特許第6971543号(P6971543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971543
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 11/00 20060101AFI20211111BHJP
   F25D 21/04 20060101ALI20211111BHJP
   F25D 21/14 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   F25D11/00 101B
   F25D21/04 L
   F25D21/14 U
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-146385(P2016-146385)
(22)【出願日】2016年7月26日
(65)【公開番号】特開2018-17428(P2018-17428A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年5月31日
【審判番号】不服2021-406(P2021-406/J1)
【審判請求日】2021年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 明裕
(72)【発明者】
【氏名】林 秀竹
【合議体】
【審判長】 林 茂樹
【審判官】 山崎 勝司
【審判官】 平城 俊雅
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−59109(JP,A)
【文献】 特開平10−132445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D11/00
F25D21/04
F25D21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体内に収容されている圧縮機と、
前記圧縮機に対して送風するファンと、
前記圧縮機に接続され、前記ファンによる送風経路上の配置されている凝縮器と、
前記凝縮器に接続されているとともに、前記本体の表面に埋設されている放熱パイプと、
前記本体の表面に結露が発生する可能性を判定する結露判定部と、
常には前記凝縮器から前記圧縮機に向かって送風されるように前記ファンの回転方向を制御する一方、前記結露判定部によって結露が発生する可能性があると判定されると、前記圧縮機から前記凝縮器に向かって送風されるように前記ファンの回転方向を制御する制御部と、
を備える冷蔵庫。
【請求項2】
湿度を取得する湿度取得部を備え、
前記結露判定部は、前記湿度取得部によって取得した湿度が予め定められている基準湿度以上となると、前記本体の表面に結露が発生する可能性があると判定する請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項3】
凝縮温度の変化をもたらす外気温を検出する外気温取得部を備え、
前記結露判定部は、前記外気温取得部によって取得した外気温が予め定められている基準外気温度以下になると、前記本体の表面に結露が発生する可能性があると判定する請求項1または2記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記圧縮機の回転数を取得する圧縮機回転数取得部を備え、
前記結露判定部は、前記圧縮機回転数取得部によって取得した前記圧縮機の回転数が予め定められている基準圧縮機回転数以下になると、前記本体の表面に結露が発生する可能性があると判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記ファンの回転数を取得するファン回転数取得部を備え、
前記結露判定部は、前記ファン回転数取得部によって取得した前記ファンの回転数が予め定められている基準ファン回転数以下になると、前記本体の表面に結露が発生する可能性があると判定する請求項1から4のいずれか一項記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記凝縮器による凝縮温度を取得する凝縮温度取得部を備え、
前記結露判定部は、前記凝縮温度取得部によって取得した前記凝縮温度が予め定められている基準凝縮温度以下になると、前記本体の表面に結露が発生する可能性があると判定する請求項1から5のいずれか一項記載の冷蔵庫。
【請求項7】
当該冷蔵庫は、除霜機能を有しており、
除霜が行われた除霜時間を取得する除霜時間取得部を備え、
前記結露判定部は、前記除霜時間取得部によって取得した除霜時間が予め定められている基準除霜時間以上になると、前記本体の表面に結露が発生する可能性があると判定する請求項1から6のいずれか一項記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記凝縮器の下部に設けられている蒸発皿と、
前記蒸発皿内の水位を取得する水位取得部と、を備え、
前記結露判定部は、前記水位取得部によって取得した前記蒸発皿内の水位が予め定められている基準水位以上になると、前記本体の表面に結露が発生する可能性があると判定する請求項1から7のいずれか一項記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫は、圧縮機や凝縮器等で構成された冷凍サイクルを有しているとともに、圧縮機の放熱を促すためにファンが設けられている。このような冷蔵庫では、一般的に圧縮機の方が高温であることから、凝縮器から圧縮機に向かって送風することによって効率的な放熱を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3831212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、冷蔵庫は、本体の表面に放熱パイプが埋設されており、冷凍サイクルで発生した熱を放熱パイプにて本体に伝えることにより、本体の表面の結露を防止している。
しかしながら、放熱をし過ぎた場合には、放熱パイプの温度が低くなり、その結果、本体の表面が結露するおそれが高くなる。
そこで、本体の表面が結露するおそれを低減することができる冷蔵庫を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の冷蔵庫は、本体と、本体内に収容されている圧縮機と、圧縮機に対して送風するファンと、圧縮機に接続され、ファンによる送風経路上の配置されている凝縮器と、凝縮器に接続されているとともに、本体の表面に埋設されている放熱パイプと、本体の表面に結露が発生する可能性を判定する結露判定部と、常には凝縮器から圧縮機に向かって送風されるようにファンの回転方向を制御する一方、結露判定部によって結露が発生する可能性があると判定されると、圧縮機から凝縮器に向かって送風されるようにファンの回転方向を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の冷蔵庫の構成を模式的に示す図
図2】冷蔵庫の電気的構成を模式的に示す図
図3】ファンの回転方向を制御する処理の流れを示す図
図4】圧縮機、凝縮器およびファンの並び順の他の例を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について、図1から図4を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の冷蔵庫1は、本体2内に、圧縮機3、ファン4、凝縮器5、蒸発皿6等を備えている。これら圧縮機3、ファン4、凝縮器5、蒸発皿6は、本体2内の例えば下部に設けられている機械室7内に収容されている。圧縮機3および凝縮器5は、蒸発器12(図2参照)とともに、周知の冷凍サイクルを構成している。
【0008】
ファン4は、本実施形態では軸流ファンを用いており、圧縮機3と凝縮器5との間に配置されている。換言すると、圧縮機3および凝縮器5は、ファン4によって形成される送風経路内に配置されている。このため、通常時には、ファン4が回転すると、矢印Xにて示すように凝縮器5から圧縮機3に向かって送風つまりは空気の流れが発生し、運転時に比較的温度が高くなる圧縮機3を冷却することができる。以下、通常時のファン4の回転方向を正回転と称する。一方、詳細は後述するが、正回転とは逆となる逆回転でファン4が回転すると、矢印Yにて示すように圧縮機3から凝縮器5に向かって送風される。
【0009】
この冷蔵庫1には、本体2の表面に放熱パイプ8が埋設されている。具体的には、放熱パイプ8は、本体2の表面を形成している外箱や外板の内面側に、当該内面側に当接または近接した状態で設けらている。放熱パイプ8は、冷媒の流れにおいて凝縮器5の下流側に接続されており、冷凍サイクルで発生する熱を本体2に伝達する。これにより、本体2の表面温度が低下することによる結露の発生を抑制している。なお、図示は省略するが、本体2内には、周知のように前面が開口しているとともに、扉によってその開口が開閉される貯蔵室が設けられている。また、図1に示す放熱パイプ8の配設態様は一例であり、放熱パイプ8は、本体2の側面、上面、開口を除く正面等にも配設されている。また、貯蔵室は、1つに限らず、複数であってもよい。
【0010】
冷蔵庫1は、図2に示すように、例えばマイクロコンピュータで構成された制御部10を備えている。この制御部10は、時間を計時する計時部として機能するタイマ11(除霜時間取得部)を備えているとともに、圧縮機3、ファン4、凝縮器5、蒸発器12、凝縮器5の凝縮温度を取得する凝縮温度センサ13(凝縮温度取得部)、蒸発器12の温度を取得する蒸発器温度センサ14(蒸発器温度取得部)、湿度を検出する湿度センサ15(湿度取得部)、外気温センサ16(外気温取得部)、および水位センサ17(水位取得部)等に接続されている。なお、図示は省略するが、制御部10は、貯蔵室内の温度を取得するセンサや庫内灯等にも接続されている。
【0011】
また、制御部10は、本体2の表面の結露の可能性を判定する結露判定部10a、圧縮機3の回転数を取得する圧縮機回転数取得部10b、ファン4の回転数を取得するファン回転数取得部10cを備えている。本実施形態では、これら結露判定部10a、圧縮機回転数取得部10bおよびファン回転数取得部10cは、プログラムをマイクロコンピュータで実行することによりソフトウェア的に実現されている。
このような構成の冷蔵庫1は、周知のように、冷凍サイクルを駆動して貯蔵室内を冷蔵・冷凍している。また、冷蔵庫1は、蒸発器12の表面に付着する霜を取り除くいわゆる除霜機能を備えている。
【0012】
次に上記した構成の作用について説明する。
前述のように、冷蔵庫1は、通常時には圧縮機3の方が高温であることから、凝縮器5から圧縮機3に向かって送風することによって効率的な放熱を行っている。しかし、放熱をし過ぎた場合には、放熱パイプ8の温度が低くなり、その結果、本体2の表面が結露するおそれが高くなる。そこで、本実施形態の冷蔵庫1は、ファン4を正回転または逆回転で駆動することにより、つまりは、空気の流れを凝縮器5から圧縮機3への向き(正回転時)または圧縮機3から凝縮器5への向き(逆回転時)に切り替えることにより、本体2の表面が結露するおそれを低減している。
【0013】
具体的には、冷蔵庫1は、図3に示す判定処理を適宜繰り返して実行しており、ファン4の回転を制御する際、逆回転条件が成立したか否かを判定する(S1)。ここで、逆回転条件とは、本体2の表面が結露する可能性を判定するための条件であり、本実施形態では以下の条件A〜Gが設定されている。
条件A:湿度センサ15によって取得した湿度が予め定められている基準湿度以上となったこと。
条件B:外気温センサ16によって取得した外気温が予め定められている基準外気温度以下になったこと。
【0014】
条件C:圧縮機回転数取得部10bによって取得した圧縮機3の回転数が予め定められている基準圧縮機回転数以下になったこと。なお、圧縮機3の回転数が低下すると、凝縮温度も低下する。
条件D:ファン回転数取得部10cによって取得したファン4の回転数が予め定められている基準ファン回転数以下になったこと。
【0015】
条件E:凝縮温度センサ13によって取得した凝縮器5の温度が予め定められている基準凝縮温度以下になったこと。
条件F:タイマ11によって計時された除霜時間が予め定められている基準除霜時間以上になったこと。
条件G:水位センサ17によって取得した蒸発皿6内の水位が予め定められている基準水位以上になったこと。
【0016】
冷蔵庫1は、いずれかの逆回転条件が成立したと判定すると(S1:YES)、ファン4を逆回転で駆動する(S3)。一方、冷蔵庫1は、いずれの逆回転条件も成立していない判定すると(S1:NO)、ファン4を正回転で駆動する(S2)。つまり、冷蔵庫1は、逆回転条件が成立したか否かに基づいて、ファン4の回転方向を制御する。
【0017】
このように、冷蔵庫1では、上記した逆回転条件が成立したか否かに基づいて結露する可能性を判定し、結露する可能性があると判定すると、ファン4を逆回転で駆動することにより圧縮機3から凝縮器5に向かって送風されるようにしている。これにより、結露の可能性がある場合において凝縮器5の放熱が抑制され、放熱パイプ8にファン4を正回転で駆動した場合よりも多くの熱が伝達されることになり、本体2の表面温度が低下することが抑制される。つまり、本体2の表面が結露するおそれを低減できる。
【0018】
以上説明した冷蔵庫1によれば、次のような効果を得ることができる。
冷蔵庫1は、本体2と、本体2内に収容されている圧縮機3と、圧縮機3に対して送風するファン4と、圧縮機3に接続され、ファン4による送風経路上の配置されている凝縮器5と、凝縮器5に接続されているとともに本体2の表面内側に埋設されている放熱パイプ8と、本体2の表面に結露が発生する可能性を判定する結露判定部10aと、常には凝縮器5から圧縮機3に向かって送風されるようにファン4の回転方向を制御する一方、結露判定部10aによって結露が発生する可能性があると判定されると、圧縮機3から凝縮器5に向かって送風されるようにファン4の回転方向を制御する制御部10と、を備える。
【0019】
これにより、ファン4を逆回転で駆動した場合には、圧縮機3から凝縮器5に向かって送風されることから、凝縮器5の放熱が抑制され、放熱パイプ8には、ファン4を正回転で駆動した場合よりも多くの熱が伝達される。したがって、本体2の表面温度が低下することが抑制され、本体2の表面が結露するおそれを低減することができる。
【0020】
このとき、湿度が高いとき(条件Aに対応する)、外気温が低いとき(条件Bに対応する)、圧縮機3またはファン4の回転数により間接的に取得される凝縮温度が低いとき(条件C、Dに対応する)、凝縮温度センサ13により直接的に取得される凝縮温度が低いとき(条件Eに対応する)において、ファン4を逆回転で駆動することにより本体2の表面が結露することを抑制できる。
【0021】
また、除霜時間が長いとき(条件Fに対応する)には、除霜水量つまりは蒸発皿6に貯留されている水の量が多いと想定されるため、ファン4を逆回転で駆動することにより、本体2の表面が結露することを抑制できるとともに、凝縮器5の下方に位置して設けられている蒸発皿6に向かって送風することで、蒸発皿6内の水の蒸発を促進することができ、水溢れを防止することができる。また、水位センサ17によって直接的に取得された蒸発皿6内の水位が高いとき(条件Gに対応する)も同様である。
(その他の実施形態)
【0022】
実施形態では条件A〜Gを設定し、そのうちのいずれか1つが成立した場合に本体2の表面が結露する可能性があると判定する構成を示したが、条件A〜Gの少なくともいずれか1つの条件が設定されていればよく、必ずしも条件A〜Gの全てを設定する必要はない。また、条件A〜Gをそれぞれ単独で用いるのではなく、複数の条件を組み合わせて設定してもよい。例えば、条件A(湿度)と条件B(外気温)とを組み合わせて外気温に応じて基準湿度を変更したり、条件A(湿度)と条件B(外気温)と条件G(水位)とを組み合わせて外気温および湿度に応じて基準水位を変更したりしてもよいし。
【0023】
実施形態では放熱パイプ8を例示したが、防露パイプであってもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0024】
図面中、1は冷蔵庫、2は本体、3は圧縮機、4はファン、5は凝縮器、6は蒸発皿、8は放熱パイプ、10は制御部、10aは結露判定部、10bは圧縮機回転数取得部、10cはファン回転数取得部、11はタイマ(除霜時間取得部)、13は凝縮温度センサ(凝縮温度取得部)、14は蒸発器温度センサ(蒸発器温度取得部)、15は湿度センサ(湿度取得部)、16は外気温センサ(外気温取得部)、17は水位センサ(水位取得部)を示す。
図1
図2
図3
図4