【文献】
ABDULLAH, R. S. A. R. et al.,“Micro-Doppler Estimation and Analysis of Slow Moving Objects in Forward Scattering Radar System”,REMOTE SENSING [online],2017年07月06日,Volume 9, Number 7,Article 699, 23 Pages,<DOI:10.3390/rs9070699>
【文献】
青柳貴洋 他(AOYAGI, T. et al.),“シングアラウンド式超音波センサによる人体動作の測定(Measurement of human movement by sing-around ultrasonic sensors)”,電子情報通信学会技術研究報告(IEICE TECHNICAL REPORT [ISSN:0913-5685]),2015年07月14日,Volume 115, Number 152,Pages 49-53
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記電子機器の周囲の物体のうち所定の速度で移動する人間の腕の動きに特徴的な動きを含む物体をターゲットとして検出するように制御する、請求項1に記載の電子機器。
前記制御部は、前記電子機器の周囲の物体のうち歩行又は走行している人間が振る腕の動きに特徴的な動きを含む物体をターゲットとして検出するように制御する、請求項1又は2に記載の電子機器。
前記制御部は、前記電子機器の周囲の物体のうち所定の速度で移動する人間の腕の動きに特徴的な動きを含むと判定される物体をターゲットとして検出するように制御する、請求項2に記載の電子機器。
前記制御部は、前記電子機器の周囲の物体が所定の速度で移動する人間の腕の動きに特徴的な動きを含むか否か判定し、前記物体が所定の速度で移動する人間の腕の動きに特徴的な動きを含むと判定されたら、当該物体をターゲットとして検出するように制御する、請求項4に記載の電子機器。
前記制御部は、前記電子機器の周囲の物体が所定の速度で移動する所定の周期の振り子運動に特徴的な動きを含む場合、前記物体は所定の速度で移動する人間の腕の動きに特徴的な動きを含むと判定する、請求項4又は5に記載の電子機器。
前記制御部は、前記電子機器の周囲の物体が所定の速度Vhで移動する運動と当該物体の当該所定の速度Vhを基準とした相対速度Vrが周期的にゼロになる運動とを合成した動きを含む場合、前記物体は所定の速度で移動する人間の腕の動きに特徴的な動きを含むと判定する、請求項4から6のいずれかに記載の電子機器。
前記制御部は、前記電子機器の周囲の物体が所定の速度Vhで移動する運動と当該物体の当該所定の速度Vhを基準とした相対速度Vrが周期的に極大値Vm及び極小値−Vmの繰り返しになる運動とを合成した動きを含む場合、前記物体は所定の速度で移動する人間の腕の動きに特徴的な動きを含むと判定する、請求項4から7のいずれかに記載の電子機器。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述したレーダのように、送信された送信波が所定の物体に反射した反射波を受信することにより、当該物体を検出する技術において、歩行又は走行している人間をターゲットとして検出できれば有益である。すなわち、上述のような物体を検出する技術において、移動している無生物又は動物などではなく、歩行又は走行している人間を検出することができれば、有益である。本開示の目的は、歩行又は走行している人間をターゲットとして検出し得る電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供することにある。一実施形態によれば、歩行又は走行している人間をターゲットとして検出し得る電子機器、電子機器の制御方法、及びプログラムを提供することができる。以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
一実施形態に係る電子機器は、例えば自動車などのような乗り物(移動体)に搭載されることで、当該移動体の周囲に存在する所定の物体をターゲットとして検出することができる。このために、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した送信アンテナから、移動体の周囲に送信波を送信することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、移動体に設置した受信アンテナから、送信波が反射された反射波を受信することができる。送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方は、例えば移動体に設置されたレーダセンサ等に備えられてもよい。
【0012】
以下、典型的な例として、一実施形態に係る電子機器が、乗用車のような自動車に搭載される構成について説明する。しかしながら、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、自動車に限定されない。一実施形態に係る電子機器は、自動運転自動車、バス、トラック、オートバイ、自転車、船舶、航空機、トラクターなどの農作業装置、除雪車、清掃車、パトカー、救急車、消防車、ヘリコプター、及びドローンなど、種々の移動体に搭載されてよい。また、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、必ずしも自らの動力で移動する移動体にも限定されない。例えば、一実施形態に係る電子機器が搭載される移動体は、トラクターにけん引されるトレーラー部分などとしてもよい。一実施形態に係る電子機器は、センサ及び所定の物体の少なくとも一方が移動し得るような状況において、センサと物体との間の距離などを測定することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、センサ及び物体の双方が静止していても、センサと物体との間の距離などを測定することができる。
【0013】
まず、一実施形態に係る電子機器による物体の検出の例を説明する。
【0014】
図1は、一実施形態に係る電子機器の使用態様を説明する図である。
図1は、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサを、移動体に設置した例を示している。
【0015】
図1に示す移動体100には、一実施形態に係る送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。また、
図1に示す移動体100は、一実施形態に係る電子機器1を搭載(例えば内蔵)しているものとする。電子機器1の具体的な構成については後述する。センサ5は、例えば送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方を備えるものとしてよい。また、センサ5は、電子機器1に含まれる制御部10(
図2)の少なくとも一部など、他の機能部の少なくともいずれかを、適宜含んでもよい。
図1に示す移動体100は、乗用車のような自動車の車両としてよいが、任意のタイプの移動体としてよい。
図1において、移動体100は、例えば図に示すY軸正方向(進行方向)に移動(走行又は徐行)していてもよいし、他の方向に移動していてもよいし、また移動せずに静止していてもよい。
【0016】
図1に示すように、移動体100には、送信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。
図1に示す例において、送信アンテナ及び受信アンテナを備えるセンサ5は、移動体100の前方に1つだけ設置されている。ここで、センサ5が移動体100に設置される位置は、
図1に示す位置に限定されるものではなく、適宜、他の位置としてもよい。例えば、
図1に示すようなセンサ5を、移動体100の左側、右側、及び/又は、後方などに設置してもよい。また、このようなセンサ5の個数は、移動体100における測定の範囲及び/又は精度など各種の条件(又は要求)に応じて、1つ以上の任意の数としてよい。センサ5は、移動体100の内部に設置されているとしてもよい。移動体100の内部とは、例えばバンパー内の空間、ボディ内の空間、ヘッドライト内の空間、又は運転スペースの空間などでよい。
【0017】
センサ5は、送信アンテナから送信波として電磁波を送信する。例えば移動体100の周囲に所定の物体(例えば
図1に示す物体200)が存在する場合、センサ5から送信された送信波の少なくとも一部は、当該物体によって反射されて反射波となる。そして、このような反射波を例えばセンサ5の受信アンテナによって受信することにより、移動体100に搭載された電子機器1は、当該物体をターゲットとして検出することができる。
【0018】
送信アンテナを備えるセンサ5は、典型的には、電波を送受信するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))センサとしてよい。しかしながら、センサ5は、レーダセンサに限定されない。一実施形態に係るセンサ5は、例えば光波によるLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)の技術に基づくセンサとしてもよい。これらのようなセンサは、例えばパッチアンテナなどを含んで構成することができる。RADAR及びLIDARのような技術は既に知られているため、詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略することがある。
【0019】
図1に示す移動体100に搭載された電子機器1は、センサ5の送信アンテナから送信された送信波の反射波を受信アンテナから受信する。このようにして、電子機器1は、移動体100から所定の距離内に存在する所定の物体200をターゲットとして検出することができる。例えば、
図1に示すように、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との間の距離Lを測定することができる。また、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の物体200との相対速度も測定することができる。さらに、電子機器1は、所定の物体200からの反射波が、自車両である移動体100に到来する方向(到来角θ)も測定することができる。
【0020】
ここで、物体200とは、例えば移動体100に隣接する車線を走行する対向車、移動体100に並走する自動車、及び移動体100と同じ車線を走行する前後の自動車などの少なくともいずれかとしてよい。また、物体200とは、オートバイ、自転車、ベビーカー、歩行者などの人間、動物、昆虫その他の生命体、ガードレール、中央分離帯、道路標識、歩道の段差、壁、マンホール、家、ビル、橋などの建造物、又は障害物など、移動体100の周囲に存在する任意の物体としてよい。さらに、物体200は、移動していてもよいし、停止していてもよい。例えば、物体200は、移動体100の周囲に駐車又は停車している自動車などとしてもよい。また、物体200は、車道にあるものだけではなく、歩道、農場、農地、駐車場、空き地、道路上の空間、店舗内、横断歩道、水上、空中、側溝、川、他の移動体の中、建物、その他の構造物の内部若しくは外部など、適宜な場所にあるものとしてよい。本開示において、センサ5が検出する物体は、無生物の他に、人、犬、猫、及び馬、その他の動物などの生物も含む。本開示のセンサ5が検出する物体は、レーダ技術により検知される、人、物、及び動物などを含む物標を含む。
【0021】
図1において、センサ5の大きさと、移動体100の大きさとの比率は、必ずしも実際の比率を示すものではない。また、
図1において、センサ5は、移動体100の外部に設置した状態を示してある。しかしながら、一実施形態において、センサ5は、移動体100の各種の位置に設置してよい。例えば、一実施形態において、センサ5は、移動体100のバンパーの内部に設置して、移動体100の外観に現れないようにしてもよい。また、センサ5が移動体100に設置される位置は、移動体100の外部及び内部のいずれでもよい。移動体100の内部とは、例えば、移動体100のボディの内側、バンパーの内側、ヘッドライトの内部、車内の空間内、又は、これらの任意の組み合わせでよい。
【0022】
以下、典型的な例として、センサ5の送信アンテナは、ミリ波(30GHz以上)又は準ミリ波(例えば20GHz〜30GHz付近)などのような周波数帯の電波を送信するものとして説明する。例えば、センサ5の送信アンテナは、77GHz〜81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を有する電波を送信してもよい。
【0023】
図2は、一実施形態に係る電子機器1の構成例を概略的に示す機能ブロック図である。以下、一実施形態に係る電子機器1の構成の一例について説明する。
【0024】
ミリ波方式のレーダによって距離などを測定する際、周波数変調連続波レーダ(以下、FMCWレーダ(Frequency Modulated Continuous Wave radar)と記す)が用いられることが多い。FMCWレーダは、送信する電波の周波数を掃引して送信信号が生成される。したがって、例えば79GHzの周波数帯の電波を用いるミリ波方式のFMCWレーダにおいて、使用する電波の周波数は、例えば77GHz〜81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を持つものとなる。79GHzの周波数帯のレーダは、例えば24GHz、60GHz、76GHzの周波数帯などの他のミリ波/準ミリ波レーダよりも、使用可能な周波数帯域幅が広いという特徴がある。以下、例として、このような実施形態について説明する。本開示で利用されるFMCWレーダレーダ方式は、通常より短い周期でチャープ信号を送信するFCM方式(Fast-Chirp Modulation)を含むとしてもよい。信号生成部21が生成する信号はFM−CW方式の信号に限定されない。信号生成部21が生成する信号はFM−CW方式以外の各種の方式の信号としてもよい。記憶部40に記憶される送信信号列は、これら各種の方式によって異なるものとしてよい。例えば、上述のFM−CW方式のレーダ信号の場合、時間サンプルごとに周波数が増加する信号及び減少する信号を使用してよい。上述の各種の方式は、公知の技術を適宜適用することができるため、より詳細な説明は省略する。
【0025】
図2に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、センサ5とECU(Electronic Control Unit)50とから構成される。ECU50は、移動体100の様々な動作を制御する。ECU50は、少なくとも1以上のECUにより構成されるものとしてよい。一実施形態に係る電子機器1は、制御部10を備えている。また、一実施形態に係る電子機器1は、送信部20、受信部30A〜30D、及び記憶部40などの少なくともいずれかのような、他の機能部を適宜含んでもよい。
図2に示すように、電子機器1は、受信部30A〜30Dのように、複数の受信部を備えてよい。以下、受信部30Aと、受信部30Bと、受信部30Cと、受信部30Dとを区別しない場合、単に「受信部30」と記す。
【0026】
制御部10は、距離FFT処理部11、距離検出判定部12、速度FFT処理部13、速度検出判定部14、到来角推定部15、及び物体検出部16を備えてよい。制御部10に含まれるこれらの機能部については、さらに後述する。
【0027】
送信部20は、
図2に示すように、信号生成部21、シンセサイザ22、位相制御部23A及び23B、増幅器24A及び24B、並びに、送信アンテナ25A及び25Bを備えてよい。以下、位相制御部23Aと、位相制御部23Bとを区別しない場合、単に「位相制御部23」と記す。また、以下、増幅器24Aと、増幅器24Bとを区別しない場合、単に「増幅器24」と記す。また、以下、送信アンテナ25Aと、送信アンテナ25Bとを区別しない場合、単に「送信アンテナ25」と記す。
【0028】
受信部30は、
図2に示すように、それぞれ対応する受信アンテナ31A〜31Dを備えてよい。以下、受信アンテナ31Aと、受信アンテナ31Bと、受信アンテナ31Cと、受信アンテナ31Dとを区別しない場合、単に「受信アンテナ31」と記す。また、複数の受信部30は、それぞれ、
図2に示すように、LNA32、ミキサ33、IF部34、及びAD変換部35を備えてよい。受信部30A〜30Dは、それぞれ同様の構成としてよい。
図2においては、代表例として、受信部30Aのみの構成を概略的に示してある。
【0029】
上述のセンサ5は、例えば送信アンテナ25及び受信アンテナ31を備えるものとしてよい。また、センサ5は、制御部10などの他の機能部の少なくともいずれかを適宜含んでもよい。
【0030】
一実施形態に係る電子機器1が備える制御部10は、電子機器1を構成する各機能部の制御をはじめとして、電子機器1全体の動作の制御を行うことができる。制御部10は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。制御部10は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、制御部10は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。制御部10は、制御部10の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。
【0031】
記憶部40は、制御部10において実行されるプログラム、及び、制御部10において実行された処理の結果などを記憶してよい。また、記憶部40は、制御部10のワークメモリとして機能してよい。記憶部40は、例えば半導体メモリ又は磁気ディスク等により構成することができるが、これらに限定されず、任意の記憶装置とすることができる。また、例えば、記憶部40は、本実施形態に係る電子機器1に挿入されたメモリカードのような記憶媒体としてもよい。また、記憶部40は、上述のように、制御部10として用いられるCPUの内部メモリであってもよい。
【0032】
一実施形態において、記憶部40は、送信アンテナ25から送信する送信波T及び受信アンテナ31から受信する反射波Rによって物体を検出する範囲を設定するための各種パラメータを記憶してよい。
【0033】
一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信部20及び受信部30の少なくとも一方を制御することができる。この場合、制御部10は、記憶部40に記憶された各種情報に基づいて、送信部20及び受信部30の少なくとも一方を制御してよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、信号生成部21に信号の生成を指示したり、信号生成部21が信号を生成するように制御したりしてもよい。
【0034】
信号生成部21は、制御部10の制御により、送信アンテナ25から送信波Tとして送信される信号(送信信号)を生成する。信号生成部21は、送信信号を生成する際に、例えば制御部10による制御に基づいて、送信信号の周波数を割り当ててよい。具体的には、信号生成部21は、例えば制御部10によって設定されたパラメータにしたがって、送信信号の周波数を割り当ててよい。例えば、信号生成部21は、制御部10又は記憶部40から周波数情報を受け取ることにより、例えば77〜81GHzのような周波数帯域の所定の周波数の信号を生成する。信号生成部21は、例えば電圧制御発振器(VCO)のような機能部を含んで構成してよい。
【0035】
信号生成部21は、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。以下説明する各機能部も、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、可能な場合には、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。
【0036】
一実施形態に係る電子機器1において、信号生成部21は、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)を生成してよい。特に、信号生成部21は、周波数が周期的に線形に変化する信号(線形チャープ信号)を生成してもよい。例えば、信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで周期的に線形に増大するチャープ信号としてもよい。また、例えば、信号生成部21は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで線形の増大(アップチャープ)及び減少(ダウンチャープ)を周期的に繰り返す信号を生成してもよい。信号生成部21が生成する信号は、例えば制御部10において予め設定されていてもよい。また、信号生成部21が生成する信号は、例えば記憶部40などに予め記憶されていてもよい。レーダのような技術分野で用いられるチャープ信号は既知であるため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。信号生成部21によって生成された信号は、シンセサイザ22に供給される。
【0037】
図3は、信号生成部21が生成するチャープ信号の例を説明する図である。
【0038】
図3において、横軸は経過する時間を表し、縦軸は周波数を表す。
図3に示す例において、信号生成部21は、周波数が周期的に線形に変化する線形チャープ信号を生成する。
図3においては、各チャープ信号を、c1,c2,…,c8のように示してある。
図3に示すように、それぞれのチャープ信号において、時間の経過に伴って周波数が線形に増大する。
【0039】
図3に示す例において、c1,c2,…,c8のように8つのチャープ信号を含めて、1つのサブフレームとしている。すなわち、
図3に示すサブフレーム1及びサブフレーム2などは、それぞれc1,c2,…,c8のように8つのチャープ信号を含んで構成されている。また、
図3に示す例において、サブフレーム1〜サブフレーム16のように16のサブフレームを含めて、1つのフレームとしている。すなわち、
図3に示すフレーム1及びフレーム2などは、それぞれ16のサブフレームを含んで構成されている。また、
図3に示すように、フレーム同士の間には、所定の長さのフレームインターバルを含めてもよい。
図3に示す1つのフレームは、例えば30ミリ秒から50ミリ秒程度の長さとしてよい。
【0040】
図3において、フレーム2以降も同様の構成としてよい。また、
図3において、フレーム3以降も同様の構成としてよい。一実施形態に係る電子機器1において、信号生成部21は、任意の数のフレームとして送信信号を生成してよい。また、
図3においては、一部のチャープ信号は省略して示している。このように、信号生成部21が生成する送信信号の時間と周波数との関係は、例えば記憶部40などに記憶しておいてよい。
【0041】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、複数のチャープ信号を含むサブフレームから構成される送信信号を送信してよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、サブフレームを所定数含むフレームから構成される送信信号を送信してよい。
【0042】
以下、電子機器1は、
図3に示すようなフレーム構造の送信信号を送信するものとして説明する。しかしながら、
図3に示すようなフレーム構造は一例であり、例えば1つのサブフレームに含まれるチャープ信号は8つに限定されない。一実施形態において、信号生成部21は、任意の数(例えば任意の複数)のチャープ信号を含むサブフレームを生成してよい。また、
図3に示すようなサブフレーム構造も一例であり、例えば1つのフレームに含まれるサブフレームは16に限定されない。一実施形態において、信号生成部21は、任意の数(例えば任意の複数)のサブフレームを含むフレームを生成してよい。信号生成部21は、異なる周波数の信号を生成してよい。信号生成部21は、周波数fがそれぞれ異なる帯域幅の複数の離散的な信号を生成してもよい。
【0043】
図2に戻り、シンセサイザ22は、信号生成部21が生成した信号の周波数を、所定の周波数帯の周波数まで上昇させる。シンセサイザ22は、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択された周波数まで、信号生成部21が生成した信号の周波数を上昇させてよい。送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば制御部10によって設定されてもよい。また、送信アンテナ25から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば記憶部40に記憶されていてもよい。シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、位相制御部23及びミキサ33に供給される。位相制御部23が複数の場合、シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、複数の位相制御部23のそれぞれに供給されてよい。また、受信部30が複数の場合、シンセサイザ22によって周波数が上昇された信号は、複数の受信部30におけるそれぞれのミキサ33に供給されてよい。
【0044】
位相制御部23は、シンセサイザ22から供給された送信信号の位相を制御する。具体的には、位相制御部23は、例えば制御部10による制御に基づいて、シンセサイザ22から供給された信号の位相を適宜早めたり遅らせたりすることにより、送信信号の位相を調整してよい。この場合、位相制御部23は、複数の送信アンテナ25から送信されるそれぞれの送信波Tの経路差に基づいて、それぞれの送信信号の位相を調整してもよい。位相制御部23がそれぞれの送信信号の位相を適宜調整することにより、複数の送信アンテナ25から送信される送信波Tは、所定の方向において強め合ってビームを形成する(ビームフォーミング)。この場合、ビームフォーミングの方向と、複数の送信アンテナ25がそれぞれ送信する送信信号の制御すべき位相量との相関関係は、例えば記憶部40に記憶しておいてよい。位相制御部23によって位相制御された送信信号は、増幅器24に供給される。
【0045】
増幅器24は、位相制御部23から供給された送信信号のパワー(電力)を、例えば制御部10による制御に基づいて増幅させる。センサ5が複数の送信アンテナ25を備える場合、複数の増幅器24は、複数の位相制御部23のうちそれぞれ対応するものから供給された送信信号のパワー(電力)を、例えば制御部10による制御に基づいてそれぞれ増幅させてよい。送信信号のパワーを増幅させる技術自体は既に知られているため、より詳細な説明は省略する。増幅器24は、送信アンテナ25に接続される。
【0046】
送信アンテナ25は、増幅器24によって増幅された送信信号を、送信波Tとして出力(送信)する。すなわち、送信アンテナ25は、送信波Tを送信してよい。センサ5が複数の送信アンテナ25を備える場合、複数の送信アンテナ25は、複数の増幅器24のうちそれぞれ対応するものによって増幅された送信信号を、それぞれ送信波Tとして出力(送信)してよい。送信アンテナ25は、既知のレーダ技術に用いられる送信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。
【0047】
このようにして、一実施形態に係る電子機器1は、送信アンテナ25を備え、送信アンテナ25から送信波Tとして送信信号(例えば送信チャープ信号)を送信することができる。ここで、電子機器1を構成する各機能部のうちの少なくとも1つは、1つの筐体に収められてもよい。また、この場合、当該1つの筐体は、容易に開けることができない構造としてもよい。例えば送信アンテナ25、受信アンテナ31、増幅器24が1つの筐体に収められ、かつ、この筐体が容易に開けられない構造となっているとよい。さらに、ここで、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、送信アンテナ25は、例えばレーダカバーのようなカバー部材を介して、移動体100の外部に送信波Tを送信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で送信アンテナ25を覆うことにより、送信アンテナ25が外部との接触により破損したり不具合が発生したりするリスクを低減することができる。また、上記レーダカバー及びハウジングは、レドームとも呼ばれることがある。
【0048】
図2に示す電子機器1は、送信アンテナ25を2つ備える例を示している。しかしながら、一実施形態において、電子機器1は、任意の数の送信アンテナ25を備えてもよい。一方、一実施形態において、電子機器1は、送信アンテナ25から送信される送信波Tが所定方向にビームを形成するようにする場合、複数の送信アンテナ25を備えてよい。一実施形態において、電子機器1は、任意の複数の送信アンテナ25を備えてもよい。この場合、電子機器1は、複数の送信アンテナ25に対応させて、位相制御部23及び増幅器24もそれぞれ複数備えてよい。そして、複数の位相制御部23は、シンセサイザ22から供給されて複数の送信アンテナ25から送信される複数の送信波の位相を、それぞれ制御してよい。また、複数の増幅器24は、複数の送信アンテナ25から送信される複数の送信信号のパワーを、それぞれ増幅してよい。また、この場合、センサ5は、複数の送信アンテナを含んで構成してよい。このように、
図2に示す電子機器1は、複数の送信アンテナ25を備える場合、当該複数の送信アンテナ25から送信波Tを送信するのに必要な機能部も、それぞれ複数含んで構成してよい。
【0049】
受信アンテナ31は、反射波Rを受信する。反射波Rは、送信波Tが所定の物体200に反射したものとしてよい。すなわち、受信アンテナ31は、送信波Tが反射された反射波Rを受信してよい。受信アンテナ31は、例えば受信アンテナ31A〜受信アンテナ31Dのように、複数のアンテナを含んで構成してよい。受信アンテナ31は、既知のレーダ技術に用いられる受信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。受信アンテナ31は、LNA32に接続される。受信アンテナ31によって受信された反射波Rに基づく受信信号は、LNA32に供給される。
【0050】
一実施形態に係る電子機器1は、複数の受信アンテナ31から、例えばチャープ信号のような送信信号(送信チャープ信号)として送信された送信波Tが所定の物体200によって反射された反射波Rを受信することができる。このように、送信波Tとして送信チャープ信号を送信する場合、受信した反射波Rに基づく受信信号は、受信チャープ信号と記す。すなわち、電子機器1は、受信アンテナ31から反射波Rとして受信信号(例えば受信チャープ信号)を受信する。ここで、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、受信アンテナ31は、例えばレーダカバーのようなカバー部材を介して、移動体100の外部から反射波Rを受信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で受信アンテナ31を覆うことにより、受信アンテナ31が外部との接触により破損又は不具合が発生するリスクを低減することができる。また、上記レーダカバー及びハウジングは、レドームとも呼ばれることがある。
【0051】
また、受信アンテナ31が送信アンテナ25の近くに設置される場合、これらをまとめて1つのセンサ5に含めて構成してもよい。すなわち、1つのセンサ5には、例えば少なくとも1つの送信アンテナ25及び少なくとも1つの受信アンテナ31を含めてもよい。例えば、1つのセンサ5は、複数の送信アンテナ25及び複数の受信アンテナ31を含んでもよい。このような場合、例えば1つのレーダカバーのようなカバー部材で、1つのレーダセンサを覆うようにしてもよい。
【0052】
LNA32は、受信アンテナ31によって受信された反射波Rに基づく受信信号を低ノイズで増幅する。LNA32は、低雑音増幅器(Low Noise Amplifier)としてよく、受信アンテナ31から供給された受信信号を低雑音で増幅する。LNA32によって増幅された受信信号は、ミキサ33に供給される。
【0053】
ミキサ33は、LNA32から供給されるRF周波数の受信信号を、シンセサイザ22から供給される送信信号に混合する(掛け合わせる)ことにより、ビート信号を生成する。ミキサ33によって混合されたビート信号は、IF部34に供給される。
【0054】
IF部34は、ミキサ33から供給されるビート信号に周波数変換を行うことにより、ビート信号の周波数を中間周波数(IF(Intermediate Frequency)周波数)まで低下させる。IF部34によって周波数を低下させたビート信号は、AD変換部35に供給される。
【0055】
AD変換部35は、IF部34から供給されたアナログのビート信号をデジタル化する。AD変換部35は、任意のアナログ−デジタル変換回路(Analog to Digital Converter(ADC))で構成してよい。AD変換部35によってデジタル化されたビート信号は、制御部10の距離FFT処理部11に供給される。受信部30が複数の場合、複数のAD変換部35によってデジタル化されたそれぞれのビート信号は、距離FFT処理部11に供給されてよい。
【0056】
距離FFT処理部11は、AD変換部35から供給されたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、物体200との間の距離を推定する。距離FFT処理部11は、例えば高速フーリエ変換を行う処理部を含んでよい。この場合、距離FFT処理部11は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。距離FFT処理部11は、高速フーリエ変換以外のフーリエ変換を行うとしてもよい。
【0057】
距離FFT処理部11は、AD変換部35によってデジタル化されたビート信号に対してFFT処理を行う(以下、適宜「距離FFT処理」と記す)。例えば、距離FFT処理部11は、AD変換部35から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。AD変換部35によってデジタル化されたビート信号は、信号強度(電力)の時間変化として表すことができる。距離FFT処理部11は、このようなビート信号にFFT処理を行うことにより、各周波数に対応する信号強度(電力)として表すことができる。距離FFT処理部11は、距離FFT処理によって得られた結果においてピークが所定の閾値以上である場合、そのピークに対応する距離に、所定の物体200があると判断してもよい。例えば、一定誤警報確率(CFAR(Constant False Alarm Rate))による検出処理のように、外乱信号の平均電力又は振幅から閾値以上のピーク値が検出された場合、送信波を反射する物体(反射物体)が存在するものと判断する方法が知られている。
【0058】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、送信波Tとして送信される送信信号、及び、反射波Rとして受信される受信信号に基づいて、送信波Tを反射する物体200をターゲットとして検出することができる。一実施形態において、上述のような動作は、電子機器1の制御部10が行うものとしてよい。
【0059】
距離FFT処理部11は、1つのチャープ信号(例えば
図3に示すc1)に基づいて、所定の物体との間の距離を推定することができる。すなわち、電子機器1は、距離FFT処理を行うことにより、
図1に示した距離Lを測定(推定)することができる。ビート信号にFFT処理を行うことにより、所定の物体との間の距離を測定(推定)する技術自体は公知のため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われた結果(例えば距離の情報)は、速度FFT処理部13に供給されてよい。また、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われた結果は、距離FFT処理部13及び/又は物体検出部16などにも供給されてよい。
【0060】
距離検出判定部12は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われた結果に基づいて、距離についての判定処理を行う。例えば、具体的には、距離検出判定部12は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理された結果におけるピークが所定の閾以上である場合に、当該距離に物体が存在すると判定してよい。このように、距離検出判定部12は、所定の距離において、ターゲットを検出したか否かを判定する。
【0061】
速度FFT処理部13は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、物体200との相対速度を推定する。速度FFT処理部13は、例えば高速フーリエ変換を行う処理部を含んでよい。この場合、速度FFT処理部13は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。速度FFT処理部13は、高速フーリエ変換以外のフーリエ変換を行うとしてもよい。
【0062】
速度FFT処理部13は、距離FFT処理部11によって距離FFT処理が行われたビート信号に対してさらにFFT処理を行う(以下、適宜「速度FFT処理」と記す)。例えば、速度FFT処理部13は、距離FFT処理部11から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。速度FFT処理部13は、チャープ信号のサブフレーム(例えば
図3に示すサブフレーム1)に基づいて、所定の物体との相対速度を推定することができる。上述のようにビート信号に距離FFT処理を行うと、複数のベクトルを生成することができる。これら複数のベクトルに対して速度FFT処理を行った結果におけるピークの位相を求めることにより、所定の物体との相対速度を推定することができる。すなわち、電子機器1は、速度FFT処理を行うことにより、
図1に示した移動体100と所定の物体200との相対速度を測定(推定)することができる。距離FFT処理を行った結果に対して速度FFT処理を行うことにより、所定の物体との相対速度を測定(推定)する技術自体は公知のため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。速度FFT処理部13によって速度FFT処理が行われた結果(例えば速度の情報)は、速度検出判定部14に供給されてよい。また、速度FFT処理部13によって速度FFT処理が行われた結果は、到来角推定部15及び/又は物体検出部16などにも供給されてよい。
【0063】
速度検出判定部14は、速度FFT処理部13によって速度FFT処理が行われた結果に基づいて、速度についての判定処理を行う。例えば、具体的には、速度検出判定部14は、速度FFT処理部13によって速度FFT処理された結果におけるピークが所定の閾以上である場合に、当該速度に物体が存在すると判定してよい。このように、速度検出判定部14は、所定の速度において、ターゲットを検出したか否かを判定する。
【0064】
到来角推定部15は、速度FFT処理部13によって速度FFT処理が行われた結果に基づいて、所定の物体200から反射波Rが到来する方向を推定する。電子機器1は、複数の受信アンテナ31から反射波Rを受信することで、反射波Rが到来する方向を推定することができる。例えば、複数の受信アンテナ31は、所定の間隔で配置されているものとする。この場合、送信アンテナ25から送信された送信波Tが所定の物体200に反射されて反射波Rとなり、所定の間隔で配置された複数の受信アンテナ31はそれぞれ反射波Rを受信する。そして、到来角推定部15は、複数の受信アンテナ31がそれぞれ受信した反射波Rの位相、及びそれぞれの反射波Rの経路差に基づいて、反射波Rが受信アンテナ31に到来する方向を推定することができる。すなわち、電子機器1は、速度FFT処理が行われた結果に基づいて、
図1に示した到来角θを測定(推定)することができる。
【0065】
速度FFT処理が行われた結果に基づいて、反射波Rが到来する方向を推定する技術は各種提案されている。例えば、既知の到来方向推定のアルゴリズムとしては、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)、及びESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Technique)などが知られている。したがって、公知の技術についてのより詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。到来角推定部15によって推定された到来角θの情報(角度情報)は、物体検出部16に供給されてよい。
【0066】
物体検出部16は、距離FFT処理部11、速度FFT処理部13、及び到来角推定部15の少なくともいずれかから供給される情報に基づいて、送信波Tが送信された範囲に存在する物体を検出する。物体検出部16は、供給された距離の情報、速度の情報、及び角度情報に基づいて例えばクラスタリング処理を行うことにより、物体検出を行ってもよい。データをクラスタリングする際に用いるアルゴリズムとして、例えばDBSCAN(Density-based spatial clustering of applications with noise)などが知られている。クラスタリング処理においては、例えば検出される物体を構成するポイントの平均電力を算出してもよい。物体検出部16において検出された物体の距離の情報、速度の情報、角度情報、及び電力の情報は、例えばECU50などに供給されてもよい。この場合、移動体100が自動車である場合、例えばCAN(Controller Area Network)のような通信インタフェースを用いて通信を行ってもよい。
【0067】
一実施形態に係る電子機器1が備えるECU50は、移動体100を構成する各機能部の制御をはじめとして、移動体100全体の動作の制御を行うことができる。ECU50は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。ECU50は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、ECU50は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。ECU50は、ECU50の動作に必要なメモリを適宜含んでもよい。また、制御部10の機能の少なくとも一部がECU50の機能とされてもよいし、ECU50の機能の少なくとも一部が制御部10の機能とされてもよい。
【0068】
図2に示す電子機器1は、2つの送信アンテナ25及び4つの受信アンテナ31を備えている。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1は、任意の数の送信アンテナ25及び任意の数の受信アンテナ31を備えてもよい。例えば、2つの送信アンテナ25及び4つの受信アンテナ31を備えることにより、電子機器1は、仮想的に8本のアンテナにより構成される仮想アンテナアレイを備えるものと考えることができる。このように、電子機器1は、例えば仮想8本のアンテナを用いることにより、
図3に示す16のサブフレームの反射波Rを受信してもよい。
【0069】
次に、一実施形態に係る電子機器1によるターゲット検出処理について説明する。
【0070】
近年、自動車のような車両などの周辺に存在する障害物などを検出可能なセンサには、例えば、ミリ波レーダ、LiDAR(Light Detection and Ranging, Laser Imaging Detection and Ranging)、又は超音波センサなど、各種のものが存在する。これらのセンサの中で、障害物を検出する精度及び信頼度、並びにコストなどの観点から、ミリ波方式のレーダが採用されることが多い。
【0071】
ミリ波レーダを使用して車両周辺の障害物等を検出する技術として、例えば、死角検知(Blind Spot Detection:BSD)、後退中又は出庫時の横方向検知(Cross traffic alert:CTA)、フリースペース検知(Free space detection:FSD)などがある。これらの検知においては、ミリ波レーダのアンテナの物理的な形状に依存する電波放射範囲を予め設定して、物体検出範囲を決定するのが一般的である。すなわち、各レーダのそれぞれにおいて、それぞれの用途又は機能などに応じて、ミリ波レーダのアンテナの物理的な形状は予め決まっており、物体検出範囲も予め規定されている仕様が一般的である。このため、複数の異なるレーダの機能を実現するためには、複数の異なるレーダセンサが必要になる。
【0072】
しかしながら、用途又は機能に応じて複数のレーダセンサをそれぞれ用意するのでは、コストの観点から不利である。また、例えば、アンテナの物理的形状が予め決まっていて放射範囲も決まっていると、そのアンテナの用途及び機能を変更することは困難である。また、例えば、アンテナの物理的形状及び放射範囲が決まっていて、放射範囲内の対象物全てを検出する場合、処理する情報量が増大する。この場合、不必要な物体も対象物として誤検出してしまう可能性があるため、検出の信頼度が低下し得る。また、例えば、アンテナの物理的形状及び放射範囲が決まっていて、センサの取り付け数を増やすと、車両(主にハーネス)の重量が増大するため燃費が低下したり、消費電力が増大するため燃費が低下したりし得る。さらに、複数のレーダセンサを用いて検出を行うと、センサ同士の間で遅延が発生し得るため、このような検出に基づいて自動運転又は運転アシストなどを行うと、処理に時間がかかり得る。これは、レーダの更新レートよりCANの処理速度が遅く、さらにフィードバックにも時間を要するためである。また、物体検出範囲の異なる複数のセンサを用いて検出を行うと、制御が煩雑になり得る。
【0073】
したがって、一実施形態に係る電子機器1は、1つのレーダセンサを複数の機能又は用途で使用可能にする。また、一実施形態に係る電子機器1は、1つのレーダセンサによって複数の機能又は用途をあたかも同時に実現するかのような動作を可能にする。
【0074】
図4は、一実施形態に係る電子機器1の動作の例を説明する図である。
【0075】
図4に示す移動体100は、一実施形態に係る電子機器1を搭載しているものとする。また、
図4に示すように、移動体100には、後部左側に少なくとも1つのセンサ5が設置されているものとする。また、
図4に示すように、センサ5は、移動体100に搭載されたECU50に接続されている。
図4に示す移動体100には、後部左側以外にも、後部左側に設置されたセンサ5と同様に動作するセンサ5が設置されていてもよい。以下の説明においては、後部左側に設置された1つのセンサ5のみ説明し、他のセンサについては説明を省略する。また、以下の説明において、電子機器1を構成する各機能部の制御は、制御部10、位相制御部23、及びECU50の少なくともいずれかによって制御することができるものとする。
【0076】
図4に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、複数の検出範囲のいずれかを選択して物体を検出することができる。また、一実施形態に係る電子機器1は、複数の検出範囲のいずれかに切り替えて物体を検出することができる。
図4においては、一実施形態に係る電子機器1(特にセンサ5)が送信する送信信号及び電子機器1(特にセンサ5)が受信する受信信号によって物体を検出する範囲を表している。
【0077】
例えば、一実施形態に係る電子機器1は、例えば駐車支援(Parking assist)の用途又は機能で使用する場合、
図4に示す(1)の範囲を物体検出範囲として、物体検出を行うことができる。
図4に示す物体検出範囲(1)は、例えば駐車支援(Parking assist)のために専用に設計されたレーダの物体検出範囲と同一又は類似の範囲としてよい。また、例えば、一実施形態に係る電子機器1は、例えばフリースペース検知(FSD)の用途又は機能で使用する場合、
図4に示す(2)の範囲を物体検出範囲として、物体検出を行うことができる。
図4に示す物体検出範囲(2)は、例えばフリースペース検知(FSD)のために専用に設計されたレーダの物体検出範囲と同一又は類似の範囲としてよい。
【0078】
また、例えば、一実施形態に係る電子機器1は、例えば出庫時衝突検知(CTA)の用途又は機能で使用する場合、
図4に示す(3)の範囲を物体検出範囲として、物体検出を行うことができる。
図4に示す物体検出範囲(3)は、例えば出庫時衝突検知(CTA)のために専用に設計されたレーダの物体検出範囲と同一又は類似の範囲としてよい。また、例えば、一実施形態に係る電子機器1は、例えば死角検知(BSD)の用途又は機能で使用する場合、
図4に示す(4)の範囲を物体検出範囲として、物体検出を行うことができる。
図4に示す物体検出範囲(4)は、例えば死角検知(BSD)のために専用に設計されたレーダの物体検出範囲と同一又は類似の範囲としてよい。
【0079】
さらに、一実施形態に係る電子機器1は、例えば
図4に示す物体検出範囲(1)から(4)までのうち複数の範囲を、任意に切り替えて物体を検出することができる。この場合に切り替えられる複数の範囲は、上述したように、例えば移動体100の運転者などの操作に基づいて決定されてもよいし、制御部10又はECU50などの指示に基づいて決定されてもよい。
【0080】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、物体検出範囲(1)から(4)までうちいずれか複数の範囲によって物体検出を行う場合、制御部10は、任意の情報に基づいて、いずれか複数の物体検出範囲を決定してよい。また、複数の物体検出範囲が決定されると、制御部10は、決定された複数の物体検出範囲において送信信号の送信及び受信信号の受信を行うための各種のパラメータを設定してよい。制御部10が設定する各種のパラメータは、例えば、記憶部40に記憶しておいてよい。
【0081】
このようなパラメータは、電子機器1による物体検出を行う前に、例えばテスト環境における実測等に基づいて定められてもよい。また、このようなパラメータが記憶部40に記憶されていない場合、過去の測定データなどのような所定のデータに基づいて、制御部10が適宜推定するパラメータとしてもよい。また、このようなパラメータが記憶部40に記憶されていない場合、制御部10は、例えば外部とネットワーク接続することにより、適当なパラメータを取得してもよい。
【0082】
このように、一実施形態において、制御部10は、送信波Tとして送信される送信信号及び反射波Rとして受信される受信信号に基づいて、送信波Tを反射する物体を検出する。また、一実施形態において、制御部10は、送信信号及び受信信号による複数の物体検出範囲(例えば
図4の物体検出範囲(1)から(4)まで)を可変にしてよい。
【0083】
さらに、一実施形態において、制御部10は、複数の物体検出範囲を切り替え可能にしてよい。例えば、制御部10は、物体検出範囲(3)において物体検出を行っていたところ、物体検出を行う範囲を物体検出範囲(3)から物体検出範囲(2)に切り替えてもよい。また、一実施形態において、制御部10は、物体を検出する用途及び機能(例えば駐車支援(PA)及び死角検知(BSD)などのような)の少なくとも一方に応じて、複数の物体検出範囲を可変にしてもよい。また、一実施形態において、制御部10は、後述のように、複数の物体検出範囲を微小時間の経過に伴って可変にしてよい。
【0084】
また、一実施形態において、制御部10は、物体の検出結果に基づいて、複数の物体検出範囲を決定してもよい。例えば、物体検出によってすでに所定の物体が検出されている場合、制御部10は、その検出された物体の位置に応じて、複数の物体検出範囲を決定してもよい。また、一実施形態において、制御部10は、複数の物体検出範囲のいずれかにおける送信信号及び受信信号のみを処理してもよい。
【0085】
このように、一実施形態に係る電子機器1は、例えばミリ波レーダなどによる物体検出において、検出範囲の切り出し(設定及び/又は切り替え)を行うことができる。よって、一実施形態に係る電子機器1によれば、複数の物体検出範囲において物体を検出したい状況に柔軟に対応することができる。また、一実施形態に係る電子機器1は、物体の検出範囲を予め広く設定しておいて、電子機器1によって検出される距離及び/又は角度などの情報に基づいて、検出の必要な範囲のみの情報を切り出すことができる。よって、一実施形態に係る電子機器1によれば、必要な検出範囲の情報を、処理負荷を増加させずに処理することができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、物体検出の利便性を向上させることができる。
【0086】
一実施形態に係る電子機器1は、
図4に示したように、送信信号及び受信信号による物体検出範囲を可変にするが、さらに当該物体検出範囲に送信波Tのビームを向けるようにしてもよい。これにより、所望の切り出し範囲における物体の検出を高精度で行うことができる。
【0087】
例えば、一実施形態に係る電子機器1は、上述のように、死角検知(BSD)の用途又は機能として、
図4に示す複数の検出範囲のうち物体検出範囲(4)を選択して物体検出を行うことができる。一実施形態に係る電子機器1は、さらに、物体検出範囲(4)の方向に向けて、複数の送信アンテナ25から送信する送信波Tのビームを形成(ビームフォーミング)してよい。例えば遠方の物体検出を行う場合、その方向に複数の送信アンテナ25から送信する送信波のビームによってビームフォーミングを行うことで、物体検出範囲を高精度にカバーすることができる。
【0088】
図5及び
図6は、一実施形態に係る電子機器における送信アンテナ及び受信アンテナの配置の例を示す図である。
【0089】
一実施形態に係る電子機器1のセンサ5は、
図5に示すように、例えば2つの送信アンテナ25A及び25A’を備えてよい。また、一実施形態に係る電子機器1のセンサ5は、
図5に示すように、4つの受信アンテナ31A、31B、31C、及び31Dを備えてよい。
【0090】
4つの受信アンテナ31A、31B、31C、及び31Dは、それぞれ水平方向(X軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。このように、複数の受信アンテナ31を水平方向に並べて配置して、送信波Tを複数の受信アンテナ31によって受信することで、電子機器1は、反射波Rが到来する方向を推定することができる。ここで、送信波Tの波長λは、送信波Tの周波数帯域を例えば77GHzから81GHzまでとする場合、その中心周波数79GHzの送信波Tの波長としてもよい。
【0091】
また、2つの送信アンテナ25A及び25A’は、それぞれ垂直方向(Z軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。このように、複数の送信アンテナ25を垂直方向に並べて配置して、送信波Tを複数の送信アンテナ25によって送信することで、電子機器1は、送信波Tのビームの向きを、垂直方向に変化させることができる。
【0092】
また、一実施形態に係る電子機器1のセンサ5は、
図6に示すように、例えば4つの送信アンテナ25A、25A’、25B、及び25B’を備えてもよい。
【0093】
ここで、2つの送信アンテナ25A及び25Bは、
図6に示すように、それぞれ水平方向(X軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。また、2つの送信アンテナ25A’及び25B’も、
図6に示すように、それぞれ水平方向(X軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。このように、複数の送信アンテナ25を水平方向に並べて配置して、送信波Tを複数の送信アンテナ25によって送信することで、電子機器1は、送信波Tのビームの向きを、水平方向にも変化させることができる。
【0094】
一方、
図6に示すように、2つの送信アンテナ25A及び25A’は、それぞれ垂直方向(Z軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。また、
図6に示すように、2つの送信アンテナ25B及び25B’も、それぞれ垂直方向(Z軸方向)に、送信波Tの波長をλとして、間隔λ/2だけ離間して配置されている。このように、
図6に示す配置においても、複数の送信アンテナ25を垂直方向に並べて配置して、送信波Tを複数の送信アンテナ25によって送信することで、電子機器1は、送信波Tのビームの向きを、垂直方向に変化させることができる。
【0095】
一実施形態に係る電子機器1において、複数の送信アンテナ25から送信する送信波Tのビームフォーミングを行う場合、複数の送信波Tが送信される際の経路差に基づいて、それぞれの送信波Tの位相が所定の方向において揃うようにしてよい。一実施形態に係る電子機器1において、それぞれの送信波Tの位相が所定の方向において揃うようにするために、例えば位相制御部23は、複数の送信アンテナ25から送信される送信波の少なくとも1つの位相を制御してもよい。
【0096】
複数の送信波Tの位相が所定の方向において揃うようにするために制御する位相の量は、当該所定の方向に対応させて、記憶部40に記憶しておいてよい。すなわち、ビームフォーミングを行う際のビームの向きと、位相の量との関係は、記憶部40に記憶しておいてよい。
【0097】
このような関係は、電子機器1による物体検出を行う前に、例えばテスト環境における実測等に基づいて定められてもよい。また、このような関係が記憶部40に記憶されていない場合、過去の測定データなどのような所定のデータに基づいて、位相制御部23が適宜推定する関係としてもよい。また、このような関係が記憶部40に記憶されていない場合、位相制御部23は、例えば外部とネットワーク接続することにより、適当な関係を取得してもよい。
【0098】
一実施形態に係る電子機器1において、複数の送信アンテナ25から送信する送信波Tのビームフォーミングを行うための制御は、制御部10及び位相制御部23の少なくとも一方が行ってよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、少なくとも位相制御部23を含む機能部を、送信制御部とも記す。
【0099】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、送信アンテナ25は、複数の送信アンテナを含んでもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、受信アンテナ31も、複数の受信アンテナを含んでもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、送信制御部(例えば位相制御部23)は、複数の送信アンテナ25から送信される送信波Tが所定方向にビームを形成(ビームフォーミング)するように制御してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、送信制御部(例えば位相制御部23)は、物体を検出する範囲の方向にビームを形成してもよい。
【0100】
また、一実施形態に係る電子機器1において、上述のように、送信アンテナ25は垂直方向成分を含んで配置された複数の送信アンテナ25を含んでよい。この場合、一実施形態に係る電子機器1において、位相制御部23(送信制御部)は、ビームの方向を、物体検出範囲の方向に、垂直方向成分を含んで変化させてもよい。
【0101】
さらに、一実施形態に係る電子機器1において、上述のように、送信アンテナ25は水平方向成分を含んで配置された複数の送信アンテナ25を含んでもよい。この場合、一実施形態に係る電子機器1において、位相制御部23(送信制御部)は、ビームの方向を、物体検出範囲の方向に、水平方向成分を含んで変化させてもよい。
【0102】
また、一実施形態に係る電子機器1において、送信制御部(例えば位相制御部23)は、物体を検出する範囲の少なくとも一部をカバーする方向にビームを形成してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、送信制御部(例えば位相制御部23)は、複数の送信アンテナ25から送信されるそれぞれの送信波Tの位相が所定の方向において揃うように、複数の送信波の少なくとも1つの位相を制御してもよい。
【0103】
一実施形態に係る電子機器1によれば、複数の送信アンテナ25から出力される広周波数の帯域信号(例えばFMCW信号)の周波数情報に基づいて位相の補償値を算出し、複数の送信アンテナのそれぞれに周波数依存の位相補償を実施することができる。これにより、送信信号の取り得る全周波数帯域において、特定の方向に対してビームフォーミングを高精度に行うことができる。
【0104】
このようなビームフォーミングによれば、物体の検出が必要な特定の方向において、物体を検出可能な距離を拡大することができる。また、上述のようなビームフォーミングによれば、不要な方向からの反射信号を低減することができる。このため、距離・角度を検出する精度を向上させることができる。
【0105】
図7は、一実施形態に係る電子機器1によって実現されるレーダの検出距離を説明する図である。
【0106】
一実施形態に係る電子機器1は、上述のように、物体検出範囲の切り出し及び/又は送信波のビームフォーミングを行うことができる。このような、物体検出範囲の切り出し及び送信波のビームフォーミングの少なくとも一方を採用することで、送信信号及び受信信号によって物体を検出可能な距離の範囲を規定することができる。
【0107】
図7に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、例えばr1の範囲で物体検出を行うことができる。
図7に示す範囲r1は、例えば超短距離レーダ(Ultra short range radar:USRR)によって物体検出を行うことができる範囲としてよい。また、
図7に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、例えばr2の範囲で物体検出を行うことができる。
図7に示す範囲r2は、例えば短距離レーダ(Short range radar:SRR)によって物体検出を行うことができる範囲としてよい。さらに、
図7に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、例えばr3の範囲で物体検出を行うことができる。
図7に示す範囲r3は、例えば中距離レーダ(Mid range radar:MRR)によって物体検出を行うことができる範囲としてよい。上述のように、一実施形態に係る電子機器1は、例えば範囲r1、範囲r2、及び範囲r3のいずれかの範囲を適宜切り替えて物体検出を行うことができる。このように検出距離の異なるレーダは、検出距離が長くなればなるほど、距離の測定精度(測定の分解能)が低くなる傾向にある。
【0108】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信信号及び受信信号によって物体を検出する距離の範囲を、複数の物体検出範囲のいずれかに応じて設定してもよい。
【0109】
次に、一実施形態に係る電子機器1における異なるレーダ種別について説明する。一実施形態に係る電子機器1は、例えば複数の種別のレーダとして機能することができる。すなわち、一実施形態に係る電子機器1は、複数のレーダ種別において、それぞれ異なる送信波Tを送信することができる。
【0110】
図8から
図10は、一実施形態に係る電子機器1が、送信波Tのフレーム等ごとに、異なる種別のレーダの機能を設定した(割り当てた)様子を表す図である。
【0111】
図8は、
図3と同様に、送信波Tのフレームを表す図である。
図8に示す例においては、送信波Tのフレーム1及びフレーム2を示してあるが、これ以降のフレームも続くものとしてもよい。
【0112】
図3に示した各フレームは、一例として16個のサブフレームを含むものとした。また、
図3に示した各フレームに含まれるサブフレームのそれぞれは、一例として8つのチャープ信号を含むものとした。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1において、フレーム及び/又はサブフレームの構成は、
図3に示した例に限定されない。
【0113】
例えば、一実施形態に係る電子機器1は、
図8に示す各フレームのように、それぞれ3個のサブフレームを含むフレームで構成される送信波Tを送信してもよい。また、この場合、これらの各サブフレームは、例えばそれぞれ8つのチャープ信号を含んでもよいし、任意の数のチャープ信号を含んでもよい。
【0114】
一実施形態に係る電子機器1は、例えば
図8に示すように、送信波Tのサブフレームごとに異なるレーダ種別の機能を設定して(割り当てて)よい。例えば、一実施形態に係る電子機器1は、例えば送信波Tのサブフレームごとに、複数の物体検出範囲のいずれかを設定してよい。このように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、複数の物体検出範囲のいずれかを、送信波Tのフレームごとに、又はフレームを構成する部分ごとに設定してもよい。例えば、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、複数の物体検出範囲のいずれかを、送信波Tのサブフレームごとに切り替えて、送信信号の送信及び受信信号の受信を行ってもよい。
図8に示す例においては、送信波Tのサブフレーム1にはレーダ1の機能が設定され、送信波Tのサブフレーム2にはレーダ2の機能が設定され、送信波Tのサブフレーム3にはレーダ3の機能が設定され、以降も同様の機能が繰り返し設定されてよい。一実施形態において、送信波Tの各フレーム(例えばフレーム1)は、例えば数10マイクロ秒などのオーダとしてよい。このため、一実施形態に係る電子機器1は、非常に短い時間ごとに異なるレーダとして機能する。したがって、一実施形態に係る電子機器1は、1つのレーダセンサによって複数の種別(例えば機能又は用途)のレーダをあたかも同時に実現するかのように動作する。
【0115】
例えば、
図8に示すサブフレームごとに、
図7において説明した異なる種別のレーダの機能を設定して(割り当てて)よい。すなわち、例えば
図8に示すサブフレーム1において設定されるレーダ1の機能は、
図7に示したr1の範囲で物体検出を行うものとしてもよい。また、例えば
図8に示すサブフレーム2において設定されるレーダ2の機能は、
図7に示したr2の範囲で物体検出を行うものとしてもよい。また、例えば
図8に示すサブフレーム3において設定されるレーダ3の機能は、
図7に示したr3の範囲で物体検出を行うものとしてもよい。一実施形態において、異なる種別のレーダの機能に応じて、例えば設定される(割り当てられる)送信波Tの周波数の帯域幅が異なるようにしてもよい。
【0116】
図9は、
図3と同様に、送信波Tのフレームに含まれるサブフレームを表す図である。
図9に示す例においては、送信波Tのサブフレーム1からサブフレーム6までを示してあるが、これ以降のサブフレームも続くものとしてよい。また、
図9に示すサブフレーム1からサブフレーム6までは、例えば、
図3に示したフレーム1に含まれる16個のサブフレームの一部をなすものとしてもよい。また、
図9に示す各サブフレームのそれぞれは、
図3に示した各サブフレームと同様に、それぞれ例えば8つのチャープ信号を含んでもよいし、任意の数のチャープ信号を含んでもよい。
【0117】
図8に示す例においては、送信波Tのサブフレームごとに、複数の異なるレーダ種別の機能を設定して(割り当てて)ある。これに対し、一実施形態に係る電子機器1は、例えば送信波Tのフレームごとに、複数の異なるレーダ種別の機能を設定して(割り当てて)もよい。一実施形態において、送信波Tの各サブフレームは、例えば1フレームの時間よりも短いものとしてよい。このため、一実施形態に係る電子機器1は、送信波Tのサブフレームごとに異なるレーダ種別の機能を設定することにより、送信波Tのフレームごとに異なるレーダ種別の機能を設定する場合よりも短い時間ごとに、異なるレーダとして機能し得る。
【0118】
一実施形態に係る電子機器1は、例えば
図9に示すように、送信波Tのサブフレームごとに、異なるレーダの機能を設定して(割り当てて)もよい。一実施形態に係る電子機器1は、例えば送信波Tのサブフレームごとに、複数の物体検出範囲のいずれかを設定してよい。
図9に示す例においては、1つのフレームにおいて、サブフレームが3つよりも多く(例えば6つ以上)含めてある。このように、一実施形態に係る電子機器1において、各フレームに含まれるサブフレームの数を各種設定してよい。
図9に示す例においては、送信波Tのサブフレーム1にはレーダ1の機能が設定され、送信波Tのサブフレーム2にはレーダ2の機能が設定され、送信波Tのサブフレーム3にはレーダ3の機能が設定されている。
図9に示す例のように、送信波Tのサブフレーム4からサブフレーム6までにおいて、送信波Tのサブフレーム1からサブフレーム3まで機能が設定されてもよい。また、
図9に示す例において、サブフレーム6より後も、適宜、送信波Tのサブフレーム1からサブフレーム3まで機能が繰り返し設定されてよい。
【0119】
例えば、
図9に示すサブフレームごとに、
図7において説明した異なる種別のレーダの機能を設定して(割り当てて)よい。すなわち、例えば
図9に示すサブフレーム1及びサブフレーム4において設定されるレーダ1の機能は、
図7に示したr1の範囲で物体検出を行うものとしてもよい。また、例えば
図9に示すサブフレーム2及びサブフレーム5において設定されるレーダ2の機能は、
図7に示したr2の範囲で物体検出を行うものとしてもよい。また、例えば
図9に示すサブフレーム3及びサブフレーム6において設定されるレーダ3の機能は、
図7に示したr3の範囲で物体検出を行うものとしてもよい。一実施形態において、異なる種別のレーダの機能に応じて、例えば設定される(割り当てられる)送信波Tの周波数の帯域幅が異なるようにしてもよい。
【0120】
図10は、
図3と同様に、送信波Tのサブフレームに含まれるチャープ信号を表す図である。
図10に示す例においては、送信波Tのサブフレーム1からサブフレーム2の途中までを部分的に示してあるが、サブフレーム1の後のサブフレームも、サブフレーム1と同様に続くものとしてよい。また、
図10に示すサブフレーム1は、
図3に示したサブフレーム1と同様に、8つのチャープ信号を含んでもよいし、任意の数のチャープ信号を含んでもよい。また、
図10に示す各チャープ信号のそれぞれは、
図3に示した各サブフレームに含まれる8つのチャープ信号のそれぞれと同じものとしてもよいし、
図3に示したチャープ信号とは異なるものとしてもよい。また、
図10に各サブフレームに含まれるチャープ信号は、
図10に示す6つ(c1からc6まで)のみとしてもよい。
【0121】
一実施形態に係る電子機器1は、例えば
図10に示すように、送信波Tのサブフレームに含まれるチャープ信号ごとに、異なるレーダの機能を設定して(割り当てて)よい。例えば、一実施形態に係る電子機器1は、例えば送信波Tのチャープ信号ごとに、複数の物体検出範囲のいずれかを設定してよい。このように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信信号及び受信信号による複数の物体検出範囲のいずれかを、送信波Tのフレームを構成するチャープ信号ごとに設定してもよい。
図10に示す例においては、送信波Tのチャープ信号c1にはレーダ1の機能が設定され、送信波Tのチャープ信号c2にはレーダ2の機能が設定され、送信波Tのチャープ信号c3にはレーダ3の機能が設定され、以降も同様の機能が繰り返し設定されている。一実施形態において、送信波Tの各チャープ信号は、例えば1サブフレームの時間よりも短いものとしてよい。このため、一実施形態に係る電子機器1は、より短い時間ごとに異なるレーダとして機能する。したがって、一実施形態に係る電子機器1は、1つのレーダセンサによって複数の機能又は用途をあたかも同時に実現するかのように動作する。
【0122】
例えば、
図10に示すチャープ信号ごとに、
図7において説明した異なる種別のレーダの機能を設定して(割り当てて)よい。すなわち、例えば
図10に示すチャープ信号c1及びチャープ信号c4において設定されるレーダ1の機能は、
図7に示したr1の範囲で物体検出を行うものとしてもよい。また、例えば
図10に示すチャープ信号c2及びチャープ信号c5において設定されるレーダ2の機能は、
図7に示したr2の範囲で物体検出を行うものとしてもよい。また、例えば
図10に示すチャープ信号c3及びチャープ信号c6において設定されるレーダ3の機能は、
図7に示したr3の範囲で物体検出を行うものとしてもよい。一実施形態において、異なる種別のレーダの機能に応じて、例えば設定される(割り当てられる)送信波Tの周波数の帯域幅が異なるようにしてもよい。
【0123】
以上説明したように、一実施形態に係る電子機器1によれば、様々な用途又は機能に応じて、検出範囲の切り出しと、その切り出した検出範囲の方向に向けたビームフォーミングとを行うことができる。また、一実施形態に係る電子機器1によれば、検出範囲の切り出し及び切り出した検出範囲の方向に向けたビームフォーミングを、任意に切り替えることができる。したがって、1つのレーダセンサを複数の用途又は機能に例えば動的に切り替えて用いることができる。
【0124】
また、上述のように、一実施形態に係る電子機器1は、物体を検出可能な距離の範囲が異なる複数のレーダとして機能することができる。すなわち、一実施形態に係る電子機器1は、物体を検出可能な精度(分解能)が異なる複数のレーダとして機能することができる。このように、一実施形態に係る電子機器1は、複数の種別のレーダを、時間的な区分に応じて切り替えることができる。
【0125】
次に、一実施形態に係る電子機器1によって、歩行又は走行している人間を検出する原理について説明する。
【0126】
図11は、人間が歩行している様子を例示する図である。
図11に示すように、人間は、歩行又は走行している時、たいていの場合、腕を振り子運動のように動かしている。一般的に、人間は、意識しているか否かにかかわらず、自然な体勢をしていれば、腕を振りながら歩行又は走行する傾向にある。したがって、一実施形態に係る電子機器1は、歩行又は走行している人間に特徴的な動きとして、例えば、歩行又は走行している人間が腕を振る動きを検出してよい。
【0127】
一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、人間の腕の動きに特徴的な動きを含む物体を検出した場合、当該物体をターゲットとして検出してよい。一方、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、上述のような人間の腕の動きに特徴的な動きを含まない物体を検出した場合、当該物体をターゲットとして検出しないようにしてもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、上述のような人間の腕の動きに特徴的な動きを含む物体を検出しない場合、ターゲットを検出していないものとしてもよい。
【0128】
図11に示す人間は、図の左から右に向かって、速度Vhで歩行又は走行しているものとする。
図11に示すように、歩行又は走行している人間の腕は、たいていの場合、固定点Oから吊り下げられた振り子に似た動きをする。
図11において、歩行又は走行している人間の右肩の辺りが固定点Oに対応し、歩行又は走行している人間の右手の辺りが振り子に対応している。歩行又は走行している人間の視点からは、固定点Oは、ほぼ静止している(あまり動かない)。一方、歩行又は走行している人間の視点からは、振り子は、固定点Oを中心としたほぼ円周状の軌道上で弧のような軌跡を描く運動(振り子運動)を行う。
【0129】
図11に示す人間の腕における点Pの動きは、静止している第三者の視点からは、速度Vhで右方向に移動する動きと、振り子運動する動きとの合成として観測される。したがって、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、ある点が速度Vhで移動しつつ振り子運動をしていると判定した場合、点Pを含む物体をターゲット(歩行又は走行している人間)として検出してもよい。
【0130】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、電子機器1の周囲の物体のうち人間の腕の動きに特徴的な動きを含む物体をターゲットとして検出するように制御する。この場合、制御部10は、電子機器1の周囲の物体のうち歩行又は走行している人間が振る腕の動きに特徴的な動きを含む物体をターゲットとして検出するように制御してもよい。また、制御部10は、電子機器1の周囲の物体のうち所定の速度Vhで移動する人間の腕の動きに特徴的な動きを含む物体をターゲットとして検出するように制御してもよい。
【0131】
上述のような電子機器1の動作において、制御部10は、電子機器1の周囲の物体のうち、所定の速度Vhで移動する人間の腕の動きに特徴的な動きを含むと判定される物体を、ターゲットとして検出するように制御してもよい。この場合、制御部10は、電子機器1の周囲の物体が所定の速度Vhで移動する人間の腕の動きに特徴的な動きを含むか否か判定してもよい。制御部10は、電子機器1の周囲の物体が所定の速度Vhで移動する人間の腕の動きに特徴的な動きを含むと判定されたら、その物体をターゲットとして検出するように制御してもよい。
【0132】
図12は、
図11に示した人間の腕の動きによって模擬される振り子運動を説明する図である。
【0133】
図12に示すように、振り子(質量Mとする)は、固定点Oから長さLの距離に吊るされているものとする。また、振り子の任意の位置Pにおいて、振り子が鉛直方向となす角をΦとする。また、この時の振り子の速度をVrとする。この場合、位置Pにおける振り子の位置エネルギーと運動エネルギーとの和は、重力加速度をgとすると、以下の式(1)のように表すことができる。
MgL(1−cosΦ)+M(Vr)2/2 式(1)
【0134】
図12に示す振り子の位置P1は、振り子運動の最高点としてよい。この時、振り子が鉛直方向となす角はΦmとする。この場合、振り子運動の鉛直方向の高さは最高になり、振り子の速度Vrはゼロになる。すなわち、位置P1において、振り子の位置エネルギーは最大となり、振り子の運動エネルギーはゼロとなる。そこで、位置P1における振り子の位置エネルギーと運動エネルギーとの和は、以下の式(2)のように表すことができる。
MgL(1−cosΦm) 式(2)
【0135】
図12に示す振り子の位置P2は、振り子運動の最低点としてよい。この時、振り子が鉛直方向となす角Φはゼロとなる。この場合、振り子運動の鉛直方向の高さはゼロになり、振り子の速度Vrは最大(Vm)になる。すなわち、位置P2において、振り子の位置エネルギーはゼロとなり、振り子の運動エネルギーは最大となる。そこで、位置P2における振り子の位置エネルギーと運動エネルギーとの和は、以下の式(3)のように表すことができる。
M(Vm)2/2 式(3)
【0136】
上記の式(1)乃至式(3)から、振り子運動の最低点の位置P2における速度Vmは、以下の式(4)のように表すことができる。
Vm={2gL(1−cosΦm)}1/2 式(4)
【0137】
上記の式(4)によれば、振り子運動の最低点の位置P2における速度Vmは、歩行している人間の腕の長さ(L)と、当該人間が腕を振る際の最大の角度(Φm)とから求めることができる。したがって、電子機器1において、例えば典型的な人間について、L及びΦmのデータを記憶部40に記憶しておくことにより、速度Vmを求めることができる。ここで、記憶部40は、例えば大人と子供、お年寄りと若者(又は幼児)、及び/又は、男性と女性など、いくつかの典型的な人間について、L及びΦmのデータを記憶してもよい。
【0138】
図13は、
図11に示す人間が歩行する各時点における様子を示す図である。
図13は、歩行する人間の身体の動きを、時点(1)から時点(5)の順に示している。
【0139】
図13に示す人間は、
図11と同様に、図の左から右に向かって、速度Vhで歩行しているものとする。
図13においては、
図11と同様に、図に示す人間の右腕の動きによって模擬される振り子運動に着目している。
【0140】
時点(1)において、振り子運動する人間の右手は最高点になる。したがって、人間の右手の速度Vrはゼロになる。時点(2)において、振り子運動する人間の右手は最低点になる。したがって、人間の右手の速度Vrは進行方向と逆向きで最大(−Vm)になる。時点(3)において、振り子運動する人間の右手は再び最高点になる。したがって、人間の右手の速度Vrはゼロになる。時点(4)において、振り子運動する人間の右手は再び最低点になる。したがって、人間の右手の速度Vrは進行方向と同じ向きで最大(+Vm)になる。
【0141】
時点(5)において、振り子運動する人間の右手は再び最高点になる。したがって、人間の右手の速度Vrはゼロになる。時点(5)は、時点(1)に戻った状態としてよい。したがって、
図13に示す人間は、時点(1)から時点(4)までの状態を繰り返すものとしてよい。
【0142】
図13に示すように、時点(1)から時点(5)まで、すなわち再び同じ状態に戻るまでの時間を、周期Taとする。
図13に示す人間は、周期Taの間に2歩ぶん歩行する。しだかって、
図13に示す人間の腕が振り子運動する周期Taは、歩行の歩幅をWとして、以下の式(5)のように表すことができる。
Ta=2W/Vh 式(5)
【0143】
上記の式(5)によれば、歩行している人間の腕が振り子運動する周期Taは、歩行の歩幅(W)と、歩行の速度(Vh)とから求めることができる。電子機器1において、例えば典型的な人間について、W及びVhのデータを記憶部40に記憶しておくことにより、周期Taを求めることができる。ここで、記憶部40は、例えば大人と子供、お年寄りと若者(又は幼児)、及び/又は、男性と女性など、いくつかの典型的な人間について、W及びVhのデータを記憶してもよい。一例として、W=0.7[m]前後として、Vh=2.0[m/s]前後としてもよい。
【0144】
図13に示すように、歩行している人間が周期Taの間に2歩進む場合、周期Taの間に当該人間の右手の速度Vrがゼロになる回数は、2回になる(
図13における時点(1)及び時点(3))。すなわち、速度Vhで歩行している人間の腕の振り子運動の速度Vrは、周期Taの間に、歩行速度Vhを基準として、2回、ゼロになる。したがって、制御部10は、電子機器1の周囲の物体が、速度Vhで移動する運動と、周期Taの半分の時間ごとに速度Vrがゼロになる運動とを合成した動きを含むか否か判定してよい。このような動きが含まれると判定したら、制御部10は、その動きを含む物体が人間の腕の動きに特徴的な動きを含むと判定してもよい。ここで、上述の速度Vrは、速度Vhで移動している視点からの速度である。すなわち、速度Vrは、速度Vhを基準とした相対速度である。
【0145】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、電子機器1の周囲の物体が速度Vhで移動する運動と当該物体の速度Vhを基準とした相対速度Vrが周期的にゼロになる運動とを合成した動きを含むか否か判定してもよい。このような動きを含むと判定した場合、制御部10は、前記物体は速度Vhで移動する人間の腕の動きに特徴的な動きを含むと判定してもよい。
【0146】
また、
図13に示すように、歩行している人間が周期Taの間に2歩進む場合、周期Taの間に当該人間の右手の速度Vrが最小及び最大になる回数は、それぞれ1回ずつになる(
図13における時点(2)及び時点(4))。すなわち、速度Vhで歩行している人間の腕の振り子運動の速度Vrは、周期Taの間に、歩行速度Vhを基準として、1回最大(又は極大)になり、1回最小(又は極小)になる。したがって、制御部10は、電子機器1の周囲の物体が、速度Vhで移動する運動と、周期Taの半分の時間ごとに速度Vrが極大及び極小になる運動とを合成した動きを含むか否か判定してよい。このような動きが含まれると判定したら、制御部10は、その動きを含む物体が人間の腕の動きに特徴的な動きを含むと判定してもよい。ここで、上述の速度Vrは、速度Vhで移動している視点からの速度である。すなわち、速度Vrは、速度Vhを基準とした相対速度である。
【0147】
このように、制御部10は、電子機器1の周囲の物体が速度Vhで移動する運動と当該物体の速度Vhを基準とした相対速度Vrが周期的に極大値(Vm)及び極小値(−Vm)の繰り返しになる運動とを合成した動きを含むか否か判定してもよい。このような動きを含むと判定した場合、制御部10は、前記物体は速度Vhで移動する人間の腕の動きに特徴的な動きを含むと判定してもよい。
【0148】
以上説明したように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、電子機器1の周囲の物体が所定の速度Vhで移動する所定の周期の振り子運動に特徴的な動きを含むか否か判定してもよい。当該特徴的な動きを含むと判定する場合、制御部10は、その物体が所定の速度Vhで移動する人間の腕の動きに特徴的な動きを含むと判定してもよい。
【0149】
図11及び
図13においては、歩行している人間の右腕又は右手の動きに着目して、振り子運動に特徴的な動きが含まれるか否かを判定した。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、歩行している人間の左腕又は左手の動きに着目して、振り子運動に特徴的な動きが含まれるか否かを判定してもよい。
【0150】
また、人間は、歩行又は走行している際に、両腕を互いに逆方向に振るようにして動かす傾向にある。したがって、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、互いに逆方向の振り子運動に特徴的な動きが互いの近傍に検出される場合、これらの両者を1人の人間の両腕として検出してもよい。また、制御部10は、互いに逆方向の振り子運動に特徴的な動きが互いの近傍に検出され、さらに当該逆方向の振り子運動の間に物体が検出される場合、当該物体を1人の人間の胴体部分として検出してもよい。
【0151】
また、上述の実施形態において、制御部10は、電子機器1の周囲の物体が速度Vhで移動する運動と当該物体の速度Vhを基準とした相対速度Vrが周期的にゼロになる運動とを合成した動きを含むか否かを判定した。ここで、速度Vhを基準とする相対速度Vrを測定、検出、又は判定などする際に、電子機器1の制御部10において処理し易いように、適宜、物体が移動する方向及び/又は物体の到来する方向の角度などを補正してもよい。
【0152】
また、上述の実施形態において、制御部10は、歩行している人間が振る腕の動きに特徴的な動きが含まれるか否かを判定した。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、歩行ではなく走行している人間が振る腕の動きに特徴的な動きが含まれるか否かを判定してもよい。この場合、
図13に示した速度Vhは、走行時において、歩行時よりも速くなるものとしてもよい。また、人間は、歩行時には腕を伸ばしており、走行時には肘を曲げていることが多い。したがって、
図12に示した長さLは、走行時において、歩行時よりも短くしてもよい。また、
図12にて説明した最低点の位置P2における速度Vmは、走行時において、歩行時よりも速くなるものとしてもよい。また、上述した歩幅Wは、走行時において、歩行時よりも長くしてもよい。さらに、上述した周期Taは、走行時において、歩行時よりも短くしてもよい。
【0153】
図14は、一実施形態に係る電子機器1の動作を説明するフローチャートである。以下、一実施形態に係る電子機器の動作の流れを説明する。
【0154】
図14に示す動作は、例えば移動体100に搭載された電子機器1によって、移動体100の周囲に存在する物体を検出する際に開始してよい。
【0155】
図14に示す動作が開始すると、制御部10は、各レーダ種別における物体検出範囲を決定する(ステップS1)。例えば、ステップS1において、制御部10は、
図8に示すレーダ1の物体検出範囲を、
図7に示すr1(例えば0.2mから12.5mまで)としてもよい。また、例えば、ステップS1において、制御部10は、
図8に示すレーダ2の物体検出範囲を、
図7に示すr2(例えば1mから50mまで)としてもよい。また、例えば、ステップS1において、制御部10は、
図8に示すレーダ3の物体検出範囲を、
図7に示すr3(例えば5mから200mまで)としてもよい。このような物体検出範囲は、予め記憶部40に記憶しておいてもよい。ステップS1において、制御部10は、例えば移動体100の運転者などの操作に基づいて各レーダの物体検出範囲を決定してもよいし、例えば制御部10又はECU50などの指示に基づいて各レーダの物体検出範囲を決定してもよい。
【0156】
また、ステップS1に示す動作は、
図14に示す動作の開始後に初めて行う動作ではなく、
図14に示す動作が既に以前に行われた後で再び開始されたものとしてよい。再び行われたステップS1の時点で制御部10によって既に各レーダの物体検出範囲が決定されている場合、制御部10は、当該決定された物体検出範囲を再び用いてもよい。
【0157】
ステップS1において各レーダの物体検出範囲が決定されたら、制御部10は、各レーダの物体検出範囲において物体を検出するために、送信波Tの各フレーム等ごとに、電子機器1における各種パラメータを設定する(ステップS2)。
【0158】
例えば、ステップS2において、制御部10は、
図7に示した物体検出範囲r1からr3までの範囲を物体検出範囲として切り出して物体検出を行うように、各種のパラメータを送信波Tの各フレーム等ごとに設定してよい。ステップS2において、例えば各種のパラメータを送信波Tのフレームごとに設定してもよいし、フレームを構成する部分(例えばサブフレーム)ごとに設定してもよいし(
図8又は
図9参照)、チャープ信号ごとに設定してもよい(
図10参照)。各レーダにおける物体検出範囲のような検出範囲を切り出して物体検出を行うために設定される各種のパラメータは、例えば記憶部40に記憶しておいてもよい。この場合、ステップS2において、制御部10は、各種のパラメータを記憶部40から読み出して設定してもよい。
【0159】
また、ステップS2において、制御部10は、送信波Tの各フレーム等ごとに、決定されたそれぞれの物体検出範囲の向きに送信波のビームを形成するように、各種のパラメータを設定してもよい。例えば、ステップS2において、制御部10は、送信波Tの各フレーム等ごとに、ステップS1で決定された物体検出範囲に送信波のビームが向くように、各種のパラメータを設定してよい。各物体検出範囲のような検出範囲に送信波のビームを向けるために設定される各種のパラメータは、例えば記憶部40に記憶しておくことができる。この場合、ステップS2において、制御部10は、各種のパラメータを記憶部40から読み出して設定してもよい。ステップS2において、制御部10は、送信波Tの各フレーム等ごとに、例えば位相制御部23又は送信部20に対して各種のパラメータを設定してもよい。
【0160】
このように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信信号及び受信信号による複数の物体検出範囲のいずれかを規定するパラメータを、送信波Tのフレーム等ごとに設定してもよい。また、制御部10は、検出範囲の異なるモードのうち、フレームごと又はフレーム内の処理単位ごとに、レーダの種別を切り替えて信号生成部21に通知してよい。
【0161】
ステップS2においてパラメータが設定されたら、制御部10は、送信波Tのフレーム等の順序に従って、送信アンテナ25から送信波Tを送信するように制御する(ステップS3)。例えば、ステップS3において、信号生成部21は、制御部10によって設定されたパラメータに基づいて、送信波Tのフレーム等の順序に従って、各種別のレーダとして機能する送信信号を生成してよい。また、送信波Tのビームフォーミングを行う場合、ステップS3において、位相制御部23は、送信波Tのフレーム等の順序に従って、複数の送信アンテナ25から送信されるそれぞれの送信波Tが所定の方向にビームを形成するように制御してよい。この場合、位相制御部23は、各送信波Tの位相を制御してもよい。さらに、位相制御部23は、ステップS1において決定された物体検出範囲の方向に、例えば物体検出範囲の少なくとも一部をカバーするように、送信波Tのフレーム等の順序に従って、送信波Tのビームを向けるように制御してもよい。
【0162】
ステップS3において送信波Tが送信されたら、制御部10は、受信アンテナ31から反射波Rを受信するように制御する(ステップS4)。
【0163】
ステップS4において反射波Rが受信されたら、制御部10は、電子機器1の周囲の物体が人間の腕の動きに特徴的な動きを含むか否か判定するように制御する(ステップS5)。ステップS5において、制御部10は、上述のように、電子機器1の周囲の物体が所定の速度Vhで移動する人間の腕の動きに特徴的な動きを含むか否か判定するように制御してもよい。ステップS5において、人間の腕の動きに特徴的な動きを含むか否かの判定は、上述した各実施形態の原理に基づいて実行してよい。
【0164】
ステップS5において腕の動きに特徴的な動きを含むと判定されたら、制御部10は、当該物体をターゲットとして検出して(ステップS6)、
図14に示す動作を終了してよい。ステップS6において、制御部10は、距離FFT処理部11、速度FFT処理部12、及び到来角推定部13の少なくともいずれかによる推定結果に基づいて、物体の存在をターゲットとして検出してもよい。一方、ステップS5において腕の動きに特徴的な動きを含まないと判定されたら、制御部10は、
図14に示す動作を終了してよい。また、ステップS5において腕の動きに特徴的な動きを含む物体が検出されない場合も、制御部10は、
図14に示す動作を終了してよい。
【0165】
ステップS6において、制御部10は、例えば、複数の異なる種別のレーダごとに得られた角度、速度、距離の情報から物体検出(例えばクラスタリング)処理を行い、その物体を構成するポイントの平均電力を算出してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、複数の異なる種別のレーダごとに得られた物体検出情報又はポイントクラウド情報を、例えばECU50のような上位の制御CPUに通知してもよい。
【0166】
ステップS6における物体の検出は、公知のミリ波レーダによる技術を用いて種々のアルゴリズムなどに基づいて行うことができるため、より詳細な説明は省略する。また、
図14に示すステップS6の後、制御部10は、再びステップS1の処理を開始してもよい。この場合、ステップS6において物体を検出した結果に基づいて、ステップS1において物体検出範囲を決定してもよい。このように、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信波Tとして送信される送信信号及び反射波Rとして受信される受信信号に基づいて、送信波Tを反射する物体を検出してよい。
【0167】
以上説明したように、一実施形態に係る電子機器1によれば、歩行又は走行している人間をターゲットとして検出することができる。一実施形態に係る電子機器1によれば、移動している無生物又は動物などをターゲットとして検出せずに、歩行又は走行している人間をターゲットとして検出することができる。すなわち、一実施形態に係る電子機器1によれば、歩行又は走行している人間とたまたま同じような位置及び/又は速度で移動している無生物又は動物などは、ターゲットとして検出されない。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、例えば歩行又は走行している人間のみを検出して運転者に警報を発することができるなど、極めて有益な用途が実現できる。
【0168】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。複数の機能部等は、1つに組み合わせられたり、分割されたりしてよい。上述した本開示に係る各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施され得る。つまり、本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
【0169】
上述した実施形態は、電子機器1としての実施のみに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御方法として実施してもよい。さらに、例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器が実行するプログラムとして実施してもよい。
【0170】
一実施形態に係る電子機器1は、最小の構成としては、例えばセンサ5又は制御部10の一方のみの少なくとも一部を備えるものとしてよい。一方、一実施形態に係る電子機器1は、制御部10の他に、
図2に示すような、信号生成部21、シンセサイザ22、位相制御部23、増幅器24、及び送信アンテナ25の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、上述の機能部に代えて、又は上述の機能部とともに、受信アンテナ31、LNA32、ミキサ33、IF部34、AD変換部35の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。さらに、一実施形態に係る電子機器1は、記憶部40を含んで構成してもよい。このように、一実施形態に係る電子機器1は、種々の構成態様を採ることができる。また、一実施形態に係る電子機器1が移動体100に搭載される場合、例えば上述の各機能部の少なくともいずれかは、移動体100内部などの適当な場所に設置されてよい。一方、一実施形態においては、例えば送信アンテナ25及び受信アンテナ31の少なくともいずれかは、移動体100の外部に設置されてもよい。