(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971446
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】アクセルの踏み間違えを防止する走行制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 50/12 20120101AFI20211111BHJP
B60K 28/10 20060101ALI20211111BHJP
G05G 1/04 20060101ALI20211111BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20211111BHJP
G05G 11/00 20060101ALI20211111BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
B60W50/12
B60K28/10 Z
G05G1/04 Z
G05G1/30 E
G05G11/00
F02D29/02 K
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-176180(P2017-176180)
(22)【出願日】2017年8月28日
(65)【公開番号】特開2019-38507(P2019-38507A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2019年10月25日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】511229341
【氏名又は名称】佐藤 良明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良明
【審査官】
増子 真
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−254111(JP,A)
【文献】
特開2015−101128(JP,A)
【文献】
特開2013−036434(JP,A)
【文献】
実開平01−022837(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0010034(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 10/30
B60W 30/00 − 60/00
B60K 25/00 − 28/16
G08G 1/00 − 99/00
G05G 1/00 − 25/04
F02D 29/00 − 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルとブレーキの2つのペダルで走行を操作する自動車において、自動車があらかじめ設定した速度以下であることを検出する手段と、アクセルの全閉状態を検出する手段と、運転者がスイッチまたはレバーの操作によって原動機の出力制限を解除させる手段を具備し、
自動車があらかじめ設定した速度以下でアクセル全閉となったことをトリガとして原動機の出力を制限し、
自動車があらかじめ設定した速度以下でアクセル全閉後に上記スイッチまたはレバーを操作した場合には、通常通りの原動機の出力とすることを特徴とする自動車の走行制御装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセルとブレーキの2つのペダルを用いて走行する自動車において、ブレーキと間違えてアクセルを踏むことによる暴走を防止する自動車の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなど内燃機関を原動機とする自動車は、アクセルとブレーキの2ペダル型が一般化してきている。これは、多段自動変速機や無段変速機が一般化して来たことによる。また、モーターを原動機とする電気自動車やモーターと内燃機関のハイブリッド自動車も増加しつつあるが、内燃機関を原動機とする自動車の操作系を踏襲しているため、アクセルとブレーキの2ペダルが一般的である(以下、これらを2ペダル型の自動車と呼ぶ)。
【0003】
一方、日本は高齢化が進み、お年寄りのドライバーの絶対数が増加している。お年寄りドライバーの増加と、2ペダル型の自動車が一般化してきたことにより、アクセルをブレーキと間違えることによる暴走事故が多発し、社会問題となっている。例えば、ゆっくりと自動車を発進させたが、突然、子どもや犬・猫が自動車の前に飛び出してきたため、慌ててブレーキを踏むつもりでアクセルを踏み込んだため、自動車を暴走させて事故に至るケース(以下、ケース1)がある。また、コンビニの駐車場で停止枠に自動車を停めようとしているときに、ブレーキを踏むつもりでアクセルを踏み込んだため、自動車を暴走させて事故に至るケース(以下、ケース2)も同じである。
【0004】
アクセル、ブレーキ、クラッチの3つのペダルを持つ従来型のマニュアル変速の自動車(以下、3ペダル型の自動車と呼ぶ)は、アクセルをブレーキと間違えて単独を踏み続けても暴走に至らない。以下、理由を説明し、2ペダル型自動車の根本的な問題点を指摘する。3ペダル型の自動車では、停止する際には必ずブレーキとセットでクラッチも踏む。これは、原動機であるエンジンを停止するタイヤから切り離さないとエンストする為であり、3ペダル型の自動車を運転する人は、無意識に必ず行なっている。従って停止の際にブレーキと間違ってアクセルを踏み込んでしまっても、クラッチを踏んでエンジンをタイヤから切り離しているので、エンジンが空ぶかしになるだけで暴走しない。これに対して、2ペダル型の自動車は、「アクセルとブレーキそれぞれを単独に同じ操作で使用できる」ため、踏み間違えによって暴走につながる。
【0005】
これまでに暴走を防止するための多くの走行制御装置が考えられている。たとえば、ブレーキはアクセルに比べて深く踏む特徴を利用した特許がある(参考文献1、特開2007−170232、トヨタ自動車)。この特許では、あるしきい値以上にアクセルを深く踏んだ時は、誤操作と判断し、減速させる。また、急ブレーキを踏む緊急時には、人間の体が硬直(突っ張る)するので、ハンドルを押し付けたり、シートバックに体を押し込むみながらブレーキをふむ特徴を利用した特許もある(参考文献2、特開2013−233893、三菱自動車工業)。この特許では、ハンドルを押し付けたり、シートバックに体を押し込むみながらアクセルを踏んだ時は、誤操作と判断し、減速させる。類似の特許として、アクセルに踏力センサーを設け、アクセル全開時に通常以上の踏力が検出された場合は、誤操作と判断し、減速させる特許がある(参考文献3、特開平11−278092、いすゞ自動車)。
【0006】
上記の従来例は、いずれもブレーキを踏む人間の操作特徴を見出し、その状況を見出した場合、誤操作と判断してエンジン等の原動機を減速または停止させるものである。アクセルをブレーキと誤って踏む誤操作をなくすのではなく、誤操作と思える状況を検出したら、対策を行うというアイディアである。つまり、2ペダル型自動車の根本的な問題である、「アクセルとブレーキそれぞれを単独に同じ操作で使用できる」という点を解決していない。
【0007】
2ペダル型自動車の根本的な問題である「アクセルとブレーキそれぞれを単独に同じ操作で使用できる」という点を解決する従来例がある(参考文献4、特開2012−164067)。この特許では、アクセルとブレーキが一体となった1ペダル式の自動車を提案している。この1ペダルは、踏むとブレーキ、横にスライドさせるアクセルとして機能する。このため、緊急時やパニック時に、このペダルを強く踏めば、急ブレーキとして作用する。通常のアクセル動作は、ゆっくりと行うものであり、運転者が意識して、足を横にスライドさせれば良いというものである。本特許は、アクセル操作を従来の踏むという操作から横にスライドさせるという操作に変えているため、2ペダル式自動車のアクセルとブレーキの根本的な問題を解決している。しかし、アクセルは足で横にスライドさせるという操作は、長い歴史を持つ自動車産業の歴史においても、大きな変化であり、急速な普及に至っていない。
【0008】
お年寄りドライバーがブレーキと間違えてアクセルを踏むことによる暴走事故をなくす自動車の走行制御装置が必要である。従来例である参考特許1〜3は、2ペダル式自動車において、誤った操作と推定される状況を検出したら、原動機を減速または停止させる走行制御装置の提案であり、2ペダル式自動車のアクセルとブレーキの操作が同じという根本的な問題を解決し、誤操作を起こさせないという発明ではなかった。参考特許4は、アクセルは足で横にスライドさせるという操作の導入によって、2ペダル式自動車のアクセルとブレーキの操作が同じという根本的な問題を解決しているが、アクセル操作が従来と異なるため、急速な普及に至っていない。以上、従来のアクセル操作を踏襲しつつ、2ペダル式自動車のアクセルとブレーキの操作が同じという根本的な問題を解決する自動車の走行制御装置は未だ実現されていない。
【先行技術文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−170232
【特許文献2】特開2013−233893
【特許文献3】特開平11−278092
【特許文献4】特開2012−164067
【0010】
本発明は、従来のアクセル操作を踏襲しつつ、2ペダル式自動車のアクセルとブレーキの操作が同じという根本的な問題を解決する自動車の走行制御装置を実現に関する。アクセルをブレーキと踏み間違えを検出して事故を防止するのでなく、考え方を180度転換し、そもそも操作を誤らせないように、アクセルの操作を運転者が受け入れられる範囲で変更する。
【0011】
課題を解決するために注目すべき3つの事実がある。まず一つ目は、自動運転または危険防止のための先進運転システム(Advanced Driver Assistance System、以下ADAS)の急速な普及である。代表的なADASの仕組みは、自動車に搭載されたCCDカメラやミリ波センサーで周囲の人や物体を認識し、衝突を回避するというものである。ADASによる自動走行をセットすると、あらかじめ設定する最高速度の範囲内で、前を走る自動車を認識して追尾し、最適な車間を維持しながら速度の加減速を自動的に行う。この時、運転者はアクセルもブレーキも操作せず、両足は何もしていない。ただし、信号等で運転者が自らの意思でブレーキを踏んで一度停車すると、次に走り始める時、通常のアクセルを踏む動作で自動車を発進させるか、再度ADASによる自動走行で発進させるかを運転者は指示しなければならない。一般的には、ADASの自動車にはADASの設定(最高速度、車間距離、設定・解除)を行うレバーやスイッチがハンドルのそばにある(以下、ADASレバーと呼ぶ)。事前に最高速度と車間距離を設定しておけば、信号等で一度停車した後、再度ADASで走り始めるためには、上記ADASレバーを引き自動走行を開始できる。この時、運転者は、アクセルやブレーキの操作を一切せずに自動車を発進させる。注目すべき一点目の事実は、ADASの急速な普及により、運転者が自動車を発進させる操作がアクセルだけでなく、ADASレバーも使うようになりつつあることである。
【0012】
次に注目すべき点は、アクセルをブレーキと踏み間違える直前の運転手の挙動である。
[0003]で説明した事故となったケース1では、運転者はアクセルをゆるく踏んでいる状態からブレーキを踏む状態に移る時、右足は踏んでいたアクセルから一旦離れ、再度ブレーキと誤認識したアクセルを強く踏んでいる。注目すべき二点目の事実は、アクセルをブレーキと踏み間違える直前には、アクセルから一旦足が離れるということである。
【0013】
三つ目に注目すべき点は、自動車の電子化である。従来、運転席にあるハンドル、アクセル、ブレーキなど車両を操作するユニットは、機械的に該当する車両機器に接続されていた。例えば、ハンドルの回転はギヤによって前輪の操舵部に、アクセルはワイヤーによってエンジンの空気を取り入れるスロットルバルブに、ブレーキは油圧によって車輪のディスクブレーキに繋がっていた。最近では、ハンドル、アクセル、ブレーキなどの操作を電気的に読み取り、その制御信号を該当する車両機器に具備されたモーターに指示する自動車の電子化が進んでいる。信号線(電気の線、ワイヤー)で繋がっていることから、ドライブバイワイヤーと呼ばれる。特にアクセルは、一番電子化が進んでおり、車両内に具備されたアクセルは、可変抵抗を動かしているだけである。アクセルの踏み具合を表す抵抗値は、電気的にスロットルバルブを動かすモーターに伝えられ、原動機を加減速している。注目すべき三点目の事実は、アクセルは電子化が進んでおり、運転者のアクセルの踏み込み量にかかわらず、走行制御装置が優先的にスロットルバルブを開閉することが可能であるということである。
【0014】
上記3つの注目すべき事実を考慮した本発明を以下に説明する。本発明では、アクセルとブレーキの2つのペダルで走行を操作する自動車において、アクセルの全閉状態を検出する手段と、自動車が停止もしくはあらかじめ設定した速度以下であることを検出する手段と、運転者がスイッチまたはレバーの操作によって原動機の出力制限を解除させる手段(以下、アクセル開始レバーと呼ぶ)を具備し、自動車が停止もしくはあらかじめ設定した速度以下でアクセル全閉
となったことをトリガとして原動機の出力を制限し、自動車が停止もしくはあらかじめ設定した速度以下でアクセル全閉を検出した場合であっても、アクセル開始レバーを操作してからアクセルを踏んだ場合には、原動機を通常通り動作させる制御を行うことを特徴とする。
【0015】
以下、あらかじめ設定する速度を時速10kmとして、本発明の動作例を説明する。例えば、高齢者がゆっくりと自動車を発進させたが、突然、子どもや犬・猫が自動車の前に飛び出してきたケース1の状況を考える。時速8kmで前進しており、アクセルから足を離し、ブレーキに足を載せ替えようとする時、本発明の走行制御装置は、時速8kmがあらかじめ設定した時速10km以下であることと、アクセルから足を離したことにより、一時的にアクセルが全閉
となったことをトリガとして、エンジンの出力を制限する。この次に、ブレーキと間違えてアクセルを再度踏んでも、既にエンジンの出力を制限しているので、暴走事故に至らない。落ち着いて自動車を停止させた後、再発進する際には、アクセル開始レバーを操作してから、通常のエンジン制御が可能となったアクセルを踏んで再発進する。この時、運転者はアクセルを踏むと意識して、アクセル開始レバーを操作しており、アクセルを急激に踏み込んだりすることはない。
【0016】
例えば、コンビニの駐車場で停止枠に自動車を停めようとしているケース2の状況を考える。時速8kmで後進し、停止枠に停止しようとし、アクセルから足を離し、ブレーキに足を載せ替えようとする時、本発明の走行制御装置は、時速8kmがあらかじめ設定した時速10km以下であることと、アクセルから足を離したことにより、一時的にアクセルが全閉
となったことをトリガとして、エンジンの出力を制限する。この次に、ブレーキと間違えてアクセルを再度踏んでも、既にエンジンの出力を制限しているので、暴走事故に至らない。再度停止位置を修正すべく、再発進する際には、アクセル開始レバーを操作してから、アクセルを踏んで原動機を増速させる。この時、運転者はアクセルを踏むと意識して、アクセル開始レバーを操作しており、アクセルを急激に踏み込んだりすることはない。
【0017】
一般道や高速道路を時速50kmで走行している時、アクセルの踏み込み量は一定ではなく、踏み込み量を変化させることで加減速を行なっている。時には、アクセルから一旦足を話し、エンジンブレーキの状態で走行していることもありうる。このような時、本発明による走行制御装置は、あらかじめ設定した時速10km以下ではないことを検出しており、アクセルから足を離してから再度アクセルを踏んでも通常通り運転することができる。
【0018】
赤信号で一旦停止し、信号が青に変わり自動車を動き出させる状況を考える。一旦停止の間、運転者はブレーキを踏むかパーキングブレーキを使用しており、アクセルから足が離れている。本発明の走行制御装置は、停止があらかじめ設定した時速10km以下であることと、アクセルが全閉
となったことをトリガとして、エンジンの出力を制限する。信号が青に変わって、再発進する際には、アクセルを踏んでもエンジンの出力が制限されているため、交通の流れに乗れなくなってしまう。このため、再発進する際にはアクセル開始レバーを操作し、エンジンの出力を通常通りとしてから、アクセルを踏んで再発進することになる。この手順は、通常の自動車におけるアクセル操作(踏めば、原動機が増速する)とは異なる。しかしながら、ADASを具備した自動車においては、停止状態から自動走行を再発進させるためには、アクセルを踏むのでなく、ADASレバーを操作することが一般化してきたことと類似させている。このため、本発明によるアクセル開始レバーとADASのレバーを兼用とし、ADASと本発明による走行制御を走行モードとしてあらかじめ切り替えられるようにしておくことが可能となる。いずれのモードにおいても、一旦停止した後に再発進する際には、レバーを操作することになり、運転者に違和感を与えることはない。
【0019】
交差点で左折をする場合、直進状態の時にアクセルから足をはなし、ブレーキで速度をおとす。十分に速度が落ちたところで、左折を開始することになる。このような時、本発明による走行制御装置は、あらかじめ設定した時速10km以下であることと、アクセルが全閉
となったことをトリガとして、エンジンの出力を制限する。アクセルに対して全くエンジンを反応させない制限を行うと、左折中に交差点で止まってしまう可能性があるが、交差点をゆっくり通過するエンジンの出力だけあれば十分である。交差点を通過したあと、加速して速度を上げる必要がある。この時点で、アクセル開始レバーを操作してから、原動機の出力を通常通りとし、アクセルを踏んで原動機を増速させることができる。
【0020】
本交差点で右折をする場合、直進状態の時にアクセルから足をはなし、ブレーキで速度をおとし、対向車が来なくなるまで停止する。このような時、本発明による走行制御装置は、あらかじめ設定した時速10km以下であることと、アクセルが全閉
となったことをトリガとして、エンジンの出力を制限する。アクセルに対して全くエンジンを反応させない制限を行うと、交差点の真ん中で立ち往生してしまう可能性があるが、交差点をゆっくり通過するエンジンの出力だけあれば十分である。交差点を通過したあと、加速して速度を上げる必要がある。この時点で、アクセル開始レバーを操作してから、原動機の出力を通常通りとし、アクセルを踏んで原動機を増速させることができる。
【0021】
以上説明したように、本発明では、一定の条件下ではアクセル操作を変えていることが特徴であり、2ペダル式自動車の問題を根本的に解決している。その一方で、アクセルを踏む操作に加え、アクセル開始レバーを操作する手順が新たに必要となるが、急速に普及するADASと操作性を類似させているので違和感なく市場に受け入れられるメリットがある。本発明は、従来のアクセルを踏むと
いう操作を踏襲しつつ、2ペダル式自動車のアクセルとブレーキの操作が同じという根本的な問題を解決していることになる。参考文献1〜3に代表される誤操作を検出する対策では、ブレーキと誤ってアクセルを踏み込む状態を検出しているのに対し、本発明では通常の操作としてアクセルを離す状態を検出し、誤操作に至る前に原動機の制御をしていることが大きな違いである。
【0022】
本走行制御システムを具備するため、3つの手段が新たに必要になる。しかしながら、実現には大きな問題とはならない。アクセルの全閉状態を検出する手段については、電子化されたアクセルの出力を読み取れば、追加センサーなく実現できる。次に自動車
があらかじめ設定した速度以下であることを検出する手段については、どの車にもついている車速センサーを活用すれば、追加センサーなく実現できる。最後にアクセル開始レバーについては、ADASレバーと兼用することが可能である。エンジンやモーターを制御するソフトウェアのへ追加・変更は必要となる。
【0023】
本発明によれば、2ペダル式自動車のアクセルとブレーキの操作が同じという根本的な問題を解決し、アクセルをブレーキと誤って踏む誤操作を起こさせない。また、通常のアクセル操作と異なる手順が必要となるが、急速に普及するADASと操作性を類似させているので違和感なく市場に受け入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の
実施例1における走行制御装置(内燃機関の場合)
【
図2】本発明の
実施例2における走行制御装置(電気モーターの場合)
【
図3】本発明の
実施例1における走行制御フローチャート
【
図4】
本発明の実施例2における走行制御フローチャート
【符号の説明】
【0025】
1 アクセルペダル
2 アクセルペダルセンサー
3 信号線
4 スロットル
5 エンジン
6 インジェクタ
7 ECU(engine control unit)
8 操作レバー
9 車内表示ユニット
10 車速センサー
11 モーター
【実施例1】
【0026】
本発明による実施例1を説明する。本実施例は、内燃機関であるエンジンを原動機とする自動車であり、ADASと本発明による走行制御装置を合わせて具備しており、その操作レバーは、ADAS操作レバーとアクセル開始レバーを共用化している。構成を
図1に示す。ドライブバイワイヤーによるアクセルは、その踏み込み量を電気信号として、ECUに送る。
ECUは、アクセルの踏み込み量に応じて、空気を取り入れるスロットルを開閉し、ガソリンをピストン内に送り込むインジェクタを制御することで、エンジンの回転数を制御する。
運転者は、事前に3つの走行モードのいずれかを設定する。ADASによる自動走行を選択すると表示は「自動」となる。このADASモードでは、操作レバーを操作することによって、前の車を追尾する自動走行が可能となる。この時、アクセルは不要で、ブレーキのみを使うことになる。運転者の意思によってブレーキが踏まれて一旦停止した場合には、次に再発進する際に、操作レバーを操作してADASをリスタートする。前の車を追尾する自動走行中に、前車との間に別な車が急に割り込んできた場合など、ADASが対応不可となる状況が発生した場合は、警告を「あり」として運転者に注意喚起する。
本発明による走行制御を選択すると、表示は「安全」となる。この走行制御モードでは、あらかじめ設定する速度(例えば、時速10km)以下でアクセルから足を離すと、エンジンの出力を制限する。この状態の時、警告を「あり」としてアクセルが効かないことを運転者に注意喚起する。次にアクセルを踏んでも十分に加速できないため、通常走行をする場合には、ADASで前車追尾走行を始める時と同じように、操作レバーを操作してからアクセルを踏んで発進する。運転者は、手と足を操作し、確認しながらアクセルを踏むことになるため、アクセルをブレーキと間違える誤操作に至らない。万が一、操作レバーを操作せず、誤ってアクセルをブレーキと踏み間違えても暴走には至ることはない。
本実施例1において、本発明による走行制御装置を実現するフローチャートを
図3に示す。ADAS、本走行制御、通常の走行モードを切り替える手順は含んでいない。エンジンをスタートすると、通常通りのエンジン出力がアクセルによって制御できる。制御プログラムは、常にアクセルの踏み込み量と車速を把握しており、あらかじめ設定する速度以下で、アクセルが全閉となった場合にはエンジン出力を制限する。もし、運転者によって、アクセル開始レバーである、操作レバーを操作されれば、通常通りのエンジン出力に戻す制御を行う。
運転者が通常の走行モードを設定した場合、表示は「通常」となり、ADASも本発明による走行制御も行わず、運転者によるアクセル操作のみでエンジンを制御する。
【実施例2】
【0025】
本発明による実施例2を説明する。本実施例2は、実施例1と異なり、モーターを原動機とする自動車であり、原動機出力が制限されている状態で、アクセルが全開となった場合には緊急停止する。実施例1との差分を説明する。構成を
図2に示す。ドライブバイワイヤーによるアクセルは、その踏み込み量を電気信号として、ECUに送る。ECUは、アクセルの踏み込み量に応じて、モーターの回転数を制御する。本発明の走行制御によって、モーターの出力を制限している最中に、誤ってアクセルをブレーキと誤って踏んでも暴走につながることはない。しかし、アクセルをブレーキと誤って踏んだ場合は、強制的にブレーキをかけて緊急停止させれば、より安全性は高まる。本実施例2において、本発明による走行制御装置を実現するフローチャートを
図4に示す。本実施例1の走行制御を実現するフローチャート
図3に加え、モーターの出力制限後に、アクセルを全開にしたかどうかの判断を追加している。
図4では、アクセルをブレーキと誤って踏む運転者の操作検出としてアクセル全開を利用している。アクセル全開に代えて、参考文献にあるように、アクセル踏力や腰がシートを押す力なども利用することができる。