(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
撮像光学系を有し現実空間の画像を撮像する撮像部と、画像表示装置の動きを検知する検知部と、表示光学系を有し表示画像を表示する表示部と、を備える画像表示装置に接続された画像処理装置であって、
前記撮像光学系の光学特性に基づいて、前記撮像部により撮像された撮像画像を補正する第1の補正手段と、
前記現実空間の情報に基づいて仮想画像の描画位置を決定し、該描画位置に基づいて当該仮想画像を生成する生成手段と、
前記仮想画像の描画位置を決定し、該描画位置に基づいて当該仮想画像を生成するのに要した処理時間を計測する計測手段と、
前記計測された処理時間と前記画像表示装置の動きとに基づいて、前記生成された仮想画像に対して、変形または移動の少なくとも一方の処理を行うことにより前記仮想画像を修正する修正手段と、
前記修正された仮想画像と前記補正された撮像画像とを合成して表示画像を生成する合成手段と、
前記表示光学系の光学特性に基づいて、前記生成された表示画像を補正する第2の補正手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
撮像光学系を有し現実空間の画像を撮像する撮像部と、画像表示装置の動きを検知する検知部と、表示光学系を有し表示画像を表示する表示部と、を備える画像表示装置に接続された画像処理装置における画像処理方法であって、
前記撮像光学系の光学特性に基づいて、前記撮像部により撮像された撮像画像を補正するステップと、
前記現実空間の情報に基づいて仮想画像の描画位置を決定し、該描画位置に基づいて当該仮想画像を生成するステップと、
前記仮想画像の描画位置を決定し、該描画位置に基づいて当該仮想画像を生成するのに要した処理時間を計測するステップと、
前記計測された処理時間と前記画像表示装置の動きとに基づいて、前記生成された仮想画像に対して、変形または移動の少なくとも一方の処理を行うことにより前記仮想画像を修正するステップと、
前記修正された仮想画像と前記補正された撮像画像とを合成して表示画像を生成するステップと、
前記表示光学系の光学特性に基づいて、前記生成された表示画像を補正するステップと、
を備えることを特徴とする画像処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態の詳細について図面を参照しつつ説明する。
図1は、第1の実施形態における画像処理システムの機能構成を示すブロック図である。同図において、本実施形態の画像処理システムは、頭部装着型の画像表示装置としてのヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)1と画像処理装置14とが接続された構成である。HMD1および画像処理装置14はそれぞれ、CPU、ROM、RAM、HDD等のハードウェア構成を備え、CPUがROMやHD等に格納されたプログラムを実行することにより、各機能構成やフローチャートの処理が実現される。RAMは、CPUがプログラムを展開して実行するワークエリアとして機能する記憶領域を有する。ROMは、CPUが実行するプログラム等を格納する記憶領域を有する。HDDは、CPUが処理を実行する際に要する各種のプログラム、閾値に関するデータ等を含む各種のデータを格納する記憶領域を有する。
【0011】
HMD1は、撮像部11、表示部12、および動作検知部13を備えている。撮像部11は、撮像光学系111と撮像センサ112を含み、現実世界を撮像した撮像映像を生成する。撮像部11に搭載される撮像光学系111の内部は、撮像レンズなどである。撮像センサ112は、撮像光学系111より形成された被写体像を光電変換するCMOSセンサなどの撮像素子である。このように、撮像部11は現実世界の光を撮像レンズを介して撮像素子へと結像させることで光を電気信号へと変換し、撮像映像として取得する。
【0012】
表示部12は、表示光学系121と表示パネル122とを含み、ユーザは表示パネル122に表示される表示映像を、表示光学系121を通して観察する。表示部12に搭載される表示光学系121はレンズや複数の反射面を有するプリズム型の光学素子等によって構成されており、表示パネル122の映像を光学的に拡大させることでHMDとして最適な表示映像をユーザに提示する。
【0013】
動作検知部13は、HMD1を装着したユーザの頭部の位置姿勢(位置や方向や姿勢)を検出することでHMD1の動きを検知する。動作検知部13は、加速度センサ、角速度センサなどを用いて構成される。
【0014】
図2に、ユーザの頭部動作を概念的に説明する概念図を示す。本実施形態では、HMD1を装着したユーザの視線方向をRoll軸(R)、視線方向に対して水平方向をPitch軸(P)、視線方向に対して垂直方向をYaw軸(Y)と定義する。そして、それぞれの軸に対して回転した場合をそれぞれRoll(ロール)、Pitch(ピッチ)、Yaw(ヨー)と定義する。すなわち、Rollはユーザが頭部を傾ける場合、Pitchはユーザがうなずく場合、Yawはユーザが首を横に振る場合となる。動作検知部13は、これらRoll軸、Pitch軸、Yaw軸方向の加速度や回転の角速度などのデータを出力する。
【0015】
画像処理装置14は、撮像光学系の画像補正を行う撮像光学系補正部141と、表示光学系の画像補正を行う表示光学系補正部142を備える。また、撮像光学補正された映像に対し動作検知部13で検知したHMD1の動きに応じて生じる映像遅延による影響がないように画像を変換する画像変換部143を備える。画像変換部143は、前述のように画像を変換することにより、表示部12に表示すべき画像を生成する生成部として機能する。なお、本実施形態では、撮像部11により撮像された画像をそのまま表示画像として表示する形態であるが、例えば撮像された画像を拡大した画像を表示画像としてユーザに観察させるようにしてもよい。
【0016】
なお、画像処理装置14の各機能の一部または全部をHMD1が備えるようにしてもよい。
【0017】
一般的に光学系を介して得られる画像は、光学系の光軸中心付近と周辺付近で結像倍率が異なったり、光の波長によって結像倍率が異なるため歪曲収差や倍率色収差、周辺光量低下といった画質への影響を受ける。撮像光学系補正部141や表示光学系補正部142は、光学系を介して発生する画質への影響を補正するための画像補正を行う機能を有している。画像補正の内容としては、シェーディング補正や歪曲収差補正などがある。撮像光学系補正部141においては、撮像光学系111で発生した光学特性を補正し、表示光学系補正部142においては、表示光学系121で発生する光学特性を予め補正する。
【0018】
なお、
図1においては、撮像部11および表示部12はそれぞれ1つである前提として説明したが、本実施形態はこれに限らない。撮像部11、表示部12はともに複数から構成されてもよいし、どちらかが複数という構成でもよい。例えば、HMDのような頭部装着型の画像表示装置は、撮像部11と表示部12がそれぞれ両眼に合わせて2つより構成されていることが一般的である。
【0019】
次に、画像変換部143の詳細について説明する。
図3に、本実施形態に係る画像変換部143の機能構成を示す。遅延量保存部31は、撮影した映像の時間と表示される映像の時間との間に発生する遅延量を保存する。この遅延量は固定値としてもよいし、システム的に変動する遅延量を外部より取得、保存するようにしてもよい。
【0020】
変形移動計算部32は、動作検知部13より入力される頭部動作情報と遅延量保存部31に保存されている遅延量とに基づいて、撮像映像の移動量と変形量を計算する機能部である。変形移動計算部32の動作について、
図4のフローチャートを用いて以下で詳細に説明する。
【0021】
はじめに、変形移動計算部32は、動作検知部13より頭部動作情報Qを取得する(ST401)。前述のとおり、この頭部動作情報Qは加速度センサ、角速度センサなどのセンサを用いて計測されるセンサデータであり、頭部の動き(首ふりや移動)を数値化したデータとなっている。次に、変形移動計算部32は、遅延量保存部31より遅延量Dtを取得する(ST402)。
【0022】
この後、変形移動計算部32は頭部動作情報Qから頭部の縦ふりもしくは横ふりを判定する処理を行う(ST403)。頭部の縦ふりもしくは横ふりを判定する方法としては、例えば、Yawの角速度とPitchの角速度から判定する方法がある。本実施形態において、変形移動計算部32は、Yawの角速度Y
ωが一定値以上の場合は頭部の横ふり、Pitchの角速度P
ωが一定値以上の場合は頭部の縦ふりと判定する。頭部の縦ふりもしくは横ふりと判定された場合は、変形移動計算部32は、画像の水平シフト量(Hd)と垂直シフト量(Vd)を算出する(ST404)。また、頭部の縦ふり、横ふりではないと判定された場合、変形移動計算部32は、画像の水平シフト量(Hd)と垂直シフト量(Vd)をそれぞれ0に設定する(ST405)。
【0023】
次に、変形移動計算部32は、頭部動作情報Qから頭部の傾きを判定する処理を行う(ST406)。頭部の傾きを判定する方法としては、例えば、Rollの角速度から判定する方法がある。本実施形態において、変形移動計算部32は、Rollの角速度R
ωが一定値以上の場合は頭部を傾けたと判定する。頭部の傾きと判定された場合は、変形移動計算部32は、画像の回転角(Θd)を算出する(ST407)。また、頭部の傾きではないと判定された場合、変形移動計算部32は、画像の回転角(Θd)を0に設定する(ST408)。
【0024】
次に、変形移動計算部32は、頭部動作情報Qから頭部の前後移動を判定する処理を行う(ST409)。頭部の前後移動を判定する方法としては、例えば、Roll軸方向の加速度情報から判定する方法がある。本実施形態において、変形移動計算部32は、Roll軸方向の加速度R
aが一定値以上の場合は頭部が前後移動をしたと判定する。頭部の前後移動と判定された場合は、変形移動計算部32は、画像の拡大率(Ed)を算出する(ST410)。また、頭部の前後移動ではないと判定された場合、変形移動計算部32は、画像の拡大率(Ed)を0に設定する(ST411)。
【0025】
最後に、変形移動計算部32は、計算した画像の水平シフト量Hd、垂直シフト量Vd、回転角Θd、拡大率Edを変形移動実行部33へ送信する(ST412)。このようにして、変形移動計算部32は、動作検知部13より入力される頭部動作情報と、遅延量保存部31に保存されている遅延量とに基づいて、撮像映像の移動量と変形量を計算する。
【0026】
なお、移動量と変形量の計算の順番については、特に限定されない。先に頭部の前後移動による倍率を計算した後、頭部の縦ふり/横ふりによるシフト量を計算するといった構成としてもよい。また、移動量や変形量の計算手段についても、頭部動作情報Qと、遅延量Dtより予測可能な範囲でユーザに違和感のないように画像変換するようにしてもよい。
【0027】
変形移動実行部33は、変形移動計算部32より入力された画像変換パラメータを用いて撮像光学系補正部141から入力される撮像映像の画像変換を行う機能部である。画像変換は、移動、変形の少なくとも一方であり、例えば水平垂直シフトや、画像の回転・拡大縮小などである。画像変換の方法としては、フレームバッファ/ラインバッファを用いて画像変換アルゴリズム(バイリニアやバイキュービックなど)を用いて計算する方法や、映像の同期信号をずらすことで疑似的に映像をずらす方法などがある。このような画像変換により、レイテンシにより生じる体験映像と現実世界との差分による違和感を緩和することが可能となる。
【0028】
図5は、本実施形態に係る画像変換部143による効果を説明するための図である。
図5は、HMD1を装着したユーザが、(a)頭部動作なしの場合、(b)頭部をYaw動作した場合、(c)頭部をPitch動作した場合、(d)頭部をRoll動作した場合、(e)頭部を前後移動した場合を示している。また、
図5(a)〜(e)において、上から順に、表示部12を介してユーザが見る映像、HMD使用中のユーザを頭上から見た様子、HMD使用中のユーザを横から見た様子、HMD使用中のユーザを正面から見た様子を示している。
【0029】
図5(a)に示すように、頭部動作なしの場合、撮像光学系111により生じる撮像画角A
θの範囲内の映像が、解像度HxVの範囲内に表示されていることがわかる。また、
図5(b)に示すように、頭部をYaw動作した場合、変形移動計算部32は前述のST404の動作にある通り頭部動作情報Qに含まれるYawの角速度Y
ωと遅延量DtからYaw角Y
θを求める。そして、Yaw角Y
θと基準となる距離Lとの関係から、画像の水平シフト量Hdが求められる。変形移動実行部33は、この水平シフト量Hdに基づき画像を水平方向にずらすことで、ユーザの視線方向に合った画像をユーザに提示できるようにする。また、
図5(c)に示すように、頭部をPitch動作した場合も、Yaw動作と同様に、変形移動計算部32は画像の垂直シフト量Vdを計算し、変形移動実行部33が画像を垂直方向にずらす。これにより、ユーザの視線方向に合った画像をユーザに提示できるようになる。
【0030】
図5(d)に示すように、頭部をRoll動作した場合、変形移動計算部32は前述のST407の動作にある通り頭部動作情報Qに含まれるRollの角速度R
ωと遅延量DtからRoll角R
θを求める。そして、Roll角R
θから画像の回転角Θdが求められる。変形移動実行部33は、この回転角Θdに基づき画像を回転させることで、ユーザの視線に合った画像をユーザに提示するようにする。
【0031】
図5(e)に示すように、頭部を前後移動した場合、変形移動計算部32は前述のST410の動作にある通り頭部動作情報Qに含まれるRoll軸方向の加速度R
aと遅延量DtからRoll軸方向の移動量R
Mを求める。Roll軸方向の移動量R
Mと撮像画角A
θの関係から画像の拡大率Edが求められる。変形移動実行部33は、この拡大率Edに基づき画像を拡大、縮小させることで、ユーザの前後動作に合った画像をユーザに提示できるようにする。以上のように、画像変換部143が、動作検知部13の動作に基づいて、表示映像に対して補正処理を実行することによって映像遅延による違和感を低減させることができる。
【0032】
次に、本実施形態の画像処理システムの特徴である、撮像光学系補正部141より後でかつ表示光学系補正部142の前に画像変換部143の処理を実行することの効果について説明する。例えば、撮像光学系補正部141より前に画像変換部143が実行されたとする。画像変換部143より出力される画像は動作検知部13の情報に応じて画像変換がされている。すなわち、撮像光学系111により生じる撮像光学特性も画像変換により移動、変形された状態となる。通常、撮像光学系補正部141で実行される補正処理は撮像光学特性の情報を予め保存しておき、予め保存されている情報に基づき補正処理を行う。つまり、画像変換部143より出力される画像に対して撮像光学系補正部141を実行すると、意図した撮像光学補正がなされず場合によっては画質を悪化させてしまう。
【0033】
また、表示光学系補正部142より後で画像変換部143が実行された場合も同様である。表示光学系補正部142は、表示光学系121を介して観察した場合に発生する表示光学特性を予め補正することを行う。表示光学系補正を行った後の画像に対して、画像変換部143を実行すると、予め画像補正してある表示光学特性についても移動、変形された状態となるため、意図した通り表示光学補正がなされず画質を悪化させるおそれがある。
【0034】
これに対し、本実施形態では、撮像光学系と表示光学系とを有する画像表示装置(HMD)を含む画像処理システムにおいて、撮像光学系補正部141より後でかつ表示光学系補正部142の前に画像変換部143の処理を実行する。そのため、それぞれの光学系の画像補正が適切に行われるようになり、それぞれの光学補正の違和感を生じさせることなく、撮像映像の遅延による表示映像のずれを抑制させることが可能となる。
【0035】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る画像処理システムは、現実世界を撮像した撮像映像に対して遅延が一定ではない処理を行う場合に対応するものである。なお、第1の実施形態において既に説明をした構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0036】
図6は、本実施形態に係る画像処理システムの構成を示すブロック図である。本実施形態に係る画像処理システムが、第1の実施形態と異なる点は、映像の遅延量を計測する遅延量計測装置61とCG重畳装置62を備えていることである。また、遅延量計測装置61で計測した遅延量情報とCG重畳装置62からの表示映像を用いて、画像変換部143が画像補正の処理を実行するという点である。なお、遅延量計測装置61、CG重畳装置62は画像処理装置14と一体の装置として構成されていてもよいし、
図6のように別体の装置として構成されていてもよい。
【0037】
遅延量計測装置61は、遅延量計測部611を有し、撮像光学系補正部141より入力される撮像映像と後述するCG重畳部622より入力される表示映像との時間差を計測する機能部である。その時間差を計測する方法としては、内部カウンタを用意しておき撮像映像と表示映像それぞれの垂直同期信号の入力されるタイミングの差を計測する方法がある。また、撮像映像にメタデータとしてタイムスタンプ情報を埋め込んでおき、撮像映像のタイムスタンプ情報と表示映像のタイムスタンプ情報が一致するまでの時間差を計測するといった方法もある。映像の遅延時間を計測することができれば、特定の方法に限定されない。このように、遅延量計測装置61によって、映像伝送や処理負荷に応じて遅延時間が変動するような場合においても正確な遅延量Dtを画像変換部143へ通知することができる。
【0038】
次に、CG重畳装置62の構成について説明する。CG重畳装置62は、CG重畳位置解析部621とCG重畳部622とにより構成される。CG重畳位置解析部621は、入力される撮像映像内を画像解析してCGの描画位置を算出する演算を行い、CG重畳位置情報をCG重畳部622へと出力する。CGの描画位置を特定するためには、例えば2次元コードのような物理指標(以下、MRマーカー)を現実空間に配置し、撮像映像の画像解析によりMRマーカーを検知する方法などがある。また、撮像映像からの画像解析による方法ではなく、HMD1を使用する空間上に光学式センサなどを取り付けることによって、HMD1の位置を特定しHMD1の位置に応じてCGの描画位置などを計算する方法もある。これらの方法により、CG重畳位置解析部621は現実空間を撮影した撮像映像に対して、CGをどの位置に描画すべきかの情報であるCG描画位置情報を計算する。CGの描画位置の計算は、CPUなどを用いて計算が行われるが、現実空間にMRマーカーを多数配置して画像解析を行う場合はMRマーカー検出のための計算処理が複数回発生するため処理時間が一定でない場合がある。このような場合、入力に対する映像の遅延量が動的に変動する可能性がある。
【0039】
CG重畳部622は、CG重畳位置解析部621で計算されたCG重畳位置情報を用いて、撮像映像に仮想画像(CGデータ)を重畳した表示映像を生成する。CGデータは、例えばCADソフトなどを用いて作成された3DCADデータや、グラフィックデザインソフトなどを用いて作成された3DCGデータなどが該当する。CG重畳部622は、CG重畳位置情報に基づき、予め用意してあるCGデータをレンダリングして撮像映像に重畳する。これにより、現実空間には存在しないCGデータが映像内に描画された映像(合成画像)を作り出すことができる。このとき、CGデータのレンダリングはGPU(Graphic Processing Unit)などを用いて計算が行われるが、CGデータの内容によってはレンダリング処理が重くなり処理時間が一定でない場合がある。このような場合においても、入力に対する映像の遅延量が動的に変動する可能性がある。
【0040】
すなわち、CG重畳装置62は映像が入力されてから出力されるまでの時間差が一定でない場合が多い。そのような場合においても、遅延量計測装置61はCG重畳装置62で発生する映像遅延量をリアルタイムに計測することができる。
【0041】
画像変換部143は、遅延量Dtに応じてレイテンシを推定、決定し、映像の変形、移動を実行する。本実施形態においては、映像の遅延量Dtは動的に変化するが、遅延量計測部611から遅延量Dtを入力させることで、リアルタイムに遅延が変化する場合においても撮像映像の遅延による表示映像のずれを抑制することができる。これによって、映像遅延による違和感を低減させることが可能となる。
【0042】
ここで、
図7を用いて、本実施形態の変形例についても説明する。
図7は、本実施形態の変形例に係る画像処理システムの構成を示すブロック図である。
図7の画像処理システムでは、
図6記載のCG重畳装置62に代わり、無線装置71を備えている。無線装置71は、不図示の外部装置に対して映像を無線伝送する無線伝送部(送信部)711と、不図示の外部装置より処理された映像を無線受信する無線受信部(受信部)712とにより構成される。
【0043】
無線伝送部711および無線受信部712ともに、無線の電波状況によっては通信のスループットが低下し映像伝送が困難になる場合が想定される。通信のスループットが低下すると、映像の遅延が発生したり映像のフレームが抜けたりするため、映像の遅延量が動的に変動する可能性がある。
【0044】
このように、無線装置71のような無線伝送を介するシステムでリアルタイムに遅延量が変動する場合であっても、撮像映像の遅延による表示映像のずれを抑制させることが可能となる。
【0045】
以上、本実施形態によれば、画像処理システムが撮像映像に対して遅延が一定ではない処理を行う場合にも、その遅延量を計測し、その遅延量に応じて映像の補正を行うことにより、撮像映像の遅延による表示映像のずれを抑制することができる。
【0046】
なお、本実施形態においては、CG重畳装置62や無線装置71の処理では、遅延量が動的に変動するものとして説明をしたが、CG重畳装置62や無線装置71の処理が必ずしも、遅延が一定でない処理となるわけではない。そのため、第1の実施形態の構成に、遅延量計測装置61は追加せず、CG重畳装置62や無線装置71のみを追加するような構成であってもよく、これらも本発明の範疇に含まれるものである。
【0047】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態に係る画像処理システムは、現実世界を撮像した撮像映像に対し遅延が一定ではない処理であるCG生成を行い、生成したCGのみを画像変換部143で変換するものである。なお、第1、第2の実施形態において既に説明をした構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0048】
図8は、本実施形態に係る画像処理システムの構成を示すブロック図である。本実施形態に係る画像処理システムが、第2の実施形態と異なる点は、撮像映像にCGを重畳するのではなくCG生成装置82はCGの生成と転送のみを行い撮像映像との合成は映像合成部144で行う点である。この構成とするメリットとしては、撮像映像に関しては遅延量変動の影響を受けないため最小の遅延でユーザに映像表示をすることができる。しかしながら、一方でCG映像に関してはCG生成装置82の影響により映像合成部144で合成する時点では撮像映像に対してCG映像は遅延量を含んだ状態の映像表示となる。そのため、本実施形態ではCGデータのみを画像変換部143で処理することによって、CG合成後の表示映像における違和感を抑制する。
【0049】
図9は、本実施形態に係る画像変換部143による効果を説明する図である。
図9には、(a)HMD1を装着したユーザが頭部動作なしの場合、(b)頭部をYaw動作した場合について示している。また、
図9(a)、(b)それぞれにおいて、上から順に、表示部12を介してユーザが見る映像、HMD使用中のユーザを頭上から見た様子、HMD使用中のユーザを横から見た様子、HMD使用中のユーザを正面から見た様子を示している。
【0050】
図9(a)に示すように、頭部動作なしの場合、現実世界にはないCGデータ90が重畳された表示映像が観察される。一方、
図9(b)に示すように、頭部をYaw動作した場合、現実世界の撮像映像は遅延量がない状態で表示され、重畳するCGデータは遅延量を含んだ状態で表示されてしまう。そのため、単純に撮像映像にCGデータを重畳すると、図中の位置91にCGデータが重畳されてしまい、現実世界とCGデータとの間に違和感が発生してしまう。
【0051】
そこで、本実施形態において、変形移動計算部32は頭部動作情報Qに含まれるYawの角速度Y
ωと遅延量DtからYaw角Y
θを求める。さらに、Yaw角Y
θと基準となる距離Lとの関係から、画像の水平シフト量Hdを求める。変形移動実行部33は、この水平シフト量Hdに基づき、CGデータを水平方向にずらしたのちに撮像映像と合成することで、違和感のない映像提供を行うことができる。
【0052】
以上のように、本実施形態では、生成したCGのみを画像変換部143で変換する構成においても、遅延量に応じて映像の補正を行うことにより、撮像映像の遅延による表示映像のずれを抑制することができる。
【0053】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態に係る画像処理システムは、撮像映像に対し遅延が一定ではない処理であるCG生成を行い、生成したCGを画像変換部143で変換し、さらに撮像光学系補正部141より出力された撮像映像を画像変換部145で変換するものである。なお、第1〜第3の実施形態において既に説明をした構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0054】
図10は、本実施形態に係る画像処理システムの構成を示すブロック図である。本実施形態に係る画像処理システムが、第3の実施形態と異なる点は、撮像映像とCGデータともに画像変換部143もしくは145により画像変換を行う点である。画像変換部145は、画像変換部143と同様の機能を有しており、前述した通り画像の変換機能を有している。この構成にすることによって、撮像部11から入力される映像情報を表示部12で観察される表示映像とのハードウェア上で発生する遅延量を画像変換部145において補正することができる。そのため、本実施形態では、現実世界にCGデータを重畳した映像を最小の遅延量で観察することができる。
【0055】
[その他の実施形態]
また、本発明は、実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、1つの機器からなる装置に適用してもよい。本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形(各実施形態の有機的な組合せを含む)が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。即ち、上述した各実施形態及びその変形例を組み合わせた構成も全て本発明に含まれるものである。