特許第6971638号(P6971638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971638
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】旋回駆動装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/56 20210101AFI20211111BHJP
   G03B 5/02 20210101ALI20211111BHJP
   G03B 5/04 20210101ALI20211111BHJP
   G03B 17/00 20210101ALI20211111BHJP
   H04N 5/222 20060101ALI20211111BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20211111BHJP
   F16M 11/12 20060101ALN20211111BHJP
【FI】
   G03B17/56 B
   G03B5/02
   G03B5/04
   G03B17/00 B
   H04N5/222 100
   G03B15/00 U
   !F16M11/12 H
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-110105(P2017-110105)
(22)【出願日】2017年6月2日
(65)【公開番号】特開2018-205494(P2018-205494A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】根本 歩
(72)【発明者】
【氏名】尾花 慎司
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−189777(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102483560(CN,A)
【文献】 国際公開第2012/004952(WO,A1)
【文献】 国際公開第99/065234(WO,A1)
【文献】 特表2002−518697(JP,A)
【文献】 特開平09−219980(JP,A)
【文献】 特開2006−238677(JP,A)
【文献】 特開2006−081239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/56
F16M 11/10
G03B 5/00 − 5/06
G03B 15/00
G03B 17/00
H04N 5/222− 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動体と、
前記被駆動体を回転可能に保持する保持部材と、
前記被駆動体を回転させる駆動力を発生させるアクチュエータと、
前記被駆動体の回転位置を検出する検出点を有する位置検出部と、有する旋回駆動装置において、
前記被駆動体には、前記被駆動体が回転する回転軸Pを中心とする同心円状に、
前記アクチュエータから駆動力を受ける被伝達面と、
前記検出点により回転位置を検出される被位置検出部と、
摺動平面と、が配置され、
前記アクチュエータは、
駆動力を外部に伝達する伝達部を有し、
前記伝達部に凸状に形成された一対の接触部を前記被駆動体の前記被伝達面に加圧接触する状態で前記保持部材に固定され、
前記位置検出部は、
前記保持部材に固定され、且つ、
前記回転軸Pに平行な方向の投影視において、
前記伝達部に凸状に形成された前記一対の接触部の中心間を結ぶ仮想直線L1上の中心Cと、前記回転軸Pの中心と、を通過する仮想直線L3が、前記検出点の上を通過するように前記位置検出部を配置し、
前記保持部材は、前記位置検出部を間に挟み、且つ、前記摺動平面の側に突出して成る一対の突起部を有し、
前記位置検出部と前記被位置検出部との間隔Dpは、前記摺動平面と前記一対の突起部との間隔dpよりも長く設定されていることを特徴とする旋回駆動装置。
【請求項2】
前記被駆動体は、光学レンズと撮像素子を有するカメラユニットを前記回転軸Pと異なる回転軸Tを中心に回転可能に保持する他の保持部材を更に備え、
前記カメラユニットの光軸、前記回転軸T、及び前記回転軸Pが互いに直交することを特徴とする請求項1記載の旋回駆動装置。
【請求項3】
前記回転軸Pから、前記伝達部に凸状に形成された前記中心Cまでの距離R1は、前記回転軸Pから、前記一対の突起部のそれぞれまでの距離R2よりも短いことを特徴とする請求項1又は2記載の旋回駆動装置。
【請求項4】
前記被位置検出部は、前記回転軸Pから一定距離の位置に一定の周期で形成された反射パターンを有し、前記検出点は、前記反射パターンの検出を行うための発光部及び受光部からなり、
前記回転軸Pから前記検出点までの距離R3は、前記回転軸Pから、前記一対の突起部のそれぞれまでの距離R2よりも短いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の旋回駆動装置。
【請求項5】
前記中心Cと、前記一対の突起部は、前記回転軸Pを中心とした周方向において等間隔となるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の旋回駆動装置。
【請求項6】
前記摺動平面は、環状及び円弧状のいずれかの形状に形成された平面を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の旋回駆動装置。
【請求項7】
被駆動体と、
前記被駆動体をパンニング可能に保持する回転軸Pと、
前記回転軸Pの近傍に設けられ、前記被駆動体をパン回転させる駆動力を発生させる駆動部と、
前記回転軸Pの周りにあって、前記被駆動体の上に配置される被位置検出部と、
前記被位置検出部と対向する位置にある位置検出部とを備える旋回駆動装置において、 前記回転軸Pの周りにあって、前記被駆動体の上に配置される摺動平面と、
前記摺動平面と対向する位置にある突起部とを備え、
前記被位置検出部は、前記回転軸Pと前記摺動平面の間に位置し、且つ前記突起部は、前記位置検出部の近傍に設けられ、
前記被位置検出部と前記位置検出部の間の間隔Dpは、前記摺動平面と前記突起部の間の間隔dpより長く設定されていることを特徴とする旋回駆動装置。
【請求項8】
被駆動体と、
前記被駆動体をパンニング可能に保持する保持部材と、
前記被駆動体をパン回転させる駆動力を発生させるアクチュエータと、
前記被駆動体のパン回転位置を検出する検出点を有する位置検出部と、有する旋回駆動装置において、
前記被駆動体には、前記被駆動体がパン回転する回転軸Pを中心とする同心円状に、 前記アクチュエータから駆動力を受ける被伝達面と、
前記検出点により回転位置を検出される被位置検出部と、
摺動平面と、が配置され、
前記アクチュエータは、
駆動力を外部に伝達する伝達部を有し、
前記伝達部に凸状に形成された一対の接触部を前記被駆動体の前記被伝達面に加圧接触する状態で前記保持部材に固定され、
前記位置検出部は、
前記保持部材に固定され、
前記保持部材は、前記位置検出部を間に挟み、且つ、前記摺動平面の側に突出して成る突起部を有し、
前記位置検出部と前記被位置検出部との間隔Dpは、前記摺動平面と前記突起部との間隔dpよりも長く設定されていることを特徴とする旋回駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回駆動装置、特に被装着体の動作に影響を与えることなく駆動する可動体を有する旋回駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アクションカムやウエアラブルカメラと称する小型カメラが普及している。この類のカメラは、身体に装着し、ハンズフリーで撮影することができる。また、自転車やドローン(無人航空機)等の機器に装着し、撮影することもできる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、従来のカメラ2が装着されるドローン1の斜視図であり、(a)はカメラ2をドローン1に装着するために用いられるジンバル3の分解斜視図を示し、(b)はカメラ2がジンバル3によりドローン1に装着された状態を示す。
【0004】
ドローン1は複数のプロペラを備えている。プロペラの枚数はドローンの大きさや重量、用途等によって異なる。図示のドローン1は4枚のプロペラを備えたクワッドコプターと呼ばれるものである。ドローン1は、プロペラが回転することによって揚力を発生させて、浮遊することができる。そして、全てのプロペラの回転数を等しい状態で維持することで機体を空中で安定保持(ホバリング)させることができる。また、プロペラの回転数のバランスを敢えて崩すように調整すると、機首が傾き意図した方向にドローン1の姿勢を変更することができる。カメラ2はアクションカムと称する小型カメラである。カメラ2は、携帯性を重視するために、小型且つ軽量に構成されている。また、カメラ2には比較的広角に撮影が可能な光学レンズユニットが搭載されており、カメラ2が装着される機器(ドローン1)の視点ベースの映像を記録することができる。
【0005】
ドローン1にカメラ2を装着すべく、カメラ2はジンバル3によって保持されている。ジンバル3はドローン1にビス4で共締めして固定される。そしてカメラ2は、不図示の固定部品によってジンバル3に固定されている。この固定部品には、例えば粘着両面テープや結束バンドなどが適用される。ジンバル3は、保持するカメラ2の姿勢を一定に維持する機構が内蔵されている。具体的には、カメラ2を保持すべく設置しているステージに対してパン(水平・左右)方向/チルト(垂直・上下)方向/ロール(回転)方向の3軸を制御して、カメラ2が装着される機器(ドローン1)が発生させてしまう揺れをキャンセルさせる動作を行う。これによってカメラ2は、像揺れが少ない画像を記録することができる。
【0006】
上述の従来構成では、画像を記録し得る方向はカメラ2の光軸が指す正面方向のみであった。そして、画像を記録する向きを切り替える場合には、被装着体の姿勢を意図した方向へ向けなければならず、被装着体の動きを規制することになってしまう。例えば、カメラ2をジンバル3を介して自転車のハンドルに装着した状態でその画像記録方向を切り替える場合、被装着体である自転車のハンドルの正面を次の画像記録方向へ向けなければならず、走行方向が変わってしまう。また、人がカメラ2をジンバル3を装着した状態で歩行しているときに、その歩行方向を変えずにカメラ2の画像記録方向を切り替えようとすると、不自然な歩行姿勢になってしまい、歩行速度が不安定になる。ひいては、記録画像の像揺れが増大する等の問題が生じる。
【0007】
被装着体の動きを規制することなく、カメラ2の画像記録方向を任意に制御する方法としては、例えば、光学ユニットの旋回駆動することが可能な旋回駆動装置(例えば、特許文献2参照)が知られている。具体的には、この旋回駆動装置は、レンズ鏡筒を含む可動体(光学ユニット)を回転させる回転軸の一方にプーリを取り付け、このプーリにタイミングベルトを巻回させて駆動力をプーリに伝達し、被装着体に対して可動体を相対的に旋回駆動する。更に、可動体を回転させる回転軸の他方には、可動体と共に回転するパターン板と、パターン板と所定の間隔(ギャップ)を置いて固定体に配置され、パターン板の上に放射状に印刷されるパターンを計数する光学センサとから成る位置検出手段が設けられている。かかる構成により、回転角度を高精度に検出しながら可動体の旋回駆動を行うことが可能である。
【0008】
この旋回駆動装置を被装着体に取り付けた場合、光学ユニットのみが撮影方向を切り替えることができるため、被装着体の動作に影響を与えることなく撮影を行う事が出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016−82463号公報
【特許文献2】特開2010−11199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2では、プーリに巻回されたタイミングベルトの張力によって可動体が傾くと、パターン板と光学センサの間のギャップが変動し、回転角度の検出精度低下を招く。特に、高精度駆動の追求に伴ってパターン板に印刷されるパターンのピッチが微細化されると、ギャップ変動が与える回転角度の検出精度誤差は顕著となる。また、最悪の場合には、パターン板と光学センサが物理的に接触し破損する等の不良が発生する懸念がある。
【0011】
上記課題を鑑みて、本発明の目的は、簡易な構成で位置検出精度の劣化を抑制し高精度に旋回駆動が可能な旋回駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る旋回駆動装置は、被駆動体と、前記被駆動体を回転可能に保持する保持部材と、前記被駆動体を回転させる駆動力を発生させるアクチュエータと、前記被駆動体の回転位置を検出する検出点を有する位置検出部と、有する旋回駆動装置において、前記被駆動体には、前記被駆動体が回転する回転軸Pを中心とする同心円状に、前記アクチュエータから駆動力を受ける被伝達面と、前記検出点により回転位置を検出される被位置検出部と、摺動平面と、が配置され、前記アクチュエータは、駆動力を外部に伝達する伝達部を有し、前記伝達部に凸状に形成された一対の接触部を前記被駆動体の前記被伝達面に加圧接触する状態で前記保持部材に固定され、前記位置検出部は、前記保持部材に固定され、且つ、前記回転軸Pに平行な方向の投影視において、前記伝達部に凸状に形成された前記一対の接触部の中心間を結ぶ仮想直線L1上の中心Cと、前記回転軸Pの中心と、を通過する仮想直線L3が、前記検出点の上を通過するように前記位置検出部を配置し、前記保持部材は、前記位置検出部を間に挟み、且つ、前記摺動平面の側に突出して成る一対の突起部を有し、前記位置検出部と前記被位置検出部との間隔Dpは、前記摺動平面と前記一対の突起部との間隔dpよりも長く設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成で位置検出精度の劣化を抑制し高精度に旋回駆動が可能な旋回駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の旋回駆動装置としてのカメラが装着されるドローンの斜視図である。
図2図1におけるカメラの外観斜視図である。
図3】カメラの分解斜視図である。
図4】カメラの組立状態における要部断面の模式図である。
図5図4におけるパン回転板を正面から見た図である。
図6】従来のカメラが装着されるドローンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
ここでは、本発明に係る旋回駆動装置として、無人航空機(以下、「ドローン」と称す。)に取り付けられる撮像装置(以下、「カメラ」と称す。)を取り上げる。但し、本発明に係る旋回駆動装置は、これに限定されるものではなく、駆動角度が制御される可動体を有する旋回駆動装置に広く適用することができ、例えば、ロボットアームの関節などが挙げられる。
【0017】
図1は、本発明の旋回駆動装置としてのカメラ100を備えるドローン10の斜視図であり、(a)はドローン10が着地している状態を表し、(b)はドローン10が飛行中の状態を表す。
【0018】
ドローン10は4数のプロペラ11a,11b,11c,11d(以下、まとめて「プロペラ11」と称す。)を備えたクワッドコプターと呼ばれるものである。但し、本発明に係るカメラ100の被装着体としてのドローン10のプロペラ11の枚数は4枚に限定されるものではなく、ドローン10の大きさや重量、用途等によって異なる枚数としてもよい。
【0019】
ドローン10は、プロペラ11が回転することによって揚力を発生させて、浮遊することができる。そして、全てのプロペラ11の回転数を等しい状態で維持することで機体を空中で安定保持(ホバリング)させることができる。また、プロペラ11の回転数のバランスを敢えて崩すように調整すると、機首が傾き意図した方向にドローン10の姿勢を変更することができる。
【0020】
ドローン10には、カメラ100が取り付けられている。取り付け方法は、特に限定されるものではないが、例えば粘着両面テープをドローン10とカメラ100との間に挟み込む、或いは結束バンドなどでドローン10にカメラ100を括り付ける等の方法が採用される。また、別途、カメラ100をドローン10に取り付けるためのアタッチメントを用意してもよい。カメラ100は大別して固定部と可動部によって構成されている。可動部は、固定部に対して、旋回駆動、具体的にはパンニング駆動及びチルティング駆動ができるように構成されている。カメラ100の内部構成詳細については後述する。
【0021】
さらにドローン10は、スキッド12a,12b(以下、まとめて「スキッド12」と称す。)を備えている。スキッド12は、ドローン10を地上で支持する機構である。本発明のスキッド12は、引き込み式(可動式)に構成されている。具体的には、ドローン10への取り付け部分が一定量回転可能に構成されている。かかる構成により、ドローン10が離陸するときにはスキッド12を図1(a)の位置から図1(b)の位置へ引き込むことができる。このため、飛行中、カメラ100がパンニング駆動を行いながら撮影する際、画角内にスキッド12が入り込んでしまう等の不具合を防ぐことができる。一方、着陸するときにはスキッド12を図1(b)の位置から図1(a)の位置へ引き出すことができるため、ドローン10やカメラ100が地面に接触して破損してしまう等の不具合を防ぐことができる。
【0022】
図2は、図1におけるカメラ100の外観斜視図である。
【0023】
図2に示す様に、カメラ100は、ベースユニット20上に、パンニング可動部である被駆動体としてのパンニングユニット(以下、「パンユニット」と称す。)30が、ベースユニット20に対して水平回転(実線の矢印方向)可能、すなわちパンニング可能に載置されている。
【0024】
更に、カメラ100は、パンユニット30上には、撮像素子及び光学レンズを有するカメラユニット50を備えた他の保持部材としてのチルティングユニット(以下、「チルトユニット」と称す。)40を備える。チルトユニット40は、図2に示すように、パンユニット30に対してカメラユニット50の光軸を垂直回転(破線の矢印方向)可能、すなわちチルティング可能に保持している。
【0025】
上記の様な構成により、カメラ100は、カメラユニット50を有するチルトユニット40を、ベースユニット20に対して相対的に水平回転(パンニング)及び垂直回転(チルティング)させることで、様々な方向、角度の撮影が可能である。
【0026】
以下に、カメラ100の構成について、適宜、図3〜5を用いて説明する。
【0027】
図3は、カメラ100の分解斜視図であり、(a)はパン駆動ユニット250が手前になる視点からのカメラ100を示し、(b)は、パン用光学式センサ263が手前になる視点からのカメラ100を示す。
【0028】
図4は、カメラ100の組立状態における要部断面の模式図である。
【0029】
なお、本発明の説明上不要で図が煩雑になるものは省略して描かれている。
【0030】
カメラ100は主に、パンユニット30と、カメラユニット50を備えたチルトユニット40と、保持部材としてのベースカバー210、内部構造体220、及びボトムカバー230から成るベースユニット20とから構成される。
【0031】
なお、Pは、ベースユニット20に対するパンユニット30の水平回転(パンニング)方向の回転軸を示し、Tは、パンユニット30に対するチルトユニット40の垂直回転(チルティング)方向の回転軸を示す。本実施例では、カメラユニット50の光軸、回転軸P、及び回転軸Tは互いに直交する関係にあるが、これらは必ずしも直交する関係にある必要はない。
【0032】
内部構造体220には、制御基板221が含まれる。
【0033】
制御基板221は、システム制御回路(CPU)やメモリ、及び、パンユニット30やチルトユニット40の駆動制御を行うドライバIC等が搭載されており、カメラ100の全体の制御を司る。
【0034】
内部構造体220は、メインシャーシ240を介してベースカバー210内部に固設された後、ベースカバー210下部にボトムカバー230が固定されることでケーシングされる。
【0035】
なお、ボトムカバー230の底面部には不図示の電源入力端子が設けられており、この電源入力端子を用いることで、外部電源供給手段からカメラ100への電源供給が可能となる。
【0036】
更に、ボトムカバー230の底面部には図1で前述したドローン10に取り付け可能なアタッチメントが具備されている。
【0037】
パンユニット30は、ベースカバー210に設けられたパン軸受部材21のパン回転支持穴21aにパン基台310のパン軸部312aが摺動嵌合される。また、このパン回転支持穴21aの内部には環状リブ21bが設けられている。
【0038】
更に、パンユニット30は、ベースカバー210の内側から、円環状の形状を有したパン回転板330をビス等によってパン基台310に締結させる。これにより、パンユニット30は、環状リブ21bの間でスラスト方向にも挟持され、ベースカバー210に対して水平回転(パンニング)可能な状態に支持される。
【0039】
パン回転板330におけるパン基台310が取り付られる側の反対面には、ベースユニット20内においてメインシャーシ240に配置される摩擦摺動面330aが設けられている(図4図5参照)。この摩擦摺動面330aは、パン駆動ユニット250からの駆動力が伝達される被伝達面として機能する。
【0040】
パン駆動ユニット250は、超音波振動を利用して、被駆動体であるパンユニット30を摩擦駆動する方式の所謂、超音波モータというアクチュエータである。
【0041】
摩擦摺動面330aには、パン駆動ユニット250の駆動力を外部に伝達する伝達部として機能する振動子251aに凸状に形成された一対の接触部251eが、組立状態において一定な加圧力で接触する。具体的には、図4に示す様に、パン回転軸である回転軸Pと平行な方向(矢印B方向)に向かって不図示のバネ部材で付勢されている。
【0042】
なお、不図示のバネ部材によって付勢力を付与する位置は図5(a)に示すように一対の接触部251eの中心間を結ぶ仮想直線L1上の黒丸で示す中心Cに配置されることが望ましい。これにより、一対の接触部251eを摩擦摺動面330aに対して均等に加圧接触させることができる。
【0043】
この加圧接触状態において、ドライバICからの制御信号により、フレキシブルプリント基板(以下、「FPC」と称す。)251cから圧電素子251bに高周波電圧が印加されると、一対の接触部251eを介して振動子251aに励起された超音波振動が摩擦摺動面330aに伝達される。
【0044】
そして、この超音波振動が摩擦摺動面330aに伝達されると、パン回転板330が摩擦駆動され、パン回転板330と一体化されたパン基台310がベースカバー210に対して相対的に水平回転駆動される。
【0045】
一方、チルトユニット40は、パンユニット30に対して垂直回転(チルティング)可能な状態に支持され、不図示のアクチュエータによりパンユニット30に対して相対的に垂直回転駆動される。
【0046】
なお、上述したパン軸受部材21は、低摩擦で摺動性に優れる樹脂(例えば、ポリアセタール(POM)等)を射出成型して形成された部材である。
【0047】
また、上述したパン回転板330の摩擦摺動面330aには、耐摩耗性を向上させる所定の処理が施されている。
【0048】
例えば、パン回転板330にはステンレス材が用いられ、その摩擦摺動面330aには窒化処理等による硬化処理が施されている。
【0049】
更に、摩擦摺動面330aは、パン駆動ユニット250の振動子251aの一対の接触部251eと安定した接触状態を維持するために、平滑で、反りが極めて小さくなるようにラップ加工等の表面処理が施された平滑面となっている。
【0050】
263はロータリエンコーダなどのパン用光学式センサであり、メインシャーシ240にスペーサ261を介して固定されたFPC262に実装されている。パン用光学式センサ263は、パン回転板330に固定され、所定の間隔Dp(図4)をおいて対向するように取り付けられ相対移動する被位置検出部であるパン用反射スケール331との組み合わせでパン用の位置検出部として機能する。
【0051】
パン用反射スケール331には、回転軸P回りに図5に示すように一定の周期で周方向に配列された反射パターンとしての光学格子(明暗パターン)331aが設けられている。
【0052】
パン用光学式センサ263は、パン用反射スケール331に光を照射する発光部と、パン用反射スケール331からの反射光を受光する受光部とが一体的にパッケージングされている検出点263aを有する。発光部は例えば発光ダイオードが採用され、受光部は例えばフォトトランジスタが適用される。受光部は、発光部から放たれた光がパン用反射スケール331の光学格子(明暗パターン)331aに反射して得られる反射光が入射する位置に複数個所設定されており、各受光部で受光された反射光は電気信号に変換される。そして、パン用光学式センサ263とパン用反射スケール331が相対移動すると、光学格子(明暗パターン)331aから各受光部に入射する反射光の光量が周期的に変化するため、各受光部から出力される電気信号の値が周期的に変化する。
【0053】
このように各受光部から出力された周期信号の位相を利用して、相対移動するパン用反射スケール331の「回転位置」、「回転方向」、「回転速度」等を知ることができる。即ち、パン用反射スケール331と一体化されたパンユニット30の「回転位置」、「回転方向」、「回転速度」等を高精度に知ることができる。
【0054】
スペーサ261は、その板厚が精度高く仕上げられているため、組立状態においてパン用光学式センサ263とパン用反射スケール331の間の所定の間隔Dpを精度よく定めることができる。また、スペーサ261は、図3(a)に示す様に、メインシャーシ240にスペーサ261を介してFPC262が固定された状態において、パン用光学式センサ263を間に挟むように配置された一対の突起部261aを有する。
【0055】
この一対の突起部261aは、スペーサ261がメインシャーシ240に取り付けられている面からパン回転板330に向かって同じ高さを有する。また、その組立状態においてパン回転板330に設けられたレール状の摺動平面330b(図4図5参照)と対向して配置される。すなわち、この一対の突起部261aは、摺動平面330b側に突出した状態で構成される。
【0056】
そして、図4に示す様に組立状態において一対の突起部261aと摺動平面330bとは、所定の間隔dpをおいて対向して配置される。
【0057】
尚、本実施例において、摺動平面330bは、環状に形成された平面を有するが、一対の突起部261aが常に摺動平面330bと対向する位置にあるのであれば、かかる構成に限定されない。例えば、一定の角度までしかパンユニットの回転はできないよう規制されている場合は、円弧状に形成された平面を摺動平面330bが有してもよい。
【0058】
ここで、上述した組立状態におけるパン用光学式センサ263とパン用反射スケール331の間の所定の間隔Dpと、一対の突起部261aと摺動平面330bとの間の所定の間隔dpは、Dp>dpの関係になる様に設定されている。
【0059】
図5は、図4におけるパン回転板330を正面から見た図である。すなわち、回転軸Pに平行な方向から投影視した図である。
【0060】
図5に示す様に、パン回転板330には紙面手前方向に延びる回転軸Pを中心として同心円状に、摩擦摺動面330a、パン用反射スケール331、摺動平面330bが配置されている。
【0061】
また、上述したように一対の接触部251eの中心間を結ぶ仮想直線L1上の黒丸で示す中心Cにおいて、不図示のバネ部材による振動子251aへの付勢力が付与される。
【0062】
図5(a)に示す様に、スペーサ261に設けられる一対の突起部261aは、摺動平面330bと投影上重なる位置で、パン用光学式センサ263を間に挟むように配置されている。
【0063】
また、一対の突起部261aの中心間を結ぶ仮想直線L2は、一対の接触部251eの中心間を結ぶ仮想直線L1と並行で、且つ、各仮想直線L1,L2の中心間を結ぶ仮想直線L3は、回転軸Pの中心を通過する様に配置される。また仮想直線L1,L2は、それぞれ回転軸Pの中心を通過する仮想直線L3と直交する。
【0064】
また、パン用光学式センサ263の検出点263aは、投影上はこの仮想直線L3が通過するような位置に配される。
【0065】
ところで、パンユニット30は、図4に示すようにパン駆動ユニット250から常に回転軸Pと平行な矢印B方向に一定の加圧力を受けながら回転駆動する。この為、カメラ100の使用に伴いパン軸受部材21のパン回転支持穴21aおよび環状リブ21bが徐々に摩耗し得る。
【0066】
そして、パン軸受部材21のパン回転支持穴21aおよび環状リブ21bの摩耗が進行するに伴って、パン軸部312aは当初の回転軸Pに対して任意の角度(例えば、図4中に示す角度θ)の傾きを生じる。
【0067】
つまり、パン用反射スケール331とパン用光学式センサ263が接近する(所定の間隔Dpが小さくなる)方向にパンユニット30が徐々に変位することになる。
【0068】
更に摩耗が進行し、パンユニット30に、一対の突起部261aと摺動平面330bとの間の所定の間隔dp分変位させるだけの傾き(すなわち、図4中の角度θ)が生じると、一対の突起部261aが摺動平面330bに当接する。
【0069】
これにより、パン用光学式センサ263とパン用反射スケール331の間の所定の間隔Dpが一定距離以下になることを規制し、所定の間隔Dpの変動に伴うパン位置検出精度の劣化を防ぐことができる。
【0070】
具体的には、図5(a)に示した様に回転軸Pを中心とした時の、一対の接触部251e間の黒丸で示す中心Cまでの距離R1と、一対の突起部261aが摺動平面330bを摺接する距離R2は、R1<R2の関係になる様に配置されている。
【0071】
これにより、パン軸部312aが当初の回転軸Pに対して角度θまで傾く前は、dp以下の大きさの隙間を形成でき、摺動平面330bが摩耗せずに済むことができる。一方、パン軸部312aが角度θまで傾いた場合、速やかに一対の突起部261aのそれぞれを摺動平面330bと当接させるので、パン用光学式センサ263とパン用反射スケール331とが物理的に接触することを確実に防止できる。
【0072】
また、好適には、図5(a)に示した様に回転軸Pを中心とした時の、パン用光学式センサ263の検出点263aまでの距離R3と、一対の突起部261aが摺動平面330bを摺接する距離R2は、R3<R2の関係になる様に配置される。
【0073】
更には、上述したようにパン用光学式センサ263とパン用反射スケール331の間の所定の間隔Dpと、一対の突起部261aと摺動平面330bとの間の所定の間隔dpは、Dp>dpの関係になる様に設定されている。
【0074】
かかる構成により、パン軸受部材21の摩耗によりパンユニット30に発生する傾きが角度θとなった場合、パン回転板330において回転軸Pから検出点263aまでの距離よりも離れた位置で、一対の突起部261aが摺動平面330bに当接し規制する。
【0075】
よって、一対の突起部261aが摺動平面330bに当接した際、パンユニット30の変位によりもたらされるパン用光学式センサ263とパン用反射スケール331の間の所定の間隔Dpの減少量を少なくすることができる。
【0076】
従って、パン用光学式センサ263とパン用反射スケール331の間の所定の間隔Dpの接近により生じるパン位置検出精度の劣化を効果的に抑制することができる。
【0077】
更に、パン軸受部材21の摩耗によりパンユニット30が変位した場合、一対の突起部261aと摺動平面330bが必ず先に当接する為、パン用光学式センサ263とパン用反射スケール331とが物理的に接触することもない。
【0078】
このような構成にすることで、パンユニット30が変位し一対の突起部261aと摺動平面330bが当接している時、パン駆動ユニット250から常に受ける加圧力を安定して受けることができ、パンユニット30を安定的に支持することができる。
【0079】
従って、カメラ100の使用に伴いパン軸受部材21が摩耗し、パン用光学式センサ263とパン用反射スケール331の間の所定の間隔Dpが変動した場合であっても、パンユニット30の回転位置検出精度を安定して維持することが可能となる。
【0080】
また、好適には、図5(b)に示す様に、一対の接触部251e間の黒丸で示す中心Cと一対の突起部261aが、回転軸Pを中心とした周方向において等間隔(120°間隔)となる様に配置してもよい。
【0081】
このような構成にすることで、パンユニット30が変位し一対の突起部261aと摺動平面330bが当接している時、パンユニット30をより安定的に支持することができる。
【0082】
以上説明した構成により、パン軸受部材21の摩耗などによるパンユニット30の変位を安定して支持でき、且つ、パン用光学式センサ263とパン用反射スケール331間の所定の間隔Dpが一定距離以上変動することを効果的に抑制することができる。
【0083】
その結果、長期使用による、所定の間隔Dpの変動に伴うパン位置検出精度の劣化を抑制することができ、カメラ100のパンユニット30の回転位置検出精度を維持することが可能となる。
【0084】
尚、本実施例においては、アクチュエータであるパン駆動ユニット250によりカメラユニット50をパン回転させる駆動力を発生させたが、かかる構成に限定されない。例えば、駆動部として、パン軸部312aに取り付けたプーリにタイミングベルトを巻回させることによりカメラユニット50をパンニングさせる駆動力を発生するようにしてもよい。
【0085】
また、本実施例では、摺動平面330bと対向する位置に一対の突起部261aを設けていたが、かかる構成に限定されない。例えば、パン用反射スケール331の近傍に設けられ、且つ図4に示すdpがDpより短い構成であれば、その数は1つであってもよい。
【0086】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものでは無く、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、その他種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0087】
30 パンユニット
50 カメラユニット
100 カメラ
210 ベースカバー
250 パン駆動ユニット
251a 振動子
251e 一対の接触部
261a 一対の突起部
263 パン用光学式センサ
263a 検出点
330a 摩擦摺動面
330b 摺動平面
331 パン用反射スケール
331a 光学格子(明暗パターン)
P パンニング方向の回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6