(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、一般的な座席ユニットについて説明する。
図1は、航空機の客室に配設されるビジネスクラスやファーストクラス向けの座席ユニットを前方から見た斜視図である。座席ユニット1は、座席10をシェル20で囲む構造を有しており、この図には、さらに、乗客が使用する装備(読書灯360など)も描かれている。
【0012】
座席10は、下部シート110、上部シート120、ヘッドレスト130、及び、レッグレスト140を備える。下部シート110は着座部とも呼ばれ、上部シート120は背もたれ部とも呼ばれる。座席にはシートベルト150が取り付けられている。
【0013】
シェル20は、座席10の右側の右側シェル210、座席10の背面の背面側シェル220、及び、座席10の左側の左側シェル230を備える。
【0014】
座席ユニット1は、さらに様々な装備を有している。座席10の右側には、右側肘掛け部310が装備されている。座席10の左側には、左側肘掛け部320が装備されている。左側肘掛け部320には、開閉式の収納ボックス330が設けられている。オットマン340は、左側肘掛け部320の前方に配置されている。
【0015】
また、ヘッドレスト130と左側シェル230との間には、電装品のジャック350及び読書灯360が配設されている。
【0016】
航空機の機体には、
図2において断面形状を示すような座席トラックが、航空機の長手方向に沿って機体の床面に差し込まれている。
【0017】
図2に示すように座席トラック280は、航空機の機体の床下の構造材となる床下構造部286、床板を支える平坦部287、及び、座席トラック側の嵌め合い部288を備える。
【0018】
そして、座席ユニットは、
図3または
図4に示されるようなトラックフィッティング部材によって、座席トラックに固定されている。この際、従来は、座席ユニットの前後左右4箇所の脚部の下に、4つのトラックフィッティング部材が配設されており、2列の座席トラックと固定されている。
【0019】
図3はトラックフィッティング部材周辺の拡大図である。取付け具270は、フィッティングブラケットとも呼ばれ、座席トラック280に固定される。フィッティング側の嵌め合い部291が、座席トラック側の嵌め合い部288と固定される。
【0020】
トラックフィッティング部材290は、縦ばね292により下方向にプランジャ293押し付けて機体前後の荷重をとらせ、取付け具270と固定するためのボルト294及びナット295とが設けられる。また、左右一対のトラックフィッティングの間隔の距離の誤差を許容する遊びを設けた時のガタを防ぐための横ばね296が設けられている。
【0021】
図4は、他のトラックフィッティング部材周辺の拡大図である。
図3と異なる点は、横ばね296の代りに、トラックフィッティング部材290と取付け具との間に、右側緩衝材297及び左側緩衝材298が取り付けられている点である。右側緩衝材297及び左側緩衝材298には、ボルト294の雄ねじ部分が貫通する孔が設けられている。
【0022】
(第1の実施形態)
図5は、第1の実施形態に係る座席ユニットの下部構造体及び上部シェルを合体したシェル構造を斜め前方から見た斜視図である。
【0023】
(構成)
シェル20は、座席ユニットの下部構造体である座席土台240の上に、別部材として、右側シェル210、背面側シェル220、及び、左側シェル230からなる上部シェルを付加したものである。
【0024】
座席ユニットの下部構造体である座席土台240は、一体に形成された部材を用いて、中空のボックス型に形成されている。ここで、一体に形成された部材とは、具体的には、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンケトンなどの熱可塑性樹脂や、適切に可燃性を制御できる熱硬化性樹脂や、カーボングラファイトファイバー、ガラスファイバー、アラミドファイバーなどの複合材料から形成される部材であって、発泡体、ハニカム等の心材を含むことができる複合部材である。このような一体に形成された複合部材は、ボルトやナットなどの接続部品を用いることなく強固な立体形状を形成することができる。また、上記のような複合材料によって形成されていることから、既存の金属の構造部材に比べ、防錆処理をする箇所を大幅に低減することができる。
【0025】
また、中空のボックス構造は、筒型の構造形状を意味し、いわゆるモノコック構造となっている。このため、座席土台240は、座席、乗客、及び、乗客が使用する装備(読書灯360など)の荷重を支えることができる。
【0026】
座席土台240の中空領域242は、座席の前方から見た形が長方形であるが、台形等の四辺形であってもよい。また、座席土台240つまり座席下部構造体を構成する部材の厚さはおよそ10mm〜15mmである。
【0027】
このような座席土台240では、機体側の座席トラックの位置によって位置の制約を受ける、1つの座席の足元を支持する柱状の支持体つまり脚部といった概念がない。このため、座席の上部構造の形状に関わらず様々な大きさ、形状の座席に対して共通の構造をとることができる。また、電気機器の取付け、これに伴う配線の配置についても、脚部の位置との制約を受けることがないため、設計の自由度の拡大や共通化を図ることができる。
【0028】
また、中空領域242には、仕切り部材250を配設することもできる。座席土台240は、中空のモノコック構造であるため、仕切り部材250(仕切り板と呼ぶこともある)は、乗客等の荷重を支える必要が無く、中空領域242内で自在に移動できる。
【0029】
図6は、第1の実施形態に係るシェル構造を斜め前方から見た斜視図であり、座席10を取付ける前の状態を示す。座席土台240の上に、座席10の上部シート120を支えるための上部シート用支持体160を配設する。また、上部シート用支持体の右隣には、コンソールと後席のレッグスペースを兼ねた収納ボックス330を配設する。
【0030】
座席土台240はそれ自体がモノコック構造となっているため、相当程度の強度を有している。しかし、座席土台240の上面であって、座席10が搭載される部分に、局部的な補強部材170を更に配設することも可能である。乗客からの荷重の応力集中を防ぐための局部的な補強部材170を追加することによって、荷重の分散を行うことができる。
【0031】
図7は、第1の実施形態に用いる座席シートの例を斜め前方から見た斜視図である。座席10は、乗客が着座する下部シート110、背中をもたせ掛ける上部シート120、背もたれの上部の枕状の部分であり、頭を乗せて首などを休ませるヘッドレスト130、及び、脚を乗せてふくらはぎ等の疲れを軽減させるレッグレスト140を備える。
【0032】
座席リクライニング機構180は、上部シート120を後方に傾けさせる機構である。フット・リクライニング機構190は、レッグレスト140を下部シート110の面近くまで持ち上げるように回転させる機構である。
【0033】
図8は、第1の実施形態に係る座席ユニットを斜め前方から見た斜視図である。この座席ユニット1は、
図6を用いて説明したシェル20に、
図7を用いて説明した座席10を乗せた形態である。
【0034】
図9は、第1の実施形態に係る座席ユニットの下部構造体である座席土台を斜め後方から見た斜視図である。シェル20は、後述する座席トラックを説明する便宜上、背面側シェル220を省略し、右側シェル210及び左側シェル230を図示している。
【0035】
第1の座席トラック282及び第2の座席トラック284は一対の座席トラックを構成し、航空機の機体の長手方向に延びている。航空機では、座席ユニット1の底部(
図9では座席土台240の底部)が一対の座席トラックに固定されることによって、座席ユニット1が航空機の機体に取り付けられ、所定の動荷重試験に合格することが、乗客の安全を確保する上で必要である。
図9では、座席土台240は、航空機の機体の長手方向に対し、少し左側に向いて配設されている。このため、座席土台240は第1の座席トラック282及び第2の座席トラック284に正対しておらず、少し左側に向いている。
【0036】
座席土台240の底部には、3個の取付けブロックが挿入されている(取付けブロックは点線で表示)。座席土台240は、3個の取付けブロックを介して、航空機の機体へ取り付けるための3個の取付け具に固定されている。座席土台240はモノコック構造であるため、取付けブロックが座席土台240の底部に設けられ、取付け具と座席土台240との接続を補強するために用いている。取付けブロックの材質は金属製などが望ましいが、補強用のブロックであればその材料は限定されない。
【0037】
図9では、座席土台240を3箇所で航空機の機体に取付けるため、第1の取付けブロック262が座席土台240の底部の前方に挿入され、その後方に第2の取付けブロック264が挿入されている。第3の取付けブロック266は、右側に挿入されている。
【0038】
各取付けブロックの下には、座席トラックへの取付け具がそれぞれ配設されている(取付け具は実線で表示)。すなわち、第1の取付け具272は、第1の取付けブロック262の下に配設され、第1の座席トラック282に取付けられる。第2の取付け具274は、第2の取付けブロック264の下に配設され、第1の座席トラック282であって、第1の取付け具272から間隔を隔てた点に取付けられる。
【0039】
一方、第3の取付け具276は、第3の取付けブロック266の下に配設され、第2の座席トラック284であって、第1の取付け具272と第2の取付け具274との間に対応する部分に取り付けられる。望ましくは、第1の取付け具272と第2の取付け具274との間に対応する部分の略中央に取り付けられる。
【0040】
このように3つの取付け具によって、座席土台240を一対の座席トラックに固定することによって、座席土台240を座席トラックに正対させる向きに取り付ける必要が必ずしも無くなる。これによって、機体の誤差に対して座席の取付け自由度及び、座席の認証時に求められる床面変形への追随性を格段に向上することができる。
【0041】
図10は、第1の実施形態に係る座席土台240の底部周辺の拡大図である。座席土台240の底部は、中空領域242側の内面244と、反対側の外面246との間がハニカム構造248になっている。このハニカム構造248の中に、取付けブロック260が配設されている。取付けブロック260と取付け具270とはボルトとナット等によって固定されている。内面244及び外面246の材料は例えば樹脂と繊維による複合繊維である。ハニカム構造248の材料は例えば不燃性の紙とフェーノル樹脂による複合繊維である。
【0042】
取付けブロック260であって、下に取付け具270が配設される部分の厚さは、薄くなっている。座席土台240の底部であって、下に取付け具270が配設される部分の厚さも、同様に薄くなっている。座席土台240の底部及び取付けブロック260の一部をこのように薄く凹部247を設けることによって、座席土台240の底部の内面244を平坦に保つことができ、中空領域242内に、乗客の脚を入れたり、荷物を収納したりする際に便利である。
【0043】
取付け具270は、トラックフィッティング部材290によって座席トラック280と固定されている。
【0044】
(作用効果)
第1の実施形態によれば、一体に形成された中空のボックス型の下部構造体である座席土台を用いることによって、機体側の座席トラックの位置に影響されること無く、座席土台の取付け位置の自由度が増すという効果を有する。さらに、座席トラックの位置に関わらず、足元のスペースを広く確保でき、乗客は好きな所に脚を伸ばせるという効果を有する。加えて、機体メーカーでモノコック構造の座席土台を開発して提供すれば、座席メーカーは座席土台に関わる試験証明を行うことが容易になり、開発期間の短縮に繋がるという効果を有する。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、
図11を用いて第2の実施形態を説明する。
図11は、第1の実施形態で説明した、座席土台240と上部シェルを一体に成型したシェル20を示している。座席土台240と上部シェルを一体に成型した以外の点は第1の実施形態と同じである。
【0046】
(構成)
第2の実施形態においては、座席土台240及び上部シェルが共に一体成型され、一体でモノコック構造を実現している。一体成型される部材に用いる複合材料などについても、第1の実施形態と同じである。
【0047】
(作用効果)
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を有し、さらに、座席土台と上部シェルとが一体となっていることから、座席全体の強度を向上させ、生産時の組立性も向上させることができる。また、取付け作業を簡略化できるという効果を有する。
【0048】
(第3の実施形態)
図12は、第3の実施形態に係る座席ユニットを斜め後方から見た斜視図である。座席ユニット400は、航空機の客室に配設されるエコノミークラス向けである。
【0049】
(構成)
座席ユニット400は、座席410及び座席土台500から構成される。座席410は、上部シート420、下部シート430及び、シートベルト440から構成される。座席土台500は、第1の実施形態と同様、一体成型された中空のボックス型の座席下部構造体である。
【0050】
座席ユニット400aは、4人掛けの座席410と、3つの座席土台500a、500b、500cで構成される。すなわち、中空領域510が3つに分かれている。
【0051】
一方、座席ユニット400bは、4人掛けの座席410と、1つの座席土台500で構成される。すなわち、中空領域510は1つである。
【0052】
従来は、1つの座席の足元を支持する支持体は最低2本の座席トラックに取り付けられる。つまり、4人掛けの場合、8本の座席トラックと固定する必要がある。しかしながら、座席ユニット400aの場合、4人掛けの座席にも関わらず、座席土台500aが600a及び600bの2本の座席トラックと固定し、座席土台500cが600c及び600dの2本の座席トラックと固定し、中央の座席土台500bは両隣の座席土台500a及び500cと接着していれば、座席トラックに固定されていなくても良い。
【0053】
ここで、座席土台500a及び500cが座席トラックに固定される要領は
図9で説明した通り、一対の座席トラックのうち、一方の座席トラックの前後2箇所で固定し、他方の座席トラックは1カ所の固定でよい。
【0054】
このように座席ユニット400aの場合、中央の座席土台500bを座席トラック600a〜600dと固定する必要がなく、既存の1つの座席の足元を支持する支持体が2本の座席トラックに取り付けられる点と大きく異なる。
【0055】
座席ユニット400bの場合、一対の座席トラックとして、一番外側の600aと600dを選ぶのが最も強い強度を得られるが、これに限られない。座席土台500dが座席トラックに固定される要領は
図9で説明した通り、一対の座席トラックのうち、一方の座席トラックの前後2箇所で固定し、他方の座席トラックは1カ所の固定でよい。
【0056】
また、座席ユニット400bの中空領域510は、1つの中空構造であり、3つの仕切り部材を用いて、4人分の中空領域に分割することもできる。上記座席ユニット400は一例として4人掛けの場合を説明したが、2人掛け、3人掛けの場合でも同様の座席土台500を適用することができる。
【0057】
(作用効果)
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を有し、さらに、乗客毎に足元のスペースを区切る必要がなく、足元のスペースが増えるという効果を有する。
【0058】
また、座席毎に、座席の足元を支持する支持体を設ける必要がないため、座席トラックの選択の自由度が増すという効果を有する。また、同時に座席自体の配置の自由度を高めることが可能となり、機内に配置可能な座席の数を増加することが可能となる。
【0059】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、航空機以外の分野の座席に適用されうる様々な変形例が含まれる。例えば、列車、長距離バス、および客船、フェリー、およびホーバー・クラフトを含む水上輸送機関のような他の形式の乗物にも適切に使用できる。また、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。