(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、実装面に電子部品が実装された回路基板と、アンテナ接続用の端子電極と、その端子電極と電子部品とを接続するビアホールと、を備えた高周波モジュールが開発されている。
【0003】
このような高周波モジュールにおいては、アンテナから端子電極及びビアホールを経由して電子部品に静電気が侵入し易くなり、侵入した静電気の静電気放電(ESD:Electro Static Discharge)によって電子部品が破壊し易くなるという可能性があった。そのため、ESDへの保護対策が必要とされている。特にESD規格の厳しいモデルにおいては、その必要性が高くなっている。
【0004】
高周波モジュールにESD保護対策を行なう方法としては、特許文献1におけるサージ吸収素子800のように、互いに対向する一対の接地電極を備えたESD保護素子を回路基板に実装する第1の方法や、特許文献2における電子モジュール900のように、接地電極を含むESD保護構造を回路基板の内部に形成する第2の方法等が開示されている。
【0005】
第1の方法(特許文献1)によるサージ吸収素子800では、
図9に示すように、絶縁性セラミックスシート802に、外部電極と導通した内部電極806及び放電空間805を有し、放電空間805に放電ガスを閉じこめた。このような構成によって、静電容量が小さく、複雑な製造工程を必要としない生産性の高いサージ吸収素子を提供することができる。
【0006】
また、第2の方法(特許文献2)による電子モジュール900では、
図10に示すように、少なくとも1つの電子部品素子(コンデンサ素子903等)を内蔵した電子部品内蔵基板901の内部に、更にESD保護素子902を設け、そのESD保護素子902を、少なくとも、その電子部品内蔵基板901の内部に形成された空洞部と、空洞部内において対向して形成された一対の放電電極とで構成し、かつ、ESD保護素子902を、電子部品素子と一体的に形成するようにした。このような構成によって、電子モジュール900の当初の特性がずれ、ESD保護効果が薄れてしまうという問題を解消することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した第1の方法によるサージ吸収素子800では、新たにESD保護素子を使用するので、部品点数の増加によって構造が複雑化したり、実装面積が増大したりしてしまうという問題があった。また、第2の方法による電子モジュール900では、比較的大きな寸法で複雑な形状の放電電極がビアホールに直接接続されているので、このようなビアホールがアンテナ信号線用のビアホールであった場合には、そのビアホールのインピーダンスを変化させて送信電力や感度等のアンテナの電気性能に影響を与える可能性が有った。
【0009】
更に、電子モジュール900では、放電電極が他の配線電極と共に回路基板の中央部付近に形成されているので、放電時のノイズが電子回路の電気性能に影響を与える可能性も有った。
【0010】
本発明はこのような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、構造が簡単で電気性能への影響が少ないESD保護構造を有した高周波モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明の高周波モジュールは、実装面、底面及び内層を有する回路基板と、前記実装面に実装された電子部品と、を備えた高周波モジュールであって、前記回路基板は、前記底面に設けられたアンテナ接続用の端子電極と、前記電子部品と前記端子電極とを接続するビアホールと、前記実装面、前記底面又は前記内層のうちの少なくとも1つの層に設けられた放電電極及び接地電極と、を有し、前記端子電極は、前記ビアホールから延出し、前記接地電極は、前記放電電極に印加される静電気が前記ビアホール及び前記放電電極を介して前記接地電極に放電するように、前記放電電極と所定の間隔を隔て
、前記放電電極の周囲の少なくとも一部を囲むように配置されている、という特徴を有する。
【0012】
このように構成された高周波モジュールは、放電電極と接地電極とを所定の間隔を隔てて対向させたので、新たにESD保護素子を用いることなく、ESD保護構造を容易に形成することができる。また、このESD保護構造を形成する際にアンテナ接続用のビアホールと繋がった放電電極の寸法を小さくできるので、ビアホールのインピーダンス特性の変化を小さくして、アンテナの電気性能に与える影響を抑制することができる。更に、回路基板の側端部の近傍にビアホールを設けることによって、放電時のノイズが電子回路の電気性能に与える影響を抑制することができる。その結果、構造が簡単で電気性能への影響が少ないESD保護構造を実現することができる。
【0013】
また、上記の構成において、前記放電電極は、前記ビアホールの外周部から外側に広がるリング状の電極であり、前記接地電極は、前記放電電極の周囲において円弧状に切り欠かれている、あるいは、前記放電電極
の全周を取り囲むように形成されている、という特徴を有する。
【0014】
このように構成された高周波モジュールは、放電電極の形状が簡単であり、電極形成が容易である。しかも、放電電極と接地電極とが回路基板の側端部の近傍において互いに最も近接するので、放電時のノイズが電子回路の電気性能に与える影響を更に抑制することができる。
また、上記の構成において、前記ビアホールは、前記回路基板の側端部の近傍に設けられており、前記放電電極と前記接地電極とが前記側端部の近傍において最も近接するように設けられている、という特徴を有する。
【0015】
このように構成された高周波モジュールは、放電電極と接地電極とが側端部の近傍で最も近接しているので、放電電極から側端部側にある接地電極へ容易に放電させることができ、放電時のノイズが側端部とは反対側にある電子回路に与える影響を抑制することができる。
【0016】
また、上記の構成において、前記放電電極と前記接地電極のうちの少なくとも一方が、他方の側へ向かって尖った形状をした突出部を有している、という特徴を有する。
【0017】
このように構成された高周波モジュールは、放電電極又は接地電極が、他方の側へ向かって尖った形状をした突出部を有しているので、端子電極側の電荷を集中して放電させることができる。そのため、放電電極から接地電極への放電を確実に行わせることができる。
【0018】
また、上記の構成において、前記放電電極と前記接地電極とが、前記実装面及び前記内層のうちの複数の層に形成されている、という特徴を有する。
【0019】
このように構成された高周波モジュールは、放電電極と接地電極とをそれぞれ複数設けて放電箇所を増加させたことによって、放電電極から接地電極への放電をより確実に行わせることができることができる。
【0020】
また、上記の構成において、前記実装面を覆うシールド用の導電部材を更に備え、前記側端部において前記接地電極と前記導電部材とが電気的に接続されている、という特徴を有する。
【0021】
このように構成された高周波モジュールは、シールド用の導電部材に放電時の電荷を逃がすことによって放電時の電子回路への影響を更に抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の高周波モジュールは、新たにESD保護素子を用いることなくESD保護構造を容易に形成することができる。また、ESD保護構造を形成する際のビアホールのインピーダンス特性の変化を小さくして、アンテナの電気性能に与える影響を抑制することができる。更に、回路基板の側端部の近傍にビアホールを設けることによって、放電時のノイズが電子回路の電気性能に与える影響を抑制することができる。その結果、構造が簡単で電気性能への影響が少ないESD保護構造を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の高周波モジュールについて図面を参照しながら説明する。本発明の高周波モジュールは、例えば、無線LAN(Local Area Network)やブルートゥース(登録商標)等に使用される高周波回路を有する小型の高周波モジュールであり、スマートフォン等の電子機器に搭載されて用いられる。本発明の高周波モジュールの用途については、以下説明する実施形態に限定されるものではなく適宜変更が可能である。尚、本明細書では、各図面に対する説明の中で便宜上、右側、左側、後側、前側、上側、下側と記載している場合があるが、これらは、それぞれ各図面内で+X側、−X側、+Y側、−Y側、+Z側、−Z側を示すものであり、製品の設置方向や使用時の方向をこれらに限定するものではない。
【0025】
[第1実施形態]
最初に、
図1乃至
図4を参照して、本発明の第1実施形態に係る高周波モジュール100の構造について説明する。
図1は、高周波モジュール100の外観を示す斜視図であり、
図2は、高周波モジュール100の平面図であり、
図3は、
図2におけるA−A線から見た高周波モジュール100の拡大断面図である。また、
図4は、高周波モジュール100の内層30dの電極構成を示す拡大平面図である。尚、
図4においては、対象となる内層30dより上側の部材や本発明に関係の無い電極を省略している。尚、今後説明する
図5乃至
図7においても同様である。
【0026】
高周波モジュール100は、
図1乃至
図3に示すように、互いに対向する実装面30a、底面30b及び内層30dを有する回路基板30と、実装面30aに実装された電子部品41と、底面30bに設けられたアンテナ接続用の端子電極11と、電子部品41と端子電極11とを接続するように回路基板30の内部に設けられたビアホール17と、を備えている。高周波モジュール100では、電子部品41は複数個設けられている。
【0027】
高周波モジュール100における回路基板30は、
図3に示すように、内層30dを複数有しており、回路基板30の内層30d及び実装面30a上には、配線パターン37が形成されている。これら配線パターン37と電子部品41とによって電子回路40が形成されている。また、回路基板30の内層30dには、ビアホール17が電子部品41と端子電極11間等に複数形成されている。
【0028】
回路基板30の上側には、回路基板30上の電子部品41を覆うように導電部材20である金属カバー21が取り付けられている。金属カバー21は、電子回路40をシールドすることを目的として取り付けられている。
【0029】
電子部品41は、
図3に示すように、回路基板30の実装面30aに設けられている部品パッド35に実装される。部品パッド35は、上述したビアホール17や配線パターン37等を介して電子回路40の所定の部分に接続されている。
【0030】
回路基板30の最下層である底面30bには、
図3に示すように、通常動作に必要な複数のランド電極33が設けられている。複数のランド電極33は、例えば、上述したビアホール17や配線パターン37等を介して電子回路40の所定の部分に接続され、上述した電子回路40に電源を供給する電源端子や電子回路40の入力端子や出力端子、及びグランド端子として用いられる。
【0031】
回路基板30の底面30bに設けられた複数のランド電極33は高周波モジュール100が搭載されるスマートフォン等の電子機器に半田等によって取り付けられ、電子回路40が、電子機器内の回路に電気的に接続される。
【0032】
回路基板30の底面30bには、複数のランド電極33の1つでもあるアンテナ接続用の端子電極11が形成されている。端子電極11は、上述したビアホール17及び部品パッド35を介して電子部品41の所定の部分に接続されている。端子電極11及びビアホール17は、回路基板30の側端部30cの近傍に設けられている。
【0033】
回路基板30の実装面30a、底面30b又は内層30dのうちの少なくとも1つの層においては、放電電極13が設けられている。本実施形態の高周波モジュール100では、放電電極13は、
図3に示すように、回路基板30の最上層である実装面30a及び全ての内層30dに設けられている。尚、放電電極13が回路基板30の最下層である底面30bに設けられていても良く、また、実装効率等の観点から実装面30aには放電電極13が設けられていなくても良い。
図4では、回路基板30の内層30dに形成された放電電極13を示している。
【0034】
放電電極13は、
図4に示すように、ビアホール17から延出する電極であり、本実施形態では、ビアホール17の外周部から外側に広がるリング状の電極となっている。尚、放電電極13は、ビアホール17と電気的に接続されており、ビアホール17及び部品パッド35を介して端子電極11から電子部品41に至る信号の伝送経路の途中に設けられた放電用の電極となっている。
【0035】
そして、放電電極13が設けられた層には、放電電極13と所定の間隔D1を隔てて対向する接地電極15が設けられている。本実施形態の高周波モジュール100では、放電電極13と同じく接地電極15も、実装面30a及び内層30dの複数の層に形成されている。
【0036】
接地電極15は、
図3に示すように、回路基板30の側端部30cの近傍に設けられた電極であり、本実施形態では、側端部30cからビアホール側に延びる略長方形の電極となっている。そして、接地電極15は、放電電極13の周囲において円弧状に切り欠かれており、放電電極13と接地電極15とが、側端部30cの近傍において互いに最も近接するようになっている。また、接地電極15は、回路基板30に設けられた接続用の電極(図示せず)等を介して、前述したグランド端子(図示せず)や導電部材20である金属カバー21と電気的に接続される。
【0037】
端子電極11には、電子回路40との間で入出力される信号のためのアンテナ(図示せず)が接続される。通常、アンテナは外部に露出するように配置されるので、アンテナを介して端子電極11に静電気が印加され、電子部品41に静電気が侵入する可能性がある。
【0038】
本発明の第1実施形態である高周波モジュール100では、端子電極11に印加される静電気を、端子電極11から電子部品41に至る信号の伝送経路の途中で、前述した所定の間隔D1を隔てて対向する放電電極13及び接地電極15を介して、導電部材20である金属カバー21に逃がすように構成した。そのため、端子電極11に印加される静電気が、電子部品41に侵入することを防止することができる。
【0039】
所定の間隔D1は、ESD規格における規定の電圧及び静電容量によって印加される静電気が端子電極11から導電部材20に放電し易くなるように、また、端子電極11即ち電子部品41が実装されている部品パッド35におけるインピーダンスが極端に変化しないように、その距離が設定される。
【0040】
高周波モジュール100では、このように構成することによって、新たにESD保護素子を用いることなく、ESD保護構造を容易に形成することができる。また、このESD保護構造を形成する際にアンテナ接続用のビアホール17と繋がった放電電極13の寸法を小さくできるので、ビアホール17のインピーダンス特性の変化を小さくして、アンテナの電気性能に与える影響を抑制することができる。
【0041】
また、通常、電子回路40を構成する電子部品41や配線パターン37は回路基板30の中央部寄りの領域に配置されるので、回路基板30の側端部30cの近傍にビアホール17を設け、端子電極11から回路基板30の側端部30c側にある接地電極15に放電することによって、放電時のノイズが電子回路40の電気性能に与える影響を抑制することができる。
【0042】
[第1実施形態の第1変形例の実施形態]
次に、
図3及び
図5を参照して、本発明の第1実施形態に係る高周波モジュールの第1変形例である高周波モジュール110の構造について説明する。
図5は、高周波モジュール110の内層30dの電極構成を示す拡大平面図である。尚、高周波モジュール110の断面図は、高周波モジュール100の断面図と同様であるので、高周波モジュール110の断面図として、
図3を用いる。また、高周波モジュール110の高周波モジュール100との相違点は、高周波モジュール110における接地電極16の形状が高周波モジュール100における接地電極15の形状と異なるだけである。そのため、接地電極16の形状に関係すること以外については、その説明を省略する。
【0043】
高周波モジュール110の接地電極16は、
図3及び
図5に示すように、回路基板30の側端部30cの近傍で、放電電極13の周囲を取り囲むように形成されている。そして、接地電極16と放電電極13とが対向している部分のうち、側端部30cの近傍で最も近く対向しており、所定の間隔D1を隔てて対向している。尚、接地電極16の形状は、側端部30cの近傍で、所定の間隔D1を隔てて対向していれば、放電電極13を取り囲むように形成されていなくても良い。
【0044】
このように放電電極13と接地電極16とが側端部30cの近傍で最も近接して対向しているので、放電電極13から側端部30c側にある接地電極16へ容易に放電させることができ、放電時のノイズが側端部30cとは反対側にある電子回路40に与える影響を抑制することができる。
【0045】
[第1実施形態の第2変形例及び第3変形例の実施形態]
次に、
図3、
図6及び
図7を参照して、本発明の第1実施形態に係る高周波モジュールの第2変形例である高周波モジュール120、及び第3変形例である高周波モジュール130の構造について説明する。
図6は、高周波モジュール120の内層30dの電極構成を示す拡大平面図であり、
図7は、高周波モジュール130の内層30dの電極構成を示す拡大平面図である。尚、高周波モジュール120及び高周波モジュール130の断面図は、高周波モジュール100の断面図と同様であるので、高周波モジュール120及び高周波モジュール130の断面図として、
図3を用いる。また、高周波モジュール120及び高周波モジュール130と高周波モジュール100との相違点は、放電電極13又は接地電極15の形状が高周波モジュール100における放電電極13又は接地電極15の形状と異なるだけである。そのため、放電電極13及び接地電極15の形状に関係すること以外については、その説明を省略する。
【0046】
高周波モジュール120においては、
図6に示すように、接地電極15の放電電極13に対向した部分で最も側端部30cに近い部分に、放電電極13に向かって尖った形状の突出部15aが設けられており、当該突出部15aの先端部と放電電極13とが間隔D1の距離を隔てて対向している。
【0047】
このように接地電極15の一部である突出部15aを、放電電極13に向かって尖った形状とすることによって、端子電極11側の電荷を接地電極15の突出部15aへ集中して放電させることができるので、端子電極11から金属カバー21への放電を確実に行わせることができる。
【0048】
高周波モジュール130においては、
図7に示すように、放電電極13の接地電極15に対向した部分で最も側端部30cに近い部分に、接地電極15に向かって尖った形状の突出部13aが設けられており、当該突出部13aの先端部と接地電極15とが間隔D1の距離を隔てて対向している。
【0049】
このように放電電極13の一部である突出部13aを、接地電極15に向かって尖った形状とすることによって、端子電極11側の電荷を放電電極13の突出部13aから集中して放電させることができるので、端子電極11から金属カバー21への放電を確実に行わせることができる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、
図1、
図2、
図4及び
図8を参照して、本発明の第2実施形態に係る高周波モジュール200の構造について説明する。
図8は、高周波モジュール200の拡大断面図である。尚、高周波モジュール200の斜視図及び平面図は、高周波モジュール100と同等であるので、高周波モジュール200の斜視図及び平面図として、
図1、
図2及び
図4を用いる。また、高周波モジュール200の高周波モジュール100との相違点は、高周波モジュール200における導電部材20及びビアホール18の構造及び封止樹脂層27が高周波モジュール200に形成されていることが、高周波モジュール100と異なるだけである。そのため、この相違点以外については、その説明を省略する。
【0051】
高周波モジュール200は、
図1、
図2及び
図8に示すように、互いに対向する実装面30a及び底面30b及び内層30dを有する回路基板30と、実装面30aに実装された電子部品41と、電子部品41を覆うように実装面30a側に設けられた封止樹脂層27と、封止樹脂層27の表面を覆うように設けられた導電部材20である導電ペースト層23と、底面30bに設けられたアンテナ接続用の端子電極11と、電子部品41と端子電極11とを接続するように回路基板30の内部に設けられた複数のビアホール18と、を備えている。高周波モジュール200では、電子部品41は複数個設けられている。
【0052】
複数のビアホール18のうち端子電極11に接続されているビアホール18は、
図8に示すように、回路基板30の側端部30cの近傍に設けられている。高周波モジュール200におけるビアホール18は、高周波モジュール100におけるビアホール17と異なり、その内部が導電ペースト材等の部材で充填されたタイプになっている。
【0053】
複数の電子部品41は、回路基板30上の電子部品41を覆うように実装面30aの側に設けられた絶縁性樹脂材27aからなる封止樹脂層27によって樹脂封止されている。絶縁性樹脂材27aは、エポキシ樹脂を主成分にシリカ充填材等を加えた熱硬化性成形材料であり、回路基板30上の電子部品41を熱や湿度などの環境から保護することを目的として用いられる。
【0054】
導電部材20である導電ペースト層23は、高周波回路である電子回路40を外部に対してシールドする目的で形成される。導電ペースト層23は、封止樹脂層27の表面を覆うと共に、回路基板30の側端部30cの一部も覆うように形成されている。導電部材20を構成する導電ペースト材23aは、銀や銅等の導電性を有する材料から成ると共に、封止樹脂層27や回路基板30に対する強い密着性を有している。
【0055】
高周波モジュール200においても、放電電極13が実装面30a及び内層30dの複数の層に形成されている。そして、放電電極13が設けられた層には、
図4及び
図8に示すように、放電電極13と所定の間隔D1を隔てて対向する接地電極15が設けられている。接地電極15は、回路基板30の側端部30cの近傍に設けられており、回路基板30の側端部30cに設けられた側面電極(図示せず)等によって前述した導電部材20である導電ペースト層23と電気的に接続される。
【0056】
このように、高周波モジュール200では、端子電極11に印加される静電気を、端子電極11から電子部品41に至る信号の伝送経路の途中で、前述した所定の間隔D1を隔てて対向する放電電極13及び接地電極15を介して、導電部材20である導電ペースト層23に逃がすように構成している。そのため、端子電極11に印加される静電気が、電子部品41に侵入することを防止することができる。
【0057】
このように構成することによって、高周波モジュール200においても、新たにESD保護素子を用いることなく、ESD保護構造を容易に形成することができる。
【0058】
以下、本実施形態としたことによる効果について説明する。
【0059】
高周波モジュール100及び110は、放電電極13と接地電極15とを所定の間隔D1を隔てて対向させたので、新たにESD保護素子を用いることなく、ESD保護構造を容易に形成することができる。また、このESD保護構造を形成する際にアンテナ接続用のビアホール17の構造を大きく変更する必要がないので、ビアホール17のインピーダンス特性の変化を小さくして、アンテナの電気性能に与える影響を抑制することができる。更に、回路基板30の側端部30cの近傍にビアホール17を設けることによって、放電時のノイズが電子回路40の電気特性に与える影響を抑制することができる。その結果、構造が簡単で電気性能への影響が少ないESD保護構造を実現することができる。
【0060】
また、高周波モジュール100では、放電電極13は、ビアホール17の外周部から外側に広がるリング状の電極であり、接地電極15は、回路基板30の側端部30cからビアホール17側に延びる電極であり、放電電極13と接地電極15とは、回路基板30の側端部30cの近傍において互いに最も近接するように設けられている。このような放電電極13は形状が簡単であり、電極形成が容易である。しかも、放電電極13と接地電極15とが回路基板30の側端部30cの近傍において互いに最も近接するので、放電時のノイズが電子回路40の電気性能に与える影響を更に抑制することができる。
【0061】
また、高周波モジュール120及び高周波モジュール130は、放電電極13又は接地電極15が、他方の側へ向かって尖った形状をした突出部15a又は突出部13aを有しているので、端子電極11側の電荷を集中して放電させることができる。そのため、放電電極13から接地電極15への放電を確実に行わせることができる。
【0062】
また、高周波モジュール100は、放電電極13と接地電極15とをそれぞれ複数設けて放電箇所を増加させたことによって、放電電極13から接地電極15への放電をより確実に行わせることができることができる。
【0063】
また、高周波モジュール100は、シールド用の導電部材20に放電時の電荷を逃がすことによって放電時の電子回路40への影響を更に抑制することができる。
【0064】
以上説明したように、本発明の高周波モジュールは、新たにESD保護素子を用いることなくESD保護構造を容易に形成することができる。また、ESD保護構造を形成する際のビアホールのインピーダンス特性の変化を小さくして、アンテナの電気性能に与える影響を抑制することができる。更に、回路基板の側端部の近傍にビアホールを設けることによって、放電時のノイズが電子回路の電気性能に与える影響を抑制することができる。その結果、構造が簡単で電気性能への影響が少ないESD保護構造を実現することができる。
【0065】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。