特許第6971545号(P6971545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6971545回転可能な切削工具と当該回転可能な切削工具のためのレンチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971545
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】回転可能な切削工具と当該回転可能な切削工具のためのレンチ
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/26 20060101AFI20211111BHJP
   B25B 13/02 20060101ALI20211111BHJP
   B23C 5/00 20060101ALI20211111BHJP
   B23C 5/10 20060101ALI20211111BHJP
   B23B 51/00 20060101ALI20211111BHJP
   B24B 45/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   B23C5/26
   B25B13/02 C
   B23C5/00 A
   B23C5/10 D
   B23B51/00 T
   B24B45/00
【請求項の数】31
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-148285(P2016-148285)
(22)【出願日】2016年7月28日
(65)【公開番号】特開2017-30144(P2017-30144A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2019年7月24日
(31)【優先権主張番号】10 2015 214 434.8
(32)【優先日】2015年7月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503019925
【氏名又は名称】フランツ・ハイマー・マシーネンバウ・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランツ・ハイマー
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−047099(JP,U)
【文献】 米国特許第06082228(US,A)
【文献】 特開平05−305575(JP,A)
【文献】 独国特許発明第00231581(DE,C2)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0072977(US,A1)
【文献】 特開2002−103130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/00
B25B 13/00
B23B 51/00
B24B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な切削工具(10;110)であって、当該回転可能な切削工具は、軸方向を規定する工具軸線(W)に沿って延在し、前記切削工具(10;110)は、軸に沿った第一の長手方向端部領域(12;112)において切削形成部(13;113)を有しており、前記切削形成部は加工対象物における材料除去のために形成されており、当該切削工具(10;110)は、前記軸に沿った第一の長手方向端部領域と反対の、軸に沿った第二の長手方向端部領域(18;118)においてネジ接続形成部(20;120)を有しており、当該ネジ接続形成部は、結合部材(24)とネジ接続するために形成されており、前記切削工具(10;110)は前記工具軸線(W)に関して、互いに直径方向において向き合っているレンチ作用面形成部(30,36;130,136)を有しており、当該レンチ作用面形成部はトルクを伝達するようにレンチのレンチ面(58,60,62,64)と当接係合するために形成されており、
前記レンチ作用面形成部(30,36;130,136)のそれぞれは、周方向において前記工具軸線(W)の周りに、互いに距離を有して設けられた少なくとも二つのレンチ作用面領域(32/34,38/40;132/134,138/140)を有しており、当該レンチ作用面領域は互いに離れるように傾斜しており、それにより前記工具軸線(W)から離れるように突出する頂部(S)を形成している、回転可能な切削工具において、
前記レンチ作用面形成部(30,36;130,136)の、周方向において直接的に隣接するとともに互いに相対的に傾斜しているレンチ作用面領域(32/34,38/40;132/134,138,140)の法線ベクトル(N38,N40;N132,N134)が含む角度(α)は15°以下であることを特徴とする、回転可能な切削工具。
【請求項2】
傾斜軸線(N)であって、当該傾斜軸線の周りに、レンチ作用面形成部(30,36;130,136)の、周方向において前記工具軸線(W)の周りに隣接する二つのレンチ作用面領域(32/34,38/40;132/134,138/140)が互いに相対的に傾斜している傾斜軸線が、前記工具軸線(W)に対して平行であることを特徴とする、請求項1に記載の回転可能な切削工具(10;110)。
【請求項3】
一のレンチ作用面形成部(30,36;130,136)の少なくとも一つのレンチ作用面領域(32,34,38,40;132,134,138,140)が平坦であることを特徴とする、請求項1または2に記載の回転可能な切削工具(10;110)。
【請求項4】
一のレンチ作用面形成部(30,36;130,136)の全てのレンチ作用面領域(32,34,38,40;132,134,138,140)が平坦であることを特徴とする、請求項3に記載の回転可能な切削工具(10;110)。
【請求項5】
二つのレンチ作用面形成部(30,36;130,136)の全てのレンチ作用面領域(32,34,38,40;132,134,138,140)が平坦であることを特徴とする、請求項4に記載の回転可能な切削工具(10;110)。
【請求項6】
少なくとも一つの平坦なレンチ作用面領域(32,34,38,40;132,134,138,140)が、前記工具軸線(W)に対して平行に向けられていることを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載の回転可能な切削工具(10;110)。
【請求項7】
全ての平坦なレンチ作用面領域(32,34,38,40;132,134,138,140)が、前記工具軸線(W)に対して平行に向けられていることを特徴とする、請求項6に記載の回転可能な切削工具(10;110)。
【請求項8】
レンチ作用面形成部(30,36;130,136)の、周方向において直接的に隣接するとともに互いに相対的に傾斜しているレンチ作用面領域(32/34,38/40;132/134,138/140)の法線ベクトル(N38,N40;N132,N134)が含む角度(α)は、10°以下であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の回転可能な切削工具(10;110)。
【請求項9】
レンチ作用面形成部(30,36;130,136)の、周方向において直接的に隣接するとともに互いに相対的に傾斜しているレンチ作用面領域(32/34,38/40;132/134,138/140)の法線ベクトル(N38,N40;N132,N134)が含む角度(α)は、7.5°以下であることを特徴とする、請求項8に記載の回転可能な切削工具(10;110)。
【請求項10】
レンチ作用面形成部(30,36;130,136)の、周方向において直接的に隣接するとともに互いに相対的に傾斜しているレンチ作用面領域(32/34,38/40;132/134,138/140)の法線ベクトル(N38,N40;N132,N134)が含む角度(α)は、5°以下であることを特徴とする、請求項9に記載の回転可能な切削工具(10;110)。
【請求項11】
前記切削工具(10;110)は二つのレンチ作用面形成部(30,36;130,136)を有しており、当該レンチ作用面形成部は、前記工具軸線(W)を含む対称平面(SE)に関して鏡面対称であり、または/および対称軸線としての前記工具軸線(W)に関して回転対称であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の回転可能な切削工具(10;110)。
【請求項12】
一のレンチ作用面形成部(30または36;130または136)の少なくとも一つのレンチ作用面領域(32,34,38,40;132,134,138,140)は、他のレンチ作用面形成部(36または30;136または130)の一のレンチ作用面領域(32,34,38,40;132,134,138,140)に平行であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の回転可能な切削工具(10;110)。
【請求項13】
一のレンチ作用面形成部(30または36;130または136)のそれぞれのレンチ作用面領域(32,34,38,40;132,134,138,140)は、他のレンチ作用面形成部(36または30;136または130)の一のレンチ作用面領域に平行であることを特徴とする、請求項12に記載の回転可能な切削工具(10;110)。
【請求項14】
異なるレンチ作用面形成部(30,36;130,136)の互いに平行なレンチ作用面領域(32/40,34/38;132/134,138/140)は、前記切削工具(10;110)の互いに直径方向に向き合っている円周領域内にあることを特徴とする、請求項12または13に記載の回転可能な切削工具(10;110)。
【請求項15】
前記切削工具(10;110)は、ちょうど二つのレンチ作用面形成部(30,36;130,136)を有していることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の回転可能な切削工具(10;110)。
【請求項16】
個々のレンチ作用面形成部(30,36;130,136)が、ちょうど二つの互いに相対的に傾斜したレンチ作用面領域(32/34,38/40;132/134,138/140)を有していることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の回転可能な切削工具(10;110)。
【請求項17】
前記切削工具(10;110)は工具ヘッド(10)であることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の回転可能な切削工具(10;110)。
【請求項18】
前記結合部材(24)は軸部材、工具受容部、またはチャックであることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の回転可能な切削工具(10;110)。
【請求項19】
レンチのためのオープンエンドレンチ形成部(50)であり、回転可能な対象物(10)にトルクを導入するためのオープンエンドレンチ形成部であって、前記回転可能な対象物(10)は、顎開口部(66)を起点として、導入方向(I)において導入軸線(E)に沿って、前記オープンエンドレンチ形成部(50)に導入可能であり、前記オープンエンドレンチ形成部(50)は概ね前記導入軸線(E)に沿って延在するとともに、前記導入軸線(E)を超えて向き合っている二つの顎部(53,54)を有しており、個々の顎部(53,54)はちょうど二つのレンチ面領域(58/60,62/64)を有しており、当該レンチ面領域は前記導入軸線(E)に沿って連続的に設けられているとともに、互いに離れるように傾斜しており、それによりそれぞれ他の顎部(53,54)に向かって突出する頂部を(P)を形成し、
個々の顎部(53,54)の二つのレンチ面領域(58/60,62/64)の間の傾斜角度は、10°以下であるオープンエンドレンチ形成部において、
両方の顎部について、一方の顎部(53または54)の顎開口部に近いレンチ面領域(58,62)は、それぞれ他方の向き合っている顎部(54または53)の顎開口部から遠いレンチ面領域(60,64)に対して平行であることが当てはまり、
前記顎開口部(66)と、前記顎開口部に近い二つのレンチ面領域(58,62)との間に、導入方向(I)において徐々に狭くなる導入斜面(68)が設けられており、
前記導入斜面(68)によって前記導入軸線(E)の両側で画定されている顎領域は、前記導入軸線(E)に沿って測定すべき長さであって、前記顎開口部に近いレンチ面領域(58,62)によって画定される顎領域の、前記導入軸線(E)に沿って測定すべき長さよりも大きい長さを有していることを特徴とするオープンエンドレンチ形成部。
【請求項20】
顎開口部に近い前記二つのレンチ面領域(58,62)の間の距離が、前記導入方向(I)において小さくなり、または/および顎開口部から遠い前記二つのレンチ面領域(60,64)の間の距離が、前記導入方向(I)において大きくなることを特徴とする、請求項19に記載のオープンエンドレンチ形成部(50)。
【請求項21】
個々の顎部(53,54)の二つのレンチ面領域(58/60,62/64)の間の傾斜角度は、7.5°以下であることを特徴とする、請求項19または20に記載のオープンエンドレンチ形成部(50)。
【請求項22】
個々の顎部(53,54)の二つのレンチ面領域(58/60,62/64)の間の傾斜角度は、5°以下であることを特徴とする、請求項21に記載のオープンエンドレンチ形成部(50)。
【請求項23】
前記レンチ面領域(58,60,62,64)の少なくとも一部が平坦であることを特徴とする、請求項19から22のいずれか一項に記載のオープンエンドレンチ形成部(50)。
【請求項24】
全てのレンチ面領域(58,60,62,64)が平坦であることを特徴とする、請求項23に記載のオープンエンドレンチ形成部(50)。
【請求項25】
前記導入斜面(68)は、40°よりも大きい開口部角度を有していることを特徴とする、請求項19に記載のオープンエンドレンチ形成部(50)。
【請求項26】
前記導入斜面(68)は、50°よりも大きい開口部角度を有していることを特徴とする、請求項19に記載のオープンエンドレンチ形成部(50)。
【請求項27】
前記導入斜面(68)は、60°の開口部角度を有していることを特徴とする、請求項26に記載のオープンエンドレンチ形成部(50)。
【請求項28】
前記導入斜面(68)によって前記導入軸線(E)の両側で画定されている顎領域は、前記導入軸線(E)に沿って測定すべき長さであって、前記顎開口部に近いレンチ面領域(58,62)によって画定される顎領域および前記顎開口部から遠いレンチ面領域(60,64)によって画定される顎領域の、前記導入軸線(E)に沿って測定すべき長さよりも大きい長さを有していることを特徴とする、請求項25から27のいずれか一項に記載のオープンエンドレンチ形成部(50)。
【請求項29】
インサート部材に形成された請求項19から28のいずれか一項に記載のオープンエンドレンチ形成部(50)を備えるインサート部材(52)であって、当該インサート部材(52)は、レンチフレームに着脱可能に受容するために構成されていることを特徴とする、インサート部材(52)。
【請求項30】
請求項19から28のいずれか一項に記載のオープンエンドレンチ形成部(50)を備えるレンチ。
【請求項31】
前記レンチは、前記オープンエンドレンチ形成部(50)の両側に作用部を備えることを特徴とする請求項30に記載のレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転可能な切削工具、特に例えばフライスヘッド、グラインダーヘッド、ドリルヘッドのような工具ヘッドに関しており、当該回転可能な切削工具は、軸方向を規定する工具軸線に沿って延在し、前記切削工具は、軸に沿った第一の長手方向端部領域において切削形成部を有しており、前記切削形成部は加工対象物における材料除去のために形成されており、当該切削工具は、前記軸に沿った第一の長手方向端部領域と反対の、軸に沿った第二の長手方向端部領域においてネジ接続形成部を有しており、当該ネジ接続形成部は、例えば軸部材、工具受容部、または/およびチャックのような結合部材とネジ接続するために形成されており、前記切削工具は工具軸線に関して互いに直径方向において向き合っているレンチ作用面形成部を有しており、当該レンチ作用面形成部はトルクを伝達するようにレンチ、特にトルクレンチのレンチ面と当接係合するために形成されている。
【0002】
本発明はまた、回転可能な対象物、特に回転可能な切削工具のレンチ作用面形成部にトルクを導入するためのレンチ、特にトルクレンチのためのオープンエンドレンチ形成部に関しており、前記回転可能な対象物は、オープンエンドレンチ形成部の顎開口部を起点として、導入方向において導入軸線に沿ってオープンエンドレンチ形成部に導入可能であり、オープンエンドレンチ形成部は、概ね導入軸線に沿って延在するとともに、導入軸線を超えて向き合っている二つの顎部を有しており、個々の顎部はちょうど二つのレンチ面領域を有しており、当該レンチ面領域は導入軸線に沿って連続的に設けられているとともに、互いに離れるように傾斜しており、それによりそれぞれ他の顎部に向かって突出する頂部を形成している。
【背景技術】
【0003】
回転可能な切削工具は、一般的に知られている。回転可能な切削工具は当業者の間では「工具ヘッド」または「ねじ込みアダプタ」とも称される。
【0004】
同属の切削工具の背景にある思想は以下の通りである。すなわち、切削工具を規定通りに使用すると、概ね切削形成部、すなわち例えば刃のみが摩耗させられる一方、当該切削工具の残りの部材部分は、切削形成部の摩耗に関わらず使用可能な状態を保っている。そのため、摩耗させられた切削形成部が摩耗させられていない切削形成部と交換され得、残留する少なくとも一つの、切削工具を担持する部材は使用が続けられ得る切削工具が作り出された。切削工具を担持するこのような部材は軸部材であってよく、当該軸部材に、切削工具は当該切削工具のネジ接続形成部によってねじ込まれ得る。軸部材は例えば、工具受容部に適合する、切削工具とは異なる軸直径を有して構成されていてよい。切削工具を担持する部材は、工具受容部またはチャック自体であってもよく、当該チャックに本発明の切削工具は、軸部材を介在させることなく、直接的にねじ込まれていてよい。同属の切削工具は回転する工作機械、例えばドリル加工機械またはフライス加工機械に用いられる。
【0005】
同属の回転可能な切削工具は例えば、出願人による特許文献1から知られている。
【0006】
これらの同属の切削工具は通常、これらのために独自に形成されたレンチ、特にトルクレンチによって、切削工具を担持する部材にねじ込まれる。これらのレンチはそのために、オープンエンドレンチ形成部を有しており、当該オープンエンドレンチ形成部に、切削工具のレンチ作用面形成部が導入軸線に沿って導入可能となっている。
【0007】
従来技術では、回転可能な切削工具におけるレンチ作用面形成部も、オープンエンドレンチ形成部におけるレンチ面領域も、ちょうど二つの平行かつ平坦な当接面によって形成されており、当該当接面はレンチ作用面形成部の場合、工具軸線に対して平行に向けられているとともに、当接面に対して平行に展開する平面に対して鏡面対称に設けられている。同じことはオープンエンドレンチ形成部のレンチ面領域にも当然ながら当てはまるが、当該レンチ面領域に関して基準軸線としての工具軸線は、オープンエンドレンチ形成部が切削工具と当接係合しているときだけ、用いられる。
【0008】
切削工具をオープンエンドレンチ形成部に導入する際、工具側のレンチ作用面形成部とレンチ側のレンチ面領域とを、ただ平行かつ平坦な当接面として構成する既知のやり方は、取り分け公称顎開口部幅と、レンチ作用面形成部の公称距離との許容差が小さいことにより、最終的にオープンエンドレンチ形成部から回転可能な切削工具にトルクが伝達され得るまで、長く続くとともに忍耐を要する通り抜け工程を生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2014/026975号パンフレット
【特許文献2】米国特許第3242775号明細書
【特許文献3】独国特許発明第231581号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明の課題は以下の点を可能にする技術的な教示を記載することである。すなわち、同属の切削工具を、手間のかかる導入作業もしくは通り抜け作業を有さずに、対応するレンチと当接係合させることができ、さらに、当接係合を生じさせた後、切削工具へのトルクの導入が、工具側のレンチ作用面領域とレンチ側のレンチ面領域との平面接触を介して行われることを可能にし、それにより従来技術において切削工具にトルクを導入する際に観察されることが多い、レンチ作用面領域の端部荷重は低減されるか、完全に回避さえされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
特許文献2から六角ボルトのためのオープンエンドレンチが知られており、当該オープンエンドレンチでは個々の顎部がちょうど3個のレンチ面領域を有しており、当該レンチ面領域は導入方向において連続的に設けられている。このとき中央のレンチ面領域は導入軸線に対して平行に設けられており、顎開口部に近いレンチ面領域と、顎開口部から遠いレンチ面領域とは、中央のレンチ面領域に関してそれぞれ、異なる方向においてではあるが、およそ6.5°傾斜している。互いに直接的に向き合う、二つの顎部の顎開口部に近いレンチ面領域は、導入方向において互いに近づくように設けられており、これに対して顎開口部から遠い傾斜したレンチ面領域は、導入方向において互いに離れるように設けられている。
【0012】
このようなオープンエンドレンチ形成部によって、以下の点が意図されている。すなわち、具体的にねじ込まれるべき六角ボルト頭部と、そのために具体的に用いられるべきオープンエンドレンチの寸法が、それぞれ許容される誤差の範囲内でどのようであるかに関わらず、トルクが実際に六角ボルト頭部のレンチ作用面領域に導入され、当該六角ボルト頭部の端部に導入されないことを確保することである。これにより実際は、上記の寸法が許容される誤差の範囲内でどのようであるかに応じて、中央の平行で平坦なレンチ面領域か、当該中央のレンチ面領域に隣接する傾斜したレンチ面領域のどちらかが、選択された回転方向に応じて、トルクを六角ボルト頭部に導入する。
【0013】
特許文献3からオープンエンドレンチが知られており、当該オープンエンドレンチでは個々の顎部がちょうど二つのレンチ面領域を有しており、当該レンチ面領域は互いに相対的に傾斜しており、それによりそれぞれ他方の顎部にたいして突出する頂部を形成しており、一方の顎部の顎開口部に近いレンチ面領域は、それぞれ他方の対向する顎部の顎開口部から遠いレンチ面領域に対して平行であり、逆もまた成り立つ。
【0014】
前記の既知のオープンエンドレンチの顎部のレンチ面領域は、互いに相対的に、比較的大きな傾斜角を有している。当該構成の背後にある技術的な教示が以下のようなものであるためである。すなわち、オープンエンドレンチをトルク導入の回転方向と逆に回せることであり、その際、六角ボルト頭部を有するボルトを部分的に再び緩める必要がなく、それにより、潜在的な障害を潜り抜けて、オープンエンドレンチを導入方向と逆にボルト頭部から引き抜くことができる。
【0015】
特許文献3から知られているオープンエンドレンチ形成部は、トルクを導入するために十分な剛性を提供するために、オープンエンドレンチ形成部の延在する平面において、導入軸線に対して直角に、全体として開口部内法幅のほぼ二倍の大きさである寸法を有しているので、その全体の寸法を有するオープンエンドレンチ形成部を、相応の障害を通過して導入方向と逆に、六角ボルト頭部から確実に引き抜けるためには、個々の顎部のレンチ面領域は、比較的大きな傾斜角を有していなければならない。
【0016】
しかしながら、従来技術のレンチに関する上記の刊行物は、切削工具を、当該切削工具を担持する部材にねじ込むこと、またはねじって取り外すことには何ら関係しておらず、専ら通常の六角ボルト頭部と協働することに関している。このとき注意すべき点は、大量生産品としての六角ボルトと、当該六角ボルトを作用させるために用いられるオープンエンドレンチには、高精密な切削工具および当該切削工具に対応するレンチよりもはるかに大きな寸法許容差があるということである。寸法許容差が大きいことにより、六角ボルトにトルクを導入する場合には、切削工具のレンチ作用面形成部における場合とは全く別の係合状況および力の相互関係が生じる。
【0017】
上記の課題は、本発明の第一の態様に応じて、冒頭で述べた種類の回転可能な切削工具によって解決される。当該回転可能な切削工具において、レンチ作用面形成部のそれぞれは、周方向において工具軸線周りに、互いに距離を有して設けられた少なくとも二つのレンチ作用面領域を有しており、当該レンチ作用面領域は互いに離れるように傾斜しており、それにより工具軸線から離れるように突出する頂部を形成している。
【0018】
頂部は、例えば互いに相対的に傾斜しているレンチ作用面領域が、互いに直接的に隣接するとき、尖った頂部であり得る。しかしながら頂部は、例えば互いに相対的に傾斜しているレンチ作用面領域の間に中間面領域が設けられているとき、平坦化されていてよい。平坦化された頂部は尖った頂部よりも、周方向において工具軸線周りに長いが、径方向においては、工具軸線からの突出が小さく、それにより、レンチをレンチ作用面形成部に被せることが容易になる。
【0019】
このとき工具軸線とは回転軸線であり、当該回転軸線周りに、切削工具は切削作動時に、適正な作動により、適正な条件に応じて回転する。
【0020】
二つのレンチ作用面形成部において、レンチ作用面領域を上記の方法のように傾斜させて構成することにより、レンチ作用面形成部は、径方向外側から見た場合、周方向において工具軸線周りに凸状、通常好ましくは多面体の凸状であり、それにより、被せ軸線を超えて向き合っている二つのレンチ作用面領域の距離は、当該レンチ作用面領域の頂部から遠い端部において、頂部に近い端部におけるよりも小さくてよい。これによりこれらのレンチ作用面領域は、レンチを被せるための補助部を形成し得、従来技術において、許容差の狭いレンチをレンチ作用面形成部に被せる際、多くの場合に必要である「通り抜け」は低減し得るか、回避さえし得る。
【0021】
このとき「被せ軸線」とは、理論上の移動経路であって、当該理論上の移動経路に沿って、レンチのオープンエンドレンチ形成部は、トルク導入を準備するために、切削工具のレンチ作用面形成部に被せられる。被せ軸線は、オープンエンドレンチ形成部が被せられる切削工具の工具軸線に直交するように設けられている。被せ軸線は、通常は平坦なオープンエンドレンチ形成部が延在する平面内にある。被せ軸線と上記の導入軸線とは一致しており、基準となる座標原点のみが異なっている。被せ軸線は切削工具を基準とし、導入軸線はオープンエンドレンチ形成部を基準とする。
【0022】
さらに、互いに離れるように角度をつけられたレンチ作用面領域を具備する、本発明に係る少なくとも一つのレンチ作用面形成部により、レンチのレンチ面と切削工具のレンチ作用面領域との当接係合が平面的な当接として行われ、トルクが例えば少なくとも一つのレンチ作用面形成部の端部を介して導入されないことが保証され得る。従来技術のレンチ作用面形成部は、互いに平行であるとともに工具軸線に対しても平行である二つの対向するレンチ作用面を有しているだけであり、当該従来技術のレンチ作用面形成部では、トルク導入がレンチ作用面形成部の端部を介して行われることは、むしろ通常のケースである。この場合、レンチ作用面形成部の端部とは、当該レンチ作用面形成部を周方向において終結させる当該レンチ作用面形成部の縁部を意味する。そもそもオープンエンドレンチ形成部をレンチ作用面形成部に被せることを可能にするために、レンチのオープンエンドレンチ形成部は、当該オープンエンドレンチ形成部の開口部幅において、レンチ作用面の距離に対してある程度の最小オーバーサイズを有して提供されなければならないという理由による。従来技術のレンチ作用面形成部に被せた後に、オープンエンドレンチ形成部が工具軸線周りにねじられると、通常はオープンエンドレンチ形成部の顎部が、専らレンチ作用面形成部の端部に当接する結果となる。
【0023】
本発明に係る切削工具では事情は異なる。本発明に係る切削工具において、被せ軸線を超えて互いに直角に向き合うレンチ作用面領域の上記の傾斜は、ある種の導入斜面もしくは被せ斜面を形成しており、当該斜面はレンチを被せることを容易にする。これにより、所定の切削工具をねじ込む、またはねじって外すために必要なオープンエンドレンチ形成部の顎開口部は、従来技術における場合よりも小さな許容差を有して提供され得、それにより、レンチ面がレンチ作用面領域に有利に平面的に当接することになる。これはまた、トルク導入に関与する部材部分においてヘルツ接触応力が著しく低減することにつながり、それにより、その他の点では従来技術における場合と部材の構成が等しいとき、本発明に係る切削工具には、増大されたトルクが導入され得る。
【0024】
このとき切削工具の工具軸線/回転軸線は、軸方向を規定する。本願では異なる定義が記載されていない限り、「径方向」によって、工具軸線に直交するとともに、工具軸線に近づく、もしくは工具軸線から離れる方向が表されており、「周方向」によって、工具軸線周りに周回する方向が表されている。工具軸線はこれにより、円筒座標系の原点を形成している。
【0025】
トルクをレンチ作用面領域に導入する際、切削工具に望まない軸力が及ぼされることを回避するために、傾斜軸線であって、当該傾斜軸線周りに、レンチ作用面形成部の、周方向において工具軸線周りに隣接する二つのレンチ作用面領域が互いに相対的に傾斜している傾斜軸線が、工具軸線に対して平行であると有利である。
【0026】
レンチ作用面領域を軸方向において湾曲するように形成することは、基本的に想定可能である。ただしこれは、切削工具と協働するレンチのレンチ面領域が平坦である場合は、好ましくない。この場合、軸方向において球状の、または湾曲したレンチ作用面領域を用いると、トルクを導入するためのレンチと切削工具との可能な接触面が著しく減少し、それに伴ってトルクを導入する際に生じるヘルツ接触応力が望ましくないように増大すると想定される。この理由から、できる限り大きな接触面を提供するためには、レンチ作用面形成部の少なくとも一つのレンチ作用面領域が平坦であることが好ましい。対称性の理由から、好ましくは一のレンチ作用面形成部の全てのレンチ面領域、好ましくは二つのレンチ作用面形成部の全てのレンチ面領域が平坦であり、それによりレンチと、回転可能な切削工具との工具係合は、切削工具とレンチとのあらゆる可能な回転相対位置に関して等しくなる。
【0027】
レンチ作用面領域が好適に平坦に形成されている場合、トルクを導入する際に生じる望ましくない軸力は、少なくとも一つの平坦なレンチ作用面領域が、好ましくは全ての平坦なレンチ作用面領域が、工具軸線に対して平行に設けられていることによって、回避され得る。
【0028】
切削工具においてレンチ作用面形成部を形成するために、当該切削工具から除去すべき材料をできる限り少なくし、それにより切削工具の構造が弱化することをできるだけ少なくするために、レンチ作用面形成部の、周方向において直接的に隣接するレンチ作用面領域が互いに相対的にほんのわずかだけ傾斜していること、例えば当該レンチ作用面領域の法線ベクトルが15°より大きくない角度を含むことが好ましい。実際に試験において、以下の点が明らかになっている。すなわち、傾斜角度が小さいことはそれだけで、オープンエンドレンチ形成部を切削工具のレンチ作用面形成部に被せることを容易にするとともに、トルク導入の際にレンチ面領域が、レンチ作用面領域にできる限り平面的に当接することを可能にするので、通り抜けを容易にすることと、レンチ面領域と、当該レンチ面領域に当接するレンチ作用面領域との間でできる限り平面的な力の導入を行うという所望の技術的効果を実現するためには、周方向において直接的に隣接するレンチ作用面領域に含まれる角度は10°より大きくてはならず、好ましくは7.5°より大きくてはならず、特に好ましくは5°より大きくさえ、あってはならない。好ましくは、切削工具のレンジ作用面形成部における全ての傾斜角度は等しい大きさである。
【0029】
レンチを切削工具のレンチ作用面形成部に被せる際に、周方向において切削工具を正しい位置に置くことができる限り重要とならないように、本発明の好適な発展的構成によれば、切削工具は二つのレンチ作用面形成部を有しており、当該レンチ作用面形成部は、工具軸線を含む対称平面に関して鏡面対称であり、または/および対称軸線としての工具軸線に関して回転対称である。上記の鏡面対称の場合、上記の被せ軸線は鏡面対称平面にある。その場合、被せ軸線と、当該被せ軸線に通常は直交する工具軸線とは、鏡面対称平面を成す。
【0030】
さらに上記の鏡面対称も、上記の回転対称も、望ましい場合は、レンチ作用面形成部のレンチ作用面領域が周方向において異なる長さで形成され得ることを可能にする。従って、鏡面対称の場合、レンチ作用面形成部の頂部は、被せ軸線に直交して互いに向き合い得、回転対称の場合、頂部は、工具軸線を切断する直径線上にあり得、当該直径線は被せ軸線と共に90°とは異なる角度を含み得る。
【0031】
少なくとも二つのレンチ作用面領域を介して、切削工具にトルクをできる限り均一に導入するために、有利には、一のレンチ作用面形成部の少なくとも一つのレンチ作用面領域が、他方のレンチ作用面形成部の一のレンチ作用面領域に平行であることが行われている。トルク導入の際に、周方向において切削工具を正しい位置に置くことが重要でないとするなら、例えばレンチを反対の複数の側から、レンチ作用面形成部に被せることができるものとすれば、一のレンチ作用面形成部のそれぞれのレンチ作用面領域が、他方のレンチ作用面形成部の一のレンチ作用面領域に平行であることが好ましい。より正確に言えばこのとき好適に、異なるレンチ作用面形成部の互いに平行なレンチ作用面領域が、切削工具の互いに直径方向に向き合っている円周領域内にあることが行われており、それにより、概ね互いに直径方向に向き合っている少なくとも二つのレンチ作用面領域を介して、トルクができるだけ均一に切削工具に導入され得る。その場合、二つの平行なレンチ作用面領域同士の距離が、当該レンチ作用面領域へのトルク導入のために必要な顎開口部幅またはレンチ幅を決定する。ここでも以下の点が該当する。すなわち、レンチ作用面形成部のレンチ作用面領域を相対的に互いに傾斜させて構成することにより、必要な顎開口部幅またはレンチ幅を有するオープンエンドレンチ形成部は、従来技術と比べてより小さい寸法許容差を有して提供され得、それにもかかわらず、傾斜したレンチ作用面領域を有するレンチ作用面形成部に、簡単に被せられ得、そのために、寸法許容差がより狭いにもかかわらず、通り抜けを行うための望ましくない手間が必要になることはない。許容差が比較的狭いことの結果はここでも、上記の効果を有する、トルク導入の際のレンチ面領域と、レンチ作用面領域との好適に平面的な当接である。
【0032】
切削工具に多数のレンチ作用面形成部を設けることは、基本的に想定可能である。しかしながら実際、切削工具にトルクを導入するためには、ちょうど二つの互いに向き合うレンチ作用面形成部で十分である。従って製造コストを最小化するために、切削工具は好適に、ちょうど二つのレンチ作用面形成部を有している。
【0033】
ちょうど二つのレンチ作用面形成部の間の円周領域は、好適にレンチ作用面から自由であり、当該円周領域に特に好適に、基準円筒部分を有している。ほとんどの切削工具は、例えば硬質金属などから成る、基本体としての円筒から製造されており、それにより、レンチ作用面形成部を形成するために加工する必要があるのは、後に当該レンチ作用面形成部を担持する円筒形の基本体の円周領域のみであり、周方向においてレンチ作用面形成部の間にある切削工具領域は、当該切削工具領域の本来の基準円筒形状を保持し得る。これは、切削工具の製造のために必要な製造コストを低減する。
【0034】
同様にレンチ作用面形成部は基本的に任意の数のレンチ作用面領域を有し得、当該レンチ作用面領域の、周方向において直接的に隣接するそれぞれ二つのレンチ作用面領域は、互いに相対的に傾斜角度の分だけ傾斜している。レンチ作用面形成部を形成するために切削工具において存在する空間は限られているので、同一のレンチ作用面形成部の個々のレンチ作用面領域は、周方向において数が増えるにつれて、短くなる。従ってレンチの作用に対して十分な大きさの平面を提供するためには、個々のレンチ作用面形成部が、ちょうど二つの互いに相対的に傾斜したレンチ作用面領域を有しているのが好ましい。上記のように形成されたレンチ作用面形成部を有してこのように形成された切削工具は、従来の切削工具のためのレンチで作動され得る。すなわち、オープンエンドレンチ形成部を有するレンチであって、当該オープンエンドレンチ形成部の対向する顎部はそれぞれ、平坦なレンチ面を一つだけ有しており、設けられている二つのレンチ面は互いに平行であるとともに、オープンエンドレンチ形成部が延在する平面に直交している。
【0035】
上記の課題はまた、本発明の第二の態様に応じて、冒頭で述べた種類のオープンエンドレンチ形成部によって解決される。当該オープンエンドレンチ形成部において、個々の顎部の二つのレンチ面領域の間の傾斜角度は、10°以下、好ましくは7.5°以下、特に好ましくは5°以下である。
【0036】
このようなオープンエンドレンチ形成部は、平坦かつ互いに向き合うとともに、互いに対しても工具軸線に対しても平行である、ちょうど二つのレンチ作用面領域のみを有する従来の切削工具と共に用いられ得、あるいは上記のように、本発明に係る切削工具と共に用いられ得る。
【0037】
上記のように有利に小さな傾斜角度により、切削工具のレンチ作用面形成部をオープンエンドレンチ形成部に導入することが容易になる。さらに、切削工具におけるレンチ作用面領域に、レンチ面領域を平面的に当接することが支援され、それによりトルク導入の際、特にレンチ作用面領域の周縁部における端部に近い領域において、望まない線形荷重が回避され得、あるいは点荷重さえ回避され得る。最終的に小さい傾斜角度により、レンチ面領域とレンチ作用面領域との二つの当接係合の間で回転方向の逆転を行う際、無駄な動きが小さく保たれる。
【0038】
切削工具もしくは当該切削工具のレンチ作用面形成部の、オープンエンドレンチ形成部への導入を容易にすることは、互いに向き合う顎部の、顎開口部に近い二つのレンチ面領域の間の距離が、導入方向において小さくなり、従って、顎開口部に近いレンチ面領域が、導入方向においてある種の適度な導入斜面を形成することによって、さらに促進され得る。
【0039】
付加的または代替的に、顎開口部から遠い二つのレンチ面領域の間の距離が、導入方向において大きくなってよく、それにより、互いに向き合う顎部の二つの頂部のみが、オープンエンドレンチ形成部の狭窄箇所を形成し、当該狭窄箇所はしかしながら導入方向においては短い。
【0040】
レンチ面領域と対応するレンチ作用面領域との平面接触を介して、互いに対しても工具軸線に対しても平行な二つのレンチ作用面領域を有するレンチ作用面形成部に、トルクを有利に導入することは、一方の顎部の顎開口部に近いレンチ面領域が、それぞれ他方の向き合っている顎部の、顎開口部から遠いレンチ面領域に対して平行であることにより、さらに改善され得る。これによりさらに、レンチ面領域が対応するレンチ作用面領域に平面的に当接する際、トルク導入のためにできる限り大きな荷重アームが用いられ得る。当該荷重アームは工具軸線であって、当該工具軸線周りに切削工具がトルク導入によって回転させられるべき工具軸線を基準にして考察すべきである。
【0041】
一のレンチ面領域またはレンチ面領域の一部が球状に形成され得ることは排除されるべきではないが、トルク導入の際に、レンチ面領域が対応するレンチ作用面領域と、できる限り大きな接触面積を実現するために、当接係合を行うために配設されているレンチ作用面領域も平坦であることを前提として、レンチ面領域の少なくとも一部が平坦であると有利である。トルク導入の際に望まない軸力が生じることを回避するために、平坦なレンチ面領域は好適に、オープンエンドレンチ形成部が延在する平面に直交しており、オープンエンドレンチ形成部が延在する当該平面内に導入軸線も設けられている。オープンエンドレンチ形成部が延在する平面は、オープンエンドレンチ形成部が上記の切削工具に理想的に当接する場合、工具軸線に直交するように向けられている。
【0042】
切削工具もしくは当該工具のレンチ作用面形成部を、オープンエンドレンチ形成部に迅速かつ簡単に導入することを実現するために、導入方向において顎開口部と、顎開口部に近い二つの向き合うレンチ面領域との間に、導入方向において徐々に狭くなる導入斜面が設けられていてよい。これによりオープンエンドレンチ形成部はまず、大まかな導入斜面を備え得、当該導入斜面は顎開口部に近いレンチ面領域に向かって延びている。当該導入斜面は、40°よりも大きい開口部角度、あるいは50°よりも大きい開口部角度を有し得る。実践では60°の開口部角度が確立している。導入斜面の側面はレンチ面領域を形成していないが、それはトルク導入の際に、オープンエンドレンチ形成部と切削工具との適切な当接係合がなされた後、切削工具の部材外面が、導入斜面の側面に対して力を伝達するように係合することはなく、また、そのような当接状態にもないからである。
【0043】
従って、レンチ面領域と見なされるのは、トルクを伝達する目的で、実際に切削工具のレンチ作用面領域に当接係合するために形成されている、オープンエンドレンチ形成部の平面領域のみである。必要な変更を加えて同じことが、切削工具のレンチ作用面領域について当てはまる。
【0044】
このとき導入斜面は導入軸に沿ってかなりの長さを有しており、それにより導入過程の間に、切削工具のレンチ作用面領域を、傾斜がほんのわずかであって、それによりはるかに小さい開口部角度を形成している、オープンエンドレンチ形成部のレンチ面領域へと、正確に狙いを定めてガイドする。そのために、導入斜面によって導入軸線の両側で画定されている顎領域は、導入軸線に沿って測定すべき長さであって、顎開口部に近いレンチ面領域によって画定される顎領域または/および顎開口部から遠いレンチ面領域によって画定される顎領域の、導入軸線に沿って測定すべき長さよりも大きい長さを有していてよい。
【0045】
導入方向において顎開口部と反対側の、オープンエンドレンチ形成部の端部において、顎部は好適に、オープンエンドレンチ底部によって互いに接続されている。顎部は好適に底部と一体的に形成されている。
【0046】
オープンエンドレンチ形成部はレンチに設けられていてよく、特に着脱不能にレンチと接続されていてよい。この場合、あらゆる可能な顎開口部幅に対して、特殊なレンチが用意される。このようなレンチは、均一かつ高精密にトルクを導入するために好適に、オープンエンドレンチ形成部の両側に、操作者のための作用部を有している。従って本発明は、上記のオープンエンドレンチ形成部を具備するレンチに関するものでもある。
【0047】
しかしながら多くの場合、レンチフレームを用意すれば十分であり、当該レンチフレーム内に、異なる顎開口部幅のオープンエンドレンチ形成部を具備するインサート部材が交換可能に取り付けられる。従って本発明は、上記のようなオープンエンドレンチ形成部を具備するレンチフレームのためのインサート部材に関するものでもある。
【0048】
オープンエンドレンチ形成部は好適に、硬質金属または工具鋼から成る部材に形成されている。
【0049】
例えば個々の切削工具が異なる直径を有しているという理由から、異なるレンチ幅を有する回転可能な切削工具のセットの場合、周方向において直接的に隣接する二つのレンチ作用面領域の間の傾斜角度は、全てのレンチ幅に対して好適に同じ大きさである。同じことは、異なるレンチ幅のオープンエンドレンチ形成部を具備する異なるインサート部材のセットにも当てはまる。この場合も、傾斜角度であって、当該傾斜角度で、直接的に隣接するレンチ面領域が互いに離れるように傾斜している傾斜角度は、全てのレンチ幅に対して好適に同じ大きさである。
【0050】
チャックに取り付けられ、当該チャックにおいてユニオンナットで固定された工具も、本願における切削工具と見なされ得る。当該切削工具は、当該切削工具の長手方向端部領域の一つにネジ接続形成部を有さなくてよい。その場合、上記のように形成されたレンチ作用面形成部は、ユニオンナットに形成されている。従って本発明は、本願において説明されたように実装されているレンチ作用面形成部を具備する、工具チャックのためのユニオンナットに関するものでもある。この意味において、当該ユニオンナットの詳細な発展的構成を行うためにも、上記の文章が参照され、その際、「切削工具」という概念は、「チャック用ユニオンナット」という概念に置き換えて考察されるべきである。
【0051】
以下において本発明を添付の図面に基づいてより詳しく説明する。図面に示すのは以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】レンチ作用面形成部に尖った頂部を備える、本願の本発明に係る切削工具の第一の実施の形態を備える、工作機械の機械スピンドルのための工具受容部の長手方向断面を示す図である。
図2a図1に示す第一の実施の形態の本発明に係る切削工具の側面を示す図である。
図2b図2aの切削工具のレンチ作用面形成部を担持する軸方向部分を、図2aの断面IIb−IIbにおいて示す図である。
図3】レンチフレームに着脱可能に受容させるためのインサート部材に実現された、オープンエンドレンチ形成部の第一の実施の形態の平面を示す図である。
図4a】平坦化された頂部を備える第二の実施の形態による、図1に示す本発明に係る切削工具の側面を示す図である。
図4b図4aの切削工具のレンチ作用面形成部を担持する軸方向部分を、図4aの断面IVb−IVbにおいて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1では、例としてフライスヘッドの形での本発明に係る切削工具の第一の実施の形態が、一般的に10で表されている。工具ヘッド10は工具軸線Wに沿って延在し、工具ヘッドの適正な作動により加工対象物を切削加工する間、工具ヘッド10は当該工具軸線周りに回転する。工具ヘッド10には、当該工具ヘッドの軸に沿った長手方向端部領域12において、切削形成部13が備えられ、本図では複数の刃14と、工具軸線W周りに螺旋状に設けられている切り屑除去溝16とが備えられている。
【0054】
工具ヘッド10には、当該工具ヘッドの反対側の他の長手方向端部領域18において、ネジ接続形成部、すなわちネジ20が備えられ、当該ネジは工具受容部24の雌ネジ22にねじ込み可能である。ネジ20は工具ヘッド10の最も外側の長手方向端部にまで及ぶ必要はない。
【0055】
工具受容部24は雌ネジ22と反対側の当該工具受容部の長手方向端部に、図に示されていない工作機械の機械スピンドルと結合させるための結合形成部26、本図の例では例えばDIN69893に定める中空軸テーパの形の結合形成部26を有している。工具ヘッド10は、工具受容部24の代わりに、好ましくは円筒形の軸部材、またはテーパシャンク型結合形成部を備える工具受容部にねじ込まれ得る。
【0056】
図1における工具受容部24のような工具受容部は周知であるので、ここではさらなる説明は行わない。
【0057】
工具ヘッド10は、長手方向端部領域12および18の間にあり、かつ、切削形成部13を担持する長手方向端部領域12と重複し得る軸方向部分28内に、レンチ作用面形成部30を有しており、当該レンチ作用面形成部は周方向において工具軸線W周りに、直接的に隣接する二つのレンチ作用面領域32および34を有している。
【0058】
前記レンチ作用面形成部30もしくは当該レンチ作用面形成部に属するレンチ作用面領域32および34は取り分け、レンチのレンチ面領域が、できる限り平面的な当接係合を行うのに役立ち、それにより工具ヘッド10を工具受容部24の雌ネジ22にねじ込んだり、当該雌ネジから再びねじって外したりする。
【0059】
図1の工具ヘッド10は、図2aにおいて同じ視点によるが、より大きく表示されている。レンチ作用面領域32および34の間の移行部における線Nは、好適に工具軸線Wに対して平行な傾斜軸線を暗示しており、レンチ作用面領域32および34は当該傾斜軸線周りに、互いに離れるように傾斜しており、それにより当該レンチ作用面領域は頂部Sを形成し、当該頂部は工具軸線Wから離れるように突出している。
【0060】
図2aの観者と反対の側に、さらなるレンチ作用面形成部36が形成されており、当該さらなるレンチ作用面形成部は、図2aの図面平面に対して平行である鏡面対称平面SEを基準として、レンチ作用面形成部30に対して鏡面対称に形成されている(図2b参照)。この第二のレンチ作用面形成部36は相応にレンチ作用面領域38および40を有しており、当該レンチ作用面領域は同様に、工具軸線Wに対して平行な傾斜軸線N周りに、互いに離れるように、しかもおよそ5°の等しい角度αの分だけ傾斜しており、レンチ作用面領域32および34も、当該およそ5°の等しい角度αの分だけ、互いに離れるように傾斜している。従ってレンチ作用面領域38および40も、工具軸線Wから離れるように突出する頂部Sを形成する。
【0061】
図2bの視点を規定している図2aの断面IIb−IIbは、工具軸線Wに直交している。従って工具軸線Wおよび傾斜軸線Nは、図2bの図面平面に直交している。
【0062】
図2bにおいてレンチ作用面領域38の法線ベクトルN38とレンチ作用面領域40の法線ベクトルN40は、当該法線ベクトルの基点が同一の場所に移動された状態で示されている。二つの法線ベクトルN38およびN40は、レンチ作用面領域38および40の傾斜角度αを含んでいる。図2bの表示を見やすくするために、法線ベクトルはレンチ作用面領域38および40においてのみ示されているが、残りのレンチ作用面領域32および34についても同じことが当てはまる。
【0063】
実施の形態において切削工具10のレンチ作用面領域32,34,38および40は、周方向において工具軸線周りに同じ長さであるため、レンチ作用面形成部30および36は、回転対称軸線としての工具軸線Wに関して互いに回転対称でもある。従ってレンチ作用面形成部30および36は、工具軸線W周りに180°回転させることにより、互いに変換可能である。
【0064】
対称平面SEには、工具軸線Wに直交する被せ軸線Aがあり、当該被せ軸線Aに沿ってレンチ、より正確にはレンチのオープンエンドレンチ形成部が、レンチ作用面形成部30および36に被せられ得、それにより回転方向に応じて、レンチ作用面領域32および40、あるいはレンチ作用面領域34および38に、トルクを導入するための準備位置を作り出す。
【0065】
直径方向において互いに向き合う円周領域に設けられているレンチ作用面領域32および40と、レンチ作用面領域34および38とは、好適に互いに平行である。図1から図2bまでに示された第一の実施の形態において、レンチ作用面領域32,34,38および40はそれぞれ平坦であるとともに、工具軸線Wに対して平行に向けられている。
【0066】
レンチ作用面形成部30および36の間の円周領域は、円筒素材の本来の基準円筒形状を有しており、例として示された切削工具10は当該円筒素材から製造されたものである。
【0067】
図2bにおいてよく分かるように、被せ軸線Aを超えて互いに向き合うレンチ作用面領域34および40と、レンチ作用面領域32および38とは、当該レンチ作用面領域が工具軸線Wに対して相対的に傾斜して設けられているために、被せ軸線Aに沿ってレンチ作用面形成部30および36に被せるべきオープンエンドレンチ形成部に対して、被せ補助部を形成している。被せ軸線Aを超えて互いに向き合うレンチ作用面領域34および40の間、あるいはレンチ作用面領域32および38の間にある距離aは、レンチ作用面領域が互いに相対的に傾斜して設けられているために、工具軸線Wからの距離が増大するにつれて被せ軸に沿って小さくなり、それにより上記のレンチ作用面領域34および40の対と、レンチ作用面領域32および38の対とは、それぞれ被せるべきオープンエンドレンチ形成部に対して、ある種の被せ斜面もしくは導入斜面を形成する。
【0068】
切削工具10にトルクを導入するために好適なレンチ幅swは、互いに平行なレンチ作用面領域32および40と、レンチ作用面領域34および38とが延在する平面の距離によって生じる。図2bでは、レンチ作用面領域34および38の対に対するレンチ幅swが、点線で暗示されている。レンチ幅swは、個々のレンチ作用面領域の対の、工具軸線Wから最も遠く離れている場所で測定された場合、距離aよりも実質的に大きいので、オープンエンドレンチ形成部は極めて小さな寸法許容差で製造かつ提供され得るのに、手間のかかる通り抜けを行うことなく、レンチ作用面形成部30および36に被せられ得る。レンチ幅swは好適に、二つのレンチ作用面領域の対に関して、同じ大きさである。
【0069】
このようにわずかな寸法許容差のみを有して提供される、高精密に係合するオープンエンドレンチ形成部に基づいて、オープンエンドレンチ形成部のレンチ面領域の当接部は、トルクを工具ヘッド10に導入するために、レンチ作用面領域32および40に、あるいはレンチ作用面領域34および38に、平面的に当接し得、それにより、接触面がより大きくなることから、同様により大きなトルクが工具ヘッドに導入され得、レンチ作用面形成部30および36が損傷する恐れはない。
【0070】
レンチ作用面形成部30および36にトルクを導入するために、互いに向き合うとともに互いに平行な、二つの平坦なレンチ面のみを備える従来のオープンエンドレンチ形成部が用いられ得る。
【0071】
それぞれが工具軸線に対して平行、かつ互いに平行であるレンチ作用面をただ一つだけ備えるレンチ作用面形成部を有する従来の工具ヘッドのみが使用に供されている場合も、トルク導入箇所を上記のように形成することの有利な技術的効果が利用可能であるべきであるという意味において、これは図3に示されているように、オープンエンドレンチ形成部50によって行われ得る。図3のオープンエンドレンチ形成部50は、図に示されていないレンチフレームに着脱可能に受容させるための既知のインサート部材52に形成されている。インサート部材52は概ね平坦な部材であり、すなわち、当該インサート部材が延在する平面の主たる延在方向において、当該主たる延在方向に直交するインサート部の厚さ方向におけるよりも、はるかに大きな寸法で延在している。図3において、インサート部材52が延在する平面は、図3の図面の平面に対して平行である。インサート部材52が延在する平面は、同様に平坦な構成物であるオープンエンドレンチ形成部が延在する平面でもある。
【0072】
図3では従来の工具ヘッド10'の軸方向部分の輪郭線が点線で示されており、当該従来の工具ヘッドは、それぞれがただ一つのレンチ面S'を備えるちょうど二つのレンチ作用面形成部を有しており、当該レンチ作用面形成部は互いに平行であるとともに工具軸線に対して平行であり、かつ平坦である。従来の工具ヘッドの工具軸線W'も図3に同様に示されている。
【0073】
オープンエンドレンチ形成部50は互いに向き合う二つの顎部53および54を有しており、当該顎部は、オープンエンドレンチ形成部を画定する底部56によって互いに接続されている。
【0074】
工具ヘッド10'は導入軸線Eに沿って、導入方向Iにおいてオープンエンドレンチ形成部50に導入可能であり、好適に工具ヘッド10の外面領域が、オープンエンドレンチ形成部50の底部56に当接するまで導入可能である。
【0075】
導入軸線Eは、オープンエンドレンチ形成部50が延在する平面内にあるか、当該平面に平行である。従って導入軸線Eは、図3の図面の平面に対して平行に向けられている。顎部53および54は、導入軸線Eを超えて互いに向き合っている。このとき顎部53は、ちょうど二つのレンチ面領域58および60を有しており、当該レンチ面領域は導入軸線Eに沿って直接的に連続して設けられているとともに、傾斜軸線M周りに互いに離れるように傾斜している。図に示す例において傾斜角度はおよそ5°である。当該傾斜角度は好適に、レンチ作用面領域32,34および38,40の傾斜角度と同じである。
【0076】
ここでも顎部53および54は、図3の図面の平面に直交するとともに、導入軸線Eを含む対称平面SPを基準として鏡面対称に形成されており、それにより顎部54のレンチ面領域62および64は、対称という条件を記載することで、顎部53のレンチ面領域58および60の説明によって十分明らかにされており、さらなる説明を必要としない。図3に示す例において全てのレンチ面領域58,60,62および64は平坦であり、インサート部材52もしくはオープンエンドレンチ形成部50が延在する平面に直交するように向けられている。
【0077】
顎部53または54の、顎開口部に近いレンチ面領域58および62は、それぞれ他の顎部54または53の、顎開口部から遠いレンチ面領域60および64に対して平行であり、それにより工具ヘッドのレンチ作用面形成部S'に対してできる限り平面的な当接をしながら、トルクを当該工具ヘッドに導入することができる。図に示す例において、互いに平行なレンチ面領域58および64は、従来の工具ヘッド10'のレンチ作用面形成部と平面的な当接係合をしており、工具軸線W'周りに時計回りのトルク伝達を行う準備ができている。
【0078】
工具ヘッド10'および当該工具ヘッドのレンチ作用面形成部を、オープンエンドレンチ形成部50により簡単に導入するために、顎開口部66を起点として導入斜面68が形成されていてよく、当該導入斜面は、顎開口部66を起点として、顎開口部に近いレンチ面領域58および62に至っている。
【0079】
導入斜面68は好ましくは、上記の対称平面SPに対して同様に対称に形成されており、二つの側面70および72によって画定されており、当該側面は40°よりも大きい角度、図に示す例ではおよそ60°の角度を含み、顎開口部66を起点として、オープンエンドレンチ形成部50に向かって互いに近づくように設けられている。
【0080】
レンチ面領域58および60は、レンチ面領域62および64と同様に、それぞれ他の顎部に向かって突出する頂部Pを形成している。導入軸線Eを超えて互いに直接的に向き合う、顎開口部に近いレンチ面領域58および62の距離は、導入方向Iにおいて頂部Pに接近するほど、徐々に小さくなり、それにより顎開口部に近いレンチ面領域58および62は、工具ヘッド10'をオープンエンドレンチ形成部50に導入するための導入補助部を提供する。
【0081】
顎開口部から遠いレンチ面領域60および64は、導入軸線Eを超えて測定される当該レンチ面領域の距離が、頂部Pから離れるほど大きくなるように傾斜しており、それにより二つの顎部53または54の頂部Pのみが、オープンエンドレンチ形成部50の狭窄箇所を形成し、当該狭窄箇所は工具ヘッドにとって容易に克服できるものであるが、それは頂部P同士の距離が、レンチ幅swよりなおも実質的に大きいためである。
【0082】
図3が示すように、導入軸線Eに沿った導入斜面68の長さは、同様に導入軸線Eに沿って測定した場合、レンチ面領域58,60,62および64によって画定されるオープンエンドレンチ形成部50の領域の長さよりも長い。
【0083】
図4aおよび図4bでは、図2aもしくは図2bの視点に対応して、本発明に係る工具ヘッドの第二の実施の形態が表示されている。図2aもしくは図2bの第一の実施の形態におけるものと同じ部材もしくは部材部分、および構成が等しい部材もしくは部材部分には、図4aおよび図4bにおいて同じ参照番号が付されているが、100の数が増やされている。図4aおよび図4bに表示された第二の実施の形態は以下において、第一の実施の形態と異なるときに限って説明され、その他の点については、第二の実施の形態を説明するにあたっても、第一の実施の形態の説明が参照されることを明記する。
【0084】
図4aにおいて切削形成部113は、概略的にのみ暗示されている。当該切削形成部は、第一の実施の形態の切削形成部13と同一の構成または他の構成を有し得る。
【0085】
図2aおよび図2bの実施の形態と、図4aおよび図4bの実施の形態との主な相違点は、レンチ作用面形成部130および136の構成にある。周方向において工具軸線W周りに、直接的に隣接するレンチ作用面領域の間に尖った頂部Sを有している第一の実施の形態とは異なり、第二の実施の形態では、レンチ作用面形成部130のレンチ作用面領域132および134の間と、レンチ作用面領域138および140の間とに形成される頂部Sは平坦化されており、すなわち個々の頂部Sは、周方向において同一のレンチ作用面形成部のレンチ作用面領域の間に設けられている中間面領域139によって形成されている。
【0086】
中間面領域139は、図4bにおいてより明瞭にするためにレンチ作用面形成部136においてのみ、参照番号が付されており、工具軸線Wに対して平行な湾曲軸回りに凸状または、凹状でさえあり得るが、容易に製造するために平坦であるのが好ましい。平坦化されているために、第二の実施の形態の頂部S同士の間の距離aは、第一の実施の形態の頂部Sの距離aよりも小さい。これはレンチ作用面形成部130および136を、係合するオープンエンドレンチ形成部に導入すること、もしくは係合するオープンエンドレンチ形成部を上記のレンチ作用面形成部に被せることを、著しく容易にする。
【0087】
中間面領域139を形成することにより、もはや直線状ではなく、平面状に形成されている頂部Sに対して、傾斜軸線Nは概ね不変である。図2bの図面の平面に直交する傾斜軸線Nは、図2bにおいてレンチ作用面形成部136に関して表示されている。
【0088】
レンチ作用面形成部130において、レンチ作用面領域132もしくは134の法線ベクトルN132およびN134と、当該法線ベクトルに含まれる角度αが表示されている。法線ベクトルN134は、レンチ作用面領域134において示されている。レンチ作用面領域132の法線ベクトルN132は、当該法線ベクトルの基点が法線ベクトルN134の基点にずらされており、それにより含まれている角度αを分かりやすくしている。
【0089】
第二の実施の形態のレンチ作用面形成部130および136についても、レンチ幅swが頂部S同士の間の距離よりも小さくないことが当てはまり、これは係合するオープンエンドレンチ形成部をレンチ作用面形成部130および136に被せることを容易にする。同様にレンチ幅swが、被せ軸線Aを超えて互いに向き合うレンチ作用面領域134および140の距離と、レンチ作用面領域132および138の距離とに比べて、当該レンチ作用面領域がそれぞれ工具軸線Wから最も遠い場所において、はるかに大きい点も変わらない。
【符号の説明】
【0090】
10 切削工具、工具ヘッド
12 第一の長手方向端部領域
13 切削形成部
14 刃
16 切り屑除去溝
18 第二の長手方向端部領域
20 ネジ
22 雌ネジ
24 工具受容部
26 結合形成部
28 軸方向部分
30 レンチ作用面形成部
32 レンチ作用面領域
34 レンチ作用面領域
36 レンチ作用面形成部
38 レンチ作用面領域
40 レンチ作用面領域
50 オープンエンドレンチ形成部
52 インサート部材
53 顎部
54 顎部
56 底部
58 レンチ面領域
60 レンチ面領域
62 レンチ面領域
64 レンチ面領域
66 顎開口部
68 導入斜面
70 側面
72 側面
110 切削工具、工具ヘッド
112 第一の長手方向端部領域
113 切削形成部
114 刃
116 切り屑除去溝
118 第二の長手方向端部領域
120 ネジ
128 軸方向部分
130 レンチ作用面形成部
132 レンチ作用面領域
134 レンチ作用面領域
136 レンチ作用面形成部
138 レンチ作用面領域
139 中間面領域
140 レンチ作用面領域
A 被せ軸線
E 導入軸線
I 導入方向
M 傾斜軸線
N 傾斜軸線
N38 法線ベクトル
N40 法線ベクトル
N132 法線ベクトル
N134 法線ベクトル
P 頂部
S 頂部
S' レンチ面
SE 鏡面対称平面
SP 対称平面
SW レンチ幅
W 工具軸線
W' 工具軸線
a レンチ作用面領域の間の距離
α 傾斜角度
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b