(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記同定部は、前記第1の差分画像上の対象点の集まりを中心線として同定し、各対象点それぞれについて対応する前記第2の差分画像上の各対応点を、各対象点に対応するエピポーララインと、各対象点と各対応点との血流情報とを用いて同定し、
前記再構成部は、前記対象点及び前記対応点の情報を用いて、3次元の中心線を更に再構成する、請求項1〜4のいずれか一つに記載のX線診断装置。
前記同定部は、前記第1の差分画像において指定された血管上の対象点に対応するエピポーララインを前記第2の差分画像で同定し、当該エピポーララインと交錯する血管上において、前記対象点と血流情報が類似する対応点を同定する、請求項1〜5のいずれか一つに記載のX線診断装置。
前記同定部は、前記第1の差分画像において指定された血管上の対象点の血流情報に類似する前記第2の差分画像上の候補点を特定し、当該候補点のうち前記対象点に対応するエピポーララインと交錯する候補点を前記対応点として同定する、請求項1〜5のいずれか一つに記載のX線診断装置。
第1の方向及び第2の方向において時系列に生成された造影画像と非造影画像との差分画像であって、第1の方向から照射されるX線に基づく第1の差分画像、及び、第2の方向から照射されるX線に基づく第2の差分画像を取得する取得部と、
第1の差分画像上の対象点に対応する第2の差分画像上の対応点を、前記対象点に対応するエピポーララインと前記対象点の血流情報とを用いて同定する同定部と、
前記対象点及び前記対応点の情報を用いて、3次元の血管画像を再構成する再構成部とを備え、
前記同定部は、前記第2の差分画像上の血管内の全ピクセルについて前記血流情報を前処理として算出する、X線診断装置。
第1の方向及び第2の方向において時系列に生成された造影画像と非造影画像との差分画像であって、第1の方向から照射されるX線に基づく第1の差分画像、及び、第2の方向から照射されるX線に基づく第2の差分画像を取得する取得部と、
第1の差分画像上の対象点に対応する第2の差分画像上の対応点を、前記対象点に対応するエピポーララインと前記対象点の血流情報とを用いて同定する同定部と、
前記対象点及び前記対応点の情報を用いて、前記対応点での血管の幅を元に血管のサイズを決定して、3次元の血管画像を再構成する再構成部とを備え、
前記再構成部は、前記対応点に基づいて同定した血管の座標から拡大率を決定し、当該拡大率を用いて血管のサイズを補正する、X線診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態に係るX線診断装置、画像処理装置及び画像処理プログラムを説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。
【0008】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置1の構成例を示すブロック図である。なお、X線診断装置1に、被検体P(例えば、人体)は含まれない。また、
図1に示す構成は一例に過ぎない。例えば、
図1に例示する各部は、適宜統合若しくは分離して構成されてもよい。
【0009】
図1に示すように、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、X線撮像機構10と、画像処理装置100とを有する。X線撮像機構10は、第1の撮像系と、第2の撮像系とを備えるバイプレーン撮像機構である。第1の撮像系は、X線管球11aと、X線検出器12aと、C型アーム13aとを有し、第2の撮像系は、X線管球11bと、X線検出器12bと、Ω型アーム13bとを有する。
【0010】
また、X線撮像機構10は、寝台14を有し、インジェクター60が接続される。寝台14は、被検体Pを載せるベッドである。また、X線撮像機構10において、
図1に示すように、X軸、Y軸及びZ軸からなる3次元直交座標系を定義する。すなわち、X軸は水平方向を示し、Y軸は鉛直方向を示し、Z軸は被検体Pの体軸方向を示す。3次元直交座標系において、矢印で示す方向を正方向とする。
【0011】
X線管球11a及びX線管球11bは、図示しない高電圧発生回路から供給される高電圧を用いてX線を発生する装置である。
【0012】
X線検出器12a及びX線検出器12bは、例えば、FPD(X線平面検出器:Flat Panel Detector)やI.I.(イメージ・インテンシファイア:Image Intensifier)である。X線検出器12a及びX線検出器12bは、被検体Pを透過したX線を検出するためのX線検出素子がマトリックス状に配列された装置であり、各X線検出素子は、被検体Pを透過したX線を電気信号(X線信号)に変換して蓄積し、蓄積した電気信号を後述する画像メモリ22に格納する。
【0013】
C型アーム13aは、X線管球11aとX線検出器12aとを保持するアームであり、X線管球11aとX線検出器12aとは、C型アーム13aにより被検体Pを挟んで対向するように配置される。C型アーム13aは、X線管球11a及びX線検出器12aを支持し、支持部(図示を省略)に設けられたモータにより、寝台14上に横臥する被検体Pの周りをプロペラのように高速回転する。ここで、C型アーム13aは、直交するX軸、Y軸及びZ軸の3軸に関してそれぞれ回転可能に支持され、図示しない駆動回路によって各軸で個別に回転する。
【0014】
Ω型アーム13bは、X線管球11bとX線検出器12bとを保持するアームであり、X線管球11bとX線検出器12bとは、Ω型アーム13bにより被検体Pを挟んで対向するように配置される。Ω型アーム13bは、X線管球11b及びX線検出器12bを支持し、天井レールからなる支持部(図示を省略)に設けられたモータにより、寝台14上に横臥する被検体Pの周りを回転する。ここで、Ω型アーム13bは、直交するX軸、Y軸及びZ軸の3軸に関してそれぞれ回転可能に支持され、図示しない駆動回路によって各軸で個別に回転する。
【0015】
インジェクター60は、被検体Pに挿入されたカテーテルから造影剤を注入するための装置である。ここで、インジェクター60からの造影剤注入開始は、後述する画像処理装置100を介して受信した注入開始指示に従って実行される場合であってもよいし、操作者が直接インジェクター60に対して入力した注入開始指示に従って実行される場合であってもよい。なお、このように構成されるX線撮像機構10は、後述する撮像制御回路26によって制御される。
【0016】
画像処理装置100は、
図1に示すように、A/D(Analog/Digital)変換器21aと、A/D変換器21bと、画像メモリ22と、サブトラクション回路23と、フィルタリング回路24と、3次元画像処理回路25と、撮像制御回路26と、LUT(Look Up Table)27と、アフィン変換回路28と、3次元再構成回路29と、処理回路30と、モニタ40と、入力インターフェース50とを有する。
【0017】
入力インターフェース50は、例えば、マウスやキーボード、トラックボール、ポインティングデバイスなどであり、X線診断装置1に対する各種操作を操作者から受け付ける。モニタ40は、画像処理装置100によって処理された各種画像や、GUI(Graphical User Interface)などの各種情報を表示する。例えば、モニタ40は、CRT(Cathode Ray Tube)モニタや液晶モニタなどである。
【0018】
また、例えば、入力インターフェース50には、X線の照射を指示するためのX線トリガーボタンが含まれる。X線トリガーボタンが操作者により押下されると、X線診断装置1は、X線画像データの撮像を開始する。
【0019】
撮像制御回路26は、処理回路30の制御のもと、X線撮像機構10による撮像に係る各種処理を制御する。例えば、撮像制御回路26は、図示しない駆動回路を制御することによって、C型アーム13aや、Ω型アーム13bを回転させながら所定のフレームレートで投影データを収集する回転撮像を制御する。一例を挙げると、撮像制御回路26は、インジェクター60から造影剤注入開始時に出力される信号を契機として、単一の造影剤注入の後に複数回の回転撮像を制御する。また、撮像制御回路26は、C型アーム13aや、Ω型アーム13bを回転制御している間、図示しない高電圧発生回路を制御してX線管球11aや、X線管球11bからX線を連続的又は断続的に発生させ、X線検出器12a又はX線検出器12bによって被検体Pを透過したX線を検出させるように制御する。また、撮像制御回路26は、C型アーム13aや、Ω型アーム13bを回転させずに、所定のフレームレートで投影データを収集する撮像を制御する。
【0020】
A/D変換器21aは、X線検出器12aに接続され、X線検出器12aから入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号をX線収集画像として画像メモリ22に格納する。A/D変換器21bは、X線検出器12bに接続され、X線検出器12bから入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号をX線収集画像として画像メモリ22に格納する。
【0021】
画像メモリ22は、X線収集画像(投影データ)を記憶する。例えば、画像メモリ22は、第1の撮像系によって収集された投影データと、第2の撮像系によって収集された投影データとをそれぞれ記憶する。また、画像メモリ22は、後述する3次元再構成回路29によって再構成された再構成データ(ボリュームデータ)や、3次元画像処理回路25によって生成された3次元画像を記憶する。また、画像メモリ22は、後述するサブトラクション回路23によって生成された差分画像を記憶する。
【0022】
サブトラクション回路23は、DSA(Digital Subtraction Angiography)画像などの差分画像を生成する。例えば、サブトラクション回路23は、造影剤非存在下で被検体を撮像して収集されたX線信号から生成された収集画像と、造影剤存在下で被検体を撮像して収集されたX線信号から生成された収集画像との差分画像を生成する。前者、後者の収集画像をそれぞれマスク画像、コントラスト画像と呼ぶ。より具体的には、サブトラクション回路23は、画像メモリ22に記憶された、略同一方向から収集されたマスク画像及びコントラスト画像の投影データを用いてDSA画像を生成する。ここで、サブトラクション回路23は、第1の撮像系により第1の方向から照射されるX線に基づく第1の差分画像と、第2の撮像系により第2の方向から照射されるX線に基づく第2の差分画像とを生成する。
【0023】
フィルタリング回路24は、高周波強調フィルタリングなどを行う。LUT27は、諧調変換を行う。アフィン変換回路28は、画像の拡大や縮小、移動などを行う。
【0024】
3次元再構成回路29は、X線撮像機構10によって収集された投影データから再構成データ(以下、3次元画像データ又はボリュームデータと記す)を再構成する。例えば、3次元再構成回路29は、サブトラクション回路23によってマスク画像とコントラスト画像とが差分され、画像メモリ22によって記憶されたサブトラクション後の差分画像を投影データとし、この投影データからボリュームデータを再構成する。或いは、3次元再構成回路29は、A/D変換器21a又はA/D変換器21bによってデジタルデータに変換され、画像メモリ22に記憶されたマスク画像やコントラスト画像を投影データとし、これらの投影データからボリュームデータを再構成する。そして、サブトラクション回路23は再構成された2つのボリュームデータを差分演算する。サブトラクション回路23は、サブトラクションしたボリュームデータを画像メモリ22に格納する。
【0025】
ここで、第1の実施形態に係る3次元再構成回路29は、第1の撮像系によって収集されたマスク画像とコントラスト画像とに基づいてサブトラクション回路23が生成した差分画像と、第2の撮像系によって収集されたマスク画像とコントラスト画像とに基づいてサブトラクション回路23が生成した差分画像とを用いて、ボリュームデータを再構成する。すなわち、3次元再構成回路29は、2方向から収集された2次元のX線画像を用いてボリュームデータを再構成する。
【0026】
3次元画像処理回路25は、画像メモリ22によって記憶されたボリュームデータから3次元画像を生成する。例えば、3次元画像処理回路25は、ボリュームデータからボリュームレンダリング画像や、MPR(Multi Planar Reconstruction)画像を生成する。そして、3次元画像処理回路25は、生成した3次元画像を画像メモリ22に格納する。
【0027】
処理回路30は、X線診断装置1全体を制御する。具体的には、処理回路30は、X線撮像機構10によるX線画像の撮像、画像再構成、表示画像の生成、モニタ40における表示画像の表示などに係る各種処理を制御する。また、処理回路30は、関心領域の設定や注目する対象点の設定を操作者から受付ける。
【0028】
処理回路30は、
図1に示すように、取得機能30aと、同定機能30bとを実行する。ここで、例えば、
図1に示す処理回路30の構成要素である取得機能30a及び同定機能30bが実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で画像メモリ22に記録されている。処理回路30は、各プログラムを画像メモリ22から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路30は、
図1の処理回路30内に示された各機能を有することとなる。なお、取得機能30aのことを取得部とも言い、同定機能30bのことを同定部とも言う。
【0029】
なお、画像メモリ22は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置などである。また、サブトラクション回路23、フィルタリング回路24、3次元画像処理回路25、撮像制御回路26、LUT27、アフィン変換回路28、3次元再構成回路29、及び処理回路30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路やASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路である。
【0030】
以上、第1の実施形態に係るX線診断装置1の構成の一例を説明した。このように構成されるX線診断装置1は、例えば、血管内治療が実施される場合に、3次元ロードマップ画像を生成して、モニタ40に表示する。ここで、X線診断装置1では、ロードマップ画像を生成する際に、エピポーララインを拘束条件として第1の差分画像と第2の差分画像とから血管を簡易的に再構成する方法が適用される場合がある。X線診断装置1は、エピポーララインを拘束条件とする場合、第1の差分画像の血管と第2の差分画像の血管とを対応付ける。
【0031】
図2は、従来技術を説明するための図である。
図2では、第1の撮像系及び第2の撮像系から被検体Pを撮像した場合を説明する。また、
図2では、第1の撮像系のX線管球11aから照射されるX線に基づく第1の差分画像(画像A)と、第2の撮像系のX線管球11bから照射されるX線に基づく第2の差分画像(画像B)とを示す。ここで、画像Aにおいて対象点P1が設定された場合、画像B上に、画像A上の対象点に基づくエピポーララインLが表示される。エピポーララインLは、X線管球11aの焦点と対象点P1を結ぶ直線を、X線管球11bで仮想的にX線検出器12b上に投影したものである。X線診断装置1は、エピポーララインLを用いて、画像Aの血管上の対象点P1と対応する画像Bの血管上の点を同定する。
【0032】
しかしながら、
図2の画像Bに示すように、エピポーララインLと交差する血管は通常1つではなく、複数存在する場合がある。より具体的には、
図2の画像Bに示すように、エピポーララインLと血管は、P2及びP3で交差する。このため、従来の技術では、X線診断装置1は、画像BにおいてエピポーララインLと交差する血管を一意に同定できない場合があった。かかる場合、画像Aの血管上の対象点P1と対応する画像Bの血管上の点を同定するには、血管の3次元構造について知識を有する有識者によるマニュアル操作が必要になる。
【0033】
そこで、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、以下に説明する3次元血管画像の再構成方法を実行する。すなわち、X線診断装置1は、第1の方向及び第2の方向において時系列に生成された造影画像と非造影画像との差分処理により、第1の方向から照射されたX線に基づく第1の差分画像、及び、第2の方向から照射されたX線に基づく第2の差分画像を取得する。続いて、X線診断装置1は、第1の差分画像上の対象点に対応する第2の差分画像上の対応点を、エピポーララインと対象点及び対応点の血流情報とを用いて同定する。そして、X線診断装置1は、対象点及び対応点の情報を用いて、3次元の血管画像を再構成する。
【0034】
以下、本実施形態に係るX線診断装置1による3次元血管画像の再構成方法の一例について、
図3を用いて説明する。
図3は、第1の実施形態に係るX線診断装置1による処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図3に示すように、X線診断装置1は、撮像プログラムの選択を受け付ける(ステップS1)。ステップS1は、処理回路30により実現されるステップである。ステップS1では、処理回路30は、入力インターフェース50を介して操作者から専用の撮像プログラムの選択を受け付ける。例えば、操作者は、アンジオ検査、あるいはインターベンション治療を行っている際中に、3次元の血管情報を所望する場面になると、専用の撮像プログラムを選択する。
【0035】
この撮像プログラムには、撮像時における第1の撮像系と第2の撮像系との角度間隔が事前に設定されている。この角度間隔は、通常90度にセットされる。例えば、(RAO0,CRA0)の角度にC型アーム13aがセットされている場合は、(RAO90,CRA0)にΩ型アーム13bがセットされる。また、この撮像方向は、観察したい血管の走行方向によって変化させる必要がある。したがって、撮像方向毎に撮像プログラムを用意しても良い。あるいは、撮像方向を決定するGUIを持たせ、撮像プログラムの実行中にGUIで撮像方向を決定しても良い。一例を挙げると、ジョイスティックを用いて右に倒せばLAO方向に、左に倒せばRAO方向に、上に倒せばCRA方向に、下に倒せばCAU方向に視差角度を設定する方向が、角度間隔を変化させないまま、変化する。具体的には、C型アーム13aが(RAO0,CRA45)の角度にセットされており下方向にジョイスティックを移動すると、(RAO0,CAU45)の角度がΩ型アーム13bのセットするポジションとなる。しかし、このような角度ではアーム同士がぶつかってしまうので、例えばアームがぶつからない範囲でなるべくセットするポジションに近いところまで移動する機能でも良い。なお、ここでは説明の便宜上、撮像方向として上下方向あるいは左右方向のいずれか一方を変化させる場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、撮像方向は、上下方向と左右方向とを組み合わせて複合的に変化させてもよい。例えば、上方向と右方向とを組み合わせて変化させてもよいし、上方向と左方向とを組み合わせて変化させてもよい。また、下方向と右方向とを組み合わせて変化させてもよいし、下方向と左方向とを組み合わせて変化させてもよい。
【0036】
続いて、X線診断装置1は、DSA画像生成処理を実行する(ステップS2)。ここで、X線診断装置1は、第1の差分画像と第2の差分画像とを生成する。なお、ステップS2のDSA画像生成処理の詳細については、
図4を用いて後述する。
【0037】
そして、X線診断装置1は、対応関係同定処理を実行する(ステップS3)。ここで、X線診断装置1は、例えば、第1の差分画像において設定された対象点に対応する対応点を、第2の差分画像から同定する。なお、ステップS3の対応関係同定処理の詳細については、
図5を用いて後述する。
【0038】
続いて、X線診断装置1は、3次元再構成処理を実行する(ステップS4)。ステップS4は、3次元再構成回路29により実現されるステップである。ステップS4では、3次元再構成回路29は、ステップS3で同定された対象点及び対応点の情報を用いて、3次元の血管画像を再構成する。
【0039】
そして、X線診断装置1は、再構成画像を表示する(ステップS5)。ステップS5は、処理回路30により実現されるステップである。ステップS5では、処理回路30は、ステップS4で再構成された3次元の血管画像をモニタ40に表示させる。
【0040】
次に、
図4を用いて、DSA画像生成処理について説明する。
図4は、第1の実施形態に係るX線診断装置1によるDSA画像生成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図4に示すDSA画像生成処理は、
図3のステップS2に対応する。
【0041】
図4に示すステップS101は、処理回路30により実現されるステップである。ステップS101では、処理回路30は、X線撮像スイッチの押下を受け付けたか否かを判定する。ここで、処理回路30は、X線撮像スイッチの押下を受け付けたと判定しなかった場合(ステップS101、No)、ステップS101の判定処理を繰り返す。一方、処理回路30は、X線撮像スイッチの押下を受け付けたと判定した場合(ステップS101、Yes)、撮像制御回路26にステップS102を実行させる。なお、ステップS101の開始前に、造影剤が注射器に用意され、造影剤を注入する用意がされることが望ましい。
【0042】
ステップS102及びステップS103は、撮像制御回路26により実現されるステップである。ステップS102では、撮像制御回路26は、X線画像の収集を開始する。例えば、操作者がX線撮像スイッチを押すと、撮像制御回路26は、第1の撮像系及び第2の撮像系を制御して、X線画像の収集を開始する。なお、撮像制御回路26は、C型アーム13aや、Ω型アーム13bを回転させずに、所定のフレームレートで投影データを収集する撮像を制御する。
【0043】
ステップS103では、撮像制御回路26は、所定枚数の画像を収集したか否かを判定する。この所定枚数は1枚でも良いし、あるいは複数枚でも良い。この所定枚数は、マスク画像に要求されるノイズレベルによって変わる。この所定枚数は、撮像プログラムに予めセットしておくことができる。ここで、撮像制御回路26は、所定枚数の画像を収集したと判定しなかった場合(ステップS103、No)、ステップS103の判定処理を繰り返す。一方、撮像制御回路26は、所定枚数の画像を収集したと判定した場合(ステップS103、Yes)、サブトラクション回路23にステップS104を実行させる。
【0044】
ステップS104は、サブトラクション回路23により実現されるステップである。ステップS104では、サブトラクション回路23は、マスク画像を生成する。例えば、サブトラクション回路23は、ステップS102で複数枚収集した画像を平均して、ノイズの少ないマスク画像を生成する。なお、ステップS102において、所定枚数が1枚であった場合、ステップS102で収集した画像をマスク画像とし、ステップS104が省略されてもよい。
【0045】
ステップS105は、処理回路30により実現されるステップである。ステップS105では、処理回路30は、造影剤の注入を指示する。例えば、処理回路30は、ステップS103において所定枚数の画像が収集されると、術者等の操作者に対し造影開始を指示する。この指示はモニタ40上に造影を示すアイコンを表示しても良いし、音声で指示しても良い。あるいはモニタ40に造影開始タイミングのカウントダウンを行っても良い。これにより、術者は、タイミングが指示されると注射器で造影剤の注入を開始する。あるいはインジェクター60を用いて、マスク画像の収集完了後、自動的に造影剤の注入を開始しても良い。
【0046】
ステップS106は、撮像制御回路26により実現されるステップである。ステップS106では、撮像制御回路26は、コントラスト画像を収集する。例えば、撮像制御回路26は、造影剤の注入開始の指示を操作者から受け付けると、第1の撮像系及び第2の撮像系を制御して、X線撮像を一定のフレームレートで開始する。ここで、撮像制御回路26は、C型アーム13aや、Ω型アーム13bを回転させずに、所定のフレームレートで投影データを収集する撮像を制御する。所定のフレームレートは、例えば10pps(pair-per-sec)である。このフレームレートは、目的の血管の血流速度によって変更される。例えば、フレームレートは、非常に血流が速い部位では30pps、遅い部位では6ppsなどに設定される。
【0047】
ステップS107は、サブトラクション回路23により実現されるステップである。ステップS107では、サブトラクション回路23は、DSA画像を生成する。例えば、サブトラクション回路23は、第1の撮像系により撮像されたコントラスト画像とマスク画像とをサブトラクションして、第1の差分画像を生成し、第2の撮像系により撮像されたコントラスト画像とマスク画像とをサブトラクションして、第2の差分画像を生成する。
【0048】
ステップS108及びステップS109は、処理回路30により実現されるステップである。ステップS108では、処理回路30は、DSA画像をモニタ40に表示させる。処理回路30は、サブトラクション画像がステップS107で生成されると、ほぼリアルタイムにモニタ40にサブトラクション画像を表示させる。
【0049】
ステップS109では、処理回路30は、X線撮像スイッチのリリースを受け付けたか否かを判定する。ここで、処理回路30は、X線撮像スイッチのリリースを受け付けたと判定しなかった場合(ステップS109、No)、ステップS106に移行する。一方、処理回路30は、X線撮像スイッチのリリースを受け付けたと判定した場合(ステップS109、Yes)、ステップS110に移行する。例えば、術者は、モニタ40に表示されるDSA画像を観察しながら、目的の部位が造影されたことを確認した上で撮像スイッチをリリースする。
【0050】
ステップS110は、サブトラクション回路23により実現されるステップである。ステップS110では、サブトラクション回路23は、DSA画像を画像メモリ22に転送する。なお、サブトラクション回路23は、DSA画像を生成するごとに生成したDSA画像を画像メモリ22に転送するようにしてもよい。
【0051】
次に、
図5を用いて、対応関係同定処理について説明する。
図5は、第1の実施形態に係るX線診断装置1による対応関係同定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図5に示す対応関係同定処理は、
図3のステップS3に対応する。
【0052】
図5に示すステップS201は、取得機能30aに対応するステップである。処理回路30が画像メモリ22から取得機能30aに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、取得機能30aが実現されるステップである。ステップS201では、取得機能30aは、DSA画像を取得する。すなわち、取得機能30aは、第1の方向及び第2の方向において時系列に生成された造影画像と非造影画像との差分画像であって、第1の方向から照射されるX線に基づく第1の差分画像、及び、第2の方向から照射されるX線に基づく第2の差分画像を取得する。
【0053】
ステップS202からステップS209は、同定機能30bに対応するステップである。処理回路30が画像メモリ22から同定機能30bに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、同定機能30bが実現されるステップである。ステップS202からステップS209において、同定機能30bは、第1の差分画像上の対象点に対応する第2の差分画像上の対応点を、対象点に対応するエピポーララインと対象点の血流情報とを用いて同定する。ここで、同定機能30bは、血流情報として血液流入時間を導出する。以下では、ステップS202からステップS209の詳細について説明する。
【0054】
ステップS202では、同定機能30bは、ボトムトレースを行う。例えば、同定機能30bは、第1の差分画像及び第2の差分画像それぞれに対してボトムトレースを行う。ボトムトレースは、ピクセル毎に透過X線の強度の最低値をピクセルの代表値として抽出する処理である。これにより、第1の差分画像及び第2の差分画像において血管が抽出される。なお、ボトムトレースされた第1の差分画像及び第2の差分画像は、モニタ40に転送され、例えば第1の差分画像と第2の差分画像とを並べて表示される。
【0055】
ステップS203では、同定機能30bは、一方の画像で注目部位の設定を受け付ける。例えば、同定機能30bは、ボトムトレースされた第1の差分画像及び第2の差分画像
のいずれか一方において、入力インターフェース50を介して操作者から注目する血管の設定を受け付ける。例えば、操作者は、血管の分岐点を注目する血管として設定する。そして、ステップS204では、同定機能30bは、注目部位の中の血管を抽出し、抽出された血管に対して細線化処理を施すことで血管の中心線を連続する対象点の集まりとして同定する。なお、注目部位の設定を受け付けた画像のことを対象画像とも言う。また、以下では、ボトムトレースされた第1の差分画像において注目する血管の設定を受け付けるものとして説明する。
【0056】
ステップS205では、同定機能30bは、対象点の位置座標からエピポーララインを算出する。続いて、ステップS206では、同定機能30bは、他方の画像にエピポーララインを描出する。すなわち、同定機能30bは、第1の差分画像において指定された血管上の対象点に対応するエピポーララインを第2の差分画像で同定する。なお、エピポーララインが描出される画像を対応画像とも言う。そして、ステップS207では、同定機能30bは、エピポーラライン上の血管の中心座標を候補点として同定する。例えば、同定機能30bは、エピポーラライン上で所定の閾値以上の画素値を有する血管中心を候補点として同定する。
【0057】
ステップS208では、同定機能30bは、DSA画像から対象点及び候補点のTDC(Time-Density Curve)を導出して流入時間を算出する。ここで、流入時間は、DSA画像データの各位置における画素値の変化を造影剤濃度の変化と見なし、各画素値の時系列変化に基づいて定義されるパラメータである。なお、流入時間の算出方法には任意の方法を選択可能である。例えば、流入時間の算出方法として、画素値の時間変化が最大となる時間を流入時間として同定する方法であるTTP(Time-to-Peak)を選択可能である。また、例えば、流入時間の算出方法として、画素値の時間変化が所定値に到達する時間、若しくは、画素値の時間変化における最大値に対して所定割合に到達する時間を流入時間として同定する方法であるTTA(Time-to-Arrival)を選択可能である。
【0058】
図6は、第1の実施形態を説明するための図である。
図6の横軸は時間を示し、
図6の縦軸は画素値を示す。
図6の例では、同定機能30bが、TDCの最大値の1/2を閾値として流入時間を同定する場合を示す。また、
図6の例では、対象点の流入時間を同定する場合を示す。ここでは、
図2で示した対象点P1について流入時間を同定する場合を説明する。
【0059】
同定機能30bは、時系列に生成された第1の差分画像に含まれる対象点P1の画素について、時間濃度プロファイルを解析することで流入時間を同定する。
図6の例では、同定機能30bは、最大の画素値(Cmax)に対して1/2(0.5×Cmax)に到達する時間t
aを流入時間として算出する。
【0060】
また、同定機能30bは、同様にして、時系列に生成された第2の差分画像に含まれる各候補点の画素について、時間濃度プロファイルを解析することで各候補点のTDCを導出し、各候補点について流入時間を算出する。例えば、同定機能30bは、ステップS207でN個の候補点を同定した場合、N個の候補点のTDCを導出し、N個の候補点について流入時間を算出する。ここでは説明の便宜上、同定機能30bが、
図2で示したP2及びP3を候補点としてP2の流入時間t
bと、P3の流入時間t
cを同定するものとする。なお、第1の撮像系による撮像と、第2の撮像系による撮像は同時には起こらない。第1の撮像系による1フレーム目の撮像時間と、第2の撮像系による1フレーム目の撮像時間は同じ時間が設定され、同時に撮像されたものとして表示される。しかし、実際には第1の撮像系による撮像と第2の撮像系による撮像は交互に起こる。具体的には10ppsで撮像された場合、第1の撮像系による1フレーム目の撮像時間を0とすると、第2の撮像系による1フレーム目の撮像時間は50msecとなる。従ってP2の流入時間t
bと、P3の流入時間t
cの同定において、この撮像時間の遅れを考慮して流入時間を同定する必要がある。
【0061】
ステップS209では、同定機能30bは、対象点に対応する点を特定する。すなわち、同定機能30bは、エピポーララインと交錯する血管上において、対象点と血流情報が類似する対応点を同定する。例えば、同定機能30bは、t
aとt
b及びt
cとを比較し、もっともt
aに近い候補点を対応点として同定する。同定機能30bは、対応点を特定すると、対象点の座標と対応点の座標との対応関係を3次元再構成回路29に送る。
【0062】
ステップS210では、同定機能30bは、全ての対象点について対応点を特定したか否かを判定する。ここで、同定機能30bは、全ての対象点について対応点を特定したと判定しなかった場合(ステップS210、No)、ステップS205に移行する。すなわち、同定機能30bは、ステップS205からステップS209までの処理を血管に沿って繰り返し、対象画像における対象点の座標と、対応画像における対応点の座標との対応関係を特定する。
【0063】
3次元再構成回路29は、対象点及び対応点の情報を用いて、3次元の血管画像を再構成する。すなわち、3次元再構成回路29は、第1の方向及び第2の方向において時系列に生成された差分画像から、対象点及び対応点の情報を用いて、3次元の血管画像を再構成する。ここで3次元再構成回路29は、X線管球11aの焦点と対象点を結ぶ直線、X線管球11bの焦点と対応点を結ぶ直線の交点として血管中心位置を同定する。なおこの時、2つの直線が交わらないことがある。この場合、近接する2つの直線の距離が最短となるそれぞれの直線上の点を同定し、その2点の中点として求めることができる。
【0064】
また、3次元再構成回路29は、対象点及び対応点での血管の幅に対し、X線による幾何学的な拡大率を
決定して血管中心位置での血管のサイズを
補正して、同定した血管中心位置に、同定した血管サイズを持った3次元の血管断面を再構成する。3次元再構成回路29は、注目部位に沿って順に血管断面の再構成処理を行うことで、血管を3次元再構成する。3次元再構成回路29は、3次元再構成した血管を血管情報として3次元画像処理回路25に転送する。
【0065】
3次元画像処理回路25は、3次元再構成回路29により再構成された血管情報を用いて3次元血管モデルを作成し、モニタ40に表示させる。例えば、3次元画像処理回路25は、円筒が連続したような3次元血管モデルを作成する。より具体的には、3次元画像処理回路25は、再構成した楕円を血管断面として連続的に繋いだ3次元血管モデルを作成する。3次元画像処理回路25は、作成した3次元血管モデルをそのままモニタ40に表示させてもよいし、或いは、リアルタイムに生成されるX線画像と合成して3次元ロードマップとしてモニタ40に表示させてもよい。
【0066】
上述したように、第1の実施形態では、対象点に対するエピポーララインを拘束条件として候補点を同定した後、更に、血流流入時間を濃度プロファイルから同定し、候補点の中から流入時間が対象点と最も近いものを対応点として同定する。また、第1の実施形態では、この対応関係同定処理を注目部位に沿って順に行うことで、3次元の血管情報を再構成することが可能となる。
【0067】
これにより、第1の実施形態によれば、第1の方向及び第2の方向において時系列に生成されたDSA画像から簡易的な3次元の血管情報を再構成することができる。この結果、操作者は、例えば、3次元ロードマップなどを術中に簡便に利用することができるようになる。
【0068】
なお、上述した実施形態では、同定機能30bは、ステップS203において、操作者から注目する血管の設定を受け付けるものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、同定機能30bが任意の血管部位を選択して注目部位として設定してもよい。
【0069】
また、第1の実施形態では、対象点に対するエピポーララインを拘束条件として候補点を同定した後、更に、血流流入時間を濃度プロファイルから同定し、候補点の中から流入時間が対象点と最も近いものを対応点として同定している。しかし、血流流入時間を同定する代わりに、対象点のTDCと候補点のTDCとを比較し、候補点の中で対象点のTDCにより近いTDCを有するものを対応点として決定しても良い。
【0070】
(第1の実施形態の変形例)
上述した第1の実施形態では、同定機能30bは、第1の差分画像において指定された血管上の対象点に対応するエピポーララインを第2の差分画像で同定し、当該エピポーララインと交錯する血管上において、対象点と血流情報が類似する対応点を同定する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、同定機能30bは、第1の差分画像において指定された血管上の対象点の血流情報に類似する第2の差分画像上の候補点を特定し、当該候補点のうち対象点に対応するエピポーララインと交錯する候補点を対応点として同定するようにしてもよい。
【0071】
図8は、第1の実施形態の変形例に係るX線診断装置1による対応関係同定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図8に示す対応関係同定処理は、
図3のステップS3に対応する。
【0072】
図8に示すステップS301は、取得機能30aに対応するステップである。処理回路30が画像メモリ22から取得機能30aに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、取得機能30aが実現されるステップである。ステップS301の処理は、
図5に示すステップS201の処理と同様である。すなわち、ステップS301では、取得機能30aは、DSA画像を取得する。
【0073】
ステップS302からステップS308は、同定機能30bに対応するステップである。処理回路30が画像メモリ22から同定機能30bに対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、同定機能30bが実現されるステップである。ステップS302の処理は、
図5に示すステップS202の処理と同様である。すなわち、ステップS302では、同定機能30bは、ボトムトレースを行う。
【0074】
ステップS303では、同定機能30bは、全ピクセルについてTDCを導出して流入時間を算出する。例えば、同定機能30bは、第1の差分画像及び第2の差分画像上の血管内の全ピクセルについて血流情報を前処理として算出する。
【0075】
ステップS304からステップS306の処理は、
図5に示すステップS203からステップS205の処理と同様である。すなわち、ステップS304では、同定機能30bは、一方の画像で注目部位の設定を受け付ける。ステップS305では、注目部位の中の血管を抽出し、抽出された血管に対して細線化処理を施すことで血管の中心線を連続する対象点の集まりとして同定する。ステップ306では、同定機能30bは、対象点の位置座標からエピポーララインを算出する。ステップS307では、同定機能30bは、他方の画像にエピポーララインを描出する。
【0076】
ステップS308では、同定機能30bは、対象点に対応する対応点を特定する。ここで、同定機能30bは、第1の差分画像において指定された血管上の対象点の血流情報に類似する第2の差分画像上の候補点を特定する。そして、同定機能30bは、当該候補点のうち対象点に対応するエピポーララインと交錯する候補点を対応点として同定する。
【0077】
ステップS309の処理は、
図5に示すステップS210の処理と同様である。すなわち、ステップS308では、同定機能30bは、全ての対象点について対応点を特定したか否かを判定する。ここで、同定機能30bは、全ての対象点について対応点を特定したと判定しなかった場合(ステップS309、No)、ステップS306に移行する。すなわち、同定機能30bは、ステップS306からステップS308までの処理を血管に沿って繰り返し、対象画像における対象点の座標と、対応画像における対応点の座標との対応関係を特定する。
【0078】
このようにして、第1の実施形態の変形例では、一方の画像で設定された対象点の血流流入時間と近似する候補点を他方の画像から同定し、候補点の中から対象点に対するエピポーララインと交差する候補点を対応点として同定する。また、第1の実施形態の変形例では、この対応関係同定処理を注目部位に沿って順に行うことで、3次元の血管情報を再構成することが可能となる。
【0079】
これにより、第1の実施形態の変形例によれば、第1の方向及び第2の方向において時系列に生成されたDSA画像から簡易的な3次元の血管情報を再構成することができる。この結果、操作者は、例えば、3次元ロードマップなどを術中に簡便に利用することができるようになる。
【0080】
なお、上述した第1の実施形態の変形例では、ステップS303において、同定機能30bは、第1の差分画像及び第2の差分画像上の血管内の全ピクセルについて血流情報を前処理として算出するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、同定機能30bは、ステップS303において、第2の差分画像上の血管内の全ピクセルについて血流情報を前処理として算出し、ステップS304において注目部位の設定を受け付けてから、第1の差分画像における対象点の血流情報を算出してもよい。あるいはステップS304における注目部位の設定を一方の画像だけでなく、もう一方の画像にも行い、その注目部位内に対してだけ血流情報を前処理として算出しても良い。
【0081】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、操作者から注目部位の設定を受け付ける場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。そこで、第2の実施形態では、X線診断装置1において、注目部位を設定して、対応点を特定する場合について説明する。なお、第2の実施形態に係るX線診断装置1の全体構成は、同定機能30b及び3次元再構成回路29に付加的な機能が加わる点を除いて、
図1に示した構成例と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0082】
第2の実施形態に係る同定機能30bは、第1の差分画像上の対象点の集まりを中心線として同定する。例えば、同定機能30bは、第1の差分画像及び第2の差分画像にボトムトレースを行い、血管を抽出する。続いて、同定機能30bは、血管が抽出された第1の差分画像に対して細線化処理を行い、血管の中心線を特定する。同定機能30bは、中心線をトレースすることで、中心線を対象点の集まりとして同定する。同定機能30bは、同定した各対象点の座標を特定する。なお、同定機能30bは、更に、血管が抽出された第2の差分画像に対して細線化処理を行い、血管の中心線を特定し、中心線を対象点の集まりとして同定してもよい。かかる場合も同定機能30bは、同定した各対象点の座標を特定する。
【0083】
そして、同定機能30bは、各対象点それぞれについて対応する第2の差分画像上の各対応点を、各対象点に対応するエピポーララインと、各対象点と各対応点との血流情報とを用いて同定する。例えば、同定機能30bは、
図5に示すステップS205からステップS209の処理を各対象点に対して繰り返すことで、対応点を同定する。或いは、同定機能30bは、
図8に示すステップS306からステップS308の処理を各対象点に対して繰り返すことで、対応点を同定する。なお、
図8に示す処理手順で対応点を同定する場合、同定機能30bは、
図8に示すステップS303を事前に実行して、全ピクセルについてTDCを導出して流入時間を算出する。
【0084】
そして、3次元再構成回路29は、第1の実施形態及び第1の実施形態の変形例と同様に、各対象点及び各対応点の情報を用いて、3次元の血管画像を再構成する。また、3次元再構成回路29は、対象点及び対応点の情報を用いて、3次元の中心線を更に再構成する。
【0085】
上述したように、第2の実施形態では、第1の差分画像上の対象点の集まりを中心線として同定し、各対象点それぞれについて対応する第2の差分画像上の各対応点を、各対象点に対応するエピポーララインと、各対象点と各対応点との血流情報とを用いて同定する。これにより、第2の実施形態によれば、第1の方向及び第2の方向において時系列に生成されたDSA画像から簡易的な3次元の血管情報を再構成することができる。この結果、操作者は、例えば、3次元ロードマップなどを術中に簡便に利用することができるようになる。
【0086】
(その他の実施形態)
実施形態は、上述した実施形態に限られるものではない。
【0087】
なお、上述した実施形態では、同定機能30bは、血管の対応点の同定に時間とエピポーララインだけの情報を用いたが、更に血管の連続性を導入しても良い。言い換えると、同定機能30bは、血管の連続性を拘束条件として更に用いて対応点を同定してもよい。例えば、同定機能30bは、対象点の流入時間と各候補点の流入時間とを比較し、候補点の中から対象点の流入時間と最も近く、且つ血管連続性も満たすものを対応点として同定する。ここで、血管の連続性とは、血管は繋がっているので急激な変化がなく、血流濃度は急に変化しないことを言う。より具体的には、同定機能30bは、対象点の流入時間に加えて、対象点近傍の血管における流入時間を算出する。そして、同定機能30bは、各候補点の流入時間に加えて、各候補点近傍の血管における流入時間を算出する。そして、同定機能30bは、候補点の中から、候補点及び候補点近傍の流入時間が対象点及び対象点近傍の流入時間と近似する候補点を同定する。なお、血管の連続性を導入すると計算は複雑になるが、その分精度は向上する。
【0088】
また、上述した実施形態では、第1の差分画像において注目部位の設定を受け付けて、設定された注目部位の中心の位置座標を対象点として同定し、第2の差分画像にエピポーララインを描出する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、第2の差分画像において注目部位の設定を受け付けて、設定された注目部位の中心の位置座標を対象点として同定し、第1の差分画像にエピポーララインを描出してもよい。
【0089】
また、上述した実施形態では、X線管球11aと、X線検出器12aと、C型アーム13aとを第1の撮像系とし、X線管球11bと、X線検出器12bと、Ω型アーム13bとを第2の撮像系として説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線管球11aと、X線検出器12aと、C型アーム13aとを第2の撮像系とし、X線管球11bと、X線検出器12bと、Ω型アーム13bとを第1の撮像系としてもよい。
【0090】
上述した実施形態では、X線診断装置1が第1の撮像系と第2の撮像系とを備えたバイプレーン型のX線診断装置であるものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線診断装置は、1つの撮像系を有し、この撮像系を移動させて、第1の方向及び第2の方向において時系列に生成された差分画像を取得するようにしてもよい。
【0091】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0092】
なお、
図1に図示した内容は、一例に過ぎない。例えば、
図1には、サブトラクション回路23、フィルタリング回路24、3次元画像処理回路25、撮像制御回路26、LUT27、アフィン変換回路28、3次元再構成回路29、及び処理回路30の複数の回路(プロセッサ)を例示したが、これらの回路は必ずしも独立して構成されなくともよい。例えば、これらの回路のうち任意の回路を適宜組み合わせて構成されてもよい。
【0093】
上記の実施形態の説明において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0094】
また、上記の実施形態で説明した3次元血管画像の再構成方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0095】
(画像処理装置)
なお、上記では、第1の実施形態、第1の実施形態の変形例、及び第2の実施形態で説明した3次元血管画像の再構成方法が、X線診断装置1で実行される場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、第1の実施形態、第1の実施形態の変形例、及び第2の実施形態で説明した3次元血管画像の再構成方法は、X線診断装置1から差分画像を取得した画像処理装置において実行されても良い。
【0096】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、3次元画像データを簡易に再構成することができる。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。