(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電子機器の筐体内において、例えば、基板および/または機器同士の接続には、フラットケーブルが用いられる。フラットケーブルは、平板状で曲げに強いため、筐体内で折り曲げられた状態で用いられる。そのため、フラットケーブルのコネクタには、フラットケーブルの復元力により、プラグ(またはソケット)がソケット(またはプラグ)から抜け落ちる方向に働く応力が加えられ得る。また、コネクタに加えられる振動や、プラグがソケットから受ける応力(コネクタにおける自己応力)などによっても、プラグ(またはソケット)がソケット(またはプラグ)から抜け落ちる方向に働く応力が加えられ得る。
【0003】
これまでにも、このような応力によるプラグ(またはソケット)の抜け落ちを防止するための技術が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示された技術では、ソケットの長手方向の両端部にロックレバーが取り付けられる。ロックレバーは、支軸に揺動可能に連結される。ロックレバーの先端は、フック状であり、ソケットに対応するプラグの長手方向の両端部に配置された凹部に掛けられる。このように、同技術では、ロックレバーと凹部とにより構成されるロック機構により、ソケットは、プラグにロックされる。
【0005】
非特許文献1に開示された技術では、コネクタとは別体のロックレバーが、コネクタに取り付けられる。ロックレバーは、ソケットの短手方向の側面に配置され、ソケットの極(向き)を確定させる凸部に嵌め込まれる。ロックレバーの上半部はソケットから離れる方向に傾斜し、ロックレバーの下半部はソケットの側面に沿ってソケットの下端よりも下方に延出される。ロックレバーの下端は、フック状であり、プラグの下端に配置されるスリットに掛けられる。その結果、ソケットは、プラグにロックされる。一方、ロックレバーの上半部がソケット側に押されると、ロックレバーの下端はスリットから離れ、ロックは解除される。
【0006】
近年、電子機器の小型化が進むに連れて、筐体内の基板に隣接して実装される素子および/またはコネクタ同士の間隔は、狭くなる傾向にある。その結果、特許文献1に開示された技術では、ロック機構およびロック機構の操作に必要な空間の確保が難しく、同技術を用いたコネクタが使用可能な領域は制限され得る。また、非特許文献1に開示された技術であっても、ロックレバーの上半部の傾斜部分およびロックレバーの操作に必要な空間の確保が難しく、同技術を用いたコネクタが使用可能な領域も制限され得る。すなわち、従来の技術では、コネクタを基板に実装するために、コネクタ自身の床面積だけでなく、コネクタの周囲にロック機構またはロックレバーの配置・操作に必要な領域分の床面積の確保が必要となる。その結果、基板におけるコネクタの配置の自由度は、制限される。また、コネクタの周囲にロック機構またはロックレバーの配置・操作に必要な領域分の床面積が確保できない狭い領域(以下「狭領域」という。)に実装されたコネクタに対して、コネクタの抜けを防止する従来の技術は、採用できない。そのため、従来、狭領域に実装されたコネクタに対しては、プラグに対してソケット側に向かう応力がフラットケーブルから加えられるようにフラットケーブルが配線される技術が用いられていた。この場合、フラットケーブルの配線の自由度は、制限される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るコネクタ抜け防止構造(以下「本構造」という。)の実施の形態について説明する。以下の説明において、本構造は、映像信号や音声信号などの電気信号を扱う放送施設などにおいて用いられるスイッチャ、に備えられているものとする。
【0014】
●スイッチャ●
●スイッチャの構成
図1(a)は本構造を備えるスイッチャの要部を示す斜視図であり、(b)は(a)のスイッチャのA矢視における斜視図である。
図2は、スイッチャの機能ブロック図である。
【0015】
スイッチャ1は、放送施設などにおいて、複数(本実施の形態では4つ)の入力機器2(2a〜2d)と1つの出力機器3との間に接続され、電気信号の流路を制御することにより、入力機器2と出力機器3との間の接続を選択的に切り替える。
【0016】
入力機器2は、例えば、ビデオカメラ、マイクロホン、VTR(Videotape recorder)など、映像信号や音声信号(電気信号)を生成する機器である。
【0017】
出力機器3は、例えば、他のスイッチャ、モニタ、スピーカなど、スイッチャ1からの電気信号を表示し、または出力する機器である。
【0018】
スイッチャ1は、ケース10と、入力系統20と、出力系統30と、接続部40と、切替部50と、記憶部60と、制御部70と、基板80と、コネクタ90と、フラットケーブル100と、突出部材110(
図3と
図4も参照。以下同じ。)と、を有してなる。本実施の形態において、ケース10と突出部材110とは、本構造C(
図3も参照。以下同じ。)を構成している。
【0019】
ケース10は、入力系統20と、出力系統30と、接続部40と、記憶部60と、制御部70と、基板80と、コネクタ90と、フラットケーブル100と、突出部材110と、を収容する。ケース10は、例えば、金属製で、上下方向に扁平な直方体状である。
【0020】
入力系統20は、入力機器2から出力された電気信号を受信し、同電気信号を接続部40へ伝送する。入力系統20は、4つの個別入力系統21,22,23,24を備える。個別入力系統21〜24は、例えば、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)の入力端子である。
【0021】
出力系統30は、接続部40を介して伝送された入力系統20からの電気信号を出力機器3へ出力する。出力系統30は、1つの個別出力系統31を備える。個別出力系統31は、例えば、HDMI(登録商標)の出力端子である。
【0022】
接続部40は、後述する制御部70からの制御信号に基づいて、個別入力系統21〜24と個別出力系統31とを接続し、あるいは、接続を解除する。接続部40は、例えば、選択的接続回路(セレクタ)である。
【0023】
切替部50は、個別入力系統21〜24と個別出力系統31との接続を選択的に切り替えることにより、入力機器2と出力機器3との接続を切り替える。切替部50は、例えば、スイッチなどの操作ボタンである。切替部50は、スイッチャ1の使用者の操作に応じて選択信号を生成し、同選択信号を制御部70に入力する。「選択信号」は、使用者の操作により選択された個別入力系統21〜24と個別出力系統31との接続を示す信号である。使用者により切替部50が操作されると、個別入力系統21〜24と個別出力系統31との接続が切り替えられ、または、同接続が解除される。
【0024】
記憶部60は、スイッチャ1の動作に必要な情報を記憶する。記憶部60は、例えば、RAM(Random Access Memory)などの半導体メモリである。
【0025】
制御部70は、スイッチャ1の全体の動作を制御すると共に、切替部50からの選択信号に基づいて制御信号を生成する。
【0026】
「制御信号」は、切替部50からの選択信号に基づいて、使用者により選択された個別入力系統21〜24と、個別出力系統31と、を接続部40に接続させる信号、または、接続を解除(切断)させる信号である。制御部70は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのマイクロプロセッサなどから構成されている。
【0027】
図3は、基板80の模式断面図である。
同図は、説明の便宜上、コネクタ90とフラットケーブル100と突出部材110とを併せて示す。同図は、後述する挿抜方向を、太い両方向矢印にて示す。
【0028】
基板80は、例えば、プリント基板である。基板80は、例えば、接続部40と切替部50と記憶部60と制御部70と(
図2参照)が実装された制御側基板81と、個別入力系統21〜24と個別出力系統31と(
図2参照)が接続される入出力側基板82と、を備える。制御側基板81は、実装面81aを前方に向けた状態で、ケース10の前壁10aの後方に、同前壁10aと平行に配置されている。入出力側基板82は、実装面82aを上方に向けた状態で、ケース10の後壁10cの前方に、同後壁10cに対して垂直に配置されている。
【0029】
コネクタ90は、フラットケーブル100用のコネクタである。コネクタ90は、制御側基板81に取り付けられている制御側コネクタ91と、入出力側基板82に取り付けられている入出力側コネクタ92と、を備える。
【0030】
制御側コネクタ91は、MIL規格に準拠し、ロック機能を備えていない公知のフラットケーブルコネクタである。制御側コネクタ91は、ソケット911と、プラグ912とを備える。
【0031】
ソケット911は、対応するプラグ912に取り付けられる(プラグ912が挿入される)オス型のソケットである。ソケット911は、本発明における第1コネクタの例である。ソケット911は、制御側基板81に実装されている。ソケット911は、制御側基板81の実装面81aが向けられる方向(前方)に向けて開口している矩形箱状のソケット筐体911aと、複数のソケットコンタクト911bと、を備える。複数のソケットコンタクト911bは、ソケット筐体911aの内側に所定の間隔で配列されている。ソケットコンタクト911bは、本発明における第1コンタクトの例である。
【0032】
プラグ912は、対応するソケット911に取り付けられる雌型のプラグである。プラグ912は、本発明における第2コネクタの例である。プラグ912は、対応するソケット911のソケット筐体911aに挿入可能な直方体状のプラグ筐体912aと、複数のプラグコンタクト912bと、を備える。複数のプラグコンタクト912bは、ソケットコンタクト911bに対応して、プラグ筐体912aに所定の間隔で配列されている。ソケットコンタクト911bは、本発明における第2コンタクトの例である。プラグ筐体912aは、プラグ912がソケット911に取り付けられているとき、ソケット911側(前側)に配置される第1面912a1と、第1面912a1の反対側(後側)に配置される第2面912a2と、を備える。
【0033】
プラグ912は、対応するソケット911に取り付けられている。具体的には、プラグ筐体912aは、第1面912a1をソケット911に向けた状態で、ソケット筐体911a内に挿入されている。ソケットコンタクト911bそれぞれは、対応するプラグコンタクト912bに挿入されている。ソケット911に対するプラグ912の挿抜方向(
図3の紙面左右方向)において、ソケットコンタクト911bそれぞれは、対応するプラグコンタクト912bと電気的に接続されている。プラグ912の第2面912a2は、ケース10の前壁10aの内面10a2に対向している。すなわち、前壁10aの内面10a2は、本発明における対向面の例である。ケース10(前壁10a)は、本発明における対向部材の例である。
【0034】
入出力側コネクタ92は、MIL規格に準拠し、ロック機能を備えていない公知のフラットケーブルコネクタである。入出力側コネクタ92の構成は、制御側コネクタ91の構成と共通する。入出力側コネクタ92は、ソケット921と、プラグ922とを備える。
【0035】
ソケット921は、対応するプラグ922に取り付けられる(プラグ922が挿入される)オス型のソケットである。ソケット921は、入出力側基板82に実装されている。ソケット921は、本発明における第1コネクタの別の例である。ソケット921は、入出力側基板82の実装面82aが向けられる方向(上方)に向けて開口している矩形箱状のソケット筐体921aと、複数のソケットコンタクト921bと、を備える。複数のソケットコンタクト921bは、ソケット筐体921aの内側に所定の間隔で配列されている。ソケットコンタクト921bは、本発明における第1コンタクトの別の例である。
【0036】
プラグ922は、対応するソケット921に取り付けられる雌型のプラグである。プラグ922は、本発明における第2コネクタの別の例である。プラグ922は、対応するソケット921のソケット筐体921aに挿入可能な直方体状のプラグ筐体922aと、複数のプラグコンタクト922bと、を備える。複数のプラグコンタクト922bは、ソケットコンタクト921bに対応して、プラグ筐体922aに所定の間隔で配列されている。プラグコンタクト922bは、本発明における第2コンタクトの別の例である。プラグ筐体922aは、プラグ922がソケット921に取り付けられているとき、ソケット921側(下側)に配置される第1面922a1と、第1面922a1の反対側(上側)に配置される第2面922a2と、を備える。ケース10(上壁10b)は、本発明における対向部材の例である。
【0037】
プラグ922は、対応するソケット921に取り付けられている。具体的には、プラグ筐体922aは、第1面922a1をソケット921に向けた状態で、ソケット筐体921a内に挿入されている。このとき、ソケットコンタクト921bそれぞれは、対応するプラグコンタクト922bに挿入されている。ソケット921に対するプラグ922の挿抜方向(
図3の紙面上下方向)において、ソケットコンタクト921bそれぞれは、対応するプラグコンタクト922bと電気的に接続されている。
【0038】
フラットケーブル100は、制御側コネクタ91と入出力側コネクタ92との間で電気信号を伝送する。フラットケーブル100は、公知のフラットケーブルである。フラットケーブル100の一端部は、プラグ912に取り付けられ、プラグ912の短辺側の側面から延出されている。一方、他端部はプラグ922に取り付けられ、プラグ922の短辺側の側面から延出されている。その結果、プラグコンタクト912bそれぞれは、フラットケーブル100を介して、対応するプラグコンタクト922bと電気的に接続されている。
【0039】
制御側コネクタ91におけるフラットケーブル100が延出されている側(上側)の側面と、ケース10の上壁10bの内面10b2と、の間には、フラットケーブル100の厚みと略同じ幅(例えば、フラットケーブル100の厚みの2倍以下程度の幅)の隙間が形成されている。同隙間は、少なくとも、従来のロック機構やロックレバーの取り付け・操作が不可能な程度に狭い狭領域である。フラットケーブル100は、同隙間に配線されている。この場合、内面10b2は、本発明における第2対向面の例である。
【0040】
図4は、突出部材110の周囲の拡大模式断面図であり、(a)は第1突出部材111の周囲の拡大模式断面図であり、(b)は第2突出部材112の周囲の拡大模式断面図である。同図は、説明の便宜上、コネクタ90も併せて示す。
【0041】
突出部材110は、コネクタ90の抜けを防止する。突出部材110は、例えば、公知のセルスタッドである。突出部材110は、例えば、炭素鋼やステンレス鋼などの金属製である。突出部材110は、制御側コネクタ91に対応する第1突出部材111と、入出力側コネクタ92に対応する第2突出部材112と、を備える。
【0042】
第1突出部材111は、円板状のヘッド111aと、ヘッド111aの一方側の面から突出している略円柱状の雄ねじ部111bと、後端面111a1と、先端面111b1と、を備える。後端面111a1は、ヘッド111aの他方側の面であり、平面状である。先端面111b1は、雄ねじ部111bの突出側の面である。先端面111b1は、本発明における対向面の例である。雄ねじ部111bの外径は、プラグ912の第2面912a2の短手方向における長さ(幅)以下である。第1突出部材111は、ケース10の前壁10aに配置される貫通孔10ahにケース10の外側から圧入されている。第1突出部材111は、制御側コネクタ91のプラグ912の第2面912a2と対向する位置に配置され、第2面912a2に向けて突出している。その結果、先端面111b1は、第2面912a2の中央部に対向している。後端面111a1は、前壁10aの外面10a1と面一となるように配置されている。外面10a1は、本発明における非対向面の例である。
【0043】
第2突出部材112の構成は、第1突出部材111の構成と同じである。すなわち、第2突出部材112は、ヘッド112aと、雄ねじ部112bと、後端面112a1と、先端面112b1と、を備える。先端面112b1は、本発明における対向面の例である。雄ねじ部112bの外径は、プラグ922の第2面922a2の短手方向における長さ(幅)以下である。第2突出部材112は、ケース10の上壁10bに配置される貫通孔10bhにケース10の外側から圧入されている。第2突出部材112は、入出力側コネクタ92のプラグ922の第2面922a2と対向する位置に配置され、上壁10bの内面10b2から第2面922a2に向けて突出している。その結果、先端面112b1は、第2面922a2の中央部に対向している。後端面112a1は、上壁10bの外面10b1と面一となるように配置されている。外面10b1は、本発明における非対向面の例である。
【0044】
●コネクタ90と突出部材110との間の関係
次に、
図3と
図4とを参照しながら、コネクタ90と突出部材110との間の関係について説明する。
【0045】
プラグ912が対応するソケット911に取り付けられたとき、ソケット911に対するプラグ912の挿抜方向(
図4の紙面左右方向)において、内面10a2と先端面111b1との間の長さ(以下「第1長さ」という。)L11は、内面10a2と第2面912a2との間の長さ(以下「第2長さ」という。)L12よりも短い。すなわち、先端面111b1は、第2面912a2とは当接していない。また、ソケットコンタクト911bは、同挿抜方向において、所定の長さ(以下「第3長さ」という。)L13の範囲でプラグコンタクト912bと電気的に接続されている。そして、第2面912a2と先端面111b1との間の長さ(以下「第4長さ」という。)L14は、第3長さL13よりも短い。この構成によれば、プラグ912がソケット911から抜ける方向(前方)に向けられる応力(以下「抜け応力」という。)がフラットケーブル100からプラグ912に対して加えられたとき、プラグ912は、第2面912a2が先端面111b1に当接するまでの範囲内でのみプラグ912がソケット911から抜ける方向(前方)に移動可能である。そして、第1突出部材111は、ケース10の前壁10aに固定されている。そのため、第1突出部材111は、プラグ912からプラグが抜ける方向に向けて応力を加えられても、プラグ912の移動を規制できる。すなわち、プラグ912がソケット911から抜け落ちることはなく、ソケットコンタクト911bとプラグコンタクト912bとの間の電気的接続は「第3長さL13−第4長さL14」の範囲内で維持される。すなわち、ケース10(前壁10a)と第1突出部材111とは、制御側コネクタ91の抜け防止構造Cとして機能する。
【0046】
一方、プラグ922が対応するソケット921に取り付けられたとき、ソケット921に対するプラグ922の挿抜方向(
図4の紙面上下方向)において、内面10b2と先端面112b1との間の長さ(以下「第1長さ」という。)L21は、内面10a2と第2面922a2との間の長さ(以下「第2長さ」という。)L22よりも短い。すなわち、先端面112b1は、第2面922a2とは当接していない。また、ソケットコンタクト921bは、同挿抜方向において、所定の長さ(以下「第3長さ」という。)L23の範囲でプラグコンタクト922bと電気的に接続されている。そして、第2面922a2と先端面112b1との間の長さ(以下「第4長さ」という。)L24は、第3長さL23よりも短い。この構成によれば、プラグ922がソケット921から抜ける方向(上方)に向けられる応力(抜け応力)がフラットケーブル100からプラグ922に対して加えられたとき、プラグ922は、第2面922a2が先端面921b1に当接するまでの範囲内でのみプラグ922がソケット921から抜ける方向(上方)に移動可能である。そして、第2突出部材112は、ケース10の上壁10bに固定されている。そのため、第2突出部材112は、プラグ922からプラグが抜ける方向に向けて応力を加えられても、プラグ922の移動を規制できる。すなわち、プラグ922がソケット921から抜け落ちることはなく、ソケットコンタクト921bとプラグコンタクト922bとの間の電気的接続は「第3長さL23−第4長さL24」の範囲内で維持される。すなわち、ケース10(上壁10b)と第2突出部材112とは、入出力側コネクタ92の抜け防止構造Cとして機能する。
【0047】
●まとめ
以上説明した実施の形態によれば、スイッチャ1は、ケース10と突出部材110とを構成として含む本構造Cを有してなる。ケース10は、制御側コネクタ91のプラグ912の第2面912a2に対向している内面10a2と、入出力側コネクタ92のプラグ922の第2面922a2に対向している内面10b2と、を有する。突出部材110は、内面10a2から第2面912a2に向けて突出している第1突出部材111と、内面10b2から第2面922a2に向けて突出している第2突出部材112と、を有してなる。この構成によれば、抜け応力がプラグ912に加えられても、プラグ912は、プラグ912の第2面912a2が第1突出部材111の先端面111b1に当接するまでの範囲内においてのみ移動可能である。すなわち、プラグ912のソケット911からの抜け落ちは、第1突出部材111により防止される(第2突出部材112も入出力側コネクタ92に対して同様に機能する)。また、基板80において、コネクタ90の周囲に突出部材110の配置に必要な領域は、不要である。このように、本構造Cは、コネクタ90の周囲に従来のロック機構またはロックレバーの配置・操作に必要な領域分の床面積が確保できない狭い領域(以下「狭領域」という。)に実装されたコネクタ90の抜け(ソケット911,921に対するプラグ912,922の抜け)を防止できる。
【0048】
また、以上説明した実施の形態によれば、第1長さL11,L21は、第2長さL12,L22より短い。また、第4長さL14,L24は、第3長さL13,L23より短い。この構成によれば、抜け応力がプラグ912,922に加えられても、挿抜方向において、プラグ912,922は、第3長さL3以上には移動しない。すなわち、ソケットコンタクト911b,921bとプラグコンタクト912b,922bとの間の電気的接続は、常に確保される。
【0049】
さらに、以上説明した実施の形態によれば、第1突出部材111は貫通孔10ahに圧入され(嵌め込まれ)、第2突出部材112は貫通孔10bhに圧入されている(嵌め込まれている)。第1突出部材111の後端面111a1は、前壁10aの外面10a1と面一となるように配置されている。第2突出部材112の後端面112a1は、上壁10bの外面10b1と面一になるように配置されている。この構成によれば、ケース10に対する突出部材110の数および配置は、ケース10に対する貫通孔10ah,10bhの数および位置に対応し、自由に変更可能である。また、ケース10の外面(外面10a1,10b1)には不要な凹凸が形成されず(同外面(外面10a1,10b1)は平滑に保たれる)、ケース10の塗装などの仕上げへの悪影響は無い。したがって、突出部材110は、ケース10の外観に悪影響を及ぼすことなく、コネクタ90の抜けを防止できる。
【0050】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、本構造Cは、コネクタ90を収容するケース10の一部と、ケース10に圧入されたセルスタッド(突出部材110)と、により構成されている。一般的に、セルスタッドの呼び径(外径)および長さの組み合わせは規格化されており、複数の組み合わせが存在している。また、セルスタッドは、用途に応じて、適宜設計されている。そのため、第2長さL12,L22とコネクタ90の大きさ(第2面912a2,922a2の幅)とに合わせて、適切な突出部材110が、選択される。また、セルスタッドを機器の筐体および基板に取り付ける技術は確立されており、本構造Cは、種々の機器に対して容易に適用できる。
【0051】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、制御側コネクタ91におけるフラットケーブル100が延出される側(上側)の側面と、ケース10の上壁10bの内面10b2と、の間には、フラットケーブル100の厚みと略同じ幅の隙間が形成されている。この構成によれば、従来のロックレバーの取り付けが不可能な狭領域にコネクタ90が配置されても、本構造Cは、コネクタ90の抜けを防止できる。
【0052】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、挿抜方向(前後方向)に直交する方向(上下方向)において、第1突出部材111の幅(直径)は、第2面912a2の幅以下である。また、挿抜方向(上下方向)に直交する方向(前後方向)において、第2突出部材112の幅(直径)は、第2面922a2の幅以下である。この構成によれば、基板80において、コネクタ90の周囲に突出部材110の配置に必要な領域は、不要である。このように、本構造Cは、狭領域に実装されたコネクタ90の抜けを防止できる。
【0053】
なお、本発明における突出部材は、セルスタッドに限定されない。すなわち、例えば、本発明における突出部材は、対向部材の貫通孔に、外側または内側から圧入される部材(例えば、セルファスナ、セルスペーサ、または、これらに類似の部材)でもよい。また、例えば、本発明における突出部材は、ボルト(ねじ)でもよい。この場合、ボルトの嵌め込み量が変更されることにより、ボルトは、ケースに対して挿抜方向に進退可能である。さらに、例えば、本発明における突出部材は、雄ねじ部や雌ねじ部を有さない柱状(円柱状、角柱状)の部材でもよい。さらにまた、本発明における突出部材の材質は、金属に限定されない。すなわち、例えば、本発明における突出部材の材質は、ABS(アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂)などの合成樹脂でもよい。
【0054】
また、本発明における突出部材の先端面は、コネクタの第2面に当接してもよい。この場合、第1長さは、第2長さと同じ長さである。この構成では、本発明における突出部材は、プラグをソケットに確実に固定できる。
【0055】
さらに、挿抜方向(前後方向または上下方向)に直交する方向(上下方向または前後方向)において、本発明における突出部材の幅(直径)は、第2面の幅よりも大きくてもよい。この構成でも、本発明における突出部材は第2面よりも基板側に突出しないため、本構造は、狭領域に実装されたコネクタの抜けを防止できる。
【0056】
さらにまた、本発明における対向部材は、ケースに限定されない。すなわち、例えば、本発明における対向部材は、ケース内において第2面に対向するように配置される基板、ケース内に収容される電子機器、でもよい。
【0057】
さらにまた、本発明における対向部材(ケース)は、突出部材が嵌め込まれる貫通孔を有さなくてもよい。この場合、本発明における突出部材は、例えば、接着剤により対向部材(ケース)に取り付けられてもよい。
【0058】
さらにまた、本発明におけるプラグが基板に実装され、本発明におけるソケットがプラグに対して挿抜可能に構成されてもよい。すなわち、本発明における第1コネクタがプラグでもよく、本発明における第2コネクタがソケットでもよい。
【0059】
さらにまた、本構造を備える対象は、ロック機構を有さないフラットケーブルコネクタを用いている機器(例えば、映像分配器や映像変換機器などの電子機器)であればよく、スイッチャに限定されない。また、スイッチャの構成(例えば、入力・出力系統の数など)も、以上説明した実施の形態に限定されない。
【解決手段】本発明に係るコネクタ抜け防止構造(C)は、基板(80)に実装された第1コネクタ(911,921)に挿し込まれた第2コネクタ(912,922)の抜けを防止するコネクタ抜け防止構造である。第2コネクタは、第1コネクタに対する第2コネクタの挿抜方向において、第1コネクタ側に配置される第1面(912a1,922a1)と、第1面の反対側に配置される第2面(912a2,922a2)と、を備える。コネクタ抜け防止構造は、第2面に対向する対向面(10a2)を有する対向部材(10)と、対向面から第2面に向けて突出する突出部材(90)と、を有してなる。