(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971636
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】結束具
(51)【国際特許分類】
B65D 63/10 20060101AFI20211111BHJP
A44B 15/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
B65D63/10 P
A44B15/00
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-109357(P2017-109357)
(22)【出願日】2017年6月1日
(65)【公開番号】特開2018-203323(P2018-203323A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108524
【氏名又は名称】ヘラマンタイトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】荒 洋造
(72)【発明者】
【氏名】児嶋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】谷口 雄一
【審査官】
吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−219956(JP,A)
【文献】
特開2001−315840(JP,A)
【文献】
特開2008−063743(JP,A)
【文献】
特開2004−360432(JP,A)
【文献】
特開2009−092151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 63/10
A44B 15/00
A47G 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受容体と、前記受容体に一端部が連結された可撓性の長体と、前記長体の自由端である他端部に設けられた挿入体を有し、前記挿入体を前記受容体に挿入して解除不能に係合させる結束具において、
前記受容体と前記挿入体のいずれか一方に形成され、前記受容体と前記挿入体が係合した状態において前記受容体と前記挿入体が接する接触面を外部から視認できないように覆うカバー部を有し、
前記結束具は、前記受容体と前記挿入体が係合した状態において環状となり、
前記挿入体は、前記環状を含む面に交差する方向を前記受容体に対する挿入方向とする突出部を有し、
前記受容体は、挿入された前記突出部に係合する受け部を有し、
前記カバー部は、前記長体を撓ませることにより生じた前記接触面の隙間を外部から視認できなくする前記受容体と前記挿入体の少なくとも何れか一方の所定位置に形成されることを特徴とする結束具。
【請求項2】
前記受容体と前記挿入体の一方に設けられた凸部と、
前記受容体と前記挿入体の他方に設けられ、前記凸部と嵌合する孔部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の結束具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーホルダーまたはキーリングのようにキー等を束ねて保持するために使用される結束具に係り、特にキー等を保持した状態で閉ループ状に閉じると、容易に開放してキー等を取り外すことができなくなる安全性の高い結束具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、物品を保持するためのリングの発明を開示している。特許文献1の記載によれば、金属や硬質の樹脂から成る従来のリングはコスト高であったり、物品の着脱を行いにくいものがあり、物品とともに収納した際に邪魔になることがあるという不具合があり、特許文献1で提案されたリングの発明は、係る課題を解決するものとされている。
【0003】
すなわち、特許文献1に記載されたリングは、柔軟性を有する樹脂製の線材から成り、少なくとも両端部が重合していると共に、重合部分に互いに係脱可能な突部1と嵌合部2を設けたリングR1としたものである。この構成によれば、低コストで製造することができると共に、物品の着脱も容易であり、物品とともに収納した際に邪魔になるような不具合は解消されるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−242889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
キーホルダーまたはキーリングのようにキー等を束ねて保持するために使用される閉ループ構造の結束具においては、管理しているキーを安全に保管・保持する必要上、一旦、キー等を保持状態として閉ループ状に閉じると、容易に開放してキー等を取り外すことができなくなる構造であることが好ましい場合がある。このような安全性の高い構造であれば、例えば係る構造の結束具にキー等を保持させた状態で管理担当者に預けた場合、仮に管理担当者が何らかの理由でキー等を結束具から取り外そうとしても、構造上、結束具を解除することができず、結束具からキー等が外されてしまう恐れはない。ところが、前記特許文献1を始めとする従来の結束具の発明では、このような課題を効果的に解決するものが知られていなかった。
【0006】
本発明は、以上説明した従来の技術における課題を解決することを目的としており、キー等の貴重物品等を閉ループ構造で保持できる結束具であって、閉ループ構造を保持できる確実な係止構造を備えており、キー等を取り外そうとしても、キーの閉ループ構造を容易には解除できない安全性の高い結束具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された結束具は、
受容体と、前記受容体に一端部が連結された可撓性の長体と、前記長体の自由端である他端部に設けられた挿入体を有し、前記挿入体を前記受容体に挿入して解除不能に係合させる結束具において、
前記受容体と前記挿入体のいずれか一方に形成され、前記受容体と前記挿入体が係合した状態において前記受容体と前記挿入体が接する接触面を外部から視認できないように覆うカバー部を有
し、
前記結束具は、前記受容体と前記挿入体が係合した状態において環状となり、
前記挿入体は、前記環状を含む面に交差する方向を前記受容体に対する挿入方向とする突出部を有し、
前記受容体は、挿入された前記突出部に係合する受け部を有し、
前記カバー部は、前記長体を撓ませることにより生じた前記接触面の隙間を外部から視認できなくする前記受容体と前記挿入体の少なくとも何れか一方の所定位置に形成されることを特徴としている。
【0009】
請求項
2に記載された結束具は、請求項
1に記載の結束具において、
前記受容体と前記挿入体の一方に設けられた凸部と、
前記受容体と前記挿入体の他方に設けられ、前記凸部と嵌合する孔部と、
を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載された結束具によれば、係合状態にある受容体と挿入体の接触面に、外部からドライバ等の工具を差し入れようとしても、カバー部がそれを邪魔するので、受容体と挿入体の係合状態を不正に解除することを確実に防止できる。
また、長体を挿入方向に撓ませる等して挿入体と受容体とを離間させて接触面に空隙を設け、ここにドライバ等の工具を差し入れようとしても、カバー部が接触面の空隙を覆うため、係る行為を邪魔するので、係合状態を不正に解除することを確実に防止できる。
【0012】
請求項
2に記載された結束具によれば、受容体と挿入体を係合状態とした場合、受容体と挿入体が互いに固定される係合点が、受容体の受け部と挿入体の突出部が係合する部位と、凸部と孔部とが嵌合する部位の2点となる。このように、係合状態にある受容体と挿入体は2点で固定状態に保持されることになるので、長体を挿入方向に撓ませる等して挿入体と受容体の接触面に空隙を生じさせる操作を行いにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】開放した状態の第1実施形態の結束具を、挿入体が挿入される受容体の入口の側を手前側として示した斜視図である。
【
図2】挿入体を受容体に係合して閉ループ状とした第1実施形態の結束具を、挿入体が挿入される受容体の入口の側を手前側として示した斜視図である。
【
図3】
図2のA−A切断線における模式的な断面図である。
【
図4】第2実施形態の結束具において、第1実施形態における
図2のA−A切断線と同等の位置における模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1実施形態を
図1〜
図3を参照して説明する。
図1及び
図2を参照して第1実施形態の結束具1の概要を説明する。
第1実施形態の結束具1は、通常のキーホルダーまたはキーリングのように、1または2以上のキー等の貴重物品等を保持するために使用される道具である。この結束具1は、特にキー等を保持させた状態で一旦閉ループ状に閉じると、その状態が強固に固定され、手作業であっても器具を使用した操作であっても、いずれの手法をもってしても容易には開放できず、保持しているキー等を簡単には取り外すことができない安全性の高い構造を有している。
【0015】
図1及び
図2に示すように、この結束具1は、略円筒状の受容体2と、受容体2の側周面に一端部が連結され、略円形に撓んだ可撓性の長体3と、長体3の自由端である他端部に設けられた挿入体4とを有している。これらの各部は、弾性を有する樹脂を材料として一体に構成されているが、各部を別部品とし、長体3等、弾性変形が必要な部品、部分のみを樹脂等の弾性材料で構成して組み立ててもよい。
【0016】
詳細は後述するが、
図1に示すように、長体3が開いた状態の結束具1において、キー等の頭に設けられたキーリング孔またはキーリング孔に挿通したストラップの環状部5に長体3を挿通し、
図2に示すように挿入体4を受容体2に挿入して係合することで全体を閉ループの環状とし、図示しないキー等を結束具1に保持させた状態とすることができる。
【0017】
図3を参照して、受容体2と挿入体4に設けられた係合構造の詳細を説明する。
挿入体4は、その先端側の下面に突出部6を有している。この突出部6は、環状の長体3を含む平面と交差する方向(
図3において上下方向の下向き)を、前記受容体2に対する挿入方向としている。この突出部6の下端には、先端側に向けられた第1係止突起7が設けられている。また、挿入体4は、後端側の下面に凸部8を有している。凸部8の前記受容体2に対する挿入方向は突出部6と同じである。この凸部8の下端には、突出部6の第1係止突起7とは逆向きに突出した第2係止突起9が設けられている。
【0018】
図3に示すように、受容体2は、挿入体4の突出部6に係合する受け部10を有している。この受け部10は、突出部6が挿入される挿入孔11と、挿入孔11の長体3側の内面に形成され、挿入体4の突出部6の第1係止突起7とは逆方向に向けられた第1係止部12を有している。また、受容体2は、長体3側とは反対側に孔部13を有している。孔部13の内面には、挿入体4の凸部8の第2係止突起9とは逆方向に向けられた第2係止部14が設けられている。
【0019】
図3に示すように、挿入体4の長体3側の端面には、長体3との接続位置よりもさらに受容体2側に向けて延設されたカバー部15が設けられている。このカバー部15は、受容体2と挿入体4が係合した状態において、受容体2と挿入体4が接する接触面20(
図3において破線で囲んで示す)を外部から視認できないように覆うことができる。なお、接触面20は、
図1に示されるように、受容体2の略円筒形状を、挿入体4の形状に合わせて一部切り欠いたような形状からなる凹面と、受容体2と挿入体4が係合した状態においてこの凹面に挿入体4が接する凸面とからなる。受容体2の凹面は、挿入体4を係合する際に案内する案内部として機能し、挿入体4側の凸面はこの案内部に案内される被案内部として機能する。
【0020】
第1実施形態の結束具1にキーを保持する手順を説明する。
まず、
図1に示すように、キーのリング孔に挿通したストラップの環状部5に対し、挿入体4及び長体3を挿通する。
図1に示すように、挿入体4が受容体2に係合しておらず、長体3がまだ開放されている状態では、長体3は円形よりもやや拡大した形状をしており、挿入体4と受容体2の間には十分な隙間がある。このため、ストラップの環状部5を長体3に挿通する操作は容易に行える。
【0021】
次に、
図2に示すように、長体3を円形に近い形状となるよう縮小させる方向に撓ませながら、長体3の先端にある挿入体4を受容体2の嵌合構造に挿入し、全体を閉ループの環状とする。これによって、閉じたリング状の結束具1に図示しないキーを保持させた状態とすることができる。
【0022】
そして、このように挿入体4と受容体2が係合した状態では、受容体2と挿入体4は2つの箇所において互いに固定されることとなる。
第1の箇所は、受容体2の受け部10と挿入体4の突出部6が係合する部位である。ここでは、挿入体4の突出部6が、受容体2の受け部10の挿入孔11に挿入され、突出部6の第1係止突起7が、受け部10の挿入孔11の第1係止部12を乗り越え、両者は互いに係合している。
【0023】
第2の箇所は、受容体2の孔部13と挿入体4の凸部8が係合する部位である。ここでは、挿入体4の凸部8が、受容体2の孔部13に挿入され、凸部8の第2係止突起9が、受け部10の孔部13の第2係止部14を乗り越え、両者は互いに係合している。
【0024】
このように、係合状態にある受容体2と挿入体4は、2箇所もの位置で、互いに噛み合う突起構造によって互いに引き抜き不可能な状態で係合し、固定状態に確実に保持されている。そして、これら2箇所における突起構造の係合構造を見ると、
図3から分かるように、第1係止突起7の突出方向と、第2係止突起9の突出方向は互いに逆である。このため、係合を解除しようとして挿入体3に外力を加えたとしても、第1係止突起7と第2係止突起9に対する解除作用は同一の方向には働かず、一方が解除の方向に移動すれば、他方は係止がより強まる方向に移動するため、係合の解除は困難である。従って、環状となった結束具1からキーを取り外すため、受容体2から挿入体4を外そうとする試みは無益である。長体3に外力を与えて種々の方向に撓ませる等してみても、挿入体4を受容体2から外すことはできない。リング状となった長体3から環状部5を外すためには、挿入体4と受容体2の係合構造を破壊するか、又は長体3を切断する必要がある。
【0025】
特に、
図2に示したように、結束具1の長体3は、係止前の開放された状態では、係合時の円形よりもやや拡大した形状をしているが、これをより小さい円形となるよう撓ませた状態で、挿入体4を受容体2の嵌合構造に係合することにより、閉ループ状となっている。従って、係合後の円形の長体3には、元のより大きい円形に弾性的に戻ろうとする力が働いている。このため、受容体2と挿入体4が係合している2箇所の位置にもこの力が常に作用しているため、前述したように2カ所で係合していることに加え、この作用によっても、これらの係合状態は一層外れにくくなっている。
【0026】
また、第1実施形態の結束具1によれば、
図3中に破線の矢印で囲んで示した受容体2と挿入体4の接触面20は、挿入体4に設けられたカバー部15によって外部から視認できないように保護されている。従って、この接触面20、または長体3を挿入方向に撓ませる等して挿入体4と受容体2を離間させて設けた接触面20の空隙に、外部からドライバ等の工具を差し入れて挿入体4を受容体2から外そうとしても、カバー部15が係る操作の邪魔をするので、受容体2と挿入体4の係合状態を不正に解除することは確実に防止できる。
【0027】
なお、以上説明した第1実施形態では、受容体2と挿入体4の係合構造における凹凸またはおす・めすの関係は逆にしてもよい。例えば、第1実施形態では、受け部10を有する側を受容体2と称し、この受容体2に第2の係合構造として孔部13を設け、また突出部6を有する側を挿入体4と称し、この挿入体4に第2の係合構造として凸部8を設けたが、受容体2の孔部13を凸部とし、挿入体4の凸部8を孔部としてもよい。
【0028】
本発明の第2実施形態を
図4を参照して説明する。
第1実施形態では、受容体2と挿入体4の接触面20を隠すカバー部15は、挿入体4の長体3側の端面に設けられていた。これとは異なり、
図4に示すように、第2実施形態の結束具1’においては、カバー部25は、受容体2の長体3の連結部分とは反対側の端面を挿入体4の長体3に向けて延設することにより設けている。
【0029】
このような構造によっても、
図4中に破線の矢印で囲んで示した受容体2と挿入体4の接触面20は、受容体2に設けたカバー部15によって外部から視認できないように保護することができる。そして、第1実施形態と同様に、この接触面20’、または挿入体4と受容体2を離間させて設けた接触面20’の空隙に、外部からドライバ等の工具を差し入れて挿入体4を受容体2から外し、受容体2と挿入体4の係合状態を不正に解除することは確実に防止できる。
【0030】
第2実施形態におけるその他の構造は第1実施形態と実質的に同一である。第2実施形態を示す
図4中には、第1実施形態の
図3と対応する部分に同一の符号を付し、当該同一部分に関する第2実施形態の説明には第1実施形態の対応部分の説明を援用するものとする。
【0031】
以上説明した各実施形態の結束具1,1’は、キーホルダーまたはキーリングのようにキー等を束ねて保持するために使用されるものとして説明したが、もちろん結束具1,1’で保持する対象はキーに限定されるものではなく、長体3を挿通して保持することができる物品なら対象となりうることは当然である。
【符号の説明】
【0032】
1,1’…結束具
2…受容体
3…長体
4…挿入体
5…キーに付けられたストラップの環状部
6…挿入体の突出部
8…挿入体の凸部
10…受容体の受け部
13…受容体の孔部
15,25…カバー部
20,20’…接触面