特許第6971633号(P6971633)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6971633-トナーおよびトナーの製造方法 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971633
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】トナーおよびトナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20211111BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   G03G9/08 381
   G03G9/087 325
   G03G9/087 331
【請求項の数】6
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-104160(P2017-104160)
(22)【出願日】2017年5月26日
(65)【公開番号】特開2018-200356(P2018-200356A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】菅野 伊知朗
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武
(72)【発明者】
【氏名】小松 望
(72)【発明者】
【氏名】浜 雅之
(72)【発明者】
【氏名】小野▲崎▼ 裕斗
(72)【発明者】
【氏名】池田 萌
(72)【発明者】
【氏名】佐野 仁思
(72)【発明者】
【氏名】松原 諒文
(72)【発明者】
【氏名】小堀 尚邦
(72)【発明者】
【氏名】藤川 博之
【審査官】 塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−055520(JP,A)
【文献】 特開2014−040567(JP,A)
【文献】 特開2009−162792(JP,A)
【文献】 特開2009−162793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00 − 9/113
G03G 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂および銅フタロシアニンの結晶を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該銅フタロシアニンの結晶が、CuKα線によるX線回折において、ブラッグ角(2θ±0.20°)の6.50°以上7.50°以下の範囲に、半値幅が0.30°以上0.34°以下の回折ピークを有することを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記トナー粒子中の前記銅フタロシアニンの結晶の含有量が、前記トナー粒子中の結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
該結着樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂を含む請求項1または2に記載のトナー。
【請求項4】
該結晶性ポリエステル樹脂が、
炭素数6以上12以下の脂肪族ジオール、および、
炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸
の縮重合物である請求項に記載のトナー。
【請求項5】
該トナー粒子が、さらに、スチレンアクリル系ポリマーがポリオレフィンにグラフト重合している重合体を含有し、
該スチレンアクリル系ポリマーが、下記式(1)で示されるユニットを有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のトナー。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、または、メチル基を示す。Rは、飽和脂環式基を示す。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のトナーを製造するトナーの製造方法であって、
前記製造方法が、混練軸を有する2軸押し出し機によって前記結着樹脂および前記銅フタロシアニンを含有する混合物を溶融混練する溶融混練工程を有し、
該溶融混練工程における、該混練軸のニーディング部のバレル設定温度をTa(℃)とし、該溶融混練工程によって得られる混練物の温度をTb(℃)としたとき、TaおよびTbが、30≦Tb−Ta≦90、を満たすことを特徴とするトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に用いられるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
トナーにとって特に重要な特性は、適度な帯電性および良好な着色力であり、また、それらが長期に渡って安定していることである。そのためには、トナー粒子において、結着樹脂中に着色剤が均一に、細かく分散していることが好ましい。
【0003】
現在、シアントナー用の着色剤としては、顔料の一種である銅フタロシアニンが好適に用いられている。銅フタロシアニンは、コストおよび耐光性に関して優れた性能を有している。
【0004】
しかしながら、銅フタロシアニンは、強い結晶性を有し、銅フタロシアニンの結晶の粒子間の凝集力が強い傾向にあるため、有機溶剤および溶融樹脂などの媒体中での分散が不十分になりやすい。銅フタロシアニンの結晶の粒子の分散性が不十分である場合、トナーの着色力の低下や帯電性の低下を引き起こしやすい。
【0005】
特許文献1には、シアントナーのトナー粒子中の銅フタロシアニンの結晶の粒子の分散性を向上させる技術として、スチレンスルホン酸ナトリウム由来のユニットを有するポリマーを顔料分散剤として用いる技術が開示されている。
【0006】
特許文献2には、トナー粒子中に銅フタロシアニン誘導体を含有させ、トナー粒子中での顔料分散性を向上させる技術が開示されている。
【0007】
特許文献3および4には、顔料分散剤を使用しない技術として、顔料を結着樹脂の一部と混合してマスターバッチ化工程を行う方法や、顔料に水を含んだペースト状態で使用し、粒子の成長を抑える方法が開示されている。
【0008】
しかし、いずれの技術においても、トナー粒子中の銅フタロシアニンの結晶の粒子の分散性や、トナーの着色力および帯電性に関して、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平03−113462号公報
【特許文献2】特開2004−341397号公報
【特許文献3】特開平06−130724号公報
【特許文献4】特開平08−314180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、着色力が良好で、適度な帯電性を有するトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、結着樹脂および銅フタロシアニンの結晶を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該銅フタロシアニンの結晶が、CuKα線によるX線回折において、ブラッグ角(2θ±0.20°)の6.50°以上7.50°以下の範囲に、半値幅が0.30°以上0.34°以下の回折ピークを有することを特徴とするトナーである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、着色力が良好で、適度な帯電性を有するトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に用いられる2軸押し出し機の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のトナーは、結着樹脂および銅フタロシアニンの結晶を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該銅フタロシアニンの結晶が、CuKα線によるX線回折において、ブラッグ角(2θ±0.20°)の6.50°以上7.50°以下の範囲に、半値幅が0.30°以上0.34°以下の回折ピークを有することを特徴とする。銅フタロシアニンを上記特定の結晶にすることにより、着色力が良好なトナーを得ることができる。
【0015】
銅フタロシアニンは、6員環のベンゼンと5員環のピロールが一辺を共有して結合した複素環式化合物であるイソインドールを持つ環状化合物である。銅フタロシアニンをトナー粒子中に微分散させるために、本発明者らは、銅フタロシアニンの結晶状態に着目した。そして、銅フタロシアニンの結晶状態を制御することで、着色力が良好で、適度な帯電性を有するトナーが得られることを見出した。
【0016】
トナー粒子中の銅フタロシアニンの結晶状態は、X線回折分析において得られる銅フタロシアニンの結晶由来のメインピークの半値幅で表されると本発明者らは考えている。半値幅とは、回折ピーク強度の半分の強度におけるピークの幅である。回折ピークの半値幅は、トナー粒子中の銅フタロシアニンの結晶子の大きさと相関がある。したがって、X線回折によって得られる回折ピークの半値幅を上記範囲にすることで、トナー粒子中の銅フタロシアニンの結晶子が適度な大きさになり、着色力が良好で、適度な帯電性を有するトナーを得ることができる。結晶子の大きさが小さくなるほど、X線回折ピークはブロードな形状となり、半値幅は大きくなる。本発明の回折ピークの半値幅は、0.30°以上0.34°以下である。好ましくは、0.31°以上0.33°以下である。回折ピークの半値幅が0.30°未満である場合、銅フタロシアニンの結晶が大きい状態であるため、トナー粒子中での銅フタロシアニンの分散性が低下し、着色力や帯電性が低下してしまう場合がある。回折ピークの半値幅が0.34°を超える場合、トナー粒子中の銅フタロシアニンの結晶性が低下し、発色性が低下してしまう場合がある。
【0017】
トナー粒子中の銅フタロシアニンの結晶状態を制御する手法としては、銅フタロシアニンの強い結晶に、結晶子に変化を生じさせる化合物をドープし、さらに、機械的なシェアを加えることが1つの例として挙げられる。
【0018】
銅フタロシアニンは、結晶性を有し、また、複素環式化合物であるイソインドールを4個持つ環状化合物である。そのため、結晶性を有する化合物や、環状構造を持つ脂環式化合物との相互作用が強い。例えば、トナー粒子に結晶性ポリエステル樹脂を含有させることで、トナー粒子中の銅フタロシアニンの結晶状態を好適に制御することが可能である。また、トナー粒子に飽和脂環式化合物由来のユニットを有するスチレンアクリル系ポリマーがポリオレフィンにグラフト重合している重合体を含有させることでも、トナー粒子中の銅フタロシアニンの結晶状態を好適な状態に制御することが可能である。また、機械的なシェアを加えることで、強固な銅フタロシアニンの結晶と、結晶性ポリエステル樹脂や上記重合体との相互作用が生じやすくなる。
【0019】
[結着樹脂]
本発明に係るトナー粒子に含有させる結着樹脂としては、例えば、
ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体のスチレン系単独重合体;
スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体;
ポリ塩化ビニル;
フェノール樹脂;
天然変性フェノール樹脂;
天然樹脂変性マレイン酸樹脂;
アクリル樹脂;
メタクリル樹脂;
ポリ酢酸ビニル;
シリコーン樹脂;
ポリエステル樹脂;
ポリウレタン樹脂;
ポリアミド樹脂;
フラン樹脂;
エポキシ樹脂;
キシレン樹脂;
ポリビニルブチラール樹脂;
テルペン樹脂;
クマロン−インデン樹脂;
石油系樹脂
などが挙げられる。
【0020】
これらの中でも、着色力の向上や適度な帯電性の観点から、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0021】
ここで、ポリエステル樹脂とは、ポリエステルユニットを樹脂鎖中に有している樹脂を意味する。
【0022】
ポリエステルユニットを合成するための成分としては、具体的には、2価以上のアルコールモノマー成分と、2価以上のカルボン酸、2価以上のカルボン酸無水物および2価以上のカルボン酸エステルなどの酸モノマー成分とが挙げられる。
【0023】
2価以上のアルコールモノマー成分としては、例えば、
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビット、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン
などが挙げられる。
【0024】
これらの中でも、芳香族ジオールが好ましい。ポリエステル樹脂の合成に用いられるアルコールモノマー成分において、芳香族ジオールは、80モル%以上の割合で含有されることが好ましい。
【0025】
2価以上のカルボン酸、2価以上のカルボン酸無水物および2価以上のカルボン酸エステルなどの酸モノマー成分としては、例えば、
フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸類またはその無水物;
コハク酸、アジピン酸、セバシン酸およびアゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類またはその無水物;
炭素数6〜18のアルキル基またはアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;
フマル酸、マレイン酸およびシトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸類またはその無水物
などが挙げられる。
【0026】
これらの中でも、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸や、それらの無水物などの多価カルボン酸が好ましい。
【0027】
ポリエステル樹脂の酸価は、銅フタロシアニンの分散性の向上、トナーの適度な帯電性および着色力の向上の観点から、20mgKOH/g以下であることが好ましい。さらに好ましくは、15mgKOH/g以下である。
【0028】
ポリエステル樹脂の酸価は、ポリエステル樹脂の合成に用いるモノマーの種類や配合量を調整することにより、制御することができる。具体的には、ポリエステル樹脂合成時のアルコールモノマー成分と酸モノマー成分との比や、ポリエステル樹脂の分子量を調整することにより、制御することができる。また、エステル縮重合後、末端アルコールを多価酸モノマー(例えば、トリメリット酸)で反応させることによっても、制御することができる。
【0029】
[結晶性ポリエステル樹脂]
本発明に係るトナー粒子には、結晶性ポリエステル樹脂を含有させることが好ましい。
【0030】
トナー粒子中の結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、トナー粒子中の結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、2質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
【0031】
結晶性ポリエステル樹脂の含有量が上記範囲であれば、トナーの着色力がより向上し、帯電性がより適度になる。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が1質量部以上であれば、銅フタロシアニンの結晶との相互作用が十分に得られ、着色力がより向上する。結晶性ポリエステル樹脂の含有量が15質量部以下であれば、トナー粒子中に結晶性ポリエステル樹脂を微分散させやすくなり、銅フタロシアニン顔料の分散性も向上し、着色力がより良好になり、帯電性がより適度になる。
【0032】
結晶性ポリエステル樹脂などの結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において吸熱ピークが観測される樹脂である。
【0033】
結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸モノマー成分と2価以上のアルコールモノマー成分との縮重合反応により得ることができる。その中でも、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸との縮重合物であるポリエステル樹脂が、結晶化度が高く、銅フタロシアニンと相互作用しやすい。
【0034】
結晶性ポリエステル樹脂は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
結晶性ポリエステル樹脂は、着色力の向上および適度な帯電性の観点から、
炭素数2以上22以下の脂肪族ジオールおよび/またはこれらの誘導体、および、
炭素数2以上22以下の脂肪族ジカルボン酸および/またはこれらの誘導体
の縮重合物であることが好ましい。
【0036】
その中でも、結晶性ポリエステル樹脂は、
炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールおよび/またはこれらの誘導体、および、
炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸および/またはこれらの誘導体
の縮重合物であることがより好ましい。
【0037】
上記炭素数2以上22以下の脂肪族ジオールとしては、鎖状(好ましくは直鎖状)の脂肪族ジオールであることが、トナーの着色力の向上および適度な帯電性の観点から好ましい。
【0038】
上記炭素数2以上22以下の脂肪族ジオールとしては、例えば、
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブタジエングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール
などが挙げられる。これらの中でも、
1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール
などの直鎖脂肪族α,ω−ジオールが好ましい。
【0039】
本発明において、誘導体とは、上記縮重合により同様の樹脂構造が得られるものを意味する。誘導体としては、例えば、上記ジオールをエステル化したものなどが挙げられる。
【0040】
結晶性ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールモノマー成分には、上記炭素数2以上22以下の脂肪族ジオールおよび/またはこれらの誘導体が、50質量%以上含まれていることが好ましく、70質量%以上含まれていることがより好ましい。
【0041】
上記脂肪族ジオール以外の多価アルコールを用いることもできる。
【0042】
多価アルコールのうち、上記脂肪族ジオール以外のジオールとしては、例えば、
ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAなどの芳香族アルコール;
1,4−シクロヘキサンジメタノール
などが挙げられる。
【0043】
多価アルコールのうち、3価以上の多価アルコールとしては、
1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどの芳香族アルコール;
ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの脂肪族アルコール
などが挙げられる。
【0044】
さらに、1価のアルコールを用いてもよい。
【0045】
1価のアルコールとしては、例えば、
n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール
などが挙げられる。
【0046】
上記炭素数2以上22以下の脂肪族ジカルボン酸としては、鎖状(好ましくは直鎖状)の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。
【0047】
上記炭素数2以上22以下の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、
シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸
などが挙げられる。これらの酸無水物または低級アルキルエステルを加水分解したものなども挙げられる。
【0048】
本発明において、誘導体とは、上記縮重合により同様の樹脂構造が得られるものを意味する。誘導体としては、例えば、上記ジカルボン酸モノマー成分の酸無水物、上記ジカルボン酸モノマー成分をメチルエステル化、エチルエステル化または酸クロライド化したものなどが挙げられる。
【0049】
結晶性ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸モノマー成分には、上記炭素数2以上22以下の脂肪族ジカルボン酸および/またはこれらの誘導体が、50質量%以上含まれていることが好ましく、70質量%以上含まれていることがより好ましい。
【0050】
脂肪族ジカルボン酸以外の多価カルボン酸を用いることもできる。
【0051】
多価カルボン酸のうち、上記脂肪族ジカルボン酸以外の2価のカルボン酸としては、例えば、
イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸;
n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸などの脂肪族カルボン酸;
シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸
などが挙げられる。これらの酸無水物または低級アルキルエステルなども挙げられる。
【0052】
その他の多価カルボン酸として、3価以上の多価カルボン酸としては、例えば、
1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸などの芳香族カルボン酸;
1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパンなどの脂肪族カルボン酸
などが挙げられる。これらの酸無水物または低級アルキルエステルなどの誘導体なども挙げられる。
【0053】
さらに、1価のカルボン酸を用いてもよい。
【0054】
1価のカルボン酸としては、例えば、
安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸
などが挙げられる。
【0055】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、
カルボン酸モノマー成分とアルコールモノマー成分とをエステル化反応させる方法、
エステル交換反応させた後、減圧下または窒素ガスを導入し、常法に従って縮重合反応させる方法
などの方法によって得ることができる。
【0056】
上記エステル化またはエステル交換反応の際には、必要に応じて、硫酸、チタンブトキサイド、2−エチルヘキサン酸スズ、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウムなどのエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いることができる。
【0057】
また、上記縮重合反応の際には、例えば、チタンブトキサイド、2−エチルヘキサン酸スズ、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなどの重合触媒を用いることができる。
【0058】
エステル化もしくはエステル交換反応または重縮合反応において、得られる結晶性ポリエステル樹脂の強度を上げるために、全モノマーを一括に仕込む方法を用いてもよい。また、低分子量成分を少なくするために、2価のモノマーをまず反応させた後、3価以上のモノマーを添加して反応させる方法を用いてもよい。
【0059】
[ワックス]
本発明に係るトナー粒子には、必要に応じて、ワックスを含有させてもよい。
【0060】
ワックスとしては、例えば、
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどの炭化水素系ワックス;
酸化ポリエチレンワックスなどの、炭化水素系ワックスの酸化物またはそれらのブロック共重合物;
カルナバワックスなどの、脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;
脱酸カルナバワックスなどの、脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したもの;
パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;
ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;
ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;
ソルビトールなどの多価アルコール類;
パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸などの脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどのアルコール類とのエステル類;
リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;
メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;
エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;
m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;
ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般的に金属石鹸と呼ばれるもの);
脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;
ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールとの部分エステル化物;
植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物
などが挙げられる。
【0061】
これらのワックスの中でも、トナーの着色力および適度な帯電性の観点から、フィッシャートロプシュワックスが好ましい。
【0062】
トナー粒子中のワックスの含有量は、トナー粒子中の結着樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下であることが好ましい。より好ましくは、3.0質量部以上12質量部以下である。また、トナーの着色力の向上の観点から、示差走査熱量分析装置(DSC)で測定される昇温時の吸熱曲線において、30℃以上200℃以下の範囲に存在する最大吸熱ピークのピーク温度が、50℃以上110℃以下であることが好ましい。より好ましくは、70℃以上100℃以下である。
【0063】
[ポリオレフィンに飽和脂環式化合物由来の構造部位を有する重合体]
本発明のトナーには、必要に応じて、飽和脂環式化合物由来の構造部位を有するスチレンアクリル系ポリマーがポリオレフィンにグラフト重合している重合体を含有させてもよい。ポリオレフィンは、上述した炭化水素系ワックスから選択することが好ましい。
【0064】
スチレンアクリル系ポリマーとしては、例えば、下記式(1)で示されるユニットを有するものが挙げられる。
【0065】
【化1】
【0066】
(式(1)中、Rは、水素原子、または、メチル基を示す。Rは、飽和脂環式基を示す。)
上記式(1)中のRの飽和脂環式基としては、銅フタロシアニンとの相互作用を強める観点から、飽和脂環式炭化水素基が好ましい。より好ましくは、炭素数3以上18以下の飽和脂環式炭化水素基であり、さらに好ましくは、炭素数4以上12以下の飽和脂環式炭化水素基である。
【0067】
飽和脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロアルキル基、縮合多環炭化水素基、橋かけ環炭化水素基、スピロ炭化水素基などが挙げられる。
【0068】
飽和脂環式基としては、例えば、
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、t−ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、トリシクロデカニル基、デカヒドロ−2−ナフチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、ペンタシクロペンタデカニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロペンタニル基
などが挙げられる。
【0069】
また、飽和脂環式基は、置換基として、アルキル基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基などを有してもよい。アルキル基としては、炭素数1以上4以下のアルキル基が、着色力の向上や適度な帯電性の観点から好ましい。
【0070】
飽和脂環式基のうち、シクロアルキル基、縮合多環炭化水素基、橋かけ環炭化水素基が好ましく、炭素数3以上18以下のシクロアルキル基、置換または無置換のジシクロペンタニル基、置換または無置換のトリシクロペンタニル基がより好ましい。さらには、炭素数4以上12以下のシクロアルキル基が好ましく、炭素数6以上10以下のシクロアルキル基が、銅フタロシアニンとの相互作用の効果の向上の観点からより好ましい。
【0071】
置換基を2つ以上有する場合、置換基は同一でもあってもよいし、異なっていてもよい。
【0072】
上記スチレンアクリル系ポリマーは、飽和脂環式化合物由来の構造部位を有するビニル系モノマー(a)の単独重合体でもよいし、2種以上のビニル系モノマー(a)の共重合体であってもよいし、その他のモノマー(b)との共重合体であってもよい。
【0073】
ビニル系モノマー(a)としては、例えば、
シクロプロピルアクリレート、シクロブチルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルアクリレート、シクロプロピルメタクリレート、シクロブチルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロオクチルメタクリレート、ジヒドロシクロペンタジエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート
などが挙げられる。
【0074】
これらの中でも、着色力の向上および適度な帯電性の観点から、
シクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロオクチルメタクリレート
が好ましい。
【0075】
その他のモノマー(b)としては、例えば、
スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−アセトキシスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、フェニルスチレン、ベンジルスチレンなどのスチレン系モノマー;
メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸のアルキルエステル(アルキルの炭素数は、1以上18以下であることが好ましい。);
酢酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;
ビニルメチルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー;
塩化ビニルなどのハロゲン元素含有ビニル系モノマー;
ブタジエン、イソブチレンなどのジエン系モノマー
などが挙げられる。これらの中でもスチレン、ブチルアクリレートが好ましい。
【0076】
[着色剤]
本発明に係るトナー粒子には、着色剤として、上記銅フタロシアニンの結晶が含有される。
【0077】
トナー粒子中の上記銅フタロシアニンの結晶の含有量は、トナー粒子中の結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0078】
[荷電制御剤]
本発明に係るトナー粒子には、必要に応じて、荷電制御剤を含有させてもよい。荷電制御剤としては、無色でトナーの帯電スピードが速く、一定の帯電量を安定して保持できる観点から、芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
【0079】
ネガ系荷電制御剤としては、例えば、
サリチル酸金属化合物、
ナフトエ酸金属化合物、
ジカルボン酸金属化合物、
スルホン酸またはカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、
スルホン酸塩またはスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、
カルボン酸塩またはカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、
ホウ素化合物、
尿素化合物、
ケイ素化合物、
カリックスアレーン
などが挙げられる。
【0080】
荷電制御剤は、トナー粒子に対して内添してもよいし、外添してもよい。
【0081】
トナー粒子中の荷電制御剤の含有量は、トナー粒子中の結着樹脂100質量部に対して、0.2質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0082】
[外添剤]
本発明のトナーには、必要に応じて、流動性の向上および摩擦帯電量の調整の観点から、外添剤を含有させてもよい。
【0083】
外添剤としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、チタン酸ストロンチウムなどの無機微粒子が好ましい。無機微粒子は、シラン化合物、シリコーンオイルまたはそれらの混合物などの疎水化剤で疎水化処理されていることが好ましい。
【0084】
外添剤の比表面積は、10m/g以上50m/g以下であることが、外添剤の埋め込みの抑制の観点から好ましい。
【0085】
また、トナー中の外添剤の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
【0086】
トナー粒子と外添剤との混合には、例えば、ヘンシェルミキサーなどの混合機を用いることができる。
【0087】
本発明のトナーは、長期にわたり安定した画像が得る観点から、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤のトナーとして用いることが好ましい。
【0088】
磁性キャリアとしては、例えば、
表面を酸化した鉄粉、
未酸化の鉄粉、
鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、希土類などの金属粒子、
上記金属の合金粒子、
上記金属の酸化物粒子、
フェライトなどの磁性体、
磁性体と、磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)
などが挙げられる。
【0089】
[製造方法]
トナー粒子の製造方法としては、トナー粒子中の銅フタロシアニンの結晶性の制御および分散性の向上の観点から、溶融混練法を採用することが好ましい。
【0090】
溶融混練法とは、結着樹脂および着色剤(本発明の場合、銅フタロシアニン。)、必要に応じて、ワックス、ワックス分散剤などを含有する混合物を溶融および混練して溶融混練物を得る工程(以下、単に「溶融混練工程」ともいう。)を含む、トナー粒子の製造方法である。
【0091】
トナー粒子が溶融混練工程を経て製造されることで、熱とシェアによって、銅フタロシアニンの結晶性が変化する。
【0092】
以下、溶融混練法を用いたトナー粒子の製造手順について説明する。
【0093】
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、例えば、結着樹脂および着色剤(銅フタロシアニン)、ならびに、必要に応じて、ワックス、荷電制御剤などの成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置としては、例えば、
ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、メカノハイブリッド(日本コークス工業(株)製)
などが挙げられる。
【0094】
次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中に着色剤(銅フタロシアニン)などを分散させる。溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーなどのバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。連続生産できる優位性から、1軸または2軸押し出し機が主流となっている。例えば、
KTK型2軸押し出し機((株)神戸製鋼所製)、
TEM型2軸押し出し機(東芝機械(株)製)、
PCM混練機((株)池貝製)、
2軸押し出し機(ケイ・シー・ケイ社製)、
コ・ニーダー(ブス社製)、
ニーデックス(日本コークス工業(株)製)
などが挙げられる。
【0095】
溶融混練することによって得られる混練物は、2本ロールなどで圧延したり、冷却工程で水などによって冷却したりしてもよい。
【0096】
後述の実施例で用いた混練機は、同方向2軸押し出し機である。
【0097】
2軸押し出し機は、温度を一定に保つ加熱シリンダーであるバレルの中に2本のパドルと呼ばれる混練軸が通っている混練機である。2軸押し出し機の一例を図1に示す。
【0098】
原料混合物は、混練軸の一端から供給され、加熱されて溶融状態になりつつ混練軸の回転により混練されて、もう一端より押し出される。途中に脱気を主な目的とするベント孔が設置されていることもある。
【0099】
混練軸の断面は、プロペラ状のものや、三角形のものなどが採用される。常に一方の先端が他方を擦るように回転するように、位相をずらせてセットされている。この構造により、混練軸およびバレル壁に混練物が付着することを抑えつつ、前方へ送るセルフクリーニング作用を持つ。
【0100】
2本の混練軸の回転方向は、同方向であることが好ましい。混練軸を同方向に回転させることで、適度なせん断力を加えることができる。適度なせん断力を加えることができると、銅フタロシアニンの分散が均一に行われ、銅フタロシアニンの結晶成長を抑えることができる。混練軸の回転が異方向である場合、せん断力が強すぎて、混練時に自己発熱することがある。自己発熱すると、銅フタロシアニンが結晶成長してしまい、着色力が低下する場合がある。
【0101】
混練軸は、大別して2種類の部分から成り立っており、1つは送りスクリュー部で、もう1つはニーディング部である。スクリュー部とは、混練物を加熱しつつ前方へ送る機能を持つ。シリンダー内における混練物の粘度が高い場合には、スクリュー部の壁と混練物との摩擦によるせん断力により混練されるが、粘度が低い場合には、ほとんど混練されない。ニーディング部は、混練物を前方へ送る効果はほとんどなく、混練物が滞留し、充満する。
【0102】
本発明のトナーを製造する際は、ニーディング部のバレル設定温度(Ta)と混練物の温度(Tb)の差(Tb−Ta)が30℃以上90℃以下にすることが好ましく、40℃以上70℃以下にすることがより好ましい。混練物の温度は、バレルの設定温度(図1における、C0、C1、C2、C3=Ta、C4)、混練軸の回転数、および、フィード(供給)量によって制御できる。Tb−Ta(℃)が30℃未満である場合、ニーディング部で行われる混練軸の回転に伴う圧縮、延伸の効果が少ない。そのため、銅フタロシアニンの結晶にかかるシェアが弱くなる。Tb−Ta(℃)が90℃を超える場合、銅フタロシアニンの結晶にかかるシェアが強すぎて、結晶が崩れやすくなる。結晶が崩れると、トナーの発色性が低下してしまう場合がある。
【0103】
混練物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、粉砕機で粗粉砕した後、さらに、微粉砕機で微粉砕する。粗粉砕を行う粉砕機としては、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルなどが挙げられる。微粉砕を行う微粉砕機としては、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業(株)製)、スーパーローター(日清エンジニアリング(株)製)、ターボ・ミル(ターボ工業(株)製)、エアージェット方式による微粉砕機などが挙げられる。
【0104】
その後、必要に応じて、分級機や篩分機を用いて分級し、トナー粒子を得る。分級機や篩分機としては、例えば、
慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業(株)製)、
遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン(株)製)、
TSPセパレーター(ホソカワミクロン(株)製)、
ファカルティ(ホソカワミクロン(株)製)
などが挙げられる。
【0105】
その後、必要に応じて、例えば、トナーに流動性を付与したり、帯電性を適度にしたりするために、無機微粒子や樹脂粒子などの外添剤を加えてトナー粒子と混合(外添)することにより、トナーを得る。混合装置としては、攪拌部材を有する回転体と、攪拌部材と間隙を有して設けられた本体ケーシングとを有する混合装置によって行うことができる。
【0106】
混合装置としては、例えば、
ヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製)、
スーパーミキサー((株)カワタ製)、リボコーン((株)大川原製作所製)、
ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス、ノビルタ(ホソカワミクロン(株)製)、スパイラルピンミキサー(太平洋機工(株)製)、
レーディゲミキサー((株)マツボー製)
などが挙げられる。特に、外添剤とトナー粒子とを均一に混合し、外添剤の凝集体をほぐすためには、ヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製)が好適である。
【0107】
混合条件としては、例えば、処理量、撹拌軸回転数、撹拌時間、撹拌羽根形状、槽内温度などが挙げられる。
【0108】
添加剤の粗大凝集物が、得られたトナー中に遊離して存在する場合などには、必要に応じて、篩分機などを用いてもよい。
【0109】
以下、本発明におけるトナーおよび原材料の各種物性の測定方法について説明する。
【0110】
[樹脂のピーク分子量(Mp)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)の測定方法]
ピーク分子量(Mp)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
【0111】
まず、室温で24時間かけて、試料(樹脂)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター(商品名:マエショリディスク、東ソー(株)製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調製する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
【0112】
装置:HLC8120GPC(検出器:RI)(東ソー(株)製)
カラム:ShodexKF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工(株)製)
溶離液:THF
流速:1.0mL/分
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10mL
試料の分子量の算出にあたっては、
標準ポリスチレン樹脂(商品名:TSKスタンダードポリスチレンF−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500、東ソー(株)製)
を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
【0113】
[樹脂の軟化点の測定方法]
樹脂の軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメーター(商品名:流動特性評価装置フローテスターCFT−500D、(株)島津製作所製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダーに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダー底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
【0114】
本発明においては、「流動特性評価装置フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。
【0115】
1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax−Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとなるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。
【0116】
測定試料は、約1.0gの樹脂を、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(商品名:NT−100H、エヌピーエーシステム(株)製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
【0117】
CFT−500Dの測定条件は、以下のとおりである。
試験モード:昇温法
開始温度:40℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/分
ピストン断面積:1.000cm
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
【0118】
[樹脂の酸価の測定方法]
酸価は、試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムの質量[mg]である。結着樹脂の酸価は、JIS K0070−1992に準じて測定される。具体的には、以下の手順に従って測定する。
【0119】
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
【0120】
特級水酸化カリウム7gを5mLの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガスなどに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、濾過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。上記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1mol/L塩酸25mLを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、上記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した上記水酸化カリウム溶液の量から求める。上記0.1mol/L塩酸は、JIS K8001−1998に準じて作成されたものを用いる。
【0121】
(2)操作
(A)本試験
試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解させる。次いで、指示薬として上記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、上記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
【0122】
(B)空試験
試料を用いない(すなわち、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする。)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
【0123】
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
【0124】
[樹脂の水酸基価の測定方法]
水酸基価とは,試料1gをアセチル化するとき、ヒドロキシ基(水酸基)と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの質量[mg]である。結着樹脂の水酸基価はJIS K0070−1992に準じて測定される。具体的には、以下の手順に従って測定する。
【0125】
(1)試薬の準備
特級無水酢酸25gをメスフラスコ100mLに入れ、ピリジンを加えて全量を100mLにし、十分に振りまぜてアセチル化試薬を得る。得られたアセチル化試薬は、湿気、炭酸ガスなどに触れないように、褐色びんにて保存する。
【0126】
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
【0127】
特級水酸化カリウム35gを20mLの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガスなどに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、濾過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。上記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.5mol/L塩酸25mLを三角フラスコに取り、上記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、上記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した上記水酸化カリウム溶液の量から求める。上記0.5mol/L塩酸は、JIS K8001−1998に準じて作成されたものを用いる。
【0128】
(2)操作
(A)本試験
粉砕した結着樹脂の試料1.0gを200mL丸底フラスコに精秤し、これに上記アセチル化試薬5.0mLをホールピペットを用いて正確に加える。この際、試料がアセチル化試薬に溶解しにくいときは、特級トルエンを少量加えて溶解させる。
【0129】
フラスコの口に小さな漏斗を載せ、約97℃のグリセリン浴中にフラスコ底部約1cmを浸して加熱する。このとき、フラスコの首の温度が浴の熱を受けて上昇するのを防ぐため、丸い穴をあけた厚紙をフラスコの首の付根にかぶせることが好ましい。
【0130】
1時間後、グリセリン浴からフラスコを取り出して放冷する。放冷後、漏斗から水1mLを加えて振り動かして無水酢酸を加水分解する。さらに、完全に加水分解するため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱する。放冷後、エチルアルコール5mLで漏斗およびフラスコの壁を洗う。
【0131】
指示薬として上記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、上記水酸化カリウム溶液で滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
【0132】
(B)空試験
結着樹脂の試料を用いない以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
【0133】
(3)得られた結果を下記式に代入して、水酸基価を算出する。
A=[{(B−C)×28.05×f}/S]+D
ここで、A:水酸基価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)、D:結着樹脂の酸価(mgKOH/g)である。
【0134】
[ワックスおよび結晶性ポリエステル樹脂の最大吸熱ピークの測定]
ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度は、示差走査熱量分析装置(商品名:Q1000、TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。装置検出部の温度補正は、インジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正については、インジウムの融解熱を用いる。
【0135】
具体的には、試料約5mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30℃〜200℃の間で、昇温速度10℃/分で測定を行う。測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での30℃以上200℃以下の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを示す温度を、ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度とする。
【0136】
[X線回折の測定方法]
X線回折測定は、測定装置(商品名:RINT−TTRII、(株)リガク製)と、装置付属の制御ソフトおよび解析ソフトを用いる。
【0137】
測定条件は以下のとおりである。
X線:Cu/50kV/300mA
ゴニオメーター:ローター水平ゴニオメーター(TTR−2)
アタッチメント:標準試料ホルダー
発散スリット:解放
発散縦制限スリット:10.00mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
カウンタ:シンチレーションカウンタ
走査モード:連続
スキャンスピード:4.0000°/分.
サンプリング幅:0.0200°
走査軸:2θ/θ
走査範囲:10.0000°〜40.0000°
【0138】
続いて、試料板にトナーをセットして測定を開始する。CuKα特性X線において、ブラッグ角(2θ±0.20°)の3.00°以上35.00°以下の範囲で測定を行う。得られたスペクトルから、2θが6.50°以上7.50°以下におけるスペクトルの半値幅を、トナー中の銅フタロシアニンの結晶性の指標とした。
【実施例】
【0139】
以下、実施例に基づいて具体的に本発明について説明する。
【0140】
[結着樹脂1の製造例]
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 76.9質量部(0.167mol)、
テレフタル酸 24.1質量部(0.145mol)、
アジピン酸 8.0質量部(0.054mol)、および、
チタンテトラブトキシド 0.5質量部
をガラス製4Lの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサーおよび窒素導入管を取り付け、マントルヒーター内においた。
【0141】
次に、フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応させた(第1反応工程)。
【0142】
その後、無水トリメリット酸1.2質量部(0.006mol)を添加し、180℃で1時間反応させ(第2反応工程)、結着樹脂1を得た。
【0143】
結着樹脂1の酸価は、5mgKOH/gであり、水酸基価は、65mgKOH/gであった。また、GPCによる分子量は、重量平均分子量(Mw)が8,000、数平均分子量(Mn)が3,500、ピーク分子量(Mp)が5,700であった。また、軟化点は、90℃であった。
【0144】
[結着樹脂2の製造例]
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 71.3質量部(0.155mol)、
テレフタル酸 24.1質量部(0.145mol)、および、
チタンテトラブトキシド 0.6質量部
をガラス製4Lの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサーおよび窒素導入管を取り付け、マントルヒーター内においた。
【0145】
次に、フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた(第1反応工程)。
【0146】
その後、無水トリメリット酸5.8質量部(0.030モル%)を添加し、180℃で10時間反応させ(第2反応工程)、結着樹脂2を得た。
【0147】
結着樹脂2の酸価は、15mgKOH/gであり、水酸基価は、7mgKOH/gであった。また、GPCによる分子量は、重量平均分子量(Mw)が200,000、数平均分子量(Mn)が5,000、ピーク分子量(Mp)が10,000であった。また、軟化点は、130℃であった。
【0148】
[結晶性ポリエステル樹脂1の製造例]
ヘキサンジオール 33.9質量部(0.29mol、多価アルコール総モル数に対して100.0モル%)、および、
ドデカン二酸 66.1質量部(0.29mol、多価カルボン酸総モル数に対して100.0モル%)
を秤量し、冷却管、攪拌機、窒素導入管および熱電対のついた反応槽に入れた。
【0149】
次に、フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
【0150】
その後、2−エチルヘキサン酸スズ0.5質量部を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、200℃に維持したまま、4時間反応させた。
【0151】
その後、反応槽内を5kPa以下に減圧して200℃で3時間反応させることにより、結晶性ポリエステル樹脂1を得た。
【0152】
[結晶性ポリエステル樹脂2および3の製造例]
結晶性ポリエステル樹脂1の製造例において、脂肪族ジオールおよび脂肪族ジカルボン酸を表1に示すように変更した以外は、結晶性ポリエステル樹脂1の製造例と同様にして、結晶性ポリエステル樹脂2および3を製造した。
【0153】
【表1】
【0154】
[重合体1の製造例]
温度計および攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン300部および炭化水素ワックス(軟化点:90℃)10部を入れて炭化水素ワックスを溶解させた。そして、窒素置換後、スチレン68.9部、α−メチルスチレン7.65部、メタクリル酸シクロヘキシル13.5部およびキシレン250部の混合溶液を180℃で3時間滴下し、これらを重合させた。さらに、この温度で30分間保持した。次に、脱溶剤を行い、重合体1を得た。
【0155】
[重合体2〜4の製造例]
重合体1の製造例において、表2に示す原材料を変更した以外は、重合体1の製造例と同様にして、重合体2〜4を製造した。
【0156】
【表2】
【0157】
[トナー1の製造例]
結着樹脂1 70.0質量部、
結着樹脂2 30.0質量部、
結晶性ポリエステル樹脂1 7.5質量部、
フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピークのピーク温度:90℃) 5.0質量部、
重合体1 5.0質量部、および、
C.I.ピグメントブルー15:3 5.0質量部
をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20秒−1、回転時間5分で混合した。その後、表3中の溶融混練条件1(混練軸の設定温度C0:30℃、C1:70℃、C2:90℃、C3=ニーディング部のバレル設定温度Ta:90℃、C4:90℃、混練軸の回転数:400rpm、供給量:20kg/時。)になるように設定した2軸押し出し機(商品名:PCM−70型、(株)池貝製)にて混練した。混練物の温度Tbは、ハンディタイプの温度計(商品名:HA−200E、安立計器(株)製)を用いて直接計測した。得られた混練物の温度Tbは、150℃であった。
【0158】
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。
【0159】
得られた粗砕物を、機械式粉砕機(商品名:T−250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。
【0160】
さらに、回転型分級機(商品名:200TSP、ホソカワミクロン(株)製)を用い、分級を行い、トナー粒子を得た。回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン(株)製)の運転条件は、分級ローター回転数を50.0秒−1とした。
【0161】
得られたトナー粒子は、重量平均粒径(D4)が6.2μmであった。
得られたトナー粒子100質量部に、ヘキサメチルジシラザン20質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径が10nmの疎水性シリカ微粒子0.8質量部を添加した。そして、ヘンシェルミキサー(商品名:FM−75型、三井鉱山(株)製)を用い、回転数30秒−1および回転時間10分の条件でこれらを混合して、トナー1を得た。
【0162】
[トナー2〜18の製造例]
表3および表4に示すように、溶融混練条件、結晶性ポリエステル樹脂および重合体の種類と、それぞれの使用量を変更した以外は、トナー1の製造例と同様にして、トナー2〜18を製造した。
【0163】
【表3】
【0164】
【表4】
【0165】
[磁性コア粒子1の製造例]
・工程1(秤量・混合工程):
Fe 62.7質量部
MnCO 29.5質量部
Mg(OH) 6.8質量部
SrCO 1.0質量部
を秤量した。その後、これらを直径1/8インチのステンレス鋼のビーズを用いた乾式振動ミルに入れ、5時間粉砕し、混合した。
【0166】
・工程2(仮焼成工程):
得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去した。次に、目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した。その後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)で、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。
【0167】
得られた仮焼フェライトの組成は、以下のとおりである。
【0168】
(MnO)(MgO)(SrO)(Fe
上記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393
・工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した。その後、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100質量部に対して水を30質量部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。そのスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
【0169】
・工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、仮焼フェライト100質量部に対して分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0質量部、および、結着材料としてポリビニルアルコール2.0質量部を添加した。そして、スプレードライヤー(大川原化工機(株)製)で、球状粒子に造粒した。得られた粒子の粒度を調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
【0170】
・工程5(焼成工程):
焼成雰囲気を制御するために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温した。その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
【0171】
・工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した。その後、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)37.0μmの磁性コア粒子1を得た。
【0172】
[被覆樹脂1の調製]
シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量部、
メチルメタクリレートモノマー 0.2質量部、
メチルメタクリレートマクロモノマー(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー) 8.4質量部、
トルエン 31.3質量部、
メチルエチルケトン 31.3質量部、および、
アゾビスイソブチロニトリル 2.0質量部
のうち、シクロヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、メチルエチルケトンを、還流冷却器、温度計、窒素導入管および攪拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに添加した。そして、窒素ガスを導入して窒素雰囲気にした後、80℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し、これらを重合させた。
【0173】
得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別した。その後、真空乾燥して被覆樹脂1を得た。得られた被覆樹脂1の30質量部を、トルエン40質量部およびメチルエチルケトン30質量部に溶解させて、重合体溶液1(固形分30質量%)を得た。
【0174】
[被覆樹脂溶液1の調製]
重合体溶液1(樹脂固形分濃度30%) 33.3質量部
トルエン 66.4質量部
カーボンブラック(一次粒径25nm、窒素吸着比表面積94m/g、DBP吸油量75mL/100g)(商品名:Regal330、キャボット社製) 0.3質量部
を、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで1時間分散処理を行った。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過し、被覆樹脂溶液1を得た。
【0175】
[磁性キャリア1の製造例]
(樹脂被覆工程):
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに被覆樹脂溶液1を充填コア粒子1の100質量部に対して樹脂成分として2.5質量部になるように投入した。投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒を一定以上(80質量%)揮発させた。その後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後、冷却した。
【0176】
得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)38.2μmの磁性キャリア1を得た。
【0177】
[実施例1〜15および比較例1〜3]
トナーの濃度が9質量%になるように、V型混合機(商品名:V−10型、(株)徳寿製作所製)を用い、0.5秒−1および回転時間5分でトナー1および磁性キャリア1を混合し、二成分現像剤1を得た。
【0178】
また、組み合わせるトナーと磁性キャリアを表5に示すように変更して、二成分現像剤2〜18を得た。
【0179】
【表5】
【0180】
二成分現像剤1〜18を実施例1〜15および比較例1〜3の二成分現像剤として、以下の評価を行った。
【0181】
実施例1〜15および比較例1〜3の評価結果を表6に示す。
【0182】
(トナーの着色力の評価方法)
画像形成装置として、キヤノン(株)製のフルカラー複写機(商品名:image RUNNER ADVANCE C5255)の改造機を用い、シアンステーションの現像器に二成分現像剤1を投入して、評価を行った。
【0183】
評価環境は、常温常湿環境下(温度23℃、相対湿度50%)とした。評価紙は、コピー用普通紙(商品名:GFC−081、A4紙、坪量81.4g/m、キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)を用いた。
【0184】
まず、上記評価環境(常温常湿環境)において、紙上のトナーの載り量を変化させて、画像濃度と紙上のトナーの載り量との関係を調べた。
【0185】
次いで、FFH画像(ベタ部)の画像濃度が1.40になるように調整し、画像濃度が1.40になる際のトナー載り量を求めた。
【0186】
FFH画像とは、256階調を16進数で表示した値であり、00Hを1階調目(白地部)、FFHを256階調目(ベタ部)とする。
【0187】
画像濃度は、X−Riteカラー反射濃度計(商品名:500シリーズ:X−Rite社製)を使用して測定した。
【0188】
上記トナー載り量(mg/cm)から、以下の基準でトナーの着色力を評価した。評価結果を表6に示す。
【0189】
(評価基準)
A:0.35未満
B:0.35以上0.50未満
C:0.50以上0.65未満
D:0.65以上
【0190】
(非画像部へのカブリの評価方法)
画像形成装置として、上記と同様の改造機を用い、シアンステーションの現像器に二成分現像剤1を投入し、評価を行った。
【0191】
評価環境は、常温常湿環境下(温度23℃、相対湿度50%)および高温高湿環境下(温度30℃、相対湿度80%)とした。評価紙は、上記と同様のコピー用普通紙を用いた。
【0192】
各環境における、耐久試験後の白地部のカブリを測定した。
【0193】
画像出力前の評価紙の平均反射率Dr(%)をリフレクトメーター(商品名:REFLECTOMETER MODEL TC−6DS、(有)東京電色製)によって測定した。
【0194】
耐久試験後(50000枚目)の00H画像部(白地部)の反射率Ds(%)を測定した。得られたDrおよびDsより、下記式を用いてカブリ値(%)を算出した。得られたカブリを以下の評価基準に従って評価した。
カブリ値(%)=Dr(%)−Ds(%)
評価結果を表6に示す。
【0195】
(評価基準)
A:0.5%未満(目視でもカブリは確認できない。)
B:0.5%以上1.0%未満(カブリ値がAより大きいが、目視ではカブリは確認できない。)
C:1.0%以上2.0%未満(目視でカブリはわずかにしか確認できない。)
D:2.0%以上(カブリが目視で確認できる。)
【0196】
【表6】
図1