【実施例】
【0037】
以下、
図1A、B〜
図4A、Bを参照して本発明に係る実施例のスイッチ発電機構1を説明する。実施例のスイッチ発電機構1は
図1Aに示すように、第1可動部品1a、第2可動部品2a、第1変形部品1b、第2変形部品2b、第1傘歯車1c、第2傘歯車2c、及び発電機3と云った各部品から形成されている。更に各部品がボックス4に収められていると共に、第2可動部品2aの一部がボックス4の外部に突出されている。本実施形態において、ボックス4の上面方向を「上方」といい、ボックス4の下面方向を「下方」という。第2可動部品2aの一部はボックス4の上面よりも上方に突出して突出部を形成し、外部に露出している。外部から力(押圧力)を与えて前記突出部を下方に押し込むことにより第2可動部品2aが一定量回転するように構成されている。尚、特に図示しないがボックス4の上面には、第2可動部品2aの一部がボックス4の上面よりも上方に突出できるようにするための開口部が設けられている。
【0038】
第1可動部品1aは、伝動車の周囲の少なくとも一部に歯7aが形成された歯車であり、ボックス4に設けられた中心軸c1に回転可能に軸支されている。第2可動部品2aは、扇形の伝動車の周囲の少なくとも一部に歯7bが形成された扇形歯車であり、ボックス4の別箇所に設けられた中心軸c2に回転可能に軸支されている。
【0039】
第1可動部品1a及び第2可動部品2aの歯形は、実施例では共にインボリュート歯形である。インボリュート歯形とすることにより、互いの歯車の中心距離(中心軸c1とc2間の直線間隔)が若干変化しても噛み合いが正しく保たれると共に、容易に作製でき、滑りも少ないため好ましい。なお、インボリュート歯形に換えて、サイクロイド歯形に形成することも可能である。
【0040】
第1可動部品1a及び第2可動部品2aの材料は任意に選択可能であり、例えばプラスチックやステンレス、鋼などを用いれば良い。
【0041】
第1変形部品1bはコイル形状のスプリングで構成されており、その一方の端部は第2可動部品2aの中心軸c2に連結され、他方の端部は第1可動部品1aの中心を除く箇所に連結されている。実施例では、第1可動部品1aの一構成部品として設けたホルダ5の端部の穴に、第1変形部品1bの他方の端部を係止して連結している。ホルダ5は、第1可動部品1aの中心軸c1に固定されており、第1可動部品1aと連動して回転可能に軸支されている。
【0042】
更に、第2変形部品2bもコイル形状のスプリングで構成されており、その一方の端部は第2可動部品2aの中心を除く箇所に連結されている。実施例では、第2可動部品2aの外形形状である扇形から突出した突起部pに穴を設け、その穴に第2変形部品2bの一方の端部を係止して連結している。更に、第2変形部品2bの他方の端部は、ボックス4に連結されている。
【0043】
更に、第1可動部品1aの中心軸c1には第1傘歯車1cが固定され、第1可動部品1aと連結して回転可能に軸支されている。一方、発電機3のシャフト6の端部には、第2傘歯車2cが固定されており、シャフト6と連結して回転可能に構成されている。更に、第1傘歯車1cと第2傘歯車2cは、互いに歯が噛み合うように連結されている。なお
図1A、B〜
図4A、Bでは、第1及び第2傘歯車1c、2cの歯形の図示は省略している。
【0044】
発電機3は、ハウジング内部に少なくともコイルとマグネットを含むモータであり、更にシャフトの回転と共にコイルとマグネットのどちらかが回転する型式のものである。
【0045】
次に、スイッチ発電機構1における自己発電の動作原理に関して説明する。ボックス4の外部に突出している第2可動部品2aの一部(突出部)に、スイッチ発電機構1の外部から人力による押圧力または使用用途毎の対象物からの押圧力と云った力が伝達され、第2可動部品2aが押されて一定量時計方向に回転し可動する(
図1A、B及び
図2A、B参照)。従って、第2可動部品2aはスイッチ部分として機能し、スイッチング動作により可動する。中心軸c1とc2間の直線間隔は、第1可動部品1aと第2可動部品2aの互いの歯が噛み合うように設定されている。従って、第2可動部品2aが回転すると、第1可動部品1aの歯7aと第2可動部品2aの歯7bが噛み合って連動する。
【0046】
第2可動部品2aに力(押圧力)が伝達され続け、第1可動部品1aと第2可動部品2aの互いの歯が噛み合わされている間は、第1可動部品1aは回転し続ける。よって、第1可動部品1aと第2可動部品2aの互いの歯の噛み合いが外れるまで、第1可動部品1aは一定量回転される(実施例の場合、約90°の反時計回転となる)。
【0047】
第1可動部品1aの一定量の回転に伴い、ホルダ5も第1可動部品1aと連動して回転する。従ってホルダ5の端部の穴も約90°回転し、穴の位置が回動して移動する。一方、第1変形部品1bの一方の端部は第2可動部品2aの中心軸c2に連結されているため、第2可動部品2aが回転しても連結位置は移動しない。よって中心軸c2が固定端になり、ホルダ5の端部の穴の移動に伴って第1変形部品1bは伸長される。ホルダ5の端部の穴は、一定量として約90°回転するため、第1変形部品1bもその約90°回転に伴った一定量だけ伸びて変形する。第1変形部品1bの伸びは、第1可動部品1aと第2可動部品2aの互いの歯の噛み合いにより、弾性力による位置エネルギーとして第1変形部品1bに蓄積し保持される。
【0048】
第1変形部品1bの伸びは、第2可動部品2aに力が伝達され続けて第1可動部品1aと第2可動部品2aの互いの歯が噛み合わされている間は保持される。従って、第1可動部品1aと第2可動部品2aの互いの歯の噛み合いが外れる直前での、第1変形部品1bの伸びが最大量となる。実施例では、第1可動部品1a及びホルダ5が約90°回転した時点での伸びが最大となる。
【0049】
第1可動部品1aが一定量(約90°)回転した後に、
図2A、Bに示すように第1可動部品1aと第2可動部品2aの互いの歯の噛み合いが外れる。すると、第1変形部品1bの伸びの変形保持が外され、第1変形部品1bの変形が解放されて第1変形部品1bに収縮が発生する。第1変形部品1bの収縮時も、中心軸c2が固定端になると共に、ホルダ5の端部の穴が移動する。従って第1変形部品1bの収縮により、第1可動部品1aが逆方向(実施例では時計方向に約90°の回転となる。
図2A、B及び
図3A、Bを参照。)に一定量回転する。伸びにより第1変形部品1bに蓄積されている位置エネルギーの最大値は、第1可動部品1aの約90°回転時の伸びに伴う位置エネルギーである。この最大値の位置エネルギーが、収縮によって第1可動部品1aの一定量の逆方向の回転(約90°)に変換される。
【0050】
第1可動部品1aの一定量の逆方向の回転に伴い、第1傘歯車1cも一定量だけ逆方向に回転すると共に第2傘歯車2cも連動して回転し、シャフト6が一定量だけ回転される。即ち、第1可動部品1aの前記回転が、第1傘歯車1cと第2傘歯車2cとからなる回転伝達機構に伝達され、シャフト6が一定量回転する。このように、第1可動部品1aの前記回転はシャフト6に伝達され、これによりシャフト6が一定量回転する。
【0051】
シャフト6が一定量の回転を行うことで、発電機3内部で電力が発生して発電が行われる。その電力により、スイッチ発電機構1の用途に応じて、別途任意に設置可能な赤外線など無線通信装置を起動することが可能となる。
【0052】
シャフト6の回転量は、第1可動部品1aの逆方向の回転量、即ち第1変形部品1bの伸びの最大値に応じて変わる。よって、第1可動部品1aと第2可動部品2aの互いの歯が噛み合うピッチ円の円弧長に伴って、第1変形部品1bの伸びの最大値は任意の一定量で設定可能である。従って、シャフト6の回転量も任意の一定量で設定することが出来るため、発電機3による発電量も、第2可動部品2aに伝わる外部からの力(押圧力)の速度に関係無く一定値に設定可能となる。尚、本実施形態において、回転伝達機構は第1傘歯車1cと第2傘歯車2cとから構成されるものに限定されず、例えば、平行な2軸に取り付けられた相互に噛み合う一対の歯車からなる平歯車により回転伝達機構を構成してもよい。
【0053】
以上により、スイッチ発電機構1は第1変形部品1bを含むことで、第1変形部品1bの変形量を一定量まで蓄積してからその変形を解放して、発電機3で発電を行うことが可能となる。従って、どんなに遅い速度の力で第2可動部品2aが押されてスイッチ発電機構1が動作しても一定の発電量を確保することができ、確実なスイッチング動作を行うことが可能となる。
【0054】
更に、スイッチ発電機構1における自己発電の動作原理に関して説明を続ける。前記外部からの力が伝わり続けることで、第2可動部品2aは一定量まで回転される。第2可動部品2aの一定量の回転とは、少なくとも第2変形部品2bに伸びに伴う変形が発生するまでの回転であると共に、少なくとも第1可動部品1aと第2可動部品2aの互いの歯の噛み合いが外れるまでの回転量を指す(
図2A、B及び
図3A、B参照)。
【0055】
第2可動部品2aが一定量回転して可動すると、第2可動部品2aの中心を除く箇所である突起部pも一定量可動し、穴の位置が移動する。すると、ボックス4の連結部分が固定端になると共に突起部pの穴が移動端となり、その穴の移動に伴い第2変形部品2bは伸びて変形する。
【0056】
第2可動部品2aの一定量の回転に伴い突起部pの穴も一定量移動するため、第2変形部品2bも穴の移動量に伴った一定量だけ伸びて変形する。第2変形部品2bの伸びは、外部からの押圧力が第2可動部品2aに伝達されている間は保持されるため、弾性力による位置エネルギーが第2変形部品2bに蓄積し保持される。
【0057】
次に、第2可動部品2aへの押圧力の伝達が解消されると、第2変形部品2bの変形が解放され収縮する。第2可動部品2aへの押圧力の伝達が解消される状態とは、スイッチ発電機構1の使用用途にも依るが、例えば使用者が第2可動部品2aを押すことを止めたり、対象物が取り除かれて対象物からの押圧力が無くなった状態などが挙げられる。
【0058】
第2可動部品2aへの押圧力の伝達が解消されると、第2変形部品2bの伸びの変形保持が外され、第2変形部品2bの変形が解放されて第2変形部品2bに収縮が発生する。収縮時も、ボックス4との連結部分が固定端になると共に、突起部pの穴が移動端となる。従って第2変形部品2bの収縮により、第2可動部品2aは一定量逆方向(実施例では反時計方向の回転となる。
図3A、B及び
図4A、Bを参照。)に回転する。
【0059】
第2可動部品2aが一定量逆方向に回転する際に、第1可動部品1aの歯と第2可動部品2aの歯が再び噛み合って互いに連動し、第1可動部品1aが逆方向に回転する。第1可動部品1aの逆方向の回転量は、第2可動部品2aの一定量の逆方向回転量、即ち第2変形部品2bの一定量の変形に依る。従って、伸びにより第2変形部品2bに蓄積されていた位置エネルギーが、収縮によって第1可動部品1aの一定量の逆方向の回転に変換され、第1可動部品1aが一定量逆方向に回転する(実施例では時計方向に約90°の回転となる。
図3A、B及び
図4A、B参照。)。
【0060】
第1可動部品1aの一定量の逆方向回転に伴いホルダ5も第1可動部品1aと連動し、ホルダ5の端部の穴の位置も一定量逆方向に回転して約90°移動する。中心軸c2が固定端になると共にホルダ5の端部の穴の移動に伴い、第1変形部品1bは一定量だけ伸びて再度変形する。第1可動部品1aと第2可動部品2aの互いの歯の噛み合いにより、第1変形部品1bの伸びは弾性力による位置エネルギーとして、第1変形部品1bに蓄積される。
【0061】
この第1可動部品1aの一定量の逆方向の回転に伴い、第1傘歯車1cも一定量だけ逆方向に回転すると共に第2傘歯車2cも連動して回転し、シャフトが一定量だけ回転されて発電機3内部で電力を発生して発電が行われる。
【0062】
シャフトの回転量は、第1可動部品1aの一定量の逆方向回転、即ち第2変形部品2bの伸びの最大値に応じて変わる。よって、スイッチ発電機構1の外部からの力(押圧力)の伝達量に伴う第2可動部品2aの回転量(第2可動部品2aが力により押し込まれる量)に応じて、第2変形部品2bの伸びの最大値は任意の一定量で設定可能である。従って、シャフト6の回転量も任意の一定量で設定することが出来るため、発電機3による発電量も、第2可動部品2aに伝わる外部からの力(押圧力)の速度に関係無く一定値に設定可能となる。
【0063】
以上により、スイッチ発電機構1は第2変形部品2bを含むことで、第2変形部品2bの変形量を一定量まで蓄積してからその変形を解放して、発電機3で発電を行うことが可能となる。従って、どんなに遅い速度の力(押圧力)で第2可動部品2aが押されてスイッチ発電機構1が動作しても一定の発電量を確保することができ、確実なスイッチング動作を行うことが可能となる。
【0064】
更に第2変形部品2bの変形の解放は、第2可動部品2aへの押圧力の伝達が解消されることで行われる。即ち、第2可動部品2aが押されていない状態でもスイッチ発電機構1は一定の発電量を確保することが可能となる。従って、自己発電が可能な動作状態を増加出来るため、より確実なスイッチング動作の実現と共に、スイッチ発電機構1の使用用途の拡大を図ることも可能となる。
【0065】
更に、第1可動部品1aが一定量逆方向に回転した後に、第1可動部品1aと第2可動部品2aの互いの歯の噛み合いが再び外れて(
図4A、B参照)、第1変形部品1bの変形が解放されて収縮が発生する。中心軸c2が固定端になりホルダ5の端部の穴が移動するので、第1変形部品1bが収縮すると第1可動部品1aが連動して一定量(約90°)前記逆方向とは反対の方向即ち、反時計方向に回転する(
図1A、B参照)。このように、伸びにより第1変形部品1bに蓄積されていた位置エネルギーが、収縮によって第1可動部品1aの一定量の反時計方向の回転に変換される。
【0066】
第1可動部品1aの一定量の反時計方向の回転に伴い、第1傘歯車1cも一定量だけ反時計方向に回転すると共に第2傘歯車2cも連動して回転し、シャフト6が一定量だけ回転されて発電機3内部で電力を発生して発電が行われる。
【0067】
シャフト6の回転量は、第1可動部品1aの一定量の反時計方向の回転、即ち第1変形部品1bの伸びの最大値に応じて変わる。よって、第1可動部品1aと第2可動部品2aの互いの歯が噛み合うピッチ円の円弧長に伴って、第1変形部品1bの伸びの最大値は任意の一定量で設定可能である。従って、シャフト6の回転量も任意の一定量で設定することが出来るため、発電機3による発電量も、第2可動部品2aに伝わる外部からの押圧力の速度に関係無く一定値に設定可能となる。
【0068】
以上により、スイッチ発電機構1は第1変形部品1bを含むことで、第1変形部品1bの変形量を一定量まで蓄積してからその変形を解放して、発電機3で発電を行うことが可能となる。従って、どんなに遅い速度の力で第2可動部品2aが押されてスイッチ発電機構1が動作しても、一定の発電量を確保することができ、確実なスイッチング動作を行うことが可能となる。
【0069】
更に、第1可動部品1aと第2可動部品2aの互いの歯の、再度の噛み合いに依る第1変形部品1bの変形の解放は、第2可動部品2aへの押圧力の伝達が解消されることで行われる。即ち、第2可動部品2aが押されていない状態でもスイッチ発電機構1は一定の発電量を確保することが可能となる。従って、自己発電が可能な動作状態を増加出来るため、より確実なスイッチング動作の実現と共に、スイッチ発電機構1の使用用途の拡大を図ることも可能となる。そして、
図4Aから
図1Aの初期状態へと戻る。
【0070】
なお
図1A、B〜
図4A、Bの実施例では、第1変形部品1bにおける一方の端部の連結位置を、第2可動部品2aの中心軸c2に設定した形態例を説明した。しかしながら例えば、ボックス4などスイッチ発電機構1の内部で任意の箇所に、第1変形部品1bにおける一方の端部の連結位置を変更することが可能である。
【0071】
また実施例において、歯車に替えて滑車やマグネットギアを使用しても良い。しかしながら、滑車では滑り損失が発生するおそれがあり、マグネットギアでも動作損失が発生するおそれが有る。一方、歯車をスイッチ発電機構の形成部品に用いることで、互いの歯を噛み合わせてスイッチ発電機構を動作させることが可能となる。従って、動作損失の発生を抑制又は防止することが出来るため、どのような用途や使用状況でも一定の発電量を確実に確保することができ、確実なスイッチング動作を行うことが可能となり好ましい。
【0072】
更に、本実施形態ではスイッチ発電機構1を歯車やコイル形状のスプリング、発電機というような簡易な部品のみで形成している。従って、耐候性や信頼性に優れ、どのような用途や使用状況でも確実に一定の発電量を確保し、確実なスイッチング動作を行うことが可能なスイッチ発電機構を形成することが出来る。
【0073】
更に、スイッチ発電機構1を形成する部品を、第2可動部品2aの一部を除いてボックス4に収めることにより、第1可動部品1aと第2可動部品2a間の伝達部分の防塵性や防水性を確保することが可能となる。また、歯車部分の防錆効果も得られる。従って、スイッチ発電機構1の耐候性や信頼性をより一層向上させることができ、より確実なスイッチング動作を実現することが可能となる。