(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の柱状形成物用樹脂組成物、柱状形成物付基板の製造方法、および柱状形成物付基板の詳細を説明する。
【0023】
A.柱状形成物用樹脂組成物
本発明の柱状形成物用樹脂組成物(以下、樹脂組成物と称して説明する場合がある。)は、基板と、上記基板上に形成され、上記基板および電子素子とした際に用いられる対向基板の間を一定の距離に保持する柱状形成物とを有する柱状形成物付基板において、上記柱状形成物を形成するための柱状形成物用樹脂組成物であって、モノマー(A)と、ポリマー(B)と、光重合開始剤(C)とを含有し、上記モノマー(A)の質量および上記ポリマー(B)の質量の比率が、上記モノマー(A)の質量:上記ポリマー(B)の質量=70:30〜95:5の範囲内であり、上記モノマー(A)としてHLB値が8〜20の範囲内であるモノマーを含有するものである。なお、本発明の樹脂組成物は、通常、ネガ型の感光性樹脂組成物として用いられる。
【0024】
ここで、HLB値(Hydrophile-Lipophile-Balance)とは、親水性−新油性−バランスを指すものであり、化合物の親水性または新油性の大きさを示す値である。HLB値は、その値が小さいほど新油性が高く、値が大きいほど親水性が高くなることを示すものである。
本発明におけるHLB値は、小田法により、下記式(1)を用いて算出される値である。小田法によるHLB値の詳細については、文献「新・界面活性剤入門」(藤本武彦著、三洋化成工業株式会社発行、197頁)に記載されている。
HLB=10×(無機性/有機性)(1)
なお、式(1)中の有機性、無機性とは、分子を構成する原子及び官能基ごとに定められた数値の合計値であり、上記文献中に記載された値を用いることができる。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、柱状形成物付基板の製造方法において柱状形成物を形成する際に用いられるものである。以下、本発明の樹脂組成物を用いた柱状形成物付基板の製造方法について図を用いて説明する。
図1(a)〜(d)は本発明の樹脂組成物を用いた柱状形成物付基板の製造方法の一例について示す工程図である。柱状形成物付基板の製造方法においては、まず
図1(a)に示すように基板2を準備する。基板2には予め透明電極層4が形成されていてもよい。次に、
図1(b)に示すように透明電極層4上に樹脂組成物を塗布して塗膜3’を形成する(塗布工程)。次に、
図1(c)に示すようにフォトマスクMを介して露光光Lを照射することにより、上記塗膜3’を露光する。次に、塗膜3’を現像することにより、
図1(d)に示すように柱状形成物3を形成する(露光現像工程)。以上の工程により、柱状形成物付基板1を製造することができる。
【0026】
次に、本発明の樹脂組成物を用いて形成される柱状形成物付基板について説明する。
図2(a)は柱状形成物付基板の一例を示す概略断面図であり、
図2(b)は
図2(a)の柱状形成物の拡大図であり、
図2(c)は
図2(b)のA−A線で示される部分の図形、B−B線で示される部分の図形、およびC−C線で示される部分の図形である。また、
図3は本発明における柱状形成物の一例を示す概略斜視図である。
図2(a)〜(c)に示すように、本発明の柱状形成物付基板1は、基板2と、基板2上に形成され、基板2および電子素子とした際に用いられる対向基板との間を一定の距離に保持する柱状形成物3とを有する。
図2(b)、(c)、および
図3に示すように、柱状形成物3としては、上底3aの面積および下底3bの面積が同等であり、上底3aおよび下底3bの間に基板2に対する水平方向の断面積が最大となる最大面積部3cを有する形状であることが好ましい。
図2(a)、(b)および
図3においては、柱状形成物付基板1が液晶レンズに用いられるものである例について示しており、基板2上に連続的に形成された透明電極層4を有し、透明電極層4上に柱状形成物3が形成されている例について示している。
【0027】
本発明の柱状形成物付基板は、電子素子に用いられるものである。本発明の柱状形成物付基板を用いた電子素子について図を用いて説明する。
図4は本発明の柱状形成物付基板を用いた電子素子の一例を示す概略断面図であり、電子素子が液晶レンズである例について示している。液晶レンズ30は、基板2と、対向基板12と、基板2および対向基板12の間に形成された液晶層20と、基板2上に形成され、基板2および対向基板12の間を一定の距離に保持する柱状形成物3と、基板2および対向基板12の間に形成され、液晶層20を封止するシール層21とを有するものである。また、
図4においては、基板2上の全面に透明電極層4が形成されており、対向基板12上に長尺の透明電極層14がストライプ状に配列されて形成されている例について示している。
【0028】
本発明によれば、上記モノマー(A)のHLB値が所定の範囲内であることにより、固形分濃度が高く、塗布性、現像性が良好な樹脂組成物とすることができる。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、従来の樹脂組成物に比べてP/M比が高いものである。
本発明において、モノマー(A)のHLB値を所定の範囲内とすることにより、P/M比を高くした場合も、樹脂組成物の現像性を良好なものとすることができる理由については明らかではないが以下のように推量される。
すなわち、樹脂組成物の現像液としては、通常、アルカリ水溶液等が用いられる。樹脂組成物中のポリマーはアルカリ水溶液に対して可溶性を示すものである。また、モノマー(A)についてもHLB値を所定の範囲内とすることにより、親水性を示すようになり、水との親和性が高くなることから、水を含むアルカリ水溶液に対して溶解するようになると推量される。
【0030】
また、P/M比が高く、かつモノマーのHLB値が小さい樹脂組成物を用いて基板上に塗膜を形成し、露光した後、現像した場合、未露光部分の樹脂組成物のモノマーが基板上に残存やすくなるため、上記未露光部分のモノマーを除去するためには現像時間を多く必要とする。しかしながら、塗膜の厚みが厚い場合、露光部分における基板近傍の塗膜については露光による硬化反応が十分に進行していない場合があり、現像時間が長くなるほど現像液に曝される時間が長くなり、基板表面から剥がれやすくなる可能性がある。
これに対して、本発明によれば、樹脂組成物の現像性が良好であることから、未露光部分の塗膜を除去しやすく、露光部分の塗膜への現像液の影響を少なくすることができ、良好な形状を有する柱状形成物を形成することが可能となる。
【0031】
以下、本発明の樹脂組成物における各成分について説明する。
【0032】
1.モノマー(A)
本発明におけるモノマー(A)は、HLB値が8〜20の範囲内であり、好ましくは8.5〜19の範囲内、さらに好ましくは9〜18の範囲内であるものである。
【0033】
モノマー(A)のHLB値は、例えば、分子中に親水性を示す置換基を導入することにより、調整することができる。
親水性を示す置換基としては、水酸基、カルボキシル基およびオキシアルキレン鎖が挙げられ、特にオキシアルキレン鎖が好ましい。オキシアルキレン鎖としては、オキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖等が挙げられる。
【0034】
また、モノマー(A)は、露光光の照射によりモノマー(A)同士が架橋して硬化性を示すものである。モノマー(A)としては、露光時の反応性の観点から、多官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能(メタ)アクリレートとしては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであれば、とくに限定されずに用いられる。
(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの少なくともいずれかを表わす。また、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基の少なくともいずれかを表わす。
【0035】
モノマー(A)に用いられる多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、2官能以上の(メタ)アクリレートを挙げることができる。より具体的には、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、4官能〜6官能(メタ)アクリレート、7官能〜10官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0036】
より具体的には、本発明におけるモノマー(A)としては、下記一般式(1)、一般式(2)に示される化合物を用いることができる。
【0038】
(一般式(1)中、Xはメチル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基を有する有機基および(メタ)アクリロイル基を表し、R
1およびR
2は水素原子またはメチル基を表す。a、b、cはそれぞれ独立に0〜15の整数であり、a+b+cは0〜30である。)
【0040】
(一般式(2)中、Xはメチル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基を有する有機基および(メタ)アクリロイル基を表し、R
3およびR
4は水素原子またはメチル基を表す。d〜hはそれぞれ独立に0〜10の整数であり、d+e+f+g+hは0〜30である。)
【0041】
より具体的なモノマー(A)としては、水酸基含有モノマー(A1)、カルボキシル基含有モノマー(A2)およびオキシアルキレン鎖含有モノマー(A3)が挙げられる。
水酸基含有モノマー(A1)としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート(HLB値:11.0)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(HLB値:9.4)等が挙げられる。
カルボキシル基含有モノマー(A2)としては、例えば、アロニックスM−510、アロニックスM−520(ともに東亞合成(株)社製)等が挙げられる。
オキシアルキレン鎖含有モノマー(A3)としては、例えば、2価〜6価のポリオールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加し、さらに(メタ)アクリル酸をエステル化反応して合成したものが挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドであることが好ましく、エチレンオキサイドであることがより好ましい。
【0042】
具体的なオキシアルキレン鎖含有モノマー(A3)としては、トリメチロールプロパンの2.6モルエチレンオキシド付加物のトリアクリレート(HLB値:9.9)、トリメチロールプロパンの3モルエチレンオキサイド付加物のトリアクリレート(HLB値:10.3)、ペンタエリスリトールの4モルエチレンオキシド付加物テトラアクリレート(HLB値:11.4)、トリメチロールプロパンの6モルエチレンオキサイド付加物のトリアクリレート(HLB値:12.2)、トリメチロールプロパンの15モルエチレンオキサイド付加物のトリアクリレート(HLB値:14.9)、トリメチロールプロパンの20モルエチレンオキシド付加物のトリアクリレート(HLB値:15.6)、グリセリンの9モルエチレンオキサイド付加物のトリアクリレート(HLB値:14.6)、ペンタエリスリトールの4モルエチレンオキサイド付加物テトラアクリレート(HLB値:11.4)、ジペンタエリスリトールの3モルエチレンオキサイド付加物のヘキサアクリレート(HLB値:9.6)等が挙げられる。
【0043】
モノマー(A)のうち、現像性および塗工性の観点から好ましくはオキシアルキレン鎖含有モノマー(A3)であり、さらに好ましくはトリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物のトリアクリレートおよびペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物テトラアクリレートである。
【0044】
なお、モノマー(A)は少なくとも1種類含有していれば良い。また、モノマー(A)は、HLBが8.0未満の多官能(メタ)アクリレートと併用しても良い。
【0045】
モノマー(A)の含有量としては、所望の柱状形成物を形成することができれば特に限定されないが、具体的には、樹脂組成物の固形成分に対して、60質量%〜95質量%の範囲内、なかでも65質量%〜93質量%の範囲内、特に70質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましい。
モノマー(A)の含有量が少なすぎると、本発明の樹脂組成物を用いて柱状形成物を形成することが困難となる可能性があるからである。また、モノマー(A)の含有量が多すぎると、相対的にポリマー(B)の含有量が少なくなりすぎるため、現像性を確保することが困難となる可能性があるからである。
なお、本発明において、「樹脂組成物の固形成分」とは、樹脂組成物が後述する溶剤を含有する場合、溶剤を除いた樹脂組成物の成分をいう。
【0046】
2.ポリマー(B)
本発明におけるポリマー(B)は、通常、分子内にラジカル重合性基を有する。ラジカル重合性基としては、光硬化性の観点から、(メタ)アクリロイル基、ビニル基およびアリル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基であることがより好ましい。
また、本発明のポリマー(B)は親水性であることが好ましく、ポリマーが分子内に含有する親水性に寄与する官能基は、アルカリ現像性の観点から、カルボキシル基、エポキシ基、スルホン酸基、リン酸基が好ましく、カルボキシル基がより好ましい。
【0047】
本発明のポリマー(B)は上記の観点から、(メタ)アクリロイル基およびカルボキシル基を有するポリマーが特に好ましい。
【0048】
本発明のポリマー(B)としては、例えば、親水性エポキシ樹脂(B1)、親水性アクリル樹脂(B2)などが挙げられる。
親水性エポキシ樹脂(B1)としては、市販品のエポキシ樹脂にラジカル重合性基を有する化合物を反応させ、さらにカルボキシル基などの親水性の官能基を有する化合物を反応することによって合成することができる。
例えば、分子中にエポキシ基を有するノボラック型のエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、さらにフタル酸や無水フタル酸などの多価カルボン酸や多価カルボン酸無水物を反応させて製造する方法が挙げられる。
【0049】
また、親水性アクリル樹脂(B2)としては、既存の方法により(メタ)アクリル酸誘導体を重合させ、さらにラジカル重合性基を有する化合物を反応することで得ることができる。
【0050】
ここで用いられる(メタ)アクリル酸誘導体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、sec−ブチルアクリレート、sec−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ペンチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−デシルアクリレート、n−デシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、グリシジル(メタ)アクリレートの1種以上と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の2量体、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、ならびにこれらの酸無水物等の一種以上とからなるポリマーまたはコポリマー、またはクレゾールノボラック樹脂の(メタ)アクリル酸変性物に無水酸(例えば無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸等)を付加反応させたもの等が挙げられる。
【0051】
親水性(メタ)アクリル樹脂(B2)は、さらにフォトスペーサーの弾性回復特性を向上させる目的で必要により(メタ)アクリロイル基を側鎖または末端に導入させることが好ましい。
【0052】
側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入する方法としては、例えば下記の(1)及び(2)の方法が挙げられる。
【0053】
(1)(メタ)アクリル酸(b21)または(メタ)アクリル酸エステル(b22)のうちの少なくとも一部にイソシアネート基と反応しうる基(水酸基または1級もしくは2級アミノ基など)を有するモノマーを使用して重合体を製造し、その後(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基を有する化合物[(メタ)アクリロイロキシエチルイソシアネート等]を反応させる方法。
【0054】
(2)(b21)または(b22)のうちの少なくとも一部にエポキシ基と反応しうる官能基(水酸基、カルボキシル基又は1級もしくは2級アミノ基など)を有するモノマーを使用して重合体を製造し、その後(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物(グリシジル(メタ)アクリレート等)を反応させる方法。
【0055】
本発明においては、上述したポリマー(B)のなかでも、現像性および硬化性の観点から、好ましくは(メタ)アクリロイル基およびカルボキシル基を含有するアクリル樹脂、(メタ)アクリロイル基およびカルボキシル基を含有するエポキシ樹脂が挙げられ、特に好ましくは(メタ)アクリロイル基およびカルボキシル基を含有するエポキシ樹脂が挙げられる。
【0056】
ポリマー(B)の含有量としては、所望の柱状形成物を形成することができれば特に限定されないが、具体的には、樹脂組成物の固形成分に対して、5質量%〜40質量%の範囲内、なかでも7質量%〜35質量%の範囲内、特に10質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましい。ポリマー(B)の含有量が少なすぎると、樹脂組成物の現像性を確保することが困難となる可能性があるからである。また、ポリマー(B)の含有量が多すぎると、樹脂組成物の粘度が高くなり、塗膜の厚みを確保して塗布することが困難となる可能性があるからである。
【0057】
3.光重合開始剤(C)
本発明に用いられる光重合開始剤(C)としては、例えば、紫外線のエネルギーによりフリーラジカルを発生する化合物であって、オキシムエステル系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、ベンゾイン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物、ケタール系化合物、アゾ系化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルジオン系化合物、ジスルフィド系化合物、チウラム化合物類、フルオロアミン系化合物などが挙げられる。これらは1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0058】
光重合開始剤(C)として、具体的には、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン(4,4'−ビスジメチルアミノベンゾフェノン)、4,4'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4'−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンなどの芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルなどのベンゾインエーテル類、メチルベンゾイン、エチルベンゾインなどのベンゾイン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メチルフェニル)イミダゾール2量体、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1,3−ブタジエニル)−S−トリアジン、2−トリクロロメチル−4−アミノ−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−ブトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパノン、1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノベンゾエート、P−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−n−ブチキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−クロロチオキサントン、2,4ジエチルチオキサントン、2,4ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどの光重合開始剤が挙げられる。
【0059】
光重合開始剤(C)の商品名としては、イルガキュア369(チバ・スペシャルティケミカルズ社製)、イルガキュア819(チバ・スペシャルティケミカルズ社製)、イルガキュア907(チバ・スペシャルティケミカルズ社製)、イルガキュアOXE02(チバ・スペシャルティケミカルズ社製)、NCI831(アデカ社製)等が挙げられる。本発明では、これらの光重合開始剤を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
露光時の硬化性の観点から、好ましくはイルガキュア369、およびイルガキュアOXE02、イルガキュア819、イルガキュア907、およびイルガキュアOXE02の組合せが挙げられる。
【0060】
光重合開始剤(C)の含有量としては、柱状形成物を形成することができれば特に限定されないが、具体的には、樹脂組成物の固形成分に対して、0.5質量%〜12.0質量%の範囲内、なかでも1.0質量%〜11.0質量%の範囲内、特に1.5質量%〜10.0質量%の範囲内であることが好ましい。
光重合開始剤(C)の量が少なすぎると塗膜の硬化不足が起こる可能性があり、光重合開始剤(C)の量が多すぎると塗膜表面付近の感度が上がることで所定の大きさより大きな柱状形成物となってしまう可能性があるからである。
【0061】
4.溶剤
樹脂組成物は、通常、さらに溶剤を含有する。溶剤としては、一般的な樹脂組成物に用いられるものと同様とすることができ、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−もしくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、および3−メトキシブチルアセテート等の酢酸エステル類等が挙げられる。
【0062】
5.その他の成分
樹脂組成物は、上述したモノマー(A)、ポリマー(B)、光重合開始剤(C)、および溶剤以外にも、必要なその他の成分を適宜選択して追加することができる。
その他の成分としては、例えば、単官能(メタ)アクリレート、レベリング剤、架橋剤、硬化剤、重合促進剤、粘度調整剤等を挙げることができる。これらの添加剤については公知のものを用いることができる。
【0063】
6.樹脂組成物
樹脂組成物中に含有される上記モノマー(A)の質量および上記ポリマー(B)の質量の比率としては、所望の柱状形成物を形成することができれば特に限定されないが、モノマー(A)の質量:ポリマー(B)の質量=70:30〜95:5の範囲内、なかでも73:27〜87:13の範囲内、特に75:25〜85:15の範囲内であることが好ましい。
上記比率よりもモノマー(A)の質量の比率が小さすぎる場合または大きすぎる場合は、柱状形成物自体を形成することが困難となる可能性があるからである。
【0064】
樹脂組成物の固形分濃度としては、所望の柱状形成物を形成することが可能な程度であれば特に限定されないが、20質量%以上、なかでも30質量%〜80質量%の範囲内、特に50質量%〜75質量%の範囲内であることが好ましい。
固形分濃度が低すぎる場合は、塗膜の厚みを十分に厚くすることが困難となる可能性があるからである。
なお、「樹脂組成物の固形分濃度」とは、樹脂組成物が上述の溶剤を含む場合、溶剤を含む樹脂組成物の質量に対する固形成分の質量の比率をいう。
【0065】
樹脂組成物の粘度としては、基板上に樹脂組成物を所望の厚みで塗布することができれば特に限定されないが、25℃において、5mPa・s〜100mPa・sの範囲内、なかでも10mPa・s〜80mPa・sの範囲内、特に15mPa・s〜70mPa・sの範囲内の範囲内であることが好ましい。
樹脂組成物の粘度が高すぎる場合、または樹脂組成物の粘度が低すぎる場合、基板上に樹脂組成物を塗布すること自体が困難となる可能性や、良好な塗膜を得ることが困難となる可能性があるからである。
なお、粘度の測定方法については、粘度を精度良く測定できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、レオメーター、B型粘度計、キャピラリー式粘度計等の粘度測定装置を用いる方法が挙げられる。また、粘度の測定方法としては、デジタル粘度計(英弘精機株式会社 DV-E)を用いることができる。
【0066】
樹脂組成物は、通常、透明性を示すものである。
【0067】
7.用途
本発明の樹脂組成物は、柱状形成物付基板の製造方法における柱状形成物の形成に用いることができる。具体的な柱状形成物の形成方法については、後述する「B.柱状形成物付基板の製造方法」の項で説明するため、ここでの説明は省略する。
【0068】
B.柱状形成物付基板の製造方法
本発明の柱状形成物付基板の製造方法は、基板上に樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する塗布工程と、上記塗膜を露光した後、現像することにより柱状形成物を形成する露光現像工程とを有する柱状形成物付基板の製造方法であって、上記樹脂組成物が、モノマー(A)と、ポリマー(B)と、光重合開始剤(C)とを含有し、上記モノマー(A)の質量および上記ポリマーの質量の比率が、上記モノマー(A)の質量:上記ポリマー(B)の質量=70:30〜95:5の範囲内であり、上記モノマー(A)としてHLB値が8〜20の範囲内であるモノマーを含有することを特徴とする製造方法である。
【0069】
本発明の柱状形成物付基板の製造方法について図を用いて説明する。
図1(a)〜(d)は、本発明の柱状形成物付基板の製造方法の一例を示す工程図である。なお、
図1(a)〜(d)については上述した「A.柱状形成物用樹脂組成物」の項で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0070】
本発明によれば、上述した樹脂組成物を用いることにより、塗布工程において厚みの厚い塗膜を良好に形成することができる。また、上記樹脂組成物を用いることにより、現像の際に上記塗膜の不要部分を現像液に溶解しやすくすることができるから、現像時間を短くすることができ、良好な形状を有する柱状形成物を形成することができる。
以下、本発明の柱状形成物付基板の製造方法の各工程を説明する。
【0071】
1.塗布工程
本発明における塗布工程は、基板上に樹脂組成物を塗布して塗膜を形成する工程である。
【0072】
(1)基板
本発明に用いられる基板としては、電子素子の用途に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。また、上記基板としては、透明性を有していてもよく、透明性を有していなくてもよい。
【0073】
上記基板が透明性を有する場合、基板の透明性については特に限定されないが、例えば、全光透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、基板の全光透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0074】
基板としては、例えば、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のないリジッド材、あるいは、樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有するフレキシブル材等を用いることができる。
【0075】
基板の厚みとしては、柱状形成物を形成することができれば特に限定されないが、例えば、0.05mm〜0.85mmの範囲内であることが好ましい。
【0076】
基板には、一方の表面上に透明電極層が形成されていてもよい。本発明においては、透明電極層は、樹脂組成物の塗布前に、基板上に形成してもよく、予め透明電極層が形成された市販の基板を用いてもよい。
【0077】
(2)塗布方法
本工程において形成される塗膜の厚みとしては、柱状形成物を形成することができる厚みであれば特に限定されないが、27μm以上、なかでも30μm〜110μmの範囲内、特に37μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
塗膜の厚みが低すぎる場合または高すぎる場合は、柱状形成物を所定の形状に形成しにくくなる可能性があるからである。
【0078】
樹脂組成物の塗布方法としては、一般的な塗布方法とすることができ、例えばスピンコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、ビードコート法、バーコート等を挙げることができる。
本発明においては、なかでも、樹脂組成物の塗布方法としてはダイコート法であることが好ましい。ダイコート法は、ノズルから樹脂組成物を吐出して塗布を行う方法であることから、樹脂組成物の粘度が塗布性に大きく影響するため、上記樹脂組成物を用いることの作用効果を高く発揮することができるからである。
【0079】
本工程においては、塗膜の形成後に、乾燥処理を行うことが好ましい。乾燥処理については、一般的な樹脂層の形成方法において用いられる処理と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。また、乾燥処理は、例えば減圧下で行なってもよい。
【0080】
2.露光現像工程
本発明における露光現像工程は、上記塗膜を露光した後、現像することにより柱状形成物を形成する工程である。
【0081】
本工程において用いられる露光光は、上記塗膜を露光して所望の柱状形成物を形成することができれば特に限定されず、公知の露光装置における光源を用いて照射することができる。
本工程に用いられる露光方法としては、一般的なフォトリソグラフィ法に用いられるものと同様とすることができ、具体的には、公知の露光装置を用いて、フォトマスクを介して塗膜に露光光を照射する方法を挙げることができる。フォトマスクについては、柱状形成物を形成することができれば特に限定されず、一般的なフォトマスクと同様とすることができる。
【0082】
本工程においては、塗膜の露光後に、塗膜が現像される。
塗膜の現像液としては、所定のパターン状に塗膜を現像することができれば特に限定されず、例えば、アルカリ水溶液(KOHやK
2CO
3)が挙げられる。
【0083】
本工程においては、必要に応じて、現像後に、柱状形成物を焼成する焼成処理を行ってもよい。焼成処理については、一般的な樹脂層の形成方法において用いられる方法と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0084】
3.その他の工程
本発明の柱状形成物付基板の製造方法においては、上述した塗布工程および露光現像工程を有していれば特に限定されず、必要に応じて他の工程を適宜選択して追加することができる。例えば、柱状形成物付基板が液晶レンズに用いられる場合は、基板上に透明電極層、遮光部、配向膜等を形成する構成を有していてもよい。
【0085】
4.柱状形成物付基板
本発明により製造される柱状形成物付基板は、基板と、柱状形成物とを有するものである。本発明により製造される柱状形成物付基板の詳細については、後述する「C.柱状形成物付基板」の項で説明する内容と同等とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0086】
C.柱状形成物付基板
本発明の柱状形成物付基板は、基板と、上記基板上に形成され、上記基板および電子素子とした際に用いられる対向基板の間を一定の距離に保持する柱状形成物とを有する柱状形成物付基板であって、上記柱状形成物が、モノマー(A)と、ポリマー(B)と、光重合開始剤とを含有し、上記モノマー(A)の質量および上記ポリマー(B)の質量の比率が、上記モノマー(A)の質量:上記ポリマー(B)の質量=70:30〜95:5の範囲内であり、上記モノマー(A)としてHLB値が8〜20の範囲内であるモノマーを含有する樹脂組成物を硬化させたものであることを特徴とするものである。
【0087】
本発明の柱状形成物付基板について図を用いて説明する。
次に、本発明の樹脂組成物を用いて形成される柱状形成物付基板について説明する。
図2(a)は本発明の柱状形成物付基板の一例を示す概略断面図であり、
図2(b)は
図2(a)の本発明における柱状形成物の拡大図であり、
図2(c)は
図2(b)のA−A線で示される部分の図形、B−B線で示される部分の図形、およびC−C線で示される部分の図形である。なお、
図2(a)〜
図2(c)については、上述した「A.柱状形成物用樹脂組成物」の項で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0088】
本発明によれば、上記柱状形成物が上記樹脂組成物を硬化させたものであることにより、従来の柱状形成物に比べて高さが高く、柱状形成物の下底の大きさに対する高さの比率(以下、アスペクト比と称して説明する場合がある。)の高い柱状形成物を有する柱状形成物付基板とすることができる。
以下、本発明の柱状形成物付基板の各構成について説明する。
【0089】
1.柱状形成物
本発明における柱状形成物は、基板上に形成されるものであり、上記基板および電子素子とした際に用いられる対向基板との間を一定の距離に保持するものである。
また、柱状形成物は、上述した「A.柱状形成物用樹脂組成物」の項で説明した樹脂組成物を硬化させたものである。樹脂組成物、および柱状形成物の形成方法については既に説明したため、ここでの説明は省略する。
【0090】
本発明における柱状形成物は、上述の樹脂組成物の硬化物であることにより、従来の柱状形成物に比べて高さが高く、アスペクト比の高い形状とすることができる。
なお、「柱状形成物の下底」とは、柱状形成物の基板側の面をいう。また、「柱状形成物の上底」とは、柱状形成物の基板側とは反対側の面をいう。
【0091】
柱状形成物の高さとしては、電子素子の用途に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、25μm以上、なかでも30μm〜110μmの範囲内、特に37μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
柱状形成物の高さが低すぎる場合または高すぎる場合は、柱状形成物を所定の形状に形成しにくくなる可能性があるからである。
【0092】
具体的な下底の大きさとしては、柱状形成物付基板が用いられる電子素子の用途に応じて適宜選択され、特に限定されないが、例えば、20μm〜50μmの範囲内、なかでも25μm〜47μmの範囲内、特に30μm〜45μmの範囲内であることが好ましい。
下底の大きさが小さいと柱状形成物の強度が低下する可能性や、柱状形成物自体を形成することが困難となる可能性があるからであり、下底の大きさが大きいと、電子素子自体や電子素子の他の構成の機能を阻害する可能性があるからである。例えば、電子素子が液晶レンズである場合は、上記柱状形成物の下底が大きいと、上記観察者から柱状形成物が視認されやすくなるため、液晶レンズを用いた表示装置において良好な表示をすることが困難となる可能性があるからである。
なお、下底の大きさについては、後述する下底の面積の項で説明する図形の大きさをいい、例えば、上記図形が円形状の場合は直径をいい、上記図形が長辺および短辺を有する場合は短辺をいう。
【0093】
また、柱状形成物のアスペクト比としては、柱状形成物付基板が用いられる電子素子の種類に応じて適宜選択することができ特に限定されないが、1.3〜2.3の範囲内、なかでも1.5〜2.2の範囲内、特に1.7〜2.1の範囲内であることが好ましい。
上記アスペクト比が上述した範囲に満たない場合は、柱状形成物を用いて基板および対向基板の間の距離を良好に保持することが困難となる可能性があるからである。また、柱状形成物を液晶レンズに用いた場合、上記液晶レンズを用いた表示装置において良好な表示をすることが困難となる可能性があるからである。また、上記アスペクト比が上述した範囲を超える場合は、柱状形成物自体を形成することが困難となる可能性があるからである。
【0094】
本発明における柱状形成物としては、上底の面積および下底の面積が同等であり、上記上底および上記下底の間に上記基板に対する水平方向の断面積が最大となる最大面積部を有する形状であることが好ましい。
上記柱状形成物の塑性変形を抑制することができ、電子素子とした際に上記基板および対向基板の間を一定の距離に良好に保持することが可能な柱状形成物を有する柱状形成物付基板とすることができるからである。
【0095】
本発明において、「上底の面積および下底の面積が同等である」とは、上底の面積と下底の面積との面積の差の絶対値が、柱状形成物の底面の面積の差により生じる塑性変形を抑制することができる程度であることをいう。具体的には、上底の面積と下底の面積との面積の差の絶対値が、上底および下底の平面視形状が円形状であると仮定した場合の上底の直径と下底の直径との差の絶対値として、5μm以下であることをいう。
本発明においては、上述した上底の直径と下底の直径との差の絶対値が、なかでも4μm以下であることが好ましく、特に3μm以下であることが特に好ましい。
上述した上底の直径と下底の直径との差の絶対値が小さいほど、底面の面積の差により生じる塑性変形を抑制することができるからである。
【0096】
また、本発明における柱状形成物の形状は、上記上底および上記下底の間に上記基板に対する水平方向の断面積が最大となる最大面積部を有する形状である。
最大面積部の上記断面積と、上底および下底のうち面積の大きい底面の面積との差としては、電子素子の用途に応じて適宜決定されるものであるが、通常、上底、下底および最大面積部の平面視形状が円形状であると仮定した場合の最大面積部の直径と上底および下底のうち大きい直径との差が2μm以上である。
本発明においては、上記大面積部の直径と上底および下底のうち大きい直径との差が、なかでも2μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、特に2μm〜8μmの範囲内であることが好ましい。
上記直径の差が小さいと柱状形成物の塑性変形を十分に抑制することが困難となる可能性があるからである。また、上記直径の差が大きいと、柱状形成物を形成することが困難となる可能性や、柱状形成物自体が大きくなり、電子素子の機能を阻害する可能性があるからである。
【0097】
柱状形成物の上底の面積および下底の面積としては、電子素子の用途に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、150μm
2〜2850μm
2の範囲内、なかでも250μm
2〜2300μm
2の範囲内、特に300μm
2〜2000μm
2の範囲内であることが好ましい。
柱状形成物の上底の面積および下底の面積が大きすぎると、柱状形成物自体が大きくなり電子素子の機能を阻害する可能性があるからであり、柱状形成物の上底の面積および下底の面積が小さすぎると、柱状形成物を形成することが困難となる可能性があるからである。
【0098】
柱状形成物の最大面積部の上記断面積としては、電子素子の用途に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、3000μm
2以下、なかでも255μm
2〜2400μm
2の範囲内、特に350μm
2〜2100μm
2の範囲内であることが好ましい。
柱状形成物の最大面積部の上記断面積が大きすぎると、柱状形成物自体が大きくなり電子素子の機能を阻害する可能性があるからであり、柱状形成物の最大面積部の上記断面積が小さすぎると、柱状形成物を形成することが困難となる可能性があるからである。
【0099】
また、柱状形成物の最大面積部は上底および下底の間に設けられるものである。柱状形成物における最大面積部の形成位置(高さ)としては、柱状形成物の高さに対して、通常、25%〜75%の範囲内であり、なかでも30%〜70%の範囲内が好ましく、特に35%〜65%の範囲内が好ましい。
最大面積部の形成位置の柱状形成物の高さに対する比率が大きすぎる場合、または小さすぎる場合は、最大面積部から遠い距離に位置する底面側で柱状形成物の塑性変形が生じやすくなる可能性があるからである。
【0100】
柱状形成物の平面視形状としては、電子素子に応じて適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、円形状、楕円形状、正方形状、長方形状等を挙げることができる。
【0101】
上述した上底、下底、最大面積部の各面積、柱状形成物の高さ、最大面積部の形成位置については、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて柱状形成物を平面視上から観察した観察像、および柱状形成物を側面から観察した観察像を計測することにより求めることができる。走査型電子顕微鏡(SEM)は公知のものを用いることができる。
【0102】
本発明において、「上底の面積」は、柱状形成物の最上部における基板と水平方向の面と、柱状形成物の最大面積部より上底側の側面を延長させた面とが交差して形成される図形の面積をいう。「上底の面積」は、例えば、
図2(c)においてAで示される図形の面積をいう。
また、「下底の面積」は、柱状形成物が形成された基板表面と、柱状形成物の最大面積部より下底側の側面を延長させた面とが交差して形成される図形の面積をいう。また、柱状形成物が他の層を介して基板上に形成されている場合は、「下底の面積」は、他の層の表面と、柱状形成物の最大面積部より下底側の側面を延長させた面とが交差して形成される図形の面積をいう。「下底の面積」は、例えば、
図2(c)においてBで示される図形の面積をいう。
また、「最大面積部の基板に対する水平方向の断面積」は、柱状形成物の基板に対する水平方向の断面積の最大値をいう。「最大面積部の基板に対する水平方向の断面積」は、例えば、
図2(c)においてCで示される図形の面積をいう。
また、柱状形成物の高さは、上底から下底までの垂直方向の距離をいい、具体的に、柱状形成物の高さは、
図2(b)においてx1で示される距離をいう。
最大面積部の形成位置は、最大面積部から下底までの垂直方向の距離をいい、具体的に、最大面積部の形成位置としては、
図2(b)においてx2で示される距離をいう。
【0103】
本発明における柱状形成物は、本発明の柱状形成物付基板を電子素子とした場合に、基板および対向基板の間を一定の距離に保持するために用いられる。
柱状形成物としては、種々の電子素子に応じて適宜選択することができ、例えば、液晶レンズとした際にセルギャップを保持するための柱状形成物、プリンタ配線基板とした際に基板間の距離を一定に保持するための部材、半導体積層基板において基板間の距離を一定に保持するための部材、インクジェットプリンタとした際にマイクロ流路を形成するための部材、プラズマディスプレイとした際のリブ材、有機エレクトロルミネッセンス素子とした際のカソードセパレータを挙げることができる。
柱状形成物としては、なかでも、液晶レンズの柱状形成物であることが好ましい。
【0104】
2.基板
基板は、上記柱状形成物を支持するものである。基板については、上述した「B.柱状形成物付基板」の項で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0105】
3.その他の構成
本発明の柱状形成物付基板は、上述した基板および柱状形成物を有していれば特に限定されず、必要な構成を適宜選択して追加することができる。
【0106】
例えば、柱状形成物が液晶レンズに用いられる場合は、
図2(a)、
図5および
図6に示すように基板2上に形成された透明電極層4、14を有していてもよい。
図2(a)、
図5に示すように、透明電極層4は基板2上の全面に形成されていてもよく、
図6に示すように長尺の透明電極層14がストライプ状に配列されて基板2上に形成されていてもよい。
また、
図7に示すように、基板2上に形成された配向膜5を有していてもよい。基板2上に形成された遮光部6を有していてもよい。
【0107】
なお、透明電極層、配向膜、遮光部等については、液晶レンズに用いられるものとして公知のものを使用することができるため、ここでの説明は省略する。
【0108】
4.用途
本発明の柱状形成物付基板は、種々の電子素子に用いることができ、例えば、液晶レンズ、プリンタ配線基板、半導体積層基板、インクジェットプリンタ、プラズマディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス素子等に用いることができる。
柱状形成物付基板としては、なかでも、液晶レンズに用いられるものであることが好ましい。
【0109】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0110】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は質量%、部は質量部を示す。
【0111】
[感光性樹脂組成物の調製]
以下の手順により実施例1〜5および比較例1〜3の感光性樹脂組成物を得た。
加熱冷却・撹拌装置、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えたガラス製フラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂「EOCN−102S」(日本化薬(株)製エポキシ当量200)200部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145部を仕込み、90℃まで加熱して均一に溶解させた。続いて、アクリル酸76部、トリフェニルホスフィン2部及びp−メトキシフェノール0.2部を仕込み、90℃にて10時間反応させた。
この反応物にさらにテトラヒドロ無水フタル酸91部を仕込み、さらに90℃にて5時間反応させてアクリル変性親水性エポキシ樹脂(表1中、B−1)を得た。
その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで上記アクリル変性親水性エポキシ樹脂の含有量が50%になるように希釈し、上記アクリル変性親水性エポキシ樹脂(B−1)の50%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た。
上記アクリル変性親水性エポキシ樹脂の固形分換算した酸価は88.4であった。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による数平均分子量(Mn)は2,200であった。なお、SP値は11.3、HLB値は9.8であった。
GPCによるMnの測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー装置(装置名:HLC−8120GPC、東ソー(株)製))を用い、カラム(カラムの種類:TSKgel GMHXL2本+TSKgel Multipore HXL−M、東ソー(株)製)を用い、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、温度40℃で、TSK標準ポリスチレン(東ソー(株)製)を基準物質として測定を行なって求めた。
また、本発明におけるSP値は、Fedorsらが提案した下記の文献に記載の方法によって計算されるものである。
「POLYMER ENFINEERING AND SCIENCE,February,1974,Vol.14,No.2,Robert F. Fedors(147〜154頁)」
SP値が近いもの同士はお互いに混ざりやすく(分散性が高い)、この数値が離れているものは混ざりにくい。
なお、後述する表1のポリマー(B)の数値はアクリル変性親水性エポキシ樹脂(B−1)のみの質量部を示している。
【0112】
表1の配合部数に従い、各原料を仕込み、均一になるまで攪拌し、実施例1〜5および比較例1〜3の感光性樹脂組成物を得た。
【0113】
【表1】
【0114】
なお、表1中の略称の化学品の詳細は以下の通りである。
(A−1):ペンタエリスリトールの4モルエチレンオキシド付加物テトラアクリレート(サートマー社製「SR494」)(HLB値:11.4)
(A−2):トリメチロールプロパンの2.6モルエチレンオキシド付加物のトリアクリレート(三洋化成工業社製「ネオマーTA−401」)(HLB値:9.9)
(A−3):トリメチロールプロパンの20モルエチレンオキシド付加物のトリアクリレート(サートマー社製「SR415」)(HLB値:15.6)
(A−4):ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学社製「ライトアクリレート PE−3A」)(HLB値:11.0)
(A’−1):ペンタエリスリトールテトラアクリレート(三洋化成工業社製「ネオマーEA−300」)(HLB値:7.8)
【0115】
(B−1):上記アクリル変性親水性エポキシ樹脂
【0116】
(C−1):(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製「イルガキュア819」)
(C−2):(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン(BASF社製「イルガキュア907」)
(C−3):〔エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(BASF社製「イルガキュアOXE02」)
【0117】
(D−1):3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製「KBM−5103」)
(D−2):メタクリル変性リン酸エステル(日本化薬社製「PM−21」)
(D−3):ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(界面活性剤)(信越化学社製「KF−352A」)
(D−4):ポリエーテル変性フッ素化合物(界面活性剤)(DIC社製「メガファックTF−2066」)
【0118】
(E−1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(E−2)ジエチレングリコールジメチルエーテル
【0119】
[評価]
得られた実施例1〜5および比較例1〜3の感光性樹脂組成物について、以下の性能評価を行なった。
【0120】
[現像性の評価]
10cm×10cm四方のガラス基板上にスピンコーターにより感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥し、乾燥膜厚5μmの塗膜を形成した。この塗膜をホットプレート上で80℃、3分間加熱し、その後0.05%KOH水溶液を用いて30秒間現像を行い、現像性を評価した。評価基準は以下の通りである。
○:目視により残留物無し。
×:現像できない。
【0121】
[現像密着性の評価]
10cm×10cm四方のガラス基板上にスピンコーターにより感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥し、乾燥膜厚50μmの塗膜を形成した。この塗膜をホットプレート上で80℃、3分間加熱した。得られた塗膜に対し、フォトスペーサー形成用のマスクを通して超高圧水銀灯の光を60mJ/cm
2照射した(i線換算で照度22mW/cm
2)。なお、マスクと基板の間隔(露光ギャップ)は150μmで露光した。その後0.05%KOH水溶液を用いて90秒間現像を行い、現像密着性を評価した。評価基準は以下の通りである。○であれば、現像密着性は良好であるといえる。
○:フォトマスク開口径25μmで剥れなし。
×:フォトマスク開口径25μmで剥れあり。
【0122】
[塗工性の評価]
スピンコーターやダイコーターでの塗布において、塗布ムラやスジが生じることなく塗布可能か評価した。また、上述の現像密着性における露光条件で柱状形成物を形成し、柱状形成物の高さの面内分布、柱状形成物の欠損について評価した。評価基準は以下のとおりである。
面内分布、塗布ムラ、柱状形成物の欠損については感光性樹脂組成物の塗膜の状態により影響を受け、塗膜の状態については感光性樹脂組成物の塗工性により影響を受けるため、評価が○であれば塗工性は良好であるといえる。
【0123】
(面内分布の評価基準)
○:実際得られた個々の柱状形成物の平均高さ(平均値)に対して、上記個々の柱状形成物の高さが平均値±5%の高さの範囲内にある。
×:実際得られた個々の柱状形成物の平均高さ(平均値)に対して、柱状形成物の高さが平均値±5%の高さを超えるものが存在する。
【0124】
(塗布ムラの評価基準)
○:目視により塗膜にスジやハジキがない。
×:目視により塗膜にスジやハジキがある。
【0125】
(柱状形成物の欠損)
○:柱状形成物の欠損がない。
×:柱状形成物の欠損がある。
【0126】
[柱状形成物の形状評価]
実施例1〜5および比較例2、3で得られた柱状形成物のアスペクト比を求めた。具体的には、任意の5個の柱状形成物を選択した。次に、各柱状形成物の下底径および高さを測定し、アスペクト比を算出した。下底径はレーザー顕微鏡を、高さは触針式膜厚計を用いて測定した。5個のアスペクト比から平均値を求めた。結果を表1に示す。
【0127】
実施例1〜5の本発明の感光性樹脂組成物は、表1に示す通り現像性、密着性および塗工性、形状のすべての点で優れている。
その一方で、比較例1は、HLB値が8以上20以下の多官能(メタ)アクリレート(A)を含有していないため、現像性が悪く、柱状形成物の形成が不可能であった。また比較例2はポリマー(B)の質量に対するモノマー(A)の質量の比率が60質量%以下のため、塗工性が悪かった。また、比較例3はポリマー(B)の質量に対するモノマー(A)の質量の比率が95質量%以上のため、密着性が悪く、また塗布にスジが生じたため柱状形成物の欠損があった。実施例1〜5で得られた柱状形成物は、いずれもアスペクト比が2.0以上であり、良好な形状を有していた。一方、比較例2では、良好なアスペクト比を有するものも得られたが、全体として形状のばらつきが大きかった。これは、実施例に比べて比較例2の塗工性が悪かったため、塗布ムラが生じたことによると考えられる。比較例3では、十分なアスペクト比を有する柱状形成物が得られなかった。