【実施例1】
【0013】
(原料米処理装置)
図1は実施例1の原料米処理装置の構成の説明図である。
図1は、浸漬タンク10A、10B、10Cに収容した原料米に浸漬水を供給して同時進行的に吸水処理を行っている状態である。
図1に示すように、実施例1の原料米処理装置100は、原料米をアルファ化処理したいわゆるアルファ化米を製造する装置である。
【0014】
洗米装置50は、洗浄槽51の原料米に常温の水を混合して攪拌する。洗米装置50は、攪拌後に水を排水して原料米を水切りした後に洗浄槽51へ新たな水を注入する。洗米装置50は、洗浄槽51において原料米と水とを攪拌することにより、原料米の粒子を洗浄し、米粒の表面に付着した異物や余分なデンプン粒子を除去する。
【0015】
洗浄槽51に水中ポンプ52が沈められている。収容体供給手段の一例である水中ポンプ52は、洗浄槽51内で水とともに流動する原料米を、水と一緒に流動状態で吸い上げて、網入りビニルホースの配管53A、53B、53Cのうちの1つへ送り出す。配管53A、53B、53Cは、それぞれ浸漬タンク10A、10B、10Cの供給口25へ原料米を水とともに流し込む。
【0016】
浸漬タンク10A、10B、10Cは、水とともに流し込まれた原料米を保持しつつ、排水部16により水を分離して、排水口23から水を排水して排水タンク65へ回収する。このとき、バルブ23a、23bは開かれている。バルブ23aは、金属部品と水との接触を回避するために、ビニルホースを外側から押圧して水路を開閉する形式のものを使用している。これにより、浸漬タンク10A、10B、10C内に原料米とともに流し込まれた水を排水して原料米を水切りする。
【0017】
浸漬タンク10A、10B、10Cは、洗米処理された所定量の原料米を内側に保持して水切りした状態で、供給手段の一例である浸漬水供給装置60から供給口25を通じて上方から浸漬水を供給されることにより吸水処理を実行する。浸漬水供給装置60は、加熱して吸水に最適な温度に温度調整した浸漬水を、網入りビニルホースの配管63A、63B、63Cを通じて順番に送り出す。配管63A、63B、63Cは、それぞれ浸漬タンク10A、10B、10Cの供給口25へ浸漬水を注入する。
【0018】
吸水処理時、浸漬タンク10A、10B、10Cから水抜きをするためのバルブ23aは閉じられている。このため、浸漬タンク10A、10B、10Cへ浸漬水を注入して満水レベルに達すると、浸漬水回収溝14へ浸漬水がオーバーフローする。浸漬水供給装置60は、吸水処理の開始後に所定時間が経過すると、浸漬水の供給量を減らして浸漬水回収溝14へオーバーフローする浸漬水の量を削減する。
【0019】
浸漬水回収溝14へ回収された浸漬水は、排水口14aを通じて浸漬水供給装置60へ戻される。浸漬水供給装置60は、回収した浸漬水を元の温度に温度調整し直して配管63A、63B、63Cを通じて浸漬タンク10A、10B、10Cへ再び送り出す。このようにして、温度管理された浸漬水中に原料米が所定時間浸漬され、原料米が所定の吸水レベルに吸水処理される。
【0020】
浸漬水への浸漬を開始して所定時間が経過すると、バルブ23a、23bが同時に開かれて、浸漬タンク10A、10B、10Cの浸漬水は、排水部16から排水口23を通じて外部の排水タンク65へ排水される。浸漬タンク10A、10B、10Cは、吸水処理後、吸水処理された原料米を内側に保持しつつ、排水部16により浸漬水を外側の排水部16へ分離して、排水口23から排水させる。これにより、浸漬タンク10A、10B、10C内の吸水処理された原料米を水切りして、原料米の過剰な吸水を回避する。原料米の吸水量がばらつくと、最終製品のアルファ化米の品質のばらつきが大きくなるからである。
【0021】
浸漬タンク10A、10B、10Cの上部の供給口25には、上方からの異物混入を回避するために、また、後述する待機工程における原料米からの水分蒸発を抑制するために、ポリカーボネート樹脂の蓋12がされている。蓋12には、洗米された原料米の配管53A、53B、53Cと浸漬水の配管63A、63B、63Cとを貫通させる共通の開口が形成されている。
【0022】
浸漬タンク10A、10B、10Cには、吸水処理を終えた原料米が水切り状態で保持される。浸漬タンク10A、10B、10Cの下端に設けられた取出口21は、シャッタ24により封止されている。シャッタ24は、加熱処理装置70からの指令に従って自動的に開かれる。
図3の(b)に示すように、シャッタ24が開かれると、取出口21を通じて、
図1に示すベルトコンベア71へ原料米が落下し、ベルトコンベア71により原料米が搬送されて加熱処理装置70へ送り込まれる。
【0023】
加熱処理装置70は、不図示のベルトコンベアによって装置内を搬送される原料米に、水蒸気、湿り空気、乾燥空気を段階的に吹き付けて、原料米を所定の温度カーブで加熱し、アルファ化を進行させ、乾燥させる。
【0024】
(アルファ化米の製造方法)
図1に示すように、原料米処理装置100は、原料米をアルファ化するための加熱処理に向けて原料米を待機させるに当たり、第1容器13と、第1容器13の外側に所定間隔を空けて設けられた第2容器20と、を用いる。原料米処理装置100は、第1容器13に洗米した原料米を受け入れて水切りをする工程に続いて、水切りをした原料米に浸漬水を供給して吸水させる吸水工程を実行する。そして、原料米処理装置100は、吸水処理を終了した原料米の水切りをする工程に続いて、第2容器20を介して温度調整用流体を循環供給させて、吸水した原料米を第1容器13の外側から所定温度に温度調整させたまま待機させる待機工程を実行する。
【0025】
制御部120は、原料米処理装置100の各ユニットを統括的に制御して、洗米工程、吸水工程、待機工程、加熱処理工程を順次実行させて、原料米をアルファ化米に加工させる。制御部120は、ROM120aから読み出したプログラム及びデータをRAM120bに保持させて、CPU120cがプログラムに従って必要な演算及び処理を実行する。制御部120は、3台の浸漬タンク10A、10B、10Cにおいて吸水工程と待機工程とを実行させる。浸漬タンク10A、10B、10Cにおける処理は同一であるため、以下では浸漬タンク10Aについて説明し、浸漬タンク10B、10Cに関する重複した説明を省略する。
【0026】
図2は原料米処理装置の制御のフローチャートである。制御部120は、原料米処理装置100を立ち上げてオペレータによる処理の開始指令を待機する。
図2に示すように、制御部120は、処理の開始指令が有ると(S11のYES)、原料米の保管庫55から予め設定された所定量の原料米を搬出して、洗米装置50の洗浄槽51に投入する(S12)。制御部120は、洗米装置50を作動させて洗米処理を実行する(S13)。
【0027】
制御部120は、洗米処理が終了すると(S13)、水中ポンプ52を作動させて、原料米を浸漬タンク10Aへ移送する(S14)。このとき、制御部120は、バルブ23a、23bを開いて原料米の水切りをする(S15)。制御部120は、浸漬水供給装置60を作動させて浸漬タンク10Aに浸漬水を供給して吸水処理を実行する(S16)。吸水処理では、原料米を所定温度の浸漬水に浸漬して所定時間保持することにより、原料米を所定の吸水状態にする。
【0028】
制御部120は、吸水処理された原料米を浸漬タンク10Aに収容した状態でバルブ23sを開いて浸漬水を排水することにより原料米を水切りする(S17)。制御部120は、加熱処理装置70による原料米の加熱処理を待機する待機処理を実行させる(S18)。待機処理では、吸水処理された原料米を水切り状態で浸漬タンク10Aに保持し、加熱処理装置70の加熱処理に連動したタイミングで原料米を加熱処理装置70へ送り出す。
【0029】
制御部120は、浸漬タンク10Aから加熱処理装置70への原料米の供給が指令されている場合は、浸漬タンク10Aで待機させていた原料米を、加熱処理装置70へ移送して原料米の加熱処理を実行させる(S19)。浸漬タンク10Aに待機させていた原料米がすべて排出されると、原料米の落下を検知するセンサ26がOFF状態となる(S20のYES)。制御部120は、次の浸漬タンク10Bから原料米を供給可能である場合(S21のYES)、浸漬タンク10Bに切換えて加熱処理装置70への原料米の供給を継続する(S22)。このようにして、加熱処理装置70へ原料米を供給する供給元を、次の浸漬タンクへ順次切換えて(S22)、加熱処理装置70における加熱処理を継続させる。
【0030】
次の浸漬タンクから原料米を供給できない場合(S21のYES)、停止処理を実行する。停止処理では、加熱処理装置70における最後の原料米の加熱処理の終了を待って原料米処理装置100の全体を停止させる。
【0031】
実施例1では、加熱処理工程において、加熱処理装置70は、浸漬タンク10Aにおける待機工程の原料米の待機時間の長短に関わらず、一定の加熱条件で加熱処理を実行することができる。加熱処理装置70は、原料米の粒子のアルファ化した状態を保持しつつ原料米の水分を蒸発させ、その後、アルファ化した状態を保持しつつ原料米を冷却させる。加熱処理装置70は、アルファ化した乾燥状態のアルファ化米を外部へ搬出する。
【0032】
(待機時間の問題)
ところで、浸漬タンク10A、10B、10Cを使用して待機工程を実行している場合、最初の浸漬タンク10Aから最初に加熱処理装置70へ供給される原料米と、最後の浸漬タンク10Cから最後に加熱処理装置70へ供給される原料米とでは、水切り状態での原料米の待機時間が1時間以上異なる。
【0033】
そして、加熱処理装置70においてアルファ化されたアルファ化米を調べてみると、浸漬タンク10Aから最初に加熱処理装置70へ供給された原料米に比較して、浸漬タンク10Cから最後に加熱処理装置70へ供給された原料米は、アルファ化が不十分になっていた。これにより、製品であるアルファ化米の外観(透明度)、食味、食感のばらつきが生じていた。
【0034】
そこで、実施例1では、浸漬タンク10A、10B、10Cにジャケット11A、11B、11Cを設けて、温度調整用流体をジャケット11に循環させることにより、待機工程における原料米の温度を所定温度に保っている。これにより、浸漬タンク10Aで待機している間の原料米の温度変化を回避して、加熱処理装置70へ供給される時点における原料米の温度をほぼ一定に保っている。実施例1では、浸漬タンク10Aは、吸水工程で吸水させた原料米をそのまま水切り状態で所定温度に保持して、加熱処理装置70によるアルファ化処理を待機させる。
【0035】
その結果、待機時間の長短に関わらず加熱処理工程において同じ加熱シーケンスを使用しても、原料米の温度上昇カーブのばらつきが小さくなった。また、上述した蓋12により水蒸気の拡散を回避することで、待機時間中の水切り状態の原料米の水分蒸発が抑制されている。これにより、原料米は、浸漬タンク10Aにおける待機時間の長短に関わらず、同一の温度かつ吸水レベルが揃った状態で加熱処理装置70へ供給されるようになった。これにより、加熱処理によりアルファ化米とした際の外観(透明度)、食味、食感のばらつきを抑制できるようになった。
【0036】
(浸漬タンク)
図3は浸漬タンクの第1容器の説明図である。
図4は浸漬タンクの案内壁の説明図である。
図5は浸漬タンクの第2容器の説明図である。
図6は浸漬タンクにおける温度調整用流体の流れの説明図である。
図3中、(a)は全体の斜視図、(b)は排水部の断面の正面図である。
図3の(a)に示すように、第1容器13は、洗米処理を施した原料米を受け入れて吸水処理を行うことができる。排水手段の一例である排水部16は、第1容器13に原料米を残した状態で吸水処理に用いた浸漬水を排水できる。
【0037】
図3の(b)に示すように、排出手段の一例である取出口21は、内部の原料米を排出できる。第1容器13は、ステンレス板で形成され、円筒部13aの下端に裁頭円錐型の円錐部13bを溶接している。円錐部13bは、下方へ行くほど直径が小さく、下端から収容体を取り出されるホッパを形成している。
【0038】
円筒部13aの上部には、供給口25を囲んで環状の浸漬水回収溝14が溶接されている。浸漬水回収溝14は、吸水工程において、供給口25から浸漬水を供給して供給口25からオーバーフローさせた浸漬水を回収する。浸漬水回収溝14の一角に排水口14aを有する回収樋15bが設けられている。浸漬水回収溝14に回収された浸漬水は、
図1に示すように、浸漬水供給装置60へ戻して濾過及び温度調整された後に、吸水工程の浸漬水として再利用される。
【0039】
円錐部13bの下端には、底板13cが溶接されている。
図3の(b)に示すように、底板15及びシャッタ24の中央を貫通して取出口21が設けられている。取出口21は、シャッタ24の蓋24aにより開閉可能に封止されている。
【0040】
(排水部)
図3の(b)に示すように、円錐部13bの下部側面に排水部16が溶接されている。円錐部13bの円錐面に開口13dが設けられ、開口13dを囲むように円筒壁16aが溶接されている。円筒壁16aの内側に水空間16dが形成されている。そして、開口13dに金網22を設けて、水空間16dへの浸漬水の流出を許容しつつ原料米が水空間16dへ漏れることを阻止している。なお、金網22は、米粒子の滑り落ちを更に容易にするために、ステンレスの薄板に無数の開口を形成したストレイナに置き換えてもよい。金網22は、滑り落ちる米粒子との摩擦を軽減するためにフッ素樹脂のメッシュに置き換えてもよい。
【0041】
(ジャケット)
図5に示すように、第2容器20は、第1容器13の外側に所定間隔を空けて囲んで設けられている。第2容器20は、温度調整用流体の受入口18とこの温度調整用流体の排出口19とを有し、受入口18から受け入れた温度調整用流体が第1容器13の外周を循環しつつ排出口19から排水される。受入口18は、第2容器20の下部に設けられ、
図4に示す底板13cと周回部17dの間の空間に温度調整用流体を供給する。排出口19は、第2容器20の上部に設けられ、
図4に示す底板13cと周回部17dの間の空間から温度調整用流体を回収する。
【0042】
浸漬タンク10Aの第1容器13と第2容器20とによって原料米の収容空間に隣接するジャケット11Aの温度調整用流体が流通する空間が形成されている。第1容器13と第2容器20とは、共に頂点側を下にした円錐形状である。ジャケット11Aは、温度調整用流体を円錐形状の側面に沿って渦巻状に上昇させる。ジャケット11Aを流れる温度調整用流体を案内するために、
図4に示すように、第1容器13の外側面に沿ってスパイラル状の案内壁17が溶接されている。
【0043】
案内壁17は、第1容器13の外側面に沿ってスパイラル状に上昇する温度調整用流体の流れを形成する。周回部17a、17b、17c、17dは、高さ方向に一定間隔で配置され、第1容器13の外側面を一定の高さで周回している。連絡部17eは、上部の一端を周回部17aの切れ目17iに溶接され、下部の他端を周回部17bの切れ目17jに溶接されている。連絡部17fは、上部の一端を周回部17bの切れ目17jに溶接され、下部の他端を周回部17cの切れ目17kに溶接されている。連絡部17gは、上部の一端を周回部17cの切れ目17kに溶接され、下部の他端を周回部17dの切れ目17lに溶接されている。連絡部17hは、上部の一端を周回部17dの切れ目17lに溶接され、下部の他端を底板13cに溶接されている。
【0044】
案内壁17の外側に当接させて第2容器20が巻かれている。第2容器20もまた、ステンレス板で形成され、円筒部20aの下端に裁頭円錐型の円錐部20bを溶接している。第2容器20の上端は、浸漬水回収溝14の下面に溶接され、第2容器20の下端は、底板13cに溶接されている。これにより、第2容器20と第1容器13と浸漬水回収溝14と底板13cとで密封された空間が形成されている。
【0045】
図6では、破線で示す第2容器20を取り除いて温度調整用流体の流路を示している。温度調整用流体は、受入口18から流入して、矢印で示すように、周回部17a、17b、17c、17d及び底板13cに沿って周回し、切れ目17i、17j、17k、17lを通じて上昇する。
【0046】
なお、第2容器20と第1容器13との間に形成される温度調整用流体の流路は、理想的にはスムーズな螺旋状に仕切られていることが望ましい。しかし、製作の難易度が高くなるため、周回部17a、17b、17c、17dと連絡部17e、17f、17g、17hとを繋ぎ合わせて、第2容器20と第1容器13との間の空間を疑似スパイラル状に仕切っている。
【0047】
(温度調整システム)
図7は温度調整システムの構成の説明図である。
図1を参照して説明したように、浸漬タンク10Aは、原料米の吸水処理を行った後に、原料米を水切り状態で保持して次の加熱処理を待機させる。
図3〜
図6を参照して説明したように、浸漬タンク10Aは、収容した原料米を浸漬水に浸漬して吸水させる吸水処理が可能であって、吸水処理の終了後、原料米を保持した状態で排水部16を通じて浸漬水を排水可能である。
【0048】
図7に示すように、保温待機装置の一例である原料米処理装置100は、吸水させて水切りをした状態の原料米を、待機工程の浸漬タンク10A、10B、10Cにおいて所定温度に保持して加熱処理に向けて待機させる。供給循環手段の一例である温度調整装置30A、30B、30C、温度調整用流体の補給部40、ポンプ45は、受入口18に所定温度のを供給して第2容器20を介して温度調整用流体を循環させる。浸漬タンク10A、10B、10Cにそれぞれジャケット11A、11B、11Cがそれぞれ形成され、それぞれの第1容器13の外側に温度調整用流体を通過させている。温度調整装置30A、30B、30Cにより温度調整された温度調整用流体は、第2容器20の下端部側から受け入れて上端部側から排出させている。第1容器13と第2容器20とは、それぞれセットで複数設けられ、複数のジャケット11A、11B、11Cが直列に接続されている。
【0049】
循環路38、39は、ジャケット11A、11B、11Cを直列に接続して、温度調整装置30A、30B、30Cにより所定温度の温度調整された温度調整用流体を循環させる。温度調整装置30A、30B、30Cは、浸漬タンク10A、10B、10Cに対してそれぞれ設けられている。浸漬タンク10A、10B、10C及びジャケット11A、11B、11Cは同一に構成され、同一に温度制御されている。このため、以下では、浸漬タンク10Aについて詳細に説明し、浸漬タンク10B、10Cに関する重複した説明を省略する。
【0050】
(温度調整装置)
温度調整システム110は、所定温度に温度を調整された温度調整用流体をジャケット11Aに循環させる。検知手段の一例であるサーミスタ32は、ジャケット11Aを流れる温度調整用流体の温度を検知する。調整手段の一例である温度調整装置30Aは、第2容器20へ供給する温度調整用流体を常に所定温度に調整する。なお、温度調整装置30Aにおける温度調整用流体の温度調整の目標温度としての所定温度は、浸漬タンク10Aで加熱処理を待機させる米の温度管理に用いる所定温度と近い温度であるが同一温度とは限らない。また、吸水処理において浸漬タンク10Aに供給される浸漬水の温度である所定温度とも近い温度であるが、同一温度とは限らない。
【0051】
温度調整装置30Aは、サーミスタ32及び温度制御部33を含む。熱交換器35は、スパイラル状の銅パイプの中央にボイラ36で形成された水蒸気を供給して銅パイプを流れる温度調整用流体を温度調整する。電磁弁34は、熱交換器35に供給される水蒸気をON/OFFして、水蒸気と温度調整用流体との熱交換量を調整する。水蒸気の潜熱を用いて温度調整を行うので、温度調整の応答性が高く、後述する吸水工程と待機工程とにおける温度調整用流体の温度制御の目標温度の変更が直ちに温度調整用流体の温度に反映される。
【0052】
サーミスタ32は、熱交換器35の出口の銅パイプの温度を検知する。温度制御部33は、サーミスタ32の検知温度が所定温度+1度以上になると電磁弁34をOFFさせ、サーミスタ32の検知温度が所定温度−1度未満になると電磁弁34をONさせる。
【0053】
温度調整用流体の補給部40は、温度調整システム110を循環するを一時的に貯留して温度調整用流体の圧力変化及び温度変化を緩和する。タンク本体41は、回収口42へ回収された温度調整用流体の流れを停滞させて錆等の異物等を沈殿させ、供給口43からポンプ45へ送り込む。ポンプ45は、温度調整システム110を流れる温度調整用流体を駆動する。
【0054】
レベルセンサ44は、タンク本体41内の温度調整用流体の液面を検知する。水補給部47は、レベルセンサ44の出力に基づいて、タンク本体41内の温度調整用流体の液面が所定高さを割り込むとタンク本体41に新たな水46を注入し、液面が所定高さに達すると水の注入を停止させる。
【0055】
(温度調整システムの制御)
図8は温度調整システムの制御のフローチャートである。
図8に示すように、制御部120は、浸漬タンク10A、10B、10Cで吸水処理が開始されると(S31のYES)、ポンプ45を作動させて温度調整用流体の循環を開始させる(S32)。そして、ボイラ36を作動させるとともに(S33)、温度制御部33による第1目標温度の温度制御を開始して(S34)、温度調整用流体の温度の調整を開始させる。その後、制御部120は、浸漬タンク10A、10B、10Cで待機処理が開始されると(S35のYES)、温度制御の目標温度を第1目標温度よりも低い第2目標温度に変更して、温度制御部33による温度制御を継続する(S36)。
【0056】
制御部120は、浸漬タンク10A、10B、10Cにおける待機処理が終了すると(S37のYES)、温度制御部33による温度制御を停止して、温度調整用流体の温度調整を停止させる(S38)。また、ボイラ36を停止させた後に(S39)、ポンプ45を停止させて温度調整用流体の循環を停止させる(S40)。
【0057】
ところで、原料米の吸水処理では、浸漬水供給装置60が浸漬水の温度を一定に制御しているので、原料米の温度が一定に保たれる、このため、吸水処理では、ジャケット11Aに温度調整用流体を循環させる必要は無い。しかし、待機工程が始まってから温度調整用流体を温度調整していたのでは、ジャケット11Aの温度調整が間に合わない場合がある。間に合っても過渡状態であれば温度変動が大きくなる場合がある。また、ジャケット11Aに温度調整用流体を循環させることで、吸水工程における浸漬タンク10A内の原料米の温度分布のばらつきや経時的な温度変化がほとんど無くなり、温度管理が極めて容易になる。
【0058】
また、実施例1では、吸水処理時の第1目標温度を、吸水処理で浸漬タンク10Aに供給される浸漬水の温度と等しく設定している。これは、浸漬タンク10A内の原料米の温度のばらつきを抑制するためである。
【0059】
また、実施例1では、待機処理時の第2目標温度を吸水処理で浸漬タンク10Aに供給される浸漬水の温度よりも低い温度に設定している。第2目標温度は、待機工程において浸漬タンク10Aで原料米を一定温度で待機させる際の温度である。上述したように、待機工程において、原料米を一定温度で待機させることにより、加熱処理装置70の加熱処理において、気温変動によらず原料米の温度上昇カーブを同一に揃えることができる。
【0060】
(実施例1の効果)
実施例1の原料米処理装置100では、温度調整システム110により、排水部16を通じて排水された浸漬タンク10Aを浸漬水の排水後も一定温度に保持する。このため、浸漬水を排水して水切りした状態における加熱処理の待機時間の違いによる原料米の温度差が解消される。
【0061】
実施例1の原料米処理装置100では、浸漬タンク10Aが原料米の収容空間から分離されたジャケット11Aに対して、温度調整装置30Aが所定温度に調整された温度調整用流体を供給する。このため、温度調整装置30を電気的に制御して温度調整用流体の温度制御を行うことにより、待機工程を通じた浸漬タンク10Aの温度変動を抑制できる。
【0062】
実施例1の原料米処理装置100では、ジャケット11Aに循環させる温度調整用流体として熱量量が大きい液体である水を使用しているため、浸漬タンク10Aの温度変動を効率的に抑制できる。また、温度調整用流体を化学物質やオイルを含まない水とすることで、万が一、ジャケット11Aが損傷して温度調整用流体が原料米の収容空間へ漏れ出した場合でも、化学物質やオイルによる米製品の汚染を回避できる。また、電気ヒータを利用して浸漬タンク10Aを直接加熱する場合のような電極、電源、室内配線を原料米処理装置100の周囲に設ける必要がなく、これらの電気系統のための漏電防止対策、防爆対策、防水対策が不要である。
【0063】
実施例1の原料米処理装置100では、吸水処理に用いる浸漬水の供給経路とは分離された循環経路を通じて温度調整用流体をジャケット11Aに循環させる。このため、循環経路を循環する温度調整用流体が吸水処理のための浸漬水に混入することを回避できる。
【0064】
実施例1の原料米処理装置100では、温度調整用流体が原料米の取出側に位置する受入口18からジャケット11Aへ流入して、供給手段の一例である配管53A、53B、53Cの接続側に位置する排出口19から回収される。このため、浸漬タンク10Aの高さが大きい場合でも、浸漬タンク10A内の上昇気流に助けられて、浸漬タンク10Aの内壁温度のばらつきが小さくなる。これにより、円錐部13bの高さ方向における原料米の温度のばらつきが抑制され、浸漬タンク10Aから取出されて加熱処理装置70へ供給される原料米の温度が一定に保たれ易い。浸漬タンク10Aの高さ方向の温度のばらつきが小さいため、浸漬タンク10Aの原料米が満杯状態のときでも、残量がごく僅かのときでも、原料米の平均温度が温度調整用流体の温度とほぼ同一に保たれる。
【0065】
実施例1の米処理装置100では、浸漬タンク10Aの円錐部13bは、内側で収容体に接して下部に向かって直径が小さくなる。そして、ジャケット11Aは、円錐部13bの外側に螺旋状に形成されている。このため、浸漬タンク10Aの直径が大きい場合でも、温度調整用流体が円錐部13bの周方向に流れて、円錐部13bの周方向に沿った原料米の温度のばらつきを効率的に抑制できる。
【0066】
実施例1の原料米処理装置100では、温度制御手段の一例である温度制御部33が、循環路38、39を流れる温度調整用流体の温度を保持するように温度調整装置30Aを制御する。このため、温度調整用流体の温度変動、気温の変動、温度調整用流体の流量変動が発生しても、ジャケット11Aの温度の変動が抑制され、待機工程における原料米の温度変化を抑制することができる。
【0067】
実施例1の原料米処理装置100では、熱交換器35は、循環路38を流れる温度調整用流体と循環路38の外側を流れる水蒸気との間で熱交換する。このため、小型の熱交換器35であっても水蒸気の潜熱を利用した温度調整用流体の急速な温度調整が可能である。
【0068】
実施例1の原料米処理装置100では、温度調整装置30A、30B、30Cは、浸漬タンク10A、10B、10Cに対して個別に設けられている。このため、ジャケット11A、11B、11Cの温度差が小さくなり、浸漬タンク10A、10B、10Cの間での原料米の温度のばらつきが小さくなる。
【実施例3】
【0074】
実施の形態1では、原料米のアルファ化処理を行う原料米処理装置の実施の形態を説明した。これに対して実施例3では、必要に応じてバッチ式の炊飯を行う原料米処理装置の実施の形態を説明する。実施例3は、吸水処理された原料米を加熱処理する加熱処理が炊飯である以外は実施例1と同一に構成及び制御されるため、
図9中、実施例1と共通する構成には
図1、
図7と同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0075】
(原料米処理装置)
図9は実施例3の原料米処理装置の構成の説明図である。
図9に示すように、実施例1の原料米処理装置100Bは、1台の浸漬タンク10Aに収容して吸水処理を行った原料米を浸漬タンク10Aに待機させておき、加熱処理装置70A、70Bに対して任意のタイミングで供給可能である。
【0076】
加熱処理装置70A、70Bは、業務用の炊飯器である。加熱処理装置70A、70Bは、浸漬タンク10Aから供給された適量の原料米に適量の水を加えてバッチ式に炊飯を行う。浸漬タンク10Aは、加熱処理装置70Aにおける1回の炊飯量の5〜6倍の原料米を吸水状態で保持して加熱処理を待機させることが可能である。ここでは、加熱処理装置70A、70Bは、炊飯容量が等しいものとしたが、加熱処理装置70A、70Bの炊飯容量は異なっていてもよく、加熱処理装置70A、70Bの毎回の炊飯量を必要に応じて異ならせてもよい。
【0077】
制御部120は、浸漬タンク10Aに洗米処理された原料米を保持させ、浸漬水を注入して吸水処理を行い、その後、排水部16を通じて浸漬水を排水した状態で待機させる。
【0078】
制御部120は、ベルトコンベア71を作動させて、加熱処理装置70A、70Bを浸漬タンク10Aから原料米を供給可能な位置へ移動させる。制御部120は、炊飯スケジュールに従って加熱処理装置70A、70Bを浸漬タンク10Aの直下へ移動させてシャッタ24を作動させることにより、原料米を加熱処理装置70A、70Bに供給する。これにより、原料米処理装置100Bは、加熱処理装置70A、70Bを待ち時間なく自動的に作動させて機動的に炊飯を実行できる。
【0079】
加熱処理装置70A、70Bによる加熱処理の待機処理において、浸漬タンク10Aの温度を所定温度に保持する機構は、実施例1と同一である。
図4に示すように、浸漬タンク10Aにジャケット11Aが形成され、
図6に示すように、ジャケット11A内の温度調整用流体を案内するためのスパイラル状の案内壁17が設けられている。
図7に示すように、温度調整装置30Aにより温度調整され、ポンプ45により駆動された温度調整用流体がジャケット11Aに循環して浸漬タンク10Aの温度が所定温度に保持される。
【0080】
加熱処理装置70A、70Bによる加熱処理の待機処理において、浸漬タンク10Aの温度を所定温度に保持する制御は、実施例1と同一である。
図8に示すように、制御部120は、浸漬タンク10Aで吸水処理が開始されると(S31のYES)、ポンプ45を作動させて温度調整用流体の循環を開始させる(S32)。そして、ボイラ36を作動させるとともに(S33)、温度制御部33による温度制御を開始して(S34)、温度調整用流体の温度調整を開始させる。制御部120は、浸漬タンク10Aの待機処理が終了すると(S35のYES)、温度制御部33による温度制御を停止して温度調整用流体の温度調整を停止させる(S36)。また、ボイラ36を停止させた後に(S37)、ポンプ45を停止させて温度調整用流体の循環を停止させる(S38)。
【0081】
(その他の実施例)
本発明の保温待機装置は、実施例1〜3で説明した具体的な構成、制御には限定されない。実施例1〜3の構成及び制御の一部又は全部を等価な構成に置き換えた別の実施の形態でも実施可能である。本発明の保温待機装置は、吸水処理に続いて加熱処理を行う必要がある原料米以外の穀類又は豆類、例えば酒造工程における麦、醸造工程における大豆、煮豆や甘納豆作りにおける各種豆でも利用可能である。
【0082】
実施例1では、
図8に示すように、吸水工程においてもジャケット11Aに温度調整用流体を循環させて浸漬タンク10Aの温度を所定温度に保持した。ジャケット11Aに室温の水が満たされていると、原料米を浸漬した浸漬水の温度が奪われて浸漬タンク10Aに収容された原料米の位置による温度のばらつきが大きくなるからである。しかし、吸水処理の際にはジャケット11Aの中の水を空気に置換して浸漬タンク10Aの保温性能を高めることで、ジャケット11Aを通じた浸漬水の冷却を回避してもよい。その場合、吸水処理の終了時にジャケット11Aに温度調整用流体を循環させて待機処理を開始してもよい。
【0083】
実施例1では、ジャケット11Aに温度調整用流体を循環させることにより浸漬タンク10Aの温度を一定温度に保持した。しかし、浸漬タンク10Aを温度調整する方法はジャケット11Aと所定温度の温度調整用流体の組み合わせには限らない。ジャケット11Aに循環させる温度調整用流体は、所定温度に温度を調整した空気でもよく、所定温度に温度を調整したオイルでもよい。温度調整用流体の加熱方法は、ジャケット11A又は循環経路に配置した電熱ヒータに置き換えてもよい。あるいは、ジャケット11Aを使用せず、浸漬タンク10Aの周囲に直接帯状の電熱ヒータ(シーズヒータ)を巻いてもよい。
【0084】
実施例1では、1台の加熱処理装置70に対して3台の浸漬タンク10A、10B、10Cから原料米を供給した。また、実施例3では、2台の加熱処理装置70A、70Bに対して1台の浸漬タンク10Aから原料米を供給した。かし、これら以外の台数の浸漬タンクからこれら以外の台数の加熱処理装置へ吸水処理した原料米を供給してもよい。