特許第6971643号(P6971643)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6971643繊維積層シート部材を用いた繊維成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6971643
(24)【登録日】2021年11月5日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】繊維積層シート部材を用いた繊維成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/10 20060101AFI20211111BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20211111BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20211111BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20211111BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20211111BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20211111BHJP
【FI】
   B32B5/10
   B32B5/28 Z
   B29C70/06
   B29C45/14
   B29C45/26
   B29K101:12
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-112249(P2017-112249)
(22)【出願日】2017年6月7日
(65)【公開番号】特開2018-202771(P2018-202771A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】阿久澤 光弘
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 歩
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−254469(JP,A)
【文献】 特開2015−200050(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0106952(US,A1)
【文献】 特開2016−074161(JP,A)
【文献】 特開2002−242085(JP,A)
【文献】 実開昭55−125439(JP,U)
【文献】 特開2010−253938(JP,A)
【文献】 特表平05−508591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B29B11/16
15/08−15/14
B29C33/00−70/88
B32B 1/00−43/00
C08J 5/04− 5/10
5/24
D01F 9/08− 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維シートは所望の意匠性に応じて選択された編方で強化繊維を編んだ編物で構成され、且つ前記繊維シートの両面に被覆されるフィルムのうち、少なくとも一方が透明であり、且つ前記繊維シートの両面に被覆されるフィルムが成形性を有する繊維積層シート部材を金型内にセットし、前記繊維シートの両面に被覆されるフィルムの一方だけが透明な場合には該透明なフィルムと反対側のみに、又は、前記繊維シートの両面に被覆されるフィルムの双方が透明な場合には何れかのフィルム側のみに、熱可塑性樹脂を射出成形することを特徴とする繊維積層シート部材を用いた繊維成形品の製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂の射出成形の前に、予備成形金型内で前記繊維積層シート部材を予備成形することを特徴とする請求項に記載の繊維積層シート部材を用いた繊維成形品の製造方法。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂内に強化繊維が含有されることを特徴とする請求項又はに記載の繊維積層シート部材を用いた繊維成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維積層シート部材及びその繊維積層シートを用いた繊維成形品の製造方法、特に、軽量で高強度の炭素繊維のシート部材及びそれを用いた繊維成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)と一般的に呼ばれる炭素繊維強化樹脂からなる炭素繊維成形品が着目されている。この炭素繊維強化樹脂は、一般に、小さい比重と大きい機械的強度を併せ持つことから、その成形品は、例えば車両の鋼板部品の代替として使用されている。このような炭素繊維成形品としては、例えば下記特許文献1に記載されるものがある。この炭素繊維成形品は、炭素繊維の織物からなる炭素繊維シートに熱硬化性樹脂を含浸してプリプレグとし、その両面に熱可塑性樹脂フィルムを接合して炭素繊維積層シート部材とし、この炭素繊維積層シート部材を熱プレス成形で規定の形状に予備成形し、その予備成形品を金型内にセットして成形品の表面と反対側から熱可塑性樹脂を射出成形する。この炭素繊維成形品では、透明な熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を通して炭素繊維の目が透けて見え、意匠性にも優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−138354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炭素繊維成形品には、先の特許文献1に代表されるように、炭素繊維の織物、所謂布帛からなる炭素繊維シートが用いられる。しかしながら、炭素繊維織物は、一般的に、可撓性或いは柔軟性に乏しく、従って、成形が難しい。そのため、炭素繊維の織物シートを用いた炭素繊維積層シート部材を例えば金型にセットして成形する際、よれやシワが生じやすく、生産性が低い上に、意匠性も低下しやすい。一方、炭素繊維を含有する熱可塑性樹脂(CFRTP:Carbon Fiber Reinforced Thermo Plastics)を射出成形する技術も広く用いられているが、炭素繊維の目が不明瞭であることから、意匠性に乏しい。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、意匠性に優れ且つ生産性に優れた繊維積層シート部材及びその繊維積層シート部材を用いた繊維成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための繊維積層シート部材は、
繊維シートの両面がフィルムで被覆されてなる繊維積層シート部材において、前記繊維シートが強化繊維の編物で構成され、前記繊維シートの両面に被覆されるフィルムのうち、少なくとも一方が透明であり、前記繊維シートの両面に被覆されるフィルムが成形性を有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、強化繊維の編物からなる繊維シートは、可撓性や柔軟性に優れ、成形しやすいことから、例えば繊維積層シート部材を金型にセットして成形する際、よれやシワが生じにくく、合わせて繊維シートの両面に被覆されるフィルムが成形性を有することから生産性に優れ、しかも透明なフィルムを通して強化繊維の目が透けて見えることから意匠性にも優れる。
【0008】
上記目的を達成するための繊維積層シート部材を用いた繊維成形品の製造方法は、上記繊維積層シート部材を金型内にセットし、前記繊維シートの両面に被覆されるフィルムの一方だけが透明な場合には該透明なフィルムと反対側のみに、又は、前記繊維シートの両面に被覆されるフィルムの双方が透明な場合には何れかのフィルム側のみに、熱可塑性樹脂を射出成形することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、硬化後は十分な強度を発揮する熱可塑性樹脂の層が繊維積層シート部材の裏側或いは内側に形成されるので、繊維積層シート部材を用いた繊維成形品に規定の強度を付与することができる。
【0010】
また、前記熱可塑性樹脂の射出成形の前に、予備成形金型内で前記繊維積層シート部材を予備成形することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、予備成形金型内で繊維積層シート部材を予備成形することにより、熱可塑性樹脂が射出成形される以前に繊維積層シート部材が繊維成形品の表面形状或いは外側形状に形成されることから、繊維積層シート部材を用いた繊維成形品を確実に規定の形状とすることができる。
【0012】
また、前記熱可塑性樹脂内に強化繊維が含有されることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、強化繊維が含有される熱可塑性樹脂は、それを含有しない熱可塑性樹脂よりも、硬化後の強度が大きいので、熱可塑性樹脂に強化繊維を含有させることにより、繊維成形品の強度をより一層向上させることが可能となる。
【0014】
また、繊維シートの一方の面がフィルムで被覆され且つ他方の面がシートで被覆されてなる繊維積層シート部材において、前記繊維シートが強化繊維の編物で構成され、前記繊維シートの一方の面に被覆されるフィルムが透明で且つ成形性を有し、前記繊維シートの他方の面に被覆されるシートが熱可塑性樹脂シートであることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、強化繊維の編物からなる繊維シートは、可撓性や柔軟性に優れ、成形しやすいことから、例えば繊維積層シート部材を熱成形金型にセットして熱プレス成形する際、よれやシワが生じにくく、合わせてフィルムが成形性を有し且つシートが熱可塑性樹脂シートであることから熱プレス成形時の生産性に優れ、しかも透明なフィルムを通して強化繊維の目が透けて見えることから意匠性にも優れる。また、繊維積層シート部材を熱プレス成形するだけで、強度のある成形品を得ることができる。
【0016】
また、前記熱可塑性樹脂シート内に強化繊維が含有されることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、強化繊維が含有される熱可塑性樹脂は、それを含有しない熱可塑性樹脂よりも、硬化後の強度が大きいので、熱可塑性樹脂シート内に強化繊維を含有させることにより、繊維積層シート部材を用いた繊維成形品の強度をより一層向上することができる。
【0018】
また前記繊維積層シート部材を熱成形金型内にセットし、熱プレス成形することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、繊維積層シート部材を熱プレス成形するだけで、強度のある繊維成形品を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、強化繊維の編物からなる繊維シートは、可撓性や柔軟性に優れ、成形しやすいことから、例えば繊維積層シート部材を金型にセットして成形する際、よれやシワが生じにくく、合わせて繊維シートを被覆するフィルムやシートが成形性を有することから生産性に優れ、しかも透明なフィルムを通して強化繊維の目が透けて見えることから意匠性にも優れる。また、繊維成形品を成形しやすいことから、成形時の手間や時間が軽減され、コストの低廉化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の繊維積層シート部材の第1の実施の形態を示す説明図である。
図2図1の繊維積層シート部材を用いた繊維成形品の製造方法における予備成形の説明図である。
図3図2の予備成形品を用いた繊維成形品の製造方法の説明図である。
図4】本発明の繊維積層シート部材の第2の実施の形態を示す説明図である。
図5図4の繊維積層シート部材を用いた繊維成形品の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の繊維積層シート部材及びその繊維積層シート部材を用いた繊維成形品の製造方法の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の繊維積層シート部材の第1の実施の形態を示す積層工程の説明図である。この実施の形態では、強化繊維の編物からなる繊維シート12の両面にフィルム14、16を接合して3層の繊維積層シート部材10を構成する。この実施の形態では、繊維シート12を構成する強化繊維には炭素繊維を用いた。また、この実施の形態では、繊維シート12及びフィルム14、16の接合をロール成形で行った。具体的な接合には、繊維シート12やフィルム14、16の材質や成形品の用途に応じ、溶着(融着)、圧着、接着剤による接着などが選択される。
【0023】
この実施の形態の繊維シート12を構成する炭素繊維の編物は、繊維積層シート部材10を用いた繊維成形品の用途や繊維成形品に要求される意匠性に応じて、種々の編方(編目)を選択することが可能である。旧来、炭素繊維を編むことは困難であるとされていたが、近年では、炭素繊維を編むことのみならず、種々の編方(編目)が可能となっている。炭素繊維編物の編目は、炭素繊維成形品の意匠性に大きく関与するので、繊維成形品の用途や繊維成形品に要求される意匠性に応じて編目、つまり編方を選択する。炭素繊維の編目は、炭素繊維の編機と、それによる編方で決まる。
【0024】
この繊維シート12の一方の面、具体的には繊維成形品の表面(外側面)には、少なくとも繊維シート12の強化繊維(の目)が透けて見える表皮フィルム14が接合される。この表皮フィルム14には、透明性の高いポリメチルメタクリレート(PMMA)やポリメタクリレート(PMA)などのアクリル樹脂フィルムを採用することができる。アクリル樹脂は、熱プレス成形が可能な熱可塑性樹脂に含まれるが、用途や機能に応じて、熱硬化性の樹脂フィルムを用いることも可能である。この表皮フィルム14は、後述するように、この表皮フィルム14が繊維シート12の表面に被覆された状態の繊維積層シート部材10を予備成形する際に、予備成形可能な成形性を有するものである必要がある。また、この表皮フィルム14は、繊維成形品の意匠性を高めるため、繊維シート12の強化繊維(の目)が透けて見える透明なものである。なお、繊維成形品の用途などによっては、無色でなくてもよい。
【0025】
繊維シート12の他方の面、具体的には繊維成形品の裏面(内側面)には、シート部材10の基材となる基体フィルム16が接合される。この基体フィルム16は、例えば熱可塑性樹脂フィルムで構成され、後述する繊維積層シート部材10の予備成形を可能とする成形性を有するものであれば、如何様なものであってもよく、例えばPE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)製のパッキングフィルムを用いることができる。この基体フィルム16は、例えば薄いほど、後述する予備成形が容易になるが、予備成形後の形状を維持するためには、予備成形後の基体フィルム16に規定の強度が必要となるので、その規定の強度を達成できるフィルム厚さが必要となる。なお、基体フィルム16は、透明でなくてもよいが、透明であってもよい。
【0026】
これらの繊維シート12やフィルム14、16は、例えばロール状に巻回されている状態から引き出してロール成形機に装入され、ロール成形機によって加圧されて繊維積層シート部材10として接合される。繊維シート12やフィルム14、16が連続体である場合には、繊維積層シート部材10も連続体となるので、これを、例えばロール状に巻き取ってもよい。また、その連続シート部材10を、規定の長さ毎に切断し、例えば方形のシート体として積み重ねてもよい。
【0027】
なお、この実施の形態の繊維積層シート部材10は、表面から繊維シート12の繊維の目が透けて見えるので、後述する予備成形や完成品成形時に手作業でシート部材10を取り扱う場合には、繊維シート12の繊維の目を成形品に要求される方向に合わせるのに何らの問題もない。一方、この繊維積層シート部材10の状態で、繊維シート12の繊維の目、又はその目の方向を機械的・光学的・電気的に検出・認識・特定できるようなマーク、例えば凹陥部や反射・透過部、導通部などを設けることにより、後工程におけるシート部材10のセットを自動的に行うことが可能となる。
【0028】
このようにして作成された繊維積層シート部材10を、例えば規定寸法に切り出し、図2に示す予備成形金型20にセットして予備成形する。予備成形にあたっては、シート部材10の材料や要求される予備成形形状に応じて、加熱してもよい。前述のように、フィルム14、16が熱可塑性樹脂である場合、予備成形金型20で熱プレスすると、予備成形しやすい。この予備成形は、繊維積層シート部材10の表皮フィルム14が繊維成形品(完成品)の表面(外側面)になるように成形される。
【0029】
このようにして予備成形が施された樹脂積層シート部材10の予備成形品を、図3に示す成形金型22内にセットし、繊維成形品(完成品)の裏側、つまり樹脂積層シート部材10の基体フィルム16側に熱可塑性樹脂18を射出成形する。この熱可塑性樹脂18が成形品の裏側で硬化することにより、繊維成形品に規定の強度が付与される。この熱可塑性樹脂18には、炭素(強化)繊維を含有してもよい。つまり、その場合、CFRTPが予備成形品の裏側に射出成形されることになる。周知のように、炭素繊維を含有するCFRTPは、硬化後、大きな強度を発揮するので、繊維成形品の裏側にCFRTP成形層が形成されることで、繊維成形品にはより一層大きな強度が付与される。熱可塑性樹脂18の硬化後、離型して成形品を取り出す。なお、前記熱可塑性樹脂18に含有される炭素(強化)繊維は、不連続な炭素(強化)繊維であっても構わない。
【0030】
一般的なCFRPでは、炭素繊維の織物からなる炭素繊維シートを幾層も重ねて金型内にセットし、その金型内に熱硬化性樹脂を注入する。熱硬化性樹脂は炭素繊維シートに含浸し、硬化して繊維成形品となる。金型内にセットする前に、積層した炭素繊維シートに予備賦形を施すこともある。また、熱硬化性樹脂の注入と同時に、金型内を減圧する場合もある。炭素繊維自体は大きな強度を有するが、この炭素繊維シートを幾層も重ねることで繊維成形品の強度を確保する。
【0031】
一方で、一般的な繊維織物と同様に、炭素繊維織物も可撓性や柔軟性が乏しい。そのため、炭素繊維シートを折って金型内にセットする場合、特に二方向から折り込むような箇所では、シートによれやシワが生じやすく、生産性が低下すると共に意匠性が低減しやすい。また、成形金型又は予備賦形金型への炭素繊維シートの積層やセットは、一般に手作業で行われるため、手間や時間がかかる。更には、熱硬化性樹脂の注入・硬化にも時間がかかることから、繊維成形品の生産は手間と時間を必要とし、生産性が低く、結果として成形品が高価なものとなる。
【0032】
これに対し、この実施の形態の繊維積層シート部材10及びその繊維積層シート部材10を用いた繊維成形品の製造方法では、炭素繊維編物からなる繊維シート12の一方の面に透明な表皮フィルム14を接合し且つ他方の面に基体フィルム16を接合して繊維積層シート部材10を構成し、このシート部材10を予備成形した後、成形金型22内にセットして繊維成形品の裏側に熱可塑性樹脂18を射出成形する。炭素繊維の編物からなる繊維シート12は、可撓性や柔軟性に富み、成形しやすいので、例えば予備成型時によれやシワが生じにくく、繊維成形品の強度が低下することもなく、意匠性が低下することもない。
【0033】
このように、この実施の形態によれば、強化(炭素)繊維の編物からなる繊維シート12の一方の面に強化繊維が透けて見える表皮フィルム14を接合し且つ他方の面に繊維積層シート部材10の基部を構成する基体フィルム16を接合して繊維積層シート部材10としたため、強化繊維の編物からなる繊維シート12は、可撓性や柔軟性に優れ、成形しやすいことから、繊維積層シート部材10を予備成形金型20にセットして予備成形する際にも、よれやシワが生じにくく、従って繊維成形品の生産性が向上し、しかも表皮フィルム14を通して強化繊維の目が透けて見えることから意匠性にも優れる。
【0034】
また、この繊維積層シート部材10を成形金型22内にセットし、基体フィルム16側に熱可塑性樹脂18を射出成形することにより、繊維成形品に規定の強度を付与することができる。
【0035】
また、熱可塑性樹脂18の射出成形の前に、予備成形金型20内で繊維積層シート部材10を予備成形することにより、繊維成形品を確実に規定の形状とすることができる。
【0036】
また、熱可塑性樹脂18内に強化繊維を含有することにより、繊維成形品の強度をより一層向上することが可能となる。
【0037】
次に、本発明の繊維積層シート部材及びその繊維積層シート部材を用いた繊維成形品の製造方法の第2の実施の形態について説明する。図4は、この実施の形態の繊維積層シート部材を示す積層工程の説明図である。この実施の形態でも、例えばロール成形によって、第1の実施の形態と同様の炭素繊維の編物からなる繊維シート12の一方の面に、第1の実施の形態と同様に強化繊維の目が透けて見える表皮フィルム14を接合するが、この実施の形態では、この繊維シート12の他方の面に、熱可塑性樹脂シート24を接合する。この熱可塑性樹脂シート24の熱可塑性樹脂に炭素繊維を含有してもよい。つまり、CFRTPシートを接合してもよい。この実施の形態では、後述するように、繊維積層シート部材10を熱プレス成形することで、繊維成形品を製造するため、熱プレス成形で繊維成形品の強度が得られるような性状、具体的には厚さの熱可塑性樹脂シート又はCFRTPシートを使用する。なお、繊維シート12や表皮フィルム14には、前述した第1の実施の形態と同等のものを用いることができる。また、第1の実施の形態と同様に、繊維シート12の繊維の目、又はその目の方向を検出可能なマークを設けることもできる。
【0038】
この実施の形態では、図4の積層工程で得られた繊維積層シート部材10を、図5に示すように、熱成形金型26内で熱プレス成形して成形品とする。この実施の形態の繊維積層シート部材10は、表皮フィルム14、繊維シート12、熱可塑性樹脂シート24の積層構造であり、特に熱可塑性樹脂シート24は熱プレス成形で加熱成形される。この熱可塑性樹脂シート24、場合によって炭素繊維が含有された熱可塑性樹脂シート24が硬化すると繊維成形品に規定の強度が付与されるので、硬化後、離型して繊維成形品を取り出す。このように、この実施の形態では、第1の実施の形態の効果に加え、繊維積層シート部材10を熱プレス成形するだけで、規定の強度の繊維成形品を得ることができるという効果がある。
【0039】
このように、この実施の形態によれば、強化(炭素)繊維の編物からなる繊維シート12の一方の面に強化繊維が透けて見える表皮フィルム14を接合し且つ他方の面に熱可塑性樹脂シート24を接合して繊維積層シート部材10としたため、強化繊維の編物からなる繊維シート12は、可撓性や柔軟性に優れ、成形しやすいことから、繊維積層シート部材10を熱成形金型26にセットして熱プレス成形する際にも、よれやシワが生じにくく、従って成形品の生産性が向上し、しかも表皮フィルム14を通して繊維の目が透けて見えることから意匠性にも優れる。また、繊維積層シート部材10を熱プレス成形するだけで、強度のある成形品を得ることができる。
【0040】
また、熱可塑性樹脂シート24内に強化繊維を含有することにより、繊維成形品の強度をより一層向上することができる。
【0041】
また、繊維積層シート部材10を熱成形金型内にセットし、熱プレス成形することにより、繊維積層シート部材10を熱プレス成形するだけで、強度のある成形品を得ることができる。
【0042】
本発明が上記していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当とされる特許請求の範囲に記載された発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0043】
10 繊維積層シート部材
12 繊維シート
14 表皮フィルム
16 基体フィルム
18 熱可塑性樹脂
20 予備成形金型
22 成形金型(金型)
24 熱可塑性樹脂シート
26 熱成形金型
図1
図2
図3
図4
図5