(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧縮部の前記フライトの個数、前記サブフライトの個数と多角形状、前記計量部の前記配合整列部の個数、および、前記配合整列部の歯車状の凸凹の形状、個数と前記スクリュー軸方向の長さのうち、少なくともいずれか一つが異なる形状のものであることを特徴とする請求項1に記載の成形用スクリュー。
前記計量部は、複数の前記配合整列部が同一形状からなり、かつその凸凹の位置がそれぞれ一致するように配置されていることを特徴とする請求項2から5までのいずれか1項に記載の成形用スクリュー。
前記計量部は、前記スクリュー軸方向の長さが異なる複数の前記配合整列部からなり、その隣接部同士の前記配合整列部が異なる長さのものであって、かつその凸凹の位置がそれぞれ一致するように配置されてなることを特徴とする請求項2から5までのいずれか1項に記載の成形用スクリュー。
前記計量部は、歯車状の凸凹の個数の異なる複数の前記配合整列部からなり、その隣接部同士の前記配合整列部は歯車状の凸凹の個数の異なるもの同士が配置されていることを特徴とする請求項2から5までのいずれか1項に記載の成形用スクリュー。
前記計量部は、歯車状の凸凹の形状の異なる複数の前記配合整列部からなり、その隣接部同士の前記配合整列部は歯車状の凸凹の形状の異なるもの同士が配置されていることを特徴とする請求項2から5までのいずれか1項に記載の成形用スクリュー。
前記成形用スクリューは、前記圧縮部の前記フライトの個数、前記サブフライトの個数と多角形状、前記計量部の前記配合整列部の個数、および、前記配合整列部の歯車状の凸凹の形状、個数と前記スクリュー軸方向の長さのうち、少なくともいずれか一つが異なる複数の形状を有し、
前記成形用材料に応じて前記複数のスクリュー形状から選択して用いることを特徴とする請求項10または11に記載のフリーブレンド方式用射出成型機。
前記成形用材料に応じて、前記成形用スクリューは前記圧縮部の前記フライトの個数、前記サブフライトの個数および多角形状、前記計量部の前記配合整列部の個数、および、前記配合整列部の歯車状の凸凹の形状、個数と前記スクリュー軸方向の長さのうち、少なくともいずれか一つが異なるスクリュー形状のものを用いることを特徴とする請求項13または14に記載のフリーブレンド方式の樹脂成形体製造方法。
【背景技術】
【0002】
石油を原料とする樹脂は色々な機能を有する多くの種類が開発されており、かつ加工性に優れることから電化製品や家庭用品だけでなく、自動車部品や建築部品等、社会のあらゆる分野に幅広く使用されている。
【0003】
このような樹脂を用いて目的とする製品を製造する方法として、樹脂を溶融させながら金型で成形加工する射出成形機がある。射出成形機は、あらかじめ一定の形状に加工されたペレットをホッパーから投入し、スクリューで出口側に移送しながら溶融・混練して、金型に流し込み型締めして成形するものである。この場合、色々な機能の樹脂材料であっても、一定形状のペレットにすることにより、同一の樹脂成形機を用いて色々な樹脂成形体を製造できる。
【0004】
生産される樹脂成形品は一般に大量生産されるものが多いので、製造された樹脂成形品についてはその品質のばらつきを小さくすることが重要である。そのために射出成形機の溶融・混練を均一に行うことが要求され、その要となるスクリューの開発に力が注がれている。
【0005】
例えば、可塑化能力が大きく、均一な溶融で、かつ混練、分散に優れた射出成形用スクリューが開示されている。このスクリューは、計量帯域の先部にシリンダとの間にクリアランスを有するプランジャの外周面に、一端が閉塞された行き止まりの条溝をそれぞれ連通しないように交互に逆方向に配置したミキシング部を設けている。そして、このミキシング部に、シリンダとの間に小クリアランスを持つ主フライトとこの主フライトに対しわずかに大きなクリアランスを持つサブフライトを交互に配設し、サブフライトを凸凹状に断続的に配設した構造を有している。
【0006】
このような構造とすることにより、高さの高い主フライトによって強制的に掻き取られた樹脂は、主フライトとサブフライト間に設けられた先止まりの溝に溜められ、次に高さの低いサブフライトを乗り越えると同時にサブフライトの凹部から先端部が開放された隣の溝を経由してスクリュー先端に貯留される。これにより高い攪拌効果と高い混練効果、さらに高い可塑化能力を有することができるとしている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、混練作用の向上と樹脂温度の均一化を図ることを目的とした可塑化スクリューも開示されている。この可塑化スクリューは、スクリューフライトの圧縮部の途中から計量部の途中位置までのスクリューフライト間のスクリュー溝底面をスクリューフライトに沿って半径方向に交互に変位させ、かつ、変位させた側のスクリュー溝底面を凸凹状に形成した構造からなる(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、溶融樹脂に強化用繊維を混合して射出成形する際に、強化用繊維を溶融樹脂内に均一に分散させることができる射出成形機及びそのスクリューも開示されている。この射出成形機に設けられたスクリューは、圧縮部の下流側に混練部が設けられており、混練部のフライトの向きと逆方向に3条の螺旋状に配置された溝部が形成されている。この溝部によって、強化用繊維の繊維長を長く保つことができ、圧縮部において強化用繊維が絡みあったとしても、混練部内で解繊され、溶融樹脂内における長繊維の剪断が緩和され強化用繊維が均一に分散され良好な製品が得られる(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
これらの先行文献に記載されたスクリュー及び樹脂成形機は、あらかじめ一定形状に加工された樹脂ペレットを用いるものであり、特許文献3に記載された強化用繊維混合樹脂成形体の製造においても、予め強化用繊維が含まれている熱可塑性樹脂ペレットを用いることが記載されている。
【0010】
ところで、樹脂をペレット化することなく、直接、原料樹脂から射出成形することが可能で、原料樹脂の溶融、混練、分散が良好で、成形品の機械的強度に優れた樹脂成形品を得る装置とそれに用いるスクリューも開示されている。この装置に用いるスクリューは、スクリューフライトの間に軸方向に螺旋状に形成された、第1のウエーブ溝と第2のウエーブ溝とからなるダブルウエーブを備え、第1のウエーブ溝と第2のウエーブ溝の断面の楕円形状が、それらの長軸が相互に一定角度αが30〜150°であり、ずれ角度αが90°としたスクリュー構成とされている(例えば、特許文献4参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の発明は、樹脂の混練性や分散性を高めることを目的としており、樹脂以外の材料を用いることについては開示も示唆もない。
【0013】
また、特許文献2に記載の発明は、混練作用の向上により樹脂温度の均一化を図ることを目的としており、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などの樹脂に対して好適なものであるが、樹脂以外の材料を用いることについては開示も示唆もない。
【0014】
さらに、特許文献3に記載の発明は、射出成形により熱可塑性樹脂と強化用繊維との混合樹脂成形体を製造することを目的としているが、予め強化用繊維が含まれている熱可塑性樹脂ペレットを使用しており、強化用繊維をそのまま用いて製造することについては開示されていない。
【0015】
また、特許文献4に記載の発明は、直接に原料樹脂から射出成形を可能とするものであるが、実施例では原料樹脂として再生PET、改質剤及びキャップくず再生ポリオレフィンとを用いて成形した成形品の特性が示されているのみである。また、原料樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、PETなどが使用可能であるが、特に限定されるものではないとされている。これらの開示内容からは、樹脂以外の材料も含めた成形体を製造することについては開示も示唆もないと判断される。
【0016】
ところで、樹脂は加工性に優れ、安価でかつ耐久性も高いという特徴を有するので様々な分野に使用されている。特に、熱可塑性樹脂は射出成形が容易であり、大量生産に適しているので、家庭用品から工業用品まで幅広く使われている。従来の製法により製造された樹脂成形品は、安価で耐久性に優れているという特徴から多く用いられてきたが、自然界において分解しないことから廃棄物の処理が大きな課題となってきている。現在、家庭や工場から廃棄されるプラスチックごみは分別されて一部は再利用されているが、大半は埋め立てや焼却処理が行われている。しかしながら、埋め立ては環境破壊をもたらす原因になり、焼却処理は地球環境保護の観点からは望ましくない。そのため、使用後の樹脂成形品の再利用が望まれている。また、製造中や製品の使用後の金属製品、木製品、陶器、石材、熱硬化性樹脂製品あるいはコーヒ滓や炭に代表される有機物を再活用するために樹脂と混合して新たな付加価値を有する製品を製造できれば、資源の有効利用になるだけでなく地球環境にも優しいものとなる。さらに、従来の樹脂成形体に比べて混合する熱可塑性樹脂の割合を小さくできれば環境保護の観点からより好ましい。
【0017】
しかし、従来の射出成形機及びその製造方法は、予めペレットを作り、そのペレットを混合・混練して成形する方式がほとんどであるため、ペレットを使うことなく色々な素材を混合して樹脂成形体を製造する場合には製造バラつきや品質のばらつきが大きくなってしまうという課題を有する。さらに、このように一度ペレット化してから射出成形をすることになると、ペレット化のための加熱溶融と射出成形のための加熱溶融の両方が必要となり、射出成形品を製造するのに大きなエネルギーを消費することにもなるという課題もある。
【0018】
本発明は、金属材料、木材、陶器、石材、熱硬化性樹脂あるいはコーヒ搾りかすや炭に代表される有機または無機材料などの混合材料、樹脂粉末、および、それに適した添加剤を加えて、製造ばらつきや品質ばらつきの少ない射出成形体を得るためのフリーブレンド方式用射出成形機、それに用いる成形用スクリューおよびフリーブレンド方式の樹脂成形体製造方法を提供することを目的とする。また、樹脂粉末として用いる熱可塑性樹脂の割合を、従来の射出成形方式よりも少なくすることを可能とすることで環境保護にも寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記従来の課題を解決するために、本発明の成形用スクリューはフリーブレンド方式用射出成形機に用いるものであって、混合材料、樹脂粉末及び添加剤を含む成形用材料を移送する供給部と、この供給部から連続的に設けられた圧縮部と計量部とを備え、供給部と圧縮部とは一条の螺旋状のフライトにより構成されている。そして、圧縮部のフライトは、スクリュー軸方向に螺旋状に形成された複数のサブフライトを有し、それらのサブフライトは角部に丸みを有する多角形状からなり、角部がスクリュー軸に対して設定された角度に変位した位置となるようにそれぞれが配置されている。そして、角部とシリンダ内面との間隔が最も狭く、角部間の中央部とシリンダ内面との間隔が最も大きくなるように形成されている。さらに、計量部はスクリュー軸の円周方向に歯車状の凸凹を有する配合整列部を複数設けた構成からなる。
【0020】
このような構成において、上記成形用スクリューは圧縮部のフライトの個数、サブフライトの個数と多角形状、計量部の配合整列部の個数、および、配合整列部の歯車状の凸凹の形状、個数とスクリュー軸方向の長さのうち、少なくともいずれか一つが異なるものであってもよい。
【0021】
具体的には、サブフライトは4個からなり、それぞれのサブフライトは正三角形状であり、角部間はスクリュー軸中心方向に凹状の曲面形状を有し、角部はスクリュー軸方向に見た角度が30°ずつ変位して配置されているものであってもよい。
【0022】
あるいは、サブフライトは4個からなり、それぞれのサブフライトは正四角形状であり、角部がスクリュー軸方向に見た角度が22.5°ずつ変位して配置されていてもよい。
【0023】
さらに、サブフライトは3個からなり、それぞれのサブフライトは正三角形状であり、角部間はスクリュー軸中心方向に凹状の曲面形状を有し、角部がスクリュー軸方向に見た角度が45°ずつ変位して配置されているものであってもよい。
【0024】
また、これらの構成において、計量部は複数の配合整列部が同一形状からなり、かつその凸凹の位置がそれぞれ一致するように配置されているものであってもよい。
【0025】
あるいは、計量部はスクリュー軸方向の長さが異なる複数の配合整列部からなり、その隣接部同士の配合整列部が異なる長さのものであって、かつその凸凹の位置がそれぞれ一致するように配置されてなるものであってもよい。
【0026】
さらに、計量部は歯車状の凸凹の個数の異なる複数の配合整列部からなり、その隣接部同士の配合整列部は歯車状の凸凹の個数の異なるもの同士が配置されているものであってもよい。
【0027】
さらに、計量部は歯車状の凸凹の形状の異なる複数の配合整列部からなり、その隣接部同士の配合整列部は歯車状の凸凹の形状の異なるもの同士が配置されているものであってもよい。
【0028】
上記のように、本発明の成形用スクリューは、角部に丸みを有するが全体としては多角形状の複数のサブフライトを一定角度変位させて配列した圧縮部と、歯車状の凸凹を有する配合整列部を設けた混練部とを有することが特徴である。
【0029】
シリンダの内面とサブフライトとの間の間隔が狭い領域(すなわち、サブフライトの角部とシリンダ内面との間隔)では、圧縮力が強く作用するとともに成形用材料は速く動く。一方、間隔の広い領域(すなわち、角部間の中央部とシリンダ内面との間隔)では、圧縮力は小さくなるとともにゆっくりと動く。この速い動きとゆっくりとした動きとの繰り返しにより均一な混練がなされ、フリーブレンド方式であっても高品質でばらつきの少ない樹脂成形体を得ることができる。
【0030】
また、計量部は歯車状の凸凹を設けた配合整列部を複数並べて配置した構造であるが、凹部では成形用材料が動きやすく、かつ繊維状の混合材料でも切断されにくいので、投入時の長さを保持する割合が多い状態で成形体を得ることができる。この結果、強度の高い成形体を実現できる。
【0031】
さらに、成形用スクリューは、圧縮部のフライトの個数、サブフライトの個数と多角形状、計量部の配合整列部の個数、および、配合整列部の歯車状の凸凹の形状、個数とスクリュー軸方向の長さのうち、少なくともいずれか一つが異なる形状のものであってもよいので、成形用材料に応じて最適な構成の成形用スクリューを用いることができる。この結果、求められる成形体の機能に応じて、混合材料や樹脂の種類を適宜選択しても、ばらつきの少ない成形体を得ることができる。
【0032】
すなわち、本発明の成形用スクリューを用いることで、混合材料と樹脂粉末とを使って樹脂成形体を製造する場合に、これらが混合・混錬されやすく、かつ樹脂粉末であるために従来のペレットを使う場合よりも低温・短時間で溶融させることができる。したがって、木粉や紙粉など、炭化しやすい材料を用いても品質ばらつきの少ない樹脂成形体を得ることができる。さらに、短時間で溶融・混錬して樹脂成形体を製造できるので生産性を大きく向上することもできる。
【0033】
例えば、コーヒ滓やヒバの粉末を混合材料とする場合、それに合わせた樹脂粉末を用い、最適個数と最適な形状の圧縮部と計量部とを有する成形用スクリューを用いれば、炭化させることなく高品質でばらつきが少ない樹脂成形体を得ることができる。
【0034】
なお、本発明において、成形用材料は混合材料、樹脂粉末及び添加剤を含むものをいう。混合材料とは、樹脂粉末のみでは得られない機能を実現するための粉末化した材料をいい、熱硬化性樹脂、金属材料、陶器材料、石材、ガラスカレットあるいは木材などを含む再生材や端材、さらにカーボン繊維、ガラス繊維、金属繊維あるいはセルロース、ナノセルロースなどを含む繊維材料、およびコーヒ滓、紙あるいは香り成分を有するまたは含有させた素材などの有機または無機材料を包含する概念である。金属材料としては、例えば鉄、銅、アルミニウム、タングステン、ジルコニウムなどの単一金属材料だけでなく、ステンレスや真鍮などの合金材料なども含む。
【0035】
樹脂粉末としては、オレフィン系樹脂であるポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、スチレン系樹脂であるポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)、液晶ポリマー(LCP)など、一般に樹脂成形体を製造するときに用いられる樹脂材料で、かつ粉末化できるものであれば特に問題なく用いることができる。
本発明においてフリーブレンド方式とは、あらかじめペレット化することなく粉末状態あるいは繊維状態のまま成形機に投入して成形加工する方式をいう。
【0036】
次に、本発明のフリーブレンド方式用射出成形機は、内部を加熱するためのヒータが配置されたシリンダと、そのシリンダ内に回転可能に設けられた成形用スクリューと、シリンダ中に、混合材料、樹脂粉末及び添加剤を含む成形用材料を投入するための成形機用ホッパーと、成形用スクリューを回転駆動するための駆動部と、成形用スクリューを金型に向けて押し出すための背圧を印加する背圧印加部と、成形用スクリューの先端部側に、流動性を高めた成形用材料が注入されるキャビティを有する金型とを備え、成形用スクリューは、上記構成の成形用スクリューであることを特徴とする。
【0037】
この場合において、混合材料、樹脂粉末および添加剤をそれぞれ計量する計量ホッパーと、混合材料、樹脂粉末及び添加剤を混合して混練するミキシングドラムとを含む混練部をさらに備えてもよい。
【0038】
また、成形用スクリューは、圧縮部のフライトの個数、サブフライトの個数と多角形状、計量部の配合整列部の個数、および、配合整列部の歯車状の凸凹の形状、個数とスクリュー軸方向の長さのうち、少なくともいずれか一つが異なる複数の形状を有し、成形用材料に応じて複数のスクリュー形状から選択して用いるようにしてもよい。
このような装置構成とすることにより、成形用材料として種々の混合材料と樹脂粉末を用いても高品質でばらつきの少ない樹脂成型品を得ることができる。
【0039】
さらに、本発明のフリーブレンド方式の樹脂成形体製造方法は、混合材料、樹脂粉末及び添加剤を含む成形用材料を成形機用ホッパーに投入する工程と、投入された成形用材料を、シリンダ内部で回転する成形用スクリューの供給部で出口側に向けて移送し、スクリューの圧縮部で成形用材料の混練、配合の均一化および整列化を行い、スクリューの計量部では配合状態を維持した状態でさらに混練を行う工程と、スクリューに対してあらかじめ設定した背圧を印加しながら、金型に前記シリンダの出口側に溜められた溶融状態の成形用材料を注入する工程と、金型中に注入された成形用材料の冷却後、金型から樹脂成形品を取り出す工程とを含む。
【0040】
そして、上記成形用スクリューは、成形用材料を移送する供給部と、供給部から連続的に設けられた圧縮部と計量部とを備え、供給部と圧縮部は一条の螺旋状のフライトにより構成されており、圧縮部のフライトはスクリュー軸方向に螺旋状に形成された複数のサブフライトを有し、かつサブフライトは角部に丸みを有する多角形状からなり、角部がスクリュー軸に対して設定された角度に変位した位置となるようにサブフライトが配置されており、角部とシリンダ内面との間隔が最も狭く、角部間の中央部とシリンダ内面との間隔が最も大きくなるように形成され、計量部はスクリュー軸の円周方向に歯車状の凸凹を有する配合整列部を複数設けた形状のものを用いることを特徴とする。
【0041】
この場合において、成形機用ホッパーに成形用材料を投入する前に、成形用材料である混合材料、樹脂粉末及び添加剤をそれぞれ計量する工程と、混合材料、樹脂粉末及び添加剤をミキシングドラムにより混練する混練工程とをさらに備えていてもよい。
このように、成形機用ホッパーに投入する前に成形用材料を十分混練すれば、成形用スクリューによる圧縮、整列および混練をさらに向上できる。
【0042】
また、成形用材料に応じて、成形用スクリューは圧縮部のフライトの個数、サブフライトの個数と多角形状、計量部の配合整列部の個数、および、配合整列部の歯車状の凸凹の形状、個数とスクリュー軸方向の長さのうち、少なくともいずれか一つが異なるスクリュー形状のものを用いるようにしてもよい。
【0043】
例えば、混合材料として強化用繊維を用いる場合、成形用スクリューのサブフライトは4個からなり、それぞれのサブフライトは三角形状で、かつ、角部間はスクリュー軸中心方向に凹状の曲面形状を有し、角部はスクリュー軸方向に見た角度が30°ずつ変位して配置されたものであり、計量部は複数の配合整列部が同一形状からなり、かつその凸凹がそれぞれ一致するように配置されたものを用いてもよい。
【0044】
このような形状の成形用スクリューを用いて製造すれば、例えばガラス繊維やカーボン繊維などの繊維を配合して混練する場合にも、繊維が破断されにくくなり、投入時の繊維長が残る割合を大きくできる。この結果、樹脂成形体の機械的強度を大きくできる。
【0045】
また、例えば、混合材料として金属、陶器や石材などの固形粉を用いる場合、成形用スクリューのサブフライトは4個からなり、それぞれのサブフライトは正四角形状で、角部がスクリュー軸方向に見た角度が22.5°ずつ変位して配置されたものであり、計量部はスクリュー軸方向の長さが異なる複数の配合整列部からなり、その隣接部同士の配合整列部が異なる長さのものであって、かつその凸凹がそれぞれ一致するように配置されたものを用いてもよい。
【0046】
このような形状の成形用スクリューを用いて製造すれば、例えば鉄粉や陶器などの固形粉と樹脂粉末とは比重が大きく異なるが、このような比重が大きく異なる材料同士でも均一な整列と混練ができる。したがって、樹脂成形体の品質のばらつきを低減できるとともに、鉄粉等の固形粉の配合割合を大きくできるので、従来に比べて金属製品や陶器製品に近い手触り感、質感や重量感を得ることができる。
【0047】
また、例えば混合材料として植物由来の有機材料からなる粉末を用いる場合、成形用スクリューのサブフライトは4個からなり、それぞれのサブフライトは正四角形状で、角部がスクリュー軸方向に見た角度が22.5°ずつ変位して配置されたものであり、計量部は複数の配合整列部が同一形状からなり、かつその凸凹がそれぞれ一致するように配置されたものを用いてもよい。
【0048】
このような形状の成形用スクリューを用いて製造すれば、コーヒ滓の粉末を混合材料とし、樹脂粉末とを用いて成形する場合でも、圧縮部と混練部とにおいて過熱させることなく比較的低温状態・短時間で溶融し混練させることができる。この結果、コーヒ滓が炭化することがなくなるので、品質のばらつきが少ない樹脂成形体を得ることができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の成形用スクリュー、それを用いた射出成形機およびフリーブレンド方式の樹脂成形体の製造方法は、種々の混合材料を含む成形用材料を直接成形機内に投入しても均一な配合と整列および混練性を高めることができるので、製品のばらつきが少なく、かつ、高品質で機械的強度の大きな成形体を得ることができるという大きな効果を奏する。
また、混合材料としては、廃プラスチック、金属廃棄物、繊維材、木材などの天然素材など、種々の素材を活用できるので環境にも優しいという効果も奏する。
さらに、溶融と混練を短時間で行うことができるので、生産性を大きく向上できるという効果も奏する。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の実施の形態に係る成形機用スクリュー、フリーブレンド方式用射出成形機について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施の形態に係るフリーブレンド方式用射出成形機230の構成を示す図であり、(a)は射出成型機の概略側面図、(b)はホッパー160から成形用材料220を投入して成形用スクリュー100で圧縮、混練しながら金型に移送するシリンダ部150の断面概略図である。
【0053】
図2は、本実施の形態で用いた混練部210の構成を示す図である。混練部210は、樹脂粉末を投入する樹脂ホッパー211、混合材料を投入する混合材料ホッパー22、これらを計量する計量ホッパー214、添加剤を投入する添加剤ホッパー213、およびミキシングドラム215により構成されている。樹脂粉末と混合材料とを、それぞれ、樹脂粉末ホッパー211と混合材料ホッパー212に投入し、計量ホッパー214で軽量する。その後、これらの材料をミキシングドラム215に入れる。この時、添加剤ホッパー213から必要な量の添加剤も投入する。そして、ミキシングドラム215によりこれらを混練する。これにより、成形用材料220は成形機用ホッパー160に投入されるときには均一に混合され、混合材料が添加剤により樹脂と接着した状態とすることができる。このため、混合材料が鉄や陶器等の固形粉あるいは強化用繊維などであっても、成形用スクリュー内で、より均一な配合と整列および混練をすることができる。
【0054】
成形用スクリューは、圧縮部Nのフライトの個数、サブフライトの個数と多角形状、計量部Sの配合整列部の個数、および、配合整列部の歯車状の凸凹の形状、と個数とスクリュー軸方向の長さのうち、少なくともいずれか一つが異なる複数の形状を有し、成形用材料に応じて複数のスクリュー形状から選択して用いるようにしてもよい。
【0055】
図3は、成形用スクリューの圧縮部Nのサブフライトの種々の形状と個数とについて例示した図であり、(a)は成形用スクリュー全体の概略斜視図、(b)から(d)までは種々の形状と個数のサブフライトの断面図である。
【0056】
図3(a)は、成形用スクリューの概略斜視図であり、軸部L、供給部M、圧縮部Nおよび計量部Sにより構成されている。供給部Mから圧縮部Nまでは一条のフライトにより構成されており、圧縮部Nはさらに形状や個数の異なるサブフライトを有している。
【0057】
図3(b)は、圧縮部Nのフライトに設けられたサブフライトの多角形状が三角形状であり、1つのフライトに4個のサブフライトが設けられている場合において、それらを変位して配置した場合の角度を示す断面図である。
【0058】
図3(c)は、サブフライトの多角形状が四角形状であり、1つのフライトに4個のサブフライトが設けられている場合において、それらを変位して配置した場合の角度を示す断面図である。
【0059】
図3(d)は、サブフライトの多角形状が三角形状であり、1つのフライトに3個のサブフライトが設けられている場合において、それらを変位して配置した場合の角度を示す断面図である。
図4は、成形用スクリューの計量部Sの配合整列部について種々の形状と個数とを例示した図である。
図4(a)は、同一形状の配合整列部が凸凹の位置を同じになるように7個設けられている構成を示す側面図とA−A断面図である。
【0060】
図4(b)は、スクリュー軸方向に長さの異なる配合整列部が交互に配列されており、凸凹の位置は同じになるようにして合計5個設けられている構成を示す側面図とB−B断面図である。
図4(c)は、凸凹の数の異なる配合整列部が交互に7個配列されている構成を示す側面図、C−C断面図およびD−D断面図である。
【0061】
図4(d)は、凸凹の個数は同じだが、凸凹の高さの異なる配合整列部が交互に配列されており、凸凹の位置は同じになるようにして7個設けられている構成を示す側面図、E−E断面図およびF−F断面図である。
【0062】
図3および
図4に示すように、成形用材料に合わせて適切なサブフライト形状や配合整列部を選択することにより、成形用材料として種々の混合材料と樹脂粉末を用いても高品質でばらつきの少ない樹脂成型品を得ることができる。なお、
図3および
図4に示すサブフライトと配合整列部の詳細な構造については実施例で説明する。
【0063】
なお、
図3および
図4に示すサブフライトと配合整列部は例示である。サブフライトの多角形状は三角形状と四角形状に限定されるものではなく、八角形状までを含む概念である。二角形状、すなわち全体として楕円形状あるいは瓢箪形状に見える形状ではスクリューの角部間の中央部とシリンダ内面との間隔と領域が広くなりすぎる。このため、配合と整列が十分に行えなくなる。一方、八角形状よりも大きな多角形状にすると、スクリューの角部間の中央部とシリンダ内面との間隔と領域が狭くなる。このような状態になると、圧縮比が大きくなり、剪断力により過熱されすぎ、練りも強くなるので、配合に用いる混合材料や樹脂が破壊される場合が生じる。このため、通常用いるスクリュー径では三角形状から八角形状までが適正な範囲である。
【0064】
このような種々の構成からなる成形用スクリューと成形機を用いれば、種々の混合材料と樹脂粉末とを用いて機能性を有する樹脂成形体を製造することができる。
【0065】
例えば、混合材料として強化用繊維を用いる場合、成形用スクリューのサブフライトは4個からなり、それぞれのサブフライトは三角形状で、かつ、角部間はスクリュー軸中心方向に凹状の曲面形状を有し、角部はスクリュー軸方向に見た角度が30°ずつ変位して配置されたものであり、計量部は複数の配合整列部が同一形状からなり、かつその凸凹がそれぞれ一致するように配置されたものを用いてもよい。
【0066】
このような形状の成形用スクリューを用いて製造すれば、ガラス繊維やカーボン繊維などの繊維を配合して混練する場合にも、繊維が破断されにくくなり、投入時の繊維長が残る割合を大きくできる。この結果、樹脂成形体の機械的強度を大きくできる。
【0067】
また例えば、混合材料として金属、陶器や石材などの固形粉を用いる場合、成形用スクリューのサブフライトは4個からなり、それぞれのサブフライトは正四角形状で、角部がスクリュー軸方向に見た角度が22.5°ずつ変位して配置されたものであり、計量部はスクリュー軸方向の長さが異なる複数の配合整列部からなり、その隣接部同士の配合整列部が異なる長さのものであって、かつその凸凹がそれぞれ一致するように配置されたものを用いてもよい。
【0068】
このような形状の成形用スクリューを用いて製造すれば、鉄粉や陶器などの固形粉と樹脂粉末とは比重が大きく異なるが、このような比重が大きく異なる材料同士でも均一な整列と混練ができる。したがって、樹脂成形体の品質のばらつきを低減できるとともに、鉄粉等の固形粉の配合割合を大きくできる。この結果、従来に比べて金属製品や陶器製品に近い手触り感、質感やと重量感を得ることができる。
【0069】
また、例えば混合材料として植物由来の有機材料からなる粉末を用いる場合、成形用スクリューのサブフライトは4個からなり、それぞれのサブフライトは正四角形状で、角部がスクリュー軸方向に見た角度が22.5°ずつ変位して配置されたものであり、計量部は複数の配合整列部が同一形状からなり、かつその凸凹がそれぞれ一致するように配置されたものを用いてもよい。
【0070】
このような形状の成形用スクリューを用いて製造すれば、コーヒ滓の粉末を混合材料として用いる場合でも、圧縮部と混練部とにおいて樹脂粉末が低温・短時間で溶融し、混合材料との混合・混錬がすすむので、コーヒ滓が炭化することがない。この結果、品質のばらつきが少なく強度の大きな樹脂成形体を得ることができる。
(実施例1)
【0071】
図5は、実施例1に係る成形用スクリュー100の構成を示す図であり、(a)は概略側面図、(b)はスクリュー軸を中心として切断した断面図である。
図6は、成形用スクリュー100の構成を示す部分図であり、(a)は供給部Mの構成を示す断面図、(b)は、計量部Sの構成を示す断面図である。
【0072】
図7は、本実施例で用いた成形用スクリュー100の詳細な構成を示す図であり、(a)は成形用スクリュー全体の概略斜視図、(b)はA部分の拡大斜視図である。
【0073】
図8は、本実施例の圧縮部Nのサブフライトの形状と配置を示す図であり、(a)は4個のサブフライトが設けられている場合の変位角度を示す断面図で、(b)はスクリュー軸方向から見たサブフライトの配置を示すための断面図である。
【0074】
図9は成形用材料が溶融して流れる状態を示す図であり、(a)は圧縮部Nを円周方向に展開して成形用材料が溶融しながら計量部S方向に流れていくことを示す模式図、(b)は、成形用材料の流れ状態を求めたデータである。この測定においては、シリンダ110の一部を透明材料とし、成形用材料の代わりに色付きの液体を用いて流れ状態を求めた。
図10は、本実施例で用いた成形用スクリュー100の計量部Sの配合整列部40の配置状態を示す側面図とA−A断面図である。
以下、これらの図面を参照しながら本実施例に係るフリーブレンド方式用射出成型機と成形用スクリューおよびその製造方法について詳細に説明する。
【0075】
本発明のフリーブレンド方式用射出成形機230は、
図1に示すように以下の構成からなる。内部を加熱するためのヒータ120が配置されたシリンダ110と、シリンダ110内に回転可能に設けられた成形用スクリュー100と、シリンダ110に成形用材料220を投入するための成形機用ホッパー160とを有する。さらに、成形用スクリュー100を回転駆動するための駆動部と成形用スクリューを金型(図示せず)に向けて押し出すための背圧を印加する背圧印加部とを含んでなる射出部170を有する。また、成形用スクリュー100の先端部側に、流動性を高めた成形材料が注入されるキャビティを有する金型(図示せず)とを備えている。
【0076】
なお、
図1においてシリンダ部150は、シリンダ110、ヒータ120、逆流防止弁130および成形用スクリュー100を含むものをいう。また、フリーブレンド方式用射出成形機230は、金型を開けたり閉めたりするための型締め装置190と金型(図示せず)部分を安全保護するための安全窓180も備えており、これらが一体としてベッド200上に設置されている。
【0077】
さらに、本実施例では
図2に示すように、混合材料、樹脂粉末および添加剤をそれぞれ計量する計量ホッパーと、混合材料、樹脂粉末及び添加剤を混合して混練するミキシングドラムとを含む混練部210をさらに備えている。混練部210は、樹脂粉末を投入する樹脂ホッパー211、混合材料を投入する混合材料ホッパー212、これらを計量する計量ホッパー214、添加剤を投入する添加剤ホッパー213、およびミキシングドラム215により構成されている。
【0078】
樹脂粉末と混合材料とを、それぞれ樹脂ホッパー211と混合材料ホッパー212に投入し、計量ホッパー214で軽量する。その後、これらの材料をミキシングドラム215に入れる。この時、添加剤ホッパー213から必要な量の添加剤も投入する。そして、ミキシングドラム215によりこれらを混練する。これにより、成形用材料220は成形機用ホッパー160に投入されるときには均一に混合され、混合材料と樹脂とが添加剤により接着した状態とすることができる。このため、混合材料が鉄や陶器等の固形粉あるいは強化用繊維などであっても、成形用スクリュー内で、より均一な配合と整列および混練をすることができる。
【0079】
次に、本実施例における成形用スクリュー100について
図5から
図10を用いてさらに詳細に説明する。成形用スクリュー100は、フリーブレンド方式用射出成形機230に用いるものであって、成形用材料220を移送する供給部Mと、この供給部Mから連続的に設けられた圧縮部Nと計量部Sとを備え、供給部Mと圧縮部Nは一条の螺旋状のフライト20、30により構成されている。なお、成形用スクリュー100は、射出部170において背圧印加部および駆動部と成形用スクリュー100を接続するための軸10を有する軸部Lも有している。
【0080】
そして、圧縮部Nのフライト30は、本実施例では4個のサブフライト31、32、33、34を有し、それぞれのサブフライト31、32、33、34は角部31a、32a、33a、34aに丸みを有する三角形状で、かつ、角部31a、32a、33a、34a間はスクリュー軸中心方向に凹状の曲面形状31c、32c、33c、34cを有し、角部31a、32a、33a、34aはスクリュー軸方向に見た角度が30°ずつ変位して配置されている構成からなる(
図7〜
図8参照)。
【0081】
また、計量部Sはスクリュー軸の円周方向に歯車状の凸凹を有する配合整列部を複数設けた構成からなる。具体的には、
図10に示すように、計量部Sは7個の配合整列部40がすべて同一形状からなり、かつその凹部42と凸部41とがそれぞれスクリュー軸方向に一致するように配置された構成からなる。
このような構造からなる成形用スクリュー100の機能について以下説明する。
【0082】
最初に圧縮部Nについて説明する。圧縮部Nのフライト30は、サブフライト31、32、33、34を有しており、サブフライト31、32、33、34は角部31a、32a、33a、34aと曲面形状31c、32c、33c、34cを有しており、全体形状は三角形状(おむすび形状)からなる。そして、それぞれのサブフライト31、32、33、34は、角部31a、32a、33a、34aが30°ずつずれるように配置されている。これにより、角部31a、32a、33a、34aでは、シリンダ110の内面との距離が最も狭い領域であるため、成形用材料220の流れは速くなる。一方、曲面形状31c、32c、33c、34cでは、それらの一番底にあたる部分である底部31b、32b、33b、34bとシリンダ110の内面との距離が最も大きくなる領域であるが、この領域にくると成形用材料の流れは遅くなり、練りが強くなる。(
図8〜
図9参照)。
【0083】
成形用スクリュー100が回転しているときに成形用材料220がサブフライト31,32、33、34を流れる状態を説明する。角部31a、32a、33a、34aの狭い領域を流れた成形用材料220は、次には曲面形状31c、32c、33c、34cの領域に流れて、練られる。曲面形状31c、32c、33c、34cの広い領域を流れた成形用材料220は、次には角部31a、32a、33am34aの領域に流れ、ここで流れが速くなり、次の曲面形状31c、32c、33c、34cの領域に流れて、その流れが遅くなり、練られる。このように、成形用材料220は速い流れと停滞する程度の流れの繰り返しを受ける。また、速く流れた成形用材料220と遅く流れた成形用材料220が曲面形状31c、32c、33c、34cの領域で混錬される場合も生じる。これにより混合と整列が進行する。
【0084】
上記説明は、本発明の圧縮部Mのサブフライト31、32、33、34の機能を説明するためのものであって、例えば曲面形状31c、32c、33c、34cの領域を流れた成形用材料220はすべてが角部31a、32a、33a、34aの領域に流れるわけではなく、曲面形状31c、32c、33c、34cの領域から次の曲面形状31c、32c、33c、34cの領域にも流れる場合も生じる。
【0085】
図9(b)は、シリンダ110の一部を透明とし、成形用材料の代わりに着色した液体を流してその流れ状態を測定した実測写真である。液体の流れ状態を観測すると、上記説明に近い流れ状態であることが見いだされた。これらにより、本発明のサブフライト構成をとることにより本発明の成形用スクリュー100の圧縮部Nでは良好な配合と整列とが行われていることが確認された。
【0086】
さらに、角部31a、32a、33a、34aは小さな円弧としているため、シリンダ110の内面と角部31a、32a、33a、34aとの隙間領域も小さい。したがって、成形用材料220の圧縮と圧力とは、この小さい領域で強く作用し、その後は曲面形状31c、32c、33c、34cの領域に向けて成形用材料220が流れる。これにより、混合するベースとなる樹脂粉末の配合量を少なくして、金属や固体状の粉末である混合材料の配合量を多くしても、高品質でばらつきの少ない樹脂成形体を得ることができる。
【0087】
また、一般にベースとなる樹脂は熱可塑性樹脂を用いるので、温度が上昇すれば流動性が増し、温度が低下すれば流動性は低下する。本発明の成形用スクリュー100では、角部31a、32a、33a、34aの領域に成形用材料220がきたときに、ヒータ120からの熱を受けやすくして溶融促進を図った。さらに、溶融と配合の繰り返しが、この圧縮部Nで行われるようにしたことで、成形用材料220の混合材料の分量を大きくすることができるようになった。
【0088】
次に、計量部Sについて説明する。本実施例では、
図5および
図10に示すように、計量部Sはスクリュー軸の円周方向に歯車状の凸凹を有する配合整列部40を7個設けた構成からなる。具体的には、
図10に示すように、計量部Sは7個の配合整列部40がすべて同一形状からなり、かつその凹部42と凸部41とがそれぞれスクリュー軸方向で一致するように配置された構成からなる。
【0089】
計量部Sとそれにつながるノズル部とでさらに均一に整列させるために、本実施例では計量部Sは7個の配合整列部40が設けられている。それらの配合整列部40は、円周方向に複数の矢尻形状の凸部41を設け、全体として歯車形状に似た構造からなる。これにより、成形用材料220が通過する領域を矯正して一気に通過できない構造とした。この結果、より均一な配合整列が可能となった。
【0090】
なお、本発明の成形用スクリュー100の圧縮部Nと計量部Sの役割について説明する。圧縮部Nは成形用材料を十分に配合・整列させ、添加剤との反応を確実にさせることが主な機能である。そして、計量部Sについては、添加剤を含めて混合材料と樹脂粉末とを十分に接着させたものを全体的に均一になるようにして組成のばらつきをなくすことが主な機能である。
【0091】
本実施例に係る成形用スクリュー100の圧縮部Nと計量部Sとを上記構造としたので、シリンダ110とサブフライト31、32、33、34との間の間隔が狭い領域(サブフライト31、32、33、34の角部31a、32a、33a、34a)では、成形用材料220に対して圧縮力が強く作用するとともに成形用材料160の動きは速くなる。一方、間隔の広い領域(サブフライト31、32、33、34の曲面形状31c、32c、33c、34cの一番底にあたる部分である底部31b、32b、33b、34b)では、成形用材料220に加わる圧縮力は小さくなるとともにゆっくりと動く。この速い動きとゆっくりした動きとの繰り返しにより混練がより進むようになる。例えて言えば、トランプのカードをシャッフルして混ぜるようなものと同じである。
以下、本実施例に係る成形用スクリューを用いた射出成形機により樹脂成形体を製造した結果について説明する。
【0092】
樹脂粉末としてポリプロピレン(PP)、混合材料として繊維長3mmのガラスファイバー(GF)を成形用材料として用いた。なお、添加剤等も混合している。このような成形用材料を用いて、本発明の射出成形機により成形体を製造した後、成形体中に残存している繊維長分布を計測した。また、市販品の長繊維ペレットを用いて従来の射出成形機で成形体を製造し、同様に成形体中に残存している繊維長分布も計測した。その比較結果を
図11に示す。
【0093】
図11において、(a)は長繊維ペレットを従来の射出成形機で成形した場合の結果であり、(b)は本発明の成形用スクリューを用いて成形した場合の結果である。図からわかるように、本発明のフリーブレンド方式の射出成形機では、繊維長の長いものが残存する割合が大きいことがわかる。これは、成形用スクリューの圧縮部と計量部において繊維が破断される割合が小さく、かつ、配合と整列とは十分になされることによる。
また、成形条件を決めて連続的に成形すると、ショットごとの重量バラつき(3σ/重量)は1%以下を達成することができた。
【0094】
さらに、樹脂粉末としてナイロン(6PA)を34.1%、混合材料としてガラスファイバー(GF)を60%とした成形用材料を用いて本発明の樹脂成形機で成形して得られた成形品は、引張強度が233MPa、引張弾性率が5280MPaであった。これにより、フリーブレンド方式は十分に大きな強度の樹脂成形体を得られることを確認できた。
(実施例2)
【0095】
本実施例では、
図12に示すサブフライトと配合整列部を用いた。
図12(a)は圧縮部のサブフライトの形状を示す図、(b)は計量部の配合整列部の形状と配置構成を示す図である。
【0096】
図12(a)に示すように、本実施例の圧縮部Nのサブフライト51、52、53、54は4個からなり、それぞれのサブフライト51、52、53、54は正四角形状で、角部はスクリュー軸方向に見た角度が22.5°ずつ変位して配置されている構造からなる。なお、
図12(b)に示す配合整列部40については、実施例1に係る計量部Sと同じであるので説明を省略する。
【0097】
本実施例に係る成形用スクリューは、シリンダ110とサブフライト51、52、53、54との間の間隔が狭い領域(すなわち、角部51a、52a、53a、54aとシリンダ110の内面との間隔)では、成形用材料に対して圧縮力が強く作用するとともに成形用材料の動きは速くなる。一方、間隔の広い領域(サブフライト51、52、53、54の底部51b、52b、53b、54bとシリンダ110の内面との間隔)では、成形用材料に加わる圧縮力は相対的に小さくなるとともにゆっくりと動く。
【0098】
このような成形用スクリューを用いた射出成形機は、成形用材料である混合材料が固体からなる固形粉を用いる場合に適している。例えば、銅粉末や鉄粉末を用いる場合、これらの粉末と樹脂とでは比重の差が大きいので三角形状のサブフライトを用いると、樹脂のほうが先に流れ、銅粉末や鉄粉末が遅れて流れるようになってしまい組成のばらつきが増大する。そのために、本実施例に係る成形用スクリューではサブフライトを四角形状として角部を増やしている。この構造とすることにより、樹脂の流れを抑制できて銅粉末や鉄粉末の流れに合わせて樹脂が流れるようにすることができる。この結果、鉄粉末や銅粉末などと樹脂との比重のばらつきが大きい場合でも、成形体の品質ばらつきを抑制できる。
【0099】
この成形用スクリューと成形機を用いて、樹脂粉末としてナイロン(6PA)、混合材料として銅スラグ粉末を用いて成形品を作製した。ナイロン(6PA)を46.1%、銅スラグ粉末を50%、残部は添加剤である。これを成形用材料として、本実施例に係る成形用スクリューを射出成形機にセットして射出成形を行った。得られた成形品は、比重が2.79、引張強度が113MPa、シャルピー衝撃強度が18.5kJ/m2となり、大きな強度の銅スラグ混合樹脂成形品を得ることができた。
(実施例3)
【0100】
本発明の実施例3に係る成形機用スクリュー、フリーブレンド方式用成型機とその製造方法について図面を参照しながら説明する。本実施例に係る射出成形機は、実施例1で説明した射出成形機230と同じであるので説明を省略する。また、成形用スクリューの全体形状は
図4に示すものと同じである。そこで以下では、実施例1に係る成形用スクリュー100と異なる点について説明する。
図13は、本実施例に係る圧縮部Nのサブフライトと計量部Sの配合整列部の形状を示す図であり、(a)はサブフライトの形状と配置構成を示す断面図、(b)は計量部の構成を示す側面図、(c)は配合整列部のE−E断面図とF−F断面図である。
【0101】
図13(a)は、本実施例に係る圧縮部Nのサブフライト51、52、53、54の形状と配置を示す図であるが、このサブフライトの形状と配置は実施例2のサブフライトの形状と配置と同じであるので説明を省略する。
【0102】
計量部Sは、歯車状の凸凹の形状の異なる複数の配合整列部90、95からなり、その隣接部同士の配合整列部90、95は歯車状の凸凹の形状の異なるもの同士が交互に配置されている。具体的には、配合整列部90と配合整列部95とは、凸部91、96の個数および凹部92、97の個数はどちらも同じであるが、配合整列部95の凸部96は配合整列部90の凸部91よりも低い形状としていることが特徴である。そして、配合整列部90と配合整列部95とは、同一距離を離間して交互に配置されている。
【0103】
この成形用スクリューと成形機を用いて、樹脂粉末としてポリプロピレン(PP)、混合材料として陶器粉末を用いて成形品を作製した。ポリプロピレン(PP)を46.7%、陶器粉末を50.0%、残部は添加剤である。これを成形用材料として、本実施例に係る成形用スクリューを射出成形機にセットして射出成形を行った。得られた成形品は、比重が1.27、引張強度が23.5MPa、シャルピー衝撃強度が15.0kJ/m2となり、大きな強度の陶器粉末混合樹脂成形品を得ることができた。
(実施例4)
【0104】
本発明の実施例4に係る成形機用スクリュー、フリーブレンド方式用成型機とその製造方法について図面を参照しながら説明する。本実施例に係る射出成形機は、実施例1で説明した射出成形機230と同じであるので説明を省略する。また、成形用スクリューの全体形状は
図4に示すものと同じである。そこで以下では、実施例1に係る成形用スクリュー100と異なる点について説明する。
【0105】
図14は、本実施例に係る圧縮部Nのサブフライトと計量部Sの配合整列部の形状を示す図であり、(a)はサブフライトの形状と配置構成を示す断面図、(b)は計量部の構成を示す側面図、(c)は配合整列部のC−C断面図とD−D断面図である。
【0106】
図14(a)は、本実施例に係る圧縮部Nのサブフライト71、72、73の形状と配置を示す図である。実施例1に係る成形用スクリュー100の圧縮部Nのサブフライト31、32、33、34は角部に丸みを有する三角形状を4個配置したものであったが、本実施例に係る圧縮部Nのサブフライト71、72、73も角部に丸みを有する三角形状である点は同じである。ただし、その個数は3個であり、かつそれらが45°変位して配置されていることが特徴である。
【0107】
計量部Sは、歯車状の凸凹の個数の異なる複数の配合整列部75、80からなり、その隣接部同士の配合整列部75、80は歯車状の凸凹の個数の異なるもの同士が交互に配置されている。具体的には、配合整列部75は、20個の凸部76と20個の凹部77を有する歯車形状である。一方、配合整列部80は、10個の凸部81と10個の凹部82を有する歯車形状である。そして、配合整列部75と配合整列部80とは同一距離を離間して交互に配置されていることが特徴である。
【0108】
ガラス繊維やカーボン繊維などの繊維を混合材料とする際は、繊維の破断を少なくするために凸部の個数を少なくすることにより、繊維がスムーズに出口側に流れることができる構造とした。すなわち、配合整列部80については、凸部81の個数を半分に減らしており、これにより繊維がスムーズに流れるようになり、スクリューの回転に伴う繊維の破断を抑制できた。
【0109】
この成形用スクリューと成形機を用いて、樹脂粉末としてナイロン(6PA)、混合材 料として鉄系の金属繊維を用いて成形品を作製した。ナイロン(6PA)を34.1%、金属繊維を60.0%、残部は添加剤である。これを成形用材料として、本実施例に係る成形用スクリューを射出成形機にセットして射出成形を行った。得られた成形品は、十分な強度と導電性を有することを確認した。
(実施例5)
【0110】
本発明の実施例5に係る成形機用スクリュー、フリーブレンド方式用成型機とその製造方法について図面を参照しながら説明する。本実施例に係る射出成形機は、実施例1で説明した射出成形機230と同じであるので説明を省略する。また、成形用スクリューの全体形状は
図4に示すものと同じである。そこで以下では、実施例1に係る成形用スクリュー100と異なる点について説明する。
【0111】
図15は、本実施例に係る圧縮部Nのサブフライトと計量部Sの配合整列部の形状を示す図であり、(a)はサブフライトの形状と配置状態を示す断面図、(b)は計量部の構成を示す側面図とB−B断面図である。
圧縮部Nのサブフライトの形状については、実施例2に係る成形用スクリューの圧縮部Nのサブフライトと同じであるので説明を省略する。
【0112】
図15(b)に示すように、本実施例に係る計量部Sはスクリュー軸方向の長さが異なる複数の配合整列部60、65からなり、その隣接部同士の配合整列部が異なる長さのものが交互に配置されている。さらに、配合整列部60、65の凸部61と凹部62は同じ個数であり、かつ、凸部61、凹部62同士がそれぞれスクリュー軸方向で一致するように配置されている。
【0113】
ガラス繊維やカーボン繊維などの繊維を混合材料とする際は、繊維の破断を少なくすることが、成形体の強度を高めるために有効である。そのために本実施例では、配合整列部65の長さを長くした。このような構造とすることにより、繊維の破断を抑制し、かつスムーズに出口側に流れることができるようになった。
【0114】
この成形用スクリューと成形機を用いて、樹脂粉末としてポロプロピレン(PP)、混合材料としてガラスファイバーを用いて成形品を作製した。ポリプロピレン(PP)を54.1%、ガラスファイバーを40.0%、残部は添加剤である。これを成形用材料として、本実施例に係る成形用スクリューを射出成形機にセットして射出成形を行った。得られた成形品は、比重が1.2、引張強度が76MPa、引張弾性率が3120MPa、シャルピー衝撃強度が30.7MPaであった。従来品に比べて大きな強度のガラスファイバー混合樹脂成形品を得ることができ、一部の金属製品を代替することができた。
【0115】
なお、これらの実施例は例示であって、本発明はこれらの実施例に限定されない。例えば、ガラス繊維やカーボン繊維などの繊維系を配合する際は、繊維の破断を少なくするために凸部の個数をさらに少なくしたり、あるいは配合整列部の配置個数を少なくするようにしてもよい。
【0116】
一方、鉄粉末や陶器粉末などを混合材料とするときには、これらの比重と樹脂の比重の差が大きく異なるので、このような場合でも均一な整列を進められるようにするために、凸部の個数を増やしたり、配合整列部の配置個数を増やすようにしてもよい。
【0117】
また例えば、木粉やコーヒ滓粉末などを混合材料として用いる場合、圧縮部Nでゆっくりと送られてしまうと炭化してしまう恐れがある。しかし、あまり速く送りすぎると配合と整列とが不十分なまま計量部Sに送られてしまうため、成形体の品質ばらつきが大きくなる。例えば、従来のペレットを用いて従来の成形用スクリューを用いた射出成形方式では、ペレットの溶融に高温と時間が必要となるので、木粉やコーヒ滓粉末が炭化することを防ぐことが難しく、品質が低下する傾向があった。しかし、本発明においては、成形用材料は圧縮部Nで十分な圧縮力とその圧縮力の開放を受けながらも繊維や金属粉末を用いる場合よりも速い流れとなる成形用スクリュー形状を選択することができる。したがって、過熱による炭化を抑え、品質の安定した成形体を製造することができる。
【0118】
以上述べたように、本発明に係る成形用スクリューおよびこれを用いた射出成型機は、従来は品質のばらつきが大きいために使用することが困難であった鉄粉などの金属粉、木粉などの植物由来の粉末、陶器等の粉砕粉末など、いろいろな再生原料を混合材料として直接使用しても、ばらつきが少なく、機械的強度の大きな樹脂成形体を得ることができる。
【0119】
なお、本発明は実施例1から実施例5に限定されることはなく、成形用スクリューの圧縮部のサブフライトと計量部の配合整列部の基本的構成が同じであれば、その形状や配置個数などは、成形用材料に合わせて適宜選択することができる。
【0120】
例えば、圧縮部のサブフライトの多角形状は三角形状と四角形状だけでなく、五角形状ないし八角形状としてもよい。さらに、圧縮部のフライトの個数は成形用材料に合わせて増減してもよい。
【0121】
また、計量部の配合整列部についても歯車状の凸凹形状を有すれば、その凸部の高さや形状は変更されてもよい。さらに、異なる凸凹形状を有する配合整列部を3個以上含んでもよい。この場合、隣接する配合整列部は少なくとも異なる形状の配合整列部とすることが好ましい。