特許第6971537号(P6971537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971537
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】治療計画装置及び治療計画方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   A61N5/10 P
   A61N5/10 M
   A61N5/10 S
   A61N5/10 T
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-84433(P2016-84433)
(22)【出願日】2016年4月20日
(65)【公開番号】特開2017-192549(P2017-192549A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2019年2月27日
【審判番号】不服2020-5046(P2020-5046/J1)
【審判請求日】2020年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 悟
【合議体】
【審判長】 内藤 真徳
【審判官】 倉橋 紀夫
【審判官】 莊司 英史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−110335号公報(JP,A)
【文献】 特開2014−90896号公報(JP,A)
【文献】 特開2001−160904号公報(JP,A)
【文献】 特開平9−97097号公報(JP,A)
【文献】 特開平3−175770号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元医用画像データに基づいて、被治療体の対象部位に対する放射線照射の照射計画を計画する計画部と、
前記被治療体に対応するモデルデータに含まれる人体の解剖学的特徴点と、当該解剖学的特徴点に対応する前記3次元医用画像データに含まれる人体の解剖学的特徴点との間の座標のずれが最小となるように、前記被治療体に対応するモデルデータを変形した患者モデルを生成する生成部と、
前記計画部による前記対象部位に対する放射線の照射計画と、前記対象部位の位置情報を有する前記患者モデルとに基づいて、当該対象部位に放射線が照射されるよう前記被治療体が配置された状態で前記被治療体に対して放射線を照射するために動く複数の可動部間における干渉リスク、及び前記複数の可動部と前記被治療体とにおける干渉リスクの有無を判定する判定部と、
を備える、治療計画装置。
【請求項2】
前記計画部は、前記干渉リスクが高いと判定した場合、ワーニングメッセージを表示する、請求項1に記載の治療計画装置。
【請求項3】
前記計画部は、前記干渉リスクが高いと判定した場合、前記干渉リスクが低減するよう前記照射計画を修正する、請求項1又は2に記載の治療計画装置。
【請求項4】
前記計画部は、先に計画した照射計画における前記対象部位に対する放射線の照射角度を維持した状態で干渉を回避するように前記照射計画を修正する、請求項3に記載の治療計画装置。
【請求項5】
前記計画部は、前記被治療体の患者モデルに含まれる当該被治療体の対象部位の位置情報に基づいて、前記放射線の照射角度を除いた前記放射線の照射条件を変更する、請求項4に記載の治療計画装置。
【請求項6】
前記計画部は、前記被治療体の対象部位の位置を前記放射線の光軸に沿ってアイソセンタからずらし、前記放射線の照射範囲の変化を補正する、請求項5に記載の治療計画装置。
【請求項7】
前記計画部は、前記被治療体が横臥する寝台を移動させることで干渉を回避する、請求項3〜6のいずれか一項に記載の治療計画装置。
【請求項8】
前記計画部は、前記被治療体が横臥する寝台の角度又は前記放射線を照射する照射部の角度を変化させることで干渉を回避する、請求項3に記載の治療計画装置。
【請求項9】
治療計画装置によって実行される治療計画方法であって、
3次元医用画像データに基づいて、被治療体の対象部位に対する放射線照射の照射計画を計画し、
前記被治療体に対応するモデルデータに含まれる人体の解剖学的特徴点と、当該解剖学的特徴点に対応する前記3次元医用画像データに含まれる人体の解剖学的特徴点との間の座標のずれが最小となるように、前記被治療体に対応するモデルデータを変形した患者モデルを生成し、
前記対象部位に対する放射線の照射計画と、前記対象部位の位置情報を有する前記患者モデルとに基づいて、当該対象部位に放射線が照射されるよう前記被治療体が配置された状態で前記被治療体に対して放射線を照射するために動く複数の可動部間における干渉リスク、及び前記複数の可動部と前記被治療体とにおける干渉リスクの有無を判定する、
ことを含む、治療計画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、治療計画装置及び治療計画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被治療体内の対象部位(例えば、腫瘍等)に対してX線などの放射線を照射することにより対象部位の治療を行う放射線治療システムにおいては、被治療体内における対象部位の位置やサイズなどに基づいて治療計画が立案される。例えば、治療計画においては、X線CT装置等の医用画像診断装置により収集された対象部位の医用画像データに基づいて、対象部位に対する放射線の照射位置や、照射領域、照射方向、照射方法などが計画される。
【0003】
また、放射線治療システムにおいては、治療計画において計画された放射線照射を実行した場合に、装置と被治療体との干渉が生じるか否かをチェックする干渉チェック機能を有する。例えば、干渉チェック機能は、放射線治療のための放射線を照射する照射装置や、被治療体を保持するための寝台装置、被治療体の位置を補正するための医用画像を収集する医用画像収集装置(例えば、XVI(Cone-BeamCT用kVイメージング装置)など)などの相互の干渉と、さらにそれらの装置と被治療体との干渉をチェックする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−110335号公報
【特許文献2】特開2014−090896号公報
【特許文献3】特開2012−010759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、治療計画と干渉チェックを効率よく行うことを可能にする治療計画装置及び治療計画方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態の治療計画装置は、計画部と、判定部とを備える。計画部は、3次元医用画像データに基づいて、被治療体の対象部位に対する放射線照射の照射計画を計画する。判定部は、前記計画部によって前記対象部位に対する放射線の照射計画が計画されるごとに、当該照射計画にて放射線が照射された場合に前記被治療体に対して放射線を照射するために動く複数の可動部における干渉リスク、及び前記複数の可動部と前記被治療体とにおける干渉リスクの有無を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る放射線治療システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る放射線治療計画用CT装置の構成の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る放射線治療装置の構成の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る治療計画装置の構成の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る放射線治療システムによる処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、第1の実施形態に係る治療計画装置による処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図7A図7Aは、第1の実施形態に係る干渉判定の基準を説明するための図である。
図7B図7Bは、第1の実施形態に係る治療計画機能による治療計画の修正処理の一例を説明するための図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る治療計画機能による治療計画の修正処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本願に係る治療計画装置及び治療計画方法の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、治療計画装置を含む放射線治療システムを一例に挙げて説明するが、実施形態は以下の内容に限定されるものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る放射線治療システム1の構成の一例について説明する。図1は、第1の実施形態に係る放射線治療システム1の構成の一例を示す図である。例えば、放射線治療システム1は、図1に示すように、放射線治療計画用CT装置100と、放射線治療装置200と、治療計画装置300とを有し、各装置が相互に接続される。ここで、第1の実施形態に係る放射線治療システム1においては、治療計画装置300が、放射線治療計画用CT装置100からCT画像データを取得して、放射線治療の対象となる対象部位(以下、治療対象部位と記す)に対する治療計画を作成して、その治療計画に基づいて装置相互の、さらには患者との干渉リスクをチェックする。治療計画装置300が、作成した治療計画によって干渉リスクが十分に低いと判断されると、放射線治療装置200に治療計画を送信する。さらに、治療計画装置300は、放射線治療が実行される手技室などに配置されたディスプレイに種々の情報を表示させる表示制御を実行したり、放射線治療システム1における放射線治療全体の管理を実行したりする。なお、図1に示す構成は、あくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、表示制御を実行する装置や、放射線治療管理を実行する装置などがそれぞれ別に配置される場合であってもよい。
【0010】
放射線治療計画用CT装置100は、図1に示すように、架台110と、天板122を有する寝台装置とを有し、天板122に横臥した被治療体の治療対象部位(腫瘍等)を含むCT投影データを収集して、再構成したCT画像データを治療計画装置300に送信する。また、放射線治療計画用CT装置100は、CT投影データの収集の際に被治療体の体型の情報(以下、体型情報と記す)を収集し、収集した情報を治療計画装置300に送信し、登録する。ここで、体型情報とは、例えば、CT画像から特定される被治療体の輪郭の情報である。あるいは、体型情報とは、例えば、CT画像データから特定される被治療体の各部位の寸法や体積などの情報である。なお、体型情報については、CT画像データから収集される場合に限らず、例えば、光学カメラによる画像から収集してもよいし、被治療体の身長や体重の情報から収集してもよい。
【0011】
放射線治療装置200は、図1に示すように、回転架台270と、天板250を有する寝台装置と、治療用の放射線を照射する放射線発生器232と、放射線絞り器233とを有し、治療計画装置300から転送された治療計画に沿って、治療対象部位に対して放射線を照射する。ここで、放射線治療装置200は、被治療体の位置を補正するための医用画像を収集する医用画像収集装置を備えることもできる。例えば、放射線治療装置200は、図1に示すように、撮像用の放射線を照射する放射線発生器271と、撮像用の放射線を検出する検出器272を含むXVI(Cone-BeamCT用kVイメージング装置)をさらに備え、位置合わせ用のコーンビームCT画像を生成することもできる。
【0012】
例えば、放射線治療装置200においては、放射線治療の前に、回転架台270を一回転させて、その間に放射線発生器271により放射線を被治療体に照射し続け、被治療体を透過した放射線が検出器272によって受容される。これにより、様々な方向からの被治療体の撮影画像(2次元画像)が生成される。そして、生成された複数の撮影画像に基づいてコーンビームCT画像が再構成され、ディスプレイ220に表示される。このコーンビームCT画像と治療計画用のCT画像データとで位置合わせを行い、治療計画用のCT画像データをコーンビームCT画像と一致するように変換するのと同様に、治療計画を変換することで治療対象位置をターゲットにした治療が正確に行えるようになる。また、例えば、放射線発生器232によって治療用の放射線が照射されている間に、放射線発生器271が放射線を被治療体に照射し続けてX線画像を生成することで、治療時の治療対象部位の位置を確認することも可能である。
【0013】
治療計画装置300は、放射線治療計画用CT装置100により収集された被治療体のCT画像データを用いて、放射線治療装置200による放射線治療の治療計画を立てる。例えば、治療計画装置300は、放射線治療計画用CT装置100が収集したCT画像データを用いて、被治療体内の治療対象部位の位置を特定する。また、例えば、治療計画装置300は、CT画像データを用いて位置を特定した腫瘍等に対して放射線治療装置200が照射する放射線の線量や照射角度、照射する回数などの計画を立てる。なお、治療計画装置300によって治療計画を実施する際に、放射線治療システム1においては、放射線治療計画用CT装置100における座標系と放射線治療装置200における座標系とを予め位置合わせする。例えば、放射線治療システム1においては、放射線治療計画用CT装置100が設置された部屋、及び、放射線治療装置200が設置された各部屋に赤外線追跡装置がそれぞれ設置され、各部屋に設置されたレーザー照準器を用いて座標系の位置合わせが行われる。
【0014】
ここで、放射線治療装置200は、XVIなどの医用画像収集装置によって収集された医用画像と、放射線治療計画用CT装置100によって収集されたCT画像データとで位置合わせを行って治療計画を治療対象が正確に狙えるように修正する。すなわち、放射線治療装置200は、放射線治療計画用CT装置100における座標系と、医用画像収集装置における座標系(実際に放射線治療を行う空間の座標系)とで位置合わせを行うこと、さらにXVIなどの医用画像収集装置によって収集された医用画像と、放射線治療計画用CT装置100によって収集されたCT画像データとで位置合わせを行うことで、放射線治療を行う空間での治療対象部位の正確な位置を同定し、同定した位置に合わせて治療を行う。
【0015】
図1に示す放射線治療システム1の構成は、あくまでも一例であり、その他種々の装置を備えることができる。例えば、体動による被治療体の位置の動きを検出する位置確認装置や、治療対象部位の正確な位置を同定するための超音波診断装置などを備える場合であってもよい。
【0016】
次に、放射線治療システム1における各装置について説明する。図2は、第1の実施形態に係る放射線治療計画用CT装置100の構成の一例を示す図である。図2に示すように、放射線治療計画用CT装置100は、架台110と、寝台装置120と、コンソール130とを備える。
【0017】
架台110は、被治療体P(患者)にX線を照射し、被治療体Pを透過したX線を検出して、コンソール130に出力する装置であり、X線照射制御回路111と、X線発生装置112と、検出器113と、データ収集回路(DAS:Data Acquisition System)114と、回転フレーム115と、架台駆動回路116とを有する。
【0018】
回転フレーム115は、X線発生装置112と検出器113とを被治療体Pを挟んで対向するように支持し、架台駆動回路116によって被治療体Pを中心とした円軌道にて高速に回転する円環状のフレームである。X線照射制御回路111は、高電圧発生部として、X線管112aに高電圧を供給する装置であり、X線管112aは、X線照射制御回路111から供給される高電圧を用いてX線を発生する。X線照射制御回路111は、スキャン制御回路133の制御により、X線管112aに供給する管電圧や管電流を調整することで、被治療体Pに対して照射されるX線量を調整する。
【0019】
また、X線照射制御回路111は、ウェッジ112bの切り替えを行う。また、X線照射制御回路111は、コリメータ112cの開口度を調整することにより、X線の照射範囲(ファン角やコーン角)を調整する。X線発生装置112は、X線を発生し、発生したX線を被治療体Pへ照射する装置であり、X線管112aと、ウェッジ112bと、コリメータ112cとを有する。
【0020】
X線管112aは、図示しない高電圧発生部により供給される高電圧により被治療体PにX線ビームを照射する真空管であり、回転フレーム115の回転にともなって、X線ビームを被治療体Pに対して照射する。ウェッジ112bは、X線管112aから曝射されたX線のX線量を調節するためのX線フィルタである。具体的には、ウェッジ112bは、X線管112aから被治療体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管112aから曝射されたX線を透過して減衰するフィルタである。なお、ウェッジ112bは、ウェッジフィルタ(wedge filter)や、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。
【0021】
コリメータ112cは、X線照射制御回路111の制御により、ウェッジ112bによってX線量が調節されたX線の照射範囲を絞り込むためのスリットである。架台駆動回路116は、回転フレーム115を回転駆動させることによって、被治療体Pを中心とした円軌道上でX線発生装置112と検出器113とを旋回させる。検出器113は、被治療体Pを透過したX線を検出する2次元アレイ型検出器(面検出器)であり、複数チャンネル分のX線検出素子を配してなる検出素子列が被治療体Pの体軸方向(図2に示すZ軸方向)に沿って複数列配列される。
【0022】
データ収集回路114は、DASであり、検出器113が検出したX線の検出データから、CT投影データを収集する。例えば、データ収集回路114は、検出器113により検出されたX線強度分布データに対して、増幅処理やA/D変換処理、チャンネル間の感度補正処理等を行なって投影データを生成し、生成した投影データをコンソール130に送信する。例えば、回転フレーム115の回転中に、X線管112aからX線が連続曝射されている場合、データ収集回路114は、全周囲分(360度分)の投影データ群を収集する。また、データ収集回路114は、収集した各投影データに管球位置を対応付けて、コンソール130に送信する。管球位置は、投影データの投影方向を示す情報となる。
【0023】
寝台装置120は、被治療体Pを載せる装置であり、寝台駆動装置121と、天板122とを有する。寝台駆動装置121は、天板122をZ軸方向へ移動して、被治療体Pを回転フレーム115内に移動させる。天板122は、被治療体Pが載置される板である。なお、通常CT用の天板は患者の体にフィットするよう中心が凹んだような形状をしているが、放射線治療計画用CT装置100の場合は、放射線治療装置200の天板と同一の形状をしている。
【0024】
コンソール130は、操作者による放射線治療計画用CT装置100の操作を受け付けるとともに、架台110によって収集された投影データを用いてCT画像データ(ボリュームデータ)を再構成する装置である。コンソール130は、図2に示すように、入力回路131と、ディスプレイ132と、スキャン制御回路133と、前処理回路134と、記憶回路135と、画像再構成回路136と、処理回路137とを有する。
【0025】
入力回路131は、放射線治療計画用CT装置100の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等を有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、処理回路137に転送する。ディスプレイ132は、操作者によって参照されるモニタであり、処理回路137による制御のもと、CT画像データの一部を操作者に表示したり、入力回路131を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
【0026】
スキャン制御回路133は、処理回路137による制御のもと、X線照射制御回路111、架台駆動回路116、データ収集回路114及び寝台駆動装置121の動作を制御することで、架台110における投影データの収集処理を制御する。具体的には、スキャン制御回路133は、放射線治療計画用のCT画像データを収集する撮影における投影データの収集処理を制御する。
【0027】
前処理回路134は、データ収集回路114によって生成された投影データに対して、対数変換処理と、オフセット補正、感度補正及びビームハードニング補正等の補正処理とを行なって、補正済みの投影データを生成して、記憶回路135に格納する。記憶回路135は、前処理回路134により生成された投影データを記憶する。また、記憶回路135は、画像再構成回路136によって生成された画像データを記憶する。
【0028】
画像再構成回路136は、記憶回路135が記憶する投影データを用いてCT画像データ(ボリュームデータ)を再構成する。ここで、再構成方法としては、種々の方法があり、例えば、逆投影処理が挙げられる。また、逆投影処理としては、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法による逆投影処理が挙げられる。或いは、画像再構成回路136は、逐次近似法を用いて、CT画像データを再構成することもできる。そして、画像再構成回路136は、再構成したCT画像データを記憶回路135に格納する。
【0029】
処理回路137は、架台110、寝台装置120及びコンソール130の動作を制御することによって、放射線治療計画用CT装置100の全体制御を行う。具体的には、処理回路137は、スキャン制御回路133を制御することで、架台110で行なわれるCTスキャンを制御する。また、処理回路137は、画像再構成回路136を制御することで、コンソール130における画像再構成処理や画像生成処理を制御する。また、処理回路137は、再構成したCT画像データを治療計画装置300に送信する。また、処理回路137は、記憶回路135が記憶する各種画像データを、ディスプレイ132に表示するように制御する。
【0030】
なお、図2に示す各回路によって実現される各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路135に記録されている。また、各回路は、各プログラムを記憶回路135から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。
【0031】
図3は、第1の実施形態に係る放射線治療装置200の構成の一例を示す図である。図3に示すように、放射線治療装置200は、入力回路210と、ディスプレイ220と、放射線発生装置230と、移動機構240と、天板250と、システム制御回路260とを有する。放射線発生装置230は、放射線制御回路231と、放射線発生器232と、放射線絞り器233とを有する。放射線制御回路231は、システム制御回路260による制御のもと、治療計画に沿った放射線量の放射線を照射するように、放射線発生器232の高電圧発生器における印加電圧や印加時間等を制御する。放射線発生器232は、図示しない電子銃と加速管を備える。加速管は、電子銃から発生した熱電子を加速し、タングステンターゲットに衝突させて治療用の放射線を放射する。放射線絞り器233は、例えば、MLC(Multi-Leaf Collimator)であり、治療用の放射線の照射範囲を設定する複数の絞り羽根を有する。例えば、放射線絞り器233は、絞り移動機構241によってこれらの絞り羽根を移動させることで被治療体Pの治療対象部位に対応した形状を有する放射線照射領域を形成する。
【0032】
移動機構240は、絞り移動機構241と、機構制御回路242と、天板移動機構243とを有する。絞り移動機構241は、機構制御回路242による制御のもと放射線絞り器233の絞り羽根を移動させる。天板移動機構243は、機構制御回路242による制御のもと、天板250を移動させる。機構制御回路242は、システム制御回路260による制御のもと、絞り羽根移動制御信号を絞り移動機構241に送信することにより絞り羽根を移動させる。また、機構制御回路242は、天板移動制御信号を天板移動機構243へ送信することにより、天板250を移動させる。
【0033】
入力回路210は、放射線治療装置200の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等を有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、システム制御回路260に転送する。ディスプレイ220は、操作者によって参照されるモニタであり、システム制御回路260による制御のもと、コーンビームCT画像を操作者に表示したり、入力回路210を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUIを表示したりする。
【0034】
システム制御回路260は、回転架台270、放射線発生装置230、移動機構240の動作を制御することによって、放射線治療装置200の全体制御を行う。具体的には、システム制御回路260は、治療計画装置300から受信した治療計画に基づいて、放射線制御回路231を制御することで、被治療体Pへの放射線の照射を制御する。また、システム制御回路260は、治療計画に基づいて、機構制御回路242を制御することで、天板250の位置を制御する。また、システム制御回路260は、コーンビームCT画像やGUIを、ディスプレイ220に表示するように制御する。ここで、放射線治療装置200においては、図示しない記憶回路を有し、治療計画装置300から転送された治療計画を記憶回路に記憶する。そして、システム制御回路260は、記憶回路から治療計画を読み出して、上述した制御を実行する。
【0035】
なお、図3に示す各回路によって実現される各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で図示しない記憶回路に記録されている。また、各回路は、各プログラムを図示しない記憶回路から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。
【0036】
図4は、第1の実施形態に係る治療計画装置300の構成の一例を示す図である。図4に示すように、治療計画装置300は、入力回路310と、ディスプレイ320と、記憶回路330と、処理回路340とを有する。例えば、治療計画装置300は、ワークステーションや、任意のパーソナルコンピュータなどである。
【0037】
入力回路310は、マウス等のポインティングデバイス、キーボード等の入力デバイスであり、治療計画装置300に対する各種操作の入力を操作者から受け付ける。例えば、入力回路310は、放射線治療計画用CT装置100によって収集されたCT画像データに対する治療対象部位を指定するための指定操作などを受付ける。ディスプレイ320は、液晶ディスプレイ等の表示デバイスであり、各種情報を表示する。例えば、ディスプレイ320は、操作者から各種操作を受け付けるためのGUIや、治療計画を実行するためのCT画像データ、さらに、後述する処理回路340による処理結果などを表示する。ここで、治療計画装置300は、複数のディスプレイ320を備えることができ、例えば、操作者が治療計画を立案する部屋や、放射線治療装置200が配置された部屋などにディスプレイ320をそれぞれ配置することもできる。
【0038】
記憶回路330は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置などであり、後述する処理回路340によって取得された種々の画像データ331を記憶する。また、記憶回路330は、後述する処理回路340によって用いられる種々の情報を記憶する。例えば、記憶回路330は、放射線の照射に係る機器の構造の情報である機構構造情報332を記憶する。ここで、機構構造情報332は、例えば、放射線治療装置200や、医用画像収集装置などを構成する各部位の寸法の情報や、各部位の装置全体における位置、範囲の情報を含む。また、機構構造情報332は、例えば、放射線治療装置200や医用画像収集装置を構成する各部位のうち、回転移動や平行移動などにより位置が変化する部位である可動部の可動範囲(可動部の回転移動や平行移動の範囲)の情報を含む。例えば、可動部は、放射線治療装置200における放射線発生器及び検出器や、天板等である。治療計画装置300は、機構構造情報を、放射線治療装置200等の設計データ(CAD(Computer Aided Design)データなど)から取得する。
【0039】
また、記憶回路330は、後述する処理回路340による処理結果を記憶する。例えば、記憶回路330は、処理回路340によって実施された治療対象部位に対する治療計画333を記憶する。一例を挙げると、記憶回路330は、治療対象部位に対する放射線の照射条件や、照射条件に基づいて算出される線量分布及び線量体積ヒストグラムなどの情報を被治療体Pごとに記憶する。なお、記憶回路330は、被治療体ごとの被曝情報を記憶することも可能である。また、記憶回路330は、処理回路340によって読み出され、実行される各種プログラムを記憶する。
【0040】
処理回路340は、治療計画装置300における各種処理を実行する。例えば、処理回路340は、図4に示す画像取得機能341、患者モデル生成機能342、治療計画機能343、干渉判定機能344及び表示制御機能345に対応するプログラムを記憶回路330から読み出して実行することで、種々の処理を行う。図4に示す各回路によって実現される各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路330に記録されている。また、各回路は、各プログラムを記憶回路330から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。なお、図4に示す治療計画機能343は、特許請求の範囲における計画部の一例である。また、図4に示す干渉判定機能344は、特許請求の範囲における判定部の一例である。
【0041】
第1の実施形態に係る治療計画装置300は、治療計画と干渉チェックを効率よく行うことを可能にする。具体的には、治療計画装置300は、治療計画と干渉チェックを一体化する(或いは、インタラクティブに情報を交換する)ことにより、治療計画の変更或いは干渉を回避するための変更を相互に反映できるようにし、治療計画と干渉チェックを効率よく行うことを可能にする。例えば、治療計画機能343が、3次元医用画像データに基づいて、被治療体の対象部位に対する放射線照射の照射計画を計画する。そして、干渉判定機能344が、治療計画機能343によって対象部位に対する放射線の照射計画が計画されるごとに、当該照射計画に基づいて複数の装置が制御された場合、複数の可動部同士、あるいは複数の可動部と被治療体との干渉の有無を判定する。そして、治療計画機能342は、干渉判定機能344によって干渉が生じると判定された場合に、被治療体照射計画に干渉リスクがあることを操作者に通知する。あるいは、治療計画機能342は、照射計画を修正する。これにより、放射線治療計画と干渉チェックとを同時に実行することができるようになる。
【0042】
ここで、まず、第1の実施形態に係る放射線治療システム1による処理の一例について、図5を用いて説明する。図5は、第1の実施形態に係る放射線治療システム1による処理の手順の一例を示すフローチャートである。図5に示すように、放射線治療システム1においては、まず、放射線治療計画用CT装置100が、CT検査を実施して(ステップS101)、収集したCT画像データと被治療体の体型情報とを治療計画装置300に送信する。そして、治療計画装置300が、治療計画及び干渉チェックを同時に実行する(ステップS102)。
【0043】
その後、放射線治療装置200が、治療計画の検証(Comission)を実行することにより、治療計画通りに放射線の照射ができることをファントムや線量計などを用いて検証するとともに干渉が生じるか否かを判定する(ステップS103、ステップS104)。ここで、治療計画通りに放射線を照射することができ、さらに干渉が生じないと判定された場合に(ステップS104肯定)、放射線治療装置200は、放射線治療を実施する(ステップS105)。一方、治療計画通りに放射線を照射することができない、或いは、干渉が生じると判定された場合には(ステップS104否定)、ワーニングメッセージを表示することで操作者に注意を与えることにより、治療計画装置300において再度治療計画及び干渉チェックを実行する(ステップS102)。
【0044】
このように、第1の実施形態に係る放射線治療システム1においては、図5のステップS102において、治療計画装置300が、治療計画と干渉チェックを同時に実行することにより、治療計画と干渉チェックを効率よく行うことを可能にする。これによりステップS104否定で発生する後戻りの頻度を低減することができる。以下、第1の実施形態に係る治療計画装置300による処理の一例について、図6を用いて説明する。図6は、第1の実施形態に係る治療計画装置300による処理の手順の一例を示すフローチャートである。ここで、図6に示す処理は、図5のステップS102の処理に対応する。
【0045】
図6に示すステップS201は、処理回路340が記憶回路330から画像取得機能341に対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。また、図6に示すステップS202は、処理回路340が記憶回路330から患者モデル生成機能342に対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。また、図6に示すステップS203、ステップS205及びステップS208〜S209は、処理回路340が記憶回路330から治療計画機能343に対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。また、図6に示すステップS204、ステップS206、ステップS207及びステップS210は、処理回路340が記憶回路330から干渉判定機能344に対応するプログラムを読み出して実行されるステップである。
【0046】
図6に示すように、治療計画装置300においては、まず、画像取得機能341が、CT画像データを取得する(ステップS201)。例えば、画像取得機能341は、放射線が照射される対象部位について、放射線治療計画用CT装置100によって収集された3次元の医用画像データ(CT画像データ)を取得する。
【0047】
そして、患者モデル生成機能342が、患者モデルを生成する(ステップS202)。具体的には、患者モデル生成機能342は、放射線治療計画用CT装置100から受信した被治療体のCT画像データ及び体型情報と、記憶回路330によって記憶されたモデルデータを用いて、被治療体の体型に合わせた患者モデルを生成する。ここで、モデルデータについて説明する。モデルデータは、年齢、成人/子供、男性/女性、体重、身長などの体格などに関わるパラメータに関する複数の組み合わせに応じた標準的な体格などを有する人体について実際にCT装置で撮影した画像として予め生成されて、記憶回路330に格納される。
【0048】
すなわち、記憶回路330は、上述したパラメータの組み合わせに応じた複数のモデルデータを記憶する。ここで、記憶回路330によって記憶されるモデルデータには、解剖学的な特徴点(特徴点)が対応づけて記憶される。例えば、人体には、パターン認識等の画像処理により比較的容易にその形態的特徴等に基づいて画像から抽出できる多数の解剖学的な特徴点がある。これら多数の解剖学的な特徴点の身体におけるその位置や配置は年齢、成人/子供、男性/女性、体重、身長などの体格等に従っておおよそ決まっている。記憶回路330によって記憶されるモデルデータは、これら多数の解剖学的な特徴点が予め検出され、検出された特徴点の位置データがそれぞれの特徴点の情報とともにモデルデータに付帯又は関連付けされて記憶される。
【0049】
患者モデル生成機能342は、被治療体情報に基づいて、被治療体に対応するモデルデータを記憶回路330から読み出す。そして、患者モデル生成機能342は、放射線治療計画用CT装置100から受信した被治療体のCT画像データ及び体型情報に基づいてCT画像データ(ボリュームデータ)中の解剖学的な特徴点を抽出し、抽出した解剖学的な特徴点と読み出したモデルデータ中の特徴点とを照合して、ボリュームデータの座標空間とモデルデータの座標空間とを関連付ける。
【0050】
例えば、患者モデル生成機能342は、抽出した各画像の解剖学的特徴点のうち、解剖学的に同じ特徴点間の座標を比較して位置ずれの値をそれぞれ算出し、算出した位置ずれの値の合計値が最小化するような座標変換行列を算出する。すなわち、患者モデル生成機能342は、「モデルデータ」を変形して「CT画像データ」に近似させることができる座標変換行列を算出する。患者モデル生成機能342は、算出した座標変換行列を用いることにより、モデルデータから被治療体の体型に合わせた患者モデルを生成することができる。
【0051】
次に、治療計画機能343が、照射領域を決定する(ステップS203)。具体的には、治療計画機能343は、放射線治療計画用CT装置100から受信した被治療体のCT画像データに含まれる腫瘍の位置を同定する。そして、治療計画機能343は、同定した腫瘍に対して、進展している可能性がある範囲、体動などによるずれを考慮したマージン、照射における設定誤差を考慮したマージンなどを含んだ照射領域を決定する。
【0052】
より具体的には、治療計画機能343は、腫瘍の進展や存在が肉眼的に確認できる3次元領域である肉眼的腫瘍体積(GTV:gross tumor volume)を抽出する。そして、治療計画機能343は、抽出したGTVと肉眼的には確認できないが潜在的な腫瘍領域とをそれぞれ含む臨床的標的体積(CTV:clinical target volume)を設定する。さらに、治療計画機能343は、CTVが生理的な動きに伴って位置が変化することを考慮して、CTVの外側にマージンを付加した計画標的体積(PTV:planning target volume)を照射領域として設定する。なお、GTV、CTV及びPTVは、操作者によって指定される場合であってもよい。
【0053】
このように照射領域が決定されると、患者モデル生成機能342は、生成した患者モデルにさらに照射領域をマージした患者モデルを生成して、干渉判定機能344に送信する。干渉判定機能344は、患者モデル生成機能342から患者モデルを受け付けると、記憶回路330に記憶された機構構造情報を読み出して、受け付けた患者モデルに用いた干渉チェックを実行する。具体的には、干渉判定機能344は、放射線治療に係る各装置の機構構造情報と患者モデルとを用いて、治療計画機能343によって計画された治療計画で干渉が生じるか否かをシミュレーションする。
【0054】
ここで、干渉判定機能344は、患者モデルを寝台の中心に寝かせたとしておおよその位置に配置し、さらに、照射領域がISO−CENTER(アイソセンタ)と一致するように寝台を仮想的に移動させる(ステップS204)。干渉判定機能344は、この寝台位置及び患者位置を基準として干渉チェックを開始する。図7Aは、第1の実施形態に係る干渉判定の基準を説明するための図である。図7Aにおいては、被治療体Pの患者モデルに対する干渉判定の基準の設定を示す。例えば、図7Aの上段の図に示すように、照射領域R1がマージされた被治療体Pの患者モデルが天板250の中心に配置されると、干渉判定機能344は、図7Aの下段の図に示すように、照射領域R1がアイソセンタと一致するように、天板250を矢印11の方向に仮想的に移動させる。干渉判定機能344は、移動後の寝台及び患者モデルの位置を干渉判定の基準位置として、後に受け付ける治療計画における干渉チェックを実施する。
【0055】
干渉判定機能344によって基準位置が設定されると、治療計画機能343は、照射領域に対する治療計画を実施する(ステップS205)。具体的には、まず、操作者が、照射領域に対してどのような放射線照射方法を行うかを決定する。例えば、表示制御機能345が、2方向からの照射、強度変調放射線治療(IMRT:Intensity Modulated Radiation Therapy)、回転型強度変調放射線治療(VMAT:Volumetric Modulated Arc Therapy)などの照射方法をディスプレイ320に表示させる。操作者は、表示された照射方法の中から適切な照射方法を選択する。
【0056】
そして、治療計画機能343は、これらの条件に基づいて治療計画を実施する。ここで、治療計画機能343は、放射線に対する感受性が高く放射線が照射されないようにすべき臓器などを考慮した治療計画を実施する。例えば、まず、表示制御機能345が、CT画像をディスプレイ320に表示させる。操作者は、ディスプレイ320に表示されたCT画像を参照して、放射線に対する感受性が高く放射線が照射されないようにすべき臓器などの輪郭を指定する。治療計画機能343は、指定された輪郭に基づいて、照射領域の3次元的な形状、位置、指定された臓器との位置関係などを解析し、解析結果に基づいて、治療に用いる放射線の線質、入射方向、照射野、線量、照射回数などを含む治療計画を決定する。
【0057】
さらに、治療計画機能343は、決定した治療計画の推定結果を算出する。例えば、治療計画機能343は、治療計画の決定に際して、放射線の照射条件ごとに線量分布や線量体積ヒストグラム(DVH:Dose Volume Histogram)を算出する。そして、表示制御機能345が、照射条件とともに、算出された線量分布やDVHをディスプレイ320に表示させる。ディスプレイ320に表示された照射条件や線量分布、DVHに対する操作者の確認操作が実行されると、干渉判定機能344が、確認操作が実行された治療計画に対する干渉チェックを実施する。
【0058】
なお、上述した治療計画では、治療計画を実施したのちに推定結果を算出する順方向の治療計画を実施する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、線量分布、DVHなどの条件を先に設定した後にこれらの条件を満足する治療計画を探索あるいは同定する逆方向の治療計画が実施される場合であってもよい。
【0059】
このように、治療計画機能343によって治療計画が立案されると、干渉判定機能344は、立案された治療計画に対する干渉チェックを実行する。ここで、本実施形態に係る干渉判定機能344は、一連の照射計画(照射プラン)を含む治療計画全体が立案された後に干渉チェックを実行するのではなく、治療計画に含まれる各照射プランが計画されるごとに干渉チェックを実行して(ステップS206)、干渉を生じるか否かを判定する(ステップS207)。
【0060】
例えば、干渉判定機能344は、患者モデルを基準位置に配置した状態で計画された照射を実行する場合の各可動部間の距離、あるいは各可動部と患者モデルとの距離を算出し、算出した距離の値が「0以下」となる場合に、干渉を生じると判定する。或いは、干渉判定機能344は、患者モデルを基準位置に配置した状態で計画された照射を実行する場合の各可動部間の距離、あるいは各可動部と患者モデルとの距離を算出し、算出した距離の値が所定の閾値以下となる場合に、干渉を生じるリスクが高いと判定する。
【0061】
ここで、干渉を生じるリスクが高いと判定した場合(ステップS207肯定)、治療計画機能343は、治療計画を修正する。具体的には、治療計画機能343は、干渉判定機能344から干渉が生じる位置や干渉の程度に関する情報を取得し、取得した情報に基づいて、干渉リスクが低減するように治療計画を修正する。ここで、治療計画機能343は、先に計画した照射プランにおける治療対象部位に対する放射線の照射角度を維持した状態で干渉を回避するように照射プランを修正する(ステップS208)。
【0062】
すなわち、治療計画機能343は、患者モデルに含まれる照射領域(治療対象部位)の位置情報に基づいて、放射線の照射角度を除いた放射線の照射条件を変更する。例えば、治療計画機能343は、被治療体が横臥する寝台を移動させることで干渉を回避する。図7Bは、第1の実施形態に係る治療計画機能343による治療計画の修正処理の一例を説明するための図である。図7Bにおいては、被治療体Pの患者モデルに対する治療計画の修正を示す。
【0063】
例えば、図7Bの1段目の図に示すように基準位置に配置した患者モデルに対する治療計画として、治療計画機能343が、2段目の図に示す照射位置からの放射線の照射プランを計画したとする。ここで、干渉判定機能344が2段目の図に示す照射位置からの放射線の照射プランでは干渉を生じると判定すると、治療計画機能343は、干渉を生じる位置と程度の情報を干渉判定機能344から受け付けて、照射プランの修正を実行する。
【0064】
ここで、治療計画機能343は、先に計画した照射プランにおける照射角度を変化させずに照射プランを変化させる。具体的には、治療計画機能343は、被治療体の対象部位の位置を放射線の光軸に沿ってアイソセンタからずらすことにより干渉を回避する。例えば、治療計画機能343は、図7Bの3段目の図に示すように、照射領域R1に対する放射線の照射方向を変更せずに干渉を回避するために、天板250を矢印12の方向に移動させる。
【0065】
ここで、天板250の位置を移動させると、図7Bの3段目の図に示すように、照射領域R1がアイソセンタからはずれることとなる。そこで、治療計画機能343は、放射線の照射範囲の変化を補正する(ステップS209)。例えば、治療計画機能343は、放射線絞り器233の設定を変更することにより、図7Bの4段目の図に示すように、放射線の照射範囲が照射領域R1に対して適切になるように照射プランを修正する。
【0066】
このように、干渉チェック及び照射プランの修正が実施されると、干渉判定機能344が未チェックの照射プランがあるか否かを判定する(ステップS210)。ここで、未チェックの照射プランがある場合には(ステップS210肯定)、ステップS206に戻って、未チェックの照射プランの干渉チェックを実施する。一方、未チェックの照射プランがない場合には(ステップS210否定)、治療計画及び干渉チェックを終了する。
【0067】
なお、干渉を生じるリスクが高いと判定した場合(ステップS207肯定)、本実施例では治療計画機能343が治療計画を修正する場合について説明している。しかしながら、操作者に干渉を生じるリスクが高いと言うワーニングメッセージを表示した上で、照射領域に対する再治療計画を実施する(S205)に戻り、操作者に治療計画の変更や再作成を委ねても良い。
【0068】
治療計画及び干渉チェックが終了すると、治療計画装置300は、治療計画を放射線治療装置200に送信する。放射線治療装置200では、先ず治療計画の検証(Comission)を実行する。治療計画の検証では、治療計画通りに放射線の照射ができることをファントムや線量計などを用いて検証するとともに干渉が生じるか否かを目視で判定する。ここで、治療計画通りに放射線を照射することができ、さらに干渉が生じないと判定された場合に被治療体の治療に移行する。
【0069】
放射線治療装置200は、被治療体を寝台に載せ、患者の位置合わせを実施する。例えば、放射線治療装置200は、同じ部屋内にCT装置が設置されている場合はCT画像を撮影し、計画で使用したCT画像と比較することで患者位置を同定する。或いは、放射線治療装置200は、コーンビームCT機能を使用し、コーンビームCT画像を撮影した後で、再構成した画像とCT画像とで骨や臓器などをランドマークとして位置合わせを実施し、患者位置を同定する。或いは、放射線治療装置200は、X線画像を2方向から撮影し、特徴的な構造に基づいてCT画像との位置合わせを実施し、患者位置を同定する。
【0070】
このような方法によって位置合わせが実行されると、CT画像及びそれに関連付けられた患者モデルの位置が正確に同定される。そこで、治療計画装置300は、同定された患者モデルの位置を用いて再度干渉チェックすることで再度正確な干渉チェックを行うことができる。すなわち、天板250の撓みなどを含む正確な位置での干渉チェックを実行することができる。ここで、正確な位置を用いた干渉チェック及び治療計画の修正も上述した手順により実行される。
【0071】
また、上述した実施形態では、照射領域に対する放射線の照射角度を変更せずに干渉を回避する場合を例に挙げて説明したが、本実施形態に係る治療計画装置300は、その他の手法により干渉を回避することも可能である。具体的には、治療計画装置300は、干渉の要因となるものがX線撮影系(これがなくても治療はできるもの)であれば、それを収納するようにディスプレイ320に提示する。操作者がX線撮影系を収納することにより干渉を回避することができる。或いは、治療計画装置300は、干渉を生じる方向からの照射を棄却することで干渉を回避する。
【0072】
上述したように、第1の実施形態によれば、治療計画機能343が、CT画像データに基づいて、被治療体の治療対象部位に対する放射線照射の照射計画を計画する。干渉判定機能344が、治療計画機能343によって対象部位に対する放射線の照射計画が計画されるごとに、当該照射計画にて放射線が照射された場合に被治療体に対して放射線を照射するために動く可動部同士における干渉及び各可動部と被治療体とにおける干渉の有無を判定する。治療計画機能343が、干渉判定機能344によって干渉が生じると判定された場合に、照射計画を修正する。従って、第1の実施形態に係る治療計画装置300は、治療計画と干渉判定を同時に実施することができ、治療計画と干渉チェックを効率よく行うことを可能にする。
【0073】
例えば、図5のステップS102において実行する治療計画と干渉チェックを別々の装置でそれぞれ実行した場合、干渉が懸念されたとしても、どのように治療計画を反映すれば良いか分からない。従って、干渉チェックで問題が発生すると、改めて治療計画全体を見直し、見直したプランを再度干渉チェックする、というようなトライアンドエラーが発生する。また、被治療体の体型や腫瘍の位置が反映されずに干渉のシミュレーションを実行した場合、正確な干渉チェックを行うことができない。これに対して、本実施形態に係る治療計画装置300では、被治療体の体型情報を用い、治療計画と干渉判定を同時に実施することで、治療計画の後戻りを防止することができる。さらに、本実施形態に係る治療計画装置300では、被治療体の体型情報を用いることで、より精度の高いシミュレーションを実行することができ、図5のステップS104からの後戻りの回数を低減することも可能である。
【0074】
また、第1の実施形態によれば、治療計画機能343は、先に計画した照射計画における対象部位に対する放射線の照射角度を維持した状態で干渉を回避するように照射計画を修正する。従って、第1の実施形態に係る治療計画装置300は、最初に立てた最善の照射方向から放射線を照射することを可能にする。放射線の治療計画では、治療対象部位への治療効果とともに周辺臓器への影響が考慮されて、照射方向が決定される。従って、最初に計画された照射方向は変更しないほうが好ましい。治療計画装置300によって治療計画を修正することによって、照射方向は変更せずに照射プランを変更することができる。
【0075】
また、第1の実施形態によれば、治療計画機能343は、体型情報に含まれる被治療体の治療対象部位の位置情報に基づいて、放射線の照射角度を除いた放射線の照射条件を変更する。従って、第1の実施形態に係る治療計画装置300は、シミュレーションの段階から治療対象部位の位置を考慮した照射プランの修正を行うことを可能にする。
【0076】
また、第1の実施形態によれば、治療計画機能343は、被治療体の治療対象部位の位置を放射線の光軸に沿ってアイソセンタからずらし、放射線の照射範囲の変化を補正する。また、治療計画機能343は、被治療体が横臥する寝台を移動させることで干渉を回避する。従って、第1の実施形態に係る治療計画装置300は、放射線の照射方向を変更することなく照射プランを変更することができるとともに、治療対象部位に対して効果的に放射線を照射することを可能にする。
【0077】
(第2の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0078】
上述した第1の実施形態では、天板250を平行移動することで干渉を回避する場合を例に挙げて説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、天板250上に横臥する患者の位置を変更する場合であってもよい。この場合には、例えば、通常天板の中央付近に患者に横たわるよう指示するが、治療計画機能343は、操作者に対し、患者の位置を天板中央から右方向にずれた位置に横たわるよう推奨する。図8は、第2の実施形態に係る治療計画機能による治療計画の修正処理の一例を説明するための図である。図8においては、被治療体Pの患者モデルに対する治療計画の修正を示す。
【0079】
例えば、治療計画機能343が、図8の上段の図に示す照射位置からの放射線の照射プランを計画したとする。ここで、干渉判定機能344が上段の図に示す照射位置からの放射線の照射プランでは干渉を生じると判定すると、治療計画機能343は、干渉を生じる位置と程度の情報を干渉判定機能344から受け付けて、照射プランの修正を実行する。ここで、治療計画機能343は、先に計画した照射プランにおける照射角度を変化させずに照射プランを変化させる。例えば、治療計画機能343は、図8の下段の図に示すように、操作者に対し、患者の位置を天板中央から右方向にずれた位置に横たわるよう推奨する。放射線発生機232の照射角度あるいは天板250の角度を変更した照射プランに修正しても良い。
【0080】
あるいは治療計画機能343が、照射領域に対する線量を保持しつつ、さらに照射領域以外の正常組織、特に放射線に対する感受性が高く放射線が照射されないようにすべき臓器に対する線量を増加させない範囲で、照射プランを変化させる。
【0081】
また、上述した第1の実施形態では、治療計画装置300が、各処理を実行する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、放射線治療システム1に含まれるいずれの装置が処理する場合であってもよい。この場合、処理を実行する装置が、処理回路340と同様の処理回路を有し、同様の処理を実行する。
【0082】
また、第1の実施形態では、治療計画の立案に用いられるボリュームデータとしてCT画像データを用いる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置や、PET(Positron Emission Tomography)装置、或いは、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置などによって収集されたボリュームデータを用いる場合であってもよい。
【0083】
なお、上述した放射線治療計画用CT装置100、放射線治療装置200及び治療計画装置300の説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。
【0084】
また、第1の実施形態で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0085】
また、第1の実施形態で説明した治療計画方法は、予め用意された干渉判定プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この干渉判定プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この干渉判定プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0086】
以上説明したとおり、第1及び第2の実施形態によれば、治療計画と干渉チェックを効率よく行うことを可能にする。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0088】
300 治療計画装置
343 治療計画機能
344 干渉判定機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8