワーク30の負荷を極めて小さくすることができる。
【0019】
図2は、コンピュータ900のブロック図である。
図1に示したサーバ機40およびユーザ端末50は、何れも
図2に示すコンピュータ900を備えている。
図2において、コンピュータ900は、CPU901と、RAM902と、ROM903と、HDD904と、通信インタフェース905と、入出力インタフェース906と、メディアインタフェース907と、を備えている。通信インタフェース905は、通信装置915に接続される。入出力インタフェース906は、入出力装置916に接続される。メディアインタフェース907は、記録媒体917からデータを読み書きする。さらに、CPU901は、RAM902に読み込んだアプリケーションプログラムを実行することにより、上述のサーバ機40およびユーザ端末50等が具現化される。
【0020】
図1において、サーバ機40およびユーザ端末50の内部は、アプリケーションプログラム等によって実現される機能をブロックとして示している。すなわち、サーバ機40は、ネットワークインタフェース42と、環境監視部44と、デジタル信号記憶部46と、を備えている。また、ユーザ端末50は、ネットワークインタフェース52と、情報表示部54と、音声再生部56と、入力部58と、を備えている。
【0021】
環境監視部44は、レベル波形SL等に基づいて、監視対象設備10の異常診断および異常予兆診断を行う。デジタル信号記憶部46は、レベル波形SLおよび音圧波形SW等を一時的に記憶する。また、ユーザ端末50の内部において、情報表示部54は、ユーザに対して各種情報を表示する。入力部58は、ユーザからの各種指令を入力する。音声再生部56は、音圧波形SW等の音声信号を再生し放音する。また、ネットワークインタフェース12,42,52は、ネットワーク30を介して双方向のデータ通信を行う。
【0022】
図3は、騒音計20から出力される音圧波形SWおよびレベル波形SLのタイムチャートである。
図中のレベル波形周期TLは、レベル波形SLの記録、伝送等の単位となる周期であり、例えば1分程度の長さに設定される。また、音圧波形周期TWは、音圧波形SWに関する処理の単位となる周期であり、例えば10分程度の長さに設定される。レベル波形周期TLおよび音圧波形周期TWは上述の長さに限定されるものではないが、音圧波形周期TWはレベル波形周期TLの整数倍にすることが好ましい。
【0023】
また、図中の処理A、処理Bとは、サーバ機40(
図1参照)の環境監視部44における処理の内容である。処理Aは、レベル波形周期TL毎に実行される処理である。環境監視部44は、レベル波形周期TL毎に、騒音計20のレベル波形記憶部25からレベル波形SLを取得し、サーバ機40内のデジタル信号記憶部46に該レベル波形SLを格納する。さらに、環境監視部44は、格納したレベル波形SLに基づいて異常予兆診断を行う。異常予兆診断の手法としては、既存の種々の診断手法を適用することができる。例えば、閾値を用いて異常予兆診断を行ってもよく、正常時の騒音状態を学習して異常度を判定するMT法などを用いることもできる。
【0024】
処理Bは、音圧波形周期TW毎に実行される処理である。処理Bにおいて、環境監視部44は、まず、直前の音圧波形周期TWの範囲内において、所定の条件を充足する時間帯が存在するか否かを判定する。「所定の条件」とは、例えば、上述した異常予兆診断の結果、「環境監視部44が異常予兆を検出した」という条件である。また、「所定の条件」とは、ユーザのマニュアル操作によって指定された条件であってもよい。例えば、ユーザの所望する時間帯を条件として設定してもよい。また、ユーザのマニュアル操作による時間帯の場合は、特に直前の音圧波形周期TWの範囲内に限定されるわけではなく、騒音計20の音圧波形記憶部26に音圧波形SWが記憶されている範囲であれば、直前の音圧波形周期TWよりも以前の範囲内であってもよい。
【0025】
〈第1実施形態の動作〉
(通常状態の動作)
次に、本実施形態の動作を説明する。
環境監視部44が監視対象設備10の異常を検知していない状態を「通常状態」と呼ぶ。なお、通常状態においても、異常予兆は検出される場合がある。最初にこの通常状態の動作を説明する。
騒音計20に設けられた騒音センサ21が周囲の騒音を計測し騒音信号を収集すると、増幅部22は該騒音信号を増幅する。A/D変換部23は、増幅された該騒音信号を、デジタル信号に変換する。音圧レベル演算部24は、該デジタル信号に基づいて、レベル波形SLと、音圧波形SWとを生成する。
【0026】
サーバ機40の環境監視部44は、レベル波形周期TL毎に伝送レベル波形STLすなわちレベル波形SLを取得し、その内容をデジタル信号記憶部46に逐次格納する。また、環境監視部44は、格納されたレベル波形SLに基づいて異常予兆診断を行い、診断結果をユーザ端末50の情報表示部54へ送信する。情報表示部54は受信した診断結果を表示する。これにより、ユーザは、情報表示部54の表示内容に基づいて、異常予兆診断の診断結果を確認できる。また、ユーザは、ユーザ端末50の入力部58を操作することにより、診断結果の詳細を情報表示部54に表示させることができる。
【0027】
(異常検知状態の動作)
環境監視部44が監視対象設備10の異常を検知した状態を「異常検知状態」と呼ぶ。
環境監視部44が監視対象設備10における異常を検知すると、環境監視部44は、ユーザ端末50に対して所定の異常通知メッセージを出力する。この異常通知メッセージには、検知した異常内容と、異常検知日時とが含まれる。異常検知日時は、一般的には、ある程度の連続した時間範囲になることが多い。ユーザ端末50の情報表示部54は、異常通知メッセージを受信すると、該メッセージに含まれる異常内容と、異常検知日時とを表示する。これにより、ユーザは、検知された異常内容と異常検知日時とを把握することができる。
【0028】
ユーザは、入力部58を操作することにより、サーバ機40の環境監視部44に対して、デジタル信号記憶部46に記憶されている範囲内で、任意の時間範囲のレベル波形SLおよび/または音圧波形SWを伝送レベル波形STLまたは伝送音圧波形STWとして転送するように指令することができる。環境監視部44は、指定された時間範囲の伝送レベル波形STLおよび/または伝送音圧波形STWをユーザ端末50に転送する。ユーザは、入力部58を操作することにより、転送された伝送レベル波形STLおよび/または伝送音圧波形STWを情報表示部54に表示させることができ、音声再生部56を介して伝送音圧波形STWを放音させることができる。
【0029】
従って、上述したように、ユーザ端末50の情報表示部54に異常通知メッセージが表示された場合、ユーザは、異常検知日時、または異常検知日時の前後を含む時間範囲を指定して、伝送レベル波形STLおよび/または伝送音圧波形STWを取得するとよい。これにより、ユーザは、異常検知日時および/またはその前後における伝送レベル波形STLおよび/または伝送音圧波形STWの内容を確認することができる。
【0030】
本実施形態のように、騒音計20の出力信号に基づいて監視対象設備10の異常の有無を検出する場合には、異常検知日時の伝送音圧波形STWを確認することは、有用である。騒音計20は、監視対象設備10が発生した騒音のみならず、監視対象設備10の外部で発生した騒音も集音する。このため、サーバ機40の環境監視部44は、監視対象設備10の外部で発生した騒音に基づいて、監視対象設備10に異常が発生したと判定し、異常検知状態になる場合もある。そこで、ユーザが、実際に異常検知日時の伝送音圧波形STWを参照することにより、環境監視部44の判定結果が正しかったか否かを判断できる。
【0031】
また、上述したように、レベル波形SLと比較して、音圧波形SWは、単位時間あたりのデータ量が大きい。そして、本実施形態によれば、ネットワーク30において音圧波形SWが伝送音圧波形STWとして伝送される頻度を、レベル波形SLが伝送レベル波形STLとして伝送される頻度よりも低くすることができる。なお、ここで「頻度」とは、「伝送されるデータ量/生成されるデータ量」を指す。伝送レベル波形STLの伝送頻度RTL(第1の伝送頻度、図示せず)は、「(伝送レベル波形STLのデータ量)/(レベル波形SLのデータ量)」となり、例えば「1.0」である。
【0032】
また、伝送音圧波形STWの伝送頻度RTW(第2の伝送頻度、図示せず)は、「(伝送音圧波形STWのデータ量)/(音圧波形SWのデータ量)」となる。伝送音圧波形STWは、特段の事情があった場合に伝送されるため、伝送頻度RTWは「1.0」よりも小さな値になる。すなわち、第1の伝送頻度(伝送頻度RTL)と第2の伝送頻度(伝送頻度RTW)とが異なる値である(この例では第2の伝送頻度は第1の伝送頻度よりも小さい)。これにより、本実施形態によれば、ネットワーク30の負荷を抑制することが可能である。また、異常の可能性を検知した場合に伝送音圧波形STWを確認可能とすることにより、環境監視システム101として、実用上は充分なデータを得ることができる。
【0033】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態による環境監視システム102のブロック図である。なお、以下の説明において、上述した第1実施形態の各部に対応する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
図4において、環境監視システム102は、監視対象設備70と、サーバ機40と、ユーザ端末50と、を備えている。サーバ機40およびユーザ端末50の構成は第1実施形態のもの(
図1参照)と同様である。監視対象設備70は、ネットワークインタフェース12と、共通データロガー13と、前処理部14と、環境センサ群60と、を備えている。
【0034】
そして、環境センサ群60は、臭気計15(第2の計測部)と、温湿度計16(第2の計測部)と、風向風速計17(第2の計測部)と、騒音計20(第1の計測部)と、を備えている。ここで、騒音計20の構成は第1実施形態のもの(
図1参照)と同様である。
【0035】
臭気計15は、監視対象設備10の空気中における臭気分子の量を計測する。温湿度計16は、監視対象設備10における温度および湿度を計測する。風向風速計17は、監視対象設備10における風向および風速を計測する。臭気計15、温湿度計16および風向風速計17は、何れも図示を省略するが、騒音計20と同様に、物理量を計測するセンサと、該センサの出力信号を増幅する増幅部と、増幅された出力信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、を備えている。
【0036】
臭気計15、温湿度計16、風向風速計17および騒音計20は、それぞれ、出力データの出力形式や出力タイミング等が異なっている。そこで、前処理部14は、臭気計15、温湿度計16、風向風速計17および騒音計20の出力データに対して、時系列的に同期するように変換処理を行う。共通データロガー13は、変換処理が施された各出力データを、一時的に記憶する。
【0037】
上述した例において、騒音計20は、1秒毎にレベル波形SLを出力する。そこで、前処理部14は、このレベル波形SLの出力タイミングに同期するように、臭気計15、温湿度計16および風向風速計17の出力データを変換することが考えられる。例えば、臭気計15は、臭気値に応じたレベルのアナログ電圧信号を出力するものであったとする。すると、前処理部14は、1秒毎に該アナログ電圧信号をサンプリングし、そのサンプリング結果をデジタル信号に変換して共通データロガー13に記憶させる。
【0038】
また、例えば、温湿度計16は、温度および湿度の2系統のデジタル信号を出力するものであったとする。すると、前処理部14は、1秒毎に該2系統のデジタル信号をサンプリングし、そのサンプリング結果を共通データロガー13に記憶させる。例えば、風向風速計17は、風向および風速に応じたレベルの2系統のアナログ電圧信号を出力するものであったとする。すると、前処理部14は、1秒毎に該2系統のアナログ電圧信号をサンプリングし、そのサンプリング結果を2系統のデジタル信号に変換して共通データロガー13に記憶させる。
【0039】
なお、上述の温湿度計16のようにデジタル信号を出力する計測器においては、該デジタル信号にヘッダ部やフッタ部等が含まれる場合もある。このような場合、前処理部14は、ヘッダ部やフッタ部等を削除し、主としてペイロード部のみを抽出するとよい。これにより、共通データロガー13においては、レベル波形SL、臭気値、温度、湿度、風向および風速の全ての計測項目について、同期したデジタル信号を時系列的に配置することができる。
【0040】
ネットワークインタフェース12は、共通データロガー13において時系列的に配置されたデジタル信号である計測値を、ネットワーク30を介してサーバ機40に供給する。これにより、ユーザは、ユーザ端末50を介してデジタル信号記憶部46の内容を参照することにより、同一タイミングにおける異なる計測値(例えば騒音のレベル波形SLと臭気値)を比較することが可能になり、異常発生時において、異常発生原因を容易に調査することができる。
【0041】
また、上述のように、環境センサ群60における各計測器がヘッダ部やフッタ部等を含むデジタル信号を出力する場合には、前処理部14はこれらヘッダ部やフッタ部等を除去する。これにより、ネットワーク30において伝送されるデータ量を一層削減することができ、ネットワーク30の負荷を一層低減することができる。
【0042】
[第3実施形態]
〈第3実施形態の構成〉
図5は、第3実施形態による環境監視システム103のブロック図である。
図5において、環境監視システム103は、監視対象設備310と、サーバ機340と、ユーザ端末50と、を備えている。監視対象設備310とサーバ機340とは、ネットワーク30を介して接続されている。サーバ機340およびユーザ端末50のハードウエア構成は、第1実施形態のサーバ機40およびユーザ端末50のものと同様である。
【0043】
図6は、監視対象設備310のブロック図である。
図6において、監視対象設備310は、診断対象物7と、カメラ2と、マイクロホンアレイ3と、変換部11と、ネットワークインタフェース12と、共通データロガー13と、データ記憶部18と、を備えている。診断対象物7は、動作時に所定量の音を発生する機器であり、例えば、モータ、コンプレッサ、発電機などである。
【0044】
カメラ2は、診断対象物7を撮像して、カメラ画像を動画である映像信号SVとして出力するものである。なお、カメラ2は、診断対象物7が外観上の可動部分を有していないならば、これを1フレームだけ撮像して、映像信号SVを静止画像として出力するものであってもよい。マイクロホンアレイ3は、複数のマイクで構成され、診断対象物7の複数系統の音圧波形を測定するものである。また、診断対象物7は、動作状態を示す動作信号SDを出力する。
【0045】
変換部11は、マイクロホンアレイ3が出力する複数系統の音圧波形を、デジタル信号の音圧波形SWと、レベル波形SLと、パワースペクトルSPと、に変換する。音圧波形SWおよびレベル波形SLは、第1実施形態のものと同様である。パワースペクトルSPは、音圧波形SWを周波数成分毎に分割した信号に対して、レベル波形SLと同様にして算出した信号である。パワースペクトルSPは、例えば、FFT(Fast Fourier Transform)によって算出することができる。また、変換部11は、所定時間に渡るレベル波形SL、音圧波形SWおよびパワースペクトルSPを記憶する記憶部を備えている(図示略)。
【0046】
また、診断対象物7は、ネットワークインタフェース12を介して、自機の各種動作状態を示す動作信号SDを出力し、制御信号SCを受信する。ネットワークインタフェース12および共通データロガー13は第2実施形態のものと同様である。データ記憶部18は、レベル波形SL、音圧波形SWおよびパワースペクトルSPを一時的に記憶する。監視対象設備310は、通常は、主としてレベル波形SLおよび動作信号SDのみをサーバ機340に供給する。但し、サーバ機340がレベル波形SLに基づいて診断対象物7の異常を検出すると、共通データロガー13は、サーバ機340からの要求に基づいて、データ記憶部18に記憶された映像信号SV、音圧波形SW、パワースペクトルSP等をサーバ機340に供給する。
【0047】
ネットワークインタフェース12は、ネットワーク30を介して、映像信号SVと、動作信号SDと、複数系統のレベル波形SLおよび複数系統の音圧波形SWと、複数系統のパワースペクトルSPと、を出力する。
【0048】
図7は、サーバ機340の詳細を示すブロック図である。
図7において、サーバ機340は、音響信号処理部120と、記憶部130と、ネットワークインタフェース42と、を備えている。音響信号処理部120は、映像信号SVと、レベル波形SLと、パワースペクトルSPと、をネットワーク30およびネットワークインタフェース42を介して受信する。また、音響信号処理部120は、必要に応じて、ネットワークインタフェース42、ネットワーク30を介して、診断対象物7(
図6参照)に対して制御信号SCを送信する。
【0049】
音響信号処理部120は、複数系統のレベル波形SLおよびパワースペクトルSPに基づいて、診断対象物7の異常性を診断し、映像信号SVによるカメラ画像と重畳して、ユーザ端末350(
図5参照)の情報表示部54に表示するものである。音響信号処理部120は、診断対象物7(
図6参照)が複数の動作モードを有しているとき、動作信号SDに基づいて、何れの動作モードにおいて動作しているかを判断することにより、この動作モードにおける異常を特定する。音響信号処理部120は、さらに、制御信号SCによって診断対象物7の動作モードを指令することにより、所定の動作モードで動作させて異常を特定することができる。
【0050】
音響信号処理部120は、音圧マップ作成部121と、異常領域判定部122と、異常項目診断部123と、音圧マップ表示部124と、を有する。音響信号処理部120は、監視対象設備310の変換部11(
図6参照)が出力した音圧波形SWおよびレベル波形SLを処理して異常を判定し、カメラ画像と重畳してユーザ端末50(
図5参照)の情報表示部54に表示するものである。
【0051】
音圧マップ作成部121は、レベル波形SLを信号処理して、カメラ画像に対応する音圧マップを計算するものである。音圧マップは、カメラ画像に対応する2次元の各計算点におけるレベル波形SLの情報、または、パワースペクトルSPの情報を含み、これらの情報をカメラ画像内の位置情報と対応させたものである。異常領域判定部122は、音圧マップに基づいて、各計算点における異常の有無を判定するものである。
【0052】
異常項目診断部123は、音圧マップに基づいて、各計算点における異常項目(異常原因項目)を診断するものである。異常項目(異常原因項目)とは、異常性を有する評価項目であり、例えば、カメラ画像内の所定の位置情報と対応するレベル波形SL、所定周波数におけるパワースペクトルSP、または、カメラ画像内の所定の位置情報と対応するパワースペクトルSPなどである。なお、所定の位置情報または所定の周波数は、それぞれ単数であっても複数であってもよい。音圧マップ表示部124は、音圧マップなどをカメラ画像に重ねた診断結果の画面を、ネットワークインタフェース42を介してユーザ端末50の情報表示部54に表示させる。
【0053】
記憶部130は、正常性学習DB(データベース:DataBase)131と、測定結果DB132とを格納する。記憶部130は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)などで構成される。
正常性学習DB131は、正常品に係る単位空間を形成する逆行列データを格納している。正常性学習DB131は、音響信号処理部120が、異常の有無を判定するために参照する。
測定結果DB132は、音圧マップを格納している。測定結果DB132は、音響信号処理部120が測定した音圧マップを保存するために用いられる。
【0054】
〈第3実施形態の動作〉
図8は、第3実施形態における正常データ学習処理のフローチャートである。
サーバ機340が起動され、正常データ学習指示が入力されたならば、音響信号処理部120は、正常データ学習処理を開始する。この正常データ学習処理は、例えば参考文献1(田村希志臣、「よくわかるMTシステム−品質工学によるパターン認識の新技術」、日本規格協会、2009年8月)の42〜45頁において、詳細に記載されている。
【0055】
ステップS10〜S16において、音圧マップ作成部121は、既定数の音圧マップを記録する処理を繰り返す。ここで既定数は、この正常データ学習処理を行う上で予め定められた回数である。しかし、これに限られずに、既定の時間だけ正常データ学習処理を繰り返してもよい。
【0056】
ステップS11において、音圧マップ作成部121は、ネットワーク30を介してレベル波形SLと、パワースペクトルSPと、を受信する。
次に、ステップS12において、音圧マップ作成部121は、レベル波形SLに基づく音圧マップと、パワースペクトルSPに基づく音圧マップと、を作成する。
【0057】
次に、ステップS13において、音圧マップ表示部124は、映像信号SVに基づくカメラ画像に対して、レベル波形SLおよびパワースペクトルSPに基づく音圧マップを付加する。
次に、ステップS14において、音圧マップ表示部124は、音圧マップが付加されたカメラ画像を、ユーザ端末50の情報表示部54に表示する。
次に、ステップS15において、音圧マップ作成部121は、レベル波形SLおよびパワースペクトルSPに基づく音圧マップを測定結果DB132に記録する。
【0058】
次に、ステップS16において、音圧マップ作成部121は、既定数の音圧マップを記録する処理を繰り返したか否かを判断する。音圧マップ作成部121は、当該判断条件が成立しなかったならば、ステップS10の処理に戻って次の測定を行う。一方、当該判断条件が成立したならば、カメラ2とマイクロホンアレイ3の位置を変更すること無しに、ステップS17の処理を行う。
ステップS17において、音圧マップ作成部121は、ステップS10〜S16で測定して測定結果DB132に格納された音圧マップに基づき、正常データを学習する。より具体的には、音圧マップ作成部121は、取得した音圧マップを用いて、正常品に係わるデータの特徴量を抽出して、単位空間を形成する。ここで、「正常品」とは、診断対象物7のうち、予め定められた仕様を満たすものである。また、「単位空間」に関しては、後述する。
ステップS18において、音圧マップ作成部121は、正常品の特徴量を正常性学習DB131に記憶する。ステップS18の処理が終了すると、音響信号処理部120は、
図8に示す正常データ学習処理を終了する。
【0059】
図9は、第3実施形態における正常品の特徴量を抽出して単位空間を形成する処理のフローチャートである。なお、
図9に示す処理は、
図8に示すステップS17およびステップS18の処理に相当する。
音圧マップ作成部121が、
図8の正常データ学習処理において、ステップS17の処理を開始したならば、正常品の特徴量を抽出して単位空間を形成する処理を開始する。この
図9の処理は、上述した参考文献1の42〜45頁に詳細に記載されている。
ステップS20において、音圧マップ作成部121は、測定結果DB132の音圧マップから、j番目の評価項目に対する、i番目のサンプルデータx
ijを取得する。
ステップS21において、音圧マップ作成部121は、j番目の評価項目の平均値m
jおよび標準偏差σ
jを求める。音圧マップ作成部121は、下式(2)を計算して、サンプルデータx
ijをサンプルデータX
ijに規準化する。
【0061】
ステップS22において、音圧マップ作成部121は、規準化されたサンプルデータX
ijを用いて、評価項目間の相関係数を算出し、相関行列Rを計算する。
ステップS23において、音圧マップ作成部121は、計算した相関行列Rの逆行列R
-1を計算する。
ステップS24において、音圧マップ作成部121は、計算した逆行列R
-1を、正常性学習DB131に記憶する。ステップS24の処理は、
図8のステップS18の処理に対応する。
ステップS24の処理が終了すると、音圧マップ作成部121は、
図9の処理を終了する。
【0062】
図10は、第3実施形態における異常診断処理のフローチャートである。
サーバ機340が診断対象物7の異常を検出した場合に、サーバ機340は、異常診断処理を開始する。このとき、診断対象物7は、正常品と同一の位置に設置されている。これにより、マイクロホンアレイ3は、正常品に係る音圧マップと診断対象物7に係る音圧マップとを比較することができる。
ステップS30〜S32の処理は、音圧マップ作成部121によって行われる。
ステップS30において、音圧マップ作成部121は、マイクロホンアレイ3によって、診断対象物7の音を測定し、測定したアナログの音圧信号を変換部11により、デジタルの音圧波形SW、レベル波形SLおよびパワースペクトルSPに変換する。
【0063】
ステップS31において、音圧マップ作成部121は、カメラ画像に対応した複数の計算点を設定し、測定した音圧信号を用いて、各計算点における音圧レベルを算出する。
ステップS32において、音圧マップ作成部121は、測定した音圧信号を用いて、各計算点におけるパワースペクトルを算出する。ステップS32の処理が終了すると、音圧マップ作成部121は、ステップS30の処理に戻り、以降、ステップS30〜S32の処理を繰り返す。
【0064】
ステップS40〜S43の処理は、異常領域判定部122によって行われる。また、ステップS44の処理は、異常項目診断部123によって行われる。
ステップS40において、異常領域判定部122は、音圧マップ作成部121が算出した音圧レベルおよびパワースペクトルに基づいて、音圧信号の単位空間における距離を計算する音の異常性解析を行う。なお、単位空間における距離とは、マハラノビスの距離MD(Mahalanobis Distance)であり、例えば、
図2に示す正常データ学習処理で取得された正常データにおける項目間の相関行列Rの逆行列R
-1と、音圧レベルおよびパワースペクトルから計算される。具体的には、異常領域判定部122は、算出された音圧レベルおよびパワースペクトルから、次の式(3)で示される行ベクトルYを取得する。行ベクトルYは、式(2)で規準化された評価項目データを表している。
【0066】
異常領域判定部122は、さらに、次の式(4)を用いて、行ベクトルYの単位空間におけるマハラノビスの距離MDを算出する。
【0068】
ステップS41において、異常領域判定部122は、計算した距離が閾値より大きいか否かを判断する。異常領域判定部122は、当該判断条件が成立したならば(Yes)、ステップS42の処理を行い、当該判断条件が成立しなかったならば(No)、ステップS43の処理を行う。ここで閾値は、予め定められた値である。
【0069】
ステップS42において、異常領域判定部122は、音圧マップ作成部121が取得した音圧信号に基づき、
図3に示す正常品の特徴を抽出した単位空間を形成する処理を行って、単位空間を更新し、ステップS44の処理を行う。
ステップS43において、異常領域判定部122は、ユーザ端末50の音声再生部56によって、診断対象物7が異常性を有する旨のアラーム(警告音)を出力し、ステップS44の処理を行う。
【0070】
ステップS44において、異常項目診断部123は、異常領域判定部122が異常であると判断した音圧信号に対して、異常項目診断処理(
図11参照)を行い、異常性の度合いおよび異常原因項目を取得する。
ステップS50において、音圧マップ表示部124は、音圧マップ作成部121から音圧マップを取得し、異常項目診断部123から異常性の度合い、および、異常原因項目を取得する。音圧マップ表示部124は、音圧マップ、異常性の度合い、および、異常原因項目をカメラ画像に付加し、付加カメラ画像を生成する。
ステップS51において、音圧マップ表示部124は、情報表示部54に付加カメラ画像を表示する。なお、音圧マップ表示部124は、情報表示部54に音圧マップをそのまま表示してもよい。
【0071】
図11は、第3実施形態における異常項目診断処理を示すフローチャートである。
異常項目診断部123は、
図10の異常診断処理のステップS44の処理により、
図11に示す異常項目診断処理を開始する。異常項目診断処理は、参考文献1の61〜65頁に、その詳細が記載されている。
ステップS60において、異常項目診断部123は、異常領域判定部122により異常と判断された評価対象の音圧データを取得する。
ステップS61において、異常項目診断部123は、評価項目の2水準直交表の割り付けを行う。2水準直交表の割り付けは、評価項目を単位空間の項目として使用する第1水準の項目と、単位空間の項目として使用しない第2水準の項目に分割することである。なお、2水準直交表の割り付けの組み合わせは、予め定められており、その数は単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0072】
ステップS62〜S65において、異常項目診断部123は、2水準直交表の全ての項目の組み合わせに関して処理を繰り返す。
ステップS63において、異常項目診断部123は、当該組み合わせの第1水準および第2水準のそれぞれに関して、サンプルデータの平均と分散とを求めて、サンプルデータの規準化を行い、規準化されたサンプルデータの相関行列を求めることにより、単位空間の計算を行う。
ステップS64において、異常項目診断部123は、異常データの第1水準の各項目および第2水準の各項目に関して、当該単位空間における距離を計算する。
ステップS65において、異常項目診断部123は、2水準直交表の全ての項目組み合わせを繰り返したか否かを判断する。異常項目診断部123は、当該判断条件が成立しなかったならば、ステップS62の処理に戻って次の項目組み合わせの処理を行い、当該判断条件が成立したならば、ステップS66の処理を行う。
【0073】
ステップS66において、異常項目診断部123は、各評価項目の異常への影響度を算出する。すなわち、異常項目診断部123は、i番目の評価項目に対して、当該評価項目を第1水準の項目として含んでいる当該単位空間における異常データの距離を計算する。異常項目診断部123は、i番目の評価項目を第1水準の項目として含んでいる全ての項目組み合わせに関して、当該異常データの距離の平均値D
1,iを求める。異常項目診断部123は、i番目の評価項目に対して、当該評価項目を第2水準の項目として含む、当該単位空間における異常データの距離を計算する。
【0074】
異常項目診断部123は、i番目の評価項目を第2水準の項目として含む全ての項目組み合わせに関して、当該異常データの距離の平均値D
2,iを求める。そして、異常項目診断部123は、D
2,iのD
1,iに対する比を、i番目の評価項目の異常への影響度として算出する。
ステップS67において、異常項目診断部123は、影響度が最も大きい評価項目を異常原因項目として決定し、
図11の処理を終了する。
【0075】
図12は、第3実施形態における異常部位特定処理の動作説明図である。
図12に示すカメラ画像82は、その内部に診断対象物7の画像と、複数の格子1〜Nと、を含んでいる。図示のように、カメラ画像82は、N個の格子1〜Nを表示し、さらに円柱状の診断対象物7を重畳して表示している。格子1〜Nは、このカメラ画像82をN個の矩形領域に分割しており、診断対象物7の異常部位を特定するための各計算点に対応している。
【0076】
また、
図12に示すパワースペクトル84は、カメラ画像82内の格子1〜N上の音圧レベルのパワースペクトル(周波数情報)を示している。音圧マップ作成部121(
図7参照)は、変換部11からデジタル信号に変換された音圧信号および格子1〜Nの位置情報(方向情報)に基づいて、各格子1〜N上の音圧レベルを算出する。音圧マップ作成部121は、算出した各格子1〜N上の音圧レベルを、例えばFFTによって周波数毎に分割することにより、各格子1〜N上の音圧レベルのパワースペクトルを算出する。
【0077】
また、
図12に示すグラフ86は、例えば、評価項目数が2の場合に、サーバ機340が、
図9に示す正常品の特徴量を抽出して、単位空間を形成する処理を行った場合に、規格化されたサンプルデータX
ijを、二次元平面上に座標(X
i1,X
i2)として表示したグラフである。破線の楕円は、単位空間におけるマハラノビスの距離が閾値に等しい点全体である等距離線を示す。破線の楕円内には、正常品に係る各データが存在している。矩形点Aが示す音圧信号は、破線の楕円領域に含まれた正常データである。矩形点Bが示す音圧信号は、破線の楕円領域に含まれない異常データである。
【0078】
図13は、第3実施形態におけるカメラ画像表示画面90を示す図である。
カメラ画像表示画面90は、
図10のステップS51において、音圧マップ表示部124によって情報表示部54上に表示されたものである。なお、本実施形態の評価項目は、全ての格子のパワースペクトルが含んでいる、全ての周波数帯における音圧レベルの情報である。
カメラ画像表示画面90は、左側に付加カメラ画像90aを表示し、右側に周波数成分表示グラフ97を表示し、付加カメラ画像90aの近傍に拡大ボタン95と縮小ボタン96とをそれぞれ表示している。
付加カメラ画像90aは、診断対象物7の画像と、複数の格子とを重畳して表示している。付加カメラ画像90aの格子のひとつは、詳細表示領域92である。付加カメラ画像90aはさらに、下端にスクロールバー93を表示し、右端にスクロールバー94を表示している。
【0079】
詳細表示領域92は、ユーザがマウス(不図示)のクリックで指定した格子である。ユーザが何れかの格子をマウスでクリックして指定すると、音圧マップ表示部124は、指定された格子を詳細表示領域92とし、格子の境界線を強調表示するとともに、周波数成分表示グラフ97をカメラ画像表示画面90の右側に表示する。さらに、
図10の異常診断処理によって、詳細表示領域92におけるパワースペクトルの何れかの周波数成分が異常原因項目として診断された場合、音圧マップ表示部124は、詳細表示領域92の明度や彩度を変化させてハイライト表示する。これによりユーザは、異常原因項目を容易に視認することができる。
【0080】
拡大ボタン95は、例えば、ユーザがマウスでクリックすることにより、付加カメラ画像90aを拡大して表示するものである。
縮小ボタン96は、例えば、ユーザがマウスでクリックすることにより、付加カメラ画像90aを縮小して表示するものである。
スクロールバー93は、付加カメラ画像90aを拡大した際、ユーザがマウスでドラッグすることにより、この付加カメラ画像90aを横方向にスクロールするものである。同様にスクロールバー94は、付加カメラ画像90aを拡大した際、ユーザがマウスでドラッグすることにより、付加カメラ画像90aを縦方向にスクロールするものである。
【0081】
周波数成分表示グラフ97は、ユーザが何れかの格子を指定した際に表示されるものである。
周波数成分表示グラフ97の横軸は、1/3オクターブバンド中心周波数を示している。横軸の単位は、周波数[Hz]である。
周波数成分表示グラフ97の縦軸は、パワースペクトルの大きさを示している。縦軸の単位は、デシベル[dB]である。
正常データの折れ線は、
図9に示す正常品の特徴量を抽出して単位空間を形成する処理におけるステップS21において、当該格子の各周波数成分が評価項目iである場合に、算出されたサンプルデータx
ijの平均値を示している。
診断データの折れ線は、
図10に示す異常診断処理において、音圧マップ作成部121が、ステップS32において計算したパワースペクトルを示している。
異常寄与率の棒グラフは、正常データに対する正常データと異常データとの差の割合を示している。これにより、ユーザは、どの周波数領域に異常が発生しているかを容易に把握することができる。
【0082】
次に、
図14〜
図20を参照し、本実施形態において、サーバ機340(
図7参照)の制御により、ユーザ端末50の情報表示部54(
図5参照)に表示される、他の各種画面の内容を説明する。なお、
図14〜
図20に示す画面は、第1,第2実施形態において、環境監視部44(
図1参照)の制御により、情報表示部54に表示される画面としても適用することができる。
【0083】
まず、
図14は、レベル波形情報表示画面220の一例を示す図である。
レベル波形情報表示画面220は、時系列波形表示部222と、時系列波形表示部224と、スペクトログラム表示部226と、周波数成分レベル表示部228と、を含んでいる。ここで、時系列波形表示部222は、レベル波形SLの時系列波形を表示する。時系列波形表示部224は、レベル波形SLの各周波数成分の時系列波形を表示する。スペクトログラム表示部226は、レベル波形SLの各周波数成分のスペクトログラムを表示する。また、周波数成分レベル表示部228は、レベル波形SLの各周波数成分のレベルを表示する。
【0084】
図15は、他のレベル波形情報表示画面230の例を示す図である。
レベル波形情報表示画面230は、レベル波形SLの時系列波形を表示する時系列波形表示部232と、レベル波形SLの各周波数成分のスペクトログラムを表示するスペクトログラム表示部236と、を含んでいる。
【0085】
図16は、グラフ表示設定画面240の一例を示す図である。
グラフ表示設定画面240は、設定部242と、波形表示部244と、統計演算結果表示部246と、を含んでいる。設定部242は、表示すべきデータ種別、時間区間、時間の粒度、書式、表示レンジ等を設定する。波形表示部244は、設定部242で選択されたデータ種別の波形を表示する。図示の例において、波形表示部244には、時間範囲を示す矩形枠である時間範囲カーソル244a,244bが示されている。時間範囲カーソル244a,244bの有無、およびこれらの範囲は、ユーザの操作によって指定される。統計演算結果表示部246は、時間範囲カーソル244a,244bで選択された時間範囲内のデータに対して、各種統計演算を行った結果を表示する。
【0086】
図17は、異常度表示画面250の一例を示す図である。
異常度表示画面250には、レベル波形SLの時系列波形252と、時系列波形252の異常度を示す異常度波形254と、が表示される。ここで、時系列波形252の異常度は、レベル波形SLの各周波数成分に基づいて計算されたものである。
【0087】
図18は、他の異常度表示画面260の例を示す図である。
異常度表示画面260には、
図17の時系列波形252および異常度波形254と同様の時系列波形262および異常度波形264を含んでいる。さらに、異常度表示画面260には、図示の例において、時系列波形262および異常度波形264に重ねて、矩形枠である時間範囲カーソル266a,266bが示されている。時間範囲カーソル266a,266bの有無、およびこれらの範囲は、ユーザの操作によって指定される。時間範囲カーソル266a,266bは、例えば「診断対象物7(または監視対象設備10,70)以外の音声が混入した」とユーザが判断した範囲に設定するとよい。環境監視部44は、該時間範囲カーソル266a,266bの範囲を評価範囲から除外して、異常検知および異常予兆診断を行う。
【0088】
図19は、転送条件設定画面270の例を示す図である。
転送条件設定画面270は、転送条件、すなわち音圧波形SW等をサーバ機40,340に転送すべき条件を設定する画面である。
設定可能な、転送条件は、例えば、異常度が所定の異常度閾値以上になったか否か、レベル波形SLの絶対値が所定のレベル波形閾値以上になったか否か、等である。また、これらの閾値は、一部の周波数帯のパワースペクトルSPを合成した音圧レベルに対して定めることも可能である。また、上述した条件において、異常度等が上述の閾値以上で継続した時間が所定時間以上であること等も、転送条件に含めることもできる。
【0089】
図20は、機械学習の条件を定める機械学習設定画面280の例を示す図である。
機械学習設定画面280には、波形表示部282と、周波数成分選択部284と、矩形枠である時間範囲カーソル286a,286bと、が含まれている。波形表示部282は、レベル波形SLや、パワースペクトルSPの周波数成分毎のレベルの推移等、各種波形を表示する。周波数成分選択部284は、ユーザの操作によって一または複数の周波数成分を指定するものであり、指定された周波数成分が、正常データとして学習させる対象となる。また、時間範囲カーソル286a,286bはユーザの操作によって指定され、波形表示部282に表示された波形のうち、正常データとして学習させる期間を指定するものである。
【0090】
[実施形態の効果]
(第1,第2実施形態の効果)
以上のように第1,第2実施形態の環境監視システム101,102は、監視対象物(10,70)の物理量を計測して第1の計測データ(SL)と、第2の計測データ(SW)と、を出力する第1の計測部(20)と、第1の計測データ(SL)と、第2の計測データ(SW)とを記憶する記憶部と、第1の計測データ(SL)の全部または一部であって伝送対象となる第1の伝送データ(STL)と、第2の計測データ(SW)の全部または一部であって伝送対象となる第2の伝送データ(STW)と、をネットワーク30を介して送信する第1のネットワークインタフェース(12)と、送信された第1の伝送データ(STL)と、第2の伝送データ(STW)と、をネットワーク30を介して受信する第2のネットワークインタフェース(42)と、送信された第1の伝送データ(STL)と、第2の伝送データ(STW)と、に基づいて監視対象物(10,70)を監視する環境監視部44と、を備え、第1の伝送データ(STL)のデータ量を第1の計測データ(SL)のデータ量で除算した結果である第1の伝送頻度(RTL)と、第2の伝送データ(STW)のデータ量を第2の計測データ(SW)のデータ量で除算した結果である第2の伝送頻度(RTW)と、が異なる値であることを特徴とする。このように、第1の伝送頻度(RTL)と、第2の伝送頻度(RTW)と、を異なる値にすることにより、ネットワーク負荷を抑制しつつ異常原因を容易に調査できる。
【0091】
また、第1の計測部(20)は騒音計であると一層好ましい。これにより、騒音に関わる第1の伝送頻度(RTL)と、第2の伝送頻度(RTW)と、を異なる値にでき、騒音に関わる適切な計測結果を取得できる。
【0092】
また、第2の計測データ(SW)は音圧波形であり、第1の計測データ(SL)は、音圧波形の所定のレベル算出周期内における平均レベルであると一層好ましい。これにより、音圧波形の平均レベルである第1の計測データ(SL)と、音圧波形である第2の計測データ(SW)と、を第1の伝送頻度(RTL)および第2の伝送頻度(RTW)に応じて適切に伝送できる。
【0093】
また、第2の伝送頻度(RTW)は第1の伝送頻度(RTL)よりも小さいと一層好ましい。これにより、比較的データ量の多い第2の計測データ(SW)の第2の伝送頻度(RTW)を小さくすることができ、ネットワーク30の負荷と小さくすることができる。
【0094】
また、第2実施形態の環境監視システム(102)のように、監視対象物(70)の、第1の計測部(20)とは異なる物理量を計測する第2の計測部(15,16,17)と、第1の計測データ(SL)と、第2の計測データ(SW)と、第2の計測部(15,16,17)による計測結果と、を受信して第1のネットワークインタフェース(12)に供給する前処理部14と、をさらに備えると一層好ましい。これにより、第1の計測データ(SL)と、第2の計測データ(SW)と、に加えて、第2の計測部(15,16,17)による計測結果を適切に伝送できる。
【0095】
また、第2実施形態の環境監視システム(102)のように、前処理部14と、第1のネットワークインタフェース(12)と、の間に設けられ、第1の計測データ(SL)と、第2の計測部(15,16,17)による計測結果と、を同期させ、時系列で配置する共通データロガー13をさらに備えると一層好ましい。これにより、第1の計測データ(SL)と、第2の計測部(15,16,17)による計測結果と、を同期させ、時系列で配置することができる。
【0096】
また、第2の計測データ(SW)の単位時間当たりのデータ量は、第1の計測データ(SL)の単位時間当たりのデータ量の1000倍以上であり、第2の計測データ(SW)のサンプリングレートは、第1の計測データ(SL)のサンプリングレートの1000倍以上であると一層好ましい。これにより、第2の計測データ(SW)の第2の伝送頻度(RTW)を小さくすることによりネットワーク負荷を低減する効果を一層顕著にすることができる。
【0097】
(第3実施形態の効果)
また、上述した第3実施形態では、第1,第2実施形態に加えて、次の(A)〜(G)のような効果がある。
(A) サーバ機340は、診断対象物7の異常の有無を判定し、判定した異常を、カメラ画像が示す診断対象物7の位置、および、当該位置における音圧と対応させて、情報表示部54などに表示している。これにより、サーバ機340は、任意の形状の診断対象物7において、異常部位を音によって特定して表示することができる。
【0098】
(B) サーバ機340は、音圧マップを、カメラ画像に対応した各計算点における音圧レベルの情報、または、パワースペクトルの情報を含んで表示している。これにより、サーバ機340は、診断対象物7の破損などのように、音のパワースペクトルに影響を与える異常を検出することができる。
【0099】
(C) サーバ機340は、正常品群の音圧マップの特徴を表した単位空間を格納した正常性学習DB131を備えている。異常領域判定部122は、正常性学習DB131の単位空間における診断対象物7の音圧マップの原点からの距離が閾値を超えているか否かを判断することによって、診断対象物7の異常の有無を判定している。これにより、ユーザが煩雑な設定を行うことなく、容易に異常の有無を判定することができる。
【0100】
(D) 診断対象物7の単位空間における距離は、正常品群の音圧マップの項目間の相関行列の逆行列によって算出される。異常領域判定部122は、診断対象物7の何れの計算点での異常も判定しなかったならば、この診断対象物7を新たに正常品群に加えて、測定した音圧マップから相関行列の逆行列を再計算して、単位空間を更新している。これにより、サーバ機340は、診断対象物7を診断するたびに、正常性学習DB131の単位空間の精度を高めることができ、診断対象物7の異常の判定精度を高めることができる。
【0101】
(E) サーバ機340は、診断対象物7の音圧マップに基づいて、各計算点での異常原因項目を診断する異常項目診断部123を備えている。これにより、サーバ機340は、診断対象物7の異常性に深く係わる位置情報や周波数情報などの異常性の要因を特定し、これを情報表示部54などに表示することができる。
【0102】
(F) サーバ機340のマイクロホンアレイ3は、複数のマイクで構成されている。これにより、サーバ機340は、音圧信号に係わる位置情報を取得することができる。
【0103】
(G) サーバ機340は、診断対象物7の動作モードを判断して、この動作モードにおける単位空間の距離を算出する。これにより、サーバ機340は、診断対象物7の動作モードごとの異常を、それぞれ判断することができる。
【0104】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、
必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、
ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、
もしくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを
示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。
実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0105】
(1)上記実施形態におけるサーバ機40,340は一般的なコンピュータによって実現できるため、
図8〜
図11に示したフローチャート、その他上述した各種処理を実行するプログラム等を記憶媒体に格納し、または伝送路を介して頒布してもよい。
【0106】
(2)
図8〜
図11に示した処理、その他上述した各処理は、上記実施形態ではプログラムを用いたソフトウエア的な処理として説明したが、その一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit;特定用途向けIC)、あるいはFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いたハードウエア的な処理に置き換えてもよい。
【0107】
(3)上記各実施形態において、レベル波形SLは全てネットワーク30を介して伝送したため、レベル波形SLのデータ量と、伝送レベル波形STLのデータ量は等しくなっていた。しかし、両者は必ずしも等しくする必要はなく、例えば、レベル波形SLを1サンプル(1秒)毎に間引いたものを伝送レベル波形STLとして送信してもよい。
【0108】
(4)上記実施形態において記憶される各種データは、ネットワーク30に接続された他のサーバコンピュータ等(図示せず)に記憶させるようにしてもよい。すなわち、環境監視システムとして、記憶部の存在場所は限定されない。
【解決手段】環境監視システム101は、送信された第1の伝送データSTLと、第2の伝送データSTWと、をネットワーク30を介して受信する第2のネットワークインタフェース42と、送信された前記1の伝送データSTLと、前記第2の伝送データSTWと、に基づいて監視対象物10を監視する環境監視部44と、を備え、前記第1の伝送データSTLのデータ量を前記第1の計測データSLのデータ量で除算した結果である第1の伝送頻度RTLと、前記第2の伝送データSTWのデータ量を前記第2の計測データSWのデータ量で除算した結果である第2の伝送頻度RTWと、を異なる値にした。