特許第6971567号(P6971567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6971567位置合わせ装置、位置合わせ方法、リソグラフィ装置、および物品製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971567
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】位置合わせ装置、位置合わせ方法、リソグラフィ装置、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20211111BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20211111BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20211111BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H01L21/30 502D
   G01B11/00 G
   H01L21/68 G
   B29C59/02 Z
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-244538(P2016-244538)
(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公開番号】特開2018-98456(P2018-98456A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝山 卓
(72)【発明者】
【氏名】古巻 貴光
【審査官】 田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−197591(JP,A)
【文献】 特開2005−167139(JP,A)
【文献】 特開2011−181944(JP,A)
【文献】 特開2016−201423(JP,A)
【文献】 特開2011−243664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H01L 21/027、
21/30、
21/46、
G03F 7/20−7/24、
9/00−9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原版と基板との位置を合わせる位置合わせ装置であって、
前記原版を保持する原版保持部と、
前記基板を保持する基板保持部と、
前記原版または前記原版保持部に配置された粗計測用の第1原版側マークおよび精密計測用の第2原版側マークと、前記基板または前記基板保持部に配置された粗計測用の第1基板側マークおよび精密計測用の第2基板側マークとを照明する照明部を含み、前記原版と前記基板との位置ずれを計測する計測部と、
を有し、
前記計測部は、前記照明部に第1条件で照明させ、前記第1原版側マークおよび前記第1基板側マークからの光に基づいて粗計測を行い、前記照明部に第2条件で照明させ、前記第2原版側マークおよび前記第2基板側マークからの光に基づいて精密計測を行い、
前記第1条件は、前記照明部から射出される光の波長のうち、前記第1原版側マークからの光量と前記第1基板側マークからの光量との差が許容範囲内に収まるように選択された波長の条件であり、
前記第2条件は、前記照明部から射出される光の波長のうち、前記第2原版側マークおよび前記第2基板側マークからの光量が大きくなるように選択された波長の条件である、
ことを特徴とする位置合わせ装置。
【請求項2】
前記計測部は、前記粗計測の結果が前記位置ずれが前記精密計測の計測レンジ内に収まったことを示す場合に、前記精密計測に移行することを特徴とする請求項1に記載の位置合わせ装置。
【請求項3】
前記照明部は、射出する光の波長が互いに異なる複数の光源を含み、
前記計測部は、前記複数の光源のそれぞれの出力を調整することで前記第1条件と第2条件との切り替えを行う
ことを特徴とする請求項1または2に記載の位置合わせ装置。
【請求項4】
前記複数の光源は、互いに異なる波長の光を出力する複数の半導体レーザを含むことを特徴とする請求項に記載の位置合わせ装置。
【請求項5】
前記照明部は、光源と、互いに異なる波長の光を透過させる複数の波長フィルタのうちから選択された波長フィルタを前記光源と前記原版との間の光路に配置する波長選択部とを含み、
前記計測部は、前記複数の波長フィルタを選択することで前記第1条件と前記第2条件との切り替えを行う
ことを特徴とする請求項1または2に記載の位置合わせ装置。
【請求項6】
前記計測部は、前記第1原版側マークと、前記第1基板側マークと、前記第2原版側マークと、前記第2基板側マークとを視野内に収めて撮像する撮像部を含み、該撮像部での撮像により得られた画像に基づいて前記粗計測および前記精密計測を行うことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の位置合わせ装置。
【請求項7】
前記粗計測は、前記第1原版側マークと前記第1基板側マークとの距離に基づく前記原版と前記基板との相対位置の計測であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の位置合わせ装置。
【請求項8】
前記第2原版側マークおよび前記第2基板側マークは、互いに格子ピッチが異なる格子パターンを有する回折格子を有し、
前記精密計測は、前記第2原版側マークと前記第2基板側マークが重なり合うことによって生じるモアレを用いた前記原版と前記基板との相対位置の計測であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の位置合わせ装置。
【請求項9】
前記第2条件は、前記照明部から射出される光の波長のうち、前記モアレの光量が大きくなるように選択された波長の条件である、ことを特徴とする請求項8に記載の位置合わせ装置。
【請求項10】
原版保持部に保持された原版と基板保持部に保持された基板との位置を合わせる位置合わせ方法であって、
前記原版または前記原版保持部に配置された粗計測用の第1原版側マークおよび精密計測用の第2原版側マークと、前記基板または前記基板保持部に配置された粗計測用の第1基板側マークおよび精密計測用の第2基板側マークとを、第1条件で照明部により照明する工程と、
前記第1条件での照明により得られた前記第1原版側マークおよび前記第1基板側マークからの光に基づいて前記原版と前記基板との位置ずれの粗計測を行う工程と、
前記粗計測の後、前記第1条件を第2条件に変更して前記照明部により照明する工程と、
前記第2条件での照明により得られた前記第2原版側マークおよび前記第2基板側マークからの光に基づいて前記位置ずれの精密計測を行う工程と、
を有し、
前記第1条件は、前記照明部から射出される光の波長のうち、前記第1原版側マークからの光量と前記第1基板側マークからの光量との差が許容範囲内に収まるように選択された波長の条件であり、
前記第2条件は、前記照明部から射出される光の波長のうち、前記第2原版側マークおよび前記第2基板側マークからの光量が大きくなるように選択された波長の条件である、
ことを特徴とする位置合わせ方法。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の位置合わせ装置を備え、
前記位置合わせ装置の前記基板保持部によって保持された基板に、前記原版保持部によって保持された原版のパターンを転写するように構成されていることを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項12】
請求項11に記載のリソグラフィ装置を用いて基板にパターンを転写する工程と、
前記パターンが転写された前記基板を処理する工程と、
を含むことを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置合わせ装置、位置合わせ方法、リソグラフィ装置、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原版のパターンを基板に転写するリソグラフィ装置として、例えば、露光装置やインプリント装置を挙げることができる。露光装置は、感光材が塗布された基板に投影光学系を介して原版のパターンを投影することによって原版のパターンに対応する潜像パターンを感光材に形成する。インプリント装置は、基板の上に配置されたインプリント材に原版(モールド)を接触させた状態でインプリント材を硬化させることによってインプリント材を原版のパターンに対応するパターンに成形する。
【0003】
リソグラフィ装置においては、原版と基板の位置合わせが必要である。特許文献1には、インプリント装置に関し、型と基板とをインプリント材を介在させた状態で接触させ、位置合わせを行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−181944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
位置合わせに用いられるアライメントマークとして、計測レンジや計測精度が互いに異なる複数種類のマークを用いる場合がある。この場合、マークの材質、パターン形状又は厚み等が異なる。あるいは、マーク上にプロセス層が形成されている等によって、マークの反射率が異なる。マークの反射率が異なる場合、複数種類のマークからの光の各検出光量に差が生じる。これが原因で、原版と基板との相対位置の計測精度が低下し、位置合わせを高精度に行えないおそれがある。
【0006】
本発明は、原版と基板との位置合わせの高精度化に有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、原版と基板との位置を合わせる位置合わせ装置であって、前記原版を保持する原版保持部と、前記基板を保持する基板保持部と、前記原版または前記原版保持部に配置された粗計測用の第1原版側マークおよび精密計測用の第2原版側マークと、前記基板または前記基板保持部に配置された粗計測用の第1基板側マークおよび精密計測用の第2基板側マークとを照明する照明部を含み、前記原版と前記基板との位置ずれを計測する計測部とを有し、前記計測部は、前記照明部に第1条件で照明させ、前記第1原版側マークおよび前記第1基板側マークからの光に基づいて粗計測を行い、前記照明部に第2条件で照明させ、前記第2原版側マークおよび前記第2基板側マークからの光に基づいて精密計測を行い、前記第1条件は、前記照明部から射出される光の波長のうち、前記第1原版側マークからの光量と前記第1基板側マークからの光量との差が許容範囲内に収まるように選択された波長の条件であり、前記第2条件は、前記照明部から射出される光の波長のうち、前記第2原版側マークおよび前記第2基板側マークからの光量が大きくなるように選択された波長の条件である、ことを特徴とする位置合わせ装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、原版と基板との位置合わせの高精度化に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るインプリント装置の構成を示す図。
図2】計測部の構成の一例を示す図。
図3】計測部の構成の変形例を示す図。
図4】計測部における光源部の構成例を示す図。
図5】計測部における照明光学系の瞳面における光強度分布を示す図。
図6】モアレを利用した回折格子間の相対位置の検出原理を説明する図。
図7】XY2つの方向で相対位置を検出するためのマークの例を示す図。
図8】実施形態において使用されるマークの構成を示す図。
図9】基板に設けられたマークの回折効率の一例を示す図。
図10】各マークからの波長ごとの光量の一例を示す図。
図11】光源からの光量の調整方法を示すフローチャート。
図12】回折格子からの光量のシミュレーション波形を示す図。
図13】光源の切り替えのタイミングの例を説明する図。
図14】光源の構成の変形例を示す図。
図15】物品製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る位置合わせ装置は、インプリント装置や露光装置などのリソグラフィ装置における原版と基板の位置合わせ装置に適用されうるが、加工装置、検査装置、顕微鏡などの他の装置にも適用可能である。以下では、本発明に係る位置合わせ装置がインプリント装置に適用された例を説明する。
【0011】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係るインプリント装置の構成について説明する。図1は、本実施形態のインプリント装置1の代表的な構成を示す図である。インプリント装置1は、基板上に供給されたインプリント材を型と接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを基板上に形成する装置である。
【0012】
インプリント材には、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられる。電磁波としては、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される、赤外線、可視光線、紫外線などの光である。
【0013】
硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物である。このうち、光により硬化する光硬化性組成物は、重合性化合物と光重合開始剤とを少なくとも含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0014】
インプリント材は、スピンコーターやスリットコーターにより基板上に膜状に付与される。或いは液体噴射ヘッドにより、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に付与されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0015】
基板は、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられ、必要に応じて、その表面に基板とは別の材料からなる部材が形成されていてもよい。基板としては、具体的に、シリコン基板、化合物半導体基板、石英ガラスなどである。
【0016】
なお、本実施形態のインプリント装置は、光硬化法を採用するものとする。また、図1においては、基板面に平行な面内に互いに直交するX軸およびY軸をとり、X軸とY軸とに垂直な方向にZ軸をとっている。インプリント装置1は、光を照射する照射部2と、原版である型(モールド)と基板の位置合わせのための計測を行う計測部3と、型を保持する型保持部4と、基板を保持する基板ステージ5と、インプリント材を供給する供給部6と、制御部12とを備える。
【0017】
照射部2は、型7と基板8上のインプリント材とを接触させる押型処理の後に、インプリント材を硬化させるために、型7及びインプリント材に対して紫外線を照射する。照射部2は、紫外線を出す光源と、該光源から射出される紫外線を型7及びインプリント材に対して所定の形状で均一に照射するための複数の光学素子とを有しうる。例えば、照射部2による光の照射領域(照射範囲)は、型7の凹凸パターン7aの表面積と同程度、又は、凹凸パターン7aの表面積よりもわずかに大きい面積とすることができる。これは、照射領域を必要最小限とすることで、照射に伴う熱に起因して型7または基板8が膨張し、インプリント材のパターンに位置ズレや歪みが発生することを抑えるためである。加えて、基板8等で反射された紫外線が供給部6に到達して供給部6内に残留したインプリント材が硬化してしまうことで、供給部による後の動作に異常が生じることを防止するためでもある。光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、各種エキシマランプ、エキシマレーザまたは発光ダイオードなどが採用可能である。なお、この光源は、被受光体であるインプリント材の特性に応じて適宜選択されるが、光源の種類、数または波長などにより限定されるものではない。
【0018】
型7の基板8に対する面には、所定のパターン(例えば、回路パターン等の凹凸パターン7a)が3次元状に形成されている。なお、型7の材質は、紫外線を透過させることが可能な石英などである。
【0019】
型保持部4は、真空吸着力や静電力により型7を引きつけて保持する原版保持部である。この型保持部4は、型7を吸着保持するチャックと、該チャックをZ軸方向に駆動する型駆動機構と、型7をX軸方向およびY軸方向に変形させてインプリント材のパターンの歪みを補正する倍率補正機構とを含みうる。型駆動機構は、基板8上に供給されたインプリント材に型7を接触させるために設けられている。なお、インプリント装置1における押型および離型の各動作は、このように型7をZ方向に移動させることで実現してもよいが、例えば、基板ステージ5(すなわち基板8)をZ方向に移動させることで実現してもよく、または、その両方を移動させてもよい。
【0020】
基板ステージ5は、基板8を例えば真空吸着により保持し、かつ、XY平面内を移動可能とする基板保持部である。ここで、基板8は、例えば、単結晶シリコンからなる被処理体であり、この被処理面には、型7により成形されるインプリント材9が供給される。
【0021】
基板8と型7の相対位置を合わせるための計測を行う計測部3は、型7または型保持部4に配置されたマーク10と、基板8または基板ステージ5に配置されたマーク11とを光学的に検出して、マーク間の相対位置を計測する。以下では、マーク10は型7に配置され、マーク11は基板に配置されているものとして説明する。計測部3は、型7又は基板8に配置されたマークの位置に合わせて、X軸方向およびY軸方向に駆動可能なように構成されている。また、計測部3は、マークの位置に焦点を合わせるためにZ軸方向にも駆動可能なように構成されている。
【0022】
制御部12は、照射部2、計測部3、型保持部4、基板ステージ5、および、供給部6と電気的に接続され、それぞれに制御指令を送信したり、それぞれから情報を取得したりする。例えば、制御部12は、計測部3で計測されたマーク間の相対位置の情報を取得し、その情報に基づいて基板ステージ5と型保持部4の型倍率補正機構とを含む駆動部の駆動を制御する。計測部3とマーク10および11については後で詳述する。本実施形態における位置合わせ装置は、例えば、型保持部4と、基板ステージ5と、計測部3と、制御部12を含みうる。
【0023】
供給部6は、基板8上にインプリント材9を供給する。インプリント材9は、紫外線を受光することにより硬化する性質を有する光硬化性のインプリント材であり、半導体デバイスの種類などにより適宜選択されうる。なお、図1ではインプリント装置1の内部に供給部6があるが、供給部6をインプリント装置1の内部に設置せずにインプリント装置1の外部に設けてもよい。供給部6が外部に設けられた場合、供給部6により予めインプリント材が供給された基板8をインプリント装置1の内部に導入する構成となる。この構成によれば、インプリント装置1の内部でインプリント材を基板8上に供給する工程がなくなるため、インプリント装置1での処理の迅速化が可能となる。
【0024】
次に、インプリント装置1によるインプリント処理について説明する。まず、不図示の基板搬送部により基板8を基板ステージ5上に搬送し、基板8を載置および固定させる。次に、基板ステージ5を供給部6によるインプリント材の供給位置へ移動させ、その後、供給部6は、基板8のインプリント対象であるショット領域にインプリント材9を供給する(供給工程)。次に、基板8のショット領域が型7の直下に位置するように基板ステージ5を移動させる。次に、型駆動機構を駆動させ、基板8上のインプリント材9に型7を接触させる(押型工程)。これによりインプリント材9は、型7に形成された凹凸パターン7aに沿って流動する。その後、型7及び基板8にそれぞれ配置されたマーク10及び11を計測部3によって検出し、基板ステージ5の駆動による型7のパターン面と基板8のショット領域との位置合わせ、及び、倍率補正機構による型7の倍率補正等を実施する。インプリント材9の凹凸パターン7aへの流動と、型7と基板8との位置合わせ及び型の倍率補正等が十分になされた状態とする。その状態で、照射部2は、型7の背面(上面)から紫外線を照射し、型7を透過した紫外線によりインプリント材9を硬化させる(硬化工程)。このとき、計測部3は紫外線の光路を遮らないように位置に配置される。続いて、型駆動機構を再駆動させ、硬化したインプリント材9から型7を引き離す(離型工程)。以上の工程により、基板8上のインプリント材9に型7の凹凸パターン7aが転写される。
【0025】
続いて、計測部3と、型7および基板8にそれぞれ配置された位置合わせ用のマーク10および11(アライメントマーク)の詳細を説明する。図2は、本実施形態の計測部3の構成の一例を示す図である。計測部3は、検出光学系21(検出部)、照明光学系22(照明部)、処理部26、及び、制御部37を有する。照明光学系22は光源部23からの光を、プリズム24などを用いて検出光学系21と同じ光軸上へ導き、マーク10および11を照明する。光源部23には例えばハロゲンランプやLED、半導体レーザ(LD)、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプが用いられ、インプリント材を硬化させる紫外線を含まない可視光線や赤外線を照射するように構成されている。制御部37は光源部23の駆動を制御する。検出光学系21と照明光学系22はそれらを構成する光学部材の一部を共有するように構成されており、プリズム24は検出光学系21と照明光学系22の瞳面もしくはその近傍に配置されている。マーク10および11は、例えば、回折格子を有し、検出光学系21は照明光学系22によって照明されたマーク10と11からの回折光同士の干渉により発生する干渉縞(モアレ縞)を撮像素子25(撮像部)上に結像する。撮像素子25にはCCDやCMOSなどが用いられる。処理部26は撮像素子25で撮像された画像データを取得し、処理する。型7および基板8上のマークの回折光によって干渉縞(モアレ縞)が発生するため、型7および基板8の回折効率によって得られるモアレ縞の光量が変わってくる。特に、回折効率は波長に対して周期的に変化するため、効率よくモアレ縞を検出することができる波長とモアレ縞の検出が困難な波長がある。ここで、モアレ縞の検出が困難な波長の光は、撮像素子25で検出される計測信号に対してノイズとなりうる。処理部26は、例えば制御部12の一部であり、撮像素子25で撮像された画像の情報を取得し、その画像に基づいて、マーク10とマーク11の相対位置を計算によって求める。計測部3の制御部12は、求められた相対位置に基づいて位置合わせ部の制御を行い、少なくともマーク10とマーク11を含む領域の相対位置ずれが小さくなるように位置合わせを行う。これにより、基板のパターンと型のパターンとの重ね合わせを高精度に行うことができる。
【0026】
プリズム24はその貼り合せ面において、照明光学系の瞳面の周辺部分の光を反射するための反射膜24aが構成されている。また、反射膜24aは検出光学系21の瞳の大きさあるいは検出NAを規定する開口絞りとしても働く。ここで、プリズム24は、貼り合せ面に半透膜を有するハーフプリズムや、あるいはプリズムに限らず表面に反射膜を成膜した板状の光学素子などであってもよい。なお、プリズム24の周辺にある反射膜24aの領域を透過部にして、プリズム24の中心部分を反射部とした構成、つまり、光源部23と撮像素子25の位置を入れ替えた構成としてもよい。
【0027】
また、本実施形態に係る照明光学系の瞳面における光強度分布、及び、検出光学系の検出NAを決める位置は、必ずしもプリズム24の位置でなくてもよい。例えば、図3に示すように、検出光学系21と照明光学系22はそれぞれ個別の開口絞り27および28を有してもよい。この構成では、開口絞り27の開口形状により検出光学系の検出NAが決まり、開口絞り28の開口形状により照明光学系の瞳面における光強度分布が決まる。また、プリズム24にはその貼り合せ面に半透膜を有するハーフプリズム等が用いられる。
【0028】
次に、光源部23について説明する。図4は光源部23の詳細な構成を示した図である。光源部23は、複数の光源30a、30b、30c、30d(30a〜d)を含みうる。複数の光源30a〜dには例えば半導体レーザ(LD)が使用されうるが、これに限らず、LED、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプやナトリウムランプを用いてもよいし、それらの組み合わせた光源を用いてもよい。また、複数の光源30a〜dの各々が射出する光の波長は互いに異なるように構成されている。例えば、第1光源30aは第1波長の光を射出し、第2光源30bは第1波長とは異なる第2波長の光を射出する。また、第1光源30aは第1波長帯域の光を射出し、第2光源30bは第1波長帯域とは異なる第2波長帯域の光を射出してもよい。ただし、特定の波長(帯域)の光量を上げるために、特定の複数の光源で同じ波長(帯域)を射出するように構成してもよい。なお、光源と波長(帯域)の数は4つに限らない。
【0029】
光学系31a、31b、31c、31d(31a〜d)は例えばレンズであり、複数の光源30a〜dの各々に対応して設けられている。光学系31a〜dの各々は、複数の光源30a〜dの各々から放出された光を所望の状態(形状)に成形する。光学系31a〜dを通過した光は光学素子32a、32b、32c、32d(32a〜d)により反射又は透過して、1つの光束として合成される。光学素子32a〜dは、例えばダイクロイックミラーやハーフミラーなどである。合成に用いる複数の光源30a〜dの各々の波長帯域が、例えば50nm程度以上異なる場合、ダイクロイックミラーを用いて合成することができる。合成に用いる複数の光源の波長が同じまたは近傍であるために、ダイクロイックミラーで効率よく合成できない場合は、ハーフミラーを用いて合成する。図4では複数の光源30a〜dを直列に合成しているが、2つずつ並列に合成してもよい。光源30a〜dの種類や波長、およびスペースを考慮して合成の仕方を選択できる。複数の光源30a〜dには、各光源を駆動する制御部37が接続されている。制御部37は、複数の光源30a〜dの駆動電流や印加電圧を変更することによって、各光源の出力エネルギー(光源からの光量)を個別に変更することができる。なお、1つの光源に1つの制御部を設けてもよい。
【0030】
光学素子32a〜dによって合成された光は、NDフィルタ34を通過して光量調整される。NDフィルタ34は、通過する光の強度を調整可能な素子であり、例えば石英に付与した金属膜の種類や膜厚によって透過光量が変わる。光源部23の光量を調整するために、NDフィルタ34として透過率が互いに異なる複数種類のフィルタを用意し、必要な光量に応じてフィルタを切り替えて光路内に挿入する。また、フィルタにおいて光が通過する位置によって透過率が連続的に変化する方式のフィルタを用いてもよい。NDフィルタ34は、光源30a〜dからの光が合成された光の光量を調整する。
【0031】
NDフィルタ34を通過した光は拡散板35を通過して、ファイバー36に導かれる。半導体レーザは波長帯域が数nmと狭いため、干渉によって観察される像にノイズ(スペックルノイズ)が発生する。そのため、拡散板35を回転させて時間的に波形の状態を変化させることによって、観察されるスペックルノイズを低減する。ファイバー36からの射出光が光源部23から射出される光となる。
【0032】
なお、複数の光源30a〜dの各々に対応して、各光源から射出された光が他の光と合成される前の各光路内に、透過光量を変更可能なNDフィルタ(変更部)を設けてもよい。このNDフィルタとして、フィルタにおいて光が通過する位置によって透過率が連続的に変化する方式のフィルタを用いることができる。また、透過率が互いに異なる波長の光を透過させる複数の波長フィルタを用意し、それらのうちから選択された波長フィルタを光源と型7との間の光路に配置する波長選択部を備えてもよい。また、光学素子32a〜dによって合成された光を回折格子で分光し、分光された光の光量分布に対して、場所によって透過光量が変化するNDフィルタ等で光量分布を調整して、各波長の光量を調整してもよい。
【0033】
図5は、計測部3の照明光学系22の瞳面における光強度分布(IL1、IL2、IL3、IL4)と、検出光学系21の瞳面における検出開口NAとの関係を示す図である。図5では、照明光学系22の瞳面(開口絞り28)と、検出光学系21の瞳面の開口(開口絞り27)とを重ね合わせて表示している。本実施形態では、照明光学系22の瞳面における光強度分布は、円形状の光強度分布である第1極IL1と、第2極IL2と、第3極IL3と、第4極IL4とを含む。各極は、各極内において光強度のピークを有する。照明光学系22は、これらの極で、マーク10やマーク11の回折格子の周期方向(第1方向)に対して垂直な方向から斜入射する光と、かかる周期方向に平行な方向から斜入射する光とによって、マーク10やマーク11を照明する。上述したように、開口絞り28を照明光学系22の瞳面に配置することで、1つの光源部23から複数の極、即ち、第1極IL1乃至第4極IL4を形成することができる。このように、1つの光源の光から複数の極(ピーク)を有する光強度分布を形成する場合には、計測部3を簡略化又は小型化することができる。
【0034】
図6を参照して、回折格子マークからの回折光によるモアレの発生の原理、及び、かかるモアレを用いたマーク間(型7と基板8)の相対位置の計測、について説明する。図6(a)に、マーク10に相当する、型7に設けられる回折格子41を示す。図6(b)に、マーク11に相当する、基板8に設けられる回折格子42を示す。回折格子41と回折格子42とは、周期パターン(格子)の周期(格子ピッチ)が僅かに異なっている。格子ピッチが互いに異なる2つの回折格子を近づけて重ねると、2つの回折格子からの回折光同士の干渉によって、回折格子間の周期差を反映した周期を有するパターン、所謂、モアレが現れる。この際、回折格子同士の相対位置によってモアレの位相が変化するため、モアレを検出することで回折格子41と回折格子42との相対位置、即ち、型7と基板8との相対位置を求めることができる。
【0035】
具体的には、格子ピッチが僅かに異なる回折格子41と回折格子42とを重ねると、回折格子41及び42からの回折光が重なり合うことで、図6(c)に示すように、周期の差を反映した周期を有するモアレが発生する。モアレは、上述したように、回折格子41と回折格子42との相対位置によって明暗の位置(縞の位相)が変化する。例えば、回折格子41及び42のうち一方の回折格子をX方向にずらすと、図6(c)に示すモアレは、図6(d)に示すモアレに変化する。モアレは、回折格子41と回折格子42との間の実際の位置ずれ量を拡大し、大きな周期の縞として発生するため、検出光学系21の解像力が低くても、回折格子41と回折格子42との相対位置を高精度に検出することができる。
【0036】
このようなモアレを検出するために、回折格子41及び42を明視野で検出する(回折格子41及び42を垂直方向から照明し、回折格子41及び42で垂直方向に回折される回折光を検出する)場合を考える。この場合、検出光学系21は、回折格子41及び42からの0次光も検出してしまう。0次光は、モアレのコントラストを低下させる原因となる。そのため、計測部3は、0次光を検出しない、即ち、回折格子41及び42を斜入射で照明する暗視野の構成となっている。
【0037】
本実施形態では、暗視野の構成でもモアレを検出できるように、マーク10及びマーク11のうち、一方を図7(a)に示すようなチェッカーボード状の第1回折格子とし、他方を図7(b)に示すような第2回折格子としている。第1回折格子は、X方向(第1方向)と、X方向に垂直なY方向(第2方向)にそれぞれ周期をもつ回折格子である。第2回折格子は、X方向(第1方向)に周期をもち、第1回折格子のX方向における周期とは異なる周期の回折格子である。なお、第1方向と第2方向とは垂直に限らず、互いに異なれば計測が可能である。
【0038】
図5に示す第1極IL1及び第2極IL2からの光は、Y方向側から斜入射で第1回折格子に照射され、第1回折格子によってY方向およびX方向にも回折し、周期(格子ピッチ)が僅かに異なる第2回折格子によってX方向に回折する。このように回折された光は、第1回折格子と第2回折格子のX方向の相対位置情報をもち、図5に示す検出光学系21の瞳上の検出領域(NA)に入射し、撮像素子25でモアレとして検出される。処理部26は、撮像素子25で撮像されたモアレの画像から、X方向(計測方向)における2つの回折格子の相対位置を求めることができる。
【0039】
図5に示す第3極IL3及び第4極IL4からの光は、図7(a)及び図7(b)に示す回折格子間の相対位置の計測には使用されない。但し、図7(c)及び図7(d)に示す回折格子間の相対位置を検出する場合には、第3極IL3及び第4極IL4からの光を用いる。図7(c)に示すチェッカーボード状の第3回折格子は、X方向と、X方向に垂直なY方向にそれぞれ周期をもつ回折格子である。図7(d)に示す第4回折格子は、Y方向に周期をもち、第3回折格子のY方向における周期とは異なる周期の回折格子である。第3極IL3及び第4極IL4からの光は、X方向側から斜入射で第3回折格子に照射され、第3回折格子によってY方向およびX方向にも回折し、周期が僅かに異なる第4回折格子によってY方向に回折する。このように回折された光は、第3回折格子と第4回折格子のY方向の相対位置情報をもち、図5に示す検出光学系21の瞳上の検出領域(NA)に入射し、撮像素子25でモアレとして検出される。処理部26は、撮像素子25で撮像されたモアレの画像から、Y方向(計測方向)における第3回折格子と第4回折格子の相対位置を求めることができる。なお、第1極IL1及び第2極IL2からの光は、第3回折格子と第4回折格子の相対位置の計測には使用されない。本実施形態では、図7(a)及び図7(b)に示す回折格子の組と、図7(c)及び図7(d)に示す回折格子の組とを、検出光学系21(撮像素子25)の同一視野内に配置して同時に2つの方向(X、Y)の相対位置を検出する。その場合には、図5に示す照明光学系の瞳面における光強度分布で、これらの4つの回折格子を照明することは非常に有効となる。
【0040】
次に、型7と基板8の相対位置を計測するためのアライメントマークの詳細について説明する。図8は、型7と基板8を近づけた時に計測されるアライメントマークの像を模式的に表した図である。本実施形態では、モアレを形成する回折格子の精密計測用のマークの他に、粗計測用の、第1原版側マーク51a―1と第1基板側マーク52a―1を用いる。マーク10として、第1原版側マーク51a−1が含まれ、マーク11として、第1基板側マーク52a−1が含まれる。
【0041】
計測部3は、図8の外枠の範囲内を、撮像素子25の撮像面で一度に計測(撮像)することが可能である。すなわち、撮像部である撮像素子25は、図8の外枠の範囲内にある複数のマークを視野内に収めて撮像することができる。ただし、撮像素子は1つに限らず、複数用いてもよい。計測部3の処理部26は、撮像素子25によって撮像された第1原版側マーク51a−1と第1基板側マーク52a−1の画像を取得する。そして、処理部26は、その画像に基づいて、第1原版側マーク51a−1と第1基板側マーク52a−1のそれぞれの幾何的な中心位置を基準として、第1原版側マーク51a−1と第1基板側マーク52a−1(型7と基板8)の位置ずれ量D1を求める。第1原版側マーク51a−1と第1基板側マーク52a−1とは予め所定の基準距離だけY方向に離れるように設計されているため、この基準距離と位置ずれ量D1との差が、第1原版側マーク51a−1と第1基板側マーク52a−1の相対位置のずれになる。このように第1原版側マーク51a−1と第1基板側マーク52a−1を用いて、粗計測が行われる。
【0042】
なお、第1原版側マーク51a−1と第1基板側マーク52a−1は小型化できるため、マークの専有領域が小さくてすむ。一方、第1原版側マーク51a−1と第1基板側マーク52a−1を用いた相対位置の計測精度は、回折格子によるモアレを計測して得られる相対位置の計測精度よりも低い。また、第1原版側マーク51a−1と第1基板側マーク52a−1の反射率の違いによって検出されるマークの光量に差が生じうる。光量差が大きいと光量の小さいマークを検出できる程度の明るさの光を照射するため、光量の大きいマークの信号が飽和して計測誤差が生じる。そのため、マークからの光量差を抑える必要がある。
【0043】
また、第1原版側マーク51a−1及び第1基板側マーク52a−1とは種類(材質、形状又は厚み等)が異なるアライメントマークが設けられている。それは、精密計測用の、第2原版側マーク51a−2と第2基板側マーク52a−2である。第2原版側マーク51a−2と第2基板側マーク52a−2とが重なり合うことによりモアレ縞が見られる。第2原版側マーク51a−2と第2基板側マーク52a−2は、一方が図7(c)に示す周期的なパターンを有する回折格子であり、他方が図7(d)に示す周期的なパターンを有する回折格子である。2つのパターンの計測方向(Y方向)の周期が僅かに異なるため、Y方向に光量が変化しているモアレ縞が生じる。回折格子間の相対位置が変化するとモアレ縞が移動するが、モアレ縞の移動量は回折格子間の相対位置の変化量よりも大きい。そのため、第1原版側マーク51a−1と第1基板側マーク52a−1を用いた相対位置の計測精度と比べて、回折格子間の相対位置を高精度に計測することができる。
【0044】
また、第2原版側マークと第2基板側マークの回折格子の周期の大小関係によって、回折格子間の相対位置が変化したときのモアレ縞(光量分布)の移動方向が異なる。例えば、第2原版側マークの周期の方が第2基板側マークの周期よりも大きい場合、基板8が相対的に+Y方向へシフトすると、モアレ縞も+Y方向へシフトする。逆に、第2原版側マークの周期の方が第2基板側マークの周期よりも小さい場合、基板8が相対的に+Y方向へシフトすると、モアレ縞は−Y方向へシフトする。したがって、モアレ縞のシフト方向と、第2原版側マークと第2基板側マークの周期の大小関係と、に基づいて、回折格子間の相対位置ずれの方向が分かる。
【0045】
また、もう1組の回折格子である第2原版側マーク51a−2′と第2基板側マーク52a−2′が設けられており、計測方向の周期の大小関係が、第2原版側マーク51a−2と第2基板側マーク52a−2との関係と入れ替わっている。そのため、型7と基板8の相対位置が変わると、2つの組の回折格子によって生じる2つのモアレ縞が互いに反対方向に移動する。したがって、これらの2つのモアレ縞の位置ずれ量D2を求めることにより、回折格子間の相対位置を高精度に計測することができる。
【0046】
ただし、モアレ縞は、第2原版側マークと第2基板側マークの相対位置ずれ量が大きくなるにしたがって周期的に同じ光量分布となって現れるため、相対位置の計測レンジは1周期分の範囲内と小さい。そのため、計測レンジがより広い第1原版側マーク51a−1と第1基板側マーク52a−1を用いて、型7と基板8にこの1周期分より大きな範囲で相対的な位置ずれを確認できる。つまり、上述の複数種類のアラメントマークを用いて計測することにより、撮像素子25で撮像される領域内における、型7の部分と基板8の部分との相対的な位置ずれを計測することができる。なお、第1原版側マーク51a−1と第1基板側マーク52a−1は、それぞれのマークからの光を検出することにより求まる相対位置ずれが上記1周期分の位置誤差を生じなければ、モアレ縞を発生する別の回折格子としてもよい。ただし、その回折格子は材質、形状又は厚み等が異なることもあり得る。
【0047】
次に、上述のアライメントマークを照明する照明光について説明する。型7と基板8に設けられたアライメントマークの反射率は材質やパターン形状、厚み、基板のプロセス構造等によって異なり、また、波長によっても異なる。
【0048】
図9に、基板に設けられたマークによる1次回折効率の一例を示す。この例は、プロセス形成のために既に形成されたパターンの上に材料Sの層が形成されている構造の基板のマークを想定したシミュレーション結果を示している。材料Sの層はマークのパターン面の上にあるため、材料Sを通過してマークのパターン面で反射、さらに材料Sを通過した光が1次回折光として検出される。この例では、波長500nm付近において回折効率が低く、波長750nm付近で回折効率が高い。これは材料Sによる光の吸収と材料Sの厚みが寄与している。そのため、この基板のマークを観察するには、波長750nm付近の光を用いると有利である。
【0049】
図10に、第1原版側マーク51a―1からの光の光量、第1基板側マーク52a―1からの光の光量、および、第2原版側マーク51a―2と第2基板側マーク52a―2とによって生じるモアレ縞の光量の例を示す。縦軸の光量は、各マークを同一の光量で照明した場合における各マークからの光量を表し、モアレ縞の光量はモアレ縞における最大光量を表す。なお、モアレ縞は回折格子間の相対位置の情報を有する光量分布であり、回折格子の端で生じるノイズ光を含まない。図10において、第1原版側マーク51a―1に着目すると、波長540nm付近で光量が高く、波長780nm付近で光量が小さくなっている。第1基板側マーク52a―1は、波長540nm付近で光量が小さく、波長720nm付近で光量が最大になっていることが分かる。モアレ縞に関しても、波長540nm付近で光量が小さく、波長720nm付近で光量が最大になっていることが分かる。
【0050】
波長540nmでは、第1原版側マーク51a―1からの光の光量が大きいが、第1基板側マーク52a―1からの光とモアレ縞の光量は相対的に小さい。そのため、第1基板側マーク52a―1からの光とモアレ縞のコントラスト(S/N比)が低く、撮像素子25で検出する際の検出精度が低下するおそれがある。したがって、これらのアライメントマークを照明する場合には、照明光のうち波長540nm付近の光を小さくすることが望ましい。そのため、複数の光源30a〜dのうち、波長540nm付近の光を射出する光源の出力エネルギー(光量)を小さくする。
【0051】
そして、撮像素子25で検出される第1原版側マーク51a―1からの光量と第1基板側マーク52a―1からの光量とモアレ縞の光量との相対値が所定の範囲内に収まるように調整する。その調整では、光源部23から射出される複数の波長(第1波長と第2波長)の光の光量の相対量を調整することが望ましい。ここで、所定の範囲とは、例えば、同程度の光量である。なぜならば、マーク間の光量差が大きいと、撮像素子25で各マークを検出した時に、ある種類のマークの計測信号が飽和してしまい、別の種類のマークの計測信号を検出することができず、マーク間の相対位置を精度よく計測することが困難になるためである。また、単一の波長の照明光ではマーク間の光量差が大きい場合に、別の波長の照明光を用いた場合のマーク間の光量差を足し合わせることによって、マーク間の光量差を低減することができる。特に、撮像素子25で検出される、第1原版側マーク51a―1からの光量又は第1基板側マーク52a―1からの光量と、モアレ縞の光量と、の相対値が所定の範囲内に収まるように、第1波長の光量と第2波長の光量の相対量を調整することが好ましい。光源30a〜dに波長帯域が異なる光源を用いた場合には、マーク間の検出光量差が小さくなるように、制御部37(調整部)により、各光源から射出される光量(出力エネルギー)を個別に調整して、光源部23の複数の波長の相対光量を調整する。場合によっては、ある波長の光源の出力を停止してもよい。つまり、第1光源から射出される第1波長の光量と、第2光源から射出される第2波長の光量と、の相対量を調整する。また、上述のように、各光源の各光路内に設けられたNDフィルタ(調整部)を用いて、第1光源から射出される第1波長の光量と、第2光源から射出される第2波長の光量と、の相対量を調整してもよい。ここで、光量の相対量は光量差や光量比など光量の相対的な違いを表す。なお、型側および基板側の各マークからの光量を同等の量だけ変更したい場合には、複数の波長の光を合成した後の光路に配置されるNDフィルタ34により所望の光量となるように制御してもよい。また、光源30a〜dおよびNDフィルタ34の両方を制御して光量調整してもよい。
【0052】
次に、光源部23からの光量の調整方法について説明する。図11に、光源部23からの光量の調整方法のフローチャートを示す。型や基板に設けられた複数のマークの種類やそれらの組み合わせによって、各マーク間の光量差が異なるため、型や基板に設けられるマークに対応して、光量調整を行う。
【0053】
まず、複数の光源30a〜dのうち1つの光源以外をOFFにし、または、1つの光源からの光以外を遮光する。そして、1つの光源からの第1波長の光のみで型や基板に設けられた複数種類のマークを照明して、複数種類のマークのそれぞれからの光の光量を撮像素子25により検出する(S1)。そして、撮像素子25で検出された複数種類のマークのそれぞれの光量のデータを、撮像素子25に接続された処理部26のメモリに記憶する(S2)。次に、S1及びS2の工程を他の光源、例えば、第1波長とは異なる第2波長について行う(S3)。これにより、全ての光源30a〜d(複数の波長)で各マークを照明した場合に検出される各マークからの光の光量のうち、各波長の寄与率が分かる。そのため、メモリに記憶されたデータに基づいて、検出光量を抑えたいマークを特定し、検出光量に対する寄与率が大きい波長を決定する(S4)。そして、制御部37は、決定された波長の光量が低くなるように光源部23を制御する(S5)。ここで、射出光量が調整される光源は、検出光量に対する寄与率が高い方の光源から順番に調整するとよい。なお、S1〜S5の工程を、制御部12によって自動制御してもよい。
【0054】
光量調整における目標は、例えば、型側および基板側の各マークの光量差が予め決められた規格値(許容範囲)以内にあることとする。また、各マークの光量が微弱でないことを追加目標としてもよい。各マークの光量差の規格値は、例えば、第1原版側マーク51a―1と第1基板側マーク52a―1との光量比が4倍以内とする。また、各マークからの光量が微弱でない範囲とは、撮像素子25で検出できる範囲であって、例えば、撮像素子25で検出できる最大光量の40%以上である。つまり、S4及びS5において、第1波長、第2波長の目標光量を決定する。目標光量は、撮像素子で検出される、回折格子51a―2及び52a―2からの光の検出光量、及び、第1原版側マーク51a―1及び第1基板側マーク52a―1からの光の検出光量との相対値が所定の範囲内に収まるように決定される。また、目標光量は、撮像素子25で検出できる最大光量に基づいて決定される。そして、決定した目標光量となるように、第1波長の光の光量と第2波長の光の光量を調整する。
【0055】
各マークの光量差は型7および基板8に設けられたマークの種類や組み合わせによって決まる。そのため、型7および基板8の種類ごとに、複数種類のマークのそれぞれの光量のデータ、又は、各マークからの光量のうちの各波長の寄与率、を取得し、予めデータベースとしてメモリに記憶しておいてもよい。実際に計測する場合には、型7および基板8の種類と、そのデータベースに基づいて、各マーク間の検出光量の相対値が所定の範囲内に収まるように、光源部23の複数の波長の相対光量を調整する。なお、データベースとして、型7および基板8の種類と、光源部23の複数の波長の相対光量との関係を記憶しておいてもよい。
【0056】
上述の光量調整の後、光量が調整された光源からの光を用いて複数種類のマークを照明して、撮像素子により複数種類のマークを検出し、検出結果に基づいて各マークの相対位置ずれを求める(S6)。
【0057】
なお、図10に示すように、マークの種類によってマークからの光量の波長特性が異なる。したがって、計測部3では、各マークに適した波長の光で照明又検出を行うとよいことが分かる。モアレ縞に関しては、波長720nmや780nmで光量が大きい。そのため、モアレ縞を生成する回折格子51a―2及び52a―2については、光量が大きい波長720〜780nm付近の光を検出するとよい。計測部3は、波長720〜780nm付近のみの光を回折格子51a―2及び52a―2を照明してもよいし、より広い帯域の波長の光で照明して回折格子51a―2及び52a―2からの波長720〜780nm付近のみの光を検出してもよい。また、第1原版側マーク51a―1に着目すると、波長540nmから波長780nmになるにしたがって光量が小さくなっている。第1基板側マーク52a―1は、波長540nm付近で光量が小さく、波長720nm付近で光量が最大になっている。そのため、第1原版側マーク51a―1と第1基板側マーク52a―1に関しては、両者を同等の光量で検出するために、720〜780nmより小さい、600〜660nmの波長の光を検出するとよい。計測部3は、波長600〜660nmのみの光を第2原版側マーク51a―2及び第2基板側マーク52a―2を照明してもよい。あるいは、計測部3は、より広い帯域の波長の光で照明して第2原版側マーク51a―2及び第2基板側マーク52a―2からの波長600〜660nmのみの光を検出するようにしてもよい。
【0058】
また、ノイズ光に着目した場合にも、相対位置の粗計測と精密計測とで適切な波長が異なるといえる。したがって、光源の各波長の光量調整の際の目標としてノイズ光の大きさを採用してもよい。ノイズ光はないことが望ましいが、照明光の波長によっては、各マークからの計測信号(S)よりもノイズ(N)が多くなる波長がありうる。ノイズが大きく発生している状態では、マーク間の相対位置の計測に誤差が生じるため、ノイズを低減するように光量を調整する。以下、詳しく説明する。
【0059】
図7(a)、(b)に示す回折格子間の相対位置の計測に使用されない極の光の影響について説明する。例えば、図7(a)、(b)に示す回折格子の組に対して、図5に示す第3極IL3及び第4極IL4からの光は、回折格子の周期方向の端部(回折格子のパターンの両端)で散乱や回折を起こす。第1極IL1から第4極IL4でこれらの回折格子を照明した場合に、考えうる型と基板の条件において、光学シミュレーションによって求めたモアレを含む回折格子からの光の計測信号を図12に示す。図12には、波長540nm、660nm、780nmのそれぞれで回折格子を照明した場合の、モアレを含む回折格子からの光の光量分布を示す。横軸は回折格子上の位置を表し、中央から離れた周辺位置が回折格子の周期方向の端部に相当する。縦軸は、同一光量の各波長で回折格子を照明した場合における、回折格子からの光の光量を表す。波長540nmで照明した場合、回折格子パターンの両端付近で光量が高いピークがある。また、わずかなサブピークが発生している。これらは、回折格子の連続的なパターン(格子条件)が端部で途切れることによって発生した光であると考えられる。なお、このような現象は、回折格子を明視野で検出する場合にも発生するが、回折格子を暗視野で検出する場合に特に顕著に確認できる。このような回折格子のパターンの両端で発生する光やサブピークの光がモアレ信号に混入すると、回折格子間の相対位置の情報を有するモアレ信号の検出に誤差を発生させることになる。なお、波長540nmでは、回折格子間の相対位置の情報を有するモアレ縞の凹凸波形がほとんど生じていない事が分かる。つまり、波長540nmの光はノイズとしてのみ作用するため、モアレ縞を検出する場合には使用しない方が望ましい。波長660nmの光で回折格子を照明した場合も、回折格子の端部で高い光量となっているが、モアレ信号の凹凸(明暗)が確認できる。また、波長780nmの光で回折格子を照明した場合、回折格子の端部ではモアレ信号の光量よりも低い光量であることがわかる。このように、回折格子間の相対位置を計測する際に回折格子からの光の光量分布は波長によって異なり、ノイズ成分の大きさも波長によって異なる。
【0060】
そこで、制御部37は、回折格子を照明する光のうちノイズ光を発生させる波長540nmの光の光量を小さくするように光源部23を制御して、回折格子からのノイズ光を低減する。第1原版側マーク51a―1と第1基板側マーク52a―1からの光とモアレ縞の検出光量を確保し、かつ、それらのマークの光量比が例えば4倍以上生じない範囲において、回折格子端のノイズ光が減少するように各波長の光量を調整するとよい。
【0061】
光量調整の際の目標として、各マークの検出光量に加えて、回折格子端のノイズ光量のデータもメモリに記憶しておくことにより、記憶されたデータに基づいて上記光量調整が可能となる。ここで、ノイズ光量を小さくするように特定の波長の光量を小さくすると、モアレ縞の光量も小さくなると考えられる。ノイズ光量が小さくなる以上にモアレ縞の光量が小さくなると計測誤差が増える場合がある。簡単には、回折格子端の光量がモアレ縞の光量の2倍以上となった場合は、回折格子端に光量のピークがあったとして、回折格子
端の光量=モアレ縞による光量+ノイズ光量であるため、回折格子端のノイズ光量の方がモアレ縞の光量よりも大きくなる。したがって、検出される回折格子の端からの光の検出光量が回折格子の中央部からの光の検出光量の倍より小さくなるように光源の各波長の光量を調整する。このように、モアレ縞の光量に対する寄与よりもノイズ光に対する影響の大きな波長の光量を小さくすることにより、マーク間の相対位置の計測誤差を小さくすることができる。
【0062】
以上のような処理によれば、回折格子端からのノイズ光の影響が低減され、粗計測用のマーク間の検出光量と、精密計測用のマーク間の検出光量との相対量が低減され、高精度にマーク間の相対位置を求めることができる。
【0063】
以下、計測部3における光源の制御の例を説明する。計測部3は、照明光学系22から射出される光の波長の条件を第1条件にして照明光学系22に照明させる。具体的には、第1条件として、複数の光源30a〜dのうち少なくとも、波長600〜660nmの光を射出する光源の出力をONにして照明する。この第1条件での照明により、計測部3は、第1原版側マーク51a―1と第1基板側マーク52a―1からの光を撮像素子25で検出し、第1原版側マーク51a―1と第1基板側マーク52a―1の相対位置を求める。こうして計測部3により粗計測が行われる。次に、計測部3は、照明光学系22から射出される光の波長の条件を第2条件に変更して、照明光学系22に照明させる。具体的には、第2条件として、複数の光源30a〜dのうち、波長720〜780nmの光を射出する光源のみの出力をONにして照明する。この第2条件での照明により、計測部3は、第2原版側マーク51a―2及び第2基板側マーク52a―2からのモアレ縞を撮像素子25で検出し、第2原版側マーク51a―2と第2基板側マーク52a―2(すなわち型と基板)の相対位置を求める。こうして計測部3により精密計測が行われる。
【0064】
各マークへの照明のタイミングを図13を参照して説明する。まず、計測部3は、波長600〜660nmの光を射出する光源と、波長720〜780nmの光を射出する光源の両方をONにする(第1条件での照明)。計測部3は、この第1条件での照明により得られた第1原版側マーク51a―1および第1基板側マーク52a―1の像に基づいて粗計測を行う。制御部12は、この粗計測により計測された位置ずれが低減されるように、基板ステージ5と型保持部4の型倍率補正機構とを含む駆動部の駆動を制御する。計測部3は、粗計測の結果が位置ずれが精密計測の計測レンジ内に収まったことを示す場合に精密計測に移行することができる。図13の例では、計測部3は、粗計測により計測された位置ずれ量が精密計測の計測レンジ(モアレ1周期分の計測範囲)内の十分に小さい閾値以下になったところで精密計測に移行する。精密計測に移行するとき、計測部3は、波長600〜660nmの光を射出する光源をOFFにする(第2条件での照明)。このとき、各マークからの光の検出も、それに合わせてON、OFFする。制御部12は、この精密計測により計測された位置ずれが低減されるように、基板ステージ5と型保持部4の型倍率補正機構とを含む駆動部の駆動を制御する。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、検出されるマーク間の光量の相対値が所定の範囲内となるため、複数種類のマークの検出結果から高精度にマーク間の相対位置を求めることができる。
【0066】
なお、上記では、光量調整として、光源部23内において光源部23から射出される各波長の光量を調整する例を説明したが、これに限らず、検出部側で光量調整をしてもよい。例えば、検出部側に色フィルタを設けてセンサで検出される各波長の検出光量の相対値を調整してもよい。また、マークからの光をダイクロイックミラーで波長ごとに分岐して、NDフィルタを介して複数のセンサに光を入射させ、各波長の光を各センサで検出するように構成してもよい。そして、NDフィルタの透過光量を変更することによりセンサで検出される各波長の検出光量の相対値を調整してもよい。
【0067】
[第2実施形態]
上述の第1実施形態では、1つの計測部3に対して、1つの光源部23の1本のファイバー36から光を射出する構成を示した。本実施形態では、複数の計測部3に対して、1つの光源部230から複数本のファイバーを介して光を射出する。光源部230は、図14に示すように、光路内にハーフミラー33a、33b、33cを配置して光路を分岐し、分岐されたそれぞれの光をファイバー36a、36b、36c、36dに入射させることによって4つの光源光束を生成する。例えば、ファイバー36aから射出される光を第1計測装置の光源部23の光として用い、ファイバー36bから射出される光を別の計測装置の光源の光として用いることができる。ハーフミラー33bとファイバー36aの間の光路内にはNDフィルタ34aと拡散板35aが配置され、ハーフミラー33cとファイバー36bの間の光路内にはNDフィルタ34bと拡散板35bが配置されている。また、ハーフミラー33bとファイバー36cの間の光路内にはNDフィルタ34cと拡散板35cが配置され、ハーフミラー33cとファイバー36dの間の光路内にはNDフィルタ34dと拡散板35dが配置されている。これにより、各光源用の光の光量調整と、スペックルノイズの低減を行うことができる。
【0068】
このように、基板と型との相対位置を計測するために複数の計測装置を用いれば、位置が離れた複数箇所、例えば、基板のショット領域の4隅(4つの領域)において、マーク間の相対位置を計測することができる。そして、その計測結果から型や基板の回転や、倍率などの歪みを求めることができる。また、4つ領域のそれぞれにおいて、マーク間の相対位置ずれが小さくなるように位置合わせを行うことによって、1つのショット領域の全体にわたって、基板のパターンと型のパターンとの重ね合わせを高精度に行うことができる。なお、図14では、3つの光路分岐要素(ハーフミラー33a、33b、33c)を用いているが、光路分岐要素の数はこれに限定されない。
【0069】
[物品製造方法の実施形態]
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用の型等が挙げられる。
【0070】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0071】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。図15(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコン基板等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0072】
図15(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図15(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1と型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを透して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0073】
図15(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凹部が硬化物の凸部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0074】
図15(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図15(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1:インプリント装置、2:照射部、3:計測装置、4:型保持部、5:基板ステージ、6:供給部、12:制御部
図1
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