特許第6971513号(P6971513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6971513
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】温熱器
(51)【国際特許分類】
   A61H 39/06 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   A61H39/06 311
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2021-107695(P2021-107695)
(22)【出願日】2021年6月29日
【審査請求日】2021年8月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520111992
【氏名又は名称】長谷 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】長谷 章子
【審査官】 小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】 韓国登録特許第10−0902312(KR,B1)
【文献】 実公昭10−17667(JP,Y1)
【文献】 実公昭11−6144(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源を収容する容器と、
前記容器の底部の外面から開口端に亘る領域を覆うカバーと、
前記容器の内部に配置され、かつ、前記容器の内部で前記熱源が収容される空間と前記容器の外部とを隔てる蓋部と、
前記蓋部に設けられ、かつ、前記容器の内部と外部とをつなぐ通気孔と、
を有し、
前記蓋部の外周には、前記カバーが前記容器の開口端で折り返されて前記容器の内部へ配置された折り返し部を、前記容器の内面と協働して挟む位置決め部が設けられている、温熱器。
【請求項2】
請求項1記載の温熱器において、
前記容器の平面視で、前記開口端の平面形状は円形であり、
前記容器の平面視で、前記容器の内部に配置された前記蓋部の外周形状は円形である、温熱器。
【請求項3】
請求項2記載の温熱器において、
前記通気孔は、前記容器の内部に配置された前記蓋部の中心を中心とする同一円周上に複数設けられている、温熱器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、容器内に収容した熱源の熱によって生体を加熱する温熱器に関する。
【背景技術】
【0002】
容器内に収容した熱源の熱によって生体を加熱する温熱器の一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された温熱器は、一方側に位置する先端部が球面状に形成されるとともに、先端部から他方側に円錐形状に形成された第1壁部と、第1壁部に接続されてすぼむように設けられた第2壁部と、第2壁部に接続された筒形状の支持部と、を有する。特許文献1に記載された温熱器は、容器内に収容した熱源が燃焼して発熱した熱により生体等の患部を加熱するとともに、容器の先端部を患部に接触させて加圧することにより、指圧、マッサージをすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5352762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、特許文献1に記載されている温熱器は、容器の先端部を生体に接触させるため衛生上好ましくない、という課題を認識した。
【0005】
本開示の目的は、衛生面で安心して利用することの可能な温熱器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の温熱器は、熱源を収容する容器と、前記容器の底部の外面から開口端に亘る領域を覆うカバーと、前記容器の内部に配置され、かつ、前記容器の内部で前記熱源が収容される空間と前記容器の外部とを隔てる蓋部と、前記蓋部に設けられ、かつ、前記容器の内部と外部とをつなぐ通気孔と、を有し、前記蓋部の外周には、前記カバーが前記容器の開口端で折り返されて前記容器の内部へ配置された折り返し部を、前記容器の内面と協働して挟む位置決め部が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、生体に接触されるカバーが容器に対して位置決めされるため、容器が生体に接触することを抑制できる。したがって、温熱器を衛生面で安心して利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の温熱器の分解斜視図である。
図2】(A)は、温熱器の平面図、(B)は、図2(A)のII−II線における温熱器の縦断面図である。
図3】対象者の身体に温熱器を押し当てている状態の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、本開示の実施形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の内容に限定されない。図1図2(A),(B)に示す温熱器10は、温熱カップ11、蓋部12及びカバー13を有する。温熱カップ11は、耐熱性に優れたセラミック製である。温熱カップ11を図2(A)のように平面視すると、温熱カップ11の外周形状は、中心線A1を中心とする円形である。中心線A1は、温熱カップ11の中心を通る仮想線である。温熱カップ11は、図2(B)のように、底部14と、底部14につながる壁部15とを有する。
【0010】
温熱カップ11は、すり鉢形状であり、底部14から開口端16に向けて内径が大きくなる向きに、壁部15が中心線A1に対して傾斜している。温熱カップ11の外径(直径)は、一例として、10cm乃至15cmの範囲内である。温熱カップ11の中心線A1に沿った方向の高さは、一例として、7cm乃至10cmの範囲内である。
【0011】
蓋部12は、例えば木材製であり、蓋部12は、温熱カップ11の内部に配置されることにより、熱源20が収容される空間19と、温熱カップ11の外部29とを隔てる部品である。温熱カップ11の平面視、つまり、中心線A1に対して垂直な平面視である図2(A)において、蓋部12の外周縁の形状は、中心線A1を中心とする円形である。蓋部12の全周に亘って設けられた外周部26の外径は、中心線A1に沿った方向で滑らかに変化している。このため、図2(B)のように、中心線A1を含む側面断面内で、外端ぶ26は、中心線A1に対して傾斜しており、テーパ状に構成されている。外周部26の最小外径(直径)は、温熱カップ11の最大内径、つまり、開口端16の内径より小さい。開口端16は、中心線A1を中心とする円形の縁部である。中心線A1は、蓋部12の中心を通る仮想線である。図2(A),(B)には、蓋部12が温熱カップ11の内部に入れられ、温熱カップ11の中心線A1と、蓋部12の中心線A1とが共通になった例が示されている。
【0012】
蓋部12を厚さ方向に貫通する通気孔17が設けられている。蓋部12の厚さ方向は、中心線A1に沿った方向である。通気孔17は、中心線A1を中心とする同一円周上に複数設けられている。図2(A)には、4つの通気孔17が、同一円周上に等間隔で配置された例が示されている。蓋部12を平面視すると、4つの通気孔17の平面形状は、全て円形であり、かつ、4つの通気孔17の内径は、全て同一である。
【0013】
カバー13は、生地(布地)によって構成されている。生地としては、ブロード生地、シーチング生地、オックス生地、キルティング生地、タフタ生地、フェルト生地等を用いることができる。また、生地として耐熱性を有するもの、例えば、カーボン系複合繊維、シリカ繊維(高耐熱のガラス繊維)、耐炎繊維(アクリル繊維)を用いることも可能である。さらに、カバー13の外周端が全周に亘って内側に折り返され、かつ、縫合されている。折り返された部分に環状のゴム紐18が通されており、ゴム紐18の収縮力でカバー13の外縁が狭められるように構成されている。
【0014】
温熱カップ11の内部に形成される空間19には、熱源20、例えば、固形燃料が入れられる。固形燃料としては、ペレット形状の石炭、木炭、成形木炭、練炭を用いることができる。
【0015】
本実施形態の温熱器10の使用例を説明する。ここでは、図3のように、施術者21が温熱器10を使用して、施術台22に横臥している対象者(人間)23の身体に、温熱療法を施す例を説明する。図3は、対象者23が施術台22にうつ伏せで横臥した状態を示している。
【0016】
施術者21は、温熱カップ11の底部14の外面、及び壁部15の外面をカバー13で覆い、温熱カップ11の内部に熱源20を複数、例えば、4個乃至6個入れ、かつ、熱源20に点火する。次に、カバー13の外周端を開口端16よりも上に位置させる。さらに、カバー13の外縁を開口端16の内側へ移動させて折り返し(引っ掛け)、折り返し部24を形成する。また、折り返し部24を温熱カップ11の内部へ位置させる。これにより、カバー13は、温熱カップ11の底部14の外面から開口端16に亘る領域を覆う。そして、蓋部12を温熱カップ11の内部に入れて、空間19と外部29とを隔てる。
【0017】
すると、図2(B)のように、蓋部12の外端部26と、温熱カップ11の内面25とが協働して折り返し部24を挟み、かつ、蓋部12が停止する。つまり、蓋部12は、温熱カップ11に対して中心線A1に沿った方向に位置決めされる。蓋部12は、中心線A1に沿った方向の一部が外部29に位置し、中心線A1に沿った方向の一部が温熱カップ11の内部に位置する。蓋部12は、空間19と外部29とを隔てている。
【0018】
その後、施術者21は、図2(A)のように手27で温熱器10を上から掴み、温熱カップ11を対象者23の身体に接近させる。そして、図2(B)のように、カバー13のうち、底部14を覆っている部位を対象者23の身体28の表面に押し付ける。そして、温熱器10を身体28に沿って移動させる。施術者21が、身体28の表面に沿って温熱器10を移動させることで、身体28の表面を温める温熱効果を得られる。特に、身体28の中心部分となる背骨、臍下丹田や仙骨に沿って温熱器10を加圧しながら移動させることで、骨格のゆがみを矯正することができる。
【0019】
また、施術者21は、図3のように、両方の手27で温熱器10をそれぞれ掴み、2個の温熱器10を使用して施術を行うこともできる。熱源20の熱が温熱カップ11を経由して対象者の身体28に伝達される。熱源20の温度は、一例として700℃程度であり、その熱源20の熱で、セラミック製の温熱カップ11の温度が上昇し、遠赤外線効果により身体28を温めることができる。温熱カップ11から発せられる電磁波は、3μm乃至1,000 μmの波長領域内にある。対象者23は、施術台22上で仰向けになってもよい。
【0020】
本実施形態の温熱器10は、温熱カップ11を覆うカバー13が、対象者23の身体28に接触される。具体的には、カバー13のうち、底部14の外側に位置する部位が身体28に押し付けられる。このため、温熱カップ11が身体28に接触することはなく、衛生的である。したがって、温熱器10を衛生面で安心して利用することができる。
【0021】
また、カバー13の折り返し部24は、蓋部12の外端部26と温熱カップ11の内面25とにより挟まれている。そして、手27により、蓋部12が温熱カップ11の内面25へ向けて押し付けられている。つまり、カバー13は、温熱カップ11に対して位置決め固定されている。
【0022】
このため、温熱器10を図2(B)のように身体28に沿って移動させた場合に、カバー13と身体28との接触部分の摩擦力で、カバー13の折り返し部24が、温熱カップ11の外部29へ向けて引っ張られたとしても、カバー13が温熱カップ11に対して位置ずれすることを防止できる。つまり、カバー13が温熱カップ11の外面を覆った状態を維持できる。したがって、温熱カップ11が身体28に接触することを確実に防止でき、衛生的である。さらに、対象者23が代わる毎に、蓋部12を取り外してカバー13を交換すれば、同一のカバー13が異なる対象者23に対して接触することが無く、一層、衛生的である。
【0023】
さらに、蓋部12には通気孔17が設けられているため、温熱カップ11の空間19と外部29とが、通気孔17によりつながる。このため、熱源20の燃焼に必要な量の酸素を空間19で確保することができ、熱源20の燃焼を安定させることができる。また、通気孔17を蓋部12に複数設けることで、空間19と外部29との間における空気の流れが促進され、熱源20の燃焼時間を増加させることができる。さらに、空間19における必要酸素量を確保するために、通気孔17を複数設けている。このため、通気孔17の1つ1つを、なるべく小さくすることができる。したがって、温熱カップ11の中心線A1を鉛直線に対して傾けた場合に、空間19の熱源20が、通気孔17を通って外部29へ出ることを抑制できる。ゴム紐18がカバー13に設けられているため、カバー13の一部が空間19で垂れることを防止でき、熱源20とカバー13の一部との接触を回避できる。
【0024】
なお、施術者21は、温熱療法を行うことに併せて、対象者23に人間関係、家族関係等におけるカウンセリングを行うことも可能であり、対象者23は、精神的・心理的にリラックスできる。さらに、施術者21が温熱器10を使用する例を説明したが、対象者23が自分の手で温熱器10を持ち、かつ、自分の足、腕、腹等にカバー13を押し付けることも可能である。
【0025】
実施形態で説明した事項の技術的意味の一例は、次の通りである。温熱器10は、温熱器の一例である。熱源20は、熱源の一例であり、温熱カップ11は、容器の一例である。底部14は、容器の底部の一例である。開口端16は、容器の開口端の一例である。カバー13は、カバーの一例である。蓋部12は、蓋部の一例である。通気孔17は、通気孔の一例である。外端部26は、位置決め部の一例である。内面25は、容器の内面の一例である。中心線A1は、“容器の内部に配置された蓋部の中心”の一例である。
【0026】
本実施形態で説明した温熱器は、図面を用いて説明したものに限定されない。例えば、中心線A1に対して垂直な平面内で、温熱カップの外周形状、内周形状は、円形に限定されず、四角形、五角形、六角形、八角形、楕円形等でもよい。この場合、中心線A1に対して垂直な平面内で、温熱カップの内周形状と、蓋部の外周形状とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。温熱カップが、開口端から底部に近づくことに伴い開口面積が狭くなっていれば、蓋部の外周端が温熱カップの内面に接触し、蓋部は、容器に対して中心線に沿った方向で位置決めされる。さらに、蓋部の外端部の直径は、中心線に沿った方向で一定でもよい。
【0027】
また、蓋部の通気孔の数は、3個以下でもよいし、5個以上でもよい。すなわち、通気孔の数、中心線A1に対して垂直な平面視で、蓋部に対して通気孔を設ける位置は、任意である。さらに、蓋部の中心線A1に対して垂直な平面視で、通気孔は、中心線A1を中心とする1個の円形でもよい。さらに、通気孔の平面形状は円形、楕円形、多角形等の何れでもよい。また、蓋部を構成する材料は、木材に代えて耐熱性を有する熱硬化性樹脂、例えば、ポリイミド樹脂を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本開示の温熱器は、容器内に収容した熱源の熱によって生体を加熱するために利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
10…温熱器、11…温熱カップ、12…蓋部、13…カバー、14…底部、16…開口端、17…通気孔、20…熱源、25…内面、26…外端部、A1…中心線
【要約】
【課題】衛生面で安心して利用することの可能な温熱器を提供する。
【解決手段】熱源20を収容する温熱カップ11と、温熱カップ11の底部14の外面から開口端16に亘る領域を覆うカバー13と、温熱カップ11の内部に配置され、かつ、温熱カップ11の内部で熱源20が収容される空間19と温熱カップ11の外部29とを隔てる蓋部12と、蓋部12に設けられ、かつ、空間19と外部29とをつなぐ通気孔17と、を有し、蓋部12の外周には、カバー13が開口端16で折り返された折り返し部24を、温熱カップ11の内面25と協働して外端部26が設けられている温熱器10を構成した。
【選択図】図2
図1
図2
図3