【文献】
Cellular Physiology and Biochemistry,Vol.47,2018年,pp.176-190
【文献】
Neurochem. Res.,Vol.35,2010年,pp.1111-1118
【文献】
Oxidative Medicine and Cellular Longevity,Vol.2012,2012年,pp.1-11,doi:10.1155/2012/353152
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記脊椎・脊髄損傷が、頸椎損傷及び/又は頚髄損傷、胸椎損傷及び/又は胸髄損傷、腰椎損傷及び/又は腰髄損傷、仙椎損傷及び/又は仙髄損傷、ならびにヘルニアからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.脊椎・脊髄損傷の症状を改善するための組成物
本発明は、分子状水素を有効成分として含む、被験体において脊椎・脊髄損傷の症状を改善するための組成物を提供する。
【0015】
本明細書において「脊椎・脊髄損傷」は、頸椎・頚髄損傷、胸椎・胸髄損傷、腰椎・腰髄損傷、及び仙椎・仙髄損傷、ならびにヘルニアからなる群から選択される。
【0016】
脊椎・脊髄損傷は、例えば、交通事故、転落、転倒、スポーツ事故、落下物に衝突する事故、倒壊物に潰される事故などによる外傷性、疾患(例えば脊髄腫瘍)や奇形(例えば脊髄動脈奇形)などの非外傷性などを含む。
【0017】
脊椎は、7個の頸椎、12個の胸椎、5個の腰椎、及び仙椎を含み、脊椎によって脊髄が保護されている。ここで、脊髄は、頸髄、胸髄、腰髄及び仙髄を含む。
【0018】
脊椎・脊髄損傷は、脊椎損傷及び/又は脊髄損傷であり、脊椎及び脊髄の損傷部位によって、例えば、頸椎損傷及び/又は頚髄損傷、胸椎損傷及び/又は胸髄損傷、腰椎損傷及び/又は腰髄損傷、及び仙椎損傷及び/又は仙髄損傷と呼ばれる。脊椎が損壊し及び/又は脊髄が障害されることによって脊椎損傷及び/又は脊髄損傷が生じる。
【0019】
ヘルニアは、背骨の腰部の椎骨と椎骨の間でクッションの役割を果たしている軟骨(椎間板)が変性し、組織の一部が飛びだす疾患であり、椎間板ヘルニアとも称することがある。
【0020】
本明細書において「脊椎・脊髄損傷の症状」は、脊椎・脊髄損傷が原因で生じる、例えば、疼痛、睡眠障害、食欲減退、肉体的疲労、精神的疲労、神経的疲労、背中の灼熱感、手足の痙性(痙縮ともいう)、麻痺などを含む。
【0021】
肉体的疲労、精神的疲労及び神経的疲労はそれぞれ、主に、からだの疲労、心の疲労、脳の疲労を指す。これら3つの疲労は相互に連関しており、疲労が慢性的になると自律神経の失調が起こり、睡眠、食欲、精神などに悪影響が生じることがある。
【0022】
手足の痙性(痙縮)は、筋肉が緊張しすぎて、手足が動かしにくい、首や背中が反ってしまう、勝手に動いてしまうなどの状態をいう。痙性では、手指が握ったままとなり開こうとしても開きにくい、肘が曲がる、足先が足の裏側のほうに曲がってしまうなどの症状がみられる。
【0023】
背中の灼熱感は、背中から腰にかけて焼けるように熱い異常感覚を指し、このとき灼熱痛を生じることがある。
【0024】
疼痛は、脊椎・脊髄損傷後に約70%以上の患者が経験すると云われている。そのうち約40%の患者は常に疼痛を感じており、睡眠障害の原因にもなっている。そのような患者では、疼痛は気候の変化、灼熱痛、しびれ痛、自律神経過反射などによっても起こる。
【0025】
麻痺は、運動麻痺及び知覚麻痺を含む。
【0026】
本明細書中「被験体」という用語は、哺乳動物、例えば、ヒトを含む霊長類、イヌ、ネコなどのペット動物、動物園などの観賞用動物などを含む。好ましい被験体はヒト及びイヌである。
【0027】
本明細書中、本発明の組成物の有効成分である「水素」は分子状水素(すなわち、気体状水素もしくは水素ガス)であり、特に断らない限り、単に「水素」又は「水素ガス」と称することもある。また、本明細書中で使用する用語「水素」は、分子式でH
2、D
2(重水素)、HD(重水素化水素)、又はそれらの混合ガスを指す。D
2は、高価であるが、H
2よりスーパーオキシド消去作用が強いことが知られている。本発明で使用可能な水素は、H
2、D
2(重水素)、HD(重水素化水素)、又はそれらの混合ガスであり、好ましくはH
2であり、或いはH
2に代えて、又はH
2と混合して、D
2及び/又はHDを使用してもよい。
【0028】
本発明の組成物の好ましい形態は、分子状水素を含む気体又は液体である。
【0029】
分子状水素を含む気体は、好ましくは、水素ガスを含む空気又は、水素ガスと酸素ガスを含む混合ガスである。分子状水素を含む気体の水素ガスの濃度は、ゼロ(0)より大きく、かつ18.5体積%以下、例えば0.5〜18.5体積%であり、好ましくは1〜10体積%、例えば2〜10体積%、2〜9体積%、2〜8体積%、3〜10体積%、3〜9体積%、3〜8体積%、3〜7体積%、3〜6体積%、4〜10体積%、4〜9体積%、4〜8体積%、4〜7体積%、4〜6体積%、4〜5体積%、5〜10体積%、5〜9体積%、5〜8体積%、6〜10体積%、6〜9体積%、6〜8体積%、6〜7体積%などである。本発明では、爆発限界以下で水素ガス濃度が高いほど、或いは1日あたりの水素投与量が高いほど、脊椎・脊髄損傷を原因とする症状の改善(例えば抑制又は軽減)効果が大きい傾向がある。
【0030】
水素は可燃性かつ爆発性ガスであるため、脊椎・脊髄損傷を原因とする症状の改善においては、ヒトなどの被験体に安全な条件で本発明の組成物に水素を含有させて被験体に投与することが好ましい。
【0031】
水素ガス以外の気体が空気であるときには、空気の濃度は、例えば81.5〜99.5体積%の範囲である。
【0032】
水素ガス以外の気体が酸素ガスを含む気体であるときには、酸素ガスの濃度は、例えば21〜99.5体積%の範囲である。
【0033】
その他の主気体として例えば窒素ガスをさらに含有させることができる。
【0034】
分子状水素を含む液体は、具体的には、水素ガスを溶存させた水性液体であり、ここで、水性液体は、非限定的に、例えば水(例えば精製水、滅菌水)、生理食塩水、緩衝液(例えばpH4〜7.4の緩衝液)、点滴液、輸液、注射溶液、飲料(例えば、緑茶、紅茶などの茶飲料、果汁、青汁、野菜ジュース、など)などである。分子状水素を含む液体の水素濃度は、非限定的に、例えば1〜10ppm、好ましくは1.2〜9ppm、例えば1.5〜9ppm、1.5〜8ppm、1.5〜7ppm、1.5〜6ppm、1.5〜5ppm、1.5〜4ppm、2〜10ppm、2〜9ppm、2〜8ppm、2〜7ppm、2〜6ppm、2〜5ppm、3〜10ppm、3〜9ppm、3〜8ppm、3〜7ppm、4〜10ppm、4〜9ppm、4〜8ppm、4〜7ppm、5〜10ppm、5〜9ppm、5〜8ppm、5〜7ppmなどである。本発明では、爆発限界以下で溶存する水素濃度が高いほど、或いは1日あたりの水素投与量が高いほど、脊椎・脊髄損傷を原因とする症状の改善(例えば抑制又は軽減)効果が大きい傾向がある。
【0035】
分子状水素を含む液体には、脊椎・脊髄損傷の症状を治療するための医薬品を添加してもよい。或いは、当該医薬品は、分子状水素を含む液体又は気体の投与と別に投与してもよい。そのような医薬品の例は、非限定的に、鎮痛剤(例えばボルタレン、ロキソニン、モルヒネなど)、抗痙縮薬(例えばバクロフェン、チザニジンなど)などを含む。
【0036】
分子状水素を含む気体又は液体は、所定の水素ガス濃度になるように配合されたのち、例えば耐圧性の容器(例えば、ステンレスボンベ、アルミ缶、好ましくは内側をアルミフィルムでラミネーションした、耐圧性プラスチックボトル(例えば耐圧性ペットボトル)及びプラスチックバッグ、アルミバッグ、等)に充填される。アルミは水素分子を透過させ難いという性質を有している。或いは、分子状水素を含む気体又は分子状水素を含む液体は、投与時に、水素ガス生成装置、水素水生成装置、又は水素ガス添加装置、例えば、公知のもしくは市販の水素ガス供給装置(分子状水素を含む気体の生成用装置)、水素添加器具(水素水生成用装置)、非破壊的水素含有器(例えば点滴液などの生体適用液バッグ内部へ非破壊的に水素ガスを添加するための装置)などの装置を用いてその場で作製されてもよい。
【0037】
水素ガス供給装置は、水素発生剤(例えば金属アルミニウム、水素化マグネシウム、等)と水の反応により発生する水素ガスを、希釈用ガス(例えば空気、酸素、等)と所定の比率で混合することを可能にする(日本国特許第5228142号公報、等)。あるいは、水の電気分解を利用して発生した水素ガスを、酸素、空気などの希釈用ガスと混合する(日本国特許第5502973号公報、日本国特許第5900688号公報、等)。これによって、例えば0.5〜18.5体積%の範囲内の水素濃度の分子状水素を含む気体を調製することができる。
【0038】
水素添加器具は、水素発生剤とpH調整剤を用いて水素を発生し、水などの生体適用液に溶存させる装置である(日本国特許第4756102号公報、日本国特許第4652479号公報、日本国特許第4950352号公報、日本国特許第6159462号公報、日本国特許第6170605号公報、特開2017−104842号公報、等)。水素発生剤とpH調整剤の組み合わせは、例えば、金属マグネシウムと強酸性イオン交換樹脂もしくは有機酸(例えばリンゴ酸、クエン酸、等)、金属アルミニウム末と水酸化カルシウム粉末、などである。これによって、例えば1〜10ppm程度の溶存水素濃度の分子状水素を含む液体を調製できる。
【0039】
非破壊的水素含有器は、点滴液などの市販の生体適用液(例えば、ポリエチレン製バッグなどの水素透過性プラスチックバッグに封入されている。)に水素ガスをパッケージの外側から添加する装置又は器具であり、例えばMiZ(株)から市販されている(http://www.e−miz.co.jp/technology.html)。この装置は、生体適用液を含むバッグを飽和水素水に浸漬することによってバッグ内に水素を透過し濃度平衡に達するまで無菌的に水素を生体適用液に溶解させることができる。当該装置は、例えば電解槽と水槽から構成され、水槽内の水が電解槽と水槽を循環し電解により水素を生成することができる。或いは、簡易型の使い捨て器具は同様の目的で使用することができる(特開2016−112562号公報、等)。この器具は、アルミバッグの中に生体適用液含有プラスチックバッグ(水素透過性バッグ、例えばポリエチレン製バッグ)と水素発生剤(例えば、金属カルシウム、金属マグネシウム/陽イオン交換樹脂、等)を内蔵しており、水素発生剤は例えば不織布(例えば水蒸気透過性不織布)に包まれている。不織布に包まれた水素発生剤を水蒸気などの少量の水で濡らすことによって発生した水素が生体適用液に非破壊的かつ無菌的に溶解される。
【0040】
或いは、精製水素ガスボンベ、精製酸素ガスボンベもしくは精製空気ボンベを用意し、所定の水素濃度、所定の酸素もしくは空気濃度になるように調整した分子状水素を含む気体や液体を作製してもよい。
【0041】
上記の装置又は器具を用いて調製された、分子状水素を含む気体や分子状水素を含む液体(例えば水(例えば精製水、滅菌水)、生理食塩水、点滴液、等)は、脊椎・脊髄損傷を有する被験体に経口的に又は非経口的に投与されうる。
【0042】
本発明の組成物の別の形態には、被験体に経口投与(もしくは摂取)するように調製された、消化管内で水素の発生を可能にする水素発生剤を含有する剤型(例えば、錠剤、カプセル剤、等)が含まれる。水素発生剤は、例えば食品もしくは食品添加物として承認されている成分によって構成されることが好ましい。
【0043】
本発明の組成物を被験体に投与する方法としては、分子状水素を有効成分とするとき、例えば吸入、吸引等による経肺投与が好ましい、また、分子状水素を含む液体を有効成分とするとき経口投与又は静脈内投与(点滴を含む)が好ましい。ガスを吸入するときには、鼻カニューラや、口と鼻を覆うマスク型の器具を介して口又は鼻からガスを吸入して肺に送り、血液を介して全身に送達することができる。
【0044】
経口投与する分子状水素を含む液体については、冷却した液体又は常温で保存した液体を被験体に投与してもよい。水素は常温常圧下で約1.6ppm(1.6mg/L)の濃度で水に溶解し、温度による溶解度差が比較的小さいことが知られている。或いは、分子状水素を含む液体は、例えば上記の非破壊的水素含有器を用いて調製された水素ガスを含有させた点滴液又は注射液の形態であるときには、静脈内投与、動脈内投与などの非経口投与経路によって被験体に投与してもよい。
【0045】
上記水素濃度の分子状水素を含む気体又は上記溶存水素濃度の分子状水素を含む液体を1日あたり1回又は複数回(例えば2〜3回)、1週間〜3か月又はそれ以上の期間、例えば1週間〜6か月又はそれ以上(例えば、1年以上、2年以上、など)にわたりヒトに投与することができる。分子状水素を含む気体が投与されるときには、1回あたり少なくとも30分吸入することが好ましい。吸入時間は長いほど改善効果があることから、例えば、30分から1時間、1時間から2時間、2時間から3時間、もしくはそれ以上かけて投与することができる。また、分子状水素を含む気体を吸入又は吸引によって経肺投与するときには、大気圧環境下で、或いは、例えば標準大気圧(約1.013気圧をいう。)を超える且つ7.0気圧以下の範囲内の高気圧、例えば1.02〜7.0気圧、好ましくは1.02〜5.0気圧、より好ましくは1.02〜4.0気圧、さらに好ましくは1.02〜1.35気圧の範囲内の高気圧環境下(分子状水素含有気体を含む)で被験体に当該気体を投与することができる。
【0046】
2.脊椎・脊髄損傷の症状を改善する方法
本発明はさらに、上記の組成物を、脊椎・脊髄損傷をもつ被験体に投与することを含む、被験体において脊椎・脊髄損傷の症状を改善する方法を提供する。
【0047】
分子状水素を含む組成物、脊椎・脊髄損傷及びその症状、投与量、投与方法、などについては、上記1.で説明したとおりである。
【0048】
本発明の方法は、脊椎・脊髄損傷後、できるかぎり早い段階(例えば脊椎・脊髄損傷後1〜7日目)から、脊椎・脊髄損傷の症状を有する被験体に本発明の組成物を投与することができるが、本発明の方法はまた、たとえ例えば発症後10日〜1か月もしくはそれ以上(例えば、6か月以上、1年以上、2年以上、3年以上又は6年以上)経過した時点から実施したとしても有効である。
【0049】
本発明の方法では、脊椎・脊髄損傷の症状を有する被験体に、例えば0.5〜18.5体積%(例えば2〜10体積%、2〜9体積%、2〜8体積%、3〜10体積%、3〜9体積%、3〜8体積%、3〜7体積%、3〜6体積%、4〜10体積%、4〜9体積%、4〜8体積%、4〜7体積%、4〜6体積%、4〜5体積%、5〜10体積%、5〜9体積%、5〜8体積%、6〜10体積%、6〜9体積%、6〜8体積%、6〜7体積%など、好ましくは5〜10体積%、5〜8体積%、例えば6〜10体積%、6〜8体積%、6〜7体積%など)の分子状水素を含有する気体(好ましくは、空気もしくは酸素)を1日あたり例えば1〜3時間もしくはそれ以上にわたり吸入又は吸引し、例えば1〜3か月もしくはそれ以上、4〜7か月もしくはそれ以上、1〜3年もしくはそれ以上継続することができる。
【0050】
或いは、本発明の方法では、脊椎・脊髄損傷の症状を有する被験体に、例えば1〜10ppm(例えば1.5〜9ppm、1.5〜8ppm、1.5〜7ppm、1.5〜6ppm、1.5〜5ppm、1.5〜4ppm、2〜10ppm、2〜9ppm、2〜8ppm、2〜7ppm、2〜6ppm、2〜5ppm、3〜10ppm、3〜9ppm、3〜8ppm、3〜7ppm、4〜10ppm、4〜9ppm、4〜8ppm、4〜7ppm、5〜10ppm、5〜9ppm、5〜8ppm、5〜7ppmなど、好ましくは3〜10ppm、4〜10ppm、5〜10ppm、5〜9ppm、5〜8ppm、5〜7ppmなど)の分子状水素含有液体を、静脈内投与の場合1回あたり例えば200〜500mL、また経口投与の場合1回あたり例えば500〜1000mLを投与し、例えば0.5〜3か月もしくはそれ以上、4〜7か月もしくはそれ以上、1〜3年もしくはそれ以上継続することができる。
【0051】
いずれの投与形態の場合にも、脊椎・脊髄損傷の症状の改善の程度をみながら投与期間を決定することができる。例えば、脊椎・脊髄損傷の症状の改善の兆候が認められるならば投与期間を継続し、寛解が認められるのであれば投与を中止してもよい。
【0052】
本発明の方法はさらに、脊椎・脊髄損傷の症状(例えば、疼痛、睡眠障害、食欲減退、肉体的疲労、精神的疲労、神経的疲労、背中の灼熱感、手足の痙性(痙縮ともいう)、麻痺など)に対する治療やリハビリテーションと併用することができる。併用することによって、脊椎・脊髄損傷の症状の改善効果が高まることが期待される。
【0053】
リハビリテーションとしては、理学療法、技術訓練活動、社会的、情緒的ニーズに応えるためのカウンセリングなどを適宜組み合わせることができる。
【0054】
治療においては、疼痛、痙縮などの症状に対して、さらに薬剤療法と併用してもよい。薬剤は、鎮痛剤(例えばボルタレン、ロキソニン、モルヒネなど)、抗痙縮薬(例えばバクロフェン、チザニジンなど)などを含む。
【実施例】
【0055】
以下の実施例を参照しながら本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は当該実施例によって制限されないものとする。
【0056】
[実施例1]
<水素吸入による頸椎・頸髄損傷患者の症状の改善例>
患者(男性、36歳)は、海の浅瀬に飛び込んだ際に頭部から海底に着地して頸椎・頸髄損傷を起こす事故を起こした。事故から約一週間後に意識を回復したが、首(損傷部位)より下には感覚はあるものの自分の意志で動かすことができない状態であった。その後、約6年の間に、損傷部位の手術を行い、リハビリテーションにより徐々に回復してきたが、症状の改善に限界があった。具体的には、上腕二頭筋から下が不全麻痺し、また、背中から腰にかけて焼けるように熱い異常感覚(灼熱感)が常にあり、両足に痙性が残った。自律神経も乱れやすく、十分に睡眠がとれない状態であり、身体が不自由であることから気持ちに余裕が持てずその不満を周囲の人にぶつけることが多かった。
【0057】
事故から6年後の水素ガス吸入直前は、仕事には午後から週4日〜5日行っていたが、調子が悪い日は1日中自宅で過ごしていた。また、度々、精神科にも通院することもあった。
【0058】
事故から約6年後に、2018年10月4日から2018年5月12日まで、患者は水素吸入(水素吸入機タイプMHG−2000α、水素濃度6〜7.5%、水素ガス発生量140mL/min、MiZ(株))を開始した。1日あたり午前と午後の2回、合計2〜7.5時間(1日あたり平均3.3時間)吸引し、約7か月間にわたり、症状として、疼痛、睡眠障害、食欲減退、肉体的疲労、精神的疲労、神経的疲労、背中の灼熱感、及び足の痙性について、Face Pain Scale(FPS;スケール0〜5)を用いて評価した。上記の各症状について、FPS「0」は身体の状態が大変良い、FAS「1」は身体の状態が良い、FAS「2」は変化がない、FAS「3」は身体の状態が少し悪い、FAS「4」は身体の状態が悪い、FAS「5」は身体の状態が大変悪いことを示している。
【0059】
図1から
図5におけるFASのスケールは、吸入後に吸入前と比べてどのくらい変化したかを意味している。
図6におけるFASのスケールは、吸入前と吸入後のそれぞれにおける感覚の違いを記載したものである。
図1から
図5では、一定期間ごとの評価(例えば0〜3)の個数を数えて、各項目での割合(%)を算出した。図中、表の外に示した数字は、各評価の個数の合計である。
【0060】
また、患者は2019年5月13日より、上記水素吸入機タイプMHG−2000αに代えて、業務用水素ガス吸入機(水素濃度6〜7.5%、水素ガス発生量1、120mL/min、MiZ(株))を使用して水素ガスの吸入を行った。
【0061】
2018年10月4日から2019年2月14日までの集計結果を
図1から
図5に示す。集計は月ごとのデータを吸入時間ごとに各項目の各FAS「1」から「5」の数を数えて合計した([
図1]〜[
図5];ただし、[
図1]から[
図5]においてはFAS「4」およびFAS「5」の評価は一度もなされなかったので省略した)。
【0062】
水素ガス吸入開始の2018年10月4日から2018年10月31日までの集計結果より、水素ガス吸入開始から「痛みの改善」、「睡眠の改善」、「食欲の改善」、「肉体的疲労の改善」、「精神的疲労の改善」、「神経的疲労の改善」の項目でFAS「0」とFAS「1」が見られることから、これらの項目で良好な改善傾向が見られた。しかしながら、「背中の感覚の改善」、「足の痙性の改善」ではFAS「1」が時折みられたものの、FAS「2」、FAS「3」が見られ、改善傾向が解らない、または、悪化した。これは、吸入開始直後であったため、吸入による改善効果よりも、頚椎・頸髄損傷の後遺症のほうが強く出たためである。なお、2018年12月1日に以降はいずれの項目においてもFAS「3」以上はみられなかったことから、水素ガスの継続的な吸入により、脊椎・頸髄損傷の後遺症が改善したことが解る([
図1])。
【0063】
2018年11月以降、吸入時間が長いほど、FAS「1」の割合が増えている傾向がみられることから、水素ガスの吸入時間は長いほど後遺症の改善効果が出ている([
図2]〜[
図5])。
【0064】
また、患者は2019年5月13日より、水素吸入機タイプMHG−2000αよりも水素ガスの量が8倍の業務用水素ガス吸入機で水素ガスの吸入を開始したところ、すべての項目で改善が見られた([
図6])。
【0065】
患者は上記FASの評価の他、吸入した前後に感じたことを以下の通り記録用紙に記録した。
【0066】
2018年10月9日の記録では「順調に改善効果が見られています」との報告があった。
【0067】
2018年10月12日の記録では「副交感神経が優位に立つ時間が出来たせいか心が安らかに過ごせる時間が大幅に増えた事でイライラや不安や妬みや僻みなどのネガティブな思考が減った感じがします。寝る前にやるのがおススメ出来ると思いました。実際、就業時など交感神経が優位な時に冷静になれたり、他人を幸せにしようという気持ちが前より出てきたと思います。身体には、関節や筋肉に潤いが出てきた感じがして動きやすさ硬さがよくなってきたと理学療法士の先生も言っていました。末梢神経の感覚や伝達も一週間前よりも少しですが良くなってきました。」との報告があった。
【0068】
2018年10月15日の記録では「週に一度のリハビリ病院の日で、膝の屈伸運動をした際に、飛躍的に運動が出来て、水素を始める前とは違って疲れにくいのと身体が動きやすいことがわかりました。」との報告があった。
【0069】
2018年10月16日の記録では「背中の感覚が水素を沢山吸ってから睡眠し起床時に前よりも暑い感覚が弱まって快適な方が上回っている感じがありました。足の痙性も弱まり操作がしやすいお陰でリハビリもやりやすい事がわかりました。以前ですと低気圧が近づくと呼吸が乱れたり、身体全体が辛いと感じていましたが水素を吸い始めて、そういったのが減ってきたように感じます。」との報告があった。
【0070】
2018年11月19日の記録では「今日のリハビリでわかった事は、水素を吸った事で足の痙性が柔らかくなってコントロールがしやすい事で足の痙性を使ったスクワットが上達しているのがわかりました。背中の異常感覚につきましては、ベッドで水素を吸入している時は楽な感じに持っていきやすいです。」との報告があった。
【0071】
2019年1月22日の記録では「吸った後の方が、痙性が柔らかくなる印象です。週に一度リハビリをしていて悪くはなっていない感じです。」との報告があった。2019年5月13日の記録では「やはり従来のとは違い、痙性緩み、末梢神経に届く感じ、代謝の上がり、血流の流れ、眠りの誘いなど効果を発揮しています。代謝が上がり過ぎて体温が高くなって汗が止まらなくなるくらいです。」との報告があった。なお、上記の報告では、患者が使用した水素ガス吸入機は、業務用水素ガス吸入機(水素濃度6〜7.5%、水素ガス発生量1、120mL/min、MiZ(株))である。
【0072】
2019年3月1日より患者は高濃度水素水(トラスト社製「10water」、水素濃度10ppm、500ml)の飲用を開始したところ、疲労回復の効果を感じると共に、血液循環の向上を実感した。