(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インクを吐出するためのエネルギーを生成する複数の記録素子と、第1の位置に位置する記録素子近傍のインクを吐出されない程度に加熱するための第1の加熱素子と、前記第1の位置と異なる第2の位置に位置する記録素子近傍のインクを吐出されない程度に加熱するための第2の加熱素子と、が同じ基板上に設けられた記録ヘッドと、
前記第1、第2の加熱素子に電圧を印加し、駆動することによってインクの加熱動作を制御する加熱制御手段と、
前記複数の記録素子を駆動することによって記録動作を制御する記録制御手段と、を有する記録装置であって、
前記第1の加熱素子及び前記第2の加熱素子の駆動と非駆動及び駆動と非駆動のパターンを示す駆動情報を記憶するメモリを更に有し、
前記加熱制御手段は、前記メモリに記憶された前記駆動情報を前記パターンにおける第1の位置から順に読み出し、読み出した情報に従って前記第1の加熱素子を駆動し、前記メモリに記憶された前記駆動情報を前記パターンにおける前記第1の位置とは異なる第2の位置から順に読み出し、読み出した情報に従って前記第2の加熱素子を駆動することで、加熱動作を制御することを特徴とする記録装置。
前記駆動情報について、前記パターンの前記第1の位置から読み出しを開始した場合と前記第2の位置から読み出しを開始した場合の駆動と非駆動それぞれの信号は、互いに連続で入力されるような信号であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
前記駆動情報を前記パターンにおける前記第1の位置から順に読み出し、読み出した情報に従って前記第1の加熱素子を駆動した場合に前記第1の加熱素子が非駆動から駆動に切り替わるタイミングと、前記駆動情報を前記パターンにおける前記第2の位置から順に読み出し、読み出した情報に従って前記第2の加熱素子を駆動した場合に前記第2の加熱素子が非駆動から駆動に切り替わるタイミングは互いに異なることを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
前記基板上には、前記第1の位置に位置する記録素子近傍の温度を検出するための第1の検出素子と、前記第2の位置に位置する記録素子近傍の温度を検出するための第2の検出素子と、が更に設けられており、
前記第1、第2の検出素子それぞれによって検出された温度に関する温度情報を取得する取得手段と、を更に有し、
前記加熱制御手段は、前記取得手段によって取得された温度情報に基づいて、加熱動作を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の記録装置。
前記テーブルは、前記取得手段によって取得された温度情報が示す値に応じて前記第1、第2の加熱素子それぞれの駆動を示す情報が定められた数が異なるように、前記対応関係が規定されていることを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
前記取得手段は、前記第1、第2の検出素子それぞれに対応する温度情報が示す値と、前記加熱制御手段によるインクの加熱の目標温度と、の差分に基づいて、前記温度情報を取得することを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
前記取得手段は、前記加熱制御手段によって加熱動作を行うタイミングで前記第1、第2の検出素子それぞれによって検出された温度と、当該タイミングよりも前のタイミングで前記第1、第2の検出素子によって検出された温度と、の平均温度を取得し、当該平均温度を示す情報を前記温度情報として取得することを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
前記記録ヘッドは、前記複数の記録素子が所定方向に配列された記録素子列を複数有し、前記複数の記録素子列が前記所定方向と交差する交差方向に並んで前記基板上に設けられており、
前記第1の加熱素子と前記第2の加熱素子は、前記基板上の前記交差方向において互いに異なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の記録装置。
インクを吐出するためのエネルギーを生成する複数の記録素子と、第1の位置に位置する記録素子近傍のインクを吐出されない程度に加熱するための第1の加熱素子と、前記第1の位置と異なる第2の位置に位置する記録素子近傍のインクを吐出されない程度に加熱するための第2の加熱素子と、が同じ基板上に設けられた記録ヘッドを用いて記録を行う記録方法であって、
前記第1の加熱素子及び前記第2の加熱素子の駆動と非駆動及び駆動と非駆動のパターンを示す駆動情報を記憶する記憶工程と、
前記第1、第2の加熱素子に電圧を印加し、駆動することによってインクの加熱動作を制御する加熱制御工程と、
前記複数の記録素子を駆動することによって記録動作を制御する記録制御工程と、を有し、
前記加熱制御工程において、前記記憶工程において記憶された前記駆動情報を前記パターンにおける第1の位置から順に読み出し、読み出した情報に従って前記第1の加熱素子を駆動し、前記記憶工程において記憶された前記駆動情報を前記パターンにおける前記第1の位置とは異なる第2の位置から順に読み出し、読み出した情報に従って前記第2の加熱素子を駆動することで、加熱動作を制御することを特徴とする記録方法。
前記加熱制御工程において、前記駆動情報を前記パターンにおける前記第1の位置から順に読み出し、読み出した情報に従って前記第1の加熱素子を駆動した場合に前記第1の加熱素子が非駆動から駆動に切り替わるタイミングと、前記駆動情報を前記パターンにおける前記第2の位置から順に読み出し、読み出した情報に従って前記第2の加熱素子を駆動した場合に前記第2の加熱素子が非駆動から駆動に切り替わるタイミングは互いに異なることを特徴とする請求項12に記載の記録方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
図1は本実施形態におけるインクジェット記録装置(以下、記録装置とも称する)内の記録部近傍を転写体の軸方向(Y方向)からみた際の構成を示す図である。また、
図2は記録部近傍を転写体103の内部から記録部101側をみた際の構成を示す図である。
【0014】
記録装置には、インクを吐出するための記録部101が設けられている。この記録部101は互いに異なる色のインクを吐出する7つの記録ヘッド102a〜102gがX方向(回転方向、走査方向)に並べられて構成されている。詳細には、記録ヘッド102aはシアン(C)、記録ヘッド102bはマゼンタ(M)、記録ヘッド102cはイエロー(Y)、記録ヘッド102dはブラック(K)、記録ヘッド102eはライトシアン(Lc)、記録ヘッド102fはライトマゼンタ(Lm)、記録ヘッド102gはグレー(Gy)の各色のインクを吐出する。各記録ヘッド102a〜102gには各色のインクを吐出するための熱エネルギーを生成する記録素子がY方向(配列方向)に配列された記録素子列が複数配置されているが、詳細については後述する。
【0015】
記録装置内の記録部101の吐出面側(下側)には、転写体(第1の記録媒体)103が設けられている。この転写体103を回転機構(不図示)によってX方向(回転方向)に回転させながら、各記録ヘッド102a〜102gから転写体103に対して各色のインクの吐出を行うことにより、転写体103上に画像を記録する。
【0016】
搬送ローラ106は、転写体103と接するように設けられ、不図示の搬送機構によって、転写体103とは逆方向(−X方向)に回転する。この転写体103と搬送ローラ106の接触部において、搬送機構(不図示)によって搬送される記録用紙(第2の記録媒体)105に転写体103の面に形成された画像を転写し、記録用紙105上に画像を記録する。
【0017】
転写体103の軸上には所定間隔ごとにスリットが設けられたリニアエンコーダ108が取り付けられている。更にこのリニアエンコーダ108を検出可能な位置にリニアエンコーダセンサ(不図示)が設けられている。リニアエンコーダ108は転写体103の回転とともに回転し、リニアエンコーダセンサがリニアエンコーダに設けられた各スリットを検出し、その検出タイミングに基づいて各記録ヘッドからのインクの吐出タイミングの調整を行う。なお、ここではリニアエンコーダ108が転写体103の軸上に取り付けられている形態について記載したが、リニアエンコーダ108は転写体103の軸上から離れた位置に取り付けられていても良い。また、転写体103の軸にロータリーエンコーダが設けられていても良い。
【0018】
(記録ヘッド)
図3は本実施形態で用いるシアンインクの記録ヘッド102aの構成を説明するための図である。なお、以降の説明では簡単のため、記録ヘッド102a〜102gのうちの記録ヘッド102aのみについて記載するが、記録ヘッド102a以外の記録ヘッド102b〜102gも記録ヘッド102aと同様の構成をとる。
【0019】
図3(a)は記録ヘッド102aに設けられたヒータボードを模式的に示す図である。また、
図3(b)は1つのヒータボード111に設けられた各部材を模式的に示す図である。
【0020】
図3(a)に示すように、本実施形態では記録ヘッド102aには3つのヒータボード(基板)111、112、113が設けられている。各ヒータボードには、後述する加熱素子、記録素子が設けられていて、これらはシリコン基板上に製膜することで形成されたものである。各ヒータボードは、互いのY方向端部が一部重畳するようにして、Y方向に沿って配置されている。
【0021】
そして、1つのヒータボードには、インクを吐出するための吐出口列が4列ずつ配置されている。これらの4列の吐出口列はX方向(交差方向)に並んで配置される。例えば、
図3(b)に示すように、ヒータボード111には吐出口列121a、121b、121c、121dの4列が配置される。ここで、各吐出口列はインクを吐出するための吐出口がY方向(所定方向)に並んで配置されて形成される。
【0022】
そして、各吐出口に対抗する位置(吐出口近傍の内部位置)には、電気熱変換素子である記録素子がそれぞれ配置されている。したがって、各吐出口列に対応する位置には、記録素子の列(記録素子列)が構成されていることになる。インクを吐出する際は、これらの記録素子に対して、接続された電気配線を経由して駆動パルス(電圧)を印加して記録素子を駆動し、それにより生成された熱エネルギーを用いて、各吐出口からの吐出動作を実行する。
【0023】
ヒータボード111には、吐出口列121a〜121dや記録素子の他、温度センサ(検出素子)123a〜123j、加熱素子(サブヒータ)124a〜124jが設けられている。温度センサ123a〜123jは近傍の領域の温度を検出するための部材であり、サブヒータ124a〜124jは近傍の領域を加熱し、保温を行うための部材である。
【0024】
ここで、ヒータボード111はヒータボード上の位置に応じて10個の加熱エリア125a〜125jに分けられる。加熱エリア125a〜125eは吐出口列121aおよび121bをY方向に分割してなる吐出口部分122a〜122eをそれぞれ含むエリアである。また、加熱エリア125f〜125jは吐出口列121cおよび121dをY方向に分割してなる吐出口部分122f〜122jをそれぞれ含むエリアである。
【0025】
そして、本実施形態における各ヒータボードには、加熱エリアごとに温度センサやサブヒータが別々に設けられている。例えば、ヒータボード111内の加熱エリア125aには、吐出口部分122a近傍のインクの温度を検出するための温度センサ123aと、吐出口部分122a近傍のインクを加熱するためのサブヒータ124aと、が設けられている。ここで、
図3(b)ではサブヒータ124aは2つに分かれているが、2つのサブヒータ124aは同一配線で接続されており、常に一体的に駆動/非駆動が行われるため、実質的に1つのサブヒータとして扱って良い。ここでは加熱エリア125aについて説明したが、他の加熱エリア125b〜125jについても同様である。また、ヒータボード112、113についても同様である。したがって、本実施形態で用いる記録ヘッドには、1つの記録ヘッド当たりそれぞれ30(=10×3)個の温度センサ、サブヒータが設けられていることになる。
【0026】
図3(b)に示すように、ヒータボード上において加熱エリアごとに温度センサ、サブヒータを設け、加熱エリアごとに温度検出と保温制御を実行することにより、ヒータボード(基板)上での温度分布を小さくする(温度が均一にする)ことが可能となる。例えば、加熱エリア125a〜125cの温度が低く、加熱エリア125d〜125jの温度が目標温度とほぼ同じである場合、サブヒータ124a〜124cのみを駆動することで、加熱エリア125a〜125cのみを加熱することができる。これにより、加熱エリア125a〜125cの温度低下を抑え、ヒータボード111内での温度差を小さくできる。
【0027】
(記録制御系)
図4は本実施形態の記録装置におる記録制御系の構成を示す図である。なお、
図1、
図2に示したように本実施形態における記録装置は7つの記録ヘッド102a〜102gを有しているが、ここでは簡単のため、1つの記録ヘッド102aに関わる記録制御系のみ説明する。
【0028】
図4に示すように、記録装置は、エンコーダセンサ301、DRAM302、ROM303、コントローラ(ASIC)304を備える。更に、記録装置は、上述のヒータボード111〜113およびAD変換機314を備える。
【0029】
そして、コントローラ304には、記録データ生成部305、CPU306、吐出タイミング生成部307、温度値格納メモリ308、サブヒータ駆動テーブル格納メモリ(テーブル格納メモリ)313、データ転送部310〜312を備えられている。
【0030】
CPU306は、ROM303に格納されたプログラムを読み込んで実行して、各モータなどのドライバを駆動するなどの記録装置全体の動作を制御する。また、ROM303には、CPU306が実行する各種制御プログラムの他に記録装置の各種動作に必要な固定データを格納する。例えば、記録装置の記録制御を実行するプログラムを記憶する。
【0031】
DRAM302はCPU306がプログラムを実行するために必要であり、CPU306の作業領域として用いられたり、種々の受信データの一時的な格納領域として用いられたり、各種設定データを記憶させたりする。なお、
図4では、1つのDRAM302のみを記載しているが、複数のDRAMを実装しても良いし、他にもDRAMとSRAMの両方を実装してアクセス速度の異なる複数のメモリからなるようにしてもよい。
【0032】
記録データ生成部305は、記録装置外部のホスト(PC)から画像データを受信する。そして、この記録データ生成部305にて画像データに対して色変換処理や量子化処理等を行い、記録ヘッド102aからのインクの吐出に用いる記録データを生成し、DRAM302に格納する。
【0033】
吐出タイミング生成部307は、エンコーダセンサ301によって検出された記録ヘッド102aと記録媒体103の相対位置を示す位置情報を受信する。そして、その位置情報に基づいて、各記録ヘッド102aから吐出を行うタイミングを示す吐出タイミング情報を生成する。
【0034】
3つのデータ転送部310、311、312は、吐出タイミング生成部307で生成された吐出タイミングに合わせて、DRAM302に格納された記録データを読み出す。また、後述するようにして生成されたサブヒータ駆動情報もまた加熱制御部309から読み出す。そして、データ転送部310、311、312それぞれは、これらの記録データ、サブヒータ駆動情報を、配線基板を介して記録ヘッド102a内のヒータボード111、112、113それぞれに転送する。
【0035】
ヒータボード111、112、113は、転送された記録データを用いて各記録素子を駆動してインクを吐出するとともに、ヒータボード内の温度センサ出力値をAD変換機314に出力する。なお、AD変換機314に同時に入力される信号数を低減するため、ヒータボード111、112、113の全温度センサの中から1つずつ順番にAD変換機314に温度センサ出力値を読み出す。このAD変換機312は、温度センサ出力値をデジタル値(温度値)に変換し、その温度値を加熱制御部309に出力する。
【0036】
このとき、本実施形態では、1つの温度センサからの温度検出には50μsの時間を要する。上述したように記録ヘッド102aには3つのヒータボード111、112、113が設けられており、1つのヒータボードには10個の温度センサが設けられているため、加熱制御部309がすべての温度センサからの温度値を更新するためには1500(=50×3×10)μsの時間が必要となる。この点を鑑み、本実施形態では、1つの温度センサについては1500μsごとに温度値を更新する。
【0037】
加熱制御部309は、AD変換機314から温度値を温度値格納メモリ308に格納する。そして、吐出タイミング情報の入力に合わせて温度値格納メモリ308に直近に格納された温度値を読み出し、予めサブヒータ駆動テーブル格納メモリ313に格納されたヒータボードごとの加熱制御テーブルに基づいて、ヒータボードごとに後述するサブヒータ駆動情報を生成する。生成されたサブヒータ駆動情報は、上述したように、データ転送部310、311、312に出力される。
【0038】
(サブヒータ加熱制御)
図5は本実施形態における加熱制御部309および記録ヘッド102aが実行するサブヒータ加熱制御のフローチャートである。このサブヒータ加熱制御は、記録素子が駆動されて記録ヘッド102a〜102gからのインクの吐出が行われている間、記録ヘッド102a〜102gそれぞれの加熱エリアごとに設けられたサブヒータを駆動することで記録中にインクの保温を行うための制御である。なお、ここでも記録ヘッド102a〜102hのうちの記録ヘッド102aに対する制御のみについて記載するが、他の記録ヘッド102b〜102hについても同様の制御を行う。なお、本実施形態では目標温度は50℃であるとする。
【0039】
記録が開始すると、サブヒータ加熱動作も開始され、ステップS1で前回サブヒータ加熱動作を行ってから所定期間が経過したか否かが判定される。記録開始直後であり、サブヒータ加熱動作もまた開始直後である場合にはこのステップS1は省略できる。なお、所定期間は適宜異なる時間を設定可能であるが、ここでは温度値の更新間隔である1500μsと同じとする。
【0040】
次に、ステップS2では、温度値格納メモリ308から直近に格納された温度値を読み出す。この読み出しは温度センサごとに行われるため、3個のヒータボードそれぞれに設けられた10個の温度センサ、合計で30個の温度センサにおける温度値が取得される。
【0041】
次に、ステップS3では、サブヒータ駆動テーブル格納メモリ313に格納されたサブヒータ駆動テーブルと、ステップS2で取得された温度値と、に基づいて、サブヒータを駆動するためのサブヒータ駆動パターンをサブヒータ駆動情報として決定する。本実施形態におけるサブヒータ駆動テーブルは、温度と、サブヒータを駆動するタイミングを示すサブヒータ駆動パターンと、の対応関係を直接的に規定したものである。ステップS3ではこのサブヒータ駆動テーブルを参照し、各温度センサにより検出された温度に対応するサブヒータ駆動パターンを決定する。このサブヒータ駆動パターンの決定方法については後述する。
【0042】
次に、ステップS4では、決定されたサブヒータ駆動パターンにしたがってサブヒータを駆動し、対応する加熱エリアに属する記録素子群近傍のインクの保温を行う。
【0043】
その後、ステップS5へと進み、サブヒータ加熱動作が終了したか否かが判定される。本実施形態では記録が終了した場合にサブヒータ加熱動作も終了する。サブヒータ加熱動作が終了していない(記録が終了していない)と判定された場合、ステップS1へと戻り、所定期間が経過するまでは先のステップS3で決定されたサブヒータ駆動パターンにしたがってサブヒータを駆動する。そして、所定期間が経過した後、再度ステップS2と進み、温度値を更新してから、同様の制御を続行する。サブヒータ加熱動作が終了したと判定された場合、
図5に示すフローを終了する。
【0044】
図6は本実施形態で用いるサブヒータ駆動テーブルを示す図である。ここで、サブヒータ駆動テーブルにおいて「1」はサブヒータの駆動を示す駆動信号の出力を、「0」はサブヒータの非駆動を示す駆動信号の出力を、それぞれ示している。
【0045】
図6の上下2列のうち、上1列は温度が50℃未満である場合に選択されるサブヒータ駆動パターンを、下1列は温度が50℃以上である場合に選択されるサブヒータ駆動パターンをそれぞれ示している。また、駆動信号は時間の経過に応じて左から右へと10μsごとにシフトしながら出力される。一番右端まで進むと左端へと戻り、また順次左から右へとシフトされながら駆動信号が出力される。
【0046】
例えば、サブヒータ駆動パターンのうちの左端から読み出しを開始する場合、温度が50℃未満である場合には「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「0」、「0」、「0」、「0」、「0」の順で駆動信号が出力される。したがって、サブヒータは初めの50μs間(最初の5つの「1」に対応)は駆動され、次の50μs間(最初の5つの「0」に対応)は駆動されない。その後はサブヒータ駆動パターンの左端に戻るため、次の50μsはサブヒータの駆動が行われ、更に次の50μsはサブヒータの駆動は行われない。このように、温度が50℃未満の場合にはある程度サブヒータの駆動が行われるため、近傍のインクの温度低下を抑制することができる。
【0047】
また、温度が50℃以上である場合には、どの位置においてもサブヒータの非駆動を示す駆動信号である「0」が定められている。温度が目標温度よりも高いため、ヒータボードの過昇温を抑制するためにサブヒータの駆動を行わないのである。
【0048】
ここで、ヒータボード111内の10個のサブヒータ124a〜124jすべてについて
図6に示すサブヒータ駆動パターンの左端を駆動信号読み出しの開始位置とすると、ヒータボード111への突入電流が過大となってしまい、ヒータボードの電気回路への負荷増大や誘導ノイズによるデータ転送のエラーが発生する虞がある。
【0049】
例えば、10個の温度センサ123a〜123jのすべてにおいて50℃未満の温度が検出された場合、サブヒータ124a〜124jのすべてにおいて「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「0」、「0」、「0」、「0」、「0」の順で駆動信号が出力されることになる。そのため、サブヒータ加熱制御が開始された直後には、それまで非駆動であったサブヒータ124a〜124jのすべてが同じタイミングで駆動に切り替わることになる。今まで電流が投入されていなかった回路に対して電流を投入する場合、定常状態で電流を投入する場合に比べて大電流(突入電流)が流れてしまう。サブヒータ駆動テーブルの読み出し開始位置を同じとすると、この大電流がサブヒータ124a〜124jのすべてで同じタイミングにて重畳してしまうため、上述のような電気回路の負荷増大やデータ転送のエラーが発生し得るのである。
【0050】
上記の点を鑑み、本実施形態ではヒータボード111内の10個のサブヒータ124a〜124jについて、
図6に示す同一のサブヒータ駆動パターンを適用するが、サブヒータごとにサブヒータ駆動パターンの読み出しの開始位置を異ならせる。例えば、サブヒータ124aについては
図6に示すサブヒータ駆動テーブルの左端から駆動信号の読み出しを開始するが、サブヒータ124bについては右端から駆動信号の読み出しを開始する。他のサブヒータ124c〜124jについても、
図6に示すように、サブヒータ駆動テーブルの読み出し開始位置を互いに異ならせる。
【0051】
仮にすべての温度センサ123a〜123jで50℃未満の温度が検出されたとすると、サブヒータ124aはサブヒータ駆動テーブルの左端から読み出しを行うため、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「0」、「0」、「0」、「0」、「0」の順で駆動信号が出力される。一方、サブヒータ124bはサブヒータ駆動テーブルの右端から読み出しを行うため、「0」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「0」、「0」、「0」、「0」の順で駆動信号が出力されることになる。また、例えばサブヒータ124fはサブヒータ駆動テーブルの右端から5番目より読み出しを行うため、「0」、「0」、「0」、「0」、「0」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」の順で駆動信号が出力される。
【0052】
このように、本実施形態のようにサブヒータ駆動テーブルの読み出し開始位置を異ならせた場合、出力される駆動信号の順番(サブヒータの駆動/非駆動の順番)は互いにオフセットされた順序となる。したがって、サブヒータが非駆動から駆動に切り替わるタイミング、すなわち突入電流が生じるタイミングをサブヒータごとに異ならせることができる。これにより、電気回路の負荷を低減したり、誘導ノイズの発生を抑制してデータ転送のエラーを少なくしたりすることが可能となる。
【0053】
以下、実際に各サブヒータが駆動されるタイミングについて説明する。
【0054】
図7は上述のようにしてサブヒータ駆動テーブルの読み出し開始位置をサブヒータごとに異ならせた場合に、実際に各サブヒータ124a〜124jが駆動されるタイミングを模式的に示す図である。なお、ここでは簡単のため、温度センサ123a〜123jが常に50℃未満の温度を検出する場合について説明する。
【0055】
上述のように、サブヒータ124aについては、左端から読み出しが開始されるため、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「0」、「0」、「0」、「0」、「0」の順で駆動信号が入力される。したがって、1つ目から5つ目までの駆動信号の入力タイミングにおいては、サブヒータ124aが駆動される。そして、6つ目から10個目の駆動信号入力タイミングではサブヒータ124aは非駆動される。そして、11個目の駆動信号の入力タイミングにおいて、サブヒータ124aは再度駆動されることになる。したがって、サブヒータ124aについては、突入電流が生じる、すなわちサブヒータ124aが非駆動から駆動に切り替わるのは、1つ目と11個目の駆動信号が入力されるタイミングとなる。
【0056】
次に、サブヒータ124bについては、右端から読み出しが開始されるため、「0」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「0」、「0」、「0」、「0」の順で駆動信号が入力される。したがって、1つ目の駆動信号の入力タイミングではサブヒータ124bは駆動されず、2つ目から6つ目の駆動信号の入力タイミングではサブヒータ124bが駆動される。そして、7つ目の駆動信号入力タイミングでサブヒータ124bは非駆動に切り替わり、12個目の駆動信号入力タイミングでサブヒータ124bは駆動に切り替わる。このように、サブヒータ124bについては、2つ目と12個目の駆動信号入力タイミングで突入電流が生じる虞がある。
【0057】
また、サブヒータ124fについては、右端から5番目より読み出しが開始されるため、
「0」、「0」、「0」、「0」、「0」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」の順で駆動信号が入力される。したがって、1つ目から5つ目までの駆動信号入力タイミングではサブヒータ124fは駆動されず、6つ目の駆動信号入力タイミングで駆動に切り替わり、11個目の駆動信号入力タイミングで非駆動に切り替わる。したがって、サブヒータ124fについては、6つ目の駆動信号入力タイミングで突入電流が生じる虞がある。
【0058】
図7からわかるように、本実施形態によれば、突入電流が生じる、すなわちサブヒータが非駆動から駆動に切り替わるタイミングがサブヒータごとに異なるタイミングとなる。したがって、上述のように、電気回路の負荷軽減や誘導ノイズの抑制の効果を得ることができる。
【0059】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、温度センサの検出温度が目標温度よりも低い場合、常に同じ強度でサブヒータ加熱制御を行う形態について記載した。
【0060】
これに対し、本実施形態では、温度センサの検出温度と目標温度の差分に応じて、異なる強度でサブヒータ加熱制御を行う形態について記載する。
【0061】
なお、上述した第1の実施形態と同様の部分については説明を省略する。
【0062】
第1の実施形態では温度センサの検出温度が目標温度よりも低い場合にはサブヒータを駆動し、検出温度が目標温度よりも高い場合にはサブヒータを非駆動とした。しかしながら、検出温度が目標温度よりも低い状態の中でも、実際には検出温度と目標温度の差分によって好ましいサブヒータ駆動強度、すなわち加熱量は異なってくる。例えば、目標温度が50℃である場合に、検出温度が45℃であればそれほど強い加熱を行う必要はないが、検出温度が20℃である場合にはある程度強い加熱を行い、なるべく早く目標温度に到達できるようにすることが好ましい。
【0063】
この点を鑑み、本実施形態では、検出温度が目標温度よりも低い場合には、検出温度と目標温度の差分に基づいて異なるサブヒータ駆動強度でサブヒータ加熱動作を実行する。そのため、本実施形態における加熱制御テーブル格納メモリ313には、温度差とサブヒータ駆動強度の対応関係を規定した第1のサブヒータ駆動テーブルと、サブヒータ駆動強度とサブヒータ駆動パターンの対応関係を規定した第2のサブヒータ駆動テーブルと、の2種類のサブヒータ駆動テーブルが格納されている。この2種類のサブヒータ駆動テーブルを用いたサブヒータ加熱制御の詳細については後述する。
【0064】
図8は本実施形態における加熱制御部309および記録ヘッド102aが実行するサブヒータ加熱制御のフローチャートである。なお、ここでは記録ヘッド102a〜102hのうちの記録ヘッド102aに対する制御のみについて記載するが、他の記録ヘッド102b〜102hについても同様の制御を行う。
【0065】
ここで、
図8のステップS11、S12処理は、
図5を用いて説明したステップS1、S2の処理と同様であるため、説明を省略する。
【0066】
ステップS13では、予め定められた目標温度と、ステップS12で取得された温度センサ123a〜123jそれぞれにおける温度(検出温度)と、の差分(温度差)を算出する。この差分は、目標温度から検出温度を差し引くことで求められる。したがって、この差分が負の値である場合には検出温度が目標温度よりも高く、差分が正の値である場合には検出温度が目標温度よりも低くなっている。
【0067】
次に、ステップS14では、加熱制御テーブル格納メモリ313に格納された第1のサブヒータ駆動テーブルと、ステップS13で算出された各温度センサにおける温度差と、に基づいて、サブヒータ駆動強度を決定する。第1のサブヒータ駆動テーブルは、上述したように温度差とサブヒータ駆動強度の対応関係を規定したものである。この第1のサブヒータ駆動テーブルを参照し、ステップS13で算出された温度差に対応するサブヒータ駆動強度を決定するのである。
【0068】
図9は本実施形態で用いる第1のサブヒータ駆動テーブルを示す図である。ここで、本実施形態ではサブヒータ駆動信号を入力可能なタイミングのうち、すべてのタイミングにて駆動を示すサブヒータ駆動信号が入力された際の強度(加熱量)を100%と規定した。したがって、例えばサブヒータ駆動信号を入力可能なタイミングのうちの半分のタイミングでは駆動を示すサブヒータ駆動信号が入力され、残りの半分のタイミングでは非駆動を示すサブヒータ駆動信号が入力された場合には、強度(加熱量)は50%となる。
【0069】
図9からわかるように、本実施形態で用いる第1のサブヒータ駆動テーブルでは、温度差が大きくなるほどサブヒータ駆動強度が強くなるように、温度差とサブヒータ駆動強度の対応関係が規定されている。したがって、第1のサブヒータ駆動テーブルを用いることにより、温度差が大きい、すなわち目標温度に比べて検出温度が小さくなるほど、強い加熱を実行することができる。
【0070】
次に、ステップS15では、加熱制御テーブル格納メモリ313に格納された第2のサブヒータ駆動テーブルと、ステップS14で決定されたサブヒータ駆動強度と、に基づいて、サブヒータ駆動パターンを決定する。上述したように、第2のサブヒータ駆動テーブルはサブヒータ駆動強度とサブヒータ駆動パターンの対応関係を規定したものである。この第2のサブヒータ駆動テーブルを参照し、ステップS14で決定されたサブヒータ駆動強度に対応するサブヒータ駆動パターンを決定する。
【0071】
図10は本実施形態で用いる第2のサブヒータ駆動テーブルを示す図である。ここで、
図10において「1」は駆動を示すサブヒータ駆動信号の出力を、「0」は非駆動を示すサブヒータ駆動信号の出力をそれぞれ示している。なお、縦方向の10列はサブヒータの駆動強度を示している。また、縦方向の各列において、時間の経過に応じて出力されるサブヒータ駆動信号は左から右へとシフトされ、右端まで進むと左端へと戻り、再度左から右へとシフトしながら出力される。
【0072】
図10からわかるように、第2のサブヒータ駆動テーブルでは、サブヒータ駆動強度に応じて駆動を示すサブヒータ駆動信号(「1」)の数が異なるように、サブヒータ駆動パターンが定められている。詳細には、サブヒータ駆動強度が強いほど、駆動を示すサブヒータ駆動信号(「1」)の数、すなわちサブヒータの駆動回数が多くなっている。
【0073】
例えば、サブヒータ駆動強度が90%であるときには、第2のサブヒータ駆動テーブルには左端から「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「0」の各駆動信号が定められている。したがって、駆動を示すサブヒータ駆動信号の数は9個である。
【0074】
また、サブヒータ駆動強度が50%であるときには、第2のサブヒータ駆動テーブルには左端から「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「0」、「0」、「0」、「0」、「0」の各駆動信号が定められている。したがって、駆動を示すサブヒータ駆動信号の数は5個である。
【0075】
また、サブヒータ駆動強度が0%であるときには、第2のサブヒータ駆動テーブルには左端から「0」、「0」、「0」、「0」、「0」、「0」、「0」、「0」、「0」、「0」の各駆動信号が定められている。したがって、駆動を示すサブヒータ駆動信号の数は0個である。
【0076】
このように、第2のサブヒータ駆動テーブルを用いると、サブヒータ駆動強度が強いほど、サブヒータを駆動する回数を多くすることが可能となる。
【0077】
ここで、本実施形態においても第1の実施形態と同様に、ヒータボード111内の10個のサブヒータ124a〜124jについて、サブヒータ駆動テーブルの読み出しの開始位置を異ならせる。各サブヒータ124a〜124jにおける読み出しの開始位置の詳細は
図10に示した通りである。
【0078】
例えば、サブヒータ124aについては、サブヒータ駆動テーブルの左端から読み出しを行うため、例えばサブヒータ駆動強度が90%のときには「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「0」の順で駆動信号が出力される。また、サブヒータ駆動強度が50%のときには「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「0」、「0」、「0」、「0」、「0」の順で駆動信号が出力される。
【0079】
一方、サブヒータ124bについては、サブヒータ駆動テーブルの右端から読み出しを行うため、例えばサブヒータ駆動強度が90%のときには「0」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」の順で駆動信号が出力される。また、サブヒータ駆動強度が50%のときには、「0」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「0」、「0」、「0」、「0」の順で駆動信号が出力される。
【0080】
このように、本実施形態においても、同じサブヒータ駆動強度で比べると、出力される駆動信号の順番(サブヒータの駆動/非駆動の順番)は互いにオフセットされた順序となる。したがって、サブヒータが非駆動から駆動に切り替わるタイミング、すなわち突入電流が生じるタイミングをサブヒータごとに異ならせることができる。このように、本実施形態でも、電気回路の負荷を低減したり、誘導ノイズの発生を抑制してデータ転送のエラーを少なくしたりすることが可能となる。
【0081】
以下、実際に各サブヒータが駆動されるタイミングについて説明する。
【0082】
まず、温度センサ123a〜123jがいずれも37℃の温度を検出した場合について説明する。この場合、ステップS13にて温度差123a〜123jいずれにおいても温度差は13℃と算出される。次に、ステップS14で第1のサブヒータ駆動テーブルを参照し、温度センサ123a〜123jいずれにおいても温度差は10℃以上15℃未満に含まれるため、サブヒータ駆動強度は50%に決定される。したがって、ステップS15にて第2のサブヒータ駆動テーブルを参照し、50%のサブヒータ駆動強度に対応するサブヒータ駆動パターンの読み出しを行う。ここで、例えばサブヒータ124aについては第2のサブヒータ駆動テーブルの左端から読み出しが開始されるため、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「0」、「0」、「0」、「0」、「0」の順で駆動信号が出力される。また、サブヒータ124bについてはサブヒータ駆動テーブルの右端から読み出しが開始されるため、「0」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「0」、「0」、「0」、「0」の順で駆動信号が出力される。サブヒータ124c〜124jについても同様に、第2のサブヒータ駆動テーブルを参照してそれぞれの順序で駆動信号が出力される。したがって、実際に各サブヒータが駆動されるタイミングは、第1の実施形態で説明したときと同じとなり、
図7に示すようになる。ここから、温度センサ123a〜123jがいずれも37℃の温度を検出したときには、突入電流が生じるタイミング、すなわちサブヒータが非駆動から駆動に切り替わるタイミングをサブヒータごとに異ならせることができることがわかる。
【0083】
また、
図11は温度センサ123a〜123jがいずれも17℃の温度を検出した場合の各サブヒータが駆動されるタイミングを説明するための図である。この場合、ステップS13にて温度差123a〜123jいずれにおいても温度差は33℃と算出される。次に、ステップS14で第1のサブヒータ駆動テーブルを参照し、温度センサ123a〜123jいずれにおいても温度差は30℃以上に含まれるため、サブヒータ駆動強度は90%に決定される。したがって、ステップS15にて第2のサブヒータ駆動テーブルを参照し、90%のサブヒータ駆動強度に対応するサブヒータ駆動パターンの読み出しを行う。ここで、例えばサブヒータ124aについては第2のサブヒータ駆動テーブルの左端から読み出しが開始されるため、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「0」の順で駆動信号が出力される。また、サブヒータ124bについてはサブヒータ駆動テーブルの右端から読み出しが開始されるため、「0」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」、「1」の順で駆動信号が出力される。サブヒータ124c〜124jについても同様に、第2のサブヒータ駆動テーブルを参照してそれぞれの順序で駆動信号が出力される。したがって、実際に各サブヒータが駆動されるタイミングは
図11に示すようになる。ここから、温度センサ123a〜123jがいずれも17℃の温度を検出したときにおいても、突入電流が生じるタイミング、すなわちサブヒータが非駆動から駆動に切り替わるタイミングをサブヒータごとに異ならせることができることがわかる。
【0084】
以上記載したように、本実施形態によれば、検出温度と目標温度の温度差が高いほど駆動強度を強めて加熱を迅速化するとともに、電気回路の負荷軽減や誘導ノイズの抑制の効果を得ることができる。
【0085】
なお、本実施形態では温度差とサブヒータ駆動強度の対応関係を規定する第1のサブヒータ駆動テーブルと、サブヒータ駆動強度とサブヒータ駆動パターンの対応関係を規定する第2のサブヒータ駆動テーブルと、の2種類のサブヒータ駆動テーブルを用いる形態について記載した。言い換えると、温度差とサブヒータ駆動パターンの対応関係は第1のサブヒータ駆動テーブルと第2のサブヒータ駆動テーブルによって間接的に規定されているものの、直接的には規定されていない。しかしながら、他の形態による実施も可能であり、例えば、
図12に示すような、温度差とサブヒータ駆動パターンの対応関係を直接的に規定する1種類のサブヒータ駆動パターンのみを用いても本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0086】
(第3の実施形態)
上述した第1、第2の実施形態では、サブヒータ駆動テーブル(第2のサブヒータ駆動テーブル)の読み出し開始位置を1つのヒータボード内のすべてのサブヒータで異ならせる形態について記載した。
【0087】
これに対し、本実施形態では一部のサブヒータではサブヒータ駆動テーブルの読み出し開始位置を同じとする形態について記載する。
【0088】
なお、上述した第1、第2の実施形態と同様の部分については説明を省略する。
【0089】
本実施形態では、
図5に示すフローチャートにしたがってサブヒータ加熱制御を実行する。ここで、ステップS3で用いるサブヒータ駆動テーブルを第1の実施形態と異ならせる。
【0090】
図13は本実施形態で用いるサブヒータ駆動テーブルを示す図である。ここで、サブヒータ駆動テーブルにおいて「1」はサブヒータの駆動を示す駆動信号の出力を、「0」はサブヒータの非駆動を示す駆動信号の出力を、それぞれ示している。
【0091】
図13の上下2列のうち、上1列は温度が50℃未満である場合に出力されるサブヒータ駆動パターンを、下1列は温度が50℃以上である場合に出力されるサブヒータ駆動パターンをそれぞれ示している。また、駆動情報は時間の経過に応じて左から右へと10μsごとにシフトし、一番右端まで進むと左端へと戻り、また順次左から右へとシフトされながら出力される。
【0092】
ここで、
図13からわかるように、本実施形態ではサブヒータ124aとサブヒータ124fの組において、サブヒータ駆動パターンの読み出し開始位置を同じとし、どちらもサブヒータ駆動テーブルの左端から読み出しを開始する。また、サブヒータ124bとサブヒータ124gの組についても、サブヒータ駆動パターンの読み出し開始位置を同じとし、どちらもサブヒータ駆動テーブルの右端から読み出しを開始する。同じように、サブヒータ124cとサブヒータ124hの組、サブヒータ124dとサブヒータ124iの組、サブヒータ124eとサブヒータ124jの組についても、それぞれサブヒータ駆動パターンの読み出し開始位置を同じとする。
【0093】
詳細には、温度が50℃未満の場合には、サブヒータ124a、124fは、それぞれ「1」、「1」、「1」、「1」、「0」の順で駆動信号が出力される。また、サブヒータ124124b、124gは、それぞれ「0」、「1」、「1」、「1」、「1」の順で駆動信号が出力される。
【0094】
以下、実際に各サブヒータが駆動されるタイミングについて説明する。
【0095】
また、
図14は温度センサ123a〜123jがいずれも50℃未満の温度を検出した場合の各サブヒータが駆動されるタイミングを説明するための図である。
【0096】
図14からもわかるように、本実施形態では、同一の組に属するサブヒータ(例えばサブヒータ124aとサブヒータ124f)は同じタイミングでサブヒータの駆動/非駆動が行われる。そのため、同一の組に属するサブヒータだけをみると、突入電流が生じるタイミング、すなわちサブヒータが非駆動から駆動に切り替わるタイミングは重畳することになる。
【0097】
しかしながら、異なる組に属するサブヒータについては、サブヒータ駆動パターンの読み出し開始位置を異ならせるため、サブヒータが非駆動から駆動に切り替わるタイミングを異ならせることができる。そのため、すべてのサブヒータにおいて非駆動から駆動に切り替わるタイミングが重畳する場合に比べると、電気回路の負荷軽減や誘導ノイズ抑制の効果を得ることが可能である。
【0098】
(その他の実施形態)
なお、各実施形態では1500μsごとに各温度センサから検出される温度情報を更新する形態について記載したが、この期間は適宜異なる期間としても良い。また、各実施形態にはあるタイミングに検出された温度のみを用いて加熱制御に用いる形態について記載したが、そのタイミング以前に検出された温度も含めて加熱制御に用いても良い。例えば、あるタイミングにてある温度センサから温度が検出されたとき、その温度と、そのタイミングの1つ前(例えば1500μs前)にて検出された温度と、の移動平均を算出し、その平均温度を加熱制御に用いるような形態であっても良い。このような平均温度を用いると、各タイミングにおける正確な温度からずれが生じている虞があるが、ノイズの影響等によって検出温度の測定にずれが生じていた場合において、ノイズの影響によるずれをある程度低減することが可能となる。
【0099】
また、各実施形態では、各サブヒータにおいて同一のサブヒータ駆動テーブルを用い、そのサブヒータ駆動テーブルの読み出し開始位置を異ならせることで突入電流の重畳を抑制する形態について記載したが、他の形態による実施も可能である。例えば、サブヒータごとに異なるサブヒータ駆動テーブルを用いるような形態であっても良い、この場合であっても、サブヒータが非駆動から駆動に切り替わるタイミングがサブヒータごとに異なるように各サブヒータ駆動テーブルが規定されていれば、各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0100】
また、各実施形態では各サブヒータにおけるサブヒータ駆動パターンの読み出し開始位置を常に異ならせる形態について記載したが、他の形態による実施も可能である。例えば、突入電流が大きくなる、すなわちサブヒータが非駆動から駆動に切り替わるタイミングが重畳するか否かを判定し、重畳すると判定された場合にのみ各実施形態に記載したような読み出し開始位置に切り替えるような形態であっても良い。
【0101】
また、各実施形態にはサブヒータの駆動を示す信号と非駆動を示す信号のそれぞれが互いに連続する形態について記載した。例えば、
図6の上一列では、左端から5つの駆動を示す駆動信号が連続し、その後、右端まで5つの非駆動を示す駆動信号が連続している。必ずしも各実施形態に記載したように駆動を示す駆動信号と非駆動を示す駆動信号のすべてが連続する必要はないが、ある程度は連続する方が好ましい。例えば、駆動を示す駆動信号と非駆動を示す駆動信号が1つずつ交互に並んだ場合を考えると、サブヒータごとに読み出しの開始位置を異ならせたとしても、非駆動から駆動に切り替わるタイミングがある程度(すべてのサブヒータのうちの半数程度)重畳してしまう。これを避けるため、サブヒータ駆動テーブルには駆動を示す駆動信号と非駆動を示す駆動信号のそれぞれが互いに連続している方が好ましい。
【0102】
また、各実施形態では記録ヘッドから転写体(第1の記録媒体)にインクを付与した後、転写体上の画像を記録用紙(第2の記録媒体)に転写することで、記録用紙上に記録を行う形態について記載したが、他の形態による実施も可能である。例えば、記録ヘッドから記録用紙上に直接インクを付与するような形態であっても良い。
【0103】
また、各実施形態では記録媒体の幅よりも長尺な記録ヘッドを用いる形態について記載したが、他の形態による実施も可能である。例えば、記録ヘッドを吐出口の配列方向と交差する方向へ走査させながらインクを吐出する記録動作と、走査間に記録媒体を配列方向に搬送する搬送動作と、を繰り返し行い、複数回の走査(移動)によって記録媒体への記録を完了する形態であっても良い。