(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
口腔内の形状に適合するように成形された左右の床部と、これら左右の床部の間に設けられ、これら左右の床部を広げることによって上顎臼歯の位置を拡大する拡大手段を有し、
前記左右の床部は、前記上顎臼歯側にそれぞれ設けられた床部本体部と、これら床部本体部からそれぞれ上顎前歯の近傍に臨む位置まで延びる咬合部と、を備え、
前記咬合部は、口唇を閉じたときに下顎前歯と咬合する咬合面が形成され、
前記咬合面は、前記口腔内に装着した状態で平坦に形成されるとともに、帯状に形成され、この帯状の前後幅が所定の幅を有し、
前記咬合面は、前記上顎前歯に対する先端側が凹凸のない滑らかな円弧状に形成されていることを特徴とする歯科矯正装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前歯の噛み合わせが深すぎる過蓋咬合の場合には、上顎と下顎の臼歯が常に当接して擦り合う状態となり、咬合力が強い場合、臼歯が磨り減ってしまうか、あるいは上顎と下顎の臼歯が圧下(歯が沈み込むこと)してしまうという問題が生じる。
【0005】
そこで、これを防止するために従来では、上顎歯列部に装着するマウスピースの前歯の口蓋側に突出部分が形成されたものを使用し、この突出部分に下顎前歯が当接するようにすることで、上顎と下顎の臼歯が常に当接して擦り合う状態とさせないようにする技術が提案されている。そして、上記過蓋咬合を矯正すると同時に、上顎臼歯の歯列を矯正可能な装置が望まれている。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、過蓋咬合を矯正するとともに、上顎臼歯の歯列を短期間で矯正することが可能な歯科矯正装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、請求項1に係る発明は、口腔内の形状に適合するように成形された左右の床部と、これら左右の床部の間に設けられ、これら左右の床部を広げることによって上顎臼歯の位置を拡大する拡大手段を有し、前記左右の床部は、前記上顎臼歯側にそれぞれ設けられた床部本体部と、これら床部本体部からそれぞれ上顎前歯の近傍に臨む位置まで延びる咬合部と、を備え、前記咬合部は、口唇を閉じたときに下顎前歯と咬合する
咬合面が形成され、前記咬合面は、前記口腔内に装着した状態で平坦に形成されるとともに、帯状に形成され、この帯状の前後幅が所定の幅を有し、前記咬合面は、前記上顎前歯に対する先端側が凹凸のない滑らかな円弧状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の構成に加え、前記咬合部の咬合面には、前記下顎前歯を挿入可能な案内溝が形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項
3に記載の発明は、請求項1
又は2に記載の構成に加え、前記咬合部は、前記床部本体部よりも厚肉に形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項
4に記載の発明は、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の構成に加え、前記咬合部は、前記床部本体部よりも高強度とする補強用樹脂が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、左右の床部を広げることによって上顎臼歯の位置を拡大する拡大手段を有し、左右の床部は、上顎臼歯側にそれぞれ設けられた床部本体部と、これら床部本体部からそれぞれ上顎前歯の近傍に臨む位置まで延びる咬合部と、を備え、この咬合部は、口唇を閉じたときに下顎前歯と咬合するように構成されているため、口腔内に装着して口唇を閉じることで、下顎前歯を圧下させるとともに、上顎及び下顎の臼歯が当接するのを防止して過蓋咬合を矯正すると同時に、上顎臼歯の歯列を短期間で矯正することが可能となる。
また、請求項1に記載の発明によれば、下顎前歯が咬合部に当接することで、上顎臼歯と下顎臼歯との間に隙間が形成されることから、上顎臼歯及び下顎臼歯の圧下を予防する一方、既に圧下した上顎臼歯及び下顎臼歯の挺出を促進することも可能となる。
さらに、請求項1に記載の発明によれば、咬合部の咬合面は、口腔内に装着した状態で平坦に形成されるとともに、帯状に形成され、この帯状の前後幅が所定の幅を有していることにより、下顎前歯が叢生状態であっても、咬合面に確実に当接させて過蓋咬合を矯正するができるため、汎用性を向上させることができる。
【0015】
また、請求項
2に記載の発明によれば、咬合部の咬合面には、下顎前歯を挿入可能な案内溝が形成されていることにより、下顎前歯が当接する案内溝の傾斜形状及び傾斜方向に基づいて過蓋咬合は勿論なこと、上顎前突、下顎前突等の不正咬合も矯正することが可能となる。
【0016】
また、請求項
3に記載の発明によれば、咬合部は、床部本体部よりも厚肉に形成されていることから、より高い強度を必要とする咬合部の剛性を高めることができ、耐久性を向上させることができる。
【0017】
また、請求項
4に記載の発明によれば、咬合部は、床部本体部よりも高強度とする補強用樹脂が設けられているので、咬合部の厚さを必要以上に厚くすることなく、かつ咬合部の重量を必要以上に重くすることなく、剛性を高めて、耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の各実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態は、口腔内の上顎歯列部に各実施形態の歯科矯正装置としての拡大床を装着した例について説明する。
[発明の第1実施形態]
図1〜
図6には、本発明の第1実施形態を示す。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態に係る歯科矯正装置を上顎歯列部に装着した状態を示す下面図である。
図2は、同第1実施形態に係る歯科矯正装置を上顎歯列部に装着した状態を示す斜視図である。
図3は、同第1実施形態に係る歯科矯正装置の拡大床を示す斜視図である。
図4は、同第1実施形態に係る歯科矯正装置の拡大床を示す下面図である。
図5は、
図4のA−A線による断面図である。
図6は、同第1実施形態に係る歯科矯正装置の拡大床の作用を示す拡大断面図である。
【0021】
なお、以下の各実施形態では、歯科矯正装置を口腔内に挿入し、上顎歯列部に装着した状態で、その切歯及び犬歯側を前側、臼歯側を後側とし、切歯及び犬歯に対する左側、右側をそれぞれ左側、右側として説明する。
【0022】
以下、左右の中切歯、左右の側切歯、及び左右の犬歯は、一括して説明する場合には前歯という。また、左右の第1、第2小臼歯、及び左右の第1〜第3大臼歯は、一括して説明する場合に臼歯という。
【0023】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の歯科矯正装置10は、口腔1内の上顎歯列部2に装着して口唇を閉じることで、過蓋咬合を矯正するとともに、上顎歯列部2の臼歯を短期間で横方向に拡げて矯正するものである。本実施形態の歯科矯正装置10は、例えばマウスピース20の上から装着される拡大床30である。
【0024】
本実施形態で用いられるマウスピース20は、透明な薄片で徐々に歯列を矯正すべき方向、すなわち個々の歯を整列すべき方向に移動させる形状に成型した成型物(アライナー)であり、複数段階的に用意して、それらを定期的に交換することにより矯正治療を進めていくものである。
【0025】
マウスピース20は、上顎歯列部2の全ての歯、すなわち上顎歯列部2の前歯(上顎前歯)3及び臼歯(上顎臼歯)4を覆うように形成されたプラスチック製のマウスピースであり、透明でかつ前歯3及び臼歯4を覆って所定の形状を保持する硬度を有している。また、マウスピース20は、
図2に示すように上顎歯列部2の歯列弓(アーチ)に沿った形状に形成されて前歯3及び臼歯4の歯冠部を覆って保持する本体部21と、当該本体部21から歯肉6側に位置する歯肉部22とを有している。
【0026】
拡大床30は、
図1、
図3、
図4に示すように左右の固定ワイヤ31,31と、左右の床部32,32と、拡大ねじ33とを備える。左右の固定ワイヤ31,31は、それぞれ先端が鉤状に形成されている。拡大床30は、左右の床部32,32を広げることによって上顎歯列部2の臼歯4の位置を拡大するように構成されている。
【0027】
左右の固定ワイヤ31,31は、左右の前歯3と左右の臼歯4との歯冠部間、左右の臼歯4の歯冠部間に対応したマウスピース20の上からそれぞれ掛止される。すなわち、左右の固定ワイヤ31,31は、マウスピース20上において左右の前歯3と左右の臼歯4との歯冠部間、左右の臼歯4の歯冠部間にそれぞれ掛止される。
【0028】
左右の床部32,32は、それぞれ例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シアノアクリレート、又はポリウレタン樹脂等の樹脂によって作製され、口腔1内の口蓋形状に適合するように成形されている。左右の床部32,32には、それぞれ左右の固定ワイヤ31,31がそれぞれ設けられている。具体的には、左右の固定ワイヤ31,31は、上顎歯列部2の左右の前歯3と左右の臼歯4との歯冠部間、左右の臼歯4の歯冠部間にそれぞれ掛止される部分を除く大部分がそれぞれ左右の床部32,32に埋設されることで、固定されている。左右の床部32,32は、それぞれ上顎歯列部2の左右の臼歯4の歯冠部側の外周縁がその歯冠部の内側の形状に沿うように形成されている。
【0029】
拡大ねじ33は、本実施形態の拡大手段を構成し、金属によって作製されて左右の床部32,32間に設置されている。拡大ねじ33は、例えば専用の回転用工具を用いて回転させることで、左右の床部32,32及び左右の固定ワイヤ31,31を介して左右の臼歯4の位置を拡大するような力を付与する。拡大ねじ33の両側には、ガイド部34,34が設けられている。これらのガイド部34,34は、拡大ねじ33を回転させたとき、左右の床部32,32が同一平面を保持して開くように案内する。左右の床部32,32は、拡大ねじ33を回転させる前は互いに接触して略連続して形成されている。
【0030】
ここで、本実施形態では、左右の床部32,32に拡大ねじ33を1つ設けた例について説明したが、これに限らず左右の床部32,32に所定間隔をおいて2つ設けるようにしてもよい。また、拡大ねじ33は、例えば左右の第一小臼歯間に1つ設けるパターン、左右の第二小臼歯間に1つ設けるパターン、左右の第一大臼歯間に1つ設けるパターン、あるいは左右の第一小臼歯間と左右の第一大臼歯間にそれぞれ1つ設けるパターンがある。したがって、拡大ねじ33は、どの部位の歯を拡大するかによって位置と個数が決定される。
【0031】
左右の床部32,32は、上顎歯列部2の左右の臼歯4側にそれぞれ設けられた床部本体部35,35と、これら床部本体部35,35からそれぞれ上顎歯列部2の左右の前歯3の近傍に臨む位置まで延びる咬合部36,36と、を備える。これらの咬合部36,36は、口唇を閉じたときに
図6に示す下顎前歯5と咬合するように構成されている。
【0032】
図5に示すように、各咬合部36,36は、各床部本体部35,35よりも厚肉に形成されている。すなわち、咬合部36の厚さT1は、床部本体部35の厚さT2よりも厚く形成されている。
図5及び
図6に示すように、各咬合部36,36には、それぞれ咬合面36a,36aが形成され、これらの咬合面36a,36aは、口腔1内に装着した状態で平坦に形成されるとともに、下顎前歯5の歯列形状に沿って湾曲形状に形成され、かつ帯状に形成され、この帯状の前後幅が所定の幅W(
図4に示す)を有している。この所定の幅Wとは、下顎前歯5の歯列形状が叢生状態であったとしても下顎前歯5の全ての歯列が咬合するような幅である。咬合面36a,36aは、それぞれ扇状であって略同心円弧状に形成されている。
【0033】
各咬合部36,36は、その先端部36b,36bがマウスピース2上において上顎歯列部2の左右の前歯3の近傍に臨む位置まで延びている。すなわち、各咬合部36,36は、その先端部36b,36bがそれぞれ上顎歯列部2の左右の前歯3に当接しない近傍位置まで延びている。
【0034】
次に、本実施形態の歯科矯正装置10の作用について説明する。
【0035】
まず、本実施形態では、上顎歯列部2の前歯3及び臼歯4を本体部21で覆うようにマウスピース20を装着する。次いで、拡大床30の左右の固定ワイヤ31,31を左右の前歯3と左右の臼歯4との歯冠部間、左右の臼歯4の歯冠部間に対応したマウスピース20の上からそれぞれ掛止することで、拡大床30の床部本体部35,35のそれぞれをマウスピース20の臼歯4の左右の歯冠部に装着する。
【0036】
このとき、拡大床30の咬合部36,36は、床部本体部35,35からそれぞれ上顎歯列部2の左右の前歯3の近傍に臨む位置まで延びるように装着される。
【0037】
本実施形態の拡大床30は、主に就寝時や週末及び休日、少なくとも1日8時間以上にわたって装着する。拡大床30は、
図6に示すように口唇を閉じたときに咬合部36,36の咬合面36a,36aに下顎前歯5が当接して咬合する。
【0038】
このとき、拡大床30は、床部本体部35,35及び咬合部36,36が口蓋全体にわたって当接している。そのため、咬合部36,36の咬合面36a,36aに下顎前歯5が当接して咬合部36,36に高強度の押圧力がかかったとしても、口蓋全体で支持することができる。
【0039】
このように下顎前歯5が常に当接して咬合することで、下顎前歯5を強制的に圧下(歯が沈み込むこと)させることで、上顎歯列部2の前歯3に対して咬み合わせが浅くなる。その結果、過蓋咬合を矯正することができる。同時に、拡大床30は、拡大ねじ33,33を回転させることで、床部本体部35,35を左右にスライドさせ、上顎歯列部2の左右の臼歯4の歯列を横方向に短期間で拡げることができ、左右の臼歯4の歯列を矯正することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態の拡大床30は、下顎前歯5が咬合部36に当接することで、上顎歯列部2の臼歯4と下顎歯列部の臼歯4との間に隙間が形成されることから、上顎歯列部2の臼歯4及び下顎歯列部の臼歯4の圧下を予防する一方、既に圧下した上顎歯列部2の臼歯4及び下顎歯列部の臼歯4の挺出(歯を切縁方向(歯の先端)へ移動させること)を促進することも可能となる。
【0041】
このように本実施形態の歯科矯正装置10によれば、左右の床部32,32を広げることによって上顎歯列部2の左右の臼歯4の位置を拡大する拡大床30を有し、左右の床部32,32は、上顎歯列部2の臼歯4側にそれぞれ設けられた床部本体部35,35と、これら床部本体部35,35からそれぞれ上顎歯列部2の前歯3の近傍に臨む位置まで延びる咬合部36,36と、を備え、これらの咬合部36,36は、口唇を閉じたときに下顎前歯5と咬合するように構成されているため、口腔1内に装着して口唇を閉じることで、下顎前歯5を圧下させるとともに、上顎歯列部2の臼歯4と図示しない下顎の臼歯とが当接するのを防止して過蓋咬合を矯正すると同時に、上顎歯列部2の臼歯4の歯列を短期間で矯正することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態によれば、下顎前歯5が咬合部36に当接することで、上顎歯列部2の臼歯4と下顎歯列部の臼歯4との間に隙間が形成されるため、上顎歯列部2の臼歯4及び下顎歯列部の臼歯4の圧下を予防する一方、既に圧下した上顎歯列部2の臼歯4及び下顎歯列部の臼歯4の挺出を促進することも可能となる。
【0043】
また、本実施形態の歯科矯正装置10によれば、咬合部36,36の咬合面36a,36aは、口腔1内に装着した状態で平坦に形成されるとともに、下顎前歯5の歯列形状に沿って湾曲形状に形成され、かつ帯状に形成され、この帯状の前後幅が所定の幅を有していることにより、下顎前歯5が叢生状態であっても、咬合面36a,36aに確実に当接させて下顎前歯5を圧下させ、過蓋咬合を矯正するができるため、汎用性を向上させることができる。
【0044】
また、本実施形態の歯科矯正装置10によれば、咬合部36,36は、床部本体部35,35よりも厚肉に形成されていることから、床部本体部35,35より高い強度を必要とする咬合部36,36の剛性を高めることができ、耐久性を向上させることができる。
【0045】
なお、本実施形態の歯科矯正装置10では、咬合部36,36は、床部本体部35,35と一体に成形した例について説明したが、これに限らず咬合部36,36に床部本体部よりも高強度とする図示しない補強用樹脂を設けるようにしてもよい。この補強用樹脂の材料としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シアノアクリレート、又はポリウレタン樹脂等の樹脂のいずれか一種が選択される。これにより、咬合部36,36の厚さを必要以上に厚くすることなく、かつ咬合部36,36の重量を必要以上に重くすることなく、剛性を高めて、耐久性を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態の歯科矯正装置10では、咬合部36,36を床部本体部35,35に対して着脱自在に設けるようにしてもよい。この場合には、例えば床部本体部35,35の下面側にそれぞれ複数の突出部を一体に形成する一方、この突出部に嵌り込む複数の嵌合凹部を咬合部36,36に形成するようにして着脱自在に構成する。このように構成することで、治療の経過に伴って形状、材質の異なる咬合部36,36と交換することにより、歯科矯正装置10としての使い勝手が良好となり、汎用性を高めることができる。ここで、上記着脱機構は、突出部と嵌合凹部との組合せ以外の構造のものでもよい。
[発明の第1実施形態の第1変形例]
図7は、同第1実施形態に係る歯科矯正装置の拡大床の第1変形例を示す拡大断面図である。なお、以下の実施形態又は変形例では、前記第1実施形態と同一又は対応する部分には、同一の符号を付して異なる構成及び作用について説明する。
【0047】
図7に示すように、本変形例では、咬合部36の咬合面36aに下顎前歯5全体を挿入可能な前方案内溝37が形成されている。前方案内溝37は、咬合面36aの前後幅の所定の幅Wの略全長にわたって形成されている。この前方案内溝37は、上顎歯列部2の前歯3側に向かって徐々に深くなるように緩やかに傾斜する傾斜面37aが形成されている。
【0048】
したがって、本変形例では、口腔1内に拡大床30を装着し、口唇を閉じたときに下顎前歯5が前方案内溝37の傾斜面37aに当接して咬合する。すると、下顎前歯5は、前記第1実施形態と同様に強制的に圧下されつつ、傾斜面37aに沿って上顎歯列部2の前歯3側に案内される。これにより、オーバーバイト及びオーバージェットが所定の範囲内となり、過蓋咬合及び上顎前突を矯正することが可能となる。
【0049】
このように本変形例によれば、咬合部36の咬合面36aには、下顎前歯5を挿入可能な案内溝37が形成され、この案内溝37に上顎歯列部2の前歯3側に向かって傾斜する傾斜面37aが形成されていることにより、過蓋咬合は勿論のこと、上顎前突も矯正することが可能となる。
【0050】
なお、本変形例において、前方案内溝37の傾斜面37aの傾斜角度は、下顎前歯5を圧下させる効果と前歯3側への移動効果が最も得られるような角度、例えば5〜15度の範囲に設定される。ここで、傾斜面37aの傾斜角度が5度未満の場合には、下顎前歯5を圧下させる効果が高いものの、前歯3側への移動効果が低くなる。また、傾斜面37aの傾斜角度が15度を超える場合には、下顎前歯5を圧下させる効果が低くなるものの、前歯3側への移動効果が高くなる。
[発明の第1実施形態の第2変形例]
図8は、同第1実施形態に係る歯科矯正装置の拡大床の第2変形例を示す拡大断面図である。
【0051】
図8に示すように、本変形例では、咬合部36の咬合面36aに下顎前歯5全体を挿入可能な後方案内溝38が形成されている。後方案内溝38は、咬合面36aの前後幅の所定の幅Wの略全長にわたって形成されている。この後方案内溝38は、床部本体部35,35側に向かって徐々に深くなるように緩やかに傾斜する傾斜面38aが形成されている。
【0052】
したがって、本変形例では、口腔1内に拡大床30を装着し、口唇を閉じたときに下顎前歯5が後方案内溝38の傾斜面38aに当接して咬合する。すると、下顎前歯5は、強制的に圧下されつつ、傾斜面38aに沿って床部本体部35,35側に案内される。これにより、オーバーバイト及びオーバージェットが所定の範囲内となり、過蓋咬合及び下顎前突を矯正することが可能となる。
【0053】
このように本変形例によれば、咬合部36の咬合面36aには、下顎前歯5を挿入可能な案内溝38が形成され、この案内溝38に床部本体部35,35側に向かって傾斜する傾斜面38aが形成されていることにより、過蓋咬合は勿論のこと、下顎前突も矯正することが可能となる。
【0054】
なお、本変形例において、
後方案内溝38の傾斜面38aの傾斜角度は、前記第1変形例と同様に、下顎前歯5を圧下させる効果と床部本体部35,35側への移動効果が最も得られるような角度、例えば5〜15度の範囲に設定される。ここで、傾斜面38aの傾斜角度が5度未満の場合には、下顎前歯5を圧下させる効果が高いものの、床部本体部35,35側への移動効果が低くなる。また、傾斜面38aの傾斜角度が15度を超える場合には、下顎前歯5を圧下させる効果が低くなるものの、床部本体部35,35側への移動効果が高くなる。
【0055】
本実施形態の歯科矯正装置10Aは、
図9に示すように、マウスピース20に拡大床30を左右の固定ワイヤ31,31を用いて係止する代わりに、マウスピース20に形成した突出部23に拡大床30に形成した嵌合凹部35が嵌り込んで係止するように構成されている。
【0056】
具体的には、本実施形態の歯科矯正装置10Aは、上顎歯列部2の前歯3及び臼歯4に装着したマウスピース20において、各臼歯4の部位に相当する左右の内側、すなわち舌側にそれぞれ被係止部としての突出部23が設けられている。これらの突出部23は、例えばマウスピース20の本体部21とプラスチックによって少なくとも1mmの長さに一体成形されている。各突出部23は、舌側に突出するように円錐状に形成されている。
【0057】
なお、突出部23は、本体部21とは別に成形し、突出部23を本体部21に接着するようにしてもよい。また、突出部23は、円錐状に形成されているが、この形状に限定することなく、例えば角錐状、円錐台状、角錐台状、円柱状、平面側をマウスピース20の臼歯4に対応する左右の内側に接着する半円柱状、半球状に形成したもの等、左右の床部32,32を係止するものであれば、如何なる形状であってもよい。
【0058】
一方、拡大床30には、これら左右の突出部23にそれぞれ嵌り込んで係止する左右の係止部としての嵌合凹部39が設けられている。
【0059】
なお、本実施形態では、突出部23に嵌合凹部39が嵌り込んで係止するように構成したが、これに限らず互いに嵌合して係止するものであれば、如何なるものであってもよい。
【0060】
このように本実施形態の歯科矯正装置10によれば、マウスピース20の左右の内側にそれぞれ突出部23が設けられる一方、左右の突出部23にそれぞれ係止する左右の嵌合凹部39を拡大床30に設けたので、マウスピース20に対して拡大床30を容易に着脱することが可能になる。
【0061】
また、本実施形態の歯科矯正装置10によれば、マウスピース20が装着される部位の左右の歯冠部の内側で拡大床30が係止されるため、審美性を向上させることができる。
【0062】
なお、本実施形態では、突出部23を臼歯4の部位に相当するマウスピース20の左右の内側にそれぞれ被係止部としての突出部23を複数設けた例について説明したが、これに限らずマウスピース20突出部23を左右の臼歯4の歯冠部の内側、すなわち舌側にそれぞれ接着剤により直接取り付けるようにしてもよい。この突出部23は、マウスピース20を装着するときに障害となるため、突出部23に対応する部位にあらかじめ開口部を形成しておくことが望ましい。
[発明の他の実施形態]
本発明の各実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0063】
上記各実施形態及び各変形例では、マウスピース20の上から拡大床30を装着した例について説明したが、これに限らず上顎歯列部2に拡大床30を直接装着するようにしてもよい。
【0064】
マウスピース20、拡大床30等の素材、形状については、口腔1内に装着することができるもので同様の機能を有するものであれば、適宜の素材、形状で構成されていてもよい。また、被係止部の形状も突起状でなくてもよく、適宜の形状に形成されていてもよい。同様に、係止部の形状も凹形状でなくてもよく、適宜の形状に形成されていてもよい。
【0065】
また、上記各実施形態及び各変形例では、オーバレイタイプの緩徐拡大装置にも適用可能である。
【0066】
さらに、上記各実施形態及び各変形例は、マウスピース20が前歯3及び臼歯4を覆うように装着した例について説明したが、臼歯4だけを覆うように装着してもよい。
【解決手段】歯科矯正装置10は、左右の床部32を広げることによって上顎歯列部2の臼歯4の位置を拡大する拡大床30を有し、左右の床部32,32は、上顎歯列部2の臼歯4側にそれぞれ設けられた床部本体部35,35と、これら床部本体部35,35からそれぞれ上顎歯列部2の前歯3の近傍に臨む位置まで延びる咬合部36と、を備え、この咬合部36は、口唇を閉じたときに下顎前歯と咬合するように構成されている。