(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記軸封部材は、前記容器の外側に取り付けられ、前記容器には、貫通穴が設けられ、前記回転軸が、前記貫通穴の内周面に非接触で前記貫通穴を通り、前記軸穴と前記貫通穴とが連通している請求項4に記載の粉体装置の軸封構造。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明の範囲はこれに限られるものではない。
【0028】
本発明における粉体装置とは、粉体輸送装置(例えば、第1実施形態)、粉体撹拌装置(例えば、第2実施形態)等の粉体を処理するもの、あるいは粉体を生成するものに限られず、解砕装置(例えば、第3実施形態)等の処理工程で粉体が発生するものなども含まれる。すなわち、本発明における粉体装置は、装置内部において回転軸を用いて粉体を扱う、あるいは回転軸を用いた材料の処理において粉体が発生する装置を言う。
【0029】
以下の実施形態において、「粉体」とは粉状の固体をいい、粉、粉末、粒子、微粉、微粉末、微粒子などと称されるいずれも含む。また、粉体の材質、形状、寸法等は特に限定されない。
【0030】
以下の実施形態における装置は、いずれも回転軸を備える。また、以下で用いる「軸線」とは、特に断りがなければ、各実施形態において後述する回転軸141、241、341の回転中心となる線を意味する。また、回転軸141、241、341の「軸径」及び円形を有する各穴の「穴径」は、特に断りがなければ直径を指す。
【0031】
各実施形態を示す
図1〜3および
図5〜11においてz方向は回転軸141、241、341の軸線方向、r方向は軸線を中心とした円の半径方向、θ方向は回転軸141、241、341の回転方向を示す。また、z、r、θ方向は、同じ実施形態においては各図面で同じ方向を示す。
【0032】
また、以下の説明において、図中のz軸の矢印の方向を+z方向、図中のz軸の矢印とは反対の方向を−z方向、向きを特定しない場合は符号を付けずz方向とする。r方向については、軸線から離れる方向を+r方向、軸線に近づく方向を−r方向、向きを特定しない場合は符号を付けずにr方向とする。θ方向については、z軸の矢印方向に見たとき、右回りの方向(各図における矢印の方向)を+θ方向、左回りの方向(各図における矢印の反対方向)を−θ方向、向きを特定しない場合は符号を付けずにθ方向とする。
【0033】
<1.粉体輸送装置(第1実施形態)>
図1は、本発明の第1実施形態としての粉体輸送装置1の断面を示す図である。
図1において、上下及び左右は紙面の上下及び左右であり、ここでは紙面下方向が重力のかかる方向である。本実施形態にかかる粉体輸送装置1は、粉体Pを輸送する傾斜型のスクリューコンベアである。粉体輸送装置1は、粉体容器11と、粉体導入部12と、粉体排出部13と、スクリュー14と、モーターMと、エアポンプAと、ホース151、152と、軸封部16、17と、ハウジング181、182とを備える。
【0034】
粉体容器11は、粉体輸送装置1内で輸送される粉体Pを収納する。本実施形態において、粉体容器11は、後述する回転軸141の長手方向(z方向)に延びる円筒状の外壁を持つ容器である。なお、ここで説明する粉体容器11の形状はその一例であり、使用条件等によってその形状は適宜変更可能である。粉体容器11の外壁は、円筒の右下(−z側)端部の底を構成する下底部111と、円筒を形成する側壁112と、円筒の左上(+z側)端部の底を構成する上底部113とを有する。粉体容器11は、側壁112の右下(−z)側に粉体導入部12に接続するための導入穴114と、側壁112の左上(+z)側に粉体排出部13に接続するための排出穴115とを備える。また、粉体容器11は、下底部111及び上底部113にそれぞれ、貫通穴111a、113aが設けられている。本実施形態においては、貫通穴111a、113aは円形で、貫通穴111a、113aの中心は回転軸141の軸線上にあるが、楕円、あるいは多角形等、他の形状でもよい。また、下底部111には、後述する軸封部材161の貫通穴161h(
図3)に対応する位置に貫通穴111b(
図2)が設けられており、上底部113にも同様の貫通穴が設けられている。
【0035】
粉体導入部12は、粉体Pを粉体容器11に導入する。導入方法としては、粉体導入部12の上方にホッパー等を接続して重力を利用する方法、ポンプを用いて前工程の装置等から粉体容器11へ向かう方向(+z方向)に空気を流して輸送する空気輸送装置を用いる方法等が挙げられるが、それに限られない。
【0036】
粉体排出部13は、後述するスクリュー14により、粉体容器11の左上(+z)側まで輸送された粉体Pを、粉体容器11から外部に排出する。排出方法としては、粉体排出部13から粉体Pを落下させる方法、あるいは空気輸送装置等が挙げられるが、それに限られない。
【0037】
スクリュー14は、回転軸141と螺旋状羽根142とを有する。回転軸141の軸径は貫通穴111a、113aの穴径よりも小さい。回転軸141は粉体容器11の右下側の外部から貫通穴111aを、貫通穴111aの内周面と非接触で通って、粉体容器11内に入り、貫通穴113aを貫通穴113aの内周面と非接触で通り、粉体容器11の左上側の外部に出る。すなわち、回転軸141は粉体容器11の外壁を非接触で貫通する。回転軸141は、さらに、後述する右下側のハウジング181の貫通穴181aを通って、回転軸141の右下(−z)側の一端141aはモーターMに接続される。回転軸141の左上(+z)側の一端141bは、後述する左上側のハウジング182に設けられた軸受け182aに挿入される。
【0038】
螺旋状羽根142は、本実施形態では、逆ねじ(左ねじ)の方向の螺旋形状の羽根である。粉体導入部12から粉体容器11内に導入された粉体Pは螺旋状羽根142に乗る。この構成により、スクリュー14が、図示したように右下側から見て右回転、すなわち、+θ方向に回転すると、螺旋状羽根142に乗せられた粉体Pが右下(−z)側から左上(+z)側に輸送される。なお、ここで述べた螺旋状羽根142の形状は本実施形態におけるその一例であり、スクリュー14の回転方向、粉体Pの性質、使用目的、設計条件等によって適宜変更可能である。
【0039】
また、本実施形態では、スクリュー14の回転軸141の外周面で、グランドパッキン163(
図2を参照しながら後述する)と対向する部分には、全周で回転軸141を覆う回転軸スリーブ143(
図2)が設けられている。これは、回転軸141と、グランドパッキン163等の摺動部品との間の摩擦による回転軸141の傷や摩耗を抑制するためである。ただし、これに限られず、回転軸141の表面硬度が高い場合、スクリュー14の交換時期までに生じる回転軸141の傷、摩耗が許容範囲である場合等において、回転軸スリーブ143を取り付けなくてもよい場合がある。
【0040】
モーターMは、スクリュー14を回転させるための駆動手段である。本実施形態で、モーターMは粉体容器11の右下(−z)側の外部に設けられている。スクリュー14の駆動手段は、電気モーターに限られず、内燃機関、外燃機関、あるいは風力、水力等を利用したものであってもよい。また、本実施形態では、スクリュー14はモーターMと直結されているが、ギア、ベルト等の減速手段、あるいはユニバーサルジョイント等の継手あるいはその他の動力伝達手段を介してモーターMからスクリュー14へ動力を伝達する構成であってもよい。
【0041】
エアポンプAは、粉体容器11の外部に設置され、外部から軸封部16、17ヘと空気を送る送気手段である。本実施形態では、エアポンプAが送る気体は空気であるが、粉体Pの性質等を考慮して窒素ガス等の他の気体であってもよい。また、送気手段としてはエアポンプに限らず、ブロワー、コンプレッサ等を用いてもよく、プラントに設置されているエア供給ライン等につないでもよい。
【0042】
ホース151は、エアポンプAと、軸封部16にある軸封部材161のガス導入部161e(
図3を参照しながら後述する)とを接続し、エアポンプAから送られる空気を軸封部材161内(後述する空間S)に送る。
【0043】
ホース152は、エアポンプAと、軸封部17にある軸封部材のガス導入部(軸封部17は軸封部16(
図2)と同様の構成であるため図示を省略する)とを接続し、エアポンプAから送られる空気を軸封部17にある軸封部材に送る。
【0044】
軸封部16は、下底部111とスクリュー14の回転軸141との隙間から粉体Pが粉体容器11の外部へ漏れることを抑制する。軸封部17は、上底部113とスクリュー14の回転軸141との隙間から粉体Pが粉体容器11の外部へ漏れることを抑制する。軸封部16の構造については
図2を参照しながら後述する。軸封部17は、本実施形態では軸封部16と同様の構成であるため説明を省略する。
【0045】
ハウジング181、182はそれぞれ、粉体容器11の下底部111、上底部113に取り付けられ、軸封部16、17を覆う。下底部111(−z)側のハウジング181の底面には、スクリュー14の回転軸141の軸径よりも大きい円形の貫通穴181aが設けられている。回転軸141が貫通穴181aを、ハウジング181に非接触で通る。本実施形態においては、貫通穴181aの中心は回転軸141の軸線上にある。
【0046】
上底部113(+z)側のハウジング182には、軸受け182aが設けられている。軸受け182aは、回転軸141の左上側の一端141bを回転可能に支持する。軸受け182aには、例えばボールベアリング等が用いられるが、スクリュー14の回転軸141を回転可能に支持できるものであればそれに限られない。
【0047】
<2.粉体輸送装置の軸封構造>
図2は、本発明の第1実施形態としての粉体輸送装置1の軸封部16及びその周辺の断面を示す図である。軸封部16は、軸封部材161、ボルト162a、ナット162b、グランドパッキン163、ランタンリング164、パッキン押え165、パッキン押えボルト166a、及びスプリング166bを備える。また、軸封部材161の底壁161b(後述する(
図3(a)(b)))とグランドパッキン163との間には、軸封部材161の側壁161a(後述する(
図3(a)(b)))と回転軸141とに挟まれた空間Sが設けられている。なお、
図3(a)からわかるように、後述するボルト穴161d(同様に、
図2のボルト166a及びスプリング166b)と、ガス導入部161eとは同一断面上にないが、説明のため、
図2では同一断面上に示す。
【0048】
本実施形態では、軸封部材161は、後述するグランドパッキン163を収容し、粉体容器11の外側に取り外し可能に取り付けられる。本実施形態では、軸封部材161を、粉体容器11とは別の部品としている。そのため、粉体Pの種類、装置の使用条件等に応じて、あるいは消耗品として軸封部材161のみを交換することが可能であり、設備のメンテナンスコストを低減させることができる。
【0049】
図3(a)は、軸封部材161を、
図1において右下から左上に向いて(z軸矢印の方向に)見た図であり、
図3(b)は、
図3(a)におけるA−A断面図である。軸封部材161は、回転軸141の軸線方向(z方向)に延びる円筒状の側壁161a、側壁161aの粉体容器11(+z)側の一端に円筒の底面となる底壁161b、側壁161aの粉体容器11(+z)側の一端で側壁161aの外側(+r方向)に向かって延びるフランジ161cを有する。本実施形態では、底壁161b及びフランジ161cは、粉体容器11(+z)側で連続した平面を形成している。
【0050】
側壁161aは、軸線(z)方向の投影において、後述する軸穴161fの外側にある。側壁161aのモーターM(−z)側の端部には、粉体容器11側(+z方向)に向かってボルト穴161dが設けられている。ボルト穴161dは、回転軸141の軸線を中心とした円周(θ方向)に沿って4箇所設けられている。ボルト穴161dは、後述するパッキン押えボルト166aと螺合する。ここで、ボルト穴161dの呼び径は、側壁161aの厚みよりも小さな値である。なお、ボルト穴161dの数は、軸封部材161として求められる性能及び周辺部品等の設計条件によって適宜変更可能である。側壁161aの厚み、軸方向(z方向)の長さ、ボルト穴161dの呼び径、及びピッチは、軸封部材161として求められる強度、後述するパッキン押え165の押圧力、周辺部品との位置関係等の設計条件によって適宜決定される。
【0051】
また、側壁161aは、後述するグランドパッキン163より粉体容器11(+z)側において側壁161aを厚み方向(r方向)に貫通し、ホース151と接続するガス導入部161eを有する。この構成により、エアポンプAから送られた空気がホース151を通ってガス導入部161eに至り、空間Sに導かれる。本実施形態では、ガス導入部161eは回転軸141を挟んで対向する2箇所に設けられており、それぞれのガス導入部161eに接続された2つのホース151は図示されていない位置で合流している。なお、ガス導入部161eの数及び位置はこれに限られず、設計条件等により適宜変更可能である。
【0052】
底壁161bには、底壁161bを貫通する円形の軸穴161fが設けられている。軸線(z)方向の投影において、軸穴161fは側壁161aの内側にある。本実施形態においては、軸穴161fの中心は回転軸141の軸線上にある。軸穴161fは、粉体容器11の貫通穴111aと連通する。軸穴161fの穴径は、スクリュー14の回転軸141の軸径よりも大きい。そのため、回転軸141が軸穴161fの内周面に非接触で軸穴161fを通る(
図2)。この構成により、空間Sに導かれた空気が、軸穴161fの内周面と回転軸141の外周面との間の隙間に送られ、軸穴161fの内周面と回転軸141の外周面との間を、粉体容器11の外部から内部の方向(+z方向)に向かって流れる。
【0053】
軸穴161fの内周面には螺旋状溝161gが形成されている。
図4は、螺旋状溝161gの具体的な形状の一例を示した写真である。
【0054】
本実施形態では、螺旋状溝161gは、スクリュー14の回転方向(+θ方向)に合わせて右ねじの方向で設けられている。なお、スクリュー14が逆回転(−θ方向の回転)の場合、螺旋状溝161gは逆ねじ(左ねじ)の方向に設けることが好ましい。すなわち、螺旋状溝161gの方向とスクリュー14の回転方向とを揃えることが好ましい。この構成によれば、粉体Pのうち、螺旋状溝161gに入ったサイズの大きいものがスクリュー14の回転軸141に接触した場合、粉体Pと回転軸141との間の摩擦力によって、螺旋状溝161gをガイドとして粉体Pを粉体容器11内に押し戻す力が働く。また、回転軸141の回転により、螺旋状溝161g内を流れる空気の流速がさらに増す上に、整流されることが期待できる。
【0055】
螺旋状溝161gの溝のサイズ、回転軸141との位置関係、及び軸穴161fと粉体容器11の貫通穴111aとの穴径の大小関係等の詳細は
図7を参照しながら後述する。なお、底壁161bの厚みは、求められる強度だけでなく、粉体Pを気流により押し戻すために必要な軸穴161fの長さも考慮して決定することが好ましい。そして、軸穴161fの長さは螺旋穴のピッチ、スクリュー14との間隙、粉体Pのサイズ等を考慮して決定される。
【0056】
フランジ161cは、回転軸141の軸線を中心とした円周上に等間隔に4カ所の貫通穴161hが設けられている。本実施形態では貫通穴161hは円形で、穴径は、後述するボルト162aの呼び径よりも大きい。なお、フランジ161cの厚さ、サイズ、及び貫通穴161hの数、配置、穴径は、後述するボルト162aのサイズ、部品の寸法公差等の設計条件によって適宜変更可能である。また、貫通穴の形状は円形に限らず、θ方向に沿って延びる長穴等であってもよい。
【0057】
再び
図2に戻る。ボルト162a及びナット162bは、軸封部材161を粉体容器11の下底部111に固定する。ボルト162aは下底部111に設けられた貫通穴111a及び、軸封部材161のフランジ161cに設けられた貫通穴161hを通る。ナット162bは、軸封部材161のフランジ161cの外側(モーターM側)においてボルト162aと螺合する。本実施形態では軸封部材161を固定する手段の一例としてボルト及びナットを用いているが、これに限られず、プラスチック等の材料を用いる場合は爪嵌合等でもよい。なお、軸封部材161を交換する必要がない場合、あるいは、粉体容器11とともに交換してよい場合は、軸封部材161の粉体容器11への固定方法としては、その他に、溶接等により軸封部材161と粉体容器11とを一体としてもよい。
【0058】
軸封部材161を粉体容器11に取付ける際に、軸封部材161と、粉体容器11の下底部111とが、貫通穴111a及び軸穴161fの全周で当接している。また、粉体容器11の下底部111と、軸封部材161とを、ガスケットなどのシール材を介して当接させてもよい。この構成により、軸封部材161と粉体容器11との隙間に粉体が侵入すること、及び軸封部材161と粉体容器11との隙間から粉体が外部に漏れることを抑制することができる。また、空間S内の空気が、軸封部材161と粉体容器11との隙間から外部にリークすることを防止でき、貫通穴111a及び軸穴161fとの間に効率的に空気を送り込むことができる。シール材は貫通穴111a及び軸穴161fの全周にわたって設けてもよく、また、底壁161b及び粉体容器11の下底部111の形状に合わせて必要な箇所に部分的に設けてもよい。シール材としては金属、樹脂、ゴムなど、特に限定はされないが、粉体容器11と軸封部材161との隙間をシールし、また、これらの部品を傷つけないために、弾性変形しやすく、かつ使用に耐えうる強度を有するものが好ましい。なお、この構成は本実施形態の好ましい例であり、使用条件、製造要件等を勘案して、軸封部材161と、粉体容器11の下底部111との間に部分的に隙間を設けてもよい。
【0059】
グランドパッキン163は、リング状の部材、あるいは紐を螺旋状またはリング状にした部材で、螺旋状溝161g及びガス導入部161eより粉体容器11から離れた位置(−z側)に配置される。グランドパッキン163は、弾性変形可能であり、例えば、繊維補強した硬質ゴムなどの素材が用いられる。
【0060】
グランドパッキン163は、軸封部材161の側壁161aと、スクリュー14の回転軸スリーブ143との間に収納される。グランドパッキン163は、回転軸141の全周にわたって、軸封部材161の側壁161aの内周面、及びスクリュー14の回転軸スリーブ143に当接し、これらを押圧する。この構成により、軸封部材161の側壁161aと回転軸141との間隙がグランドパッキン163及び回転軸スリーブ143によって塞がれ、空間Sに導かれた空気が粉体容器11の反対側(モーターM側(−z方向))にリークすることを防止し、貫通穴111a及び軸穴161fとの間に効率的に空気を送り込むことができる。すなわち、本実施形態では、グランドパッキン163及び回転軸スリーブ143は、接触式のシール手段であり、空気が漏れることを防止するためのガスシール手段として機能している。
【0061】
本実施形態では、グランドパッキン163は、回転軸141の軸線方向(z方向)に複数個並べて収納される。本実施形態におけるグランドパッキン封止の構造はその一例であり、空間Sに導入された空気(ガス)を、粉体容器11の反対側(−z側)に漏れることを抑制するものであればここで述べた構成に限定されない。例えば、グランドパッキンの他にオイルシール、リップシール等が挙げられ、また、複数の構成を併用してもよい。
【0062】
ランタンリング164は、I字型の断面を有するリング状の部材で、軸封部材161の側壁161aと回転軸141との間、かつ軸封部材161の底壁161bとグランドパッキン163との間、すなわち空間Sに配される。ランタンリング164の、粉体容器11(+z)側の端部は軸封部材161の底壁161bに当接し、他方の端部は、ガス導入部161eよりもモーターM(−z)側にあり、グランドパッキン163に当接する。
【0063】
ランタンリング164と回転軸141との間には隙間がある。さらに、ランタンリング164は、側壁161a側から回転軸141側まで貫通する貫通穴164aが設けられている。この構成によれば、空間Sに導かれた空気を貫通穴111a及び軸穴161fと回転軸141との間に導く経路(ガス経路)が形成される。なお、ガス経路を形成できる部材(ガス経路形成部材)であれば、ランタンリングに限られない。すなわち、グランドパッキン163及び軸封部材161の底壁161bに当接し、これらの間の空間を形成しつつ、ガス導入部161e側と回転軸141側との間でガスを通す構成を持つ部材であればよい。
【0064】
パッキン押え165は、円筒状の胴部165aと、胴部165aのモーターM側の一端で胴部165aの外(+r)側に向かって延びるフランジ165bとを備える。胴部165aの外径は、軸封部材161の側壁161aの内径よりも小さい。胴部165aの内径は、回転軸スリーブ143の外径よりも大きい。胴部165aの粉体容器11側の部分は、軸封部材161の側壁161aと回転軸スリーブ143との間に挿入され、胴部165aの粉体容器11側の一端はグランドパッキン163のモーターM側の一端に当接する。
【0065】
フランジ165bには、軸封部材161のボルト穴161dのそれぞれに対応する位置に4箇所の貫通穴165cが設けられている。貫通穴165cを、後述するパッキン押えボルト166aが通る。
【0066】
パッキン押えボルト166aは、パッキン押え165の貫通穴165cを通り、軸封部材161のボルト穴161dに螺合する。
【0067】
スプリング166bは弾性部材で、一端(−z側)がパッキン押えボルト166aのフランジに当接し、他端(+z側)がパッキン押え165のフランジ165bに当接する。そのため、スプリング166bは、パッキン押え165を粉体容器11方向(+z方向)に押圧し、パッキン押え165がグランドパッキン163を粉体容器11方向(+z方向)押圧する。グランドパッキン163は、パッキン押え165及びランタンリング164によって回転軸141方向(z方向)に圧縮されるため、回転軸141の半径(r)方向に伸長しようとする力が働く。
【0068】
したがって、パッキン押えボルト166aを締め付けることによりにより、グランドパッキン163が回転軸スリーブ143を−r方向に押圧する力が増し、空間Sの空気を封止する力が増す。空間Sの空気を封止する力は、パッキン押えボルト166aの締め付けトルクを管理すること等により調整することができる。
【0069】
また、スプリング166bは、パッキン押えボルト166aをモーターM側に押す。そのため、パッキン押えボルト166aのねじ部(おねじ)と、軸封部材161のボルト穴161d(めねじ)との間に摩擦力が生じ、パッキン押えボルト166aが緩むことを防止できる。
【0070】
<3.軸封部の変形例>
図5は、本発明の第1実施形態における軸封部16の第1の変形例である。ここでは、軸封部材161は用いられない。粉体容器11は、側壁161a、ボルト穴161d、ガス導入部161e、螺旋状溝161gを備えており、これらの構成は
図2及び
図3の同符号の構成と同様である。なお、この構成においては、底壁161bに対応するのは粉体容器11の下底部111となり、軸穴161fに対応するのは粉体容器11の貫通穴111aとなり、貫通穴111aの内周面には螺旋状溝161gが形成されている。
【0071】
この構成においては、粉体容器11の内部に達するまで螺旋状溝161gを設けることができるため、装置の大型化を伴わずに螺旋状溝161gを長くすることができる。あるいは、側壁161a等が粉体容器11から突出している部分を小さくでき、装置の小型化ができる。また、この構成においては、装置全体における部品点数を削減できる他、軸封部材161を粉体容器11へ組み付ける際の精度を考慮しなくてもよい。
【0072】
図6は、本発明の第1実施形態における軸封部16の第2の変形例である。ここでは、軸封部材161の軸穴161fを含む底壁161bの一部が、粉体容器11の内部に突出している、突出部161iが設けられている。粉体容器11の貫通穴111aの内周面が、突出部161iの側面に対向あるいは当接する。なお、
図6では、部品の加工上の精度を考慮して、貫通穴111aの内周面と、突出部161iの側面との間に隙間を設けているが、フランジ161cが、全周にわたって粉体容器11の下底部111に当接している。そのため、軸穴161fの全周にわたって、粉体容器11の下底部111と軸封部材161とが当接している構造が成立しており、粉体容器11と軸封部材161との間から粉体が漏れることを防止できる。
【0073】
この構成においては、螺旋状溝161gを粉体容器11の内部に入れることができるため、装置の大型化を伴わずに螺旋状溝161gを長くすることができる。あるいは、軸封部材161が粉体容器11から突出している部分を小さくでき、全体として装置の小型化ができる。
<4.粉体輸送装置の軸封構造の詳細>
【0074】
図7は、本発明の第1実施形態としての粉体輸送装置1の軸封構造の詳細を説明するための拡大模式断面図である。本実施形態、及び
図8、
図9を参照しながら説明する変形例において、山の頂161jとは、回転軸141の軸線を含む断面において、螺旋状溝161gの隣り合う谷の間で回転軸141に最も近くなる部分(点または線)を言う(後述する変形例においても同様とする)。すなわち、山の頂161jは、立体的にはこの部分の連なりであり、断面上で点であれば立体的には線に、断面上で線であれば立体的には面になる。また、谷底161kとは、回転軸141の軸線を含む断面において、螺旋状溝161gの隣り合う山の間で最も回転軸141から遠くなる部分(点または線)を言う。すなわち、谷底161kは、立体的にはこの部分の連なりであり、断面上で点であれば立体的には線に、断面上で線であれば立体的には面になる。
【0075】
本実施形態においてにおいて、螺旋状溝161gは、隣り合う斜面が交わる形状、すなわち、軸線を含む断面において三角形となっている。これに限らず、螺旋状溝161gの軸線を含む断面は、台形、方形、半円形、正弦曲線等、他の形状としてもよい。ただし、回転軸141(軸線)に向かって溝の幅が広がる形状であることが、製作しやすく、螺旋状溝161gを流れる空気の圧力損失を抑制できる上に、粉体Pが螺旋状溝161gに詰まることを抑制することもできる。螺旋状溝161gに詰まる粉体Pが多くなると、螺旋状溝161g内に空気が流れにくくなり、粉体Pを粉体容器11内に効率的に押し戻せなくなると考えられる。また、粉体Pが螺旋状溝161gに詰まると、螺旋状溝161gと回転軸141との間にも粉体Pが挟まり、スクリュー14を駆動する際の動力損失、回転軸141及び軸封部材161の摩耗、傷、及び破損の要因となりうる。
【0076】
本実施形態では、軸線を含む断面において、山の頂161jは、山の頂点であり、立体的には尾根状であり、螺旋状の線として形成される。そのため、山の頂161jと回転軸141の間に粉体Pが達した場合、粉体Pが粉体容器11側(+z方向)及びモーターM側(−z方向)のいずれの方向に動いても、螺旋状溝161gの面と回転軸141の外周面との間は広がる。そのため、山の頂161jと回転軸141の間に粉体Pが挟み込まれて堆積することを抑制できる。そして、粉体Pの噛み込みによるスクリュー14を駆動する際の動力損失、回転軸141及び軸封部材161の摩耗、傷、及び破損を抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態において、粉体容器11の貫通穴111aの内周面は、螺旋状溝161gの谷底161kに接する仮想的な円筒Cと一致する。すなわち、谷底161kと軸線との距離は貫通穴111aの内周と軸線との距離に等しい。なお、取り付け位置の精度、部品の寸法公差等を考慮して、貫通穴111aの径を円筒Cより大きくしてもよい。
【0078】
図7において、螺旋状溝161gの幅をw、山の角度(=谷の角度)をα、山の頂161jと回転軸141との間の距離をdとする。ここで、螺旋状溝161gの幅wは、隣り合う山の頂161jの間の距離とする。また、山の角度αは、軸線を含む断面において山の頂161jまたは谷底161kを挟んで隣り合う斜面のなす角度を意味する。
【0079】
本実施形態において、軸線を含む断面において山の頂161jは点であるので、螺旋状溝161gの幅wは、ピッチと同じになる。そのため、螺旋状溝161gの幅wは、粉体Pの粒径、及び粉体Pを効率的に押し戻すために適切なピッチを考慮して決定することが好ましい。
【0080】
螺旋状溝161gの幅wが広いほど、空気が螺旋状溝161g内に入る際に生じる圧力損失を低減することができる。そのため、エアポンプAが供給する空気の圧力を高くしなくても、螺旋状溝161g内の粉体Pが効率的に押し戻される。しかし、幅wが広いと螺旋状溝161gに入ることができる粒子が大きくかつ多くなるため、これらを押し戻すために必要となる空気の圧力も高くなる。さらに、幅wが必要以上に広ければ、螺旋状溝161g内を流れる空気の流速は低下し、粉体Pを押し戻す力が弱くなることがある。
【0081】
また、螺旋状溝161gの幅wが広いほど、螺旋状溝161gのピッチ(=幅w)が長くなる。螺旋状溝161gのピッチが長くなると、螺旋状溝161gと軸線(z)方向とのなす角が小さくなる。そのため、ガス導入部161eから空間Sを経由して送られてくる空気を効率よく螺旋状溝161g内に流すことができ、螺旋状溝161g内にある粉体Pを大きな力で押し戻すことができる。また、螺旋状溝161gの経路長が短くなるため、螺旋状溝161gを流れる空気の圧力損失を低減できるが、粉体Pを押し戻すための距離を十分に確保するために、底壁161b(
図3(a))を厚くする必要が生じる可能性がある。
【0082】
螺旋状溝161gの幅wが狭いほど、螺旋状溝161gの空気の流路が細くなるため、空気が螺旋状溝161g内に入る際に生じる圧力損失が大きくなる。そのため、螺旋状溝161g内の粉体Pを押し戻すためには、エアポンプAの出力を上げる必要がある。また、螺旋状溝161gが細すぎると、粉体Pが経路内で詰まりやすくなる。
【0083】
また、螺旋状溝161gの幅wが狭いほど、螺旋状溝161gのピッチ(=幅w)が短くなる。螺旋状溝161gのピッチが短くなると、螺旋状溝161gと軸線(z)方向とのなす角が大きくなる。そのため、空気が螺旋状溝161gに侵入する際に抵抗となり、圧力損失が生じる。そのため、粉体Pを押し戻すには、エアポンプAが供給する空気の圧力をより高くする必要がある。一方で、螺旋状溝161gのピッチが短くなれば、螺旋状溝161gの経路長が長くなるため、底壁161b(
図3(a))が薄くても十分に粉体Pを押し戻すことができる。
【0084】
以上のことを考慮すると、螺旋状溝161gの幅wは、粉体Pの粒径D50の0.75倍以上であることが好ましく、さらには1.0倍以上であることがより好ましく、1.2倍以上であることがさらに好ましく、1.5倍以上の寸法であることが最も好ましい。ここで、D50は粉体Pの質量基準の粒度分布において小さい方から累積50%となる大きさの粒子の粒径である。なお、D50に限らず、Dの後の数値、すなわち、DXとした場合、質量基準の粒度分布において粒子の大きさが小さい方から累積X%となる大きさの粒子の粒径を示す。
【0085】
また、螺旋状溝161gの幅wは、粉体Pの粒径D50の5倍以下とすることが好ましく、4倍以下とすることがより好ましく、3倍以下であることがさらに好ましい。なお、幅wは粉体Pの粒径D50の2倍以下とすることがさらに好ましく、1.5倍以下とすることが最も好ましい。ここで述べた螺旋状溝161gの幅wの値の好ましい範囲については一般的な粉体についてであり、粉体Pの形状、性質等によっては、最適な幅wの値はこの範囲でない場合もある。
【0086】
山の角度αについて説明する。山の角度αが十分に大きければ、螺旋状溝161gに粉体Pが挟まることを抑制し、ひいては、経路内に粉体Pが詰まることを抑制できる。しかし、山の角度αが大きすぎると、螺旋状溝161gを流れる空気が、山の頂161jと回転軸141の隙間から漏れやすくなり、螺旋状溝161gに沿って粉体Pを押し戻す力が弱くなる。これらのことを考慮すると、山の角度αは、30〜75度が好ましく、45〜75度であることがより好ましく、60度であることが最も好ましい。
【0087】
山の頂161jと回転軸141との間の距離dについて、距離dが長くなるほど、螺旋状溝161gの山の頂161jと回転軸141との隙間を通ることのできる粉体Pの粒径が大きくなる。この隙間を通る粒子の軸線(z)方向の速度成分は、螺旋状溝161gを通る粒子の軸線(z)方向の速度成分よりも大きい。すなわち、山の頂161jと回転軸141との間を通る粒子は、回転軸141の方向に沿って粉体容器11の外部へ向かう速度が大きい。さらに、山の頂161jと回転軸141との間を通って粉体容器11外部へ出るための経路は、螺旋状溝161gを通る経路よりも非常に短い。そのため、螺旋状溝161gの山の頂161jと回転軸141との隙間を通る粒子を確実に押し戻すには、この隙間により大量の空気を流す必要がある。このことから、距離dは短いほうがよい。
【0088】
例えば、回転軸141の螺旋状溝161gに対向する部分の直径をd1、螺旋状溝161gの山の頂161jに接する仮想的な円筒の直径をd2、回転軸141と山の頂161jとの間を通してもよい粉体Pの粒径をD
1とすると、D
1≧d=(d2−d1)/2とすることが考えられる。ここで、D
1の値はD50からD90の間で決定することが好ましく、D60からD80の間で決定することがより好ましく、D70とすることがさらに好ましい。
【0089】
ただし、回転軸141は、回転時にフレ(回転に伴う弾性変形等により回転軸141の外周面と軸線との距離が変化すること)が生じる場合もある。そのため、距離dの設計値はこれを考慮して決定することが好ましい。一例として、回転軸141のフレの幅をΔdとすると、D
1≧d={(d2−d1+Δd/2)}/2とすることができる。
【0090】
また、部品の加工精度による公差(寸法公差及び幾何公差)、及び組立精度等の理由により部品間でのずれが生じるため、回転軸141の軸線と回転軸141の外周面との距離、及び回転軸141の軸線と螺旋状溝161gの山の頂161jとの距離は一定とは限らない。
【0091】
一例であるが、回転軸141の軸線と回転軸141の外周面との距離の公差を±Δd
A、回転軸141の軸線と螺旋状溝161gの山の頂161jとの距離の公差を±Δd
Bとして、上記式にこれらの要因を考慮する場合、D
1≧d(ノミナル値)={(d2−d1+Δd/2)}/2+(Δd
A2+Δd
B2)
1/2とすることが好ましい。
【0092】
また、上記フレ及び公差を考慮し、回転軸141と螺旋状溝161gとが接触及び干渉しないように設計する場合、例えば、d(ノミナル値)>(Δd
A2+Δd
B2)
1/2+Δd/2とすることが好ましい。
【0093】
以上、螺旋状溝161gの幅w、山の角度α、山の頂161jと回転軸141との間の距離dの各々の値が影響する粉体Pの軸封構造の性能について、別々に述べた。しかし、本実施形態のような形状の場合、螺旋状溝161gの幅w、山の角度α、距離dは互いに相関するため、実際に軸封構造を設計する際には、使用条件等を考慮した上で、これらの値を含む関数に基づくこともありうる。
【0094】
例えば、
図7に示すように、螺旋状溝161gに入ることのできる仮想的な球P
iの直径の最大値をD
2とすると、幾何学的な計算により、幅w、山の角度α、距離d、直径D
2の関係式を導き出せる。この関係式において、例えば、直径D
2を拘束条件とした場合、山の角度αが大きくなれば、幅wも大きくなり、すなわち、螺旋状溝161gのピッチも長くなる。なお、D
2の値が大きいほど、粉体Pが螺旋状溝161gに詰まることを防止できる上に、螺旋状溝161gの空気の流路が太くなるので、空気の圧力損失を低減することができる。しかし、D
2の値が大きすぎると、大量かつ大きな粒子が螺旋状溝161gに入るため、粉体容器11の外部に出てしまう粒子が多くなる可能性がある。そのため、上記関係式のために用いるD
2の値はD50、D70等、粉体Pの粒径分布に基づいて適宜決定することが好ましい。
【0095】
このように各値の相関性を把握した上で、各値が軸封構造の性能に与える影響(上述の通り)を考慮することで、本実施形態の効果を最大限に発揮させるための設計に寄与することができる。
【0096】
<5.螺旋状溝の変形例>
図8は、本発明の第1実施形態における螺旋状溝161gの第1の変形例を示す図である。この変形例においては、
図7の形状に対して、螺旋状溝161gの山、及び谷は丸みを有している。この構成によれば、螺旋状溝161gの山が鋭利ではないため、加工精度を確保しやすくなる。また、螺旋状溝161gの山が容易に変形してしまうことを抑制できる。さらに、組み付けの際などに、螺旋状溝161gの山が、他の部品に傷をつけることも抑制できる。
【0097】
山の頂161jの定義は上述の通りで、この変形例では、軸線を含む断面(
図8)において、山の頂161jは点となる。すなわち、山の頂161jはこの点の連なりで、立体的には螺旋状の線となる。谷底161kについても同様に上述の定義によると、断面上では点となり、立体的には螺旋状の線となる。
【0098】
図9は、本発明の第1実施形態における螺旋状溝161gの第2の変形例を示す図である。この変形例においては、
図7の形状に対して、螺旋状溝161gの山が面取りされ、谷底161kは、丸みを有している。この構成によれば、加工時に、螺旋状溝161gの山の頂161jの高さ、すなわち、山の頂161jと回転軸141との距離dを一定にしやすい。また、螺旋状溝161gの山が容易に変形してしまうことを抑制できる。
【0099】
この場合、軸線を含む断面(
図9)において、山の頂161jは線となる。すなわち、山の頂161jは、立体的には回転軸141の外周面と一定の距離を保つ面を有する螺旋状の帯を形成する。軸線を含む断面(
図9)における山の頂161jの幅をw1とする。幅w1が大きいと、山の頂161jと回転軸141との間に粉体が挟み込まれ、堆積しやすくなる。そのため、山の頂161jの幅w1は狭いことが好ましい。
【0100】
以上のことを考慮すると、山の頂161jの幅w1は、螺旋状溝161gのピッチ(=w+w1)の1/5以下とすることが好ましく、1/10以下とすることがより好ましく、1/20以下とすることがさらに好ましい。
【0101】
<6.本発明の第1実施形態の効果>
以上で説明した本発明の第1実施形態によれば、軸穴161fと回転軸141とは非接触、すなわち、回転軸141は粉体容器11を非接触で貫通する。そのため、粉体輸送装置1の損傷、及びそれによるメンテナンスコストを下げることができる。また、回転軸141における動力損失を抑制することもできる。
【0102】
また、軸穴161fと回転軸141の外周面との間に侵入する粉体Pが、軸穴161fと回転軸141の外周面との間を流れる空気によって粉体容器11の内側に押し戻される。そのため、粉体Pが軸穴161fと回転軸141の外周面との間から漏れることを抑制できる。したがって、装置外部に漏れた粉体Pの清掃のためのコストを削減でき、また、グランドパッキン163等の摺動部材に達した粉体Pに起因する摺動部材の摩耗、劣化を防ぐことができ、部品のメンテナンスコストを低減できる。
【0103】
また、軸封部材161の軸穴161fの内周面には螺旋状溝161gが形成されている。螺旋状溝161gを通り、粉体容器11の内部から外部に出るまでの経路は、螺旋状溝161gを通らない経路よりも長くなる。そのため、粉体Pを押し戻すために十分な経路長が確保され、粉体Pが粉体容器11から漏れることがより確実に防止される。
【0104】
そして、ガス導入部161eから軸穴161fとの外周面との間に送られた空気は、螺旋状溝161gを粉体容器11の外側から内側に向かう方向により速い速度で流れると考えられる。その結果、螺旋状溝161gにある粉体は、粉体容器11の内部に向かって、より強力に、押し戻されると考えられる。また、螺旋状溝161g内では空気の流れが均一になると考えられ、送り込まなくてはいけない空気の量の低減が期待できる。
【0105】
さらに、本発明の第1実施形態では、スクリュー14の回転軸141と軸封部材161の軸穴161fとの隙間において、空気及び粉体Pのためのガイドとなる螺旋状溝161gは、外側(軸穴161f)に配置されている。そして、螺旋状溝161g内を流れる空気及び粉体Pは回転軸141の周囲を回るように運動をするため、回転軸141の軸線から離れる方向(+r方向)の力(遠心力)が働くと考えられる。そのため、回転軸141と軸穴161fとの隙間を流れる粉体P及び空気は、螺旋状溝161gに押し付けられ、螺旋状溝161gに沿って効果的にガイドされることが期待できる。
【0106】
また、上記遠心力により、粉体Pには回転軸141から離れる方向に力が働くため、螺旋状溝161g内の粉体Pが回転軸141に付着することを抑制することができると考えられる。そのため、粉体Pが螺旋状溝161gと回転軸141との間に挟まることによって生じる動力損失や回転軸141及び軸封部材161の傷、摩耗、破損を防ぐことができる。
【0107】
さらに、螺旋状溝161gの山の頂161jと回転軸141との間における空気及び粉体Pの運動及びかかる力については、以下の作用も予測できる。螺旋状溝161gの山の頂161jと回転軸141との間における空気の流れは、螺旋状溝161g内の空気とは流れが違う。そのため、これらの空気の境界部分で乱流が発生すると考えられる。そして、山の頂161jと回転軸141との間にある粉体Pには、乱流により螺旋状溝161gへ移動すると考えられる。
【0108】
上記作用の他に、以下の作用も予測できる。螺旋状溝161g内の空気の流れは、山の頂161jと回転軸141との間の空気の流れよりも速いと考えられる。その場合、螺旋状溝161gの空気の圧力は、山の頂161jと回転軸141との間の空気の圧力よりも低い(ベルヌーイの定理)。この圧力差により、山の頂161jと回転軸141との間にある粉体Pは、螺旋状溝161gへと引き込まれると考えられる。
【0109】
これらの予測される効果により、螺旋状溝161gの粉体Pが回転軸141から離れる方向にかかる力が強くなり、より一層回転軸141に粉体Pが付着することが抑制できると考えられる。
【0110】
以上の通り、本実施形態の構成によれば、粉体輸送装置1の損傷、回転軸141における動力損失、及びメンテナンスコストを低減しつつ、粉体を扱う容器から粉体が漏れることを抑制できる粉体輸送装置1の軸封構造、粉体輸送装置1及び粉体輸送装置1の軸封部材161を提供することができる。
【0111】
<7.粉体混合装置(第2実施形態)>
図10は、本発明の第2実施形態としての粉体混合装置2を示す図である。
図10において、上下及び左右は紙面の上下及び左右であり、ここでは紙面下方向が重力のかかる方向である。本実施形態にかかる粉体混合装置2は、第1の粉体P1と、第2の粉体P2とを撹拌・混合するための装置である。粉体混合装置2は、粉体容器21と、スクリュー24と、モーターMと、エアポンプAと、ホース251と、軸封部26と、ハウジング281とを備える。第1の粉体P1及び第2の粉体P2の粒径は特に限定されず、また、本実施形態では粉体を2種類としているが、3種類以上を撹拌・混合するものであってもよい。なお、ここで説明する粉体混合装置2は一例であって、回転軸を用いて2種類以上の粉体を混合する装置であればこれに限られない。
【0112】
粉体容器21は、粉体混合装置2において混合される第1の粉体P1と第2の粉体P2を収容する容器である。本実施形態では、粉体容器21は、底部211と底部211から上方(+z方向)に延びる円筒状の側部212とを有し、上方が開放した容器である。なお、ここで説明する粉体容器21の形状はその一例であり、使用条件等によってその形状は適宜変更可能である。また、粉体容器21の構成はこれに限られず、上方には蓋又は天井をも有することができる。その場合、例えば、蓋又は天井に粉体P1及びP2の導入口、及び混合された粉体(P1+P2)の排出口を設けることができる。
【0113】
粉体容器21の底部211には、円形の貫通穴211aが設けられている。さらに、例えば、粉体の排出口を粉体容器21の底部211に設けてもよい。
【0114】
スクリュー24は、回転軸241と、回転により粉体を混合・撹拌するためのプロペラ状羽根242とを有する。回転軸241の軸径は貫通穴211aよりも小さく、回転軸241は粉体容器21の下側の外部から貫通穴211aを底部211に非接触で通って、粉体容器21内に入る。すなわち、回転軸241は粉体容器21の外壁を非接触で貫通する。スクリュー24の混合・撹拌のためのプロペラ状羽根242は、プロペラ状以外のパドル状、リボン状などの形状の羽根でもよく、第1の粉体P1と第2の粉体P2とを撹拌・混合できる形状であればよい。回転軸241は、さらに、ハウジング281の貫通穴281aを通って、下(−z)側の一端241aがモーターMに接続される。
【0115】
モーターMは、スクリュー24を回転させるための駆動手段であり、第1実施形態と同様とする。モーターMがスクリュー24を回転させることにより、粉体容器21内に収容された第1の粉体P1と第2の粉体P2とが、プロペラ状羽根242によって撹拌及び混合される。スクリュー24の駆動手段は、電気モーターに限られず、内燃機関、外燃機関、あるいは風力、水力等を利用したものであってもよい。また、モーターMとスクリュー24との間には、第1実施形態で述べたように、動力伝達手段を介してもよい。
【0116】
エアポンプAは、粉体容器21の外部に設置され、外部からホース251を介して空気を軸封部26に送る手段であり、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0117】
ホース251、軸封部26、及びハウジング281は、それぞれ第1実施形態におけるホース151、軸封部16(
図2〜9)、及びハウジング181と同様の構造として、ここでは説明を省略する。
【0118】
第2の実施形態の粉体混合装置は縦型であるが、横型の粉体混合装置も知られており、本発明の軸封構造は横型の粉体混合装置にも同様に適用できることは明らかである。
【0119】
<8.解砕装置(第3実施形態)>
図11は、本発明の第3実施形態としての解砕装置3を示す図である。
図11において、左右は紙面の左右であり、ここでは紙面手前方向が上方向、紙面奥方向が下方向、すなわち、紙面奥方向が重力のかかる方向である。本実施形態にかかる解砕装置3は、原料RMを解砕し、解砕物CMとするための装置である。この装置において、原料RMに含まれる、あるいは解砕の過程等で発生する破片、粉じん等を粉体Pとする。
【0120】
解砕装置3は、容器31と、原料導入部32、粉体排出部33、ロータ34と、モーターMと、エアポンプAと、ホース351、352と、軸封部36、37と、ハウジング381,382とを備える。ここで、原料RMは塊状の材料だけでなく、粒子状あるいは粉体であってもよい。そのため、解砕とは、塊状の原料を粉砕するだけでなく、凝集粉体(二次粒子)の凝集だけを解いて一次粒子又は凝集がより少ない二次粒子を得る操作を含む。すなわち、ここで解砕は、原料よりも小さな材料片または粒子を得るための操作である。
【0121】
容器31は、解砕装置3内に導入された原料RM、解砕された解砕物CM、及び粉体Pを収納する。容器31は、本実施形態において、容器31は、後述する回転軸341の方向(z方向)に延びる円筒状の外壁を持つ容器である。なお、ここで説明する容器31の形状はその一例であり、使用条件等によってその形状は適宜変更可能である。容器31の外壁は、円筒の左(−z側)端部の底を構成する左底部311と、円筒を形成する側部312と、円筒の右(+z側)端部の底を構成する右底部313とで構成される。容器31は、側部312の上(紙面手前)側に原料導入部32に接続する原料導入穴314と、側部312の下(紙面奥)側に粉体排出部33に接続する排出穴315と、側部312の内壁に固定刃316とを備える。
【0122】
左底部311及び右底部313にはそれぞれ、後述するロータ34の回転軸341を通すための円形の貫通穴311a、313aが設けられている。貫通穴311a、313aの構成は、第1実施形態における貫通穴111a、113aと同様である。
【0123】
固定刃316は、本実施形態では、ロータ34の方向(−r方向)に向く刃部316aを有し、回転方向(θ方向)を厚み方向とした板状の部材である。また、本実施形態では、固定刃316は、ロータ34の外側でロータ34を挟んで対向した一対で構成されるが、これに限られず、1箇所でもよく、回転方向(θ方向)に沿って3箇所以上設けてもよい。本実施形態では、一例として、
図11の通り、刃部316aは、のこぎり状の形状を有している。
【0124】
原料導入部32は、容器31の上(紙面手前)側から容器31内部へ原料RMを投入するための部分である。原料導入部32の具体的な構造としては、例えば、容器31の原料導入穴314の上にホッパーを設けたものなどが挙げられるがこれに限られない。
【0125】
粉体排出部33は、生成した解砕物CMを容器31から外部に排出するための部分である。本実施形態においては重力により解砕物CMを容器31から落下させているが、これに限られず、負圧により容器31外へ吸い出す等の方法でもよい。
【0126】
ロータ34は、回転軸341と胴部342とを有する。回転軸341の構成は第1実施形態の回転軸141と同様であるため説明を省略する。胴部342の外周面には、回転軸341の軸線を中心とした円周方向(θ方向)を長手方向とした溝342aが、回転軸341の軸線(z)方向に複数設けられている。溝342aには回転刃342bが取り付けられている。回転刃342bは、取り外し可能にボルト等を用いて取り付けてもよく、また、接着、溶接等で胴部342と一体化させてもよい。回転刃342bの外(+r)側の端部は、胴部342の外周面から外(+r)側に突出しており、固定刃316の刃部316aに対応した形状を有する。回転刃342bの外(+r)側の端部の形状の一例として、ロータ34が回転し、回転刃342bが固定刃316に最も接近した時に、回転刃342bの外(+r)側の端部が、固定刃316の刃部316aと一定の隙間で対向する形状が挙げられる。この構成により、ロータ34が回転すると、回転刃342bの外周面と、固定刃316の刃部316aとの間に入り込んだ材料がせん断力によって解砕され解砕物CMが生成する。
【0127】
モーターMは、ロータ34を回転させるための駆動手段である。モーターMは第1実施形態と同様であるため説明を省略する。また、モーターMとロータ34との間には、第1実施形態で述べたように、動力伝達手段を介してもよい。
【0128】
エアポンプAは、容器31の外部に設置され、外部からホース351,352を介して空気を軸封部36、37に送る手段であり、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0129】
ホース351、352、軸封部36、37、及びハウジング381、382は、それぞれ第1実施形態におけるホース151、152、軸封部16(
図2〜9)、17、及びハウジング181、182と同様の構造であるため、ここでは説明を省略する。なお、軸封部36,37については、主に解砕の過程等で発生する粉体Pを容器31内に押し戻すための構成で、軸封部材の螺旋状溝のサイズ、螺旋状溝と回転軸341との隙間等は想定される粉体Pのサイズに応じて設計することが好ましい。すなわち、本実施形態においては、軸封部36、37は、原料RMに含まれる、あるいは解砕の過程等で発生する粉じん等(粉体P)を容器31の外部に漏れることを抑制するために設けられる。
【0130】
解砕装置の変形例としては、例えば、それぞれ回転刃を備えたロータを複数設け、互いの回転刃を噛み合わせることにより、噛み合わされた部分にある材料にせん断力を与えて解砕する装置も考えられる。このような装置においては、それぞれの回転軸に軸封部を設けてもよい。
【0131】
<9.その他の実施形態>
以上、本発明の3つの実施形態について説明したが、これらは多数の実施形態の一部の例に過ぎず、その他にも造粒、分級、乾燥、貯留、充填等、回転軸を用いて容器内の粉体を処理する装置に適用可能である。